(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受光層は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれかの材料からなるか、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む混晶からなるか、又は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む超格子からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は、SiN、SiO2、SiONのいずれかの材料からなるか、又は、SiN、SiO2、SiONのいずれか2種類以上を積層してなり、
前記第1絶縁膜は、少なくとも前記受光層の側面に接する領域がSiNからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外線検出器を1画素として複数の画素が前記第1絶縁膜を挟んで平面上に配列されている赤外線検出器アレイを備えることを特徴とする撮像素子。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる赤外線検出器及びその製造方法、撮像素子、撮像システムについて、
図1〜
図23を参照しながら説明する。
本実施形態にかかる赤外線検出器は、赤外線を検出する赤外線検出器であって、例えば、赤外線吸収層(受光層)に、InAsやGaSbなどのナローギャップ半導体からなる超格子構造やそれらの混晶を用いたもの、あるいは、タイプII超格子(Type II Superlattices:T2SL)を用いたものに好適の赤外線検出器である。
【0010】
本実施形態の赤外線検出器は、
図1に示すように、(111)B基板1の上方に設けられた第1電極層2と、第1電極層2上に設けられた第1絶縁膜3と、第1電極層2上に設けられた受光層4と、受光層4上に設けられた第2電極層5と、第2電極層5を覆う第2絶縁膜6とを備える。
なお、第1電極層2を第1コンタクト層又は下部電極層ともいう。また、第2電極層5を第2コンタクト層又は上部電極層ともいう。
【0011】
特に、第1絶縁膜3は、六角柱状の開口部3Xを有し、この六角柱状の開口部3Xに、側面が第1絶縁膜3に接する六角柱状の受光層4が設けられている(例えば
図21参照)。
ここで、六角柱状の開口部3Xは、(111)B基板1の表面に沿う方向の断面積が六角形状の開口部である。また、六角柱状の受光層4は、(111)B基板1の表面に沿う方向の断面積が六角形状の受光層である。
【0012】
これにより、暗電流の低減が可能となる。
つまり、まず、受光層4の側面(側壁表面)を流れる暗電流成分は、受光層4(画素)の周辺長Pと面積Aとの比に相関があり、次式で表される。
I
Surface∝P/A
このため、同じ断面積に対しては、周辺長の総和が小さいほど、受光層4の側壁表面を流れる暗電流成分は小さくなる。
【0013】
そこで、上述のように、受光層4の断面形状を四角形状ではなく、六角形状とすることで、受光層4で同じ断面積を得るのに必要な周辺長を約7%小さくすることができる。
これにより、受光層4の側壁表面を流れる暗電流成分(表面リーク電流)を低減することが可能となる。
また、上述のように、(111)B基板1、及び、第1絶縁膜3に設けられた六角柱状の開口部3Xを用いることで、後述するように、成膜によって、側面が第1絶縁膜3に接する六角柱状の受光層4を形成することが可能である。
【0014】
このため、エッチングによって受光層4を形成することが不要となり、受光層4の側壁表面におけるエッチングによるダメージや大気に晒されることによる酸化を抑制することが可能となる。
これにより、受光層4の側壁表面を流れる暗電流成分を低減することが可能となる。
ここで、(111)B基板1は、面指数が(111)Bの基板、即ち、面方位が(111)B面の基板である。
【0015】
本実施形態では、(111)B基板1は、InAs、GaSb、GaAs、InPのいずれかからなる。
第1電極層2及び第2電極層5は、受光層4を挟むように設けられており、(111)B基板1の上方に、第1電極層2、受光層4、第2電極層5が順に積層されて半導体積層体が構成されている。
【0016】
ここで、第1電極層2は、InAsからなるものとするのが好ましい。
第2電極層5は、InAs又はGaSbからなるものとするか、これらを積層したものとするのが好ましい。
