(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の構成において、駆動パルスを発生する回路とアクチュエーターとの間の信号経路の抵抗値を調整することにより印加電圧波形の劣化を抑制することもできる。しかしながら、ノズルから噴射する液量の異なる複数種類の駆動パルスのそれぞれについて印加電圧波形の劣化による不具合の抑制を成立させることが難しかった。すなわち、例えば、比較的液量の少ない液滴を噴射するための駆動パルス(相対的に電位変化の回数が多く、また、電位変化の傾きが大きい(電位勾配が急峻なもの)については、印加電圧波形における電位変化の勾配が小さくなること(時間的な遅れ)による液滴の飛翔速度の低下等を抑制するために信号経路の抵抗値を下げることが考えられる。ところが、単に信号経路の抵抗値を従来設定される値よりも下げた場合、比較的液量の多い液滴を噴射するための駆動パルス(電位変化の大きさ(電位変化の始端電位と終端電位との差)の最大値が相対的に大きいもの)については、印加電圧波形の立ち上がりの終端電位が本来目標とする電位よりも上回るオーバーシュート等が発生し、その結果、アクチュエーターに印加される電圧が過大となるリスクが生じるという問題があった。逆に、比較的液量の多い液滴を噴射するための駆動パルスの印加電圧波の劣化を抑制するため、単に信号経路の抵抗値を従来設定される値よりも上げた場合、上記の電位変化の時間的遅れによる液滴の飛翔速度の低下等の不具合が生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アクチュエーターを駆動する駆動パルスの印加電圧波形の劣化による不具合をより効果的に抑制することが可能な液体噴射装置、及び、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、複数のノズル、及び、各ノズルに対応して設けられた複数のアクチュエーターを有し、前記アクチュエーターの駆動により当該アクチュエーターに対応する前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記アクチュエーターを駆動する第1駆動パルス及び当該第1駆動パルスとは異なる第2駆動パルスを発生させる駆動信号発生回路と、
前記駆動信号発生回路から前記アクチュエーターまで前記第1駆動パルスが伝送される第1信号経路と、
前記駆動信号発生回路から前記アクチュエーターまで前記第2駆動パルスが伝送される第2信号経路と、
を備え、
前記第1信号経路の抵抗値は、前記第2信号経路の抵抗値とは異なることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、種類の異なる駆動パルスをそれぞれより適切な抵抗値に調整された信号経路を通じてアクチュエーターに供給(印加)することが可能となる。このため、駆動されるアクチュエーターの数が増加したとしても、第1駆動パルスに対応する印加電圧波形の劣化の抑制と、第2駆動パルスに対応する印加電圧波形の劣化の抑制とを共に成立させることが可能となる。その結果、同時に噴射が行われるノズルの数や噴射する液滴のサイズによらず、各ノズルから噴射される液体の重量や飛翔速度を安定させることが可能となる。
【0009】
上記構成において、前記第1信号経路における導体の厚さは、前記第2信号経路における導体の厚さと異なる構成を採用することができる。
【0010】
この構成によれば、信号経路における導体の厚さにより抵抗値を容易に調整することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記第1信号経路におけるダンピング抵抗の抵抗値は、前記第2信号経路におけるダインピング抵抗の抵抗値とは異なる構成を採用することもできる。
【0012】
この構成によれば、ダンピング抵抗を利用して抵抗値を調整することができるので、抵抗値をより厳密に調整することが可能となる。
【0013】
上記構成において、前記第1信号経路の長さは、前記第2信号経路の長さとは異なる構成を採用することができる。
【0014】
この構成によれば、信号経路の長さにより抵抗値を容易に調整することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1駆動パルスは、前記第2駆動パルスにより噴射される液滴よりも大きい液滴を噴射するための駆動パルスであり、
前記第1信号経路の抵抗値は、前記第2信号経路の抵抗値よりも大きい構成を採用することができる。
【0016】
この構成によれば、第1駆動パルスについては抵抗値が相対的に大きい第1信号経路により伝送されるので印加電圧波形のオーバーシュート等劣化が抑制され、また、第2駆動パルスについては抵抗値が相対的に小さい第2信号経路により伝送されるので印加電圧波形の電位変化の遅れ等の劣化が抑制される。
【0017】
