(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943216
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】空気袋の給排気装置
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20210916BHJP
【FI】
A61H7/00 322B
A61H7/00 322A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-75259(P2018-75259)
(22)【出願日】2018年4月10日
(65)【公開番号】特開2018-192239(P2018-192239A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年11月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-98137(P2017-98137)
(32)【優先日】2017年5月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕也
【審査官】
小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−066444(JP,A)
【文献】
特開2004−141249(JP,A)
【文献】
特開2016−077569(JP,A)
【文献】
特表2015−516186(JP,A)
【文献】
特開平01−190359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気袋に対してポンプからの空気圧を分配器により分配して給排気を行う空気袋の給排気装置であって、
前記分配器は、前記ポンプからの空気圧を前記各空気袋に順次供給し、給気を終了した前記空気袋に対しては大気圧を供給して排気する構成とされており、
前記空気袋の給排気作動中は、前記ポンプ及び前記分配器を共に作動させ、前記空気袋の給排気作動停止時は、前記ポンプの作動を停止し、所定時間後に前記分配器を停止させる制御回路を備え、
前記所定時間は、作動中の前記分配器が前記空気袋の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換わる時間より長く設定されており、
前記ポンプは、モータにより作動されるように構成され、
前記分配器は、モータにより作動されるロータリバルブを含んで構成され、
前記制御回路は、
前記ポンプのモータが、電源スイッチ及び前記ポンプの駆動スイッチの直列回路を介して電源に接続されたポンプ回路と、
前記ロータリバルブのモータが、ディレイ回路と直列接続されて成り、この直列回路が前記ポンプ回路における前記ポンプのモータに対して並列接続されたバルブ回路とを備え、
前記ディレイ回路は、入力電流の供給開始時は遅れることなく出力電流を発生し、入力電流の供給停止時は所定時間遅れて出力電流を停止する構成とされている
空気袋の給排気装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ロータリバルブは、
前記ポンプからの空気圧を分配される前記空気袋の数に応じた数の袋用通気路を有するバルブハウジングと、
前記ロータリバルブのモータにより回転駆動され、該バルブハウジングに相対回転して、一回転毎に一回ずつ前記ポンプからの空気圧を前記各通気路に順次分配するバルブ体とを備え、
前記ロータリバルブのモータは、前記バルブ体を一回転するのに要する時間を前記袋用通気路の数に比例した時間とするように回転速度を変更可能に構成されており、
前記ディレイ回路の所定時間は、前記通気路の数に係わらず一定時間とされている
空気袋の給排気装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記バルブハウジングは、前記複数の空気袋に連通された各袋用通気路を一つの仮想円周上に沿って等間隔に配列し、その円の中心に前記ポンプに連通されたポンプ用通気路を配置して成り、
前記バルブ体は、前記バルブハウジングの前記各袋用通気路及び前記ポンプ用通気路に対向して、前記ポンプ用通気路を中心として回転するように構成されており、前記ポンプ用通気路には常時連通され、回転角度に応じて多くても前記各袋用通気路のいずれか一つに連通される給気室と、回転角度に応じて前記給気室に連通された前記袋用通気路以外の全ての前記袋用通気路に連通され、大気に開放された排気室とを備え、
前記バルブ体の全回転角度範囲のうち前記給気室が占める回転角度範囲は、前記袋用通気路の数が多くなるのに応じて小さくされている
