特許第6943411号(P6943411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラシエホームプロダクツ株式会社の特許一覧

特許6943411目詰まり防止剤、並びにこれを含有するエアゾールフォーム組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943411
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】目詰まり防止剤、並びにこれを含有するエアゾールフォーム組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20210916BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210916BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20210916BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20210916BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210916BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20210916BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/34
   A61Q5/00
   A61K8/84
   A61K8/81
   A61K8/86
   A61K8/02
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-26260(P2017-26260)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-145245(P2017-145245A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2020年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-28663(P2016-28663)
(32)【優先日】2016年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】布施 直也
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170152(JP,A)
【文献】 特開2014−125477(JP,A)
【文献】 特開平07−300406(JP,A)
【文献】 特開2013−019926(JP,A)
【文献】 特開2011−093878(JP,A)
【文献】 特表2013−525499(JP,A)
【文献】 特開2016−117673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有すること、かつ(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が0.02〜0.25であることを特徴とする、水溶性高分子を含有するトリガー式エアゾールフォーム組成物の目詰まり防止剤。
(A)疎水変性アルキルセルロース
(B)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールの群から選択される1種以上の多価アルコール
(C)酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される1種以上の水溶性高分子
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルエーテルから選択される1種以上の非イオン性界面活性剤
【請求項2】
(A)成分がステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の目詰まり防止剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載する目詰まり防止剤に、(E)成分を含有することを特徴とするトリガー式エアゾールフォーム組成物。
(E)噴射剤
【請求項4】
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有し、(B)成分に対し(A)成分を質量比((A)/(B))=0.02〜0.25となるように組み合わせることを特徴とする、水溶性高分子を含有するトリガー式エアゾールフォーム組成物の目詰まり防止方法。
(A)疎水変性アルキルセルロース
(B)プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールの群から選択される1種以上の多価アルコール
(C)酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される1種以上の水溶性高分子
(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリオキシエチレン2−ヘキシルデシルエーテルから選択される1種以上の非イオン性界面活性剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は目詰まり防止剤に関するものであり、更に詳しくは、トリガー式エアゾールフォーム組成物に配合することにより、トリガー部の吐出通路内における水溶性高分子による目詰まりを起こさないのみならず、吐出される泡の泡質および使用感を向上させるために好適に配合しうる目詰まり防止剤、並びにこれを含有するエアゾールフォーム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便であることや衛生的である等の製品特性から、化粧品分野においてエアゾール組成物が多く用いられている。その中でも、噴出時に泡状となるフォーム状化粧料が好まれ、数多く市販されている。例えば、頭髪化粧料であればトリートメント効果を付与するものやスタイリング効果を付与するものがあり、フォーム状にすることで頭髪に塗布しやすく、トリートメント効果やスタイリング効果を充分に発揮することができる(特許文献1)。フォーム状組成物はエアゾール缶に機能を有する組成物、即ち原液と液化ガスや圧縮ガス等からなる噴射剤を詰めたものであり、噴射とともに液化ガスが大気圧下で気化することで原液が膨らんで泡状になるものや、圧縮ガスで原液を押し出して泡状になるものがある。このようなフォーム状化粧料を吐出する形状はボタンタイプが汎用されており、そのボタン部を押すと一定量の泡が吐出されるようになっている。
