(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1自発光表示素子と、前記第2自発光表示素子と、前記第3自発光表示素子とは、それぞれ、第1発光層と、第2発光層と、第3発光層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であり、
前記第1発光機能層と、前記第2発光機能層と、前記第3発光機能層とは、それぞれ、第1正孔輸送層と、第2正孔輸送層と、第3正孔輸送層とを有し、
前記第1正孔輸送層と、前記第2正孔輸送層と、前記第3正孔輸送層とは、それぞれの膜厚が異なる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
前記第1発光機能層と、前記第2発光機能層と、前記第3発光機能層とにおいて、前記第1正孔輸送層と、前記第2正孔輸送層と、前記第3正孔輸送層とは、それぞれ、2層以上の積層体で構成される請求項4または5に記載の画像表示装置。
前記第1正孔輸送層と、前記第2正孔輸送層と、前記第3正孔輸送層とは、それぞれ、正孔輸送性材料と正孔注入性材料とを含む混合層と、正孔輸送性材料を含む単独層とを有する前記積層体で構成される請求項6に記載の画像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の画像表示装置および虚像表示装置を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
【0013】
なお、以下では、本発明の画像表示装置を、自発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を備えるものに適用した場合について説明する。また、各図では、説明の便宜上、各部の縮尺が適宜変更されており、図示の構成は実際の縮尺と必ずしも一致するわけではない。
【0014】
<画像表示装置>
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、本発明の画像表示装置の第1実施形態を示す平面図、
図2は、
図1に示す第1着色層(R)等の透過率−波長特性を示すグラフ、
図3は、
図1に示す第1画像光LR等のスペクトラムを示すグラフ、
図4は、
図1に示す第1ダイクロイックミラー56の透過率−波長特性を示すグラフ、
図5は、
図1に示す第2ダイクロイックミラー57の透過率−波長特性を示すグラフである。
【0015】
画像表示装置1は、
図1に示すように、第1基板11の表示領域である第1表示領域111に複数の第1発光素子15を備えた第1パネル10と、第2基板21の表示領域である第2表示領域211に複数の第2発光素子25を備えた第2パネル20と、第3基板31の表示領域である第3表示領域311に複数の第3発光素子35を備えた第3パネル30と、ダイクロイックプリズム50とを有している。
【0016】
第1パネル10は、第1表示領域111から第1波長域にピークを有する第1色光の第1画像光LRを複数の第1発光素子15の自発光により出射し、第2パネル20は、第2表示領域211から第2波長域にピークを有する第2色光の第2画像光LBを複数の第2発光素子25の自発光により出射し、第3パネル30は、第3表示領域311から第3波長域にピークを有する第3色光の第3画像光LGを複数の第3発光素子35の自発光により出射する。なお、第1波長域、第2波長域および第3波長域は、それぞれ異なっているが、一部が重複していてもよい。
【0017】
本実施形態では、第1波長域は、例えば、620nm〜750nmであり、第1パネル10は、この領域にピークを有し、第1色光としての赤色光の第1画像光LRを出射する。また、第2波長域は、例えば、450nm〜495nmであり、第2パネル20は、この領域にピークを有し、第2色光としての青色光の第2画像光LBを出射する。さらに、第3波長域は、例えば、495nm〜570nmであり、第3パネル30は、この領域にピークを有し、第3色光としての緑色光の第3画像光LGを出射する。すなわち、第1パネル10は、長波長の波長を有する赤色光の第1画像光LRを出射し、第2パネル20は、第1画像光LRよりも短波長の波長を有する青色光の第2画像光LBを出射し、第3パネル30は、第1画像光LRと第2画像光LBとの間の中波長の波長を有する緑色光の第3画像光LGを出射する。
【0018】
このような画像表示装置1において、第1パネル10は、第1表示領域111に設けられた複数の第1発光素子15の自発光により赤色の画像光を出射し、さらに、第1基板11には、第1発光素子15に対してダイクロイックプリズム50の側に、第1発光素子15から出射された赤色の画像光すなわち第1波長域の第1画像光LRを選択的に透過し得る第1着色層81(R)を有している。
【0019】
また、第2パネル20は、第2表示領域211に設けられた複数の第2発光素子25の自発光により青色の画像光を出射し、さらに、第2基板21には、第2発光素子25に対してダイクロイックプリズム50の側に、第2発光素子25から出射された青色の画像光すなわち第2波長域の第2画像光LBを選択的に透過し得る第2着色層81(B)を有している。
【0020】
さらに、第3パネル30は、第3表示領域311に設けられた複数の第3発光素子35の自発光により緑色の画像光を出射し、さらに、第3基板31には、第3発光素子35に対してダイクロイックプリズム50の側に、第3発光素子35から出射された緑色の画像光すなわち第3波長域の第3画像光LGを選択的に透過し得る第3着色層81(G)を有している。
【0021】
そして、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30が備える第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35は、本実施形態では、いずれも、有機エレクトロルミネッセンス素子で構成され、複数の第1発光素子15、複数の第2発光素子25および複数の第3発光素子35により、それぞれ、赤色の画像光、青色の画像光および緑色の画像光を発光する。すなわち、本実施形態のパネル10、20、30では、それぞれ、複数の第1発光素子15により、第1色としての赤色の画像光を自発光する第1自発光表示素子が構成され、また、複数の第2発光素子25により、第2色としての青色の画像光を自発光する第2自発光表示素子が構成され、さらに、複数の第3発光素子35により、第3色としての緑色の画像光を自発光する第3自発光表示素子が構成される。
【0022】
また、第1着色層81(R)は、例えば、
図2に示すように、破線P81(R)で示す透過率−波長特性を有しており、赤色光以外の光を吸収する光吸収系のフィルター層である。次に、第2着色層81(B)は、一点鎖線P81(B)で示す透過率−波長特性を有しており、青色光以外の光を吸収する光吸収系のフィルター層である。次に、第3着色層81(G)は、二点鎖線P81(G)で示す透過率−波長特性を有しており、緑色光以外の光を吸収する光吸収系のフィルター層である。
【0023】
したがって、
図3に示すように、第1画像光LRは、第1発光素子15と第1着色層81(R)との作用により、破線LRで示すスペクトラムを有する赤色の画像光を示し、第2画像光LBは、第2発光素子25と第2着色層81(B)との作用により、一点鎖線LBで示すスペクトラムを有する青色の画像光を示し、第3画像光LGは、第3発光素子35と第3着色層81(G)との作用により、二点鎖線LGで示すスペクトラムを有する緑色の画像光を示す。
【0024】
ダイクロイックプリズム50(プリズム)は、第1入射面51と、第1入射面51と対向する第2入射面52と、第1入射面51および第2入射面52との間に設けられた第3入射面53と、第3入射面53と対向する出射面54とを有している。第1入射面51には第1パネル10が対向するように配置されており、第1入射面51には、第1パネル10から出射された第1色光としての赤色光の第1画像光LRが入射する。第2入射面52には第2パネル20が対向するように配置されており、第2入射面52には、第2パネル20から出射された第2色光としての青色光の第2画像光LBが入射する。第3入射面53には第3パネル30が対向するように配置されており、第3入射面53には、第3パネル30から出射された第3色光としての緑色光の第3画像光LGが入射する。そして、第1入射面51と第1パネル10とは透光性の接着剤19を介して固定され、第2入射面52と第2パネル20とは透光性の接着剤29を介して固定され、第3入射面53と第3パネル30とは透光性の接着剤39を介して固定されている。
