特許第6943112号(P6943112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943112
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/00 20060101AFI20210916BHJP
   B29C 63/20 20060101ALI20210916BHJP
   B29C 63/34 20060101ALI20210916BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20210916BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20210916BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20210916BHJP
   B65G 15/32 20060101ALI20210916BHJP
   B65G 15/30 20060101ALI20210916BHJP
   B29L 29/00 20060101ALN20210916BHJP
【FI】
   B29D29/00
   B29C63/20
   B29C63/34
   B29C65/02
   G03G15/00 552
   G03G15/20 510
   B65G15/32
   B65G15/30 A
   B29L29:00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-183935(P2017-183935)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59569(P2019-59569A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上石 健太郎
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−116273(JP,A)
【文献】 特開2008−122907(JP,A)
【文献】 特開2014−087944(JP,A)
【文献】 米国特許第5312352(US,A)
【文献】 特開昭58−175646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C63/00−63/48,65/00−65/82
B29D23/00−23/24,29/00−29/10
B29L23/00−23/24,29/00
G03G15/00,15/20
B65G15/30−15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のベルト体を内型に被せる被せ工程と、
チューブを円筒状の外型の内側に装着する装着工程と、
前記ベルト体と前記チューブとが潤滑液を介して接触する状態で、前記内型を前記外型の内側に挿入する挿入工程と、
前記ベルト体及び前記チューブの一方を他方に押し付けて、前記ベルト体と前記チューブとを付着させる付着工程と、
を有するベルトの製造方法。
【請求項2】
前記挿入工程では、前記ベルト体と前記チューブとの間に前記潤滑液を供給しながら、前記内型を前記外型の内側に挿入する
請求項1に記載のベルトの製造方法。
【請求項3】
前記挿入工程では、前記外型の軸方向が上下方向に向けられた状態で、前記ベルト体と前記チューブとの間に前記外型の上側から前記潤滑液を供給しながら、前記内型を前記外型の内側に挿入する
請求項2に記載のベルトの製造方法。
【請求項4】
前記挿入工程の前に行われ、
前記ベルト体の外周面及び前記チューブの内周面の少なくとも一方に予め潤滑液を塗布する塗布工程
を有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載のベルトの製造方法。
【請求項5】
前記塗布工程では、前記ベルト体の外周面及び前記チューブの内周面の両方に予め潤滑液を塗布する
請求項4に記載のベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送ベルトの製造方法が開示されている。特許文献1の製造方法では、エアバッグの外周に、円筒状のシームレス心体、ホットメルト接着剤及びカバー材をこの順序に重ね合わせた円筒状積層体を形成し、この円筒状積層体とエアバッグとをスリーブに挿入し、エアバッグに加圧エアを注入して膨張させることにより円筒状積層体をスリーブの内周面に押しつけると共に、加熱手段によりスリーブを特定の温度に加熱しホットメルト接着剤を溶融して、シームレス心体とカバー材を一体に接着した後、冷却して輪切りにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−130221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、環状のベルト体を内型に被せ、チューブを円筒状の外型の内側に装着し、該内型を該外型の内側に挿入する際に、ベルト体とチューブとの接触部分の全面が直接接触する場合では、ベルト体とチューブとの摩擦抵抗が大きい。