【0003】
一方、吐出部の種類はボタンタイプ以外にも数多くあり、とりわけトリガータイプの化粧品は力が弱い人でも吐出しやすく、使いたい量だけ吐出できる構造になっているため、使用感に優れ、非常に便利である。しかしながら、容器に保存されている組成物から徐々に水が蒸発していき、特にトリガー式容器やディスペンサーポンプ式容器は吐出させた内容物が乾燥固化してしまい、吐出通路内で目詰まりを起こしてしまう問題があった。この問題はヘアスタイリング剤によく見られる問題であり、セット力を出すために配合する水溶性高分子が要因であると考えられている。
【0004】
このような課題を解決する発明として、例えば、高級脂肪酸石鹸とプロピレングリコールを配合したポンプフォーマー型容器入り洗浄剤組成物では、ポンプフォーマーの多孔質膜に目詰まりを生じることなく、泡質と使用感に優れると記載されている(特許文献2)。また、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルと水溶性高分子を配合した容器入り水性組成物では、スプレー式容器やポンプ式容器に用いた場合でも、吐出口に付着した内容物の乾燥を抑制し、目詰まりを防止することができると記載されている(特許文献3)。しかしながら、エアゾール組成物はノズル内で発泡して泡の薄膜化が起こるためノズル内に内容物が残りやすく、吐出通路内で増粘剤やポリマーが析出し、目詰まりを起こしてしまうことがある。また、前記特許文献における発明をエアゾール組成物に転用してもエアゾール組成物には適合しないことが分かった。
【0005】
また特許文献4では、炭素数12〜18の高級脂肪酸、有機アミン、糖アルコール、および非イオン性界面活性剤からなる原液と噴射剤とからなる泡状エアゾールが吐出安定性に優れると提案されている。しかしながらトリガー式エアゾールフォーム組成物の効果については全く知られていない。
【0006】
さらに特許文献5では、セット樹脂を配合するヘアスプレーであっても流路の詰まりの心配がないトリガー式エアゾールスプレーが記載されている。しかしながら、当該ヘアスプレーにはエタノールが多量に配合されており、エタノールは多量に配合すると泡質を悪化させることから、エアゾールフォームには不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−125477号公報
【特許文献2】特許第5373216号公報
【特許文献3】特許第5695339号公報
【特許文献4】特許第5562527号公報
【特許文献5】特開2010−37273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記したような従来技術の現状に鑑み、トリガー部の吐出通路内における水溶性高分子による目詰まりを起こさないのみならず、吐出される泡の泡質および使用感を向上させるために好適に配合しうる目詰まり防止剤、並びにこれを含有するエアゾールフォーム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、疎水変性アルキルセルロース、多価アルコール、非イオン性界面活性剤、水溶性高分子を含有する水系組成物、噴射剤として炭酸ガスを含有したトリガー式エアゾールフォーム組成物が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本願第一の発明は、 (A)成分および(B)成分を含有すること、かつ(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が0.02〜0.25であることを特徴とする、水溶性高分子((A)成分は除く)を含有するトリガー式エアゾールフォーム組成物の目詰まり防止剤である。
(A)疎水変性アルキルセルロース
(B)多価アルコール
【0011】
本願第二の発明は、(A)成分がステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載のトリガー式エアゾールフォーム組成物である。
【0012】
本願第三の発明は、請求項1または請求項2に記載する目詰まり防止剤、および(C)〜(E)成分を含有することを特徴とするトリガー式エアゾールフォーム組成物である。
(C)(A)成分以外の水溶性高分子
(D)一種または二種以上の非イオン性界面活性剤
(E)噴射剤
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トリガー部の吐出通路内における水溶性高分子による目詰まりを起こさないのみならず、吐出される泡の泡質および使用感を向上させるために好適に配合しうる目詰まり防止剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で用いられる(A)成分である疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に、疎水性基である長鎖アルキル基を導入したものであり、泡質の向上効果と消泡後の毛髪へのなじみやすさを高めることができる。疎水変性アルキルセルロースの疎水基に関しては、炭素原子数が10〜28であるものが好ましく、より好ましくは12〜22のアルキル基であり、具更に好ましくはステアリル基である。本発明においては、疎水変性アルキルセルロースとして、疎水基をステアリル基としたステアロキシヒド
ロキシプロピルメチルセルロースを用いるのが好ましく、これは、サンジェロースの商品名で大同化成工業株式会社から市販されているものを用いることができる。
【0015】
