特許第6943432号(P6943432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943432
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】工作機械部品用クリーナ
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20210916BHJP
   B08B 1/00 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   B23Q11/00 N
   B08B1/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-234371(P2017-234371)
(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公開番号】特開2019-98489(P2019-98489A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591286982
【氏名又は名称】株式会社MSTコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】溝口 春機
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−283931(JP,A)
【文献】 特開2003−275637(JP,A)
【文献】 実開昭56−047780(JP,U)
【文献】 特開平07−284742(JP,A)
【文献】 実開昭57−166642(JP,U)
【文献】 特開平03−286067(JP,A)
【文献】 特開2001−150290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状被清掃面のその周面に沿って棒状清掃体(13)を摺接させる工作機械部品用クリーナ(A、A、A、A、A)であって、前記棒状清掃体(13)は、清掃部となる棒状クリーナ本体(10)の前記被清掃面に対向する清掃面にその軸方向の溝(11)に嵌って取り付けられており、その溝(11)の長さ方向の開口(11b)は内側より幅狭に形成されており、
上記溝(11)の縦断面は開口(11b)が切り欠けた円形状であり、上記棒状清掃体(13)も弾性体からなる縦断面円形状であり、前記溝(11)の径(d)と棒状清掃体(13)の径(r)の関係をd<rとした工作機械部品用クリーナ。
【請求項2】
上記クリーナ本体(10)はその先端部が軸方向所要長さ(L)同一太さとなってその同一太さ部分から後端に向かって徐々に太くなっている請求項1に記載の工作機械部品用クリーナ。
【請求項3】
上記棒状清掃体(13)が弾性材からなる請求項1又は2に記載の工作機械部品用クリーナ。
【請求項4】
上記棒状清掃体(13)が端面に開口する孔(13a)を有する請求項1乃至3の何れか一つに記載の工作機械部品用クリーナ。
【請求項5】
上記被清掃面の端にその外側又は内側に延びる被清掃端面を有する被清掃面を清掃する請求項1乃至の何れか一つに記載の工作機械部品用クリーナ(A、A)であって、上記清掃面の端に、前記被清掃端面に対向する清掃端面を有し、その清掃端面の前記外側又は内側に延びる溝(11)に棒状清掃体(13)が嵌って取り付けられており、その溝(11)の長さ方向の開口(11b)は内側より幅狭に形成されている工作機械部品用クリーナ。
【請求項6】
上記クリーナ本体(10)の外周面に起伏片(19)を設け、その起伏片(19)の外面に棒状清掃体(13)を設けた請求項1乃至の何れか一つに記載の工作機械部品用クリーナ。
【請求項7】
上記クリーナ本体(10)の後端に把持棒(20)を同一軸上に取り外し可能に延設した請求項1乃至の何れか1つに記載の工作機械部品用クリーナ。
【請求項8】
上記把持棒(20)を筒状として、その筒状内部(20a)に上記棒状清掃体(13)の予備を収納するようにした請求項に記載の工作機械部品用クリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の主軸の嵌合穴やその工具ホルダの工具チャッキング穴(取付穴)などの機械部品を清掃する工作機械部品用クリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸には、工具ホルダを介して各種の工具が取付けられる。その主軸への工具ホルダの取付けや工具ホルダへの工具の取付けは、主軸の嵌合穴に工具ホルダのシャンクを嵌め込んだり、工具ホルダの工具チャッキング穴に工具のシャンクを嵌め込んだりして行う。
このシャンクの嵌め込み方式として、図8(b)に示すBTシャンク式(MAS規格)等が一般的であるが、近年では、工作機械主軸と工具ホルダを結合する際の精度や剛性を高めるために、その結合部をテーパ面とフランジ面で拘束する2面拘束方式が採用されている。この方式のシャンクは中空シャンクと呼ばれ、中空・ショートテーパが特徴である。例えば、HSK規格等がこれに該当する(図9図11参照)。
【0003】
