【実施例】
【0014】
図1の全体の概略を示した概念説明図に沿って、本発明の実施例1におけるナノファイバー積層の製造方法、及び、これを用いた建材用の薄膜防臭遮蔽部材を説明する。
図1に示すように、ナノファイバー積層の製造装置の概略は、次の工程順である。先ず第1工程はモノフィラメントの織り成した基材N1を繰り出す工程[基材繰出工程A]、次工程は繰り出された基材に第1高分子接着剤N2を吹き付け第1接着剤ファイバーで蜘蛛の巣状或いはジグザグ状の網部を形成するともに基材に接着して基材を補強する工程[網状補強繊維形成工程B]、第1ファイバー状高分子接着剤N2を吹き付け第1接着剤ファイバーを冷却する工程[第1高分子接着剤冷却工程C]、補強された基材に更に第2接着剤ナノファイバーを接着する第2ファイバー状高分子接着剤N3を吹き付け接着部を形成する工程[第2高分子接着剤吹付工程D]、この高分子接着剤N3にナノファイバーN4を吹き付ける工程[ナノファイバー生成工程E]、このナノファイバーに消臭剤を吹き付ける工程[消臭剤添付工程F]、消臭剤を吹き付けた製品ナノファイバーN5を巻き取る工程[ナノファイバー積層体巻取工程G]とから構成されている。そこで、上述した各工程を順次詳細に説明する。
【0015】
[基材繰出工程A]
本実施例の基材N1の単体は、顕微鏡写真の
図10に示すようなもので、通常の網戸に用いられる0.25mm径のPP(ポリプロピレン)のモノフィラメントで織り成され、1インチ(25.4ミリ)角の中に18マス×18マスがある18メッシュの網(ダイオ化成株式会社.防虫ネット(品番メッシュ18))であり、厚さは0.48mm、重量は80g/m2であって、この基材は網戸等の建材として使用するには十分に強度がある。なお、基材N1としては、上記のPP(ポリプロピレン)以外として、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いてもよく、モノ又はマルチフィラメントの径は0.1〜0.5mm径であり、このモノ又はマルチフィラメントによる織編物の粗い目は15〜30メッシュである網目でもよい。
この基材N1は、
図1に示すように、領域 [A]の基材(N1)供給部1にはロール状の巻取ロッド11がセットされ、この巻取ロッド11からは下側に圧接するフィードローラ12により複数の案内ローラ13と張力調整機構14とを経て次工程の[網状補強繊維形成工程B]に送られる。
【0016】
[網状補強繊維形成工程B]
網状補強繊維形成工程Bの網状補強繊維形成部2は、送り出される基材N1に第1高分子接着剤を吹き付けN2て、蜘蛛の巣状或いはジグザグ状のファイバーで架橋して網目を形成し、基材N1の織り成した網目がずれるのを防止するとともに、更に、基材N1の網目の空間にさらに細かい網目を形成して、後工程での積層する薄いナノファイバー層の強度を補強して、ナノファイバー層が破れることを防止する。
この状態は顕微鏡写真の
図12に示すようなもので、基材N1における正方形の網目の空間部分を第1ナノファイバー状高分子接着剤が平均で太い10〜100μmで、ナノファイバーN4よりは太い繊維で、蜘蛛の巣状或いはジグザグ状のファイバーを架橋し張り巡らせてより細かい網目を形成し(N2)、この細かい網目に後工程でのナノファイバー層N4を第2ナノファイバー状高分子接着剤の接着剤により接着(N3)してナノファイバー積層体の強度を向上させている。
【0017】
この第1ファイバー状高分子接着剤N2は、架橋及び補強用接着剤(株式会社製;クライベリットPUR反応性ホットメルト(品番:No.703.5)で、蜘蛛の巣状に糸を引くように延びる性質があり、細かい架橋した網目を形成するには好都合である。また、この第1高分子接着剤の接着剤は加熱する必要がなく、室温で徐々に硬化(数秒)するので、基材N1やナノファイバーN4に変質を与えることがない。
ただし、第1ファイバー状高分子接着剤N2は、速乾性であっても硬化が完全ではないと、つまり、基材N1と後工程で第2高分子接着剤N3やナノファイバーN4との固着が十分でなく剥離することが多かった。
このため、第1ファイバー状高分子接着剤N2は、速乾性であっても次工程に移行するまでにより固化(硬化)を完全に終了することが必要であり、このために次工程で詳細に説明するこの第1ファイバー状高分子接着剤N2を吹き付け第1ファイバー状接着剤を冷却する工程[第1高分子接着剤冷却工程C]を設けている。
また、この第1高分子接着剤N2で基材N1における正方形の網目の空間部に蜘蛛の巣状或いはジグザグ状の網目を形成する理由は、ナノファイバーN4が形成する空間を塞ぐことを少なくするためで、基材N1のモノフィラメント自体で網の目の空間を小さくすると、遮蔽部材の重量も増すことは勿論のこと、遮光率が大きくなってしまう不都合が生じるからである。
【0018】
この蜘蛛の巣状或いはジグザグ状のファイバーを張り巡らせる網状補強繊維形成部2を
図1、
図2及び
図3で説明する。
図1に示すように、網状補強繊維形成部2は、[基材繰出工程A]と[第1高分子接着剤の冷却工程C]との間に位置し、ポリプロピレン(或いはポリプロエチレン)の基材N1の網目となる表面に、第1高分子接着剤N2を吹き付けて基材N1の正方形の空間に細かい網目を形成するものであるので、ナノファイバーN4や第2高分子接着剤N3の接着剤が基材N1に吹き付けられる直前に、
図2、
図3に示すように、ノズル部22からナノファイバーよりも若干太く強度もある繊維状にして基材N1に吹き付ける。
【0019】
この第1ファイバー状高分子接着剤N2、株式会社クライベリットジャパン製のポリウレタンホットメルト接着剤(湿気硬化型)(PUR反応性ホットメルト(品番)No.703.5)であり物性は以下のようなものである。
(A)主成分 ポリウレタン
粘度
120℃:11,000 mPas
140℃: 6,000 mPas
オープンタイム(溶剤を蒸発させる所用(硬化)時間)φ3mmビード:30sec オープンタイム90μm:30sec
特徴:耐熱、耐水、耐寒性、低温塗工、弾性タイプ・糸引き性
【0020】