本発明における(A)成分の配合量は特に限定されないが、トリガー式エアゾールフォーム組成物全量に対し、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜0.4質量%である。この配合量の範囲であれば、泡質の向上効果と消泡後の毛髪へのなじみやすさを高めることができる。
【0016】
本発明で用いられる(B)成分である多価アルコールとしては、通常化粧料で使用されているものであれば特に制限されない。例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、マルチトー
ル、キシリトール等が挙げられる。これらの内、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、および1,3−ブチレングリコールは、(A)成分である疎水変性アルキルセルロースや後述する(C)成分である水溶性高分子を分散するのに優れ、トリガー内部の目詰まりを抑え、また毛髪に塗布した際のフレーキングを抑制する点から好ましい。
【0017】
本発明における(B)成分の配合量は特に限定されないが、トリガー式エアゾールフォーム組成物全量に対し、1.0〜10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.6〜5.0質量%である。
【0018】
成分(A)と成分(B)の質量比は限定されないが、((A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が0.02〜0.25の範囲になることが好ましく、より好ましくは0.06〜0.1である。当該比率がこの範囲内である場合、トリガー部の吐出通路内での目詰まりやポリマー等の析出を抑制する効果や、配合安定性をより向上させることができる。
【0019】
本発明に用いられる(A)成分以外の水溶性高分子化合物((C)成分)は、毛髪のセット性を向上させるのはもちろんのこと、毛髪にしっとり感や、しなやかさなどのコンディショニング効果を付与する目的で配合され、一種又は二種以上を適宜選択して組み合わせて用いることができる。(C)成分である水溶性高分子化合物としては、アニオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物、カチオン性残基を有する両性又はカチオン性高分子化合物が挙げられる。
【0020】
アニオン性高分子化合物としては、例えば、天然高分子としてカラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコール、ヒアルロン酸等、合成高分子化合物としてカルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸・マレイン酸共重合体、マレイン酸・ジイソブチレン共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体としては、例えば、メタクリル酸・アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸プロピル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸プロピル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル・アクリル酸プロピル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸プロピル・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸プロピル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸エチル・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル酸プロピル・アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸・アクリル酸メチル・アクリル
酸エチル・アクリル酸プロピル共重合体・アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
【0021】
非イオン性高分子化合物としては、例えば、天然高分子化合物としてペクチン、グアーガム、ローカストビーンガム、ゼラチン、トラガントガム、合成高分子化合物としてポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0022】
両性高分子化合物としては、ポリメタクロイルエチルジメチルベタイン、メタクリロイルエチルベタイン・メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0023】
カチオン性高分子化合物としては、官能基がジメチルジアリルアンモニウムハライドである塩化ジメチルジアリルアンモニウムホモポリマー、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸3元共重合体(ルーブリゾール社、マーコートシリーズ)等が挙げられる。さらに、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デキストラン、カチオン化プルラン、四級化ビニルピロリドン・アミノエチルメタクリレート共重合体、ポリエチレンイミン、ジプロピレントリアミン縮合物、アジピン酸ジメチル−アミノヒドロキシプロピルジエチルトリアミン共重合体、第四級窒素含有スターチ、カチオン性ポリウレタン樹脂等の他、カチオン化加水分解ケラチン、カチオン化加水分解シルク、カチオン化加水分解コラーゲン、カチオン化加水分解小麦、シリコーン化加水分解コラーゲン、シリコーン化加水分解シルクのタンパク加水分解にカチオン基を導入したもの等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも非イオン性高分子化合物が好ましく、軽くて、かつ十分なセット力を発揮させる観点から酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体が好ましく、また、使用後の髪に滑らかな感触を付与する効果の点から、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0025】