【0025】
また、ダイクロイックプリズム50は、互いに45°の角度で交差するように配置された第1ダイクロイックミラー56、および第2ダイクロイックミラー57を有している。
【0026】
第1ダイクロイックミラー56は、
図4に示す実線La45のように、例えば、45°の角度で入射した光については、波長が約550nm以下の光を透過する一方、波長が約600nm以上の光を反射する。また、波長が550nmから600nmの光については、波長が長くなる程、透過率が低下する。したがって、第1ダイクロイックミラー56は、第1画像光LRを出射面54に向けて反射し、第2画像光LBおよび第3画像光LGを透過する。
【0027】
また、第2ダイクロイックミラー57は、
図5に示す実線Lb45のように、例えば、45°の角度で入射した光については、波長が約520nm以上の光を透過する一方、波長が約490nm以下の光を反射する。また、波長が490nmから520nmの光については、波長が長くなる程、透過率が上昇する。したがって、第2ダイクロイックミラー57は、第2画像光LBを出射面54に向けて反射し、第1画像光LRおよび第3画像光LGを透過する。したがって、ダイクロイックプリズム50は、第1パネル10から出射された第1色光としての赤色光の第1画像光LRと、第2パネル20から出射された第2色光としての青色光の第2画像光LBと、第3パネル30から出射された第3色光としての緑色光の第3画像光LGとの3色の光を、第1ダイクロイックミラー56および第2ダイクロイックミラー57の作用により合成された、カラー画像を出射面54から出射する。
【0028】
なお、第1ダイクロイックミラー56は、透過率および反射率が入射角依存性を有している。例えば、第1ダイクロイックミラー56は、入射角が38°の場合、
図4に示す破線La38のように、入射角が45°の場合より、透過する波長域が長波長側にシフトし、入射角が52°の場合、
図4に示す一点鎖線La52のように、入射角が45°の場合より、透過する波長域が短波長側にシフトする。
【0029】
また、第2ダイクロイックミラー57は、第1ダイクロイックミラー56と同様に、透過率および反射率が入射角依存性を有している。第2ダイクロイックミラー57は、例えば、入射角が38°の場合、
図5に示す破線Lb38のように、入射角が45°の場合より、透過する波長域が長波長側にシフトし、入射角が52°の場合、
図5に示す一点鎖線Lb52のように、入射角が45°の場合より、透過する波長域が短波長側にシフトする。
【0030】
(第1パネル10の電気的構成)
図6は、
図1に示す第1パネル10の電気的構成を示す説明図、
図7は、
図6に示す第1表示領域111内の各画素(画素回路)の回路図である。なお、以下では、説明の都合上、
図6中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」として説明を行う。
【0031】
第1パネル10は、
図6に示すように、第1基板11の上面すなわち一方面に、第1表示領域111、周辺領域112、および実装領域113を有している。この第1パネル10において、本実施形態では、第1基板11は、シリコン等の半導体基板で構成される。この第1基板11において、第1表示領域111は、複数の画素Pが配列された矩形状の領域である。第1表示領域111には、X方向に延在する複数の走査線62と、各走査線62に対応してX方向に延在する複数の制御線64と、X方向に交差するY方向に延在する複数の信号線61とが形成される。複数の走査線62と複数の信号線61との各交差に対応して画素Pが形成される。したがって、複数の画素Pは、X方向およびY方向にわたり行列状すなわち格子状に配列する。
【0032】
周辺領域112は、第1表示領域111の周りを囲む矩形枠状の領域である。周辺領域112には駆動回路41が設けられている。駆動回路41は、第1表示領域111内の各画素Pを駆動する回路であり、2個の走査線駆動回路42と信号線駆動回路44とを含んで構成される。本実施形態の第1パネル10は、第1基板11の表面に直接的に形成されたトランジスター等の能動素子によって駆動回路41が構成された回路内蔵型の表示装置である。
【0033】
実装領域113は、周辺領域112を挟んで第1表示領域111とは反対側の領域であり、複数の実装端子47が配列されている。各実装端子47には、制御回路や電源回路等の各種の外部回路(図示せず)から制御信号や電源電位が供給される。外部回路は、例えば実装領域113に接合された可撓性の配線基板(図示せず)に実装されている。
【0034】
また、画素Pは、
図7に示すように、第1発光素子15、駆動トランジスターTDR、発光制御トランジスターTEL、選択トランジスターTSL、および容量素子Cとを含んで構成される。なお、
図7では、画素Pの各トランジスターTDR、TEL、TSLをPチャネル型としたが、Nチャネル型のトランジスターを利用することも可能である。
【0035】
第1発光素子15は、有機EL材料の発光層を含む発光機能層46を第1電極E1(陽極)と第2電極E2(陰極)との間に介在させた有機EL素子すなわち電気光学素子である。第1電極E1は画素P毎に個別に形成され、第2電極E2は複数の画素Pに亘って連続している。第1発光素子15は、第1電源導電体48と第2電源導電体49とを連結する電流経路上に配置される。第1電源導電体48は、高位側の電源電位VEL(第1電位)が供給される電源配線であり、第2電源導電体49は、低位側の電源電位VCT(第2電位)が供給される電源配線である。
【0036】
駆動トランジスターTDRと発光制御トランジスターTELとは、第1電源導電体48と第2電源導電体49とを連結する電流経路上で第1発光素子15に対して直列に配置される。具体的には、駆動トランジスターTDRの一対の電流端のうちの一方(ソース)は第1電源導電体48に接続される。発光制御トランジスターTELは、駆動トランジスターTDRの一対の電流端のうちの他方(ドレイン)と第1発光素子15の第1電極E1との導通状態(導通/非導通)を制御するスイッチとして機能する。駆動トランジスターTDRは、自身のゲート−ソース間の電圧に応じた電流量の駆動電流を生成する。発光制御トランジスターTELがオン状態に制御された状態では、駆動電流が駆動トランジスターTDRから発光制御トランジスターTELを経由して第1発光素子15に供給されることで第1発光素子15が駆動電流の電流量に応じた輝度で発光する。発光制御トランジスターTELがオフ状態に制御された状態では第1発光素子15に対する駆動電流の供給が遮断されることで第1発光素子15は消灯する。発光制御トランジスターTELのゲートは制御線64に接続される。
【0037】
選択トランジスターTSLは、信号線61と駆動トランジスターTDRのゲートとの導通状態(導通/非導通)を制御するスイッチとして機能する。選択トランジスターTSLのゲートは走査線62に接続される。また、容量素子Cは、第1電極C1と第2電極C2との間に誘電体を介在させた静電容量である。第1電極C1は駆動トランジスターTDRのゲートに接続され、第2電極C2は第1電源導電体48(駆動トランジスターTDRのソース)に接続される。したがって、容量素子Cは、駆動トランジスターTDRのゲート−ソース間の電圧を保持する。
【0038】
信号線駆動回路44は、外部回路から供給される画像信号が画素P毎に指定する階調に応じた階調電位を書込期間(水平走査期間)毎に複数の信号線61に対して並列に供給する。他方、各走査線駆動回路42は、各走査線62に走査信号を供給することで複数の走査線62の各々を書込期間毎に順次に選択する。走査線駆動回路42が選択した走査線62に対応する各画素Pの選択トランジスターTSLはオン状態に遷移する。したがって、各画素Pの駆動トランジスターTDRのゲートには信号線61と選択トランジスターTSLとを経由して階調電位が供給され、容量素子Cには階調電位に応じた電圧が保持される。他方、書込期間での走査線62の選択が終了すると、各走査線駆動回路42は、各制御線64に制御信号を供給することで当該制御線64に対応する各画素Pの発光制御トランジスターTELをオン状態に制御する。したがって、直前の書込期間で容量素子Cに保持された電圧に応じた駆動電流が駆動トランジスターTDRから発光制御トランジスターTELを経由して第1発光素子15に供給される。このようにして、第1発光素子15が階調電位に応じた輝度で発光することで、画像信号が指定する任意の第1画像光LRが第1表示領域111から出射される。すなわち、第1パネル10がこのような電気的構成をなしていることから、液晶パネルを用いることなく、複数の第1発光素子15単独で、所望の第1画像光LRを出射させることができる。