また、前記第1駆動パルスにより駆動される前記アクチュエーターの数が前記第2の駆動パルスにより駆動される前記アクチュエーターの数よりも多い場合に前記第1信号経路を選択する一方、前記第2駆動パルスにより駆動される前記アクチュエーターの数が前記第1の駆動パルスにより駆動される前記アクチュエーターの数よりも多い場合に前記第2信号経路を選択する制御回路を備えた構成を採用することができる。
【0018】
この構成によれば、駆動されるアクチュエーターの数(駆動状況)に応じて各駆動パルスをより適切な抵抗値に調整された信号経路を通じてアクチュエーターに供給することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明は、複数のノズル、及び、各ノズルに対応して設けられた複数のアクチュエーターを有し、前記アクチュエーターの駆動により当該アクチュエーターに対応する前記ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記アクチュエーターを駆動する第1駆動パルス及び当該第1駆動パルスとは異なる第2駆動パルスを発生させる駆動信号発生回路と、前記駆動信号発生回路から前記アクチュエーターまで前記第1駆動パルスが伝送される第1信号経路と、前記駆動信号発生回路から前記アクチュエーターまで前記第2駆動パルスが伝送される第2信号経路と、を備える液体噴射装置の制御方法であって、
前記第1駆動パルスによりに駆動される前記アクチュエーターの数が、前記第2の駆動パルスによりに駆動される前記アクチュエーターの数よりも多い場合、前記第1信号経路を選択し、
前記第2駆動パルスによりに駆動される前記アクチュエーターの数が、前記第1の駆動パルスによりに駆動される前記アクチュエーターの数よりも多い場合、前記第2信号経路を選択することを特徴とする。
【0020】
この制御方法によれば、駆動されるアクチュエーターの数に応じて各駆動パルスをより適切な抵抗値に調整された信号経路を通じてアクチュエーターに供給することが可能となる。このため、駆動されるアクチュエーターの数が増加したとしても、第1駆動パルスに対応する印加電圧波形の劣化の抑制と、第2駆動パルスに対応する印加電圧波形の劣化の抑制とを共に成立させることが可能となる。その結果、同時に噴射が行われるノズルの数や噴射する液滴のサイズによらず、各ノズルから噴射される液体の重量や飛翔速度を安定させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0023】
図1は、プリンター1の内部構成を説明する斜視図、
図2は、プリンター1の電気的な構成を説明するブロック図である。本実施形態におけるプリンター1は、紙送り機構3、キャリッジ移動機構4、リニアエンコーダー5、及び記録ヘッド6を有するプリントエンジン2と、このプリントエンジン2の各部を制御するプリンターコントローラー7とを有する。
【0024】
プリンターコントローラー7は、プリンターの各部の制御を行う制御ユニットである。本実施形態におけるプリンターコントローラー7は、制御回路9及び駆動信号発生回路10等を備えている。制御回路9は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置であり、図示しないCPUや記憶装置等から構成されている。制御回路9は、記憶装置に記憶されているプログラム等に従って、各ユニットを制御する。また、本実施形態における制御回路9は、外部機器等から受信した印刷データに基づき、印刷動作(液体噴射動作)の際、記録ヘッド6のどのノズル21(
図3参照)からどのタイミングでどの大きさのインク滴(液滴)を噴射させるかを示す噴射データを生成し、当該噴射データを配線部材の一種であるフレキシブルフラットケーブル(FFC)11を通じて記録ヘッド6のヘッドコントローラー12に送信する。
【0025】
駆動信号発生回路10は、駆動信号の波形に関する波形データに基づいて、アナログの電圧信号を生成し、これを図示しない増幅回路により増幅して駆動信号COMを生成する。本実施形態における駆動信号発生回路10は、第1駆動信号発生部13及び第2駆動信号発生部14を備えている(
図9参照)。第1駆動信号発生部13及び第2駆動信号発生部14は、後述するエンコーダーパルスに基づき生成されるタイミング信号で規定される周期(単位周期)で、それぞれ、
図4に示される第1駆動パルスPd1を含む第1駆動信号COM1及び
図5に示される第2駆動パルスPd2を含む第2駆動信号COM2を繰り返し発生する。これらの第1駆動パルスPd1及び第2駆動パルスPd2の詳細については後述する。駆動信号発生回路10により発生された駆動信号COM1及びCOM2は、FFC11を通じて記録ヘッド6のヘッドコントローラー12に送信される。
【0026】
次に、プリントエンジン2について説明する。このプリントエンジン2は、