受光層4は、光吸収層であって、ここでは、赤外線を吸収してキャリアを生成する赤外線吸収層である。
【0017】
本実施形態では、受光層4は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれかの材料からなるか、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む混晶からなるか、又は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む超格子からなる。
例えば、受光層4は、InAsやGaSbなどのナローギャップ半導体からなる超格子構造やそれらの混晶からなるものとすれば良い。また、例えば、GaSb基板上に、GaSb基板に格子定数の近いGaSb、InAs、AlSbなどの材料を用いて超格子構造を形成して受光層4とすることで、中赤外線(3〜5μm)、遠赤外線(8〜12μm)領域の赤外線を検出できるようになり、例えばセキュリティ分野などへの応用が可能となる。
【0018】
第1絶縁膜3は、少なくとも受光層4の側面を覆うように設けられていれば良い。
ここで、第1絶縁膜3及び第2絶縁膜6は、SiN、SiO
2、SiONのいずれかの材料からなるか、又は、SiN、SiO
2、SiONのいずれか2種類以上を積層してなるものとし、第1絶縁膜3は、少なくとも受光層4の側面に接する領域がSiNからなるものとするのが好ましい。
【0019】
本実施形態では、第1電極層2上に第1電極7が設けられており、第2電極層5上に第2電極8が設けられている。
また、
図2に示すように、受光層4は、(111)B基板1の表面に沿う方向の断面積が第2電極層5よりも小さくなっているものとしても良い。
上述のように構成される本実施形態の赤外線検出器は、以下のようにして製造することができる。
【0020】
つまり、本実施形態の赤外線検出器の製造方法は、(111)B基板1の上方に、第1電極層2を形成する工程と、第1電極層2上に、六角柱状の開口部3Xを有する第1絶縁膜3を形成する工程と、第1電極層2上、かつ、六角柱状の開口部3Xに、側面が第1絶縁膜3に接するように六角柱状の受光層4を形成する工程と、受光層4上に、第2電極層5を形成する工程と、第2電極層5を覆うように第2絶縁膜6を形成する工程とを含む(例えば
図1、
図2参照)。
【0021】
本実施形態では、上述の第2絶縁膜6を形成する工程の後に、第1電極層2及び第2電極層5の一部を露出させ、第1電極7及び第2電極8を形成する工程を含む(例えば
図1、
図2参照)。
ところで、上述のような構成及び製造方法を採用しているのは、以下の理由による。
赤外線検出器では、水銀カドミウムテルル(Mercury Cadmium Telluride:MCT)に変わる次世代の材料として、タイプII超格子(Type II Superlattices:T2SL)が期待されており、現在、盛んに研究されている。
【0022】
多くは、GaSb基板上に、GaSb基板に格子定数の近いGaSb、InAs、AlSbなどの材料を用いて超格子構造を形成し、それを赤外線吸収層(受光層)とすることで、中赤外線(3〜5μm)、遠赤外線(8〜12μm)領域の赤外線を検出できるようにし、例えばセキュリティ分野などへの応用を可能としている。
しかしながら、T2SLを用いた赤外線検出器では、暗電流の低減が課題となっている。
【0023】
ここで、赤外線検出器の暗電流I
dは、次式で表される。
I
d=I
Bulk+I
Surface
このように、赤外線検出器の暗電流I
dは、受光層の内部を流れるバルク成分I
Bulkと受光層の側壁表面を流れる成分I
Surfaceの和で表される。
赤外線検出器を高性能化するにあたり、受光層の側壁表面を流れる暗電流成分を低減する必要がある。
【0024】
しかしながら、従来は、エッチングなどによって受光層の一部を除去することで、受光層(画素)の断面形状を四角形状としている。
また、エッチングなどによって、受光層の側面に生成物や不純物が付着したり、プロセス過程で受光層の側面が大気に晒され、その表面が酸化したりすることによって、暗電流増大の原因となっている。
【0025】
なお、受光層の側面を絶縁膜でパッシベーションすることで、暗電流を低減することが試みられているが、有効な絶縁膜形成工程は確立されていない。
そこで、上述のような構成及び製造方法を採用している。
以下、本実施形態の赤外線検出器及びその製造方法について、具体例を挙げて、
図3〜
図10を参照しながら説明する。
【0026】
この具体例では、赤外線検出器は、
