特許第6943399号(P6943399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943399医薬品在庫管理プログラム、および医薬品在庫管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943399
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】医薬品在庫管理プログラム、および医薬品在庫管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20120101AFI20210916BHJP
【FI】
   G06Q10/08 330
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-35557(P2017-35557)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-142151(P2018-142151A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】517069686
【氏名又は名称】株式会社ファーマクラウド
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋介
(72)【発明者】
【氏名】橋上 英宜
【審査官】 相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−183305(JP,A)
【文献】 特開2014−146251(JP,A)
【文献】 特開2014−228931(JP,A)
【文献】 片桐 義博 他,“システムセミナー・薬剤部 薬剤業務とコンピュータ・III―医薬品管理―”,医療とコンピュータ,有限会社ネットワーク,1992年09月25日,Vol.5,No.2,p.65-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G16H 10/00−80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調剤を行う薬局または病院で使用される端末装置を少なくとも備え、前記薬局または病院における複数品目の医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムにおいて実行される医薬品在庫管理プログラムであって、
前記医薬品在庫管理プログラムが前記医薬品在庫管理システムのコントローラによって実行されることで、
レセプトを作成するためのレセプトコンピュータが出力可能な、前記薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書の電子データであり、データ形式が予め定められている電子レセプトデータを、調剤データとして取得する調剤データ取得ステップと、
前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、不動在庫品目を他の薬局に提供したい提供側薬局の前記電子レセプトデータから、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報を、前記医薬品の品目毎に抽出する最終調剤時情報抽出ステップと、
前記最終調剤時情報抽出ステップにおいて前記医薬品の品目毎に抽出された前記最終調剤時情報を第1基準期間と比較することで、調剤が行われなかった期間が前記第1基準期間よりも長い品目を、前記提供側薬局の不動在庫品目として抽出する不動在庫品目抽出ステップと、
前記提供側薬局の前記不動在庫品目の情報を、不動在庫品目の提供を受けようとする被提供側薬局で使用される端末装置に送信する不動在庫品目情報送信ステップと、
前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、前記被提供側薬局の前記電子レセプトデータから、第2基準期間内に調剤された回数が基準回数以上である品目を、前記被提供側薬局の利用品目として抽出する利用品目抽出ステップと、
前記提供側薬局について抽出された前記不動在庫品目のうち、前記被提供側薬局について抽出された利用品目を表示手段に表示させる取得候補品目表示ステップと、
が前記医薬品在庫管理システムによって実行されることを特徴とする医薬品在庫管理プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬品在庫管理プログラムであって、
前記医薬品在庫管理プログラムが前記医薬品在庫管理システムのコントローラによって実行されることで、
前記不動在庫品目抽出ステップにおいて複数の前記不動在庫品目が抽出された場合に、品目毎に抽出された前記最終調剤時情報に基づいて、最後に調剤された時からの経過期間順に、前記複数の不動在庫品目を表示手段に表示させる不動在庫品目表示ステップ、
