【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/衛星搭載光通信用デバイスの国産化及び信頼性確保に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の移動体と地上局との間で行われる第1の光空間通信の性能である第1の通信性能を含む通信記録を記録し、第2の移動体と前記地上局との間で行われる第2の光空間通信の設定である通信設定を取得し、前記第2の光空間通信の性能である第2の通信性能を前記通信記録及び前記通信設定に基づいて予測する処理手段を備える、
通信性能予測装置。
前記処理手段は、前記第2の光空間通信における前記第2の移動体の仰角と略同一の範囲の前記第1の移動体の仰角における前記通信記録に基づいて前記第2の通信性能を予測する、請求項1又は2に記載された通信性能予測装置。
前記第1揺らぎ算出手段は、前記第1の通信性能として前記第1の光空間通信の際の誤り率を用い、前記第1の光空間通信の受信マージンと前記誤り率との関係をγ−γ分布にフィッティングした際の累積確率の分散値を前記第1の指標とする、請求項4に記載された通信性能予測装置。
前記通信性能算出手段は、前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定の差分により生じる前記第1の通信性能と前記第2の通信性能との差分に基づいて前記第2の通信性能を予測する、請求項4又は5に記載された通信性能予測装置。
前記通信性能算出手段は、前記第1の移動体が前記第2の移動体と同一の軌道上を運行する場合に前記第2の通信性能の予測結果を出力する、請求項4乃至6のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
前記通信性能算出手段は、前記第1の移動体が前記第2の移動体の軌道上と異なる位置にある場合に前記第2の通信性能の予測結果を出力する、請求項8に記載された通信性能予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図面を参照して以下、詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の通信性能予測システム10の構成例を説明する図である。通信性能予測システム10は、地上局G11、衛星S12及びS13を備える。地上局G11は地上に設置されており、光送受信装置を用いて衛星S12及びS13との間で双方向の光空間通信を行う。衛星S12及びS13は、天球19上の軌道B15上を移動する衛星であり、地上局G11と通信するための光送受信機を備える。衛星S13は、地上局G11から見て、衛星S12に続いて軌道B15を移動する。
【0014】
衛星を地上局から見上げる角度を「仰角」という。地上局G11は、まず衛星S12と通信し、衛星S12との通信が終了した後、後続の衛星S13と、衛星12とほぼ同様の仰角で通信する。衛星S12及びS13は地上局G11との通信中にも移動するため、各衛星の仰角は通信中にも変化する。従って、地上局G11が衛星S12と通信する際の衛星S12の仰角の範囲と地上局G11が衛星S13と通信する際の衛星S13の仰角の範囲はおおむね等しい。ただし、通信量や通信条件の相違により衛星S12及びS13と地上局G11との通信時間は変化するため、これらの仰角の範囲とは同一とは限らない。
【0015】
本実施形態では、衛星S12と地上局G11との間の通信結果に基づいて、衛星S12と同一の軌道B15上を移動する衛星S13と地上局G11との間の通信の際の性能が予測される。本実施形態では、衛星S12を先行衛星S12、衛星S13を予測対象衛星S13と表記する場合がある。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態の地上局G11の構成例を示すブロック図である。地上局G11は、アンテナ103と、光送受信装置104と、通信性能予測装置100とを備える。アンテナ103は、衛星S12及びS13に対する追尾機能を備えた光送受信アンテナであり、例えばレンズ及び反射鏡で構成される。光送受信装置104は光送信機及び光受信機を備える光トランシーバである。光送受信装置104にはアンテナが含まれてもよい。光送受信装置104は、衛星S12及びS13との間で伝送される伝送データを含む光信号をアンテナ103と入出力するとともに、当該伝送データを含む電気信号を通信装置105との間で入出力する。また、光送受信装置104は、衛星S12との間の通信の際のデータである通信記録を通信性能予測装置100へ出力する。
【0017】
通信性能予測装置100は、光送受信装置104から取得した通信記録に基づいて通信性能予測値を算出し、算出した通信性能予測値を通信装置105に出力する。通信装置105は、伝送データを光送受信装置104と送受信するとともに、通信性能予測装置100から取得した通信性能予測値を処理する。本実施形態の通信装置105は地上局G11の外部に接続されているが、通信装置105は、地上局G11の内部に備えられていてもよい。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施形態の通信性能予測装置100の構成例を示すブロック図である。通信性能予測装置100は、第1処理部101と、第2処理部102と、を備える。第1処理部101は、先行衛星S12の通信性能及び仰角の時間変化と、その際の伝送路上の雲の位置の時間変化とを通信記録として記録する。雲の位置は、例えば、地上局G11と接続された、地上の全天カメラの撮像データから取得される。撮像データは、撮像時刻における、天球19上の雲の位置の情報を含む。