図1に示すように、紙送り機構3、キャリッジ移動機構4、リニアエンコーダー5、及び、記録ヘッド6等を備えている。キャリッジ移動機構4は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド6が取り付けられたキャリッジ16と、このキャリッジ16を、タイミングベルト等を介して走行させる駆動モーター(例えば、DCモーター)等からなり(図示せず)、キャリッジ16に搭載された記録ヘッド6をガイドロッド18に沿って主走査方向に移動させる。紙送り機構3は、紙送りモーター及び紙送りローラー等からなり、記録媒体S(被着弾物の一種)をプラテン上に順次送り出して副走査を行う。また、リニアエンコーダー5は、キャリッジ16に搭載された記録ヘッド6の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報としてプリンターコントローラー7に出力する。プリンターコントローラー7は、リニアエンコーダー5側から受信したエンコーダーパルスに基づいて記録ヘッド6の走査位置(現在位置)を把握することができる。
【0027】
このように構成されたプリンター1は、紙送り機構3によって記録媒体Sを順次搬送すると共に、記録媒体Sに対して記録ヘッド6を主走査方向に相対移動させながら、当該記録ヘッド6のノズル21(
図3参照)からインク(インク滴)を噴射させて、記録媒体S上に当該インクを着弾させることにより画像等を記録する。なお、インクカートリッジ17がプリンターの本体側に配置され、当該インクカートリッジ17のインクが供給チューブを通じて記録ヘッド6側に送られる構成を採用することもできる。
【0028】
図3は、記録ヘッド6の内部構成を説明する要部断面図である。
本実施形態における記録ヘッド6は、ノズルプレート22、流路基板23、圧電素子24、及びケース20等を積層して構成されている。ノズルプレート22は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル21が列状に開設された板状の部材であり、例えば、シリコン単結晶基板あるいはステンレス等の金属板により作製される。本実施形態では、複数のノズル21から構成されるノズル列(ノズル群の一種)がノズルプレート22に2列並設されている。本実施形態におけるノズル列は、例えば、合計400個のノズル21により構成されている。
【0029】
流路基板23には、複数の圧力室26となる空部が、上記ノズルプレート22の各ノズル21に対応して複数形成されている。この流路基板23における圧力室26の列の外側には、共通液室25が形成されている。この共通液室25は、インク供給口27を介して各圧力室26と個々に連通している。また、共通液室25には、インクカートリッジ17側からのインクがケース20のインク導入路28を通じて導入される。流路基板23のノズルプレート22側とは反対側の上面には、弾性膜30を介して圧電素子24(本発明におけるアクチュエーターの一種)が形成されている。
【0030】
圧電素子24は、金属製の下電極膜と、例えばチタン酸ジルコン酸鉛等からなる圧電体層と、金属からなる上電極膜(何れも図示せず)とを順次積層することで形成されている。この圧電素子24は、所謂撓みモードの圧電素子であり、圧力室26の上部を覆うように形成されている。本実施形態において、2列のノズル列に対応して2列の圧電素子列が、並設されている。各圧電素子24の端子部には、信号経路の一部を構成し配線部材の一種であるCOF(Chip On Film)等の配線基板31が電気的に接続されている。この配線基板31は、FFC11を通じてプリンターコントローラー7から送られてくる駆動信号を圧電素子24に印加する。本実施形態においてはこの配線基板31に、後述するヘッドコントローラー12が設けられているが、これには限られず、ヘッドコントローラー12がインターポーザーとして機能する別途の基板に配置される構成を採用することもできる。駆動信号発生回路10側からFFC11及び配線基板31を通じて送られてきた駆動信号COM1,COM2は、制御回路9から送られてきた噴射データに基づき選択的に圧電素子24に印加される。駆動信号COM1及びCOM2に含まれる駆動パルス(後述するPd1,Pd2)が圧電素子24に印加されると、当該圧電素子24は、当該駆動パルスの印加電圧波形に応じて変形する。これにより、当該圧電素子24に対応する圧力室26内のインクに圧力変動が生じ、このインクの圧力変動によりノズル21からインクが噴射される。
【0031】
図4は、本実施形態における第1駆動信号COM1に含まれる第1駆動パルスPd1の一例を説明する波形図である。また、
図5は、本実施形態における第2駆動信号COM2に含まれる第2駆動パルスPd2の一例を説明する波形図である。上述したように、第1駆動信号COM1及び第2駆動信号COM2は、エンコーダーパルスに基づくタイミング信号で規定される単位周期で繰り返し発生される。
【0032】