【0039】
(第1パネル10の断面構成)
図8は、
図1に示す第1パネル10の断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図8中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0040】
図8に示すように、第1基板11には、画素Pの選択トランジスターTSL等のトランジスターの能動領域40(ソース/ドレイン領域)が形成され、能動領域40の上面は絶縁膜B0(ゲート絶縁膜)で被覆されている。絶縁膜B0の上面にはゲート電極GSLが形成されている。ゲート電極GSLの上層側には複数の絶縁層BA〜BEと複数の配線層WA〜WEとを交互に積層した多層配線層が形成される。各配線層は、アルミニウムや銀等を含有する低抵抗な導電材料で形成される。絶縁層BAの上面には、
図7に示す走査線62等を含む配線層WAが形成されている。絶縁層BBの上層には、
図7に示す信号線61や第1電極C1等を含む配線層WBが形成されている。絶縁層BCの表上層には、
図7に示す第2電極C2等を含む配線層WCが形成されている。絶縁層BDの表上層には、
図7に示す第1電源導電体48等を含む配線層WDが形成されている。絶縁層BEの上層には、配線69と配線67等を含む配線層WEが形成されている。なお、本実施形態では、上述した、第1基板11、絶縁膜B0、ゲート電極GSL、絶縁層BA〜BD、配線層WA〜WCにより、画像表示装置1における支持基板が構成される。
【0041】
また、第1表示領域111において、絶縁層BEの上層には光学調整層60が形成される。この光学調整層60、すなわち光路調整層は、光共振器の共振波長を適正な波長に設定するための要素の1つであり、窒化珪素や、二酸化珪素等の光透過性の絶縁材料で形成される。具体的には、本実施形態では、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1と、発光層を含む発光機能層46と、半反射半透過電極としての第2電極E2との各層により光共振器すなわち微小共振器を構成している。そして、この光共振器における第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR(光学的距離)は、前記各層の膜厚に応じて適宜調整されるが、特に、本発明では、発光機能層46すなわち第1機能層の膜厚に応じて適宜調整する。これにより、第1パネル10において、第2電極E2側から第1色光が取り出されることで、第1パネル10から出射される光における共振波長が設定される。なお、発光機能層46すなわち第1機能層の膜厚に応じて、光路長dR(光学的距離)を調整する方法については、後に詳述する。また、本実施形態では、第1パネル10からは第1色光としての赤色光の第1画像光LRが出射されることから、光共振器の光路長dRは、第1画像光LRに適正な値すなわち距離に設定される。また、第1パネル10では、第2電極E2側から第1色光が取り出されることから、トップエミッション型の第1発光素子15が構成されている。
【0042】
より詳細には、光学調整層60の上面には、第1表示領域111内の画素P毎の第1電極E1が形成されている。第1電極E1は、透明電極を構成し、例えばITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)等の光透過性の導電材料で形成される。第1電極E1の周りには、絶縁性の画素定義層65が形成されている。第1電極E1の上面には発光機能層46が形成される。
【0043】
発光機能層46すなわち第1機能層は、赤色の光を発光する有機EL材料を含有して形成された発光層を含む有機層で構成され、電流の供給により赤色光を放射すなわち発光する。なお、発光機能層46は、発光層に供給される電子や正孔の輸送層または注入層が設けられた積層体で構成されていてもよい。この発光機能層46は、本実施形態では、第1表示領域111内の複数の画素Pにわたり連続して形成されている。
【0044】
発光機能層46の上層には、第1表示領域111の全域にわたり半反射半透過電極としての第2電極E2が形成されており、発光機能層46のうち、第1電極E1と第2電極E2とに挟まれた領域(発光領域)が発光する。そして、第2電極E2は、到達した光の一部を透過するとともに、残りを反射する半反射半透過層としても機能する。より具体的には、銀やマグネシウムを含有する合金等の光反射性の導電材料を充分に薄い膜厚に形成することで、半反射半透過性を有する半反射半透過電極として第2電極E2が形成される。そのため、発光機能層46からの放射光は、反射膜としての第1電源導電体48と、半反射半透過電極としての第2電極E2との間で往復し、その結果、特定の共振波長の成分である第1色光としての赤色光の第1画像光LRが選択的に増幅されたうえで第2電極E2を透過して観察側(第1基板11とは反対側)に出射する。すなわち、第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、第1電極E1と、発光層を含む発光機能層46と、第2電極E2との各層により、反射膜として機能する第1電源導電体48と半反射半透過電極として機能する第2電極E2との間で発光機能層46からの出射光を共振させる光共振器が形成される。
【0045】
なお、本実施形態では、第1パネル10において、光共振器を構成する各層のうち、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1とにより、第1基板部が構成される。
【0046】
また、本発明において、光学調整層60は、窒化珪素や、二酸化珪素等の光透過性の絶縁材料で構成されていればよく、これらを含有する単層体であっても、積層体であってもよく、光学調整層60を積層体で構成する場合、絶縁層BEを含めて、絶縁層BEと光学調整層60とで光学調整層と言うこともできる。
【0047】
さらに、周辺領域112では、第1表示領域111に形成された導電層と同層に複数の配線66、67、68、69等を含む金属配線16が形成されており、配線66、67、68、69は、例えば、配線の間に形成された絶縁層のコンタクトホールを介して電気的に接続される。
【0048】
第2電極E2の上層側には、第1基板11の全域にわたり封止体70が形成される。封止体70は、第1基板11上に形成された各要素を封止することで外気や水分の侵入を防止する光透過性の膜体であり、本実施形態では、第1封止層71と第2封止層72と第3封止層73との積層膜によって構成されている。第3封止層73は、第2電極E2の上層に形成されて第2電極E2の上面に直接に接触する。第3封止層73は、例えば、珪素化合物(典型的には窒化珪素や酸化珪素)等の絶縁性の無機材料である。また、第1封止層71は、第2電極E2や第3封止層73の表面の段差を埋める平坦化膜として機能する。第1封止層71は、例えば、エポキシ樹脂等の光透過性の有機材料により形成されている。さらに、第2封止層72は、第1基板11の全域にわたり形成されている。第2封止層72は、例えば、耐水性や耐熱性に優れた珪素窒化物や珪素酸窒化物等により形成される。
【0049】
また、封止体70(第2封止層72)の上面には、第1表示領域111において、第1着色層81(R)が形成され、周辺領域112において、遮蔽層80が形成されている。これにより、第1表示領域111において、第1着色層81(R)により、第1波長域の赤色光の透過が許容され、周辺領域112において、遮蔽層80により、第1波長域の赤色光が遮蔽される。
【0050】
また、第1パネル10では、第1着色層81(R)および遮蔽層80に対して第1基板11とは反対側に透光性のカバー基板18が接着剤17によって固定されている。これにより、第1着色層81(R)および遮蔽層80がカバー基板18により保護される。
【0051】
