(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電動モータは、前記回転軸の軸方向に沿った両側にコイルエンドを備え、一対の前記コイルエンドのうちの前記軸支部材寄りの一方の前記コイルエンドに対し、前記第1凹部の少なくとも一部が前記回転軸の径方向について対向している請求項1に記載の電動圧縮機。
前記圧縮部は、固定スクロールと、前記回転軸の回転に伴って前記固定スクロールに対し回転する可動スクロールとを備え、前記固定スクロールは渦巻壁を囲う外壁部を有し、前記通路形成孔は、前記フランジ部の周方向に延びる長孔状であり、前記通路形成孔の内面のうちの前記固定スクロール寄りの一部は、前記回転軸の軸方向に沿って前記外壁部の外周面の一部に連続している請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の軸支部材は、圧縮部と連通する吸入通路がモータハウジングとの嵌合面よりも内側に形成されている。このような軸支部材は剛性が低下し、圧縮部ひいては回転軸の振動を抑制しづらく、騒音が悪化しやすい。かといって、吸入通路を嵌合面の外側に形成しようとすると、軸支部材を含むハウジングが径方向に大型化してしまう。
【0006】
本発明の目的は、ハウジングの大径化を抑制しつつ静粛性に優れた電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電動圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング内に収容された回転軸と、前記ハウジング内に収容され、前記回転軸を回転させる電動モータと、前記ハウジング内に収容され、前記回転軸が回転することにより駆動して流体を圧縮する圧縮部と、前記電動モータを収容する有底筒形状のモータハウジングと、前記圧縮部を収容する有底筒形状のコンプレッサハウジングと、前記モータハウジングの開口側の第1端面及び前記コンプレッサハウジングの開口側の第2端面によって挟持され、前記電動モータを収容したモータ室を前記モータハウジングと形成するとともに、前記圧縮部を収容した圧縮室を前記コンプレッサハウジングと形成し、かつ前記回転軸が挿通された挿通孔を有し、当該回転軸を回転可能に支持する軸支部材と、を備え、前記モータハウジングと前記コンプレッサハウジングと前記軸支部材を締結部材で締結することにより前記ハウジングが形成され、前記モータ室と前記圧縮部とを連通させる流体通路が設けられている電動圧縮機であって、前記第1端面には前記締結部材が挿入される第1締結孔が設けられるとともに、前記モータ室と連通するように凹む第1凹部が設けられ、前記第2端面には前記締結部材が挿入される第2締結孔が設けられるとともに、前記圧縮室と連通するように凹む第2凹部が設けられ、前記軸支部材は、前記モータハウジングの開口に外嵌される嵌合面と、前記嵌合面から延出するとともに前記第1端面と前記第2端面に挟持されるフランジ部を有し、前記フランジ部は、前記締結部材が挿通される貫通孔と、前記第1凹部及び前記第2凹部と連通する通路形成孔とをそれぞれ周方向に並ぶように備え、少なくとも前記第1凹部と前記第2凹部と前記通路形成孔とから前記流体通路が形成されていることを要旨とする。
【0008】
これによれば、ハウジングは、モータハウジングの第1端面とコンプレッサハウジングの第2端面とでフランジ部を挟持し、フランジ部を挟んで配置された第1締結孔と第2締結孔とフランジ部の貫通孔とを貫通した締結部材による締結によって形成されている。そして、ハウジング形成の際に使用されるフランジ部に通路形成孔を設け、この通路形成孔に第1凹部及び第2凹部を連通させて流体通路を形成している。つまり、通路形成孔を、軸支部材とモータハウジングとの嵌合面よりも径方向外側にあるフランジ部に形成している。そして、通路形成孔と貫通孔がフランジ部の周方向に並ぶように配置されることで、フランジ部を大径化させることなく、既存の接合面を経由した流体通路を形成することができる。そして、流体通路を形成する通路形成孔を嵌合面の外側に形成しているため、軸支部材の剛性が低下することがなく、回転軸の振動を抑制しやすい。よって、ハウジングを大径化させることなく嵌合面の外側を経由する流体通路を形成することができ、ハウジングの大径化を抑制しつつ、静粛性に優れた電動圧縮機を提供できる。
【0009】
また、電動圧縮機について、前記電動モータは、前記回転軸の軸方向に沿った両側にコイルエンドを備え、一対の前記コイルエンドのうちの前記軸支部材寄りの一方の前記コイルエンドに対し、前記第1凹部の少なくとも一部が前記回転軸の径方向について対向していてもよい。
【0010】