【0019】
通信性能は、先行衛星S12あるいは予測対象衛星S13と地上局G11との間の通信のスループットやパケット誤り率などの性能の指標の値であるが、特定の指標に限定されない。以降では、先行衛星S12と地上局G11との間の通信結果を示す通信性能を「先行衛星S12の通信性能」と記載し、予測対象衛星S13と地上局G11との間の通信における通信性能の予測値を「予測対象衛星S13の通信性能」と記載する。先行衛星S12の通信記録は、先行衛星S12が地上局G11に通知してもよく、地上局G11が先行衛星S12との通信の際に通信性能及び仰角の変化を記録してもよい。
【0020】
なお、先行衛星の通信性能は「第1の通信性能」と呼ぶことができ、予測対象衛星の通信性能は「第2の通信性能」と呼ぶことができる。また、先行衛星S12等の、予測対象衛星以外の衛星は「第1の移動体」と呼ぶことができ、第1の移動体と地上局との間の通信は「第1の光空間通信」と呼ぶことができる。また、予測対象衛星は「第2の移動体」と呼ぶことができ、第2の移動体と地上局G11との間の通信は「第2の光空間通信」と呼ぶことができる。
【0021】
第1処理部101は、さらに、予測対象衛星S13と地上局G11との通信時の、光信号の伝搬経路上の雲の濃度の時間変化を予測する。当該伝搬経路上の雲の濃度の時間変化は、複数の時刻の撮像データ、地上局G11と通信する際の予測対象衛星S13の位置、及び地上局G11の位置に基づいて予測できる。例えば、先行衛星S12と地上局G11との通信の際の雲の移動量及び移動方向に基づいて、予測対象衛星S13と地上局G11との通信時刻における雲の位置を予測する。そして、地上局G11と予測対象衛星S13とを結ぶ直線(すなわち、光信号の伝搬経路)上の雲の濃度を求めてもよい。ただし、予測対象衛星S13と地上局G11とが通信する際の光信号の伝搬経路上の雲の濃度の時間変化を求める手順はこれに限定されない。
【0022】
さらに、第1処理部101は、予測対象衛星S13の通信性能の時間変化を予測する。第1処理部101は、先行衛星S12の通信性能を先行衛星S12の仰角の変化とともに記録する。なお、第1処理部101の処理の時点では、先行衛星S12と地上局G11とが通信する際の光送受信装置104の設定と、予測対象衛星S13と地上局G11とが通信する際の光送受信装置104の設定とは同一であるとする。先行衛星S12と地上局G11との通信時と予測対象衛星S13と地上局G11との通信時とで雲による通信性能への同様である場合には、予測対象衛星S13の通信性能の予測値として、先行衛星S12の通信性能を用いることができる。
【0023】
雲の影響による予測対象衛星S13の通信性能への予測手順について説明する。実験や過去の通信性能の実測値に基づいて雲の濃度と通信性能(例えば誤り率)の変化との関係を求めておくことで、予測対象衛星S13と地上局G11との間の通信における誤り率の変化量を予測できる。なお、通信性能は、地上局G11及び先行衛星S12のいずれの側で測定されたものでもよい。
【0024】
例えば、先行衛星S12と地上局G11とが通信する際に、光信号の伝搬経路上に濃度N1の雲が存在し、予測対象衛星S13と地上局G11との通信時には濃度N2の雲が存在すると予測されたとする。ここでは0<N1<N2とする。雲の濃度の判断のために、可視光による雲の撮像データを用いることができる。一般的な可視光の白黒の雲画像では、白色が濃いほど雲が濃い(すなわち、雲が厚い)と判断される。ここで、雲の濃度がグレースケール上のN1からN2へ変化するとデータの誤り率がM倍になることがわかっているとすると、予測対象衛星S13と地上局G11との通信時にもデータの誤り率がM倍悪化すると予測できる。雲の動きが速い場合には、複数の時刻で雲の濃度を予測し、雲の濃度変化に伴う通信性能の時間的な変化を求めてもよい。より単純には、予測対象衛星S13と地上局G11との通信の期間内で光信号の伝搬経路上に所定の濃度以上の雲の存在が予測される期間は通信が不能となると予測してもよい。第1処理部101は、先行衛星S12の通信性能に、上述の手順で求めた雲による影響を反映させた予測結果を、第2処理部へ出力する。
【0025】
第2処理部102は、第1処理部で求められた先行衛星S12の通信性能及び雲画像に基づく予測結果に、先行衛星S12の設定と予測対象衛星S13の設定との差分を反映させ、予測対象衛星S13の通信性能を予測する。すなわち、第2処理部102は、第1処理部101から入力された予測結果に、先行衛星S12の通信デバイスの設定情報と予測対象衛星S13の通信デバイスの設定情報との差分に基づく補正を行う。
【0026】
通信デバイスは、先行衛星S12、予測対象衛星S13及び地上局G11に搭載され、先行衛星S12と地上局G11との通信及び予測対象衛星S13と地上局G11との通信に用いられる。しかし、これらの通信デバイスは互いに異なっていてもよい。通信デバイスは、光送信機、光受信機、光ビームの光学系(例えば、光望遠鏡)を含む。地上局G11の通信デバイスは、アンテナ103及び光送受信装置104である。
【0027】
通信デバイスの設定情報は、大気揺らぎや雲以外に起因する、受信時の光強度に寄与する通信デバイスのパラメータである。設定情報には、例えば、衛星S12、S13及び地上局G11の送信光の強度、送信光の送信ビーム発散角、光学系の特性のばらつき、光受信機の感度(光受信感度)、光信号の変調方式及び符号化方式がある。これらの通信デバイスの設定情報に依存して、光空間通信の通信性能(すなわち、例えばスループットやパケット誤り率)は変化する。