さらに、かかる構成の第1パネル10において、第1発光素子15は、本実施形態では、前述の通り、有機EL材料の発光層を含む発光機能層46を第1電極E1(陽極)と第2電極E2(陰極)との間に介在させた有機EL素子で構成され、発光機能層46は、例えば、第1電極E1(陽極)側から、発光層(赤色発光層)と、電子輸送層と、電子注入層とがこの順で積層された積層体で構成されるが、以下、第1発光素子15を構成する各層について説明する。
【0052】
[第1電極E1(陽極)]
第1電極E1(陽極)は、発光層に正孔を注入する電極である。この第1電極E1の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0053】
第1電極E1の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
このような第1電極E1の平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上200nm以下程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0055】
[第2電極E2(陰極)]
第2電極E2(陰極)は、電子注入層を介して電子輸送層に電子を注入する電極である。この第2電極E2の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
【0056】
第2電極E2の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0057】
[発光層(赤色発光層)]
発光層は、第1発光素子15では、赤色の発光光を発光する赤色発光層で構成され、例えば、赤色に発光する赤色発光材料(有機EL材料)と、赤色発光材料を保持するホスト材料とを含んで構成されている。
【0058】
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、テトラアリールジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0060】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C3’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0061】
ホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、下記式(6)に示すようなアントラセン誘導体、2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)のようなアントラセン誘導体および下記式(3)に示されるテトラセン誘導体等のアセン誘導体(アセン系化合物)、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0064】
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、ホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0065】
[電子輸送層]
電子輸送層は、第2電極E2(陰極)から電子注入層を介して注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものである。
【0066】
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、アザインドリジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
[電子注入層]
電子注入層は、第2電極E2(陰極)からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
【0068】
この電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0069】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層を構成することにより、発光素子は、高い輝度が得られるものとなる。
【0070】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li2O、LiO、Na2S、Na2Se、NaO等が挙げられる。
【0071】
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
【0072】
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
【0073】
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF2、BaF2、SrF2、MgF2、BeF2等が挙げられる。
【0074】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
(第2パネル20および第3パネル30の構成)
図9は、
図1に示す第2パネル20の断面図、
図10は、
図1に示す第3パネル30の断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図9、
図10中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0076】
図1に示す第2パネル20および第3パネル30は、第1パネル10と同様、
図6および
図7で説明した電気的構成を有しており、
図9および
図10に示すように、複数の第1発光素子15に代えて、それぞれ、青色の光を発光する有機EL材料を含有して形成された発光層(青色発光層)を含む有機層で構成された発光機能層46すなわち第2機能層を備えることで、青色の画像光を出射する複数の第2発光素子25、および、緑色の光を発光する有機EL材料を含有して形成された発光層(緑色発光層)を含む有機層で構成された発光機能層46すなわち第3機能層を備えることで、緑色の画像光を出射する複数の第3発光素子35を備えている。
【0077】
なお、第2発光素子25が備える発光機能層46が有する発光層(青色発光層)および第3発光素子35が備える発光機能層46が有する発光層(緑色発光層)は、それぞれ、例えば、以下のように構成される。
【0078】
[青色発光層]
青色発光層は、青色に発光する青色発光材料と、青色発光材料を保持するホスト材料とを含んで構成されている。
【0079】
このような青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、下記式(8)で示されるジスチリルジアミン系化合物等のジスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0081】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C2’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C2’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0082】
ホスト材料としては、赤色発光層のホスト材料として説明したのと同様のホスト材料を用いることができるが、中でも、アセン系化合物であることが好ましい。
【0083】
[緑色発光層]
緑色発光層は、緑色に発光する緑色発光材料と、緑色発光材料を保持するホスト材料(第3のホスト材料)とを含んで構成されている。
【0084】
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0085】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記式(9)に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0086】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられる。
【0087】
ホスト材料としては、赤色発光層のホスト材料として説明したのと同様のホスト材料を用いることができるが、中でも、アセン系化合物であることが好ましい。
【0088】
また、
図9に示すように、第2パネル20では、
図8を参照して説明した第1着色層81(R)に代えて、第2着色層81(B)が形成されており、第2着色層81(B)は、第2波長域の青色光の透過が選択的に許容される。また、