を前記医薬品在庫管理システムに実行させることを特徴とする医薬品在庫管理プログラム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医薬品在庫管理プログラムであって、
前記取得候補品目表示ステップでは、前記第2基準期間内に調剤された回数の順に、複数の前記利用品目が表示されることを特徴とする医薬品在庫管理プログラム。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の医薬品在庫管理プログラムであって、
前記医薬品在庫管理システムは、前記端末装置との間で通信を行うことが可能なサーバーをさらに備え、
前記調剤データ取得ステップ、前記最終調剤時情報抽出ステップ、および前記不動在庫品目抽出ステップが、前記サーバーによって実行されることを特徴とする医薬品在庫管理プログラム。
【請求項5】
調剤を行う薬局または病院で使用される端末装置を少なくとも備え、前記薬局または病院における複数品目の医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムによって実行される医薬品在庫管理方法であって、
レセプトを作成するためのレセプトコンピュータが出力可能な、前記薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書の電子データであり、データ形式が予め定められている電子レセプトデータを、調剤データとして取得する調剤データ取得ステップと、
前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、不動在庫品目を他の薬局に提供したい提供側薬局の前記電子レセプトデータから、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報を、前記医薬品の品目毎に抽出する最終調剤時情報抽出ステップと、
前記最終調剤時情報抽出ステップにおいて前記医薬品の品目毎に抽出された前記最終調剤時情報を第1基準期間と比較することで、調剤が行われなかった期間が前記第1基準期間よりも長い品目を、前記提供側薬局の不動在庫品目として抽出する不動在庫品目抽出ステップと、
前記提供側薬局の前記不動在庫品目の情報を、不動在庫品目の提供を受けようとする被提供側薬局で使用される端末装置に送信する不動在庫品目情報送信ステップと、
前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、前記被提供側薬局の前記電子レセプトデータから、第2基準期間内に調剤された回数が基準回数以上である品目を、前記被提供側薬局の利用品目として抽出する利用品目抽出ステップと、
前記提供側薬局について抽出された前記不動在庫品目のうち、前記被提供側薬局について抽出された利用品目を表示手段に表示させる取得候補品目表示ステップと、
を含むことを特徴とする医薬品在庫管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムにおいて実行される医薬品在庫管理プログラム、および、前記医薬品在庫管理システムによって実行される医薬品在庫管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品の在庫を管理するための種々の技術が知られている。例えば、特許文献1では、現在の在庫量と安全在庫量から、他店舗に供出可能な薬剤量が演算される。特許文献2では、レセプト情報に連携して管理された在庫情報に基づいて医薬品が発注される。特許文献3では、医薬品の有効期限情報に基づいて、有効期限が直近である在庫医薬品から優先的に調剤指示書が作成される。特許文献4では、適正在庫量と安全在庫量が考慮されたうえで、補充薬品量が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−228931号公報
【特許文献2】特開2003−6344号公報
【特許文献3】特開2004−287833号公報
【特許文献4】特開2003−44591号公報
【発明の概要】
【0004】
調剤を行う薬局または病院(以下、単に「薬局」という)で保管されている複数品目の医薬品の中には、調剤が長期間行われていない品目である不動在庫品目が存在する。不動在庫品目とは、その在庫全体が全く動いていない品目である。高い頻度で調剤が行われる品目であれば不動在庫品目にはなり難いが、調剤が行われる頻度が低い品目は不動在庫品目となり易い。薬局は、調剤が行われる頻度が低い品目であっても、調剤される可能性がある限り、在庫として保管しておく必要がある。また、いずれの品目も、在庫の量に関わらず不動在庫品目となり得る。不動在庫品目は、在庫のまま有効期限を迎えて破棄される可能性が高いので、薬局の経営を圧迫し易い。