図3に示すように、n型GaSb(111)B基板1Aの上方にGaSbバッファー層9及びInAsSbエッチングストッパー層10を介してn型InAs第1電極層2Aを備える。
また、このn型InAs第1電極層2A上に、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜3Aを備え、さらに、n型InAs第1電極層2A上、かつ、六角柱状の開口部3Xに、側面がSiO
2第1絶縁膜3Aに接するように、InAsとGaSbの超格子からなる六角柱状の受光層4Aを備える。
【0027】
そして、受光層4A上にp型GaSb/n型InAs第2電極層5Aを備え、このp型GaSb/n型InAs第2電極層5Aを覆うSiO
2第2絶縁膜6Aを備える。
また、n型InAs第1電極層2Aとp型GaSb/n型InAs第2電極層5Aのそれぞれの表面に接するように第1電極7及び第2電極8を備え、それ以外の表面は、SiO
2第1絶縁膜3A及びSiO
2第2絶縁膜6Aで覆われている。
【0028】
このような構造を有する赤外線検出器は、以下のようにして製造することができる。
ここでは、n型GaSb(111)B基板1A上に、赤外線検出器を構成する半導体積層構造をエピタキシャル成長させる。
つまり、エピタキシャル成長層は、GaSbバッファー層9、InAsSbエッチングストッパー層10、n型InAs第1電極層2A、InAsとGaSbの超格子からなる受光層4A、p型GaSb/n型InAs第2電極層5Aで構成される。
【0029】
具体的には、赤外線検出器を構成する半導体積層構造の各層は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)によって形成する。
まず、n型GaSb(111)B基板1Aを、MBE装置の基板導入室の中に導入する。なお、n型GaSb(111)B基板1Aは、準備室において脱ガス処理される。
次に、超高真空に保持された成長室へ搬送する。
【0030】
成長室に搬送されたn型GaSb(111)B基板1Aは、表面の酸化膜を除去するために、Sb雰囲気下で加熱される。
このようにして酸化膜を除去した後、基板表面の平坦性を良くするために、
図4に示すように、n型GaSb(111)B基板1A上に、GaSbバッファー層9を、例えば基板温度約500℃で約100nm成長させる。
【0031】
次に、
図5に示すように、GaSbバッファー層9上に、InAsSbエッチングストッパー層10を、例えば約300nm成長させる。
この場合、InAsSb層の混晶組成は、GaSbに格子整合するように設定することが好ましい。例えば、InAs
0.91Sb
0.09である。
次に、
図5に示すように、例えばSiドーピングをした電子濃度が約1×10
18cm
−3のn型InAs第1電極層2Aを、例えば約30nm成長させる。
【0032】
次に、
図6、
図7に示すように、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜(SiO
2マスク)3Aを形成する。
つまり、n型InAs第1電極層2Aまでを成膜した基板1Aを、MBE装置から取り出し、
図6に示すように、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて、SiO
2膜3Aを例えば約1000nm形成する。
【0033】
次に、
図7に示すように、例えば電子線描画(Electron Lithography:EB)と、薬液などによるエッチングを行なうことによって、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜3Aを備えるテンプレート基板11を形成する。
次に、このテンプレート基板11を、再び、MBE装置の成長室に導入し、
図8に示すように、InAsとGaSbの超格子からなる六角柱状の受光層4Aを形成する。
【0034】
例えば、以下のように、キャリア濃度の異なる3種類の超格子を積層することによって受光層4Aを形成する。
つまり、まず、n型の超格子を形成する。
ここでは、電子濃度が約5×10
17cm
−3のn型InAsを約2.2nm、アンドープのGaSbを約2nm形成する。
【0035】
例えば、InAsを成膜する時、InとAsを交互に供給することによって、SiO
2第1絶縁膜3Aの六角柱状の開口部3XにのみInAsを形成することができる。また、(111)B基板1Aを用いているため、基板表面に垂直な側面を有し、側面がSiO
2第1絶縁膜3Aに接するように、六角柱状に成膜することが可能である。また、GaSbも同様に形成する。