【0028】
先行衛星S12の通信時と予測対象衛星S13の通信時とで各衛星及び地上局G11の通信デバイスの設定が異なる場合の通信性能への影響は、あらかじめ知ることができる。例えば、シミュレーション、又は、衛星及び地上局と同様の設定の通信デバイスを備える光送受信機を用いた測定によって当該影響を知ることができる。従って、第1処理部101において求められた予測結果に、先行衛星S12と予測対象衛星S13との通信デバイスの設定の相違に起因する通信性能への影響を加味することができる。その結果、予測対象衛星S13の通信性能の予測に、雲の影響及び通信デバイスの設定の相違を反映させることができる。衛星S12及びS13の通信デバイスの設定情報はあらかじめ保守者によって地上局G11に入力されてもよく、地上局G11が衛星S12及びS13との通信の際にこれらの衛星から取得してもよい。第2処理部102は、予測対象衛星S13の通信性能の予測に先だって、先行衛星S12、予測対象衛星S13及び地上局G11の通信デバイスの設定を取得する
図4は、通信性能予測装置100の動作手順の例を示すフローチャートである。第1処理部101は、先行衛星S12と地上局G11とが通信する間の通信性能の時間変化を取得し(
図3のステップS011)、その際の伝送路上の雲の位置及び動きを取得する(ステップS012)。そして、第1処理部101は、予測対象衛星S13と地上局G11との通信時の光信号の伝搬経路上の雲の濃度を予測する(ステップS013)。雲の有無には雲の濃度の情報が含まれてもよい。さらに、第1処理部101は、予測対象衛星S13と地上局G11との通信の際の、雲の位置の移動を反映した通信性能の時間変化を予測する(ステップS014)。
【0029】
第2処理部102は、先行衛星S12、予測対象衛星S13及び地上局G11の通信デバイスの設定を取得する(ステップS015)。第2処理部102は、予測対象衛星と地上局G11との通信の際の通信性能の時間変化を、先行衛星と予測対象衛星との通信デバイスの設定の相違に起因する通信性能への影響によって補償する(ステップS016)。さらに、第2処理部102は、予測対象衛星の通信性能の時間変化を予測する(ステップS017)。通信性能の時間変化の予測結果は、通信性能予測値として通信装置105に出力される。
【0030】
以上に説明したように、本実施形態の通信性能予測装置100は、先行衛星の通信性能の時間変化に対して、先行衛星の通信時の雲の位置と予測対象衛星の通信時の雲の予測位置との相違、及び、衛星毎の通信デバイスの個体差を加味する補償を実施する。その結果、予測対象衛星における通信性能の時間変化をより正確に予測できる。
【0031】
通信装置105は、通信性能予測装置100が出力した通信性能予測値に基づいて、地上局G11及び予測対象衛星S13の通信デバイスを設定する。例えば、予測対象衛星S13の通信性能が先行衛星S12よりも低下すると予想されたとする。このような場合には、通信装置105は、予測対象衛星S13との通信の際に、地上局G11及び予測対象衛星S13が送信する光信号の送信パワーを高めるように、予測対象衛星S13及び地上局G11の光送信機の設定を変更してもよい。あるいは、伝送速度を低下させてもよく、エラー耐性がより高い変調方法や符号化方法を採用してもよい。
【0032】
本実施形態では光信号の遮蔽物として雲を例に説明したが、遮蔽物は雲には限定されない。例えば、同様の手順で火山の噴煙の影響を予測することができる。
【0033】
一般に、衛星と地上局との間の光空間通信においては、大気揺らぎに起因して、通信の対象となる衛星の仰角により通信性能が大幅に変化する。一方、本実施形態では、先行衛星と予測対象衛星とが同一の衛星軌道上にあるため、先行衛星の通信記録を予測対象衛星と仰角がほぼ等しい(略同一)状態で記録できる。その結果、予測対象衛星の通信時の状態に近い大気揺らぎ強度に基づいて、予測対象衛星の通信性能が予測できる。なお、大気揺らぎの統計的性質が予測対象衛星S13と地上局G11との間の通信時とおおむね同様であると見なせる時間帯に測定された先行衛星の通信記録が用いられてもよい。この場合には、予測対象衛星S13と地上局G11との間の通信時の大気揺らぎによる影響を、通信性能の予測結果により好ましく反映できる。
【0034】
このように、第1の実施形態の通信性能予測装置100は、衛星と地上局との間の通信性能に雲による影響及び大気揺らぎの影響を反映させることができる。その結果、予測対象衛星と地上局との通信時の通信性能をより正確に予測することが可能となり、多数の衛星と通信する地上局の通信リソースの割り当ての効率化が可能となる。
【0035】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、通信性能予測装置100の動作手順の変形例を示すフローチャートである。
図4のフローチャートは、
図4のフローチャートと比較して、雲画像の処理に関するステップS012〜S014が省略されている。雲画像を用いることで雲の有無による影響を予測できるが、雲のない場合には雲画像による処理は不要である。また、雲画像の解析を行わない場合でも、先行衛星S12の通信性能を用いて、予測対象衛星S13の通信性能へ大気揺らぎの影響を反映できる。従って、
図5の手順によっても、予測対象衛星と地上局との通信時の通信性能をより正確に予測するという効果が得られる。
【0036】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図6は本発明の第2の実施形態の通信性能予測システム20の例を示す図である。通信性能予測システム20は、地上局G21、衛星S22、S23及びS24を備える。軌道B25、B26は天球29上の衛星軌道である。衛星S22及びS23は軌道B25上を移動する衛星であり、衛星S24は軌道B26上を移動する衛星である。