【0005】
従来の技術では、不動在庫品目を適切に管理することが困難であった。例えば、特許文献1に記載の技術では、現在の在庫量と安全在庫量が基準を満たしていれば、不動在庫品目はそのまま在庫として残る。特許文献2では、具体的な在庫管理方法は何ら開示されていない。特許文献3に記載の技術によると、調剤が行われる際に、有効期限が直近である在庫医薬品から調剤されるのみであり、調剤が行われない品目は依然として不動在庫として残る。特許文献4の技術でも、特許文献1と同様に、適正在庫量と安全在庫量のバランスが良好であれば、不動在庫品目はそのまま在庫として残る。つまり、特許文献1、4に記載の技術は、在庫量を適切な量に保つことを目的とした技術に過ぎないので、調剤が行われない品目の在庫は調整されず、結局はそのまま有効期限を迎える。
【0006】
本開示は、薬局または病院における不動在庫品目を適切に管理することが可能な医薬品在庫管理プログラム、および医薬品在庫管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における典型的な実施形態が提供する医薬品在庫管理プログラムは、調剤を行う薬局または病院で使用される端末装置を少なくとも備え、前記薬局または病院における複数品目の医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムにおいて実行される医薬品在庫管理プログラムであって、前記医薬品在庫管理プログラムが前記医薬品在庫管理システムのコントローラによって実行されることで、レセプトを作成するためのレセプトコンピュータが出力可能な、前記薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書の電子データであり、データ形式が予め定められている電子レセプトデータを、調剤データとして取得する調剤データ取得ステップと、前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、不動在庫品目を他の薬局に提供したい提供側薬局の前記電子レセプトデータから、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報を、前記医薬品の品目毎に抽出する最終調剤時情報抽出ステップと、前記最終調剤時情報抽出ステップにおいて前記医薬品の品目毎に抽出された前記最終調剤時情報を第1基準期間と比較することで、調剤が行われなかった期間が前記第1基準期間よりも長い品目を、前記提供側薬局の不動在庫品目として抽出する不動在庫品目抽出ステップと、前記提供側薬局の前記不動在庫品目の情報を、不動在庫品目の提供を受けようとする被提供側薬局で使用される端末装置に送信する不動在庫品目情報送信ステップと、前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、前記被提供側薬局の前記電子レセプトデータから、第2基準期間内に調剤された回数が基準回数以上である品目を、前記被提供側薬局の利用品目として抽出する利用品目抽出ステップと、前記提供側薬局について抽出された前記不動在庫品目のうち、前記被提供側薬局について抽出された利用品目を表示手段に表示させる取得候補品目表示ステップと、が前記医薬品在庫管理システムによって実行される。
【0008】
本開示における典型的な実施形態が提供する医薬品在庫管理方法は、調剤を行う薬局または病院で使用される端末装置を少なくとも備え、前記薬局または病院における複数品目の医薬品の在庫を管理する医薬品在庫管理システムによって実行される医薬品在庫管理方法であって、レセプトを作成するためのレセプトコンピュータが出力可能な、前記薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書の電子データであり、データ形式が予め定められている電子レセプトデータを、調剤データとして取得する調剤データ取得ステップと、前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、不動在庫品目を他の薬局に提供したい提供側薬局の前記電子レセプトデータから、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報を、前記医薬品の品目毎に抽出する最終調剤時情報抽出ステップと、前記最終調剤時情報抽出ステップにおいて前記医薬品の品目毎に抽出された前記最終調剤時情報を第1基準期間と比較することで、調剤が行われなかった期間が前記第1基準期間よりも長い品目を、前記提供側薬局の不動在庫品目として抽出する不動在庫品目抽出ステップと、前記提供側薬局の前記不動在庫品目の情報を、不動在庫品目の提供を受けようとする被提供側薬局で使用される端末装置に送信する不動在庫品目情報送信ステップと、前記調剤データ取得ステップにおいて取得された、前記被提供側薬局の前記電子レセプトデータから、第2基準期間内に調剤された回数が基準回数以上である品目を、前記被提供側薬局の利用品目として抽出する利用品目抽出ステップと、前記提供側薬局について抽出された前記不動在庫品目のうち、前記被提供側薬局について抽出された利用品目を表示手段に表示させる取得候補品目表示ステップと、を含む。