本実施形態における第1駆動パルスPd1は、記録ヘッド6のノズル21から噴射可能なインク滴の大きさのうち、相対的に大きいインク滴(大ドット)を噴射するための駆動パルスである。本実施形態における第1駆動パルスPd1は、第1予備膨張要素p1と、第1膨張ホールド要素p2と、第1収縮要素p3と、第1収縮ホールド要素p4と、第1復帰膨張要素p5と、からなる。第1予備膨張要素p1は、電位変化の始点及び終点を規定する基準電位VBから当該基準電位VBよりも低い第1膨張電位VL1まで電位が変化する波形要素である。第1膨張ホールド要素p2は、第1予備膨張要素p1の終端電位である第1膨張電位VL1を一定時間維持する波形要素である。第1収縮要素p3は、第1膨張電位VL1から基準電位VBよりも高い第1収縮電位VH1まで比較的急峻な電位勾配(単位時間当たりの電位変化率)で変化する波形要素である。第1収縮ホールド要素p4は、第1収縮電位VH1を所定時間維持する波形要素である。第1復帰膨張要素p5は、第1収縮電位VH1から基準電位VBまで電位が復帰する波形要素である。
【0033】
圧電素子24に第1駆動パルスPd1が印加される前(インクが噴射される前)の状態では、圧電素子24には基準電位VBが継続して印加されており、圧力室26内には圧電素子24の駆動に基づく圧力変化(圧力振動)は生じていない。この状態から上記の第1駆動パルスPd1が圧電素子24に印加されると、まず、第1予備膨張要素p1によって圧電素子24は圧力室26の外側(ノズル21から遠ざかる側)に向かって撓み、これに伴って圧力室26が基準電位VBに対応する基準容積から第1膨張電位VL1に対応する第1膨張容積まで膨張する。この膨張により、ノズル21におけるメニスカスが圧力室26側に大きく引き込まれる。そして、この圧力室26の膨張状態は、第1膨張ホールド要素p2によって所定時間だけ維持された後、第1収縮要素p3により圧電素子24が圧力室26の内側(ノズル21に近づく側)に向かって撓む。これに伴い、圧力室26は第1膨張容積から第1収縮電位VH1に対応する第1収縮容積まで急激に収縮される。これにより、圧力室26内のインクが加圧されて、ノズル21メニスカスが噴射側(プラテン上の記録媒体S側)に押し出される。続いて、第1収縮ホールド要素p4が供給され、圧力室26が収縮した状態が所定時間だけ維持される。この間に、インクが慣性によりノズル形成面におけるノズル21の開口よりも外側に押し出されて、大ドットに相当する量のインク滴がノズル21から噴射される。その後、第1復帰膨張要素p5が圧電素子24に印加され、当該圧電素子24は基準位置まで変位する。これにより、圧力室26が収縮容積から基準容積まで膨張する。
【0034】
本実施形態における第2駆動パルスPd2は、記録ヘッド6のノズル21から噴射可能なインク滴の大きさのうち、相対的に小さいインク滴(小ドット)を噴射するための駆動パルスである。本実施形態における第2駆動パルスPd2は、第2予備膨張要素p11と、第2膨張ホールド要素p12と、第2収縮要素p13と、第1中間ホールド要素p14と、再膨張要素p15と、第2中間ホールド要素p16と、再収縮要素p17と、再収縮ホールド要素p18と、第2復帰膨張要素p19と、からなる。
【0035】
第2予備膨張要素p11は、基準電位VBから当該基準電位VBよりも低い第2膨張電位VL2まで一定勾配で電位が変化する波形要素である。第2膨張ホールド要素p12は、第2予備膨張要素p11の終端電位である第2膨張電位VL2を一定時間維持する波形要素である。第2収縮要素p13は、第2膨張電位VL2から当該第2膨張電位VL2よりも高い第1中間収縮電位VM1まで電位が変化する波形要素である。第1中間ホールド要素p14は、第1中間収縮電位VM1を一定時間維持する波形要素である。再膨張要素p15は、第1中間収縮電位VM1から当該第1中間収縮電位VM1よりも低く第2膨張電位VL2よりも高い第2中間電位VM2まで電位が再度下降する波形要素である。第2中間ホールド要素p16は、第2中間電位VM2を一定時間維持する波形要素である。再収縮要素p17は第2中間電位VM2から第1中間収縮電位VM1よりも高い第2収縮電位VH2まで電位が変化する波形要素である。再収縮ホールド要素p18は、第2収縮電位VH2を一定時間維持する波形要素である。第2復帰膨張要素p19は、第2収縮電位VH2から基準電位VBまで電位が復帰する波形要素である。
【0036】
上記の第2駆動パルスPd2が圧電素子24に印加されると、まず、第2予備膨張要素p11によって圧電素子24は圧力室26の外側に向かって撓み、これに伴って圧力室26が基準電位VBに対応する基準容積から第2膨張電位VL2に対応する第2膨張容積まで膨張し、ノズル21におけるメニスカスが圧力室26側に大きく引き込まれる。この圧力室26の膨張状態は、第2膨張ホールド要素p12によって所定時間だけ維持される。第2膨張ホールド要素p12によるホールドの後、第2収縮要素p13により圧電素子24が圧力室26の内側に向かって急激に撓む。これに伴い、圧力室26は第2膨張容積から第1中間収縮電位VM1に対応する中間収縮容積まで収縮される。これにより、圧力室26内のインクが加圧されて、メニスカスが噴射側に押し出される。この後、第1中間ホールド要素p14が圧電素子24に印加され、圧力室26が収縮した状態が所定時間だけ維持される。