空気袋の給排気装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記空気袋は、着座用シートに設けられており、順次給排気されて着座者のマッサージを行うものとされており、
前記分配器は、前記各空気袋に順次給排気を行うロータリバルブであり、
前記所定時間は、作動中の前記ロータリバルブを介して前記空気袋の一つに給気を行う時間より長く設定されている空気袋の給排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージ装置等に装備された空気袋に給排気を行う空気袋の給排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の自動車では、座席内に装備した複数の空気袋に分配器を介して順次給排気を行い、着座乗員の体をマッサージするマッサージ装置が開発されている(特許文献1参照)。係るマッサージ装置において、空気袋への給排気作動を停止する際は、空気袋内の空気圧を大気圧状態としている。即ち、空気袋に空気圧がかからない状態としている。そのため、空気袋への給排気作動を停止する際は、空気袋に大気開放口を接続する状態となるまで分配器を回転維持している。それを実現するため、分配器に位置検出用リミットスイッチを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−77569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、位置検出用リミットスイッチを設ける分だけ装置の構成が複雑化する。
【0005】
本発明の課題は、空気袋の給排気装置において、空気袋への給排気作動を停止するとき、空気袋が大気圧に連通される位置に到達するまでの時間だけ分配器の作動を継続することにある。それにより、位置検出用リミットスイッチを不要として装置の構成を簡素化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、複数の空気袋に対してポンプからの空気圧を分配器により分配して給排気を行う空気袋の給排気装置である。前記分配器は、前記ポンプからの空気圧を前記各空気袋に順次供給し、給気を終了した前記空気袋に対しては大気圧を供給して排気する構成とされており、前記空気袋の給排気作動中は、前記ポンプ及び前記分配器を共に作動させ、前記空気袋の給排気作動停止時は、前記ポンプの作動を停止し、所定時間後に前記分配器を停止させる制御回路を備え、前記所定時間は、作動中の前記分配器が前記空気袋の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換わる時間より長く設定されている。
【0007】
第1発明によれば、空気袋への給排気作動を停止するとき、空気袋に大気圧が供給される位置に到達するまでの時間だけ分配器の作動を継続する。そのため、空気袋への給排気作動の停止が、空気袋に大気圧が連通される位置まで作動された後に行われる。このように空気袋に大気圧が連通される位置となるまで分配器を作動させる機能を、分配器の位置検出用リミットスイッチなしで達成して装置の構成を簡素化することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記ポンプは、モータにより作動されるように構成され、前記分配器は、モータにより作動されるロータリバルブを含んで構成されている。また、前記制御回路は、前記ポンプのモータが、電源スイッチ及び前記ポンプの駆動スイッチの直列回路を介して電源に接続されたポンプ回路と、前記ロータリバルブのモータが、ディレイ回路と直列接続されて成り、この直列回路が前記ポンプ回路における前記ポンプのモータに対して並列接続されたバルブ回路とを備える。更に、前記ディレイ回路は、入力電流の供給開始時は遅れることなく出力電流を発生し、入力電流の供給停止時は所定時間遅れて出力電流を停止する構成とされている。
【0009】
第2発明によれば、電源スイッチおよびポンプの駆動スイッチが共にオンされたとき、ポンプ及びロータリバルブを同時に作動して、ポンプで発生した空気圧をロータリバルブを介して各空気袋に順次分配することができる。一方、電源スイッチ及びポンプの駆動スイッチの少なくともいずれか一方がオフされると、ポンプは直ちに停止され、ロータリバルブはディレイ回路による所定時間だけ作動が継続される。そのため、空気袋の全てが大気圧が供給される状態となるまでロータリバルブは作動され、その後に停止する。