【0009】
本開示に係る医薬品在庫管理プログラムおよび医薬品在庫管理方法によると、薬局または病院における不動在庫品目が適切に管理される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】医薬品在庫管理システム1の概略構成を示すブロック図である。
図2】電子レセプトデータの構文の構成を説明するための説明図である。
図3】最終調剤時情報取得処理のフローチャートである。
図4】不動在庫品目抽出処理のフローチャートである。
図5】不動在庫品目が抽出された薬局のモニタに表示される不動在庫品目表示画面の一例を示す図である。
図6】不動在庫品目被提供側処理のフローチャートである。
図7】不動在庫品目を提供される薬局のモニタに表示される被提供側表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示で例示する医薬品在庫管理システムは、調剤データ取得ステップ、最終調剤時情報抽出ステップ、および不動在庫品目抽出ステップを実行する。調剤データ取得ステップでは、レセプトを作成するためのレセプトコンピュータが出力可能な、所定の形式の調剤データが取得される。最終調剤時情報抽出ステップでは、取得された調剤データから、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報が医薬品の品目毎に抽出される。不動在庫品目抽出ステップでは、抽出された最終調剤時情報が第1基準期間と比較されることで、調剤が行われなかった期間が第1基準期間よりも長い品目である不動在庫品目が抽出される。
【0012】
本開示で例示する技術によると、例えば在庫量が少ない品目が多数存在する場合等でも、簡易な処理で適切に不動在庫品目が抽出される。
【0013】
また、レセプトを作成するソフトウェアの種類が異なると、ソフトウェアが取り扱う薬剤データおよび処方箋データ等のデータ形式が基本的に異なる。従って、レセプトコンピュータのデータを効率よく利用でき、且つ、複数種類のレセプト作成用ソフトウェアに対応可能な医薬品在庫管理システムを提供することは、従来は困難であった。これに対し、本開示で例示する技術によると、レセプトコンピュータが出力可能な所定の形式の調剤データから、最終調剤時情報が抽出される。従って、レセプト作成用ソフトウェアの種類に関わらず、不動在庫品目が適切に抽出される。
【0014】
なお、本開示では、「最終調剤時」は日単位で扱われる。しかし、他の単位(例えば、週単位、月単位、分単位等)で最終調剤時が扱われてもよい。また、第1基準期間は、ユーザによって指定された期間であってもよい。この場合、ユーザは、種々の状況に応じて、適切な品目を不動在庫品目としてシステムに抽出させることができる。ただし、第1基準期間は固定された期間であってもよい。
【0015】
調剤データは電子レセプトデータであってもよい。電子レセプトデータとは、薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書の電子データである。電子レセプトデータのデータ形式は予め定められているので、レセプト作成用ソフトウェアの種類に関わらず、電子レセプトデータのデータ形式は共通となる。レセプトには、患者の氏名、調剤した薬剤の品目、調剤日、調剤を行った薬局等の情報が含まれる。電子レセプトデータは、患者毎に区分けされていない。さらに、出願時点の日本では、電子レセプトデータは所定期間単位(詳細には月単位)で纏められている。従って、制御部が最終調剤時情報を抽出する際に処理するデータ量が膨大になることが抑制される。また、電子レセプトデータは医療報酬を請求する際に使用されるデータであるため、内容が正確であり、内容に間違いがあれば修正される。従って、不動在庫品目の抽出精度が向上する。
【0016】
ただし、電子レセプトデータ以外の調剤データから最終調剤時情報を抽出することも可能である。例えば、お薬手帳の電子データの共有を容易にするために定められたデータ形式(例えば、JAHISの規格に則ったデータ形式)の調剤データから、最終調剤時情報が抽出されてもよい。また、調剤システムを連動させるために定められたデータ形式(例えば、NSIPSの規格に則ったデータ形式)の調剤データから、最終調剤時情報が抽出されてもよい。
【0017】
医薬品在庫管理システムは、品目毎に抽出された最終調剤時情報に基づいて、最後に調剤された時からの経過期間順に複数の不動在庫品目を表示手段に表示させてもよい。この場合、ユーザは、最終調剤時からの経過期間の長さの順番を、表示順によって容易に把握することができる。
