(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)スキャナーの構成:
(2)しわ低減処理:
(3)他の実施形態:
【0013】
(1)スキャナーの構成:
図1は、本発明の実施形態にかかる画像処理装置として機能するスキャナー1の構成を示すブロック図である。スキャナー1は、コントローラー10と、メモリー20と、UI(User Interface)部30と、通信部40と、画像読取部50とを備える。
【0014】
UI部30は、タッチパネル式のディスプレイやキー入力部を含む。ディスプレイは、表示パネルと、表示パネルに重ねられたタッチ検出パネルとを備える。ディスプレイは、コントローラー10の制御に基づいて様々な情報を表示パネルに表示する。また、ディスプレイはタッチ検出パネルに対する人の指等による接触を検出し、接触座標をコントローラー10に出力する。キー入力部は、電源ボタンやスタートボタン、キャンセルボタン、数字ボタン等のキーに対する操作を検出すると操作されたキーを示すキー操作情報をコントローラー10に出力する。
【0015】
通信部40は、リムーバブルメモリーや、外部の機器と各種の通信プロトコルに従って通信するための通信インターフェース回路を含む。画像読取部50は、原稿に発光し原稿からの反射光を受光して読み取りデータとする周知のカラーイメージセンサーや光源、原稿台、機械部品等を備えている。本実施形態において、画像読取部50は、R(レッド)、G(グリーン),B(ブルー)の各色チャネルの階調を示すデータとして画像を読み取る。
【0016】
コントローラー10は、画像読取部50から当該データを取得し、メモリー20に読取画像データ20aとして記録する。メモリー20には、任意のデータを記録可能であり、本実施形態においては、しわ低減処理に利用される輝度補正テーブル20bも記録される。
【0017】
コントローラー10は、UI部30から取得した上記の情報に基づいて利用者の操作内容を取得することができ、当該操作内容に対応する処理を実行することができる。コントローラー10が実行可能な処理には種々の処理が含まれ、例えば、画像読取部50における読み取りの指示やしわ低減処理を伴う読み取りの指示、読み取った画像をリムーバブルメモリーや外部の機器に送信する指示等が含まれる。むろん、スキャナー1は、スキャナー1に接続された外部の機器(例えば、他のコンピューターや携帯端末等)に制御されても良い。
【0018】
コントローラー10は、CPU,RAM等を備え、メモリー20に記録された種々のプログラムを実行することによって、スキャナー1の各機能を実現する。コントローラー10が実行する種々のプログラムには、画像読取部50で読み取った読取画像にしわ低減処理を実行する機能をコントローラー10に実現させるためのスキャン制御プログラム11が含まれる。
【0019】
スキャン制御プログラム11は、読取部11aと、抽出部11bと、処理部11cとを備えている。読取部11aは、原稿を読み取って読取画像を生成する機能をコントローラー10に実行させるプログラムモジュールである。すなわち、コントローラー10は、読取部11aの機能により、画像読取部50を制御し、スキャナー1の原稿台に置かれた原稿を読み取って読取画像を取得する。取得された読取画像は読取画像データ20aとしてメモリー20に記録される。
【0020】
抽出部11bは、読取画像からしわの上に模様がある第1領域と、しわがあり模様がない第2領域とを抽出する機能をコントローラー10に実行させるプログラムモジュールである。また、処理部11cは、第1領域においてしわを低減させず、第2領域においてしわを低減させるしわ低減処理を行う機能をコントローラー10に実行させるプログラムモジュールである。
【0021】
しわは原稿台上で原稿が原稿台に垂直な方向に対して凹凸を有することによって形成され、読取画像においては、地色よりも明るい部分と、当該部分に隣接した地色よりも暗い部分として現れる。