これによれば、流体通路に向かう流体、又は流体通路から流れ出た流体が、一方のコイルエンドの近くを流れやすくなり、一方のコイルエンドを流体によって冷やすことができる。
【0011】
また、電動圧縮機について、前記圧縮部は、固定スクロールと、前記回転軸の回転に伴って前記固定スクロールに対前記圧縮部は、固定スクロールと、前記回転軸の回転に伴って前記固定スクロールに対し回転する可動スクロールとを備え、前記固定スクロールは渦巻壁を囲う外壁部を有し、前記通路形成孔は、前記フランジ部の周方向に延びる長孔状であり、前記通路形成孔の内面のうちの前記固定スクロール寄りの一部は、前記回転軸の軸方向に沿って前記外壁部の外周面の一部に連続していてもよい。
【0012】
これによれば、固定スクロールの外壁部によって通路形成孔の一部が塞がれることをなくし、流体通路の流路断面積が減ることを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハウジングの大径化を抑制しつつ静粛性に優れた電動圧縮機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電動圧縮機をスクロール型圧縮機に具体化した一実施形態を
図1〜
図4にしたがって説明する。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、流体(本実施形態では、冷媒ガス)が吸入される吸入口Ha及び流体が吐出される吐出口Hbが形成されたハウジングHを備えている。ハウジングHは、全体として略円筒形状である。ハウジングHは、有底円筒形状のモータハウジング11と、有底円筒形状のコンプレッサハウジング21と、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21の間に配置される円盤状の軸支部材31とを有している。モータハウジング11とコンプレッサハウジング21と軸支部材31は、モータハウジング11の開口側の端面及びコンプレッサハウジング21の開口側の端面が軸支部材31に突き合わされた状態で組み付けられている。
【0016】
ハウジングH内は、軸支部材31によってモータ室S1と圧縮室S2に区画されている。モータ室S1は、モータハウジング11と軸支部材31によって形成され、モータ室S1には電動モータ16が収容されている。また、圧縮室S2は、コンプレッサハウジング21と軸支部材31によって形成され、圧縮室S2には圧縮部15が収容されている。
【0017】
吸入口Haは、モータハウジング11の側壁部11a、詳細には当該側壁部11aのうちモータハウジング11の底部11b側の位置に設けられ、モータ室S1と連通している。吐出口Hbは、コンプレッサハウジング21の底部21aに設けられている。圧縮室S2に収容された圧縮部15は、吸入口Haからモータ室S1に吸入された流体を吸入し、圧縮して吐出口Hbから吐出する。モータ室S1に収容された電動モータ16は圧縮部15を駆動する。回転軸17、圧縮部15及び電動モータ16は、ハウジングH内に収容されている。電動モータ16は、ハウジングH内において吸入口Ha側に配置されており、圧縮部15は、ハウジングH内において吐出口Hb側に配置されている。
【0018】
回転軸17は、回転可能な状態でハウジングH内に収容されている。回転軸17の一部を支持する軸支部材31は、圧縮部15と電動モータ16との間の位置に配置されている。軸支部材31には、回転軸17が挿通された挿通孔32が形成され、挿通孔32には第1軸受18が設けられている。また、軸支部材31とモータハウジング11の底部11bとは回転軸17の軸方向に対向しており、モータハウジング11の底部11bにはモータ室S1に向けて円筒状のボス19が突出している。ボス19の内側には第2軸受20が設けられている。回転軸17は、両軸受18,20によって回転可能な状態で支持されている。
【0019】
ハウジングH内には、吸入口Haからモータ室S1に吸入された流体を圧縮部15に吸入するための流体通路としての吸入通路25が形成されている。吸入通路25から圧縮部15に吸入された流体を圧縮するための圧縮部15は、ハウジングHに固定された固定スクロール41と、固定スクロール41に対して公転運動が可能な可動スクロール42とを備えている。
【0020】
固定スクロール41は、コンプレッサハウジング21における周壁部21bの内周面に固定されている。固定スクロール41は、回転軸17と同一軸線上に設けられた円板状の固定側基板41aと、周壁部21bの内周面に沿って固定側基板41aから起立した外壁部41bと、外壁部41bより径方向内側において固定側基板41aから起立した固定側渦巻壁41cとを有する。外壁部41bは、固定側渦巻壁41cを囲う。外壁部41bには、外壁部41bの内側に流体を吸入するための吸入孔41dが外壁部41bを厚さ方向に貫通して形成されている。