【0005】
本発明は、ベルト体とチューブとの接触部分の全面が直接接触する状態で内型を外型の内側に挿入する場合に比べ、内型を外型の内側に円滑に挿入できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、環状のベルト体を内型に被せる被せ工程と、チューブを円筒状の外型の内側に装着する装着工程と、前記ベルト体と前記チューブとが潤滑液を介して接触する状態で、前記内型を前記外型の内側に挿入する挿入工程と、前記ベルト体及び前記チューブの一方を他方に押し付けて、前記ベルト体と前記チューブとを付着させる付着工程と、を有する。
【0007】
請求項2の発明に係る前記挿入工程では、前記ベルト体と前記チューブとの間に前記潤滑液を供給しながら、前記内型を前記外型の内側に挿入する。
【0008】
請求項3の発明に係る前記挿入工程では、前記外型の軸方向が上下方向に向けられた状態で、前記ベルト体と前記チューブとの間に前記外型の上側から前記潤滑液を供給しながら、前記内型を前記外型の内側に挿入する。
【0009】
請求項4の発明は、前記挿入工程の前に行われ、前記ベルト体の外周面及び前記チューブの内周面の少なくとも一方に予め潤滑液を塗布する塗布工程を有する。
【0010】
請求項5の発明に係る前記塗布工程では、前記ベルト体の外周面及び前記チューブの内周面の両方に予め潤滑液を塗布する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の製造方法によれば、ベルト体とチューブとの接触部分の全面が直接接触する状態で内型を外型の内側に挿入する場合に比べ、内型を外型の内側に円滑に挿入できる。
【0012】
本発明の請求項2の製造方法によれば、ベルト体の外周面及びチューブの内周面の少なくとも一方に予め潤滑液を塗布するのみの場合に比べ、揮発性を有する潤滑液を用いても、ベルト体とチューブとが潤滑液を介して接触する状態が維持される。
【0013】
本発明の請求項3の製造方法によれば、外型の軸方向が水平方向に向けられた状態で、ベルト体とチューブとの間に潤滑液を供給する場合に比べ、ベルト体及びチューブの軸方向の一端部から他端部にかけて潤滑液を行き渡らせることができる。
【0014】
本発明の請求項4の製造方法によれば、内型を外型の内側に挿入していく過程でのみ、ベルト体とチューブとの間に潤滑液を供給する場合に比べ、ベルト体及びチューブの軸方向及び周方向の全体に潤滑液を行き渡らせることができる。
【0015】
本発明の請求項5の製造方法によれば、ベルト体の外周面及びチューブの内周面の一方のみに予め潤滑液を塗布する場合に比べ、内型を外型の内側に円滑に挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るベルトの概略構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係るベルトの製造方法における被せ工程を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るベルトの製造方法における装着工程を示す概略図である。
図4】本実施形態に係るベルトの製造方法における装着工程を示す概略図である。
図5】本実施形態に係るベルトの製造方法における塗布工程を示す概略図である。
図6】本実施形態に係るベルトの製造方法における塗布工程を示す概略図である。
図7】本実施形態に係るベルトの製造方法における挿入工程を示す概略図である。
図8】本実施形態に係るベルトの製造方法における付着工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。以下では、製造対象であるベルト10、及びベルト10の製造方法について説明する。なお、各図に示される構成等は、模式的なものであり、各図に示す各部分の寸法比は、実際のものと異なる場合がある。
【0018】
(ベルト10)
ベルト10は、一例して、光を透過可能な透明ベルトとされている。透明ベルトとしてのベルト10は、一例して、電子写真式の画像形成装置における定着ベルトとして用いられる。この場合では、ベルト10を介して記録媒体に光を照射し、記録媒体上のトナーを加熱溶融することでトナー画像を記録媒体に定着する。または、紫外線硬化性インク等で画像を形成させ、ベルト10を介して記録媒体に背面より光(紫外線等)を照射し、画像を記録媒体に転写定着する。
【0019】
透明ベルトとしてのベルト10は、図1に示されるように、環状の基材12と、基材12の外周面に形成された弾性層14と、弾性層14の外周面に被覆されたチューブ16と、を備えている。
【0020】
基材12としては、例えば、ポリイミド(PI)が挙げられる。なお、基材12としては、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂を用いてもよい。