【0036】
なお、InAsとGaSbの界面に、GaSb基板に格子整合するようにInSbを成膜しても良い。
ここでは、このようなInAsとGaSbの成膜を、例えば約200nmの厚さになるまで繰り返す。
次いで、i型の超格子を形成する。
【0037】
ここでは、アンドープのInAs、GaSbを、それぞれ、約2.2nm、約2nm形成する。
成膜方法は、n型超格子の場合と同様とすれば良い。
ここでは、このようなInAsとGaSbの成膜を、例えば約600nmの厚さになるまで繰り返す。
【0038】
次いで、p型の超格子を形成する。
ここでは、アンドープのInAsを約2.2nm、正孔濃度が約5×10
17cm
−3のp型GaSbを約2nm形成する。
成膜方法は、n型超格子の場合と同様とすれば良い。
ここでは、このようなInAsとGaSbの成膜を、例えば約200nmの厚さになるまで繰り返す。
【0039】
次に、
図9に示すように、p型GaSb/n型InAs第2電極層5Aを形成する。
ここでは、正孔濃度が約1×10
18cm
−3のp型GaSbを約100nm形成し、次いで、電子濃度が約1×10
18cm
−3のn型InAsを約30nm形成する。成膜方法はn型超格子の場合と同様とすれば良い。
なお、ここでは、テンプレート基板11の第1絶縁膜3Aの膜厚と同程度の膜厚になるように受光層4Aを形成し、その上に第2電極層5Aを形成しており、第2電極層5Aの全部が第1絶縁膜3Aの上面よりも上側に位置しているが、これに限られるものではない。
【0040】
例えば、テンプレート基板11の第1絶縁膜3Aの膜厚よりも薄く受光層4Aを形成し、その上に第2電極層5Aを形成して、第2電極層5Aの一部が第1絶縁膜3Aの上面よりも上側に位置するようにしても良い。
また、ここでは、六角柱状の受光層4Aの上に、基板1Aの表面に沿う方向の断面積が受光層4Aと同程度の六角柱状の第2電極層5Aを形成しているが、これに限られるものではなく、六角柱状の受光層4Aの上に、基板1Aの表面に沿う方向の断面積が受光層4Aよりも大きい六角柱状の第2電極層5Aを形成しても良い(例えば
図2参照)。
【0041】
次に、
図10に示すように、p型GaSb/n型InAs第2電極層5Aを覆うように、SiO
2第2絶縁膜6Aを形成する。
次に、
図10に示すように、マスクを用いたエッチングによって、n型InAs第1電極層2Aの一部及びp型GaSb/n型InAs第2電極層5Aの一部が露出するように、SiO
2第1絶縁膜3A及びSiO
2第2絶縁膜6Aを選択的にエッチングし、例えばTi/Pt/Auからなる第1電極7及び第2電極8を形成する。
【0042】
この際、受光層4Aの側面が露出しないように選択的にエッチングすることで、受光層4Aの側面の汚染や酸化を防ぐことができる。
このようにして、赤外線検出器を製造することができる。
上述のように構成され、このようにして製造される赤外線検出器によれば、受光層4A(画素)の断面形状が六角形であるため、一般的な画素形状である四角形に比べて、同じ画素面積に対して、画素周辺長が小さくなる。このため、受光層4Aの側壁表面を流れる暗電流を低減することができる。
【0043】
また、受光層4A(画素)を成膜によって柱状に形成することが可能であるため、エッチングによって受光層4A(画素)を形成する工程が不要となり、少なくとも受光層4Aの側壁表面のエッチングによるダメージや大気に晒されることによる酸化を抑制できる。これにより、受光層4Aの側壁表面を流れる暗電流成分が低減することが可能となる。
なお、この具体例の構成は、効果が得られる範囲で適宜変更しても良い。
【0044】
例えば、この具体例では、受光層4AをInAsとGaSbの超格子としているが、吸収波長に応じて各層の厚さを適宜変更しても良い。また、超格子はInAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2つ以上から構成されていても良い。また、赤外領域に応答する材料であれば、これらの混晶から受光層4Aが構成されていても良い。例えばInAs
1−aSb
a(0≦a≦1)であっても良い。
【0045】
また、第1電極層2AはInAsとしているが、GaSbであっても良い。
但し、自然酸化膜の取り扱いやすさの点では、InAsの方が好ましい。つまり、第1電極層2A上に、六角柱状の開口部3Xを有する第1絶縁膜3Aを形成するためにエッチングを行なう際に、第1電極層2Aの表面に自然酸化膜が形成されると、これがリーク電流を増加させる要因となるが、InAsは自然酸化膜が形成されにくいため、InAsを用いるのが好ましい。