【0021】
可動スクロール42は、円板状であって固定側基板41aと対向する可動側基板42aと、可動側基板42aから固定側基板41aに向けて起立した可動側渦巻壁42bとを備えている。固定スクロール41と可動スクロール42とは互いに噛み合っている。詳細には、固定側渦巻壁41cと可動側渦巻壁42bとは、外壁部41bより径方向内側にて互いに噛み合っており、固定側渦巻壁41cの先端面は可動側基板42aに接触しているとともに、可動側渦巻壁42bの先端面は固定側基板41aに接触している。そして、固定スクロール41と可動スクロール42とによって、流体を圧縮する流体圧縮室24が区画されている。
【0022】
軸支部材31の挿通孔32は、可動スクロール42の可動側基板42aによって閉じられ、挿通孔32と可動スクロール42によって背圧室47が区画されている。背圧室47には、流体圧縮室24で圧縮された後の流体が導入されている。背圧室47に導入された流体により、背圧室47は吸入圧より高圧とされ、可動スクロール42が固定スクロール41に向けて付勢されている。よって、圧縮部15の駆動時、可動スクロール42に作用する、回転軸17の軸方向に沿った圧縮反力に抗して流体圧縮室24の密閉性が高められるようになっている。
【0023】
可動スクロール42は、回転軸17の回転に伴って公転運動するように構成されている。詳細には、回転軸17の一部は、軸支部材31の挿通孔32を介して圧縮部15に向けて突出している。そして、回転軸17における圧縮部15側の端面のうち回転軸17の軸線Lに対して偏心した位置には、偏心軸43が設けられている。偏心軸43にはブッシュ44が設けられている。ブッシュ44と可動スクロール42(詳細には可動側基板42a)とは軸受45を介して連結されている。
【0024】
また、スクロール型圧縮機10は、可動スクロール42の公転運動を許容する一方、可動スクロール42の自転を規制する自転規制部46を軸支部材31の外周側に備えている。なお、自転規制部46は、複数設けられている。回転軸17が予め定められた正方向に回転すると、可動スクロール42の正方向の公転運動が行われる。可動スクロール42は、固定スクロール41の軸線(すなわち回転軸17の軸線L)の周りで正方向に公転する。
【0025】
これにより、流体圧縮室24の容積が減少するため、吸入口Haからモータ室S1に吸入された流体は、電動モータ16の隙間を流れて吸入通路25に至る。さらに、流体は、吸入通路25を流れて圧縮室S2に流入した後、固定スクロール41の外壁部41bに形成された吸入孔41dを介して流体圧縮室24に吸入され、圧縮される。圧縮された流体は、固定側基板41aに設けられた吐出ポート48から吐出され、その後、吐出口Hbから吐出される。固定側基板41aには、吐出ポート48を覆う吐出弁49が設けられている。流体圧縮室24にて圧縮された流体は、吐出弁49を押し退けて吐出ポート48から吐出される。
【0026】
電動モータ16は、回転軸17を回転させることにより、可動スクロール42を公転運動させるものである。電動モータ16は、回転軸17と一体的に回転するロータ51と、ロータ51を取り囲むステータ52とを備えている。ロータ51は、回転軸17に連結されている。ロータ51には永久磁石(図示略)が設けられている。ステータ52は、ハウジングH(詳細にはモータハウジング11)の側壁部11aの内周面に固定されている。ステータ52は、筒状のロータ51に対して径方向に対向するステータコア53と、ステータコア53に捲回されたコイル54とを有している。コイル54は、ステータコア53の軸方向の両端面から突出するコイルエンド54aを備える。
【0027】
スクロール型圧縮機10は、電動モータ16を駆動させる駆動回路としてのインバータ55を備えている。インバータ55は、ハウジングH、詳細にはモータハウジング11の底部11bに取り付けられた円筒形状のカバー部材56内に収容されている。インバータ55とコイル54とは電気的に接続されている。
【0028】
次に、モータハウジング11、コンプレッサハウジング21及び軸支部材31について詳細に説明する。
図1又は
図2に示すように、モータハウジング11の開口端側には、モータハウジング11の周方向全体に亘って径方向外方へ突出した第1フランジ12が設けられている。モータハウジング11は、その開口側に位置する第1フランジ12に、軸支部材31に突き合わせられた第1端面12bを備える。また、モータハウジング11には、回転軸17の軸方向に沿って第1端面12bから凹む第1締結孔としての第1雌ねじ部12aが複数設けられている。複数の第1雌ねじ部12aはモータハウジング11の周方向へ等間隔おきに形成されている。