【0021】
弾性層14としては、例えば、シリコーンゴムが挙げられる。チューブ16としては、例えば、四フッ化エチレンパーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)が挙げられる。なお、チューブ16としては、四フッ化エチレン重合体(PTFE)、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などを用いてもよい。
【0022】
前述のように、ベルト10は、一例として、電子写真式の画像形成装置における定着ベルトであったが、これに限られない。ベルト10としては、例えば、電子写真式の画像形成装置における中間転写ベルト及び搬送ベルトなどであってもよい。また、ベルト10としては、他の用途に用いられるベルトであってもよい。
【0023】
(ベルト10の製造方法)
次に、ベルト10の製造方法の一例を説明する。なお、以下で説明するベルト10の製造方法は、一例であり、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。
【0024】
ベルト10の製造方法は、一例として、ベルト体作製工程と、被せ工程と、装着工程と、塗布工程と、挿入工程と、付着工程と、脱型工程と、を有している。以下、ベルト10の製造方法の各工程について説明する。
【0025】
(ベルト体作製工程)
ベルト体作製工程は、ベルト体20を作製する工程である。ベルト体20は、前述の基材12と前述の弾性層14とで構成された環状のベルト体である(図2参照)。
【0026】
ベルト体20の作製工程では、例えば、準備工程と、形成工程と、を有している。準備工程では、前述した環状の基材12を準備する。
【0027】
形成工程は、準備工程で準備した基材12の外周面に弾性層14を形成する工程である。例えば、弾性層14として透明シリコーンゴムを用いる場合では、形成工程において、例えば、基材12の外周面に、シリコーンゴム材料を塗工し、加熱して予備硬化させる。予備硬化では、例えば、80℃で30分間加熱する。これにより、予備硬化された弾性層14が基材12の外周面に形成される。シリコーンゴム材料の塗工は、例えば、フローコート法、浸漬塗布法、スプレー塗布法等の公知の塗布方法により行われる。
【0028】
なお、予備硬化は、最終強度を得ない程度のプレ硬化であるから、予備硬化された弾性層14は、未硬化の状態である。
【0029】
(被せ工程)
被せ工程は、図2に示されるように、前述のベルト体作製工程で作製されたベルト体20を内型30に被せる工程である。
【0030】
内型30は、円筒面を有し、内部に空気等の流体が出入可能とされている。さらに、内型30は、流体が内部に流入することで、円筒面が径方向外側に拡張する構成とされている。内型30としては、後述の加熱工程(加熱処理工程)での加熱に耐えうる耐熱性を有するものが用いられる。
【0031】
具体的には、内型30としては、例えば、耐熱性ゴムで形成された円筒状の円筒型と、円筒型の内部に設けられ耐熱性ゴムで形成されたエアバッグと、で構成された内型が用いられる。当該内型では、エアバッグに対する空気の出入によって、エアバッグ及び円筒型が径方向へ拡張及び収縮する。なお、耐熱性ゴムとしては、一例として、ウレタン、シリコーン及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが用いられる。
【0032】
そして、被せ工程では、具体的には、内型30の円筒面(外周面)にベルト体20の内周面が接触するように、ベルト体20が内型30に被せられる。これにより、ベルト体20が内型30の円筒面(外周面)に保持される。
【0033】
(装着工程)
装着工程は、図3及び図4に示されるように、チューブ16を円筒状の外型40の内側に装着する工程である。外型40は、円筒状の外型である。外型40としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの鋼管又は弾性円筒状型が用いられる。さらに具体的には、外型40としては、後述の付着工程での内圧に耐える剛性を有し、後述の加熱工程での加熱に耐えうる耐熱性を有するものが用いられる。
【0034】
装着工程では、例えば、チューブ16を外型40の内側に同軸上に挿入して、チューブ16を外型40の内側に装着する。具体的には、チューブ16の外周面が外型40の内周面に軽度に接触するように、外型40がチューブ16を保持することで、チューブ16が外型40に装着される。
【0035】
さらに具体的には、本実施形態では、一例として、図3に示されるようにチューブ16を外型40の内側に同軸上に挿入して、チューブ16の軸方向両端部を、外型40の外側へ折り返す。さらに、図4に示されるように、外型40の内周面とチューブ16の外周面との間で吸気することによる負圧で、チューブ16が外型40に保持する。なお、チューブ16を外型40に保持する方法としては、静電吸着などを用いてもよい。
【0036】
(塗布工程)