【0046】
また、テンプレート基板11上に受光層4Aを成長する前に、テンプレート基板11の開口部3Xの第1電極層2Aの表面の自然酸化膜を除去した後、受光層4Aを成膜する前に、第1電極層2Aと同じ材料を成膜して表面を平坦化しても良い。
また、ドーピングする不純物をSiやBeとしているが、これら以外であっても良い。例えばn型不純物としてTeを用いても良い。
【0047】
また、赤外線検出器を構成する半導体積層構造の積層方法をMBE法としているが、例えばMOCVD法やその他の積層構造が作製可能な方法であっても良い。
また、赤外線検出器の構造をpin型としているが、i層がn型又はp型になっていても良い。
また、赤外線検出器の構造において、エッチングストッパー層10はなくても良い。また、基板1Aやバッファー層9が除去されていても良い。
【0048】
ところで、暗電流を抑制するために、受光層4と第2電極層5との間及び受光層4と第1電極層2との間の少なくとも一方に、バリア層12を備えるものとしても良い(例えば
図11参照)。
例えば、
図11に示すように、受光層4Bと第2電極層5Bとの間にバリア層12が挿入されていても良い。これを第1変形例という。
【0049】
この第1変形例では、赤外線検出器は、n型InAs(111)B基板1Bの上方にInAsバッファー層9Aを介してn型InAs第1電極層2Aを備える。
また、このn型InAs第1電極層2A上に、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜3Aを備え、さらに、n型InAs第1電極層2A上、かつ、六角柱状の開口部3Xに、側面がSiO
2第1絶縁膜3Aに接するように、InAsからなる六角柱状の受光層4Bを備える。
【0050】
そして、受光層4B上にアンドープAlAsSbバリア層12A及びn型InAs第2電極層5Bを備え、これらのアンドープAlAsSbバリア層12A及びn型InAs第2電極層5Bを覆うSiO
2第2絶縁膜6Aを備える。
また、n型InAs第1電極層2Aとn型InAs第2電極層5Bのそれぞれの表面に接するように第1電極7及び第2電極8を備え、それ以外の表面は、SiO
2第1絶縁膜3A及びSiO
2第2絶縁膜6Aで覆われている。
【0051】
このような構造を有する赤外線検出器は、以下のようにして製造することができる。
ここでは、n型InAs(111)B基板1B上に、赤外線検出器を構成する半導体積層構造をエピタキシャル成長させる。つまり、エピタキシャル成長層は、InAsバッファー層9A、n型InAs第1電極層2A、InAsからなる受光層4B、アンドープAlAsSbバリア層12A、n型InAs第2電極層5Bで構成される。
【0052】
具体的には、赤外線検出器構造を構成する半導体積層構造の各層は、例えば、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)によって形成する。
まず、n型InAs(111)B基板1Bを、MBE装置の基板導入室の中に導入する。なお、n型InAs(111)B基板1Bは、準備室において脱ガス処理される。
次に、超高真空に保持された成長室へ搬送する。
【0053】
成長室に搬送されたn型InAs(111)B基板1Bは、表面の酸化膜を除去するために、As雰囲気下で加熱される。
このようにして酸化膜を除去した後、基板表面の平坦性を良くするために、
図12に示すように、n型InAs(111)B基板1B上に、InAsバッファー層9Aを、例えば基板温度約500℃で約100nm成長させる。
【0054】
次に、
図13に示すように、InAsバッファー層9A上に、例えばSiドーピングをした電子濃度が約1×10
18cm
−3のn型InAs第1電極層2Aを、例えば約300nm成長させる。
次に、
図14、
図15に示すように、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜3Aを形成する。
【0055】
つまり、n型InAs第1電極層2Aまでを成膜した基板1Bを、MBE装置から取り出し、
図14に示すように、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて、SiO
2膜3Aを例えば約1000nm形成する。
次に、
図15に示すように、例えば電子線描画(Electron Lithography:EB)と、薬液などによるエッチングを行なうことによって、六角柱状の開口部3Xを有するSiO