【0029】
また、モータハウジング11には、第1フランジ12の径方向に沿って内周面から外周面に向けて凹み、モータ室S1と連通する第1凹部13が複数設けられている。第1凹部13は、第1端面12bとモータハウジング11内、詳しくはモータ室S1とを連通させる。複数の第1凹部13は、モータハウジング11の周方向へ等間隔おきに形成されている。第1雌ねじ部12aと第1凹部13は、モータハウジング11の周方向へ交互に設けられている。
【0030】
第1凹部13は、電動モータ16の一対のコイルエンド54aのうち、軸支部材31寄りの一方のコイルエンド54aの外周面の一部に対し、回転軸17の径方向について対向している。第1凹部13は、モータハウジング11の周方向に複数設けられているため、一方のコイルエンド54aの外周面に対し、複数箇所で対向している。
【0031】
図1又は
図3に示すように、コンプレッサハウジング21の開口端側には、コンプレッサハウジング21の周方向全体に亘って径方向外方へ突出した第2フランジ22が設けられている。コンプレッサハウジング21は、その開口側に位置する第2フランジ22に、軸支部材31に突き合わせられた第2端面22bを備える。また、コンプレッサハウジング21には、回転軸17の軸方向に沿って第2端面22bから凹み、かつ第2フランジ22を厚さ方向に貫通する第2締結孔としての第2雌ねじ部22aが複数設けられている。複数の第2雌ねじ部22aはコンプレッサハウジング21の周方向へ等間隔おきに形成されている。
【0032】
また、コンプレッサハウジング21には、第2フランジ22の径方向に沿って内周面から外周面に向けて凹み、圧縮室S2と連通する第2凹部23が複数設けられている。第2凹部23は、第2端面22bとコンプレッサハウジング21内、詳しくは圧縮室S2とを連通させる。複数の第2凹部23は、コンプレッサハウジング21の周方向へ等間隔おきに形成されている。第2雌ねじ部22aと第2凹部23は、コンプレッサハウジング21の周方向へ交互に設けられている。
【0033】
図1又は
図2に示すように、軸支部材31の径方向の中央部には、当該軸支部材31を厚さ方向に貫通する挿通孔32が設けられている。軸支部材31の外周部にはフランジ部33が設けられている。また、軸支部材31には、外周面がモータハウジング11における第1フランジ12の内周面に外嵌される嵌合部34が設けられている。嵌合部34は円筒状であり、嵌合部34の中央部に挿通孔32が形成されている。嵌合部34は、電動モータ16寄りに小径部34aを備え、その小径部34aの内側に第1軸受18が支持されている。そして、嵌合部34の外周面が嵌合面としてモータハウジング11の開口に外嵌されることにより、軸支部材31に支持される回転軸17の軸線Lを、モータハウジング11の中心軸線と一致させやすくしている。また、フランジ部33は、嵌合部34の外周面から延出している。
【0034】
軸支部材31のフランジ部33には、フランジ部33を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔33aがフランジ部33の周方向へ等間隔おきに形成されている。また、フランジ部33には、フランジ部33を厚さ方向に貫通する複数の通路形成孔35がフランジ部33の周方向へ等間隔おきに設けられている。通路形成孔35は、フランジ部33の周方向へ長手が延びる長孔状である。また、通路形成孔35の長手は、フランジ部33の周方向に沿って円弧状に延びる。フランジ部33は、貫通孔33aと通路形成孔35とをそれぞれ周方向に交互に並ぶように備える。そして、貫通孔33aと通路形成孔35は、嵌合部34の外周面(嵌合面)の外側に設けられている。
【0035】
図1に示すように、ハウジングHにおいて、モータハウジング11の第1端面12bは、軸支部材31のフランジ部33の厚さ方向の一方の面に突き合わされ、コンプレッサハウジング21の第2端面22bは、フランジ部33の厚さ方向の他方の面に突き合わされている。
【0036】
第1フランジ12の第1雌ねじ部12aと、第2フランジ22の第2雌ねじ部22aとは、フランジ部33の貫通孔33aを介して連通している。そして、ハウジングHは、フランジ部33を挟んで配置された第1雌ねじ部12aと第2雌ねじ部22aとフランジ部33の貫通孔33aとを貫通した締結部材としてのボルト26による締結によって形成されている。したがって、第1雌ねじ部12a、第2雌ねじ部22a及び貫通孔33aには、ボルト26が挿入されている。そして、ハウジングHにおいて、フランジ部33は、モータハウジング11の第1端面12bとコンプレッサハウジング21の第2端面22bに挟持されている。