図2は、しわが発生した状態での原稿の読み取りを模式的に示す図である。
図2においては、原稿の状態と当該原稿の読取画像と読取画像での輝度を左から順に並べて示している。また、ここでは、原稿台がx−y平面に平行であり、x方向が主走査方向、y方向が副走査方向であることが想定されている。従って、原稿のしわがx−y平面に垂直なz方向に生じる。
図2においては、z軸の正方向にしわC
1、z軸の負方向にしわC
2が生じている例が示されている。
【0022】
図2に示す例において、光源はz軸の正方向、y軸の正方向に向いており、光源からの光Lの光軸はx−y平面に傾斜している。光源からの光が原稿で反射や散乱することによって図示しないセンサーに読み取られるが、しわが生じている領域としわが生じていない領域とでは原稿面と光軸との角度が異なる。このため、原稿の同じ色の部分であっても、しわが生じている領域としわが生じていない領域とで異なる色(主に輝度)として画像が読み取られる。
【0023】
具体的には、しわによって光軸の方向と原稿面との交差角が大きくなると明るくなり、しわによって光軸の方向と原稿面との交差角が小さくなると暗くなる。
図2に示す読取画像および輝度は、このような明暗が生じたことを模式的に示している。すなわち、しわC
1においては、原稿がz軸正方向に凸であるため、y軸正方向への移動とともにしわによって光軸の方向と原稿面との交差角が小さくなった後、しわによって光軸の方向と原稿面との交差角が大きくなる。この結果、
図2に示す読取画像においては、しわC
1の部分においてy軸正方向への移動とともに輝度が地色より徐々に暗くなり、その後一旦明るくなった後、徐々に地色の輝度に向けて輝度が変化していく。
【0024】
しわC
2においては、原稿がz軸負方向に凸であるため、y軸正方向への移動とともにしわによって光軸の方向と原稿面との交差角が大きくなった後、しわによって光軸の方向と原稿面との交差角が小さくなる。この結果、
図2に示す読取画像においては、しわC
2の部分においてy軸正方向への移動とともに輝度が地色より徐々に明るくなり、一旦暗くなった後、徐々に地色の輝度に向けて輝度が変化していく。
【0025】
なお、
図2に示す例においては、しわC
2によって光軸の方向と原稿面との交差角が大きくなる部位に文字Ch(Helloの文字)が印字されている。従って、読取画像においては明るい部分に当該文字が含まれており、しわC
2の部分の輝度において当該文字の部分の輝度は周囲より暗くなっている。
図2の読取画像においては、Helloの文字を強調しているが、ここでは文字Chが薄い文字(高輝度の文字)であることを想定する。すなわち、
図2に示すようにしわC
2に含まれる文字の部分において輝度が暗くなっているが、輝度の値自体は周囲の地色と比較して大差ない値である。
【0026】
以上のように、しわが生じていると読取画像に明暗が生じるため、しわによって生じた明るい部分を暗くする補正によってしわが除去される。しかし、しわに文字が印刷されている場合には、上述のように文字の部分が暗くなるため、明るい部分を一律に暗くしてしまうと、文字が判読不能になってしまう。そして、しわが生じている場合において、一般的には、暗い部分がしわに起因して暗い状態になっているのか、文字によって暗くなっているのか判定困難である。一方、しわが生じている場合において、地色より明るい部分はほとんどの場合がしわであると見なすことが可能である。
【0027】
そこで、本実施形態において、コントローラー10は、しわがあり模様がない領域において、原稿の地色よりも高輝度の部分のみを暗く補正する処理を行うことにより、しわ低減処理を実施する。この構成によれば、文字等の模様を地色に同化させることなくしわを低減する処理を行うことができる。
【0028】