この第1ファイバー状高分子接着剤N2を吹き付けるに際しては、ナノファイバーN4の隙間を埋めてしまうと、折角のナノファイバーN4の良好な通気性が阻害されてしまうので、第1ファイバー状高分子接着剤N2はできるだけ細く、蜘蛛の巣状或いはジグザグ状の網を形成するように、ナノファイバーN4の隙間を埋めることがないように形成することが重要である。
第1ファイバー状高分子接着剤N2はPUR反応性ホットメルト((品番)No.703.5)としたがその選定条件は、
(1)基材N1の網目空間(メッシュ間)の補強、及び、後述する第2高分子接着剤N3の接着剤塗布面の拡大(接着面積の拡大)が計れること、(2)ファイバー状になり糸引き性が強く、架橋性に優れていること、(3)第1高分子接着剤の吹き付け工程から、第2ナノファイバー状高分子接着剤N3の吹き付け工程までの距離が短いので、接着剤塗布後、直ちに表面が硬化することが必要である。なお、他の第1高分子接着剤N2としては、株式会社クライベリットジャパン製の無黄色変色タイプ(透明又は白色)の品番VP9484/10のポリウレタンホットメルト接着剤(湿気硬化型)でも同様の結果が得られた。
【0021】
図1において、網状補強繊維形成部2の第1ファイバー状高分子接着剤N2の吹き付け部21は、上案内ローラ13aから下案内ローラ13bに基材N1が移動する上方に配置され、ノズル部22が一緒に移動する基材N1の面に対して平行な距離110cm(ナノファイバー生成幅)を往復移動させている。これは、第1高分子接着剤N2はナノファイバー層のように積層させる必要がなく、ナノファイバーN4の強度が補強されればよく、むしろ少ないほうが良いからである。
上記の第1ナノファイバー状高分子接着剤N2は高温の方が粘度が低くなり、140℃での粘度は6000(mPa・s)であるので、この状態で使用できるようにするため、ノズル部22には加熱器(ヒータ)264を設けてある。なお、第1ファイバー状高分子接着剤N2は後述する第2ファイバー状高分子接着剤N3と全体が溶けて融合しないよう速乾性(数秒)のものを用いる必要がある。
【0022】
ここで、第1ファイバー状高分子接着剤N2(接着剤)の高分子樹脂吹き付け部21とノズル部22の詳細を、
図1、
図2及び
図3に沿って説明するが、140℃程度に加熱した接着剤(第1高分子接着剤N2)供給部24から供給ポンプ242によって、接着剤(第1高分子接着剤N2)供給管241から先端ノズル直径が0.15mmの中心ノズル221に供給される。この中心ノズル221の先端の外筒を包むように筒状の熱風吹出部26を設け、この熱風吹出部26の熱風吹出ノズル部261から高速加熱空気Hを噴射して中心ノズル221から溶融した接着剤を引き抜くようにナノファイバー状高分子接着剤N2にして基材N1に向かって噴射する。このとき熱風吹出ノズル部261に供給する高速加熱空気Hを送風するエアポンプ28で50リットル/分で加熱空気発生器281、加熱空気供給管282、加熱空気導入部枠体272を介して加熱空気路形成キャップ27と溶融樹脂導入管23の間に形成される高速風吹出通路に導入され、高温高速の吹出通路に連なる加熱された高速風吹出口263先端の熱風吹出ノズル部261から高速加熱空気Hが噴出される。
この空気吹出ノズル部261の噴出面積1mm
2程度とし、ノズル部22全体を約140℃にヒータ264で高温に調整しつつ、噴出空気も140℃程度に加熱して噴出し、接着剤がノズル部22先端でも140℃を維持するようにしている。なお、ノズル部22の先端近傍で外部から噴射空気が乱流にならないように、加熱空気路形成キャップ27の先端にノズル風洞29を設けることが望ましい。
【0023】
また、前述したように接着剤のノズル部22に連なる溶融樹脂導入路234を中心に有する、溶融樹脂導入管23の下流側の外周部231には、ノズル部22に連なる熱風導入溝232が設けられ、この熱風導入溝232には他端には熱風発生器281に連通している。
この熱風導入溝232は、
図4に示すように、断面円形の溶融樹脂導入管23の外周部231を平坦に切削したもので、本実施例では4本の長い熱風導入溝232を形成している。この熱風導入溝232は対向する構成が良く、これは高速熱風吹出のノズル部22から対向する熱風が交差するように吹き出すので、接着剤の溶融高分子材料を延伸するように作用する。また、長い熱風導入溝232が形成されるので、そのノズル部22から熱風が整然と吹き出される。
このような構成により、特にESD法を用いなくても、この方法より多少太くはなるが、接着剤が繊維径500nm〜500μmのファイバー状で大量に生成されることが判明し、この内10μmから100μmのファイバー状に溶融した第1高分子接着剤N2がポリプロピレンの基材N1に蜘蛛の巣状、或いはジグザグ状に貼り付くよう吹き付けられ、全体に均一に塗布される。
【0024】
ノズル本体221は中心軸孔2211の周りには、中心軸孔2211を包むように同軸状にリング状の高速熱風の吹出通路262が設けられ、高速熱風の吹出通路262の先端には所定の吹出角度を有したリング状の高速風吹出口263が設けられ、ノズル本体221の吐出口2212は高速風吹出口263より僅かにX=3mm程度(2〜4mm)突出して、整流が生じるようにしている。
この吐出口2212の高速風吹出口263からの突出量Xは、
図3に示されるように、加熱空気路形成キャップ27の高速熱風の吹出通路262が斜行しており、中心のノズル本体221の外周も斜行しているので、加熱空気路形成キャップ27と加熱空気導入部枠体272の間に熱風吹出口の微調整用ワッシャー273の介在させ、この微調整用ワッシャー273の異なった厚さのものを選択するか、枚数を調整することによって、前記突出量Xを調整することができる。これは、突出量Xを調整すると同時に、高速熱風の吹出通路262熱風吹出通路21の内壁とノズル本体221の外周と間、すなわち、熱風吹出ノズル部261の開口面積も微調整することができる。
このように、熱風吹出ノズル部261の熱風吹出量を微調整することができるので、
図1に示すように、複数のノズル部22の熱風吹出量を同じにすることができ、より均一な接着剤及び分子材料のナノファイバーの積層体を製造することができる。
【0025】
また、ノズル部22は主にノズル本体221とノズル支持体222とからなり、