【0037】
また、
図1又は
図4に示すように、モータハウジング11の第1凹部13と、コンプレッサハウジング21の第2凹部23とは、フランジ部33の通路形成孔35を介して連通している。通路形成孔35は、第1端面12bでの第1凹部13の開口全体に対向し、第2端面22bでの第2凹部23の開口全体に対向している。
【0038】
通路形成孔35の内面のうち、フランジ部33の外周面寄りの部分は、回転軸17の軸方向に沿って、第1凹部13の内面のうち、第1フランジ12の外周面寄りの部分に連続している。また、通路形成孔35の内面のうち、フランジ部33の外周面寄りの部分は、回転軸17の軸方向に沿って、第2凹部23の内面のうち、第2フランジ22の外周面寄りの部分に連続している。さらに、通路形成孔35の内面のうち、固定スクロール41寄りの一部は、回転軸17の軸方向に沿って外壁部41bの外周面に連続している。
【0039】
そして、ハウジングH内には、第1凹部13と通路形成孔35と第2凹部23とから流体通路としての吸入通路25が形成されている。吸入通路25は、モータ室S1と圧縮部15の吸入孔41dとを連通させる。具体的には、吸入通路25は、モータ室S1の流体が吸入孔41dを介して流体圧縮室24に吸入される際に流体が流れる通路である。
【0040】
吸入通路25は、軸支部材31の径方向における背圧室47よりも外側に設けられているが、吸入通路25の一部を構成する通路形成孔35は、軸支部材31のフランジ部33に設けられている。フランジ部33は、ハウジングHの外周面の一部を構成する部位であり、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21とを軸支部材31を介して締結する際、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21によって挟持される部位である。すなわち、フランジ部33は、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21が突き合わされる既存の接合面である。したがって、通路形成孔35は、軸支部材31において、挿通孔32が設けられた嵌合部34ではなく、その嵌合部34の外周面(嵌合面)よりも径方向外側に設けられている。
【0041】
次に、スクロール型圧縮機10の作用について説明する。
電動モータ16への電力供給によって回転軸17が回転されると、ブッシュ44が回転軸17の周りを公転運動するとともに、可動スクロール42が公転運動する。すると、吸入口Haからモータ室S1に流体が吸入され、ハウジングH内に流入する。流体は、一対のコイルエンド54aのうち、モータハウジング11の底部11b寄りのコイルエンド54aに接触しながら、電動モータ16の隙間を通過し、回転軸17の軸方向へ流れる。
【0042】
流体は、軸支部材31寄りのコイルエンド54aに接触しながら、吸入通路25の第1凹部13側から当該吸入通路25に吸入され、吸入通路25の通路形成孔35及び第2凹部23を流れて、コンプレッサハウジング21内の圧縮室S2に流入する。そして、流体は、吸入孔41dから圧縮部15に吸入される。圧縮部15の流体圧縮室24に吸入された流体は、固定スクロール41の公転運動によって圧縮され、圧縮された流体は吐出ポート48から吐出され、その後、吐出弁49を押し退けて吐出口Hbから吐出される。なお、背圧室47には、圧縮後の高圧の流体が制御ガスとして導入され、この制御ガスにより、回転軸17の軸方向に沿って可動スクロール42を固定スクロール41に押し付けている。
【0043】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ハウジングHを形成する際、ボルト26にて締結するために使用される軸支部材31のフランジ部33に、吸入通路25を形成するための通路形成孔35を設けた。すなわち、通路形成孔35は、挿通孔32が形成された嵌合部34ではなく、その嵌合部34の外周面(嵌合面)より径方向外側に設けられている。そして、通路形成孔35と貫通孔33aがフランジ部33の周方向に並ぶように配置されることで、フランジ部33を大径化させることなく、既存の接合面を経由した吸入通路25を形成することができる。よって、嵌合部34、ひいては軸支部材31の剛性は低下することがなく、その結果として回転軸17の振動を抑制しやすく、スクロール型圧縮機10を静粛性に優れたものにできる。
【0044】