2第1絶縁膜3Aを備えるテンプレート基板11Aを形成する。
【0056】
次に、このテンプレート基板11Aを、再び、MBE装置の成長室に導入し、
図16に示すように、InAsからなる六角柱状の受光層4Bを形成する。ここでは、Siをドーピングした電子濃度が約2×10
16cm
−3のn型InAsを約1000nm形成する。
この場合、例えば、InとAsを交互に供給することによって、SiO
2第1絶縁膜3Aの六角柱状の開口部3XにのみInAsを形成することができる。
【0057】
また、(111)B基板1Bを用いているため、基板表面に垂直な側面を有し、側面がSiO
2第1絶縁膜3Aに接するように、六角柱状に成膜することが可能である。
次に、
図17に示すように、アンドープAlAsSbバリア層12Aを形成する。ここでは、アンドープAlAs
0.15Sb
0.85層を約100nm形成する。成膜方法は、受光層4Bの場合と同様にすれば良い。
【0058】
次に、
図18に示すように、n型InAs第2電極層5Bを形成する。ここでは、Siをドーピングした電子濃度が約1×10
18cm
−3のn型InAsを約100nm形成する。成膜方法は受光層4Bの場合と同様とすれば良い。
なお、ここでは、テンプレート基板11Aの第1絶縁膜3Aの膜厚と同程度の膜厚になるように受光層4Bを形成し、その上にバリア層12A及び第2電極層5Bを形成しており、バリア層12A及び第2電極層5Bの全部が第1絶縁膜3Aの上面よりも上側に位置しているが、これに限られるものではない。
【0059】
例えば、テンプレート基板11Aの第1絶縁膜3Aの膜厚よりも薄く受光層4Bを形成し、その上にバリア層12A及び第2電極層5Bを形成して、第2電極層5Bの一部あるいは第2電極層5B及びバリア層12Aの一部が第1絶縁膜3Aの上面よりも上側に位置するようにしても良い。
また、ここでは、六角柱状の受光層4Bの上に、基板1Bの表面に沿う方向の断面積が受光層4Bと同程度の六角柱状のバリア層12A及び第2電極層5Bを形成しているが、これに限られるものではなく、六角柱状の受光層4Bの上に、基板1Bの表面に沿う方向の断面積が受光層4Bよりも大きい六角柱状のバリア層12A及び第2電極層5Bを形成しても良い。
【0060】
次に、
図19に示すように、アンドープAlAsSbバリア層12A及びn型InAs第2電極層5Bを覆うように、SiO
2第2絶縁膜6Aを形成する。
次に、マスクを用いたエッチングによって、n型InAs第1電極層2Aの一部及びn型InAs第2電極層5Bの一部が露出するように、SiO
2第1絶縁膜3A及びSiO
2第2絶縁膜6Aを選択的にエッチングし、例えばTi/Pt/Auからなる第1電極7及び第2電極8を形成する。
【0061】
このようにして、赤外線検出器を製造することができる。
なお、この第1変形例の構成は、効果が得られる範囲で適宜変更しても良い。
例えば、この第1変形例では、受光層4をInAsからなるものとしているが、これに限られるものではなく、受光層4は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれかの材料からなるものとすれば良い。また、受光層4は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2つ以上から構成される超格子としても良い。また、赤外領域に応答する材料であれば、これらの混晶から受光層4が構成されていても良い。例えばInAs
1−aSb
a(0≦a≦1)であっても良い。
【0062】
また、ドーピングする不純物をSiとしているが、Si以外であっても良い。例えばn型不純物としてTeを用いても良い。
また、赤外線検出器を構成する半導体積層構造の積層方法をMBE法としているが、例えばMOCVD法やその他の積層構造が作製可能な方法であっても良い。
また、赤外線検出器の構造をpin型としても良い。
【0063】
また、赤外線検出器の構造において、エッチングストッパー層を挿入しても良い。また、基板1Bやバッファー層9Aが除去されていても良い。
ところで、上述の具体例及び第1変形例では、第1絶縁膜3(3A)及び第2絶縁膜6(6A)をSiO
2膜としているが、これに限られるものではない。
例えば、
図20に示すように、第1絶縁膜3をSiN膜3Bとし、第2絶縁膜6をSiO
2膜6Aとしても良い。これを第2変形例という。この第2変形例では、上述の第1変形例のものにおいて、第1絶縁膜3をSiN膜3Bとしている。
【0064】