図3における吐出口2212の近傍の拡大図に示すように、ノズル本体221には長手方向に溶融高分子が噴出する中心軸孔2211が設けられるが、この中心軸孔2211の下流側の先端部には吐出口2212が設けられる。ここで重要なのはノズル本体221の材質であるが、本発明の紡糸ノズル部22におけるノズル本体221の材質はセラミック又はルビーが最適で、本実施例ではルビーである。
この吐出口2212であるノズル内径は0.13mmから0.18mmとしたが、0.18mm以上だとナノ単位の繊維が生成しづらく、0.13mm以上だとノズル内径に溶融した高分子接着剤が詰まってしまうので、本実施例では0.15mm程度とした。また、従来の前掲の特許文献4では、ノズル内径を0.15mmとしたが、材質を金属のステンレスとしたため、すぐに太いファイバーに変質してしまうことが判明した。これは繰り返し加重や圧力の為にステンレスのノズル内径が拡がってしまうことに起因することが判った。このため、耐熱性や対摩耗性に優れ高温下でも変形しないルビー(セラミック)を使用すると、長時間連続稼働させても、高品質の高分子ナノファイバー積層体N5を生成することができた。
なお、基材N1は目が粗いので、第1ファイバー状高分子接着剤N2が基材N1を通過するので、背後に接着剤捕集部25で捕集する。
【0026】
しかし、セラミックやルビーは加工が難しく、ネジ等を設けた金属のノズル支持体222にノズル吐出口2212をネジ等で固着することが困難であった。そのため、
図3に示すように、ノズル本体221の上流の末端に外側に突出した肉厚の鍔部2213を設け、対応するノズル支持体222の内孔2221の下流の末端に内側に突出する係止部2222を設けて、ノズル本体221をノズル支持体222の内孔2221の上流の開口2223から挿入して、前記鍔部2213を係止部2222に密着嵌合させて固着する。このような構造なので、下流側に高い圧力で溶融高分子が挿入されてもノズル本体221がノズル支持体222から離脱することがない。この場合、内孔2221の内径はノズル本体221の外径および鍔部2213の外径よりも大きく、ノズル支持体222の先端係止部2222の内径はノズル本体221の外径よりも小さく、鍔部2213の外径よりも小さくする必要がある。
また、ノズル部22に連通する溶融樹脂導入管23には、適宜の手段により溶融樹脂が供給されるが、例えば、
図2に示されるように、接着剤供給部24から供給ポンプ242及び接着剤供給管241により接続され供給される。
このノズル本体221は、必要に応じて基材N1に対して水平方向に同じ距離を保って移動するようにすれば、ノズル本体221の数を少なくすることが可能となる。
次に、第1ファイバー状高分子接着を冷却するために[第1高分子接着剤冷却工程C]に移行する。
【0027】
[第1高分子接着剤冷却工程C]
本実施例で[第1高分子接着剤冷却工程C]での冷却装置4は、ペルチェ素子を使用したものである。
アルミ板の冷却板31は、
図5に示すように、表面温度を−10℃〜−20℃に冷却し、冷却板31に対向して断熱板32を配置してその間隔区を5mm以下とし、前工程で基材N1に第1ファイバー状高分子接着剤N2を塗布した網状補強繊維と冷却板と31との間隔は1.5mm以下にすることが、第1ファイバー状高分子接着剤N2の硬化の促進や省エネの観点からも好ましい。
冷却板31の背後にはペルチェ素子の冷却機構33が組み込まれているが、ペルチェ素子の原理は
図6に示すように、ペルチェディバイス34は、例えば、複数のペルチェ素子から構成され、複数のN型熱電半導体(n)341とP型熱電半導体(p)342とが交互に並べられ、それらを金属電極343で千鳥状に接続して両端に電源345からの直流電源を供給する構成となっている。この接続状態では、
図6で右向きの矢印に示すように、半導体中の電子やホールが熱を下側に運ぶので、左側の金属電極343uが冷え、右側の金属電極343dが加熱される。
この左側金属電極343uの複数の上面を連ねて薄板状の絶縁材344で覆われ、その絶縁材344を介して冷暖房する冷却板31に熱が効率よく伝導するように密接接触するように重ねられている。また、同様に右側金属電極343dの複数の上面を連ねて薄い絶縁材344で覆われ、その絶縁材344を介して冷却(吸熱)(発熱)する冷却板31へ熱が効率よく伝導するように密接接触するように重ねられている。
この[第1高分子接着剤冷却工程C]は非常に重要であって、この[第1高分子接着剤冷却工程C]を通過させた場合の顕微鏡写真
図11Aは第2接着剤ナノファイバーが綺麗に蜘蛛の巣状の網目で補強されているのに対して、[第1高分子接着剤冷却工程C]が存在しない(稼働させない)場合の顕微鏡写真
図11Bは、第2接着剤が縮れて蜘蛛の巣状にはなっていないことから、強個な補強にはなっていないことが判る。
網状補強された基材N1は接着剤の固化(硬化)が促進されて、次の第2接着剤ナノファイバーを接着する第2ファイバー状高分子接着剤N3を吹き付ける工程[第2高分子接着剤吹付工程D]に移行する。
【0028】
[第2高分子接着剤吹付工程D]
次に、[網状補強繊維形成工程B]で第1ファイバー状高分子接着剤N2で補強された基材に、ナノファイバーを接着する第2ファイバー状高分子接着剤N3を吹き付ける[第2高分子接着剤吹付工程D]について説明する。
この状態は顕微鏡写真の
図12(基材N1+(架橋接着剤)N2+(接着剤)N3)に示すようなもので、第1ファイバー状高分子接着剤N2よりも更に細めの10μmから100nmの繊維径とした第2ファイバー状高分子接着剤N3の接着剤を網に薄く吹き付けて隙間を塞がないように収縮させてある。このように、接着剤N2が基材N1にまとわり付いた状態に、第2ファイバー状高分子接着剤N3が付着収縮する。
したがって、
図3の第1ファイバー状高分子接着剤N2(基材N1+架橋接着剤N2)の状態に比べて、
図13の顕微鏡写真は更に第2高分子接着剤N3の接着剤が、網目の隙間を塞がないように薄く吹き付けられている。