【0037】
通信性能予測システム20は、衛星S24のように同一軌道上に先行衛星が存在しない衛星の通信性能を予測する手順を提供する。本実施形態の説明では、衛星S22及びS23を他の衛星S22及びS23と記載し、衛星S24を予測対象衛星S24と記載する場合がある。
【0038】
図7は、第2の実施形態の地上局G21の構成例を示すブロック図である。地上局G21は、アンテナ103と、光送受信装置104と、通信性能予測装置200とを備える。アンテナ103及び光送受信装置104は、第1の実施形態の地上局G11に備えられたものと同様の機能を有する。ただし、本実施形態のアンテナ103は衛星S22〜S24に対する追尾機能を備える。光送受信装置104は、衛星S22〜S24との間で伝送される伝送データを含む光信号をアンテナ103と入出力するとともに、当該伝送データを含む電気信号を通信装置105との間で入出力する。また、光送受信装置104は、衛星S22及びS23との間の通信の際の通信記録を通信性能予測装置200へ出力する。
【0039】
通信性能予測装置200は、光送受信装置104から取得した通信記録に基づいて通信性能予測値を生成し、生成した通信性能予測値を通信装置105に出力する。通信装置105は、伝送データを光送受信装置104と送受信するとともに、通信性能予測装置200から取得した通信性能予測値を処理する。本実施形態の通信装置105は、第1の実施形態の通信装置105と同様の機能を備え、地上局G31の内部に備えられていてもよい。
【0040】
図8は、第2の実施形態の通信性能予測装置200の構成例を示すブロック図である。通信性能予測装置200は、第1揺らぎ算出部201、仰角算出部202、第2揺らぎ算出部203、通信性能算出部204を備える。第1揺らぎ算出部201は、他の衛星S22及びS23の通信性能を含む通信の記録(通信記録)から、大気揺らぎ強度を算出する、第1揺らぎ算出手段を担う。なお、第1揺らぎ算出部201は、他の衛星S22及びS23の一方の通信性能のみを用いてもよい。第1揺らぎ算出部201で算出された大気揺らぎ強度は、第1の指標と呼ぶことができる。
【0041】
仰角算出部202は、第1揺らぎ算出部201で算出された大気揺らぎ強度と、他の衛星S22の仰角及び他の衛星S23の仰角との関係を求める(モデル化する)、仰角算出手段を担う。第2揺らぎ算出部203は、仰角算出部202で求められた関係に基づいて、予測対象衛星S24の仰角から大気揺らぎ強度を求める、第2揺らぎ算出手段を担う。第2揺らぎ算出部203で算出された大気揺らぎ強度は、第2の指標と呼ぶことができる。通信性能算出部204は、第2揺らぎ算出部203で求められた大気揺らぎ強度を、予測対象衛星S24の通信性能へ変換する、通信性能算出手段を担う。通信性能予測装置200を構成する各部を総称して「処理手段」ということができる。
【0042】
本実施形態で使用する通信記録は、他の衛星S22及びS23と地上局G21との通信の際に記録された通信性能と、それらの通信時の仰角、通信デバイスの設定、伝送距離を含むデータ群である。通信性能は、第1の実施形態と同様、スループットやパケット誤り率などの性能の指標の値であるが、特定の指標に限定されない。通信デバイスの設定は、第1の実施形態と同様、大気揺らぎや雲以外に起因する受信時の光強度に寄与するパラメータである。伝送距離は、地上局G21と衛星S22〜S24との距離である。通信性能予測装置200は、予測対象衛星S24の通信性能の予測を実行する時刻から大気揺らぎの統計的性質が空間的に一定と見なせる時間前までの間に実行された他の衛星S22及びS23と地上局G21との間の通信において記録された通信記録を利用してもよい。
【0043】
大気揺らぎ強度は、フリードパラメータやシンチレーションインデックスなど、大気揺らぎ強度を示す物理量であるが、特定の物理量に限定されない。フリードパラメータは、大気揺らぎ強度を望遠鏡の口径と関連させた値である。シンチレーションインデックスは、信号強度の変動量の標準偏差であり、信号強度の変動量を示す指数である。
【0044】
第1揺らぎ算出部201は、他の衛星S22及びS23と地上局G21との間の通信における通信記録から、測定時の大気揺らぎ強度を算出する。大気揺らぎ強度の算出手順の例を以下に示す。
【0045】
通信性能として衛星S22〜S24と地上局G21との間で伝送されるデータの誤り率を用い、大気揺らぎ強度として大気揺らぎにより生じる受信光強度の分散値を用いる。ここで、以下の2つを仮定する。1つは、誤り率が大気揺らぎに起因する受信光強度の変動により決定されることであり、他の1つは、その受信光強度変動の分布が
図9に示すγ−γ分布で表せることである。
【0046】
図9は、受信光の強度の変動の分布の例を示す図である。γ−γ分布は式(1)に示す累積確率P(I)のように分散値σ
Rによって特徴づけられる。受信光強度Iは、大気揺らぎがない場合の受信光強度で正規化された値である。この分散値σ
Rを大気揺らぎ強度として利用する。式(1)は、受信光強度がI以下となる確率がP(I)であることを示す。
【0047】
・・・(1)
ここで、α及びβは下式で表される。また、Iは大気揺らぎのない状態を0とした受信光強度の変動であり、Γはガンマ関数、Κはベッセル関数を示す。
【0049】
以上の仮定の下で、大気揺らぎ強度を示す分散値σ