ここでは、テンプレート基板11Bに、六角柱状の開口部3XAを有するSiN第1絶縁膜3B及びSiO
2第2絶縁膜6Aの一部6AXを形成する。
つまり、まず、例えば化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて、SiN膜3Bを約1000nm形成する。次いで、SiO
2膜6AXを約100nm形成する。
【0065】
次いで、例えば電子線描画(Electron Lithography:EB)と、薬液などによるエッチングを行なうことによって、六角柱状の開口部3XAを有するSiN第1絶縁膜3B及びSiO
2第2絶縁膜6Aの一部6AXを備えるテンプレート基板11Bを形成する。
このようなテンプレート基板11Bを用いる場合、テンプレート基板11BのSiN第1絶縁膜3Bの膜厚と同程度の膜厚になるように受光層4(ここではInAsからなる受光層4B)を形成し、その上にテンプレート基板11BのSiO
2第2絶縁膜6Aの一部6AXの膜厚と同程度の膜厚になるようにバリア層12(ここではアンドープAlAsSbバリア層12A)を形成し、その上に第2電極層5(ここではn型InAs第2電極層5B)を形成した後、第2電極層5を覆うようにSiO
2第2絶縁膜6Aの残りの部分6AYを形成することになる。この場合、SiO
2第2絶縁膜6A(6AX,6AY)はバリア層12(12A)及び第2電極層5(5B)を覆うことになる。
【0066】
このようなテンプレート基板11Bを用いることによって、受光層4(4B)の側壁表面がSiN膜3Bによって保護されるため、受光層4(4B)の側壁表面の酸化が抑制されることが期待され、その結果、受光層4(4B)の側壁表面を流れる暗電流を低減することが可能となる。
なお、この第2変形例の構成は、上述の第1変形例の場合と同様に、効果が得られる範囲であれば適宜変更しても良い。
【0067】
例えば、テンプレート基板11Bの絶縁膜は、SiN膜とSiON膜によって形成されても良い。また、例えば、上述の具体例のものにおいて、第1絶縁膜3をSiN膜としても良い。
ところで、例えば
図21、
図22に示すように、上述のように構成される赤外線検出器20を1画素として、複数の画素を平面上に配列して撮像素子(赤外線撮像素子)21を構成することができる。
【0068】
なお、
図21、
図22では、上述の第2変形例の赤外線検出器を適用した場合を例示しており、
図21中、拡大して示している部分は、受光層4が設けられている部分の基板の表面に沿う方向の断面を示している。
つまり、上述のように構成される赤外線検出器20を1画素として複数の画素が第1絶縁膜3(3B)を挟んで平面上に配列されている赤外線検出器アレイ22を備えるものとして、撮像素子21を構成することができる。
【0069】
この場合、赤外線検出器アレイ22は、各画素を構成する赤外線検出器20が、第1絶縁膜3(3B)によって分離され、平面上に配列されているものとなる。
ここで、複数の画素20は、
図21に示すように、ハニカム状に配列されていることが好ましい。これにより、各画素20を密に配列することができ、高精細な赤外線検出器アレイ22(赤外線撮像素子21)を実現することができる。
【0070】
なお、複数の画素20は、平面上に2次元に配列されていれば良く、ハニカム状に配列されていなくても良い。例えば、マス目状に縦方向及び横方向に並べて配列されているものとしても良いし、ランダムに配列されているものとしても良い。
本実施形態では、
図21、
図22に示すように、撮像素子21は、赤外線検出器アレイ22に接続され、駆動回路及び読出回路を含むチップ23を備える。
【0071】
ここでは、例えば
図22に示すように、上述のように構成される赤外線検出器20に備えられる第1電極層2(2A)を、全画素20に共通の共通電極層とし、第1電極7を、赤外線検出器アレイ22の周辺部、即ち、複数の画素20が配列されている領域の周辺部に設けて共通電極としている。
そして、各画素を構成する赤外線検出器20に備えられる第2電極8に表面配線24(金属配線)で接続されたバンプ25(出力電極;ここではInバンプ)を介して、駆動回路及び読出回路を含むチップ23を接続し、また、共通電極としての第1電極7に表面配線26(金属配線)で接続されたバンプ27(共通電極;ここではInバンプ)を介して、駆動回路及び読出回路を含むチップ23を接続している。
【0072】
ところで、上述のように構成される撮像素子21を備えるものとして、撮像システム(赤外線撮像システム)を構成することができる。
例えば