【0037】
続いて、再膨張要素p15が圧電素子24に印加されることにより、当該圧電素子24が圧力室26の外側に向かって急激に撓む。これに伴い、圧力室26は、中間収縮容積から第2中間電位VM2に対応する中間膨張容積まで再度膨張する。ここで、ノズル21の内部では、中央部(ノズル21の仮想的な中心軸に近い部分)のインクほど圧力室26内の圧力変化に追従して動きやすい一方、ノズル内壁面に近い部分ほどその粘性が影響して圧力変化に追従し難いため移動速度が遅くなる。このため、圧力室26を急激に膨張させると、主にメニスカスの中央部が圧力室26側に再度引き込まれる一方、メニスカスにおいてノズル21の内壁面に近い部分は、中央部よりも噴射側に位置する。圧力室26の膨張状態は、第2中間ホールド要素p16によって所定時間だけ維持される。
【0038】
第2中間ホールド要素p16の後、再収縮要素p17により圧電素子24が圧力室26の内側に向かってより大きく撓む。これに伴い、圧力室26は中間膨張容積から第2収縮電位VH2に対応する第2収縮容積まで急激に収縮される。これにより、圧力室26内のインクが加圧されて、圧力変化に追従しやすいメニスカスの中央部が噴射側に押し出される。圧力室26の収縮状態は、再収縮ホールド要素p18により所定時間だけ維持される。再収縮ホールド要素p18の後、第2復帰膨張要素p19が圧電素子24に印加され、当該圧電素子24は基準位置まで変位する。これにより、圧力室26が第2収縮容積から基準容積まで膨張する。上記の再収縮要素p17により慣性力によって主にメニスカスの中央部が噴射方向へ伸びつつある状態でこの方向とは逆方向にノズル21内のインクが引き込まれるので、メニスカスの中央部分の噴射側に押し出された部分がノズル21内のインクから分離し、この分離した部分が、第1駆動パルスPd1により噴射されるインク滴よりも微小な小ドットに対応するインク滴として記録媒体Sに向けて飛翔する。
【0039】
図6は、エレキクロストークによる第2駆動パルスPd2の印加電圧波形の乱れについて説明する波形図である。
ここで、多数のノズル21から同時にインクを噴射する場合、多数の圧電素子24を同時に駆動することになるため、駆動信号発生回路10から各圧電素子24に至るまでの信号経路により大きな電流が流れる。これにより、当該信号経路における抵抗成分、誘導成分、及び容量成分等の寄生インピーダンス成分が影響して、駆動信号発生回路10から出力される駆動パルスの波形に対し、FFC11等の信号経路を経て圧電素子24に実際に印加される印加電圧波形が変化してしまう。より具体的には、
図6に示されるように、波形要素の始端電位から終端電位までに到達するまでの時間的な遅れにより電位変化の傾きが小さくなったり、この遅れが原因となって波形要素の終端電位が本来目標とする電位に届かなかったりする等、波形に乱れが生じる。特に、電位変化の回数が相対的に多く、電位変化の傾きも急峻な第2駆動パルスPd2の場合、このような印加電圧波形の乱れにより、ノズル21から噴射されるインク滴の飛翔速度や重量が本来目標とする値から低下するという問題がある。その結果、記録媒体Sにおけるインク滴の着弾位置がずれたり、着弾インク滴により形成されるドットの大きさがばらついたりして、記録画像等の画質が劣化するおそれがあった。このような問題に関し、信号経路における抵抗値を下げることで、波形要素の電位変化の遅れによる印加電圧波形の乱れを抑制することができる。
【0040】
図7は、抵抗値の異なる複数の信号経路について、インク滴の噴射を同時に行うノズル21の数と、噴射されるインク滴の飛翔速度の変化率(低下率)〔%〕との関係を示すグラフである。なお、インク滴の飛翔速度の変化率は、本来目標とする飛翔速度に対する実際にノズル21から噴射されるインク滴の飛翔速度(例えば、各ノズル21の平均値)の割合を示す。同図に示されるように、噴射を行うノズル21の数が増加する(駆動される圧電素子24の数が増加する)駆動状況である、いわゆる高DUTYになるほど、インク滴速度の低下率が大きくなる。なお、DUTYとは、以下の式で算出される値である。
DUTY[%]=(噴射ドット数/(縦解像度×横解像度))×100
上記式中、「噴射ドット数」は、記録媒体Sにおける単位面積当たりに噴射されたインクのドット数(インク滴数)であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ記録媒体Sおける単位面積当たりの解像度である。
【0041】
上記のような信号経路における寄生インピーダンス成分による印加電圧波形の劣化を適宜エレキクロストークと称する。このエレキクロストークによるインク滴速度の変化率(低下率)は、信号経路における抵抗値が大きいほど大きくなる。したがって、エレキクロストークによる印加電圧波形の劣化を抑制するには、信号経路における抵抗値を下げればよい。例えば、
図7の例では、記録ヘッド6における1つのノズル列が合計400個のノズル21により構成され、当該ノズル列に属する全てのノズル21を同時に噴射したときのインク滴速度の変化率として20〔%〕程度を許容する場合には、信号経路における抵抗値を