【0018】
医薬品在庫管理システムは、互いに異なる薬局で使用される複数の端末装置を備えていてもよい。医薬品在庫管理システムは、1つの薬局または病院について抽出された不動在庫品目の情報を、他の薬局または病院で使用される端末装置に送信する不動在庫品目情報送信ステップをさらに実行してもよい。この場合、1つの薬局のユーザは、他の薬局の不動在庫品目を容易に把握することができる。従って、複数の薬局の間で不動在庫品目を容易に共有することができる。よって、不動在庫品目が有効に活用され易くなる。
【0019】
医薬品在庫管理システムは、第2基準期間内に調剤された回数が基準回数以上である品目を、利用品目として調剤データから抽出してもよい。医薬品在庫管理システムは、1つの薬局または病院について抽出された不動在庫品目のうち、他の薬局または病院について抽出された利用品目を、取得する候補の品目として表示手段に表示させてもよい。この場合、ユーザは、他の薬局の不動在庫品目のうち、自らの薬局で第2基準期間内に基準回数以上調剤された品目を、容易に確認することができる。従って、不動在庫品目がより適切に共有される。なお、第2基準期間および基準回数は、ユーザによって指定されてもよいし、固定された値であってもよい。
【0020】
取得する候補の品目は、第2基準期間内に調剤された回数順に表示されてもよい。この場合、ユーザは、自らの薬局において調剤される頻度を考慮したうえで、他の薬局の不動在庫品目を把握することができる。
【0021】
医薬品在庫管理システムは、端末装置との間で通信を行うことが可能なサーバーをさらに備えてもよい。調剤データ取得ステップ、最終調剤時情報抽出ステップ、および不動在庫品目抽出ステップは、サーバーによって実行されてもよい。この場合、端末装置の処理負担の増大が抑制される。なお、不動在庫品目表示ステップ、不動在庫品目情報送信ステップ、利用品目抽出ステップ、および取得候補品目表示ステップの少なくともいずれかを実行する場合、これらのステップもサーバーによって実行されてもよい。
【0022】
ただし、調剤データ取得ステップ、最終調剤時情報抽出ステップ、および不動在庫品目抽出ステップ等の各ステップの少なくともいずれかが、端末装置によって実行されてもよい。また、医薬品在庫管理システムがサーバーを備えていなくてもよい。この場合、各ステップは端末装置によって実行されてもよい。
【0023】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。本実施形態では、それぞれ異なる拠点に配置されたサーバー10と端末装置20を含む医薬品在庫管理システム1を例示する。しかし、医薬品在庫管理システムのシステム構成を変更することも可能である。例えば、医薬品在庫管理システムは、複数の端末装置20間で各種データを直接共有するシステムであってもよい。また、1つの薬局の在庫の管理のみを行う場合、医薬品在庫管理システムは、少なくとも、薬局に配置される端末装置20を1つ備えていればよい。
【0024】
図1を参照して、本実施形態における医薬品在庫管理システム1のシステム構成について説明する。医薬品在庫管理システム1は、サーバー10と、各薬局において使用される端末装置20を備える。図1では、薬局Aで使用される端末装置20Aと、薬局Bで使用される端末装置20Bを例示している。
【0025】
サーバー10は、接続されるデバイス(本実施形態では端末装置20)に対して各種データ等を提供する。本実施形態では、クラウドサービスを提供するメーカーのサーバー(所謂クラウドサーバー)が、サーバー10として用いられている。しかし、クラウドサーバー以外のサーバーが用いられてもよいことは言うまでもない。サーバー10は、各種処理制御を行う制御部11と、通信I/F14とを備える。制御部11は、制御を司るコントローラであるCPU12と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置13を備える。記憶装置13には、後述する各種処理を実行するための医薬品在庫管理プログラムが記憶されている。また、通信I/F14は、ネットワーク5(例えばインターネット)を介して、サーバー10を外部機器(例えば端末装置20)と接続する。
【0026】
端末装置20は、薬局のユーザ(例えば薬剤師等)によって使用される。本実施形態の端末装置20はパーソナルコンピュータであるが、スマートフォーンまたはタブレット端末等の携帯端末であってもよい。端末装置20は、各種処理制御を行う制御部21と、通信I/F24とを備える。制御部21は、制御を司るコントローラであるCPU22と、プログラムおよびデータ等を記憶することが可能な記憶装置23を備える。通信I/F24は、ネットワーク5を介して、端末装置20を外部機器(例えばサーバー10)と接続する。
【0027】