なお、本実施形態において、コントローラー10は、読取画像の勾配に基づいて第1領域と第2領域とを区別する。すなわち、コントローラー10は、読取画像データ20aを取得し、読取画像の勾配を画素毎に特定する。そして、コントローラー10は、勾配が第1の閾値以上である領域を第1領域とみなし、しわ低減処理を適用しない。また、コントローラー10は、勾配が第2の閾値以下である領域を第2領域とみなし、しわ低減処理を適用する。さらに、コントローラー10は、勾配が第2閾値よりも大きく、第1閾値よりも小さい領域を第1領域と第2領域の境界とみなし、しわの低減量を徐々に変化させる。以上の構成によれば、模様を消すことなくしわによる明暗の変動を低減することができ、さらに、補正の影響を目立たなくさせることができる。
【0029】
(2)しわ低減処理:
次に、上述の構成におけるしわ低減処理を詳細に説明する。
図3はしわ低減処理を示すフローチャートである。当該しわ低減処理は、例えば、利用者がUI部30を操作してしわ低減処理を伴う読み取りを行うように指示した場合において、コントローラー10が読取部11aの機能によって原稿を読み取り、読取画像データ20aがメモリー20に記録された状態で開始される。
【0030】
しわ低減処理が開始されると、コントローラー10は、抽出部11bの機能により、読取画像のRGB色チャネルをYUV色チャネルに変換する(ステップS100)。すなわち、コントローラー10は、メモリー20から読取画像データ20aを取得し、各画素の色を表現する色空間を変換する。RGB色チャネルのYUV色チャネルへの変換は、種々の手法によって実施されて良く、例えば、
Y=(R+2×G+B+2)/4
U=(B−G+1)/2+127
Y=(R−G+1)/2+127
等の式によって変換可能である。ここで、Rは赤チャネルの階調値、Gは緑チャネルの階調値、Bは青チャネルの階調値であり、Yは輝度である。
【0031】
次に、コントローラー10は、処理部11cの機能により、輝度補正テーブルを算出する(ステップS200)。ここで、輝度補正テーブルは、原稿の地色よりも高輝度の部分のみを暗く補正するための変換テーブルである。当該輝度補正テーブルを算出するため、コントローラー10は、まず、原稿の地色を取得する。具体的には、コントローラー10は、特定の輝度より高輝度の領域における読取画像の輝度ヒストグラムを取得する。ここで、特定の輝度は、地色を誤検出しないように予め決められた輝度であり、文字等の暗い部分を排除するために設定された輝度である。
【0032】
すなわち、原稿の地色は、文字等のオブジェクトの背景であるため、一般的には輝度ヒストグラムにおいて度数が大きい輝度である。しかし、原稿の多くの部分に文字等の暗いオブジェクトが印刷されていると、当該暗いオブジェクトの画素の度数が大きくなる。従って、輝度範囲の全域にわたる輝度ヒストグラムにおいて度数の大きい輝度を地色と見なすなどの解析を行うと、地色を誤検出する可能性がある。
【0033】
図4は、読取画像の輝度ヒストグラムの一例である。
図4に示す輝度ヒストグラムにおいて、輝度分布は高輝度側と低輝度側に計2個のピークを有している。このような輝度分布では、多くの場合、高輝度側のピークが原稿の地色の輝度、低輝度側のピークが文字等のオブジェクトの輝度に該当する。そこで、コントローラー10は、例えば、輝度範囲の中央の値Ycを特定の輝度とし、少なくとも、当該特定の輝度以上の輝度範囲における輝度ヒストグラムを取得する。そして、コントローラー10は、特定の輝度より高輝度の領域における輝度ヒストグラムの統計値を取得し、統計的に度数が大きい輝度を地色として取得する。なお、本実施形態においては、最頻値を地色として取得する。
図4においては、輝度の最頻値であり、地色の輝度と見なされる輝度をY
BGとして示している。
【0034】
地色の輝度が特定されると、コントローラー10は、地色よりも高輝度の部分の画素の輝度を補正するための輝度補正テーブルを算出する。具体的には、コントローラー10は、原稿の地色の輝度から輝度の最大値(本実施形態では255)の範囲における輝度の標準偏差Ysを式(1)〜(3)に基づいて算出する。