図1に示すように、[第2高分子接着剤吹付工程D]の装置構成は、[第1高分子接着剤冷却工程C]と[ナノファイバー生成工程E]との間に位置し、ノズルも基本的には[網状補強繊維形成工程B]と同じで、ポリプロピレン(或いはポリプロエチレン)の基材N1と第1高分子接着剤N2との網目となる表面に、第2ファイバー状高分子接着剤N3の接着剤を吹き付ける。
【0029】
この第2ファイバー状高分子接着剤N3は、株式会社クライベリットジャパン製のポリウレタンホットメルト接着剤(湿気硬化型)(PUR反応性ホットメルト(品番)No.701.1又は701.2)であり、物性は以下のようなものである。なお、本実施例ではUR反応性ホットメルト(品番)No.701.2を使用した。また、他の第2高分子接着剤N3としては、株式会社ヘンケル製の無黄色変色タイプ(透明又は白色)の品番LA7575UVのポリウレタンホットメルト接着剤(湿気硬化型)でも同様の結果が得られた。
(B)PUR反応性ホットメルト(品番)No.701.1 主成分 ポリウレタン
粘度
80℃:12,000 mPas
100℃:4,000 mPas
120℃:2,000 mPas
オープンタイム:>1hour
グリーン強度:強
特徴:低温塗工・糸引き無・工耐加水分解性
(C)PUR反応性ホットメルト(品番)No.701.2 主成分 ポリウレタン
粘度(製造時)
brookfield HBTD 10rpm 100℃ 約5,000 ±1,500mPas 120℃ 約3,000 ±1,000mPas オープンタイム.φ3mmビード:3〜4sec 添加剤: イソシアネートを含有。
【0030】
第2高分子接着剤N3はPUR反応性ホットメルト(品番:No.701.1又は701.2)としたがその選定条件は、
(1)基材N1の網目空間(メッシュ間)と第1高分子接着剤N2の架橋で作った補強網目の基材との接着性が良好なこと、(2)網目を塞ぐことがなく、糸引き性のような変形が少ないこと、(3)第2高分子接着剤N3を塗布後の表面が硬化するまでの時間が長く、表面が硬化するまでの比較的長時間(3分〜1時間)を利用してナノファイバーを塗布して基材N1とナノファイバーN4が接着硬化する時間を長く保っていること、(4)硬化する前は粘着性が強く、主剤である消臭剤の酸化チタンを散布されたナノファイバーN4が接着されやすいことが必要である。
したがって、これらの条件を満たし、500nmから10μmの繊維径としたファイバーを形成することができる接着剤であれば他の高分子接着剤でも良い。
【0031】
これを使用するノズル装置は、[網状補強繊維形成工程B]と同様であり、供給する高分子接着剤が異なるだけである。
この第2高分子接着剤N3は、基材N1に第1ファイバー状高分子接着剤N2とナノファイバーN4とを接着固定する接着剤(第2ファイバー状高分子接着剤N3)で、接着性がより強い性質があり、ナノファイバーN4積層体を基材N1に固着するには好都合である。また、この第2高分子接着剤N3の接着剤も加熱する必要がなく室温で徐々に硬化するので、基材N1や酸化チタンを散布したナノファイバーN4に変質を与えることがない。
また、この第2ファイバー状高分子接着剤N3で基材N1等の網目の空間部に蜘蛛の巣状、或いはジグザグ状の網目を形成する理由は、ナノファイバーN4が形成する空間を塞ぐことを少なくするためで、基材N1のモノフィラメント自体で網の目の空間を小さくするのとは異なり、遮蔽部材の重量も増すことは勿論のこと、遮光率が大きくなってしまう不都合が生じるからである。
【0032】
このように、第2ファイバー状高分子接着剤N3の接着剤の形成は、ナノファイバーN4が形成する空間をなるべく塞ぐことがないように十分細くファイバー状にすることが重要であり、広がってフィルム状になる接着剤を使用したのではナノファイバーN4を用いる意味が無くなるのであって、なるべく細いファイバーであることが好ましい。本実施例では第2高分子接着剤N3を500nmから10μmの繊維径としたファイバーで、補強した基材に隙間を塞がないように薄く吹き付け収縮しやすくすることが重要である。
要は、第1ファイバー状高分子接着剤N2及び第2ファイバー状高分子接着剤N3は細いファイバーを形成することが絶対要件であるが、とりわけ、第1ファイバー状高分子接着剤N2は、網目の補給であるから、接着機能を有しつつファイバー(繊維)状の形状を保った即座に硬化するものが望ましく、逆に、第2ファイバー状高分子接着剤N3は基材N1や第1ファイバー状高分子接着剤N2とナノファイバーN4を接着する機能を高め、十分な接着時間を維持し、比較的ゆっくり硬化するものが望ましい。本実施例も
図1に示すように、巻き取るまでに十分に長い距離を移行する構成になっている。
すなわち、本実施例において、接着剤供給部24からナノファイバー積層体巻取部7までの距離は10から20mとしており、基材N1の移動速度80cm/分から150cm/分であるが、本実施例においては接着剤供給部24からナノファイバー積層体巻取部7までの距離は15mで、基材N1の移動速度100cm/分とし、第2ファイバー状高分子接着剤N3がゆっくりと硬化するのに十分な時間を保つようにしている。
上述したように、供給する第1ファイバー状高分子接着剤N2を第2ファイバー状高分子接着剤N3としただけで、第1高分子接着剤N2のノズル自体の構造、及び設定条件は
図8に示すようなものであるが、構造自体は
図2及び
図3のノズル部22及び空気吹出ノズル部261とは、第2高分子樹脂吹き付け部21b以外は同じであるので説明は省略する。
【0033】
[ナノファイバー生成工程E]
ナノファイバー生成工程Eは主に、ナノファイバー発生工程E1とナノファイバー捕集工程E2からなる。
[ナノファイバー発生工程E1]
[第2高分子接着剤吹付工程D]が完了し、顕微鏡写真の
図12(基材N1+(架橋接着剤)N2+(接着剤)N3)に示すような状態に、[ナノファイバー生成部D]で生成したポリフッ化ビニリデン(PVDF)のナノファイバーを吹き付け積層する。
この状態は、顕微鏡写真の
図13、
図14(基材N1+(架橋接着剤)N2+(接着剤)N3+酸化チタンを散布したナノファイバーN5)に示すような顕微鏡写真である。