Rを決定する方法を説明する。まず、他の衛星S22及びS23の通信記録における通信デバイスの設定と、他の衛星S22及びS23と地上局G21との伝送距離の情報とから、大気揺らぎがない状態における受信光強度のマージンm(受信マージン)を計算する。例えば、送信光強度をT(dBm)、受信感度をR(dBm)、光の回折による自由空間損失をL(dB)とし、大気揺らぎ以外に他に光強度の損失がない場合、マージンm(dB)は下記の式(2)により表せる。
【0050】
・・・(2)
図10は、大気揺らぎ強度を求める手順の例を説明する図である。一般に、マージンmが大きいほどダイナミックレンジに余裕があり誤り率は低い。そこで、本実施形態では、累積確率を誤り率に対応させ、γ−γ分布へのフィッティングを行う。具体的には、マージンmと通信記録における誤り率が式(1)の累積確率P(I)の曲線上に存在するような分散値σ
Rを式(1)から求め、求められた分散値σ
Rを大気揺らぎ強度とする。
【0051】
仰角算出部202は、第1揺らぎ算出部201で計算された大気揺らぎ強度と、その際の他の衛星S22及びS23の仰角とのデータ群から、大気揺らぎ強度と仰角との関係を求める。大気揺らぎ強度と仰角との関係は、例えば以下のようにして求めることができる。
【0052】
大気揺らぎ強度を上述の分散値σ
Rとした場合、分散値σ
Rと仰角θ(rad)の関係は、以下の式(3)に示す比例関係で表せる。
【0053】
・・・(3)
そして、他の衛星S22及びS23の通信記録から得られる仰角θと、それらの衛星の通信性能から求めた分散値σ
Rとを対応させたデータ群に対して式(3)によるフィッティングを行う。その結果、分散値σ
Rと仰角θとの関係をモデル化できる。例えば、分散値σ
Rを、仰角θの関数として表現することで、大気揺らぎ強度と仰角との関係のモデル化が行われる。通信記録のデータが多数あれば、式(3)に代えて高次多項式のような一般的な関数を用いてモデル化を行ってもよい。
【0054】
第2揺らぎ算出部203は、仰角算出部202で求められた他の衛星S22及びS23の仰角と大気揺らぎ強度との関係を予測対象衛星S24の仰角に適用することで、予測対象衛星S24の仰角の変化を大気揺らぎ強度の時間変化へ変換する。すなわち、第2揺らぎ算出部203は、予測対象衛星S24の仰角を仰角算出部202が生成したモデルに適用することで、予測対象衛星S24と地上局G21との通信時の大気揺らぎ強度を求める。第2揺らぎ算出部203における大気揺らぎ強度の算出の際に、他の衛星S22及びS23のうち予測対象衛星S24の近くを通過した衛星の通信性能の記録だけを利用することで、場所に依存する大気揺らぎの相違による影響を低減させることができる。
【0055】
通信性能算出部204は、大気揺らぎ強度の時間変化、衛星S22〜S24の通信デバイス設定及びそれらの相違、並びに予測対象衛星S24と地上局G21との間の伝送距離の時間変化から、予測対象衛星S24の通信性能(例えば誤り率)の時間変化を予測する。予測対象衛星S24の通信デバイス設定及び予測対象衛星S24と地上局G21との間の伝送距離の時間変化は、「通信設定」と呼ぶこともできる。
【0056】
伝送距離の時間変化は、低軌道衛星と地上局との間の通信で顕著である。伝送距離の時間変化に合わせて、光の回折による伝搬損失を時間的に変えることで、伝送距離の時間変化を通信性能の時間変化に反映できる。大気揺らぎ強度から通信性能への換算は、
図10で説明した手順の逆の手順によって行うことができる。通信デバイスの設定に関しては、第1の実施形態の手順(
図4のステップS015及びステップS016)によって、先行衛星S22、S23の設定と予測対象衛星S24の設定の相違を、通信性能予測値に反映できる。
【0057】
図11は、通信性能予測装置200の動作手順の例を示すフローチャートである。第1揺らぎ算出部201は、他の衛星S22及びS23の通信性能から、測定時の大気揺らぎ強度を算出する(
図11のステップS021)。仰角算出部202は、大気揺らぎ強度と他の衛星S22及びS23の仰角との関係をモデル化する(ステップS022)。第2揺らぎ算出部203は、ステップS022で求めた仰角と大気揺らぎ強度との関係から、予測対象衛星S24の仰角を予測対象衛星S24と地上局G21との通信時の大気揺らぎ強度へ変換する(ステップS023)。通信性能算出部204は、ステップS023で求められた大気揺らぎ強度、各衛星S22〜S24及び地上局G21の通信デバイス設定、及び予測対象衛星S24と地上局G21との間の伝送距離から、予測対象衛星S24の通信性能を予測する。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態の通信性能予測装置200は、予測対象衛星S24と地上G21との間の大気揺らぎ強度を、他の衛星S22及びS23と地上局G21との間の通信記録を用いて予測する。すなわち、本実施形態の通信性能予測装置200は、他の衛星と異なる軌道を運行する予測対象衛星の通信性能を予測できる。また、予測対象衛星と同一の軌道上の先行衛星との通信時刻の間隔が長い場合には、先行衛星の通信記録を用いることなく、他の衛星との通信記録に基づいて、予測対象衛星の通信性能を予測できる。すなわち、第2の実施形態においても、衛星と地上局との間の通信性能の時間変化をより正確に予測できるという効果が得られる。
【0059】
本実施形態の説明では、第1の実施形態で行った雲の影響は考慮されていない。しかしながら、他の衛星S22又はS23と地上局G21との通信時の雲画像を用い、第1の実施形態で説明した手順を用いて通信性能予測値を補正してもよい。例えば、
図11のステップS024に