図9に示す、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1と、発光層を含む発光機能層46と、半反射半透過電極としての第2電極E2との各層のうち、特に、発光機能層46すなわち第2機能層の膜厚は、第2パネル20から出射される青色の第2画像光LBの波長に対応するように調整されて、光共振器において、反射膜として機能する第1電源導電体48と半反射半透過電極として機能する第2電極E2との間の光路長dB(光学的距離)が最適化されている。また、第2パネル20では、第2着色層81(B)に対して第2基板21とは反対側に透光性のカバー基板28が接着剤27によって固定されている。
【0089】
さらに、
図10に示すように、第3パネル30では、
図8を参照して説明した第1着色層81(R)に代えて、第3着色層81(G)が形成されており、第3着色層81(G)は、第3波長域の緑色光の透過が選択的に許容される。また、
図10に示す、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1と、発光層を含む発光機能層46と、半反射半透過電極としての第2電極E2との各層のうち、特に、発光機能層46すなわち第3機能層の膜厚は、第3パネル30から出射される緑色の第3画像光LGの波長に対応するように調整されて、光共振器において、反射膜として機能する第1電源導電体48と半反射半透過電極として機能する第2電極E2との間の光路長dG(光学的距離)が最適化されている。また、第3パネル30では、第3着色層81(G)に対して第3基板31とは反対側に透光性のカバー基板38が接着剤37によって固定されている。
【0090】
なお、本実施形態において、第2パネル20および第3パネル30において、光共振器を構成する各層のうち、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1とにより、第2基板部および第3基板部がそれぞれ構成される。
【0091】
また、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30では、それぞれ、光路長dR、光路長dBおよび光路長dGの長さが最適化されるが、前述の通り、第1パネル10は、長波長の波長を有する赤色光の第1画像光LRを出射し、第2パネル20は、第1画像光LRよりも短波長の波長を有する青色光の第2画像光LBを出射し、第3パネル30は、第1画像光LRと第2画像光LBとの間の中波長の波長を有する緑色光の第3画像光LGを出射する。そのため、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30において、光路長dR、光路長dBおよび光路長dGの長さは、光路長dR>光路長dG>光路長dBの順に調整することで最適化される。
【0092】
さて、以上のような画像表示装置1では、上述の通り、第1パネル10では、複数の第1発光素子15が備える発光機能層46すなわち第1機能層の膜厚は、赤色の第1画像光LRの波長に対応するように調整されている。また、第2パネル20では、複数の第2発光素子25が備える発光機能層46すなわち第2機能層の膜厚は、青色の第2画像光LBの波長に対応するように調整されている。さらに、第3パネル30では、複数の第3発光素子35が備える発光機能層46すなわち第3機能層の膜厚は、緑色の第3画像光LGの波長に対応するように調整されている。このように複数の第1発光素子15、複数の第2発光素子25および複数の第3発光素子35から出射させるべき画像光の波長領域が異なっている。そのため、複数の第1発光素子15、複数の第2発光素子25および複数の第3発光素子35における、発光機能層46の膜厚が異なることとなる。換言すれば、複数の第1発光素子15における発光機能層46すなわち第1機能層の膜厚、複数の第2発光素子25における発光機能層46すなわち第2機能層の膜厚、および、複数の第3発光素子35における発光機能層46すなわち第3機能層の膜厚がそれぞれ異なっている。
【0093】
このように、複数の第1発光素子15、複数の第2発光素子25および複数の第3発光素子35における発光機能層46の膜厚の大きさが、それぞれの発光素子15、25、35に応じて適宜設定されている。これにより、複数の第1発光素子15の光共振器において、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR(光学的距離)が最適化されるため、第1色領域にピークを有する赤色の第1画像光LRが確実に出射される。また、複数の第2発光素子25の光共振器において、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dB(光学的距離)が最適化されるため、第2色領域にピークを有する青色の第2画像光LBが確実に出射される。さらに、複数の第3発光素子35の光共振器において、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dG(光学的距離)が最適化されるため、第3色領域にピークを有する緑色の第3画像光LGが確実に出射される。すなわち、複数の第1発光素子15、複数の第2発光素子25および複数の第3発光素子35における、発光機能層46の膜厚の大きさを適宜設定することにより、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR、光路長dBおよび光路長dGを所望の距離に設定することができる。
【0094】
また、上記の通り、発光機能層46の膜厚、すなわち、第1機能層、第2機能層および第3機能層の膜厚を調整することで、光共振器における、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR、dB、dGを、適宜設定している。そのため、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30において、それぞれが備える、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35が有する第1基板部、第2基板部および第3基板部の厚さ方向における構成すなわち層構成を同一のものに設定し得る。
【0095】
換言すれば、第1基板部、第2基板部および第3基板部は、前述の通り、それぞれ、反射膜としての第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、透明電極としての第1電極E1との各層により構成されるが、第1基板部、第2基板部および第3基板部において、これら各層を同一の膜厚を有するものとし得る。すなわち、第1基板部、第2基板部および第3基板部において、それぞれ、反射膜としての第1電源導電体48を同一の膜厚を有するものとし、絶縁層BEを同一の膜厚を有するものとし、光学調整層60を同一の膜厚を有するものとし、透明電極としての第1電極E1を同一の膜厚を有するものとし得る。
【0096】
ここで、上述のような構成をなすパネル10、20、30は、通常、第1基板11、絶縁膜B0、ゲート電極GSL、絶縁層BA〜BD、配線層WA〜WCで構成される支持基板を形成し、この支持基板上に、第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60と、第1電極E1とにより構成される基板部、発光機能層46、第2電極E2、封止体70、着色層81、接着剤17、27、37およびカバー基板18、28、38を、それぞれ、この順で積層する工程を経ることで形成される。
【0097】
したがって、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35が有する第1基板部、第2基板部および第3基板部の厚さ方向における構成を同一のものに設定し得ることから、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30を製造する際に、支持基板上に対する基板部の形成まで、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30について、同一の工程で形成することができる。すなわち、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30を製造する際の工程の簡略化を図ることできる。そのため、パネル10、20、30を製造する際の歩留りの向上が図られるとともに、基板部が形成された支持基板の流動管理の複雑化を防止することができる。