[ナノファイバー生成部E]の [ナノファイバー発生工程E1]の装置構成から説明するが、このナノファイバー発生工程E1は、ノズル部分の構成は、大凡網状補強繊維形成工程Bと同じで、主な違いとして原料の高分子を延伸するには、接着剤のように温度で溶融するのではなく溶媒で溶解して粘度を薄めた高分子を紡糸する点であり、この長分子配列を有する高分子材料を溶媒により溶解し加圧して紡糸ノズルから紡糸するため、接着剤のように高温にする必要がないが、30℃から38℃程度の維持する必要があり、延伸するための高速空気も高温に加熱する必要がない。ここで、先ず、紡糸ノズル部4から説明する。
【0034】
[ナノファイバー紡糸ノズル部]
ナノファイバー紡糸ノズル部は、高分子材料が溶融ではなく溶解で、使用温度が30℃から38℃であるので、接着剤の高分子材料を300℃程度の加熱して溶融するのとは異なるだけで、基本的には前出の接着剤ノズル部22の構成と同じである。
図7、8におけるナノファイバー吹き付け部41のノズル部42の拡大図に示すように、セラミック、特にルビーのノズル本体421はその中心に先端の吐出口4212に続く中心軸孔4211が設けられ、中心軸孔4211の反対側には送給口43が設けられ、この送給口43には溶媒(溶剤)で溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)が供給される。送給口43までの溶解されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)の送給経路は、
図7に示すように、溶解高分子供給部44でポリフッ化ビニリデン(PVDF)を常温の20℃若しくは多少温めた40℃程度に加熱し、その後、溶解高分子供給部44から溶解高分子供給管441を介してギヤポンプ442等によって送給し、さらに、送給後の溶解高分子供給部44を介しても溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)を前述した溶解高分子導入管43に供給している。
この溶解高分子導入管43には、温水保温部45を設けてノズル部42を30℃から38℃に維持するような構成で、加熱器ポンプ451付きの温水器452で各ノズル部42の分配器453に設けて、温度を維持するようにしている。この配置は
図7に示すように、温水出口454から配管455で直列に繋ぎ温水戻り口456に戻るように循環している。
【0035】
ここで、溶解高分子導入管43の温度維持に温水を用いたのは、温度管理が比較的に容易であり、ヒータ等とは異なり環境を乾燥状態にすることが無いからである。
また、上下方向1列の6個のノズル部42とこれと連結する温水本部45等は一体で、下部の左右トラバース機構(ノズル部42、温水保温部45)457によって、平面保持用グリッド(又は金網)51対して、平行に7.5cmから15cmの範囲に常時移動するようにして、ナノファイバー積層体の厚さが均一になるようにしている。また、ノズル部42からナノファイバー捕集装置5の平面保持用グリッド(又は金網)51までの距離は165cm程度とし、後述する高分子材料の延伸が十分行われ、溶剤のトルエン等を高分子材料から飛散するようにしている。
なお、本実施例1でのポリフッ化ビニリデン(PVDF)は粘度を下げるために、後述するように、溶媒としてNMPを用い材料濃度を14wt%としている。また、吐出口4212の内径は0.1mmから0.2mmとし、本実施例では0.15mmとしているが、0.2mm以上だと延伸してもナノオーダーの細さが得にくく、細い方が良いが0.1mm以下だと詰まって紡糸速度が遅くなってしまう。
【0036】
[高速風吹出部46]
図7、8に示すように、ノズル本体421は中心軸孔4211の周りには、中心軸孔4211を包むように同軸状にリング状の高速風吹出通路462が設けられ、高速風吹出通路462の先端には所定の吹出角度を有したリング状の高速風吹出口463が設けられ、この高速風吹出口463は前記吹出口463より僅かにX=3mm程度(2〜5mm)突出して、整流が生じるようにしている。
この突出量Xについての機能や調整も前掲のノズル部22と同じである。また、ナノファイバー吹き付け部415の中間部には高速風吹出通路462の他端に繋がる空気供給部48が設けられ、空気供給部48には、常温の20℃、或いは多少暖かい20〜40℃程度の空気(気流)がエアポンプ481により供給され、吐出口4212から紡糸されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維を高速風吹出口463の高速気流で包むようにして下流に引っ張るように延伸する。この所定の吹出角度を有する高速風吹出口463が延伸気流手段を構成している。
【0037】
また、延伸気流手段のノズル部42は主にノズル本体421とノズル支持体422とからなり、
図8における吐出口4212の近傍の拡大図に示すように、ノズル本体421には長手方向に溶融高分子が噴出する中心軸孔4211が設けられるが、この中心軸孔4211の下流側の先端部には吐出口4212が設けられる。本発明のノズル部42におけるノズル本体421の材質はセラミック又はルビーが最適で、本実施例ではルビーである。
この吐出口4212であるノズル内径は0.13mmから0.18mmとしたが、0.18mm以上だとナノ単位の繊維状の接着剤は生成しづらく、0.13mm以上だとノズル内径に溶融した高分子が詰まってしまうので、本実施例では0.15mm程度とした。また、従来の前掲の特許文献4では、ノズル内径を0.15mmとしたが、材質を金属のステンレスとしたため、すぐに太いファイバーに変質してしまうことが判明した。これは繰り返し加重や圧力の為にステンレスのノズル内径が拡がってしまうことに起因することが判った。このため、耐熱性や対摩耗性に優れ高温下でも変形しないルビー(セラミック)を使用すると、長時間連続稼働させても、高品質の高分子ナノファイバー積層体N5を生成することができた。
【0038】
しかし、セラミックやルビーは加工が難しく、ネジ等を設けた金属のノズル支持体422にノズル吐出口4212をネジ等で固着することが困難であった。そのため、