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、Yは輝度、Nは原稿の地色の輝度から輝度の最大値までの範囲に輝度が含まれる画素の数であり、n(Y)は輝度ヒストグラムである。また、輝度Y
BGは地色の輝度であり、Y
Uは地色の輝度から輝度の最大値までの範囲に輝度が含まれる画素による平均輝度であり、Y
Vは輝度分散である。従って、標準偏差Ysは(Y
V)
1/2である。
【0035】
標準偏差Ysが取得されると、コントローラー10は、原稿の地色の輝度Y
BGから高輝度側に当該標準偏差Ysの範囲を第1輝度範囲として設定する。また、コントローラー10は、第1輝度範囲の上限値から輝度の最大値までの輝度範囲を第2輝度範囲として設定する。輝度範囲が設定されると、コントローラー10は、各輝度範囲における輝度の変換関係を定義することで輝度補正テーブルを算出する。
【0036】
具体的には、コントローラー10は、第1輝度範囲より小さい輝度範囲においては変換が行われない(変換前後の輝度値が等しい)輝度補正テーブルを算出する。
図5においては、輝度補正テーブルの例を示している。当該
図5において横軸は変換前の入力輝度Y、縦軸は変換後の出力輝度Y'を示しており、輝度補正テーブルによる変換特性を太い実線によって示している。また、
図5において、第1輝度範囲より小さい輝度範囲は範囲Z
0であり、当該
図5において傾き1の直線で示すように、範囲Z
0において入力輝度Yと出力輝度Y'は等しい。
【0037】
さらに、コントローラー10は、第1輝度範囲に属する画素に対して、補正前の輝度の上昇とともに補正後の輝度が地色の輝度Y
BGから地色の輝度より暗い飽和輝度Y
MAXまで変化する第1輝度補正が行われるように、輝度補正テーブルを算出する。本実施形態においては、
図5に示すように、入力輝度Yが輝度Y
BG〜Y
BG+Ysの第1輝度範囲Z
1において、出力輝度Y'が輝度Y
BG〜Y
MAXまで直線的に減少する特性の輝度補正テーブルが生成される。なお、本実施形態において、
図5に示すグラフにおいて第1輝度範囲Z
1における入出力特性の傾きは−1である。従って、第1輝度範囲Z
1において、出力輝度Y'は式Y'=Y
BG−(Y−Y
BG)で表現される。むろん、傾きは負であれば良く、−1より小さくても良いし大きくても良い。また、輝度変化は直線的な変化に限定されず、曲線的な変化であっても良い。
【0038】
さらに、コントローラー10は、第2輝度範囲Z
2に属する画素に対して、補正前の輝度に関わらず補正後の輝度を飽和輝度Y
MAXに変化させる第2輝度補正が行われるように、輝度補正テーブルを算出する。本実施形態においては、
図5に示すように、入力輝度Yが輝度Y
BG+Ys〜255の第2輝度範囲Z
2において、出力輝度Y'が飽和輝度Y
MAXである特性の輝度補正テーブルが生成される。なお、本実施形態においては、第1輝度範囲Z
1と第2輝度範囲Z
2とが連続した範囲であり、第1輝度範囲Z
1における入出力特性の傾きは−1である。従って、本実施形態においてY
MAXはY
BG−Ysであるが、むろん、Y
MAXはこの値に限定されない。以上の輝度補正テーブルによれば、原稿の地色より明るい部分のみを暗く補正することができるため、模様を消すことなくしわによる影響を低減することができる。
【0039】
なお、本実施形態において、第1輝度範囲の大きさは、原稿の地色の輝度から輝度の最大値までの範囲における輝度ヒストグラムの標準偏差Ysで規定される。従って、本実施形態においては、地色より高輝度の輝度範囲において輝度が広い範囲に分布している場合、狭い範囲に分布している場合よりも第1輝度範囲が広くなる。原稿の地色より明るい輝度の大半はしわの画素によって形成されるため、地色より高輝度の輝度範囲において輝度が広い範囲に分布している場合、しわが多いと推定される。従って、本実施形態においては、しわが多いと推定される場合に第1輝度範囲が広くなる構成が採用されている。この構成によれば、しわによる影響の程度に応じて補正の強度を調整することができる。