(2)モータハウジング11とコンプレッサハウジング21とを締結するためにボルト26が通されるフランジ部33に通路形成孔35を設けた。より具体的には、フランジ部33において、ボルト26が貫通する貫通孔33aに周方向に挟まれた位置に通路形成孔35を形成した。よって、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21とを締結するためのフランジ部33を有効利用することで、軸支部材31の大径化を抑制し、ハウジングHの大径化を抑制できる。
【0045】
(3)モータハウジング11とコンプレッサハウジング21によってフランジ部33が挟持された状態で、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21がボルト26によって締結されている。このため、フランジ部33は厚み方向に挟持されており、回転軸17を支持する軸支部材31であっても、その支持剛性が高まり、回転軸17の振動に伴う軸支部材31の振動を抑制でき、スクロール型圧縮機10の静粛性を優れたものにできる。
【0046】
(4)軸支部材31のフランジ部33に設けた通路形成孔35は、フランジ部33の周方向へ長手が延びる長孔状である。よって、フランジ部33を径方向に大型化することなく、通路形成孔35によって形成される吸入通路25の一部において流路断面積を確保しやすい。
【0047】
(5)第1凹部13は第1フランジ12に形成され、第2凹部23は第2フランジ22に形成されている。よって、モータハウジング11及びコンプレッサハウジング21においても、吸入通路25を形成するために、モータハウジング11とコンプレッサハウジング21とを締結するための第1フランジ12及び第2フランジ22を有効利用しており、ハウジングHの大径化を抑制できる。
【0048】
(6)第1凹部13は、軸支部材31寄りの一方のコイルエンド54aの外周面の一部に対し、回転軸17の径方向に対向している。よって、モータ室S1から吸入通路25に吸入された流体を、一対のコイルエンド54aのうち、軸支部材31寄りのコイルエンド54aに接触させることができる。また、吸入口Haから吸入された流体を、モータハウジング11の底部11b寄りのコイルエンド54aに接触させることができる。このため、第1凹部13の位置を設定することで、両方のコイルエンド54aを流体で冷却することができる。
【0049】
(7)通路形成孔35の内面のうち、固定スクロール41寄りの一部は、回転軸17の軸方向に沿って固定スクロール41の外壁部41bの外周面に連続している。このため、外壁部41bによって、通路形成孔35の一部が塞がれることをなくし、吸入通路25の流路断面積が減ることを抑制できる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 通路形成孔35は、フランジ部33の周方向へ長手が延びる長孔状でなくてもよい。例えば、通路形成孔35は丸孔状でもよいし、楕円孔状でもよい。
【0051】
○ 通路形成孔35、第1凹部13、及び第2凹部23は、それぞれ一つだけ設けられていてもよい。
○ 通路形成孔35、第1凹部13、及び第2凹部23は、それぞれ等間隔おきに設けられていなくてもよい。
【0052】
○ 通路形成孔35において、回転軸17寄りの内面が、外壁部41bの外周面と連続していなくてもよい。
○ 第1凹部13は、軸支部材31寄りの一方のコイルエンド54aに対し、回転軸17の径方向に対向していなくてもよい。
【0053】
○ 第1凹部13は、軸支部材31寄りの一方のコイルエンド54aの全体に対し、回転軸17の径方向に対向していてもよい。
○ 圧縮部15で圧縮された流体をモータ室S1に吐出し、モータハウジング11に設けた吐出口から流体を吐出するスクロール型圧縮機10であれば、第1凹部13、通路形成孔35及び第2凹部23によって形成される流体通路は吐出通路となる。
【0054】
○ 第1凹部13は、第1端面12bとモータ室S1とを連通させるように、第1フランジ12を貫通した孔であってもよい。
○ 第2凹部23は、第2端面22bと圧縮室S2とを連通させるように、第2フランジ22を貫通した孔であってもよい。
【0055】
○ 圧縮部15は、固定スクロール41と可動スクロール42とで構成されるタイプに限らず、例えば、ピストンタイプやベーンタイプなどに変更してもよい。
○ 実施形態では、吸入通路25を第1凹部13と通路形成孔35と第2凹部23とから構成したが、その他の部材に設けた孔を含めて吸入通路25(流体通路)を構成してもよい。
【0056】
○ 第1締結孔を雌ねじが形成されていない孔とするとともに、第2締結孔を雌ねじの形成されていない孔とする。そして、締結部材をスルーボルトとし、第1締結孔、貫通孔33a、及び第2締結孔を貫通させたスルーボルトにナットを螺合して、モータハウジング11と、軸支部材31と、コンプレッサハウジング21とを締結し、ハウジングHを形成してもよい。