図8に示すように、ノズル本体421の上流の末端に外側に突出した肉厚の鍔部4213を設け、対応するノズル支持体422の内孔4221の下流の末端に内側に突出する係止部4222を設けて、ノズル本体421をノズル支持体422の内孔4221の上流の開口4223から挿入して、前記鍔部4213を係止部4222に密着嵌合させて固着する。このような構造なので、下流側に高い圧力で溶融高分子が挿入されてもノズル本体421がノズル支持体422から離脱することがない。この場合、内孔4221の内径はノズル本体421の外径および鍔部4213の外径よりも大きく、ノズル支持体422の先端係止部4222の内径はノズル本体421の外径よりも小さく、鍔部4213の外径よりも小さくする必要がある。
また、ノズル部42に連通する溶解高分子導入管43には、適宜の手段により溶解された樹脂が供給される。
このノズル本体421は、必要に応じて基剤N1に第2ファイバー状高分子接着剤が吹き付けられたN3に対して水平方向に同じ距離を保って移動するようにすれば、ノズル本体421の数を少なくすることが可能となる。
中心軸孔4211の外周部431及び吐出口4212側の外周部4224と高速風吹出通路462の内周壁との間には通路隙間を維持するスペーサー部(図示せず)が適所に設けられて間隔を維持して高速風吹出通路462を形成している。
【0039】
この延伸気流手段を更に説明すると、高速気流でポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維を更に延伸するのでリング状の高速風吹出口463の吹出角度(中心軸孔4211の軸を中心としての左右の合算角度)が重要であるが、実験の結果、角度30°〜60°程度、すなわち、高速風吹出口463の高速気流の吹出方向は、前記中心軸の吐出口4212の中心軸線に対して15°〜30°の角度の範囲が好ましく、角度30°(中心軸と角度15°)以下だとポリフッ化ビニリデン(PVDF)との接触力が小さく延伸作用が小さく、角度60°(中心軸と角度30°)以上だと接触しての負圧が生じないのでやはり延伸作用が少なく、本実施例1では角度38°(中心軸と角度19°)することで延伸作用が効率的に作用した。
このように、高速風吹出口463からの気流が適正に紡糸したポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維に当たらないと、μオーダーの極細繊維で終わってしまいナノファイバーにはならない。
また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維を効率よく延伸するのは、溶解状態のポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維にするためにNMP等の溶媒より低粘度にすることも重要であり、ギアポンプ442で直径0.15mmの吐出口4212から溶解されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)の吐出を可能にしなければならない。
【0040】
さらに、延伸気流手段は、吐出口4212から紡糸後も高速噴射空気Jで延伸させる必要があるが、更に重要なのは、延伸するとともにポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維内に含まれるNMP等の溶媒を気化して飛ばして除去する必要があり、そのために、高速風吹出口463は紡糸ノズル部42の吐出口4212より僅かにX1=4mm(2〜4mm)程度突出させ、吐出口4212から紡糸されるポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維の溶媒の気化、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維の乾燥を促進するように構成している。
この高速風吹出口461と吐出口4212との流れ方向での所定距離X1は、5mm以上での突出だととPVDF繊維の高速風による延伸作用が弱まり、1mm以下にすると溶媒の気化促進が弱まって繊維自体がカールして粘着して、綺麗なPVDFのナノファイバーが形成され難い。このように、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維の延伸と溶媒の速やかな除去を両立させることが重要である。
なお、
図7に示すように、空気導入部枠体472と溶解高分子導入管43との隙間に形成され、噴射空気路形成キャップ47の下流方向に約直径2cmの円筒で長さ7cm程度のノズル風洞49(フード)が取付雌ネジ471で噴射空気路形成キャップ47の雄ネジ部471に取り付けられている。
このノズル風洞49(
図6)は、ノズル部42の吐出口4212の直後に配置されているため、紡糸された溶解高分子が直線状に延伸され、樹脂の延伸時間が延長され繊維径の極細化に効果があり、他の直近ノズルから排出される高速風に干渉される事も防止することができ、結果として、均一のナノファイバー積層体を得ることができる。そして、NMP等の溶媒が気化してポリフッ化ビニリデン(PVDF)繊維から除去されると、延伸が終わり下流のナノファイバー積層体形成工程Eの[ナノファイバー捕集工程E2]のナノファイバー捕集部5で捕集される。
【0041】
[ナノファイバー捕集工程E2]
図1に示すように、ノズル部42及びこれに空気高速風吹出ノズル部461から吹き飛ばされたナノファイバーを下流のナノファイバー捕集装置5で捕集する。
このナノファイバー捕集装置5は、吹き付けられるナノファイバーN4に対向して細かな貫通孔を有する平面保持用グリッド(或いは金網)51を設け、ナノファイバーN4が吹き付けられる裏側には吸引ダクト52が設けられている。
この上記の平面保持用グリッド(或いは金網)51の両端で上流にはフィードローラ13cが、下流にはフィードローラ13dが設けられ、不織布等の引き出した基材N1を平面保持用グリッド(或いは金網)51に載せ、ナノファイバーN4の積層体を基材N1、N2、N3の上面に載置しながら移動させ、次の[消臭剤添付工程F]、消臭剤を吹き付けた製品ナノファイバーN5を巻き取る[ナノファイバー巻取工程G]に送られる。
【0042】
[消臭剤添付工程F]