【0040】
次に、コントローラー10は、抽出部11bの機能により、第1領域と第2領域とを特定する(ステップS300)。本実施形態においては、読取画像の勾配に基づいて第1領域と第2領域とを区別する。従って、読取画像の勾配を取得し、各画素の勾配が予め決められた第1閾値および第2閾値で規定される範囲内であるか否か評価することと、各画素が第1領域と第2領域とのいずれに属するのか特定していることとは等価である。そこで、コントローラー10は、読取画像の各画素を注目画素として読取画像中をスキャンし、各注目画素について勾配を算出する。勾配は、例えば、注目画素を含む既定の範囲の画素の輝度差等によって特定可能である。ここでは、注目画素の上下左右に2画素の範囲の画素が注目画素の周囲の画素であり、コントローラー10が、合計5×5画素の中で最大輝度と最小輝度を求め、その差の絶対値を勾配dとする例を想定する。
【0041】
この例において、コントローラー10は、勾配dが第1の閾値d
0+D以上である領域を第1領域とみなし、勾配dが第2の閾値d
0以下である領域を第2領域とみなす。なお、本実施形態においては、第1領域と第2領域との境界においてしわの低減量を徐々に変化させるため、第1領域と第2領域とを異なる値としてある。
【0042】
各画素の勾配dが取得されると、コントローラー10は、勾配dおよび輝度補正テーブルに基づいて輝度を補正する(ステップS400)。本実施形態においては、第1領域と第2領域との境界でしわの低減量を徐々に変化させるために、輝度補正テーブルによる出力輝度Y'と、入力輝度Y(補正していない輝度)とを重みwで線形結合する構成が採用されている。すなわち、コントローラー10は、各画素における補正後の輝度をw×Y+(1−w)×Y'によって取得する。
【0043】
図6は、dによる重みwの変化を示すグラフである。
図6においては、横軸を勾配d、縦軸を重みwとして示している。
図6に示すように、勾配が第2の閾値d
0以下である第2領域においては重みwが0となる。従って、第2領域における補正後の輝度はY'となり、輝度補正テーブルによって得られた出力輝度Y'自体が補正後の輝度となる。一方、勾配が第1の閾値d
0+D以上である第1領域においては重みwが1となる。従って、第1領域における補正後の輝度は補正前の輝度Yと等しく、輝度補正テーブルは適用されない。勾配が第2の閾値d
0より大きく、第1の閾値d
0+Dより小さい場合、勾配の上昇に伴って重みが0から1まで変化する。従って、勾配がこの範囲にある画素において、補正後の輝度は、補正前の輝度Yと輝度補正テーブルによる出力輝度Y'との間の輝度となり、大きさは重みに応じて変化する。
【0044】
図7〜
図9は、上述の
図2に示すしわC
1における補正の様子を説明する説明図である。
図7はしわC
1を構成する画素における補正前の輝度を示し、
図8は
図7に示す画素の勾配dを示し、
図9は補正後の輝度を示している。各図において、横軸はy方向(副走査方向)の位置を示しており、同一符号(y
1等)で示される位置は同じ位置である。
図7に示す例において、位置y
1よりy軸負方向の領域および位置y
5よりy軸正方向の輝度は地色の輝度Y
BGである。また、
図7に示す例において、位置y
1〜y
2の画素は地色より暗く、y軸正方向に向けて徐々に暗くなる。位置y
2〜y
3の画素は地色より暗く、y軸正方向に向けて徐々に明るくなる。位置y
3〜y
4の画素は地色より明るく、y軸正方向に向けて徐々に明るくなる。位置y
4〜y
5の画素は地色より明るく、y軸正方向に向けて徐々に暗くなる。
【0045】
このような輝度変化がある画素において勾配を算出すると、各画素の周囲に輝度が変化している画素が含まれる場合に勾配が非0となる。また、位置に対する輝度の変化が大きいほど勾配は大きくなる。従って、