従って、電源スイッチ及びポンプの駆動スイッチの少なくともいずれか一方が、どのタイミングでオフされても、各空気袋が排気されるまでロータリバルブを作動させる機能を、位置検出用リミットスイッチなしで達成して装置の構成を簡素化することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記ロータリバルブは、前記ポンプからの空気圧を分配される前記空気袋の数に応じた数の袋用通気路を有するバルブハウジングと、前記ロータリバルブのモータにより回転駆動され、該バルブハウジングに相対回転して、一回転毎に一回ずつ前記ポンプからの空気圧を前記各通気路に順次分配するバルブ体とを備える。そして、前記ロータリバルブのモータは、前記バルブ体を一回転するのに要する時間を前記袋用通気路の数に比例した時間とするように回転速度を変更可能に構成されており、前記ディレイ回路の所定時間は、前記通気路の数に係わらず一定時間とされている。
【0011】
第3発明によれば、ロータリバルブのバルブ体が一回転する時間を袋用通気路の数に比例した時間とされている。そのため、袋用通気路の数に係わらず、ディレイ回路による所定時間を一定時間としても、作動中のロータリバルブが空気袋の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換わる時間より長くすることができる。従って、ロータリバルブのモータの回転速度を調整するのは容易で、それに比べてディレイ回路の所定時間を調整するのは容易でない場合、ポンプを停止した後、作動中のロータリバルブが空気袋の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換えるタイミングを、袋用通気路の数に応じて調整することを容易にすることができる。
【0012】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記バルブハウジングは、前記複数の空気袋に連通された各袋用通気路を一つの仮想円周上に沿って等間隔に配列し、その円の中心に前記ポンプに連通されたポンプ用通気路を配置して成る。また、前記バルブ体は、前記バルブハウジングの前記各袋用通気路及び前記ポンプ用通気路に対向して、前記ポンプ用通気路を中心として回転するように構成されており、前記ポンプ用通気路には常時連通され、回転角度に応じて多くても前記各袋用通気路のいずれか一つに連通される給気室と、回転角度に応じて前記給気室に連通された前記袋用通気路以外の全ての前記袋用通気路に連通され、大気に開放された排気室とを備える。そして、前記バルブ体の全回転角度範囲のうち前記給気室が占める回転角度範囲は、前記袋用通気路の数が多くなるのに応じて小さくされている。
【0013】
第4発明によれば、ロータリバルブのバルブ体が一回転する時間を袋用通気路の数に比例した時間とされ、バルブ体の回転速度が袋用通気路の数に応じて遅くされる。そのため、袋用通気路の数に応じてバルブ体の給気室の回転角度範囲を小さくし、排気室の回転角度範囲を大きくしている。従って、袋用通気路の数が多いほど排気室の回転角度範囲が大きくされ、袋用通気路の数が多いほど排気室に対向してバルブハウジング上で袋用通気路の形成される部分の面積も大きくなり、袋用通気路の形成を容易にすることができる。
【0014】
本発明の第5発明は、上記第1〜第4発明のいずれかにおいて、前記空気袋は、着座用シートに設けられており、順次給排気されて着座者のマッサージを行うものとされており、前記分配器は、前記各空気袋に順次給排気を行うロータリバルブであり、前記所定時間は、作動中の前記ロータリバルブを介して前記空気袋の一つに給気を行う時間より長く設定されている。
【0015】
第5発明によれば、ロータリバルブを用いたマッサージ装置において、マッサージ装置が停止されるとき、ロータリバルブが空気袋に給気を行わず、排気を行う状態となるまで作動した後に停止される。このように空気袋の排気を行う状態となるまでロータリバルブを作動させる機能を、位置検出用リミットスイッチなしで達成して装置の構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態を適用したマッサージ装置の外観斜視図である。
【
図2】上記実施形態におけるロータリバルブの外観斜視図である。
【
図4】上記ロータリバルブにおけるバルブハウジングの下面図である。
【
図6】上記ロータリバルブにおけるバルブ体の平面図である。
【
図8】上記制御回路の作動を説明するためのタイムチャートである。
【
図9】
図8と同様のタイムチャートであり、
図8とは別の作動状態を示す。
【
図10】本発明の第2実施形態のロータリバルブにおけるバルブ体の平面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態のロータリバルブにおけるバルブ体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態を示す。