前記ナノファイバー捕集工程E2で、生成されたナノファイバー積層体の第2ファイバー状高分子接着剤N3が完全に硬化しないうち、酸化チタンをナノファイバー積層体に添付する。従来は酸化亜鉛をポリフッ化ビニリデン(PVDF)に練り込んでいたが、繊維の表面近くに付着しているので、消臭効果もなる。また、ナノファイバー表面近くの酸化チタンに光を照射すると、OHラジカルなどの活性酸素ができ、このOHラジカルは塩素や次亜塩素酸、過酸化水素、オゾンなどよりはるかに強力な酸化力を持ち、その酸化力によって分解されにくい化学物質を安全に分解することができると理解でき、従来の酸化亜鉛よりも消臭効果が期待でき、かつ、酸化チタンの表面に付着固定されるので、さらに消臭効果が高まる。
この消臭剤添付部6を
図9に沿って説明するが、酸化チタンをトルエン等で溶解した消臭剤液を貯蔵した加圧タンク63に圧縮空気65を送り込み、この加圧タンク63からスプレー剤供給管64を介して消臭剤スプレー61からナノファイバー積層体N4に酸化チタン溶液を散布する。
この消臭液は、具体的に以下のような組成比である。
消臭剤(異臭吸収剤):酸化チタン6.6 wt/%(総重量に対する%:w/w%) N-メチル-2-ピロリドン(N-methylpyrrolidone)(NMP):75.4wt/% トルエン: 4.7 wt/%
この消臭剤スプレー61は、スプレー駆動装置62によってナノファイバー積層体N4の表面に対して酸化チタン溶液を満遍なく散布し、次工程のナノファイバー巻取工程に移送する。
【0043】
[ナノファイバー積層体巻取工程G]
酸化チタンが表面に散布された製品ナノファイバー積層体N5は、第2高分子樹脂吹き付け部21bから巻取ロッド71までを十分長い距離(5m程度)を走行させ、第2高分子樹脂を十分硬化するようにして、ナノファイバー積層体N4の巻取ロッド71をフィードローラ72の駆動によって巻き取る。(
図1)
【0044】
[ナノファイバー積層体の製品N5]
顕微鏡写真の
図14(基材N1+(架橋接着剤)N2+(接着剤)N3)に示すような状態のナノファイバー積層体は、下記条件で製造した。
設定条件(実施例)
材料:
(1)主剤:株式会社クレハ製
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)13.3 wt/%(総重量に対する%:w/w%)溶媒(溶剤):日本リファイン株式会社製溶液吐出圧:0.15MPa
高速気流吹き出し角度38°
高速気流の圧力:0.26MPa
高速気流の流量:34L/min
繊維径:200〜500nm
【0045】
本実施例では、高分子繊維のナノファイバーの素材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(N-methylpyrrolidone)(NMPを用いたが、多少耐侯性が劣るものの、他の高分子と溶媒との組み合わせとしては、ナイロン(宇部興産製:1022B)と溶媒(溶剤)として蟻酸、同様に、ポリエーテルイミド(PEI)と溶剤としてDMFやジメチルアセトアミド(DMAc)でも同様の結果が得られ、他にもポリアクリロニトリル(PolyAcryloNitrile,PAN) やポリエーテルサルフォン(Poly Ether Sulphone、PES)とジメチルアセトアミド(DMAc)もしくはDMF(ジメチルホルムアミド)、キトサンと酢酸もしくはクエン酸等の弱酸、アクリル(PolyMethyl MethAcrylate, PMMA)とメタノール、ポリ乳酸とクロロホルムの組み合わせなどがナノファイバーの製造として可能である。
【0046】
[本実施例のナノファイバー積層体N4を建材用の薄膜防臭遮蔽部材の特性]
本実施例のナノファイバーを用いたフィルターの構成は次のようなものである。
(1)基材N1:ポリプロピレン(PP):0.25mm径のモノフィラメント
18メッシュ,厚さ:0.48mm,重量:80g/m
2
(2)第1高分子接着剤N2:ポリウレタンホットメルト接着剤(速乾湿気硬化型)
10nm〜100μmを径としたファイバー:重量3g/mm
3
(3)第2高分子接着剤N3:ポリウレタンホットメルト接着剤(湿気硬化型)
500nm〜10μmを径としたファイバー:重量2g/mm
3
(4)ナノファイバーN4:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)200nmから50nmを径としたファイバー:重量0.8g/mm
3
(5)製品厚さ(基材N1+第1高分子接着剤N2+第2高分子接着剤N3+ナノファイバーN4):0.5mm
【0047】
なお、上記基材N1の繊維径は0.25mm径のモノフィラメントとしたが、余り細いと強度が足りず、余り太いと製品の厚みが大きくなり且つ遮光率も高くなり暗くなるので、モノ又はマルチフィラメントの径は0.1〜0.5mm径がよく、このモノ又はマルチフィラメントによる織編物の粗い目は15〜30メッシュである網目が良い。
第1高分子接着剤N2は、ポリウレタンとしたが、オレフィン系接着剤でも良く、繊維径が10nm〜100μmを径としたが、重量は1〜5g/mm
3 がよく、第1高分子接着剤N2は網目を形成させるために比較的に硬化・乾燥スピードが数秒(sec)程度で比較的に早いほうが良い。
第2高分子接着剤N3、ポリウレタンとしたが、オレフィン系接着剤でも良く、繊維径が500nm〜10μmを径としたが、重量は1〜5g/mm
3 がよく、第2高分子接着剤N3は接着時間をなるべく長くするために硬化・乾燥スピードが1時間(sec)程度、或いはそれ以上で比較的に遅いほうが良い。
また、ナノファイバーN4に酸化チタンをトルエンに溶かしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)の表面に散布したが、上述したように高分子繊維のナノファイバーの素材はナイロン等でもよいが、酸チタンを溶かしたトルエンを容易に散布してナノファイバー積層体N4の散布固定ができ、耐侯性にも優れたものが好ましい。また、繊維径を200nmから1μmを径、重量は0.8g/mm
3としたが、遮光性が低く、花粉等の捕集率が高いナノファイバー積層体であることが好ましい。
【0048】