図8に示すように、勾配は、位置y
1,位置y
2,位置y
4,位置y
5の周囲で徐々に変化しつつ、位置y
1から位置y
2の間にほぼ一定の区間が存在し、位置y
2から位置y
4の間(位置y
3の前後)にほぼ一定の区間が存在し、位置y
4から位置y
5の間にほぼ一定の区間が存在する状態となる。
【0046】
図8においては、第1の閾値d
0+Dおよび第2の閾値d
0が示されており、当該
図8に示すように、しわC
1における勾配は第2の閾値d
0以下である。従って、しわC
1は全域が第2領域である。一般的なしわにおいては、明暗が形成されるが、当該明暗の勾配は文字等のオブジェクトによって形成される勾配よりも小さく、本実施形態においては、当該しわによる明暗の勾配が第2の閾値d
0以下となっている。なお、第2の閾値d
0は、典型的なしわにおける明暗の勾配が当該第2の閾値d
0以下になるように設定されていることが好ましく、例えば、統計的に第2の閾値d
0を決定する構成等を採用可能である。
【0047】
以上のように、
図7に示すしわC
1は全域が第2領域であるため、補正後の輝度を示す式w×Y+(1−w)×Y'において重みは0となり、輝度補正テーブルの出力輝度Y'が補正後の輝度となる。輝度補正テーブルにおいては、
図5に示すように、原稿の地色の輝度Y
BGより明るい輝度のみが補正される。従って、
図7に示す例においては、位置y
3から位置y
5の範囲の画素について補正が行われる。
図9は、このような補正後の輝度の例を示しており、原稿の地色より明るい部分が原稿の地色より暗くなるように補正される。この結果、しわによって形成された地色より明るい部分が消失しており、しわによる影響を低減させることができる。
【0048】
図10〜
図12は、上述の
図2に示すしわC
2における補正の様子を説明する説明図である。
図10はしわC
2を構成する画素における補正前の輝度を示し、
図11は
図10に示す画素の勾配dを示し、
図12は補正後の輝度を示している。各図において、横軸はy方向(副走査方向)の位置を示しており、同一符号(y
1等)で示される位置は同じ位置である。
図10に示す例においては、位置y
1よりy軸負方向の領域および位置y
5よりy軸正方向の輝度は地色の輝度Y
BGである。また、
図10に示す例において、位置y
1〜y
6の画素は地色より明るく、y軸正方向に向けて徐々に明るくなる。位置y
6〜y
7の画素は文字を構成する画素であり、地色より暗い画素によって構成されている。位置y
7〜y
2の画素は地色より明るく、y軸正方向に向けて徐々に明るくなる。位置y
2〜y
3の画素は地色より明るく、y軸正方向に向けて徐々に暗くなる。位置y
3〜y
4の画素は地色より暗く、y軸正方向に向けて徐々に暗くなる。位置y
4〜y
5の画素は地色より暗く、y軸正方向に向けて徐々に明るくなる。
【0049】
このような輝度変化がある画素において勾配を算出すると、各画素の周囲に輝度が変化している画素が含まれる場合に勾配が非0となる。また、位置に対する輝度の変化が大きいほど勾配は大きくなる。勾配は、輝度差の絶対値であり、しわC
1,C
2においては凹凸が逆であるとともに文字の有無が異なるのみであるため、
図11に示す勾配は、文字の周囲を除いて
図8に示す勾配とほぼ同一である。
【0050】
一方、文字の周囲において、勾配は大きく変化する。この例では細い文字が想定されているため、注目画素の周囲に存在する輝度差によって勾配が算出されると、文字の領域(位置y
6〜位置y
7)を含む領域(位置y
9〜位置y
10:y
9<y
6、y
7<y
10)で勾配が第1の閾値d
0+D以上となる。また、文字の領域(位置y
6〜位置y
7)から離れるほど勾配が小さくなり、位置y
8および位置y
11において勾配が第2の閾値d
0となる。
【0051】
従って、本例においては、位置y
9〜位置y
10の画素が第1領域の画素であり、位置y