【0098】
なお、本実施形態において、第1基板部、第2基板部および第3基板部の「厚さ方向における構成が同一」であるとは、第1基板部、第2基板部および第3基板部において、これらが備える、第1電源導電体48、絶縁層BE、光学調整層60および第1電極E1が、これらの層毎において同一の膜厚に設定されていることを言う。そして、この「同一の膜厚」を有するとは、同一の工程を経ることで成膜された場合の誤差を含むものとする。
【0099】
また、上記の通り、本発明では、発光機能層46の膜厚、すなわち、第1機能層、第2機能層および第3機能層を調整することで、光共振器における、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR、dB、dGを、適宜設定している。さらに、発光機能層46は、発光層からなる単層体で構成されていてもよく、この発光層に供給される電子や正孔の輸送層または注入層が設けられた積層体で構成されていてもよいが、第1電源導電体48と第2電極E2との間の光路長dR、dB、dGを、それぞれ適切な大きさに設定すると言う観点からは、発光機能層46は、積層体で構成されていることが好ましい。これにより、発光層の膜厚を変更することなく、光路長dR、dB、dGの大きさを適宜設定することができるため、発光層の膜厚を、発光素子15、25、35の発光効率をのみ考慮して、設定することが可能となる。
【0100】
さらに、発光機能層46を、前記積層体で構成する場合、発光機能層46は、発光層の他に、正孔輸送層を備え、この正孔輸送層の膜厚を調整することで、光路長dR、dB、dGの大きさが適宜設定されていることが好ましい。換言すれば、光路長dR、dB、dGの大きさを設定するために、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35がそれぞれ有する発光機能層46、すなわち第1機能層、第2機能層および第3機能層が備える正孔輸送層の膜厚がそれぞれ異なっていることが好ましい。このように、第2電極E2側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子15、25、35において、発光層に対して第2電極E2の反対側に位置する正孔輸送層の膜厚を調整する構成とすることで、第2電極E2側から取り出される光に干渉が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0101】
また、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35がそれぞれ有する発光機能層46、すなわち第1機能層、第2機能層および第3機能層において、発光機能層46が、発光層以外の層として、正孔輸送層の他に、前述の通り、電子輸送層を有する場合、正孔輸送層の膜厚は、電子輸送層の膜厚と発光層の膜厚との和よりも厚いことが好ましい。このように、正孔輸送層の膜厚が厚い場合であっても、発光層に対して第2電極E2の反対側に位置する正孔輸送層の膜厚を調整することで、第2電極E2側から取り出される光に干渉が生じるのをより的確に抑制または防止することができる。
【0102】
なお、本実施形態においては、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30では、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35から出射された赤色光、青色光および緑色光を、それぞれ、第1着色層81(R)、第2着色層81(B)および第3着色層81(G)により各波長域の画像光を透過させ、かつ、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30が光共振器および着色層を備える場合について説明したが、かかる場合に限定されず、例えば、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30は、着色層の形成が省略されたものであってもよい。また、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35は、それぞれ、白色光を発光するものであってもよい。
【0103】
また、本実施形態においては、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30が、それぞれ、カバー基板18、カバー基板28およびカバー基板38を備える場合について説明したが、これらカバー基板18、カバー基板28およびカバー基板38の形成が省略されたものであってもよい。
【0104】
[第2実施形態]
次に、本発明の画像表示装置の第2実施形態について説明する。
【0105】
図11は、本発明の画像表示装置の第2実施形態が備える第1パネルの断面図、
図12は、本発明の画像表示装置の第2実施形態が備える第2パネルの断面図、
図13は、本発明の画像表示装置の第2実施形態が備える第3パネルの断面図である。
【0106】
以下、第2実施形態の画像表示装置1について、前記第1実施形態の画像表示装置1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0107】
画像表示装置1は、
図11〜
図13に示す第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30において、第1電極E1は、透明電極ではなく、反射膜として構成される反射電極からなること以外は、前記第1実施形態の画像表示装置1と同様である。
【0108】
すなわち、第2実施形態の画像表示装置1では、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30において、第1電極E1は、透明性を有しない反射電極で構成される。これにより、本実施形態では、第1電源導電体48に代えて、第1電極E1が反射膜として機能する。そのため、
図11〜
図13に示すように、第1電極E1と、発光層を含む発光機能層46と、第2電極E2との各層により、光共振器が構成され、反射膜として機能する第1電極E1と半反射半透過電極として機能する第2電極E2との間の距離により光路長dR、dB、dGが設定される。
【0109】
なお、本実施形態のように、第1電極E1により反射膜を構成する場合、第1電極E1の下側すなわち第2電極E2の反対側に位置する、第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60とは、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30の機能が維持される範囲で、省略または他の層に置換することができる。また、第1電源導電体48と、絶縁層BEと、光学調整層60とが省略された場合には、第1パネル10、第2パネル20および第3パネル30において、光共振器を構成する各層のうち、反射膜としての第1電極E1により、第1基板部、第2基板部および第3基板部がそれぞれ構成される。
【0110】
また、反射膜としての第1電極E1は、例えば、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等の構成材料で構成することができる。
【0111】
そして、本実施形態のように、第1電極E1が反射膜からなる場合、第1電極E1が前記構成材料で構成されることから、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35が備える発光機能層46すなわち第1機能層、第2機能層および第3機能層は、発光層の他に、正孔輸送層を含み、この正孔輸送層が2層以上の積層体で構成されることが好ましい。このように、正孔輸送層を2層以上の積層体で構成することで、第1電極E1から正孔輸送層への正孔の注入効率、および、正孔輸送層中での正孔の輸送効率を考慮して、正孔輸送層の層構成を設計する際の選択の幅が広がる。
【0112】