端末装置20は、操作部25およびモニタ26に接続されている。操作部25は、ユーザが各種操作指示を端末装置20に入力するために、ユーザによって操作される。操作部25には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。モニタ26は、各種画像を表示することが可能な表示手段の一例である。
【0028】
端末装置20は、レセプト作成用ソフトウェアがインストールされたレセプトコンピュータ30との間でデータのやり取りを行うことができる。レセプトとは、薬局または病院が保険者に請求する医療報酬の明細書である。レセプトコンピュータ30には、各患者の処方箋情報が入力される。レセプトコンピュータ30は、入力された処方箋情報に基づいて、調剤情報を含む電子レセプトデータを作成する。電子レセプトデータのデータ形式は、予め所定の形式に定められている。
【0029】
端末装置20は、レセプトコンピュータ30から電子レセプトデータを取得することができる。端末装置20がレセプトコンピュータ30から電子レセプトデータを取得する方法は、適宜選択できる。例えば、端末装置20は、有線通信、無線通信、着脱可能な記憶媒体(例えばUSBメモリ)等の少なくともいずれかによって電子レセプトデータを取得してもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、端末装置20とレセプトコンピュータ30は別々のデバイスである。しかし、レセプトコンピュータ30自体が端末装置20として機能することも可能である。
【0031】
また、レセプトコンピュータ30は、調剤情報を含む調剤データとして、電子レセプトデータ以外の所定形式の調剤データを出力してもよい。例えば、レセプトコンピュータ30は、JAHISの規格に則ったデータ形式の調剤データ、および、NSIPSの規格に則ったデータ形式の調剤データ等の少なくともいずれかを出力してもよい。詳細は後述するが、本実施形態では、レセプトコンピュータ30が出力可能な電子レセプトデータに基づいて不動在庫品目が管理される。しかし、電子レセプトデータ以外の所定のデータ形式の調剤データに基づいて、不動在庫が管理されてもよい。
【0032】
図2を参照して、電子レセプトデータの構文の概略構成について説明する。図2に示すように、電子レセプトデータには、患者情報、調剤時を示す情報(調剤情報に含まれる)、調剤した薬品の品目の情報(医薬品情報に含まれる)、調剤を行った薬局の情報(薬局情報に含まれる)等が含まれている。従って、医薬品在庫管理システム1は、電子レセプトデータに含まれる各種情報に基づいて、薬局における医薬品の使用実態をより正確に把握することができる。また、電子レセプトデータは月単位で纏められており、患者毎に別々のデータが纏められるわけではない。従って、処理するデータの数が膨大になることが抑制される。さらに、電子レセプトデータは保険者への保険料の請求に用いられるものであることから、電子レセプトデータの内容は正確であり、在庫管理の精度が向上する。なお、電子レセプトデータには他の情報も含まれているが、この説明は省略する。
【0033】
図3図7を参照して、本実施形態の医薬品在庫管理システム1が実行する各種処理について説明する。一例として、本実施形態では、サーバー10の制御部11が、図3図4、および図6に示す処理を実行する。制御部10のCPU12は、記憶装置13に記憶された医薬品在庫管理プログラムに従って各種処理を実行する。ただし、以下説明する処理の少なくとも一部が、サーバー10以外の制御部(例えば、端末装置20の制御部21等)によって実行されてもよい。この場合、医薬品在庫管理プログラムの少なくとも一部が、サーバー10以外のデバイスの記憶装置(例えば、端末装置20の記憶装置23)に記憶されてもよい。
【0034】
以下説明する処理のうち、図3に示す最終調剤時情報取得処理、および図4不動在庫品目抽出処理は、薬局の不動在庫品目を抽出するための処理である。一方で、図6に示す不動在庫品目被提供側処理は、1つの薬局が他の薬局から不動在庫品目の提供を受けようとする場合に実行される処理である。なお、医薬品在庫管理システム1は、図6に示す不動在庫品目被提供側処理を実行せずに、図3および図4に示す処理のみを実行してもよい。
【0035】
まず、図3図5を参照して、薬局の不動在庫品目を抽出するための処理について説明する。制御部11は、不動在庫品目の抽出処理を実行する指示を入力すると、図3に示す最終調剤時情報取得処理を実行した後、図4に示す不動在庫品目抽出処理を実行する。
【0036】
図3に示すように、制御部11は、最終調剤時情報取得処理を開始すると、不動在庫品目の抽出対象となる薬局の端末装置20(例えば、薬局Aの端末装置20A)から電子レセプトデータを取得する(S1)。ここで、本実施形態では、端末装置20が電子レセプトデータに対して予め構文解析を行い、それによって生成されたトランザクションデータがサーバー10に送信される。構文解析が行われることで、電子レセプトデータのデータ形式が、サーバー10の制御部11によって取り扱うことが可能なデータ形式に変換される。