塗布工程は、挿入工程の前に行われ、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液50を塗布する工程である。
【0037】
具体的には、本実施形態の塗布工程では、図5に示されるように、内型30に被せられたベルト体20の外周面に予め潤滑液50を塗布する。さらに、図6に示されるように、外型40の内側に装着されたチューブ16の内周面にも予め潤滑液50を塗布する。
【0038】
潤滑液50の塗布は、一例として、潤滑液50を霧状にして塗布するスプレー塗布によって行われる。なお、潤滑液50の塗布方法としては、スプレー塗布に限られず、他の塗布方法を用いてもよい。
【0039】
以上のように、本実施形態では、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の両方に予め潤滑液50が塗布される。
【0040】
潤滑液50としては、揮発性を有する液体が用いられる。具体的には、潤滑液50としては、例えば、沸点が50℃以上150℃以下の液体が用いられる。なお、潤滑液50の沸点は、後述の加熱工程における加熱温度よりも低い温度の沸点とされている。さらに具体的には、潤滑液50としては、例えば、水、アルコール系溶剤、又は、揮発性フッソ溶剤等の潤滑性溶剤等が用いられる。なお、潤滑液50としては、後述の加熱工程において気化しても、ベルト体20とチューブ16との界面に残留しにくいものが望ましい。
【0041】
(挿入工程)
挿入工程は、図7に示されるように、ベルト体20とチューブ16とが潤滑液50を介して接触する状態で、内型30を外型40の内側に挿入する工程である。
【0042】
具体的には、挿入工程では、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入する。
【0043】
さらに具体的には、挿入工程では、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で、ベルト体20とチューブ16との間に外型40の上側から潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入する。
【0044】
さらに具体的には、本実施形態では、内型30は、外型40に対して嵌め入れられる。換言すれば、本実施形態では、内型30は外型40に対して圧入される。外型40に挿入される内型30は、外型40に対して摺動する。なお、摺動とは、摺り動くことをいう。
【0045】
なお、内型30を外型40に挿入する際には、潤滑液50は、ベルト体20とチューブ16との間に液膜として介在する。
【0046】
外型40の内側への内型30の挿入は、一例として、以下のように行われる。すなわち、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で外型40が支持され、内型30の軸方向が上下方向に向けられた状態で内型30が外型40の上側から挿入される。内型30は、外型40の軸方向に沿って下方へ向かって挿入される。
【0047】
ベルト体20とチューブ16との間への潤滑液50の供給は、一例として、以下のように行われる。すなわち、外型40の上側から挿入される内型30に被せられたベルト体20の外周面に対して、外型40の上側で、外型40の周方向の複数か所でスプレー塗布する。ベルト体20の外周面に対してスプレー塗布することで、霧状にされた潤滑液50がベルト体20の外周面に塗布される。そして、外周面に潤滑液50が塗布されたベルト体20が、内型30と共に外型40に挿入されることで、ベルト体20とチューブ16との間へ潤滑液50が供給される。
【0048】
ベルト体20の外周面に対してスプレー塗布が行われる位置は、例えば、外型40の上端の上側であって、該上端に近い位置とされる。また、外型40の上端の上側であって、該上端に近い位置で塗布されることで、ベルト体20とチューブ16との間へ潤滑液50が供給される前に、潤滑液50が該ベルト挿入時に気化することが抑制される。
【0049】
なお、挿入工程では、潤滑液50の供給が、内型30の挿入が進行する過程で行われればよい。したがって、潤滑液50の供給動作と内型30の挿入動作とが交互に行われてもよいし、潤滑液50の供給動作と内型30の挿入動作とが同時に行われてもよい。
【0050】
また、ベルト体20の外周面に塗布する方法としては、スプレー塗布に限られず、他の塗布方法(例えば、ウェッブ等で表面塗布等)を用いてもよい。
【0051】
また、ベルト体20とチューブ16との間へ潤滑液50が供給される方法としては、ベルト体20の外周面に塗布する方法に限られず、例えば、ベルト体20とチューブ16との間に向けて潤滑液50を滴下により供給する構成であってもよい。
【0052】
(付着工程)
付着工程は、ベルト体20及びチューブ16の一方を他方に押し付けて、ベルト体20とチューブ16とを付着させる工程である。具体的には、付着工程は、図8に示されるように、ベルト体20をチューブ16に押し付けて、ベルト体20とチューブ16とを密着させる工程である。さらに具体的には、付着工程は、押付工程と、加熱工程と、を有している。