具体的には、正孔輸送層は、正孔輸送性材料と正孔注入性材料とを含み、第1電極E1に接触する混合層と、正孔輸送性材料を含み、発光層に接触する単独層とを有する積層体で構成されることが好ましい。これにより、正孔輸送層を、第1電極E1から正孔輸送層への正孔の優れた注入特性と、正孔輸送層中での正孔の優れた輸送特性との双方を備えるものとし得る。なお、正孔輸送層を、混合層と単独層との積層体で構成する場合、混合層を正孔注入層、単独層を正孔輸送層と言うことができる。
【0113】
また、この積層体における、正孔輸送性材料としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体が挙げられ、中でも、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体であることが好ましい。
【0114】
さらに、正孔注入性材料としては、例えば、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等の導電性材料や、下記式(8)で表わされるヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンのような、シアノ基、フルオロ基、フルオロメタン基等の電子吸引性の置換基を有する有機材料であることが好ましい。
【0116】
このような第2実施形態の画像表示装置1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
以上のような画像表示装置1は、各種の虚像表示装置に組み込むことができる。
【0117】
<アイグラスディスプレイ>
以下、本発明の虚像表示装置の一例として、画像表示装置1を備えるアイグラスディスプレイについて説明する。
【0118】
図14は、頭部装着型の虚像表示装置の説明図、
図15は、
図14に示す虚像表示部1010の光学系の構成を模式的に示す斜視図、
図16は、
図15に示す光学系の光路を示す説明図である。
【0119】
虚像表示装置1000は、
図14に示すように、シースルー型のアイグラスディスプレイすなわち拡張現実(AR)型のヘッドマウントディスプレイとして構成されており、テンプル1111、1112を左右に備えたフレーム1110を有している。
【0120】
この虚像表示装置1000では、虚像表示部1010がフレーム1110に支持されており、虚像表示部1010から出射された画像を使用者に虚像として認識させる。
【0121】
虚像表示装置1000は、本実施形態では、虚像表示部1010として、左眼用の表示部1101と、右眼用の表示部1102とを備えている。左眼用の表示部1101と右眼用の表示部1102とは同一の構成をもって左右対称に配置されている。
【0122】
以下の説明では、左眼用の表示部1101を中心に説明し、右眼用の表示部1102については説明を省略する。
【0123】
虚像表示装置1000において、表示部1101は、
図15に示すように、画像表示装置1と、画像表示装置1から出射された合成光Lbを出射部1058に導く導光系1030とを有している。画像表示装置1と導光系1030との間には、投射レンズ系1070が配置されており、画像表示装置1から出射された合成光Lbは、投射レンズ系1070を介して導光系1030に入射する。投射レンズ系1070は、正のパワーを有する1つのコリメートレンズによって構成されている。
【0124】
導光系1030は、合成光Lbが入射する透光性の入射部1040と、一方端1051側が入射部1040に接続された透光性の導光部1050とを備えており、本実施形態では、入射部1040と導光部1050とは、一体の透光性部材に構成されている。
【0125】
入射部1040は、画像表示装置1から出射された合成光Lbが入射する入射面1041と、入射面1041から入射した合成光Lbを入射面1041との間で反射する反射面1042とを備えている。
【0126】
図16に示すように、入射面1041は、平面、非球面、または自由曲面等からなり、投射レンズ系1070を介して画像表示装置1と対向している。投射レンズ系1070は、入射面1041の端部1412との間隔が入射面1041の端部1411との間隔より広くなるように斜めに配置されている。入射面1041には反射膜等が形成されていないが、臨界角以上の入射角で入射した光を全反射する。したがって、入射面1041は透過性および反射性を備えている。
【0127】
反射面1042は、入射面1041と対向する面からなり、端部1422が入射面1041の端部1421より入射面1041から離間するように斜めに配置されている。したがって、入射部1040は略三角形状を有している。反射面1042は、平面、非球面、または自由曲面等からなる。反射面1042は、アルミニウム、銀、マグネシウム、クロム等を主成分とする反射性の金属層が形成されている構成を採用することができる。
【0128】
導光部1050は、一方端1051から他方端1052側に向けて延在する第1面1056(第1反射面)と、第1面1056に平行に対向して一方端1051側から他方端1052側に向けて延在する第2面1057(第2反射面)と、第2面1057の入射部1040から離間する部分に設けられた出射部1058とを備えている。
【0129】
第1面1056と入射部1040の反射面1042とは斜面1043を介して繋がっている。第1面1056と第2面1057との膜厚は、入射部1040より薄い。第1面1056および第2面1057は、導光部1050と外界(空気)との屈折率差に基づいて、臨界角以上の入射角で入射した光を全反射する。このため、第1面1056および第2面1057には反射膜等が形成されていない。
【0130】
出射部1058は、導光部1050の厚さ方向の第2面1057側の一部に構成されている。出射部1058では、第2面1057に対する法線方向に対して斜めに傾いた複数の部分反射面1055が互いに平行に配置されている。出射部1058は、第2面1057のうち、複数の部分反射面1055に重なる部分であり、導光部1050の延在方向において所定の幅を有する領域である。複数の部分反射面1055は各々、誘電体多層膜からなる。また、複数の部分反射面1055のうちの少なくとも1つが、誘電体多層膜と、アルミニウム、銀、マグネシウム、クロム等主成分とする反射性の金属層(薄膜)との複合層であってもよい。部分反射面1055が金属層を含んでいる構成の場合、部分反射面1055の反射率を高める効果や、部分反射面1055の透過率および反射率の入射角依存性や偏光依存性を適正化できるという効果がある。なお、出射部1058については、回折格子やホログラム等の光学素子を設けた態様であってもよい。
【0131】
このように構成した虚像表示装置1000において、入射部1040から入射した平行光からなる合成光Lbは、入射面1041で屈折し、反射面1042に向かう。次に、合成光Lbは、反射面1042で反射されて再び、入射面1041に向かう。その際、入射面1041には、合成光Lbが臨界角以上の入射角で入射するため、合成光Lbは、入射面1041で導光部1050に向けて反射され、導光部1050に向かう。なお、入射部1040では、平行光なる合成光Lbが入射面1041に入射する構成になっているが、入射面1041および反射面1042を自由曲面等によって構成し、非平行光なる合成光Lbが入射面1041に入射した後、反射面1042と入射面1041との間で反射する間に平行光に変換される構成を採用してもよい。
【0132】
導光部1050では、合成光Lbが第1面1056と第2面1057との間で反射して進行する。そして、部分反射面1055に入射した合成光Lbの一部は、部分反射面1055で反射して出射部1058から観察者の眼Eに向けて出射される。また、部分反射面1055に入射した合成光Lbの残りは、部分反射面1055を透過し、隣り合う次の部分反射面1055に入射する。このため、複数の部分反射面1055の各々において反射した合成光Lbは、出射部1058から観察者の眼Eに向けて出射される。したがって、観察者は、虚像を認識することができる。その際、外界の光は、外界から導光部1050に入射した後、部分反射面1055を透過して観察者の眼Eに到達する。このため、観察者は、画像表示装置1から出射されたカラー画像をみることができるとともに、外界の景色等をシースルーでみることができる。
【0133】
<プロジェクター>
次いで、本発明の虚像表示装置の一例として、画像表示装置1を備えるプロジェクターについて説明する。
【0134】
図17は、投射型の虚像表示装置の説明図である。
虚像表示装置2000は、