図4のステップS012〜S014の手順を適用することで、通信性能を予測値に雲の影響を反映できる。これにより、本実施形態においても雲の動きの影響が考慮された通信性能を予測できる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は第3の実施形態の通信性能予測システム30の例を示すブロック図である。通信性能予測システム30では、大気揺らぎ強度が直接測定される。
【0061】
通信性能予測システム30は、地上局G31、天球39上の軌道B35上の衛星S32及びS33、軌道B36上の衛星S34を備える。ここで、衛星S31及びS32は、地上局G31とは通信しない衛星である。通信性能予測システム30において、衛星S32は地上局G31へ光を照射する。あるいは、地上局G31はコーナリフレクタを搭載した衛星S33へ光を照射し、衛星S33は地上局G31から照射された光をコーナリフレクタで反射して地上局G31へ照射する。地上局G31はこれらのいずれかの光を受信し、その強度の時間変動を検出することで、大気揺らぎ強度を直接測定できる。
【0062】
図13は、第3の実施形態の地上局G31の構成例を示すブロック図である。地上局G31は、アンテナ103と、光送受信装置104と、通信性能予測装置300とを備える。アンテナ103及び光送受信装置104は、第2の実施形態と同様の機能を備える。ただし、本実施形態のアンテナ103は、衛星S32〜S34に対する追尾機能を備えた光送受信アンテナである。光送受信装置104は、衛星S34との間で伝送される伝送データを含む光信号をアンテナ103と入出力するとともに、当該伝送データを含む電気信号を通信装置105との間で入出力する。また、光送受信装置104は、衛星S32及びS33の少なくとも一方との間で大気揺らぎ強度を測定するための光の送受信機能、又は、衛星S32及びS33の少なくとも一方から受信した光の強度変動から大気揺らぎ強度を求める機能を備える。
【0063】
通信性能予測装置300は、光送受信装置104から取得した通信記録に基づいて通信性能予測値を生成し、生成した通信性能予測値を通信装置105に出力する。通信装置105は、伝送データを光送受信装置104と送受信するとともに、通信性能予測装置300から取得した通信性能予測値を処理する。本実施形態の通信装置105は、第1及び第2の実施形態の通信装置105と同様の機能を備え、地上局G31の内部に備えられていてもよい。
【0064】
図14は、第3の実施形態の通信性能予測装置300の構成例を示すブロック図である。通信性能予測装置300は、第2の実施形態の通信性能予測装置200と比較して、第1揺らぎ算出部201に代えて、揺らぎ測定部301を備える点で相違する。通信性能予測装置300は、第2の実施形態の通信性能予測装置200と同様の、仰角算出部202、第2揺らぎ算出部203、及び通信性能算出部204を備える。揺らぎ測定部301以外の各部の機能は、第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
通信性能予測装置300は、衛星S32又はS33から受信した光の強度の変動を測定する。そして、通信性能予測装置300は、その測定結果から地上局G31付近の大気揺らぎ強度を求めることで、衛星S32〜S34と通信することなく予測対象衛星の通信性能を予測する。例えば、地上局G31が伝送データの送受信を行わない場合であっても、他の衛星から受信した光を用いて大気揺らぎ強度の予測が可能となる。
【0066】
図15は、通信性能予測装置300の動作手順の例を示すフローチャートである。地上局G11の揺らぎ測定部301は、他の衛星S32又はS33から受信した光強度の変動に基づいて大気揺らぎを測定する(
図15のステップS031)。以降のステップS032〜S034は、第2の実施形態の
図11のステップS022〜S024と同様である。
【0067】
なお、第1の実施形態の先行衛星S12、第2の実施形態の他の衛星S22又はS23が、本実施形態の他の衛星S32又はS33の機能を備えてもよい。地上局G11又はG21は、本実施形態と同様の手順で衛星S12、S22又はS23から受信した光の強度の変動を測定し、大気揺らぎ強度を求めてもよい。
【0068】
(第3の実施形態の変形例)
図16は第3の実施形態の通信性能予測システム30の変形例を説明する図である。通信性能予測システム31では、ガイド星S37あるいはレーザガイド星S38を用いて大気揺らぎ強度を測定する点で、第3の実施形態の通信性能予測システム30とは異なる。
【0069】
図13において、ガイド星S37は宇宙空間に存在する明るい星(例えば恒星)である。レーザガイド星S38は、地上局G31から放射したレーザ光によって大気上層部の元素(例えばナトリウム)を励起させることで発光する擬似的な恒星である。地上局G31は、ガイド星あるいはレーザガイド星から受信する光の強度の変動によって大気揺らぎを算出する。他の動作は第3の実施形態と同様である。
【0070】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態のいずれかが選択される。
図17は、第4の実施形態による通信性能の予測手順の例を示すフローチャートである。
【0071】
まず、予測対象衛星と地上局との通信の予定時刻から所定の時間以前までの期間内に、予測対象衛星と同一軌道上の衛星(先行衛星)との通信記録があるかを判定する(
図14のステップS041)。通信記録は、衛星と地上局との通信の際の通信性能を含む。そのような通信記録があった場合(ステップS041:YES)、第1の実施形態の手順により通信性能の時間変化を予測する(ステップS042)。
