特許第6943268号(P6943268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943268
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4067 20060101AFI20210916BHJP
   G05D 3/00 20060101ALI20210916BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   G05B19/4067
   G05D3/00 Q
   G05B19/18 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-67191(P2019-67191)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-166612(P2020-166612A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 勇人
(72)【発明者】
【氏名】島村 知行
(72)【発明者】
【氏名】仲野 征彦
(72)【発明者】
【氏名】大倉 嵩史
(72)【発明者】
【氏名】島村 純児
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−180983(JP,A)
【文献】 特開2017−196711(JP,A)
【文献】 特開2017−102509(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/091090(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4067
G05D 3/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と従軸とを該主軸の位相と該従軸の変位量との関係を示す情報である電子カムプロファイルに従って同期制御する制御装置であって、
電断からの復帰時に、前記主軸の位置を取得し、取得した位置とカム同期した時点での前記主軸の位置と前記電子カムプロファイルとに基づき、前記主軸の基準位置である主軸基準位置と、前記従軸の基準位置である従軸基準位置とを算出する基準位置算出手段と、
前記主軸の現在位置と、前記電子カムプロファイルと、前記基準位置算出手段により算出された前記主軸基準位置及び前記従軸基準位置とに基づき、前記主軸の現在位置に対応する前記従軸の位置を求めて、前記従軸の位置を求めた位置に移動させるための復帰制御を行う復帰制御手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記復帰制御手段による前記復帰制御が行われる前に、前記主軸及び前記従軸の位置と前記電子カムプロファイルとの関係を示すグラフを含む状態提示画面を表示装置に表示させる情報提示手段を、さらに、備える、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記情報提示手段は、前記復帰制御手段による前記復帰制御が行われると、前記グラフ上に示されている前記従軸の位置を当該復帰制御の進行状態に応じて変更する、
請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記復帰制御手段は、前記状態提示画面に設けられた所定のアイテムが操作されたときに、前記復帰制御を開始する、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カム制御を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械、設備などに用いられているモータの運動を制御するためのモーション制御において、電子カムが用いられることがある。電子カムは、機械式カムの動作を電子制御で実現するものであり、電子カムでは、主軸と従軸とがソフトウェア上で定められた電子カムプロファイルに従って同期制御させる。
【0003】