図17に示すように、画像表示装置1と、画像表示装置1から出射された合成光Lbをスクリーン等の被投射部材2020等に拡大して投射する投射光学系2010とを有するプロジェクターである。
【0135】
この虚像表示装置2000によれば、画像表示装置1において形成された画像が、被投射部材2020において、拡大されたものとして表示される。
【0136】
なお、本発明の虚像表示装置は、上述したような構成をなすヘッドマウントディスプレイ(HMD)およびプロジェクターの他、ヘッドアップディスプレイ(HUD)等にも適用することができる。
【0137】
以上、本発明の画像表示装置および虚像表示装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0138】
例えば、本発明の画像表示装置および虚像表示装置において、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【0139】
また、前記実施形態では、画像表示装置1が自発光素子として有機EL素子を備える場合について説明したが、本発明では、自発光素子は、有機EL素子に限定されず、例えば、発光ダイオード(LED)およびマイクロ発光ダイオード(μLED)等で構成されていてもよい。
【0140】
また、前記実施形態では、画像表示装置1が備える第1発光素子15が赤色の第1画像光LRを発光し、第2発光素子25が青色の第2画像光LBを発光し、第3発光素子35が緑色の第3画像光LGを発光することで、画像表示装置1によりフルカラーの画像光が出射される場合について説明したが、この場合に限定されず、画像表示装置1により出射される画像光の色目に応じて、第1発光素子15、第2発光素子25および第3発光素子35により発光される画像光を、各種の色の組み合わせとすることができる。
【0141】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
[赤色発光素子の製造]
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ150nmのAlCuで構成される第1電源導電体すなわち反射膜を形成した。
【0142】
<2> 次に、反射膜上に、スパッタ法により、平均厚さ30nmのSiO
2層を、平均厚さ30nmのSiN層を、平均厚さ30nmのSiO
2層を、順次形成することで、これらの層が積層された積層体で構成される光学調整層を形成した。
【0143】
<3> 次に、光学調整層上に、スパッタ法により、平均厚さ20nmのITOで構成される第1電極すなわち透明電極を形成した。
【0144】
そして、これら各層で構成された基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理およびアルゴンプラズマ処理を施した。これらのプラズマ処理は、それぞれ、基板を70℃以上90℃以下に加温した状態で、プラズマパワー100W、ガス流量20sccm、処理時間5secで行った。
【0145】
<4> 次に、透明電極上に、上記式(8)で表わされるヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンと、下記式(1)に示すN4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N4,N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)とを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ125nmの正孔注入層を形成した。
【0147】
<5> 次に、正孔注入層上に、N4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N4,N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの正孔輸送層を形成した。
【0148】
<6> 次に、正孔輸送層上に、発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ30nmの発光層を形成した。発光層の構成材料としては、発光材料(ゲスト材料)として下記式(2)に示すようなテトラアリールジインデノペリレン誘導体を用い、ホスト材料として下記式(3)に示すようなテトラセン誘導体を用いた。また、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を1.0wt%とした。
【0151】
<7> 次に、発光層上に、下記式(4)に示すようなアザインドリジン誘導体2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ40nmの電子輸送層を形成した。
【0153】
<8> 次に、電子輸送層上に、LiFを真空蒸着法により成膜し、LiFで構成される平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
【0154】
<9> 次に、電子注入層上に、MgAgを真空蒸着法により成膜し、MgAgで構成される平均厚さ20nmの第2電極すなわち半反射半透過電極を形成した。
【0155】
<10> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
【0156】
以上の工程により、赤色発光素子を製造した。
[青色発光素子の製造]
前記工程<4>において、透明電極上に、N4,N4’−(ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(N4,N4’,N4’−トリフェニルビフェニル−4,4’−ジアミン)を真空蒸着法により蒸着させて、平均厚さ40nmの正孔注入層を形成し、前記工程<6>において、発光材料(ゲスト材料)として下記式(5)で示されるジスチリルジアミン系化合物を用い、ホスト材料として下記式(6)に示すようなアントラセン誘導体を用い、発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を6.0wt%として発光層を形成し、前記工程<7>において、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成したこと以外は、前記赤色発光素子と同様にして青色発光素子を製造した。
【0159】
[緑色発光素子の製造]
前記工程<4>において、透明電極上に、平均厚さ70nmの正孔注入層を形成し、前記工程<6>において、発光材料(ゲスト材料)として下記式(7)に示すキナクリドン誘導体を用い、ホスト材料として上記式(6)に示すようなアントラセン誘導体を用いて発光層を形成し、前記工程<7>において、平均厚さ30nmの電子輸送層を形成したこと以外は、前記赤色発光素子と同様にして青色発光素子を製造した。
【0161】
(実施例2、参考例)
表1に示すように、赤色発光素子、青色発光素子および緑色発光素子を構成する各層の形成を省略、または、各層の厚さを変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2、参考例の赤色発光素子、青色発光素子および緑色発光素子を製造した。
【0162】
2.評価
各実施例および参考例の赤色発光素子、青色発光素子、緑色発光素子について、一定電流電源(KEITHLEY社製 KEITHLEY2400)を用いて、各発光素子に100mA/cm
2の定電流を流し、そのときの駆動電圧を測定した。
これらの測定結果を表1に示す。
【0164】
表1から明らかなように、各実施例の赤色発光素子、青色発光素子および緑色発光素子では、反射膜としての第1電源導電体と、半反射半透過電極としての第2電極との間の光路長の最適化を、発光層を含む発光機能層の厚さを変更することにより実施した。これに対して、参考例の赤色発光素子、青色発光素子および緑色発光素子では、反射膜としての第1電源導電体と、半反射半透過電極としての第2電極との間の光路長の最適化を、光学調整層の厚さを変更することにより実施した。
【0165】
上記の通り、実施例と参考例とでは、前記光路長を最適化する手法が異なるが、実施例のように、発光機能層の厚さを変更することで最適化を図った場合でも、参考例のように光学調整層の厚さを変更することで前記光路長の最適化を図った場合と同様の駆動電圧により、赤色発光素子、青色発光素子および緑色発光素子を駆動し得る結果が得られた。