【0072】
先行衛星と地上局との通信記録がない場合(ステップS041:NO)、当該期間内に同一軌道以外の衛星(他の衛星)との通信記録があるかを判定する(ステップS043)。他の衛星との通信記録があった場合(ステップS043:YES)、第2の実施形態の手順により通信性能の時間変化を予測する(ステップS044)。他の衛星との通信記録がなかった場合(ステップS043:NO)、第3の実施形態の手順により通信性能の時間変化を予測する(ステップS045)。
【0073】
本実施形態の手順によれば、通信記録の有無によって各実施形態の手順を選択することで、より予測精度が高い手順によって通信性能を予測できる。
【0074】
なお、本発明の実施形態は以下の付記のようにも記載されうるが、これらには限定されない。
【0075】
(付記1)
第1の移動体と地上局との間で行われる第1の光空間通信の性能である第1の通信性能を含む通信記録を記録し、第2の移動体と前記地上局との間で行われる第2の光空間通信の設定である通信設定を取得し、前記第2の光空間通信の性能である第2の通信性能を前記通信記録及び前記通信設定に基づいて予測する処理手段を備える、
通信性能予測装置。
【0076】
(付記2)
前記通信記録は、前記第1の光空間通信における、
前記第1の移動体の仰角と前記第1の通信性能との関係、及び、
前記第1の移動体の通信デバイスの設定、及び、
前記地上局の通信デバイスの設定を含み、
前記通信設定は、前記第2の光空間通信における、
前記第2の移動体の仰角及び前記第2の移動体の通信デバイスの設定及び前記地上局の通信デバイスの設定を含む、
付記1に記載された通信性能予測装置。
【0077】
(付記3)
前記処理手段は、前記第2の光空間通信における前記第2の移動体の仰角と略同一の範囲の前記第1の移動体の仰角における前記通信記録に基づいて前記第2の通信性能を予測する、付記1又は2に記載された通信性能予測装置。
【0078】
(付記4)
前記処理手段は、
前記第1の光空間通信の際の大気揺らぎ強度を示す第1の指標を求める第1揺らぎ算出手段、
前記第1の光空間通信の際の前記第1の移動体の仰角と前記第1の指標とから、前記第1の指標と前記第1の移動体の仰角との関係を求める仰角算出手段、
前記第1の指標と前記第1の移動体の仰角との関係に基づいて、前記第2の移動体の仰角から前記第2の光空間通信における前記大気揺らぎ強度を示す第2の指標を求める第2揺らぎ算出手段、
前記第2の指標、及び前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定、及び前記第2の移動体と前記地上局との距離に基づいて、前記第2の通信性能の予測結果を出力する通信性能算出手段、
を備える付記1乃至3のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
【0079】
(付記5)
前記第1揺らぎ算出手段は、前記第1の通信性能として前記第1の光空間通信の際の誤り率を用い、前記第1の光空間通信の受信マージンと前記誤り率との関係をγ−γ分布にフィッティングした際の累積確率の分散値を前記第1の指標とする、付記4に記載された通信性能予測装置。
【0080】
(付記6)
前記通信性能算出手段は、前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定の差分により生じる前記第1の通信性能と前記第2の通信性能との差分に基づいて前記第2の通信性能を予測する、付記4又は5に記載された通信性能予測装置。
【0081】
(付記7)
前記通信性能算出手段は、前記第1の移動体が前記第2の移動体と同一の軌道上を運行する場合に前記第2の通信性能の予測結果を出力する、付記4乃至6のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
【0082】
(付記8)
前記第1揺らぎ算出手段は、前記第1の移動体から受信した光強度の揺らぎから前記第1の指標を求める、付記4に記載された通信性能予測装置。
【0083】
(付記9)
前記通信性能算出手段は、前記第1の移動体が前記第2の移動体の軌道上と異なる位置にある場合に前記第2の通信性能の予測結果を出力する、付記8に記載された通信性能予測装置。
【0084】
(付記10)
前記第1揺らぎ算出手段は、前記第1の移動体から受信した光強度の揺らぎから求めた前記第1の指標に代えて、レーザガイド星又は天球上の星から受信した光強度の揺らぎを前記第1の指標として出力する、付記4乃至9のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
【0085】
(付記11)
前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定及び前記地上局の通信デバイスの設定は、それぞれ、送信光の強度、送信光の送信ビーム発散角、光学系の特性のばらつき、光受信感度の少なくとも1つを含む、付記1乃至10のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
【0086】
(付記12)
前記第1の光空間通信の際の光信号の遮蔽物の位置及び前記第2の光空間通信の際の前記遮蔽物の予測位置に基づいて前記第1の通信性能と前記第2の通信性能との差分を求め、求められた差分を用いて前記第2の通信性能を予測する、付記1乃至10のいずれか1項に記載された通信性能予測装置。
【0087】
(付記13)