図1は、マッサージ装置4を備えた自動車用シート(本発明の着座用シートに相当する。以下、単にシートという)1を示し、マッサージ装置4は、本発明に係る空気袋の給排気装置を備えている。
【0018】
シート1は、背凭れを成すシートバック2と座部を成すシートクッション3とを備え、シートバック2の着座面に沿って複数個のブラダ(本発明の空気袋に相当)63を配置して成る。この場合、ブラダ63は、シートバック2内に固定されたボード61上で横方向に2個、縦方向に3個、合計6個設けられている。そして、横方向の2個を一組として給排気され、例えば、シートバック2の下側から上側へ各ブラダ63に順次、給排気が行われ、乗員の体のマッサージが行われるようになっている。以下、このマッサージ装置4を、ブラダ63を3組備えることから3チャンネルのマッサージ装置という。ここでは、シートバック2のみにマッサージ装置4を備えたが、同様のマッサージ装置4をシートクッション3に備えてもよい。
【0019】
図7は、マッサージ装置4の制御回路を示す。制御回路は、ポンプ10のモータ11が、イグニッションスイッチ(本発明の電源スイッチに相当)51及びマッサージスイッチ(本発明のポンプの駆動スイッチに相当)の直列回路を介して電源に接続されたポンプ回路54を備える。また、ロータリバルブ(本発明の分配器に相当)20のモータ30が、ディレイ回路53と直列接続されて、この直列回路がポンプ回路54のモータ11に対して並列接続されたバルブ回路55を備える。
【0020】
ポンプ10は、作動されることにより、各ブラダ63に供給するための空気圧を発生させる。また、ロータリバルブ20は、作動されることにより、バルブ40が回転され、ポンプ10からの空気圧を各ブラダ63に分配する。ロータリバルブ20は、
図1に示す配管62を介して各ブラダ63に接続されている。そのため、ポンプ10及びロータリバルブ20が作動することにより、ポンプ10により発生された空気圧がロータリバルブ20を介して各ブラダ63に順次分配される。
【0021】
ディレイ回路52は、イグニッションスイッチ51及びマッサージスイッチ52の両方がオフからオンとされたときは、時間遅れなくロータリバルブ20のモータ30に電流を供給し、イグニッションスイッチ51及びマッサージスイッチ52の少なくともいずれか一方がオンからオフとされたときは、所定時間遅れてロータリバルブ20のモータ30に電流供給を遮断する。ディレイ回路52には、定電圧電源(+B)が供給されている。ディレイ回路52を含む制御回路は、アナログ回路により構成されてもよいし、マイクロコンピュータのソフトウェアにより構成されてもよい。ここでは、制御回路全体はアナログ回路により構成されているが、モータ30は、回転速度制御付きモータとされている。
【0022】
<ロータリバルブ20の構成>
図2〜6は、ロータリバルブ20を示す。
図3のように、ロータリバルブ20は、大きく分けて3つの部品から成り、モータアッシー31と、バルブ体41と、バルブハウジング42から成る。モータアッシー31は、ここでは内部構成の図示を省略したが、モータと減速機と出力軸32が一つのケーシング内に収容されて成る。また、バルブ体41は、その回転軸41eがモータアッシー31の出力軸32に結合されて回転される。更に、バルブハウジング42は、
図4、5のように、下面に形成された円形の凹部42g内にバルブ体41の上面を受け入れるように構成されている。
【0023】
バルブハウジング42の凹部42gの反対側面上には、4本のパイプ42a、42bが一体成形にて設けられている。4本のうち、1本のパイプ42aは、円形の凹部42gの中心にポンプ用通気路42eが連通されている。その他の3本のパイプ42bは、凹部42gのポンプ用通気路42eを中心とした仮想同心円42h上に各袋用通気路42fが等間隔に連通されている。パイプ42aの先端部42cはポンプ10に連通されている。また、各パイプ42bの各先端部42dは、各ブラダ63に連通されている。
【0024】
バルブ体41の上面は、縦壁により3つの領域に分けられている。一つの領域は、バルブ体41がバルブハウジング42の凹部42g内に受け入られた状態で、パイプ42aのポンプ用通気路42e、及び3本のパイプ42bの各袋用通気路42fに連通可能な位置にあり、給気室41aを形成している。給気室41aは、ポンプ用通気路42eには常時連通した状態にあり、各袋用通気路42fにはバルブ体41の回転に応じて順次連通される。即ち、給気室41aは、バルブ体41の上面の中心から外周側に拡がる扇形状とされている。
【0025】