そのような同期制御(以下、電子カム制御と表記する)が行われる電子カムシステムでは、非常停止時に、従軸が、主軸の停止位置と電子カムプロファイルとにより規定される本来の位置(以下、主軸対応位置と表記する)からずれた位置で停止することがある。そして、従軸が主軸対応位置で停止していない状態で電子カム制御を再開したのでは、各軸に所望の動作を行わせることが出来ない。そのため、非常停止後に、主軸の位置から主軸対応位置を算出し、主軸を動かすことなく従軸をその主軸対応位置に移動させる技術(例えば、特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5506456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従軸が、主軸対応位置からずれた位置で停止するという現象は、停電や装置のメンテナンスなど、制御装置の電断時にも発生し得るが、既存の制御装置は、電断後に従軸を主軸対応位置に移動する際に、作業者が介入し、手動で復帰させる必要があるものとなっている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電断後に、従軸を、主軸位置に対応した位置に自動復帰させることが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一観点に係る制御装置は、主軸と従軸とを電子カムプロファイルに従って同期制御する制御装置であって、電断からの復帰時に、前記主軸の位置を取得し、取得した位置とカム同期した時点での前記主軸の位置と前記電子カムプロファイルとに基づき、前記主軸の基準位置である主軸基準位置と、前記従軸の基準位置である従軸基準位置とを算出する基準位置算出手段と、前記主軸の現在位置と、前記電子カムプロファイルと、前記基準位置算出手段により算出された前記主軸基準位置及び前記従軸基準位置とに基づき、前記主軸の現在位置に対応する前記従軸の位置を求めて、前記従軸の位置を求めた位置に移動させるための復帰制御を行う復帰制御手段と、を備える。
【0008】
すなわち、停電や装置のメンテナンスなどによる電断が発生すると、各軸の基準位置が電断発生前の基準位置と異なってしまう場合がある。そのため、従来の制御装置では、電断後に従軸を主軸対応位置に手動で復帰させる必要があったのであるが、本発明に係る制御装置は、電断からの復帰時に、各軸の基準位置を再算出する機能を有している。従って、この制御装置によれば、停電や装置のメンテナンスなどによる電断後に、従軸を、主軸位置に対応した位置に自動復帰させることが可能となる。
【0009】
また、制御装置に、『前記復帰制御手段による前記制御が行われる前に、前記主軸及び前記従軸の位置と前記電子カムプロファイルとの関係を示すグラフを含む状態提示画面を表示装置に表示させる情報提示手段』を付加しておいても良い。この情報提示手段は、前記復帰制御手段による前記復帰制御が行われると、前記グラフ上に示されている前記従軸の位置を当該制御の進行状態に応じて変更する手段であっても良い。なお、制御装置に情報提示手段を付加しておけば、ユーザが状況を把握しやすくなるため、利便性が高い制御装置を得ることが出来ることになる。
【0010】
また、制御装置に情報提示手段を付加する場合には、復帰制御手段として、前記状態提示画面に設けられた所定のアイテムが操作されたときに、前記復帰制御を開始する手段を採用しておいても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、停電などの制御装置の電断後に、従軸を、主軸位置に対応した位置に自動復帰させることが可能な制御装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置の構成及び使用形態の説明図である。
図2A図2Aは、電子カムプロファイルの説明図である。
図2B図2Bは、テーブル形式の電子カムプロファイルの説明図である。
図3図3は、基準位置更新処理における主軸基準位置及び従軸基準位置の算出手順の説明図である。
図4図4は、制御装置の復帰制御部が実行する復帰制御処理の流れ図である。
図5図5は、対応従軸変位量の算出手順例の説明図である。
図6図6は、制御装置が表示パネルの画面上に表示する操作画面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の一実施形態に係る制御装置10の構成及び使用形態の説明図を示す。
【0014】
本実施形態に係る制御装置10は、主軸と、当該主軸の位置を基準に、位置が制御される複数の従軸を備えたサーボシステム20を制御するために開発したPLC(Programmable Logic Controller)である。
【0015】
制御装置10が制御する従軸の数は特に限定されない。ただし、以下では、制御装置10が制御するサーボシステム20が、図1に示してあるような、モータ22a、22bが、それぞれ、サーボドライバ21a、21bにより駆動されるシステムであり、モータ22a、22bの軸が、それぞれ主軸、従軸である場合を例に、制御装置10の構成及び機能を説明する。また、以下では、主軸、従軸(モータ22a、22bの軸)の位置を制御するための指令をサーボドライバ21a、21bに供給することを、単に、主軸、従軸の位置を制御するとも表記する。
【0016】