8よりy軸負方向側の画素が第2領域の画素であり、位置y
11よりy軸正方向側の画素が第2領域の画素である。以上のように、
図10に示すしわC
2において、位置y
8よりy軸負方向側の画素と位置y
11よりy軸正方向側の画素が第2領域の画素であるため、補正後の輝度を示す式w×Y+(1−w)×Y'において重みは0となり、輝度補正テーブルの出力輝度Y'が補正後の輝度となる。
【0052】
輝度補正テーブルにおいては、
図5に示すように、原稿の地色の輝度Y
BGより明るい輝度のみが補正される。従って、
図10に示す例においては、位置y
1から位置y
8の範囲の画素と、位置y
11から位置y
3の範囲の画素において、輝度補正テーブルの出力輝度Y'が補正後の輝度となる。
【0053】
一方、位置y
9〜位置y
10の画素が第1領域の画素であるため、補正後の輝度を示す式w×Y+(1−w)×Y'において重みは1となり、輝度補正テーブルの出力輝度Y'は参酌されない。従って、当該第1領域に含まれる画素について輝度の補正は行われない。
【0054】
さらに、第1領域と第2領域との間に存在する画素、すなわち、位置y
8〜位置y
9の画素および位置y
10〜位置y
11の画素においては、勾配が第2の閾値d
0と第1の閾値d
0+Dとの間の値となるため、補正後の輝度を示す式w×Y+(1−w)×Y'において重みが0〜1の値となり、重みによる調整が行われる。このため、位置y
8〜位置y
9の画素においては、y軸正方向に向けて位置が変化すると、輝度補正テーブルによる補正が行われた状態の輝度から補正が行われない状態の輝度まで徐々に輝度が変化する。また、位置y
10〜位置y
11の画素においては、y軸正方向に向けて位置が変化すると、輝度補正テーブルによる補正が行われない状態の輝度から補正が行われた状態の輝度まで徐々に輝度が変化する。
【0055】
以上の構成により、しわによって形成された地色より明るい部分を消失させてしわによる影響を低減させながら、文字の周囲においてはコントラストを維持することができる。従って、文字を判読不能にさせることなくしわの低減処理を行うことができる。
【0056】
次に、コントローラー10は、YUV色チャネルをRGB色チャネルに変換する(ステップS500)。すなわち、本実施形態においては、読取画像を補正した後の画像をRGB色チャネルで出力するように構成されている。そこで、コントローラー10は、ステップS400で得られた各画素のデータに対して、ステップS100の逆変換を行う。YUV色チャネルのRGB色チャネルへの変換は、種々の手法によって実施されて良く、例えば、
G=Y−(U−127)/2−(V−127)/2
R=G+2×(V−127)−1
B=G+2×(U−127)−1
等の式によって変換可能である。ここで、Rは変換後の赤チャネルの階調値、Gは変換後の緑チャネルの階調値、Bは変換後の青チャネルの階調値であり、Yは補正後の輝度、U,VはステップS100で取得された値である。
【0057】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、本発明の一実施形態にかかるスキャナーは、読み取り以外の目的にも使用される電子機器である複合機等に備えられていても良い。さらに、以上の実施形態のようにしわの上に模様がある領域においてしわを低減させず、しわがあり模様がない領域においてしわを低減させる手法は、プログラムの発明、方法の発明やスキャンデータの生成方法の発明としても実現可能である。
【0058】
さらに、コントローラー10の少なくとも1部における処理を、スキャナー1に接続されたコンピューターのドライバプログラム又はアプリケーションプログラムに実施させてもよい。この場合、コンピューターをスキャナーの一部とみなすことができる。
【0059】