他の一つの領域は、給気室41aを囲むように配置され、溝41cを形成している。更に他の一つの領域は、給気室41a及び溝41c以外の部分であり、排気室41bを形成している。溝41c内には、オーリング41dが嵌入されており、バルブ体41がバルブハウジング42の凹部42g内に受け入られた状態で、給気室41aと排気室41bとの間を気密状態にシールしている。
図6において、ハッチングを施した領域がシールされた領域を示す。給気室41aと排気室41bの面積は、バルブ体41の回転位置に係わらず、給気室41aに複数の袋用通気路42fが同時に連通しないようにされている。
図6において、バルブ体41の回転角度でシール領域を成す扇形状の拡がり角度は、X°とされている。なお、排気室41bは、バルブ体41がバルブハウジング42の凹部42g内に受け入られた状態でも、バルブハウジング42との隙間を介して大気に連通されている。
【0026】
<第1実施形態の作用>
図8のように、電源スイッチであるイグニッションスイッチ51が時刻t1にオフからオンとされ、マッサージスイッチ52が時刻t2にオフからオンとされると、ポンプ10用モータ11が作動される。また、ディレイ回路52を介してロータリバルブ20用モータ30も作動される。このとき、ディレイ回路52は時間遅れなしに直ちにロータリバルブ20用モータ30を作動させる。
【0027】
こうしてポンプ10及びロータリバルブ20が作動されると、ポンプ10からの空気圧がロータリバルブ20のパイプ42aを介して給気室41aに供給される。そして、バルブ体41の回転に応じて給気室41aに各パイプ42bの袋用通気路42fが順次連通される。給気室41aに連通された袋用通気路42fには、給気室41a内の空気圧が供給され、その空気圧は、各パイプ42bを介して各ブラダ63に供給される。一方、バルブ体41の回転に応じて各パイプ42bの袋用通気路42fが排気室41bに連通されると、そのパイプ42bに連通されたブラダ63は排気される。そのため、各ブラダ63は順次給排気され、マッサージ動作が行われる。
【0028】
図8のように、時刻t3になって、マッサージスイッチ52がオンからオフとされると、ポンプ10用モータ11は作動停止される。一方、ロータリバルブ20用モータ30は、ディレイ回路52の機能によって所定時間Tだけ遅れて、時刻t4に作動停止される。所定時間Tは、ロータリバルブ20の回転速度をY(rpm)、バルブ体41の回転角度における給気室41aの角度をX(°)としたとき、60X/360Y以上とされる。即ち、この所定時間Tは、バルブ体41の回転中、給気室41a内に入ってポンプ10の空気圧を受ける状態とされている各パイプ42bの袋用通気路42fが、排気室41bに連通される状態となる最大時間以上とされている。
【0029】
このため、給気室41aに連通されて一つのブラダ63にポンプ10からの空気圧が供給されている途中で、マッサージスイッチ52がオンからオフとされたとき、ポンプ10は直ちに停止されるため、各ブラダ63への空気圧の供給は停止される。しかも、ロータリバルブ20の回転は継続されて、給気されていたブラダ63に対応するパイプが給気室41aから排気室41bに到達するまで移動される。従って、全てのブラダ63が排気された状態でマッサージ装置4は作動を停止される。
【0030】
図8のように、時刻t5になると、イグニッションスイッチ51がオンからオフとされる。なお、
図9のように、マッサージスイッチ52がオンからオフとされるよりも先にイグニッションスイッチ51がオンからオフとされると、その場合も、ポンプ10用モータ11の作動が停止され、所定時間T後にロータリバルブ用モータ30の作動が停止される。
【0031】
<第1実施形態の効果>
上記実施形態によれば、マッサージ装置4の作動を停止するとき、各ブラダ63を排気された状態とするため、ロータリバルブ20を直ちに停止せず、イグニッションスイッチ51又はマッサージスイッチ52をオフ時、給気中のブラダ63に対応するパイプが排気室41bに連通する位置に到達するまでロータリバルブ20を回転する制御をディレイ回路52による時間遅れ機能により行っている。そのため、従来のようにロータリバルブ20の回転位置を検出する必要はなくなり、位置検出用リミットスイッチを不要とすることができる。従って、マッサージ装置4の構成を簡素化することができる。
【0032】
<第2実施形態>
図10は、本発明の第2実施形態のバルブ140におけるバルブ体141を示す。このバルブ体141が第1実施形態のバルブ体41に対して特徴とする点は、ブラダ63を4組備える4チャンネルのマッサージ装置に適用するためのものとした点である。そのため、第1実施形態では、バルブハウジング42に設けられる袋用通気路42fが仮想同心円42h上に3個であるのに対し、第2実施形態のバルブ体141では、袋用通気路42fが4個とされている。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一の部分については第1実施形態における符号に「100」を加えた符号を付して再度の説明を省略する。