本実施形態に係る制御装置10は、操作パネル18及びサーボシステム20と接続可能なPLCを、同期制御部11、基準位置記憶部12、基準位置更新部13、復帰制御部14及びUI制御部15として動作可能なように構成(プログラミング)した装置である。なお、操作パネル18とは、制御装置10の入出力装置として用意されている、タッチパネルを備えたコンピュータのことである。
【0017】
基準位置記憶部12は、主軸基準位置及び従軸基準位置を記憶しておくための不揮発性の記憶ユニットである。この基準位置記憶部12には、カム同期した時点での主軸位置及び従軸位置(以下、各軸位置を、カム同期時主軸位置、カム同期時従軸位置と表記する)も記憶される。また、基準位置記憶部12としては、通常、制御装置10内の、書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュROM等)やストレージ(HDD等)の一記憶領域が、この基準位置記憶部12として使用される。
【0018】
同期制御部11は、主軸の位置(モータ22aの軸の回転角)を制御すると共に、設定されている電子カムプロファイルに従って、従軸の位置(モータ22bの軸の回転角)を主軸の位置に対応する位置に制御する機能ブロックである。同期制御部11が、それに従って従軸を制御する電子カムプロファイルは、図2Aに示したような関係、すなわち、主軸の位相と従軸の変位量との関係、を示す情報である。ここで、主軸の位相とは、カム同期時主軸位置又は主軸基準位置からの変化量のことであり、従軸の変位量とは、カム同期時主軸位置又は従軸基準位置からの変化量のことである。この電子カムプロファイルとしては、例えば、図2Bに示したようなテーブル形式の情報を使用することが出来る。なお、図2Bにおいて、カム始点と示してあるデータ(位相及び変位)から、カム終点と示してあるデータまでのデータが、図2Aにおける1周期分のデータである。以下、電子カムプロファイルが規定するカム終点における位相、変位(例えば、図2Bにおけるカム終点と示してあるデータ中の位相、変位)を、それぞれ、終点位相、終点変位と表記する。
【0019】
基準位置更新部13は、主軸と従軸とが同期制御部11によって同期制御されている期間中は、カム終点に到達する度に基準位置更新処理を行う機能ブロックである。この基準位置更新部13は、停電や装置のメンテナンスなどによる電断後に制御装置10が始動された場合にも、基準位置更新処理を行う。
【0020】
基準位置更新部13が行う基準位置更新処理は、サーボシステム20から主軸の位置を取得し、取得した主軸の位置に基づき、主軸基準位置及び従軸基準位置を算出し、算出結果で基準位置記憶部12内の主軸基準位置及び従軸基準位置を更新する処理である。この基準位置更新処理は、主軸基準位置及び従軸基準位置を、以下の(1)、(2)式により算出する処理となっている。
【0021】
主軸基準位置=Floor((主軸現在位置−カム同期時主軸位置)÷終点位相)×終点位相+
カム同期時主軸位置 …(1)
従軸基準位置=Floor((主軸現在位置−カム同期時主軸位置)÷終点位相)×終点変位+カム同期時従軸変位 …(2)
【0022】
(1)、(2)式における主軸現在位置が、サーボシステム20から取得された主軸の位置である。また、Floorとは、床関数のことである。
【0023】
すなわち、図3に示してあるように、カム同期時主軸位置、カム同期時従軸位置、終点位相、終点変位が、それぞれ、100、150、200、0である状況下、主軸現在位置450が取得された場合、基準位置更新処理では、同図に示してある演算により、主軸基準位置、従軸基準位置として、それぞれ、300、150が算出される。
【0024】
復帰制御部14(図1)は、停電や装置のメンテナンスなどによる電断後に制御装置10が始動されて基準位置更新部13による基準位置更新処理が完了した後に、図4に示した手順の復帰制御処理を実行する機能ブロックである。
【0025】
すなわち、電断後の基準位置更新部13による基準位置更新処理が完了したため、この復帰制御処理を開始した復帰制御部14は、まず、基準位置記憶部12から、主軸基準位
置及び従軸基準位置を読み出す(ステップS101)。次いで、復帰制御部14は、主軸の現在位置をサーボシステム20から取得し、取得した主軸の現在位置から主軸基準位置を減ずることで主軸現在位相を算出する(ステップS102)。
【0026】
その後、復帰制御部14は、算出した主軸現在位相と従軸の電子カムプロファイルとから、主軸が現在位置にある場合における従軸の変位量である対応従軸変位量を算出する(ステップS103)。電子カムプロファイルがテーブル形式の情報(図2B)である場合、このステップS102では、例えば、図5に模式的に示したように、電子カムプロファイル内の、主軸現在位相に最も近い2位相についての2変位量から、直線補間により、主軸現在位相に対応する変位量である対応従軸変位量を算出する処理が行われる。