さらに、上述の実施形態は一例であり、一部の構成が省略されたり、他の構成が追加されたりする実施形態が採用され得る。例えば、コントローラー10が、第1領域と第2領域との境界においてしわの低減量を徐々に変化させるのではなく、第1領域と第2領域とが隣接する状況において、第1領域で補正を行わず、第2領域で輝度補正テーブルによる補正を行う構成が採用されてもよい。
【0060】
読取部は、原稿を読み取って読取画像を生成することができればよい。すなわち、読取部においては、原稿に照射された光によって生じる原稿からの光を検出することにより、原稿にしわが生じている場合には当該しわを含めた読取画像を生成する。原稿を読み取るための態様は種々の態様であって良く、上述のようなフラットベッドの原稿台に載置された原稿を読み取る構成に限定されず、ADFによって搬送される原稿を読み取る構成等であっても良い。
【0061】
抽出部は、読取画像からしわの上に模様がある第1領域と、しわがあり模様がない第2領域とを抽出することができればよい。すなわち、しわ低減処理の対象となる第2領域としわ低減処理の対象にならない第1領域とを抽出することができればよい。模様は、しわ低減処理によって判読不能になることを防止すべき対象であれば良く、文字、図形、色によって原稿の地色と区別される各種の部位が模様を構成し得る。
【0062】
しわの上に模様がある第1領域を検出するための手法は、上述のように勾配を参照する手法以外にも種々の手法を採用し得る。例えば、エッジに囲まれた領域や周に尖った部位が存在する部分や、ジャギーな部位が存在する部分等が第1領域として検出される構成等であっても良い。
【0063】
処理部は、領域毎にしわ低減処理を行う場合と行わない場合とを切り替える事ができればよい。上述の実施形態においては、第1領域と第2領域の境界において、しわの低減量を徐々に変化させる構成が採用されていたが、しわの低減量の調整が行われない構成も想定し得る。なお、しわ低減処理は、画像におけるしわの影響を低減させることを意味しており、典型的にはしわによって地色に対して生じた明暗を目立たなくさせる処理であるが、しわの低減はしわの消去であってもよい。
【0064】
原稿の地色を特定する際に参酌される特定の輝度は、原稿の地色が誤判定されることを防止することができるように設定されていればよい。すなわち、輝度ヒストグラムの統計値のみによる判定では、文字等の暗い部分が大きい面積である場合に当該部分を原稿の地色と誤判定し得る。そして、一般的には、原稿の地色は、白などの明るい色によって構成されるため、特定の輝度より高輝度の領域について輝度ヒストグラムを参酌することにより、原稿の地色が明るい色である場合において、地色が誤判定される可能性を低減することができる。しかし、明るい色に限らず、原稿の地色が特定の輝度の範囲内や特定の色相の範囲内であるならば、特定の輝度の範囲内や、特定の色相の範囲内の輝度ヒストグラムの統計値によって地色が取得されても良い。
【0065】
飽和輝度は、補正後に地色の輝度のように認識される輝度であれば良く、しわによって生じた地色より明るい部分を、補正後に地色よりも暗い輝度に変換できるように設定されていれば良い。なお、飽和輝度は、上述の実施形態のように、地色と第1輝度範囲とによって決まっても良いし、固定値であっても良い。
【0066】
第1領域と第2領域の境界において、しわの低減量を徐々に変化させる際に考慮される要素は、勾配に限定されない。例えば、第1領域と第2領域との境界において、各領域からの距離によって補正の重みが変化する構成等であっても良い。
【0067】
さらに本発明は、コンピューターが実行するプログラムや、方法としても適用可能である。また、以上のようなプログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、複数の装置が備える部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、プログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。