図7中で最も低い0.5〔Ω〕に調整すればよい。
【0042】
図8は、信号経路における抵抗値を下げることによる第1駆動パルスPd1の印加電圧波形の乱れについて説明する波形図である。エレキクロストークを抑制すべく信号経路における抵抗値を下げた場合、
図8に示されるように第1駆動パルスPd1の印加電圧波形に波形の乱れが生じる。具体的には、印加電圧波形の立ち下がりの終端電位が本来目標とする電位よりも下回るアンダーシュートUsや、印加電圧波形の立ち上がりの終端電位が本来目標とする電位よりも上回るオーバーシュートOsが生じることがあった。特に、第1駆動パルスPd1では、電位変化の大きさ(電位変化の始端電位と終端電位との差)の最大値、すなわち、立ち上がりの成分である第1収縮要素p3の電位変化の大きさが、第2駆動パルスPd2の電位変化の大きさの最大値(第2収縮要素p13又は再収縮要素p17の電位変化の大きさ)よりも大きいため、印加電圧波形にオーバーシュートOsが生じやすい。このように、信号経路における抵抗値を下げることにより印加電圧波形にオーバーシュートOs等が生じた場合、駆動信号発生回路10から出力される駆動パルスの駆動電圧(最大電位と最小電位との差)Vdに対し、印加電圧波形の電圧Vd′が大きくなる。これにより、圧電素子24の許容電圧を超えて発熱や歪みが過剰になり、当該圧電素子の破損等のリスクが高まるという問題があった。
【0043】
図9は、本発明に係るプリンター1における信号経路について説明する模式図である。なお、同図における黒丸で示す部分は、コネクター等の接点に相当する部分を意味している。また、便宜上、3つの圧電素子24のみが図示されているが、実際にはノズル21の数に対応した数の圧電素子24が設けられている。本発明に係るプリンター1では、第1駆動パルスPd1が送信される第1信号経路における抵抗値R1と、第2駆動パルスPd2が送信される第2信号経路における抵抗値R2とを異ならせることにより上記問題を解決している。以下、この点について説明する。なお、信号経路における抵抗値は、当該信号経路中に設けられた抵抗器によるものに限られず、信号経路における寄生抵抗成分も含んだ値である。
【0044】
本実施形態において、プリンターコントローラー7とヘッドコントローラー12とは、配線部材の一種であるFFC11により相互に電気的に接続されている。FFC11としては、例えばプリンター1内における記録ヘッド6の移動可能距離(移動スパン)の1.5倍から2倍程度の長さのものが用いられている。本実施形態におけるFFC11は、制御回路9からの噴射データが送られる噴射データ用信号線32、第1駆動信号COM1が送られる第1駆動信号用信号線33、第2駆動信号COM2が送られる第2駆動信号用信号線34、接地線35、及びその他の図示しない制御用信号線等、多数の信号線を備えている。そして、第1駆動信号用信号線33を含む第1信号経路の抵抗値R1よりも、第2駆動信号用信号線34を含む第2信号経路の抵抗値R2の方が小さく設計されている。より具体的には、第2駆動信号用信号線34の導体(銅箔)の厚さT2が、第1駆動信号用信号線33の導体の厚さT1よりも厚くされることで、抵抗値R2が抵抗値R1よりも低い値に調整されている。換言すると、第1信号経路の抵抗値R1は、第2信号経路の抵抗値R2よりも大きくなっている。なお、本発明が適用されない従来のプリンター(信号経路における抵抗値以外、共通の構成・仕様のプリンター)における信号経路の抵抗値を適宜、基準抵抗値と称する。
【0045】
本実施形態における第1駆動信号用信号線33としては、基準抵抗値よりも抵抗値が高くなるように、従来の同様な構成・仕様のプリンターで用いられるFFCの信号線の導体の厚さよりも薄いものが採用されている。これに対し、本実施形態における第2駆動信号用信号線34は、基準抵抗値よりも抵抗値が低くなるように導体の厚さが厚いものが採用されている。例えば、第1駆動信号用信号線33の導体(銅箔)の厚さT1が50〔μm〕であるのに対し、第2駆動信号用信号線34の導体の厚さT2は100〔μm〕に設定されている。なお、駆動信号用信号線34の導体の厚さ以外の寸法(長さ・幅)等の他の構成については、第1駆動信号用信号線33と第2駆動信号用信号線34とで同様に揃えられている。
【0046】