【0027】
ステップS103の処理を終えた復帰制御部14は、操作画面を操作パネル18の画面上に表示する(ステップS103)。
【0028】
図6に、このステップS103の処理により操作パネル18の画面上に表示される操作画面30の説明図を示す。図示してあるように、操作画面30は、“AUTO”ボタン31、“MPG”ボタン32、“RETURN”ボタン33、グラフ領域34、パラメータ入力欄35〜38を備える。
【0029】
グラフ領域34は、主軸及び従軸の位置(白丸)と電子カムプロファイル(曲線)との関係を示すグラフが表示される領域である。“AUTO”ボタン31は、従軸の位置制御時の速度等を指定しない場合に、ユーザが、操作(押下)すべきボタンである。“RETURN”ボタン33は、従軸の位置制御時の速度等を指定したい場合に、ユーザが、パラメータ入力欄35〜38に所望値を設定してから操作すべきボタンである。“MPG”ボタン32は、手動で従軸の位置を制御したい場合にユーザが操作すべきボタンである。
【0030】
このような操作画面30を操作パネル18の画面上に表示した復帰制御部14は、ユーザによる指示入力を待機する(ステップS103)。
【0031】
そして、復帰制御部14は、“AUTO”ボタン31又は“RETURN”ボタン33がユーザにより操作された場合には、デフォルトの条件又はユーザにより指定された条件で従軸の位置を対応応従軸位置まで移動させるための制御を実行(ステップS104)してから、復帰制御処理を終了する。なお、ステップS104において、復帰制御部14は、操作画面30上のグラフ内の、主軸及び従軸の位置(白丸)を、当該制御の進行状態に応じて変更する処理も行う。
【0032】
また、復帰制御部14は、“MPG”ボタン32がユーザにより操作された場合には、ステップS104にて、操作画面30の画面上に、手動で従軸の位置を制御する制御用画面を表示する。そして、復帰制御部14は、当該制御用画面に対する操作に応じた制御を従軸に対して行ってから、復帰制御処理を終了する。
【0033】
すなわち、停電や装置のメンテナンスなどによる電断が発生すると、各軸の基準位置が電断発生前の基準位置と異なってしまう場合がある。そのため、従来の制御装置では、電断後に従軸を主軸対応位置に手動で復帰させる必要があったのであるが、上記したように、本実施形態に係る制御装置10は、電断からの復帰時に、各軸の基準位置を再算出する機能を有している。従って、制御装置10によれば、電断後に、従軸を、主軸位置に対応した位置に何ら問題が発生しない形で自動復帰させることが出来る。
【0034】
《変形例》
上記した制御装置10は、各種の変形が可能なものである。例えば、基準位置更新部1
3は、電子カムプロファイルにより規定される1周期分の制御が行われる度に、基準位置更新処理を少なくとも1回行うものであれば良い。従って、基準位置更新部13を、上記したタイミング(カム終点への到達時)とは異なるタイミングで基準位置更新処理を行うように構成しておいても良い。また、基準位置更新処理を、上記した(1)、(2)式とは異なる式により各軸の基準位置の算出を算出する処理としておいても良い。
【0035】
操作画面30(図5)上のグラフは、主軸の位置と従軸の位置とが独立して表示されるものであっても良い。また、操作画面30から、“MPG”ボタン32、“RETURN”ボタン33及びパラメータ入力欄35〜38を除去しておいても良い。さらに、制御装置10を、ユーザの示入力を待つことなく、従軸を、主軸位置に対応した位置に移動させる装置に変形しても良い。
【0036】
《付記》
主軸と従軸とを電子カムプロファイルに従って同期制御する制御装置(10)であって、
電断からの復帰時に、前記主軸の位置を取得し、取得した位置とカム同期した時点での前記主軸の位置と前記電子カムプロファイルとに基づき、前記主軸の基準位置である主軸基準位置と、前記従軸の基準位置である従軸基準位置とを算出する基準位置算出手段(13)と、
前記主軸の現在位置と、前記電子カムプロファイルと、前記基準位置算出手段により算出された前記主軸基準位置及び前記従軸基準位置とに基づき、前記主軸の現在位置に対応する前記従軸の位置を求めて、前記従軸の位置を求めた位置に移動させるための復帰制御を行う復帰制御手段(14)と、
を備える制御装置。
【符号の説明】
【0037】
10 制御装置
11 同期制御部
12 基準位置記憶部
13 基準位置更新部
14 復帰制御部
18 操作パネル
20 サーボシステム
21a、21b サーボドライバ
22a,22b モータ
30 操作画面
31 “AUTO”ボタン
32 “MPG”ボタン
33 “RETURN”ボタン
34〜38 パラメータ入力欄
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6