前記第1及び第2の移動体と光空間通信を行う光送信機及び光受信機を備え、前記通信記録及び前記通信設定を出力する光送受信装置と、
付記1乃至12のいずれか1項に記載された通信性能予測装置と、
を備える地上局。
【0088】
(付記14)
付記13に記載された地上局と、前記地上局が備える前記通信性能予測装置が予測した前記第2の通信性能を処理する通信装置と、を備える通信性能予測システム。
【0089】
(付記15)
第1の移動体と地上局との間で行われる第1の光空間通信の性能である第1の通信性能を含む通信記録を取得し、
第2の移動体と前記地上局との間で行われる第2の光空間通信の設定である通信設定を取得し、
前記第2の光空間通信の性能である第2の通信性能を前記通信記録及び前記通信設定に基づいて予測する、
通信性能予測方法。
【0090】
(付記16)
前記通信記録は、前記第1の光空間通信における、
前記第1の移動体の仰角と前記第1の通信性能との関係、及び、
前記第1の移動体の通信デバイスの設定、及び、
前記地上局の通信デバイスの設定を含み、
前記通信設定は、前記第2の光空間通信における、
前記第2の移動体の仰角及び前記第2の移動体の通信デバイスの設定及び前記地上局の通信デバイスの設定を含む、
付記15に記載された通信性能予測方法。
【0091】
(付記17)
前記第2の光空間通信における前記第2の移動体の仰角と略同一の範囲の前記第1の移動体の仰角における前記通信記録に基づいて前記第2の通信性能を予測する、付記15又は16に記載された通信性能予測方法。
【0092】
(付記18)
前記第1の光空間通信の際の大気揺らぎ強度を示す第1の指標を求め、
前記第1の光空間通信の際の前記第1の移動体の仰角と前記第1の指標とから、前記第1の指標と前記第1の移動体の仰角との関係を求め、
前記第1の指標と前記第1の移動体の仰角との関係に基づいて、前記第2の移動体の仰角から前記第2の光空間通信における前記大気揺らぎ強度を示す第2の指標を求め、
前記第2の指標、及び前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定、及び前記第2の移動体と前記地上局との距離に基づいて、前記第2の通信性能を予測する、
付記15乃至17のいずれかに記載された通信性能予測方法。
【0093】
(付記19)
前記第1の通信性能として前記第1の光空間通信の際の誤り率を用い、前記第1の光空間通信の受信マージンと前記誤り率との関係をγ−γ分布にフィッティングした際の累積確率の分散値を前記第1の指標とする、付記18に記載された通信性能予測方法。
【0094】
(付記20)
前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定の差分により生じる前記第1の通信性能と前記第2の通信性能との差分に基づいて前記第2の通信性能を予測する、付記18又は19に記載された通信性能予測方法。
【0095】
(付記21)
前記第1の移動体が前記第2の移動体と同一の軌道上を運行する場合に実行される、付記18乃至20のいずれか1項に記載された通信性能予測方法。
【0096】
(付記22)
前記第1の移動体から受信した光強度の揺らぎから前記第1の指標を求める、付記18に記載された通信性能予測方法。
【0097】
(付記23)
前記第1の移動体が前記第2の移動体の軌道上と異なる位置にある場合に実行される、付記21に記載された通信性能予測方法。
【0098】
(付記24)
前記第1の移動体から受信した光強度の揺らぎから求めた前記第1の指標に代えて、レーザガイド星又は天球上の星から受信した光強度の揺らぎを前記第1の指標として用いる、付記18乃至23のいずれか1項に記載された通信性能予測方法。
【0099】
(付記25)
前記第1及び第2の移動体の通信デバイスの設定及び前記地上局の通信デバイスの設定は、それぞれ、送信光の強度、送信光の送信ビーム発散角、光学系の特性のばらつき、光受信感度の少なくとも1つを含む、付記15乃至24のいずれか1項に記載された通信性能予測方法。
【0100】
(付記26)
前記第1の光空間通信の際の光信号の遮蔽物の位置及び前記第2の光空間通信の際の前記遮蔽物の予測位置に基づいて前記第1の通信性能と前記第2の通信性能との差分を求め、求められた差分を用いて前記第2の通信性能を予測する、付記15乃至25のいずれか1項に記載された通信性能予測方法。
【0101】
(付記27)
通信性能予測装置のコンピュータに、
第1の移動体と地上局との間で行われる第1の光空間通信の性能である第1の通信性能を含む通信記録を取得する手順、
第2の移動体と前記地上局との間で行われる第2の光空間通信の設定である通信設定を取得する手順、
前記第2の光空間通信の性能である第2の通信性能を前記通信記録及び前記通信設定に基づいて予測する手順、
を実行させるための通信性能予測プログラム。
【0102】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0103】
また、それぞれの実施形態に記載された構成は、必ずしも互いに排他的なものではない。本発明の作用及び効果は、上述の実施形態の全部又は一部を組み合わせた構成によって実現されてもよい。
【0104】
以上の各実施形態に記載された機能及び手順は、各実施形態の通信性能予測装置が備えるコンピュータ(Central Processing Unit、CPU)がプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムは、固定された、一時的でない記録媒体に記録される。記録媒体としては半導体メモリ又は固定磁気ディスク装置が用いられるが、これらには限定されない。