【0053】
押付工程は、内型30に被せたベルト体20を、外型40に装着されたチューブ16に押し付ける工程である。具体的には、押付工程では、内型30のエアバッグに空気を入れて、内型30を径方向外側に拡張させる。これにより、ベルト体20を加圧によりチューブ16に押し付ける。
【0054】
加熱工程は、ベルト体20を加熱してベルト体20の未硬化状態の弾性層14を硬化させる工程である。具体的には、加熱工程では、押付工程でのベルト体20のチューブ16への押し付けを維持した状態で、内型30及び外型40を加熱する。これにより、未硬化状態の弾性層14が硬化すると共に、弾性層14とチューブ16とが密着する。加熱工程における加熱温度は、少なくとも潤滑液50の沸点よりも高い温度であり、一例として、180℃から200℃程度の温度とされる。このため、潤滑液50の成分が内面に残留することが抑制される。
【0055】
このように、加熱工程では、内型30と外型40との間でベルト体20及びチューブ16を加圧した状態で加熱するので、弾性層14から発生するガスや揮発成分を抑え込み、且つ、製造されるベルト10のしわやうねりが抑制される。
【0056】
また、内型30と外型40との間でベルト体20及びチューブ16を加圧した状態で加熱することで、チューブ16と外型40との間に表面平滑性が付与されるため、後述の脱型工程で外型40から脱型しやすくなる。さらに、内型30と外型40との間でベルト体20及びチューブ16を加圧した状態で加熱するので、弾性層14とチューブ16との接着性が高まる。
【0057】
(脱型工程)
脱型工程は、ベルト体20及びチューブ16を、内型30及び外型40から外す工程である。具体的には、脱型工程では、ベルト体20及びチューブ16を冷却した後、内型30のエアバッグの空気を抜いて、内型30及び外型40から、互いが密着したベルト体20及びチューブ16を外す。これにより、ベルト10が製造される。
【0058】
(本実施形態の作用)
本実施形態の製造方法によれば、挿入工程において、ベルト体20とチューブ16とが潤滑液50を介して接触する状態で、内型30を外型40の内側に挿入する。
【0059】
ここで、ベルト体20とチューブ16との接触部分(図7のSA部分)の全面が、潤滑液50を介さず、直接接触する状態で、内型30を外型40の内側に挿入する場合(第一比較例)では、ベルト体20とチューブ16との摩擦抵抗が大きい。
【0060】
これに対して、本実施形態では、ベルト体20とチューブ16とが潤滑液50を介して接触する状態で、内型30を外型40の内側に挿入するので、第一比較例に比べ、内型30が外型40の内側に円滑に(スムーズに)挿入される。換言すれば、本実施形態によれば、第一比較例に比べ、内型30を外型40の内側に挿入するのに必要な荷重が小さくなる。また、内型30が外型40の内側に円滑に挿入されることで、チューブ16やベルト体20の損傷や変形が抑制され、製造されたベルト体20の外形不良が抑制される。
【0061】
本実施形態の製造方法によれば、具体的には、挿入工程において、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入する。
【0062】
このため、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液50を塗布するのみの場合(第二比較例)に比べ、潤滑液50の塗布又は供給が行われてから内型30の挿入が行われるまでの時間が短いため、揮発性を有する潤滑液50を用いた場合でも、潤滑液50が気化しにくく。したがって、揮発性を有する潤滑液50を用いても、第二比較例に比べ、ベルト体20とチューブ16とが潤滑液50を介して接触する状態が維持される。
【0063】
本実施形態の製造方法によれば、さらに具体的には、挿入工程において、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で、ベルト体20とチューブ16との間に外型40の上側から潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入する。
【0064】
このため、外型40の軸方向が水平方向に向けられた状態で、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給する場合(第三比較例)に比べ、ベルト体20とチューブ16との間に供給された潤滑液50が、重力により、ベルト体20及びチューブ16の軸方向の一端部(上端部)から他端部(下端部)へ流下しやすい。これにより、ベルト体20及びチューブ16の軸方向の一端部(上端部)から他端部(下端部)にかけて潤滑液50が行き渡る。
【0065】
本実施形態の製造方法によれば、塗布工程において、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液50を塗布する。
【0066】