ヒドロキシエチルセルロースは特に制限されないが、重量平均分子量10万〜300万のものが好ましく、より好ましくは50万〜200万のものが好ましい。これらに該当する市販品としては、例えば、ユニオンカーバイド社製のHECQM100M(重量平均分子量150万)、HEC−QP4400(重量平均分子量80万)や、ダイセル化学工業(株)製のHECダイセルSE900(重量平均分子量150万)等が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは特に制限されないが、2%水溶液の粘度(20℃)が単一円筒形回転粘度計((株)トキメック製TVB−20L型、ローターNo.L、M2又はM4を使用、回転数60rpm、測定時間4分)で測定した時に、2〜35,000mPa・s、より好ましくは20〜10,000mPa・sの範囲のものが好ましい。これらに該当する市販品としては、例えば信越化学工業(株)製のメトローズが挙げられる。
【0027】
酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されない。市販品としてはルビスコールVA37HM(BASF)、PVP/VA S−630(ISPジャパン株式会社)等が挙げられる。
【0028】
本発明における(C)成分の配合量は特に限定されないが、トリガー式エアゾールフォー
ム組成物全量に対して0.001〜2.0重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1.0重量%である。この配合量の範囲内であれば、適度な粘度が得られて使用性を向上させることができる。
【0029】
本発明に用いられる(D)成分である非イオン性界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POEフィトステロール、POEフィトスタノール、POEポリオキシプロピレンアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POEラノリン、POEラノリンアルコール、POEミツロウ誘導体、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、POEアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0030】
本発明における(D)成分の配合量は特に限定されないが、トリガー式エアゾールフォーム組成物全量に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。この配合量の範囲であれば、泡質の向上効果と消泡後の毛髪へのなじみやすさを高めることができる。
【0031】
本発明で用いられる(E)成分である噴射剤としては、プロパン、n−ブタン、i−ブタン等を主成分とする液化石油ガス(LPG)等の炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、炭酸ガス、窒素ガス、酸素、亜酸化窒素等の圧縮ガスが挙げられ、これらを単独で又は適宜組み合わせて使用することができる。
【0032】
原液と噴射剤の混合比率は特に限定されないが、原液及び噴射剤の含有質量比率:(原液)/(噴射剤)は80/20〜95/5であることが好ましく、さらに好ましくは90/10〜95/5である。
【0033】
トリガー式エアゾールとは、トリガー式アクチュエーターを備えたエアゾールである。トリガー式アクチュエーターは、例えば三谷バルブの市販品を好適に使用できる。また、本発明においては、トリガー式アクチュエーターに適したバルブとしては、良好な泡質が得られることから、ステム孔径0.5mm、ハウジングの下穴1.0mm、横穴がないものが好ましい。
【0034】
以上のトリガー式エアゾールフォーム組成物は、エアゾール容器内に充填されて、エアゾール製品とされるが、エアゾール容器の製品内圧が、温度35℃において0.8MPa以下となるように噴射剤を含有させることが好ましい。また温度35℃におけるエアゾール容器の製品内圧は、0.3〜0.7MPaであることが更に好ましい。 製品内圧が過大である場合には、噴射剤の充填圧力が過剰に大きくなることに起因して十分な安全性を得ることができなくなるおそれがある。 また、エアゾール容器の温度35℃における製品内圧が0.3〜0.7MPaであることにより、本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物に十分な安全性が得られると共に、吐出物に良好な起泡性を得ることができる。
【0035】
本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物は、前記の必須成分に加えて必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で通常化粧料に使用されている任意の成分を使用することが出来る。これらの成分としては、ラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルーテル硫酸塩、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム
等のアニオン性界面活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油アルキルN−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム等の両性界面活性剤、セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、イソノナン酸イソノニル等のエステル油、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素、ローズヒップ油等の植物油、ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン類、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−アラニン、L−アルギニン、グリシン、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム、L−システイン、L−スレオニン、セリン等のアミノ酸類、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、香料、水、増粘剤、色剤、酸化防止剤、薬剤等が挙げられる。