図23に示すように、撮像システム30を、上述のように構成される撮像素子21を含むセンサ部31と、これに接続された制御演算部32と、表示部33とを備えるものとし、センサ部31に入射した赤外線を基にした画像が表示部33に表示されるようにすれば良い。
【0073】
この場合、撮像システム30は、上述のように構成される撮像素子21と、撮像素子21に接続された制御演算部32とを備えるものとして構成されることになる。
したがって、本実施形態にかかる赤外線検出器及びその製造方法、撮像素子、撮像システムによれば、受光層4の側面を流れる暗電流を低減し、赤外線検出器の性能を向上させることができるという効果を有する。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
以下、上述の実施形態に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
(111)B基板の上方に設けられた第1電極層と、
前記第1電極層上に設けられ、六角柱状の開口部を有する第1絶縁膜と、
前記第1電極層上、かつ、前記六角柱状の開口部に設けられ、側面が前記第1絶縁膜に接する六角柱状の受光層と、
前記受光層上に設けられた第2電極層と、
前記第2電極層を覆う第2絶縁膜とを備えることを特徴とする赤外線検出器。
【0075】
(付記2)
前記受光層は、前記(111)B基板の表面に沿う方向の断面積が前記第2電極層よりも小さいことを特徴とする、付記1に記載の赤外線検出器。
(付記3)
前記受光層と前記第2電極層との間及び前記受光層と前記第1電極層との間の少なくとも一方に、バリア層を備えることを特徴とする、付記1又は2の赤外線検出器。
【0076】
(付記4)
前記受光層は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれかの材料からなるか、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む混晶からなるか、又は、InAs、InSb、GaSb、AlSbのいずれか2種類以上を含む超格子からなることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
【0077】
(付記5)
前記第1電極層は、InAsからなることを特徴とする、付記1〜4のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
(付記6)
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は、SiN、SiO
2、SiONのいずれかの材料からなるか、又は、SiN、SiO
2、SiONのいずれか2種類以上を積層してなり、
前記第1絶縁膜は、少なくとも前記受光層の側面に接する領域がSiNからなることを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
【0078】
(付記7)
前記(111)B基板は、InAs、GaSb、GaAs、InPのいずれかからなることを特徴とする、付記1〜6のいずれか1項に記載の赤外線検出器。
(付記8)
付記1〜7のいずれか1項に記載の赤外線検出器を1画素として複数の画素が前記第1絶縁膜を挟んで平面上に配列されている赤外線検出器アレイを備えることを特徴とする撮像素子。
【0079】
(付記9)
前記複数の画素は、ハニカム状に配列されていることを特徴とする、付記8に記載の撮像素子(21)。
(付記10)
前記赤外線検出器アレイに接続され、駆動回路及び読出回路を含むチップを備えることを特徴とする、付記8又は9に記載の撮像素子。
【0080】
(付記11)
付記8〜10のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子に接続された制御演算部とを備えることを特徴とする撮像システム。
(付記12)
(111)B基板の上方に、第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、六角柱状の開口部を有する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1電極層上、かつ、前記六角柱状の開口部に、側面が前記第1絶縁膜に接するように六角柱状の受光層を形成する工程と、
前記受光層上に、第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層を覆うように第2絶縁膜を形成する工程とを含むことを特徴とする赤外線検出器の製造方法。