ここで、内型30を外型40の内側に挿入していく過程でのみ、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給する場合(第四比較例)では、潤滑液50が予め塗布されないため、ベルト体20及びチューブ16の挿入側の端部において、潤滑液50が不足する場合がある。
【0067】
これに対して、本実施形態の製造方法では、予め潤滑液50を塗布するので、第四比較例に比べ、ベルト体20及びチューブ16の軸方向及び周方向の全体に潤滑液を行き渡らせることができる。特に、ベルト体20及びチューブ16の挿入側の端部において、潤滑液50が不足することが抑制される。
【0068】
また、本実施形態の製造方法によれば、具体的には、塗布工程において、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の両方に予め潤滑液50を塗布する。このため、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の一方のみに予め潤滑液50を塗布する場合に比べ、内型30が外型40の内側に円滑に挿入される。
【0069】
(変形例)
本実施形態の製造方法では、塗布工程において、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の両方に予め潤滑液50が塗布されていたが、これに限られない。例えば、塗布工程において、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の一方のみに予め潤滑液50を塗布するようにしてもよい。すなわち、塗布工程では、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液を塗布すればよい。
【0070】
また、本実施形態の製造方法は、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液50を塗布する塗布工程を有していたが、これに限られない。例えば、挿入工程において、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入する場合であれば、塗布工程を行わなくてもよい。
【0071】
また、本実施形態の製造方法は、挿入工程において、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50をウェッブ等で逐次濡らし供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入していたが、これに限られない。例えば、塗布工程において、ベルト体20の外周面及びチューブ16の内周面の少なくとも一方に予め潤滑液50を塗布する場合であれば、挿入工程において、潤滑液50の供給を行わずに、内型30を外型40の内側に挿入してもよい。
【0072】
また、本実施形態の製造方法では、挿入工程において、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で、ベルト体20とチューブ16との間に外型40の上側から潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入していたが、これに限られない。例えば、挿入工程において、外型40の軸方向が水平方向に向けられた状態で、ベルト体20とチューブ16との間に潤滑液50を供給しながら、内型30を外型40の内側に挿入してもよい。
【0073】
また、本実施形態の製造方法では、挿入工程において、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で、内型30が外型40の上側から挿入されていたが、これに限られない。例えば、挿入工程において、外型40の軸方向が上下方向に向けられた状態で、内型30を外型40の下側から挿入してもよい。この場合では、外型40の下側から挿入される内型30に被せられたベルト体20の外周面に対して、外型40の下側でスプレー塗布するようにしてもよい。この場合では、ベルト体20とチューブ16との間に外型40の下側から潤滑液50が供給されながら、内型30が外型40の内側に下側から挿入される。
【0074】
また、本実施形態の製造方法では、ベルト体20をチューブ16に押し付けて、ベルト体20とチューブ16と付着させていたが、これに限られない。例えば、外型40でチューブ16を加圧することで、チューブ16をベルト体20に押し付けて、ベルト体20とチューブ16と付着させてもよい。すなわち、付着工程では、ベルト体20及びチューブ16の一方を他方に押し付けて、ベルト体20とチューブ16とを付着させればよい。
【0075】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 ベルト
12 基材
14 弾性層
16 チューブ
20 ベルト体
30 内型
40 外型
50 潤滑液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8