【0036】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、各種生薬、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、リゾフォスファチジルコリンやリゾフォスファチジン酸、大豆調製物等のラミニン5産生促進薬剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、セファランチン、γ−オリザノール等の血行促進剤、硫黄、チアントール等の抗脂漏剤、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン、ウコン抽出物、サイコ抽出物、イブキジャコウ抽出物、ヒオウギ抽出物、アセンヤク抽出物、ブナの芽抽出物、加水分解カゼイン、米抽出物加水分解液、米ぬか抽出物、トウニン抽出物、クララ抽出物、チオタウリン、ヒポタウリン、マジョラム抽出物、シリカ被覆酸化亜鉛、イチヤクソウ抽出物、オウバク抽出成分、オウレン抽出成分、カッコン抽出成分、シコン抽出成分、シャクヤク抽出成分、センブリ抽出成分、バーチ抽出成分、セージ抽出成分、ビワ抽出成分、ニンジン抽出成分、アロエ抽出成分、ゼニアオイ抽出成分、アイリス抽出成分、ブドウ抽出成分、ヨクイニン抽出成分、ヘチマ抽出成分、ユリ抽出成分、サフラン抽出成分、センキュウ抽出成分、ショウキョウ抽出成分、オトギリソウ抽出成分、ローズマリー抽出成分、ニンニク抽出成分、トウガラシ抽出成分、ワレモコウ抽出成分、チンピ、トウキ等、レチノール、酢酸レチノール等のビタミンA類、リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンヌクレオチド等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキシンジオクタノエート等のビタミンB2類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステル、DL−α−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム、D−パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、アセチルパントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等のビタミンD類、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、コハク酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類、ビタミンP、ビオチン等のビタミン類なども適宜配合することができる。
【0037】
本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物の用途は限定されないが、皮膚用や毛髪用の化粧料として使用でき、特に整髪用の毛髪化粧料として使用することが好ましい。
【0038】
本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物は、常法により製造される。例えば、成分(A)〜(D)、及び必要に応じて上記任意成分を適宜配合して原液を調製し、エアゾール容器に充填し、これに噴射剤を充填して製造される。
【0039】
本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物の原液は、どのような系であっても良く、乳化、非乳化、及び、単層、多層は問わず、溶剤やアルコールを連続相とする溶剤・アルコール系、油を連続相とする油性系、油中水型乳化系、油性系−水性系による二層系、水中油型乳化系等とすることができるが、使用性の観点より、水中油型乳化系であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、実施例に記載の各種試験(吐出安定性の評価、泡質、泡の持続性、官能評価(べたつき、なじみやすさ、しっとり感))に関する試験法を下記に示す。また、以下の表に示すトリガー式エアゾールフォーム組成物の配合量は、それぞれ質量%で示す。
【0041】
(1)吐出安定性の評価
各実施例および各比較例で得られたトリガー式エアゾールフォーム組成物を5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ保管し、隔日ごとに下記操作を繰り返し、吐出安定性の試験を行った。
【0042】
<操作>
各恒温槽より各トリガー式エアゾールフォーム組成物を取出し、直ちに15秒間よく振ってから、正立で缶を持ちトリガーを指で引き、5秒間吐出した。吐出後、各試料を各恒温器に戻し、2日後に同様の試験を実施した。この操作を、中味液が完全に無くなるまで、或いは、目詰まりなどにより中味が吐出されなくなるまで繰り返し実施し、その状態を下記の基準に従い評価した。
【0043】
<判断基準>
◎:観察期間内に吐出状態に全く異常は見られず、中身液が完全になくなる
○:観察期間内に吐出状態に異常は見られないが、中身液が完全にはなくならない
△:観察期間内に吐出状態がやや弱くなり、中身液が残る
×:観察期間内に全く吐出しなくなり、中身液が残る
【0044】
(2)泡質
20名の被験者によって25℃に保たれた室内で各試料を噴出させ手に取り、泡質(泡のキメ細かさおよびクリーミィさ)の評価を行なった。尚、評価基準は下記の通りである。
【0045】
<判定基準>
◎:被験者の15名以上が泡質が良い
(泡がキメ細かく、クリーミィ)と判断
○:被験者の10名以上15名未満が泡質が良い
(泡がキメ細かく、クリーミィ)と判断
△:被験者の5名以上10名未満が泡質が良い
(泡がキメ細かく、クリーミィ)と判断
×:被験者の5名未満が泡質が良い
(泡がキメ細かく、クリーミィ)と判断
【0046】
(3)泡の持続性