【0033】
第2実施形態におけるディレイ回路53の所定時間Tを第1実施形態における所定時間Tと同一とすると、第2実施形態では第1実施形態に対して、チャンネル数が「3」から「4」に増加したことに伴い、ロータリバルブ20の回転速度Yは第1実施形態の場合の4/3倍となり、給気室41aの角度Xは3/4倍となる。
【0034】
<第3実施形態>
図11は、本発明の第3実施形態のバルブ240におけるバルブ体241を示す。このバルブ体241が第1実施形態のバルブ体41に対して特徴とする点は、ブラダ63を5組備える5チャンネルのマッサージ装置に適用するためのものとした点である。そのため、第1実施形態では、バルブハウジング42に設けられる袋用通気路42fが仮想同心円42h上に3個であるのに対し、第3実施形態のバルブ体241では、袋用通気路42fが5個とされている。その他の構成は、第3実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一の部分については第1実施形態における符号に「200」を加えた符号を付して再度の説明を省略する。
【0035】
第3実施形態におけるディレイ回路53の所定時間Tを第1実施形態における所定時間Tと同一とすると、第3実施形態では第1実施形態に対して、チャンネル数が「3」から「5」に増加したことに伴い、ロータリバルブ20の回転速度Yは第1実施形態の場合の5/3倍となり、給気室41aの角度Xは3/5倍となる。
【0036】
<第2及び第3実施形態の効果>
第2及び第3実施形態では、ロータリバルブ20のバルブ体141、241が一回転する時間をチャンネル数(袋用通気路42fの数)に比例して増加した時間とされている。そのため、チャンネル数に係わらず、ディレイ回路53による所定時間Tを一定時間としても、作動中のロータリバルブ20がブラダ63の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換わる時間より長くすることができる。第2及び第3実施形態の場合、ロータリバルブ20のモータ30の回転速度を調整するのは回転速度制御付きモータにより容易にでき、それに比べてアナログ回路であるディレイ回路53の所定時間Tを調整するのはコンデンサ容量の調整など容易でないため、ポンプ10を停止した後、作動中のロータリバルブ20がブラダ63の一つに対し給気する状態から排気する状態に切り換えるタイミングを、チャンネル数に応じて調整することを容易にすることができる。
【0037】
また、第2及び第3実施形態では、ロータリバルブ20のバルブ体141、241が一回転する時間をチャンネル数に比例した時間とされ、バルブ体141、241の回転速度がチャンネル数に応じて遅くされる。そのため、チャンネル数に応じてバルブ体141、241の給気室141a、241aの回転角度範囲を小さくし、排気室141b、241bの回転角度範囲を大きくしている。従って、チャンネル数が多いほど排気室141b、241bの回転角度範囲が大きくされ、チャンネル数が多いほど排気室141b、241bに対向してバルブハウジング42上で袋用通気路42fの形成される部分の面積も大きくなり、袋用通気路42fの形成を容易にすることができる。
【0038】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明をマッサージ装置のブラダの給排気装置に適用したが、乗物用シートのランバーサポート等、他用途のアクチュエータとして用いる空気袋の給排気装置に適用してもよい。また、上記実施形態では、本発明を自動車用マッサージ装置に適用したが、マッサージ専用シートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車用シート(着座用シート、シート)
2 シートバック
3 シートクッション
4 マッサージ装置
10 ポンプ
11 モータ
20 ロータリバルブ(分配器)
30 モータ
31 モータアッシー
32 出力軸
40、140、240 バルブ
41、141、241 バルブ体
41a、141a、241a 給気室
41b、141b、241b 排気室
41c 溝
41d、141d、241d オーリング
41e 回転軸
42 バルブハウジング
42a、42b パイプ
42c、42d 先端部
42e ポンプ用通気路
42f 袋用通気路
42g 凹部
42h 仮想同心円
51 イグニッションスイッチ(電源スイッチ)
52 マッサージスイッチ
53 ディレイ回路
54 ポンプ回路
55 バルブ回路
61 ボード
62 配管
63 ブラダ(空気袋)