以上の構成であるので、厚さの基材N1の0.3mmに比べて1μm程度と非常に薄い遮蔽部材であるのにも拘わらず、基材N1に接着しているので、全体として十分な強度を有する。
実際の最終製品の厚さ(基材N1+第1高分子接着剤N2+第2高分子接着剤N3+酸化チタンを散布固定したナノファイバーN5)も0.5mmで、基材N1の厚さ0.48mm径に比べて、0.12mmにしか増えておらず、極めて薄く、遮光率も極めて低くすることができる。
また、紫外線遮光率は58%(紫外線カット素材の加工効果統一評価方法(日本化学繊維協会)による分光光度計・全波長域平均法、バンドパスフィルターを積分球と検出器の間に設置)であり、305nmの波長では透過率38.9%、360nmの波長では透過率44.1%である。また、遮光率は64.62%(3538lx装着後照度)(JISL1055A法:試験片装着前照度:10000lx.試験片光源側:塗布面)であり、この値は、市販のカーテンのもっとも薄い透光率が55から70%であることからしても、戸外からの光を十分に取り込んでいることが判る。
【0049】
通気性についても、423.8cm
3/cm
2・sと十分にあり、フィルター効果に比較して通気性はあるが、本発明の花粉捕集(濾過)効率が89.1%と試験結果からも明らかで、花粉や微細な虫等進入を阻止する建材の素材とすることができる。
すなわち、試験系を一定の空気流量で吸引した状態で、フィルタ部の上方から整粒装置により整粒された試験粉体(花粉代替粒子)を一定の速度で落下させる。フィルタ部に捕捉された粒子質量とフィルタ部を通過した粒子質量を測定し下記の式か捕集(濾過)効率を算出した。
花粉粒子の捕捉(濾過)効率%=フィルタ部に捕捉された粒子質量(mg)/(フィルタ部に捕捉された粒子質量(mg)+フィルタ部を通過した粒子質量(mg)) 試験条件
試験粉体(花粉代替粒子):石松子(APPIE標準粉体) 試験流体:28.3L/min
試験粉大量:75±5mg
試験粉体速度:20±5mg/min
試験室の温湿度:20±5℃、50±10%RH
【0050】
本実施例(本発明)の特徴である消臭性について説明する。
まず、アンモニアガスの除去性能評価試験は、SEKマーク繊維製品認証基準で定める方法((一社)繊維評価技術協議会)を準用し、一般財団法人カケンテストセンターに依頼して実施した。ただし、試料量は「10cm×10cmを90枚+10cm×3cmを10枚」として、使用バッグの種類はスマートバックPA(ジーエルサイエンス社製)であり、アンモニアガスの除去性能評価試験の試験条件 同じアンモニアガスの初発濃度100ppmの所定容量(200ml)の雰囲気中に、本実施例の前記試料量を存在させた状態と、従来例及び比較例(空試験)として何もない状態を2時間放置して、そのガス濃度を比較したのが次の表である。
アンモニアガスの除去性能評価試験
試験対象試料 初発濃度(ppm) 2時間後のガス濃度(ppm) 減少率(%)
実施例 100 1.0 ≧99
従来例(酸化亜鉛を練込み)
100 15 81
比較例(ブランク) 100 80 −−−
以上のように、何もない空の状態に対して、アンモニアガスの濃度は99%も減少し、従来の酸化亜鉛を練込んだナノファイバー積層の81%の減少に比べても顕著な効果があることが判る。
【0051】
次に、硫化水素ガスの除去性能評価試験を実施したが、SEKマーク繊維製品認証基準で定める方法((一社)繊維評価技術協議会)を準用し、一般財団法人カケンテストセンターに依頼して実施した。ただし、試料量は「10cm×10cmを90枚+10cm×3cmを10枚」として、使用バッグの種類はスマートバックPA(ジーエルサイエンス社製)であり、硫化水素ガスの除去性能評価試験の試験条件 同じ硫化水素ガスの初発濃度4.0ppmの所定容量(200ml)の雰囲気中に、本実施例の前記試料量を存在させた状態と、比較例(空試験)として何もない状態を2時間放置して、そのガス濃度を比較したのが次の表である。
アンモニアガスの除去性能評価試験
試験対象試料 初発濃度(ppm) 2時間後のガス濃度(ppm) 減少率(%)
実施例 4.0 ≦0.05 ≧99
比較例(ブランク) 4.0 4.0 −−−
以上のように、何もない空の状態に対して、硫化水素ガスの濃度は99%も減少し、顕著な効果があることが判る。
【0052】
このように、本発明の実施例の薄膜防臭遮蔽部材は、十分な消臭効果を有し、通気性も十分有し、遮光率を低くして、花粉粒子の捕集効率を高くすることができる。また、ナノファイバーの素材をポリフッ化ビニリデン(PVDF)としたので、耐侯性にも優れており、放射線にも強い樹脂であるので、戸外に配備する網戸や農事ハウス等の建材としても適しており、洗浄も簡単に行える。
ここで、酸化チタンをトルエンに溶かしてナノファイバー積層体N4の素材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)に散布して固着したのは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が、熱可塑性プラスチックの一つで、融点を134〜169℃の範囲に持つ高強度の樹脂で、常用できる耐熱温度は150℃前後で、熱安定性が良好な素材で、酸化チタンをトルエンに溶かしたものが、ナノファイバー積層体N4にも馴染み、しかも、耐薬品性もよく、加工性に優れ、難燃性で、燃えても発煙が少なくて済む。電気特性もよく、強誘電性、圧電性に優れており、特に、耐侯性にも優れており、放射線にも強い樹脂であるので、戸外に配備する網戸や農事ハウス等の建材としても適しており、洗浄も簡単に行える。
【0053】
このように、本発明の実施例の薄膜防臭遮蔽部材は、十分な消臭効果を有し、通気性も十分有し、遮光率を低くして、花粉粒子の捕集効率を高くすることができる。また、ナノファイバーの素材をポリフッ化ビニリデン(PVDF)としたので、耐侯性にも優れており、放射線にも強い樹脂であるので、戸外に配備する網戸や農事ハウス等の建材としても適しており、洗浄も簡単に行える。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論である。