20名の被験者によって25℃に保たれた室内で各試料を噴出させ、直後の状態と噴出1分後の状態を比較することで泡の持続性の評価を行なった。尚、評価基準は下記の通りである。
【0047】
<判定基準>
◎:被験者の15名以上が直後の泡の状態と
噴出1分後の泡の状態が変わらないと判断
○:被験者の10名以上15名未満が直後の泡の状態と
噴出1分後の泡の状態が変わらないと判断
△:被験者の5名以上10名未満が直後の泡の状態と
噴出1分後の泡の状態が変わらないと判断
×:被験者の15名以上が直後の泡の状態と
噴出1分後の泡の状態が変わると判断
【0048】
(4)官能評価
20名の専門パネルを対象に実施例及び比較例のトリガー式エアゾールフォーム組成物を使用してもらい、べたつき、なじみの良さ、しっとり感の項目について官能試験を行い、下記に示す判定基準により評価を行なった。
【0049】
(べたつき)
<判定基準>
◎:パネルの15名以上がべたつきがないと判断
○:パネルの10名以上15名未満がべたつきがないと判断
△:パネルの5名以上10名未満がべたつきがないと判断
×:パネルの15名以上がべたつくと判断
【0050】
(なじみやすさ)
<判定基準>
◎:パネルの15名以上が泡のなじみが良いと判断
○:パネルの10名以上15名未満が泡のなじみが良いと判断
△:パネルの5名以上10名未満が泡のなじみが良いと判断
×:パネルの15名以上が泡のなじみが悪いと判断
【0051】
(しっとり感)
<判定基準>
◎:パネルの15名以上が髪が保湿されていると判断
○:パネルの10名以上15名未満が髪が保湿されていると判断
△:パネルの5名以上10名未満が髪が保湿されていると判断
×:パネルの15名以上が髪が保湿されていないと判断
【0052】
実施例1〜9、比較例1〜5
表1に記載の配合組成よりなるトリガー式エアゾールフォーム組成物を常法により調製し、耐圧容器に充填した後、前記各種試験を実施して評価を行なった。その結果を表1に併せて示す。なお、トリガー式アクチュエーターは三谷バルブ社製のTA−1を使用した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1より明らかなように、本発明の成分を用いた実施例1〜9はいずれも優れた性能を示していた。一方、比較例1〜5では、吐出安定性、泡質、泡の持続性、および官能評価(べたつき、なじみやすさ、しっとり感)のいずれかの点で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0055】
以下、本発明のトリガー式エアゾールフォーム組成物のその他の処方例を実施例として挙げる。これらは常法により調製した。なお、これらの実施例のトリガー式エアゾールフォーム組成物についても、吐出安定性、泡質、泡の持続性、官能評価(べたつき、なじみやすさ、しっとり感)に関する試験を実施したところ、いずれの実施例においても、優れた特性を有しており良好であった。
【0056】
実施例10
<原液> 配合量(%)
(1)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3
(2)1,3−ブチレングリコール 3.0
(3)グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合物 0.1
(4)L−アルギニン 0.01
(5)L−グルタミン酸ナトリウム 0.01
(6)3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート・ポリテトラメチレングリコール・N,N−アルキルメチルジエタノールアンモニウムモノアルキルサルフェート共重合体エマルション 0.1
(7)エタノール 1.5
(8)POE硬化ヒマシ油 0.8
(9)流動パラフィン 3.0
(10)イソノナン酸イソノニル 2.5
(11)ローズヒップ油 0.05
(12)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 0.01
(13)香料 0.1
(14)パラオキシ安息香酸エステル 0.2
(15)精製水 残 部
<ガス充填>
原液 94.0
噴射剤 LPG(0.15) 5.0
噴射剤 炭酸ガス 1.0
【0057】
(製法)
(1)〜(6)、(14)、(15)を80℃に加温して均一に溶解させ、40℃まで冷却した後、(7)〜(13)を混合したものを加えて乳化した後、ホモミキサーで混合分散を行い30℃まで冷却してエアゾール原液を調製し、ついで原液と噴射剤をエアゾール耐圧容器に充填しトリートメントフォームを得た。
【0058】
実施例11
<原液> 配合量(%)
(1)ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3
(2)1,3−ブチレングリコール 3.0
(3)グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合物 0.1
(4)L−アルギニン 0.01
(5)L−グルタミン酸ナトリウム 0.01
(6)ポリビニルピロリドン 0.8
(7)エタノール 1.5
(8)POEイソセチルエーテル 0.8
(9)POE硬化ヒマシ油 0.3
(10)イソノナン酸イソノニル 2.5
(11)α−オレフィンオリゴマー 3.5
(12)パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 0.01
(13)香料 0.1
(14)パラオキシ安息香酸エステル 0.1
(15)フェノキシエタノール 0.3
(16)精製水 残 部
<ガス充填>
原液 98.0
噴射剤 炭酸ガス 2.0
【0059】
(製法)
(1)〜(6)、(14)、(16)を80℃に加温して均一に溶解させ、40℃まで冷却した後、(7)〜(13)、(15)を混合したものを加えて乳化した後、ホモミキサーで混合分散を行い30℃まで冷却してエアゾール原液を調製し、ついで原液と噴射剤をエアゾール耐圧容器に充填しスタイリングフォームを得た。
【0060】
また、いずれの実施例の毛髪化粧料を使用した場合にも、頭皮に炎症、その他副作用と考えられる症状は発現せず、本発明に係るトリガー式エアゾールフォーム組成物は安全性にも優れることが明らかであった。