このような構成を採用することにより、種類の異なる駆動パルスをより適切な抵抗値に調整された信号経路を通じて圧電素子24に供給(印加)することが可能となる。このため、ノズル列内の多数(例えば全ノズル数の半数以上)のノズル21から同時にインクの噴射が行われる(多数の圧電素子24が同時に駆動される)高DUTY時における第1駆動パルスPd1に対応する印加電圧波形の劣化の抑制と、第2駆動パルスPd2に対応する印加電圧波形の劣化の抑制とを共に成立させることが可能となる。すなわち、第1駆動パルスPd1を含む第1駆動信号COM1については、抵抗値が相対的に高い第1駆動信号用信号線33を通じて圧電素子24側に送られることにより、高DUTY時における印加電圧波形のオーバーシュートやアンダーシュートが低減されるので、印加電圧波形の劣化が抑制される。一方、第2駆動パルスPd2を含む第2駆動信号COM2については、抵抗値が相対的に低い第2駆動信号用信号線34を通じて圧電素子24側に送られることにより、高DUTY時においてもエレキクロストークによる印加電圧波形の時間的な遅れが低減されるので、印加電圧波形の劣化が抑制される。これにより、同時に噴射が行われるノズル21の数(駆動状況)や噴射するインク滴のサイズ(ドットサイズ)によらず、ノズル21から噴射されるインク滴の飛翔速度や重量(噴射特性)が本来目標とする値から変動することが抑制される。すなわち、噴射特性を安定させることが可能となる。その結果、記録画像等において良好な画質を確保することが可能となる。また、本実施形態においては、FFC11における駆動信号用信号線33,34の導体の厚さを異ならせることにより、信号経路における抵抗値を容易に調整することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、基準抵抗値に対し、第1信号経路の抵抗値R1が大きく、第2信号経路の抵抗値R2が小さく設定された構成を例示したが、これには限られない。第1信号経路の抵抗値R1又は第2信号経路の抵抗値R2の何れか一方が基準抵抗値に揃えられ、他方が当該基準抵抗値と異なる構成を採用することもできる。すなわち、例えば、第1信号経路の抵抗値R1が基準抵抗値に揃えられる一方、第2信号経路の抵抗値R2がこれよりも低い構成を採用してもよい。又は、例えば、第2信号経路の抵抗値R2が基準抵抗値に揃えられる一方、第1信号経路の抵抗値R1がこれよりも高い構成を採用することもできる。
【0048】
また、上記第1実施形態では、各駆動パルスPd1,Pd2と信号経路(駆動信号用信号線33,34)とを一対一に対応させた構成を例示したがこれには限られず、駆動パルスPd1,Pd2のそれぞれに抵抗値の異なる複数の信号経路が設けられ、駆動状況に応じて信号経路が選択される構成を採用することも可能である。すなわち、例えば、第1駆動パルスPd1に対応する第1信号経路として、基準抵抗値に調整された信号経路(以下、基準信号経路という)と、基準抵抗値よりも高い抵抗値に調整された信号経路(以下、高DUTY用信号経路という)との2つの信号経路が設けられ、低DUTY時(例えば同時噴射を行うノズル数が全ノズル数の半数未満)には基準信号経路が選択される一方、高DUTY時では高DUTY用信号経路が選択されるようにしてもよい。同様に、第2駆動パルスPd2に対応する第2信号経路として、基準信号経路と、基準抵抗値よりも低い抵抗値に調整された高DUTY用信号経路との2つの信号経路が設けられ、低DUTY時には基準信号経路が選択される一方、高DUTY時では高DUTY用信号経路が選択されるようにしてもよい。さらに、各駆動パルスPd1,Pd2のそれぞれに抵抗値の異なる3つ以上の信号経路が設けられ、駆動状況に応じて信号経路が選択される構成を採用することも可能である。これにより、駆動状況に応じてより適切な抵抗値の信号経路を通じて駆動パルスを圧電素子24に供給することができる。その結果、駆動状況や噴射するインク滴の量(ドットサイズ)に拘わらず、第1駆動パルスPd1に対応する印加電圧波形の劣化と、第2駆動パルスPd2に対応する印加電圧波形の劣化とをより効果的に抑制することが可能となる。
【0049】
図10は、第2実施形態における信号経路について説明する模式図である。また、
図11は、本実施形態における信号経路選択制御について説明するフローチャートである。上記第1実施形態では、第1駆動パルスPd1と第2駆動パルスPd2とがそれぞれ異なる駆動信号COM1,COM2に含まれる構成を例示したが、これには限られない。本実施形態においては、第1駆動パルスPd1と第2駆動パルスPd2とが何れも同一の駆動信号COMに含まれ(互いに時間を異ならせて時間軸で重ならないように発生され)、ヘッドコントローラー12において当該駆動信号COMの中から噴射データに基づいて選択的に圧電素子24に印加されるように構成されている。また、本実施形態においては、駆動信号発生回路10とFFC11の駆動信号用信号線33,34との間に信号線選択スイッチ37が設けられている点で第1実施形態と相違している。なお、他の構成については第1実施形態と同様である。
【0050】