【0037】
制御部11は、取得した電子レセプトデータ(本実施形態では、電子レセプトデータから生成されたトランザクションデータ)から、1つの調剤情報を取得する(S2)。図2に示すように、電子レセプトデータには、1つまたは複数の調剤情報が含まれている。また、それぞれの調剤情報には、調剤時(本実施形態では調剤日)の情報を含む調剤情報レコードが1つ含まれている。また、それぞれの調剤情報には、1つまたは複数の医薬品情報が含まれている。制御部11は、同一の調剤情報に含まれる1つの医薬品情報の医薬品情報レコードを取得する(S3)。医薬品情報レコードは、調剤された医薬品の品目の情報を含む。同一の調剤情報に含まれるすべての医薬品情報の調査が完了していなければ(S5:NO)、同一の調剤情報に含まれる複数の医薬品情報のうち、未だ調査が完了していない次の医薬品情報について医薬品情報レコードが取得される(S6、S3)。同一の調剤情報に含まれるすべての医薬品情報の調査が完了すると(S5:YES)、全ての調剤情報の調査が完了したか否かが判断される(S8)。完了していなければ(S8:NO)、未だ調査が完了していない次の調剤情報について、調剤情報レコードおよび医薬品情報レコードが取得される(S9、S2〜S8)。
【0038】
全ての調剤情報の調査が完了すると(S8:YES)、制御部11は、それぞれの医薬品の品目に対し、不動在庫品目の抽出対象となる薬局(電子レセプトデータを作成した薬局)と、対応する調剤時情報を関連付けて記憶する(S11)。制御部11は、医薬品の品目毎に、最後に調剤された時を示す最終調剤時情報を抽出する(S12)。詳細には、本実施形態の制御部11は、同一の医薬品の品目に対応付けられた1つまたは複数の調剤時情報の中から、最も遅い時を示す調剤時情報を抽出することで、最終調剤時情報を抽出する。
【0039】
次いで、図4に示すように、制御部11は、第1基準期間を設定する(S21)。第1基準期間とは、それぞれの品目が不動在庫品目に該当するか否かを判断するための基準とする期間である。つまり、本実施形態では、最後に調剤されてから現在までの経過期間が第1基準期間よりも長い品目が、不動在庫品目と判断される。本実施形態では、ユーザは、操作部25を操作することで、第1基準期間を指定する指示を端末装置20に入力することができる。制御部11は、ユーザによって指定された期間を第1基準期間として設定する。なお、第1基準期間の設定方法は適宜変更できる。例えば、医薬品の種類等に応じて複数の第1基準期間が設定されてもよい。また、第1基準期間は固定された期間であってもよい。
【0040】
次いで、制御部11は、1つの品目について、最終調剤時からの経過期間が第1基準期間よりも長いか否かを判断する(S22)。経過期間が第1基準期間以下であれば(S22:NO)、処理はそのままS25へ移行する。経過期間が第1基準期間よりも長ければ(S22:YES)、その品目が不動在庫品目として抽出される(S23)。
【0041】
次いで、制御部11は、すべての品目についての調査が完了したか否かを判断する(S25)。完了していなければ、次の品目が不動在庫品目であるか否かが判断される(S26、S22、S23)。全ての品目についての調査が完了すると(S25:YES)、制御部11は、抽出した不動在庫品目を、不動在庫品目が抽出された薬局のモニタ26に表示させる(S28)。
【0042】
図5を参照して、不動在庫品目が抽出された薬局のモニタ26に表示される不動在庫品目表示画面の一例について説明する。本実施形態では、制御部11は、最終調剤時からの経過順に不動在庫品目を並べて表示する。従って、ユーザは、最終調剤時からの経過期間の長さの順番を、表示順によって容易に把握することができる。
【0043】
また、本実施形態における不動在庫品目表示画面では、「出品」「薬価」「最終調剤日」および「調剤回数」の欄が設けられる。ユーザは、操作部25を操作して「出品」欄にチェックを入れることで、不動在庫品目を他の薬局に向けて出品することができる。制御部11は、出品の指示が行われた不動在庫品目の情報を、他の薬局の端末装置20に出力することができる(図7等を参照して後述する)。「薬価」欄には、それぞれの不動在庫品目の薬価が表示される。「最終調剤日」欄には、それぞれの不動在庫品目の最終調剤日と、最終調剤日からの経過期間が表示される。「調剤回数」欄には、それぞれの不動在庫品目毎に、第1基準期間よりも長い所定期間内に調剤が行われた回数が表示される。
【0044】
図6および図7を参照して、不動在庫品目被提供側処理について説明する。制御部11は、不動在庫品目の提示処理を要求する指示を入力すると、図6に示す不動在庫品目被提供側処理を実行する。不動在庫品目の提示処理を要求する指示は、不動在庫品目の提供を受けようとする薬局(以下、「被提供側薬局」という)の端末装置20から送信される。