上記の信号線選択スイッチ37は、制御回路9により切替制御され、駆動信号発生回路10から発生される駆動信号COMを送るための信号線として第1駆動信号用信号線33と第2駆動信号用信号線34との何れか一方を選択するように構成されている。そして、制御回路9は、所定の印刷単位、例えば、印刷対象の記録媒体S毎、一連の印刷ジョブ毎、又は、記録ヘッド6の走査単位(パス)毎に、第1駆動パルスPd1と第2駆動パルスPd2のどちらがより多く使用されるか、すなわち、第1駆動パルスPd1により駆動される圧電素子24の数と第2駆動パルスPd2により駆動される圧電素子24の数とのどちらが多いかを噴射データに基づいて判定し(ステップS1)、当該判定結果に応じて信号線選択スイッチ37を切り替える制御を行う。すなわち、制御回路9は、噴射データに基づいて第1駆動パルスPd1がより多く使用されると判定した場合、信号線選択スイッチ37により第1駆動信号用信号線33に切り替える(ステップS2)。一方、制御回路9は、噴射データに基づいて第2駆動パルスPd2がより多く使用されると判定した場合、信号線選択スイッチ37により第2駆動信号用信号線34に切り替える(ステップS3)。この構成では、上記の所定の印刷単位において、いわゆるベタ印刷のように第1駆動パルスPd1又は第2駆動パルスPd2の何れか一方しか用いられないような駆動状況においては、使用される駆動パルスに対応する信号経路に対応する駆動信号用信号線が選択されることになる。
【0051】
このように、本実施形態においては、駆動状況に応じて各駆動パルスをより適切な抵抗値に調整された信号経路を通じて圧電素子24に供給することが可能となる。このため、第1実施形態と同様に高DUTY時における第1駆動パルスPd1に対応する印加電圧波形の劣化の抑制と、第2駆動パルスPd2に対応する印加電圧波形の劣化の抑制とを共に成立させることが可能となる。なお、本実施形態においても、抵抗値の異なる3つ以上の信号経路が設けられ、駆動状況に応じて信号経路が選択される構成を採用することも可能である。すなわち、本実施形態における第1駆動信号用信号線33及び第2駆動信号用信号線34の他に、例えば、上記の基準信号経路に相当する信号線が設けられる構成を採用することができる。この場合、低DUTY時には基準信号経路が選択され、高DUTY時では第1駆動パルスPd1と第2駆動パルスPd2の使用量に応じて第1駆動信号用信号線33又は第2駆動信号用信号線34の何れか一方が選択されるようにしてもよい。これにより、駆動状況に応じて各駆動パルスをさらに適切な抵抗値に調整された信号経路を通じて圧電素子24に供給することが可能となる。
【0052】
上記各実施形態においては、FFC11における駆動信号用信号線33,34の導体の厚さを変えることにより第1駆動パルスPd1に対応する第1信号経路における抵抗値R1と、第2駆動パルスPd2に対応する第2信号経路における抵抗値R2とを異ならせる構成を例示したが、これには限られない。例えば、駆動信号用信号線33,34の導体の厚さは一定に揃えられ、第1駆動信号用信号線33の長さが第2駆動信号用信号線34の長さよりも長くされる(すなわち、第2駆動信号用信号線34の長さが第1駆動信号用信号線33の長さよりも短くされる)ことにより、抵抗値R2が抵抗値R1よりも低い値(抵抗値R1が抵抗値R2よりも高い値)に調整されても良い。これにより、抵抗値を容易に調整することができる。
【0053】
また、FFC11の駆動信号用信号線の寸法による抵抗値の調整に限られず、例えば、プリンターコントローラー7側(駆動信号発生回路10)に設けられたダンピング抵抗により各信号経路の抵抗値を調整する構成を採用することもできる。これにより、抵抗値をより厳密に調整することが可能となる。また、プリンターコントローラー7が有する既存のダンピング抵抗により調整することにより、信号経路の抵抗値を調整するための別途の構成が不要となる。
【0054】
さらに、信号経路に可変抵抗器を設け、当該可変抵抗器により抵抗値を変更する構成を採用することも可能である。この構成によれば、駆動状況に応じてさらに適切な抵抗値に調整することが可能である。この場合、各駆動パルスPd1,Pd2と信号経路(駆動信号用信号線33,34)とを一対一に対応させた構成では、各信号経路に可変抵抗器を設けることにより、それぞれの信号経路において駆動状況に応じた抵抗値に調整することができる。また、各駆動パルスPd1,Pd2の信号経路が共通のものである構成では、当該信号経路に可変抵抗器を設けることにより、第1駆動パルスPd1と第2駆動パルスPd2の使用状況に応じて適切な抵抗値に調整することができる。
【0055】
また、第1駆動パルスPd1及び第2駆動パルスPd2の波形に関し、上記各実施形態で例示した波形には限られず、種々の波形の駆動パルスを採用する液体噴射装置に適用することができる。さらに、駆動パルスの種類についても例示した第1駆動パルスPd1及び第2駆動パルスPd2に限られず、3つ以上の駆動パルスを備える構成においても本発明を適用することができる。
【0056】
そして、本発明は、駆動パルスの印加によりアクチュエーターを駆動して制御が可能な液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。そして、ディスプレイ製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を噴射する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を噴射する。