【0045】
まず、制御部11は、被提供側薬局の端末装置20から電子レセプトデータを取得する(S31)。S31の処理には、前述したS1の処理と同様の処理を採用できる。次いで、制御部11は、第2基準期間および基準調剤回数を設定する(S32)。第2基準期間とは、それぞれの品目の調剤頻度を判断するための基準となる期間である。つまり、第2基準期間内に調剤された回数によって、それぞれの品目の調剤頻度が抽出される。基準調剤回数とは、調剤頻度が高い品目を抽出する基準となる調剤回数である。本実施形態では、第2基準期間内に調剤された回数が基準調剤回数以上である品目が、調剤頻度が高い品目として抽出される。なお、前述した第1基準期間と同様に、第2基準期間および基準調剤回数はユーザによって指定されてもよいし、固定された値であってもよい。当然ながら、基準調剤回数は「1」に設定されてもよい。
【0046】
制御部11は、S31で取得した電子レセプトデータから、第2基準期間内のレコードを取得する(S33)。詳細には、制御部11は、電子レセプトデータから、最終調剤時から現在までの経過期間が短い調剤情報を、調剤情報レコードに基づいて抽出する。次いで、制御部11は、抽出されたレコードに含まれる医薬品情報レコードの数に基づいて、第2基準期間内に調剤された回数を品目毎に抽出する(S35〜S37)。
【0047】
全ての品目の調剤回数の抽出が完了すると(S36:YES)、制御部11は、第2基準期間内の調剤回数が基準調剤回数以上の品目を、調剤頻度が高い品目(以下、「利用品目」という)として抽出する(S39)。制御部11は、不動在庫品目を他の薬局に提供したい薬局(以下、「提供側薬局」という)の不動在庫品目情報を、被提供側薬局の端末装置20に送信する(S40)。制御部11は、提供側薬局の不動在庫品目の中から、被提供側薬局の利用品目を抽出する(S41)。さらに、制御部11は、S41で抽出された利用品目を、第2基準期間内に調剤された回数の順に並べて、被提供側薬局のモニタ26に表示させる。
【0048】
図7を参照して、被提供側薬局のモニタ26に表示される被提供側表示画面の一例について説明する。本実施形態では、他の薬局の不動在庫品目が、被提供側薬局のモニタ26に表示される。従って、被提供側薬局のユーザは、他の薬局の不動在庫品目を容易に把握することができる。また、本実施形態では、提供側薬局の不動在庫品目のうち、被提供側薬局の利用品目のみが表示される。従って、不動在庫品目がより適切に共有される。さらに、本実施形態では、提供側薬局の不動在庫品目のうち、被提供側薬局の利用品目が、第2基準期間内の調剤回数の順に並べて表示される。よって、被提供側薬局のユーザは、自らの薬局において調剤される頻度を容易に考慮したうえで、提供側薬局の不動在庫品目を把握することができる。
【0049】
また、本実施形態における被提供側表示画面では、「購入」「販売額」「薬価差」および「調剤回数」の欄が設けられる。ユーザは、操作部25を操作して「購入」欄にチェックを入れることで、提供側薬局の不動在庫品目を購入する指示を入力することができる。制御部11は、購入の指示が入力されると、被提供側薬局に購入の意思があることを示す情報を、提供側薬局の端末装置20に送信することができる。「販売額」欄には、それぞれの品目毎に販売額が表示される。「薬価差」欄には、「薬価×数量×値引き率」で算出される値が表示される。「調剤回数」欄には、S35で抽出された調剤回数が表示される。なお、図7には明示していないが、制御部11は、それぞれの不動在庫品目について、最終調剤日からの経過期間を「医薬品名」の欄に表示させる。従って、ユーザは、最終調剤日からの経過期間を考慮したうえで、他の薬局の不動在庫品目を取得するか否かを判断することができる。
【0050】
上記実施形態で開示された内容は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で開示された内容を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、提供側薬局と被提供側薬局の間で不動在庫品目を売買する場合について例示している。しかし、例えば、同一のグループに属する複数の薬局間で不動在庫品目を共有する場合にも、上記実施形態で例示した技術を利用できる。この場合、「出品/購入」を「提供/受領」等に変更すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 医薬品在庫管理システム
10 サーバー
11 制御部
12 CPU
13 記憶装置
20 端末装置
25 操作部
26 モニタ
30 レセプトコンピュータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7