その何れのシャンク式(規格)であっても、嵌合穴の内面や工具ホルダのシャンク外周面、工具チャッキング穴は、切削油や切削屑が入り込んだり付着したりするため、定期的に清掃する必要がある。
このため、従来から、様々な工作機械部品等に形成された空洞部(穴)等を清掃するための種々のクリーナ(清掃具)が提案されている。例えば、把持部とこれの先端に連設した棒状清掃部とを有し、その清掃部の外周面長さ方向に清掃体を設けたものがある(特許文献1、実用新案登録請求の範囲、第1図、第2図等参照)。
このクリーナは、例えば、主軸の嵌合穴に把持部を持って清掃部を挿入し、把持部をその軸回りに回転させて嵌合穴内面に清掃体を摺接することにより、清掃体で嵌合穴内面を清掃する。
【0004】
特に、上記HSK規格等の中空テーパシャンクの結合部(嵌合穴)のクリーナは、クランプ部品(例えば、図10(b)のドロバーD、コレットC参照)を回避しながら主軸の嵌合穴を清掃するために、薄肉で弾性当接する清掃部を備える必要がある(特許文献2、図1図2図3等参照)。
また、清掃体を清掃部から着脱可能としたクリーナもある(特許文献3図1図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−57402公報
【特許文献2】特開2001−150290公報
【特許文献3】米国特許第5782592明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記クリーナの従来品は、清掃体がセーム皮等からなって、その清掃体を棒状清掃部の外面に接着で固定している。また、前記外面の溝に清掃体を嵌め込んでいるものもあるが、その嵌め込みは、清掃体の清掃部外周面への位置決めであり、清掃体は溝内に接着固定している(特許文献1明細書第2頁第3欄第29〜30行、第2図参照)。
清掃体は、損傷や汚れがひどいため、頻繁に取り替える必要がある。しかし、上記のように、従来は、セーム皮等の清掃体を接着等で固定しているため、容易に剥ぎ取ることができず、その交換が容易でなかった。
清掃体を着脱可能にしたクリーナは、その清掃体両端のフック(特許文献3図5の符号45、50参照)を清掃部に係止してその着脱を可能としているため、その取り付け強度が低い場合があり、清掃中に外れる恐れがある。
【0007】
また、特に、HSK規格等の主軸の嵌合穴においては、工具ホルダTの開口部内径sが14mm程度から67mmの大小様々のものがあり(図10参照)、その内径sに入るクランプ部品(上記図10(b)のドロバーD等)も同等の外径であるため、布やペーパーなどを使って手で拭く場合に指が入らず、さらに指が入る大きさの穴であっても、クランプ部品が穴の開口付近に存在するため、指が入らず清掃が困難である。さらに、そのクランプ部品を回避しながら主軸の嵌合穴を清掃するために、薄肉で弾性当接する清掃部を備える必要がある(特許文献2、図1図2図3等参照)。
【0008】
この発明は、以上の実状の下、清掃体の十分な取り付け強度を担保でき、かつ清掃体を容易に取り付け・取り外しし得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、棒状清掃体をクリーナ本体の開口幅狭の溝に嵌めて取り付けることとしたのである。棒状清掃体は溝に嵌った後は、幅狭の開口から抜け出なくなって取り付け強度が高いものとなる。
具体的には、円筒状(円錐状も含む)被清掃面のその周面に沿って清掃体を摺接させる工作機械部品用クリーナにおいて、前記清掃体は、清掃部となる棒状クリーナ本体の前記被清掃面に対向する清掃面にその軸方向の溝に嵌って取り付けられており、その溝の長さ方向の開口は内側より幅狭に形成されている構成としたのである。
清掃体は溝に嵌められることから棒状であり、その溝への嵌め込みは、溝の端面開口から清掃体を溝内に挿し通したり、幅狭の開口から清掃体を押し込んだり等して行う。
なお、この発明でいう「棒状」は、筒状の中空の棒状のみならず、無垢(中実)の棒状も含む。
【0010】
上記クリーナ本体は、同一太さの棒状体、例えば、円柱、円筒、角柱、角筒であったり、円錐状や角錐状のテーパ外周面を有する棒状体としたりすることができるが、その先端部が軸方向所要長さ(図3のL参照)同一太さとなってその同一太さ部分から後端に向かって徐々に太くなっている構成とすることができる。例えば、先端部が同一径の円柱状、その円柱状部分(前記所要長さ部分の後端)から後方に向かって徐々に径が大きくなる円錐柱状のテーパ面を有するものとすることができる。前記軸方向所要長さ及びテーパの角度(図1のθ参照)は、下記拭き取りが円滑に行われるように、被清掃面の形状や大きさ等に応じて実験などによって適宜に設定する。
なお、断面形状が円形以外の場合のクリーナ本体の先端部が軸方向所要長さ「同一太さとなっている」とは、クリーナ本体の外周面の各棒状清掃体が描く外周面(外接面、図6(a)(b)のr参照)の径が同一の意であり、「徐々に太くなっている」とは、同各棒状清掃体が描く外周面の径が後側に向かって徐々に大きくなるテーパ面となる意である。
【0011】
以上の構成において、上記棒状清掃体が弾性材からなれば、被清掃面に清掃体を強く押し当て回転させると、清掃体は収縮して溝内周面全体にその押し当て圧力でさらに密着度が増すため、円柱状等の棒状の清掃体であっても溝の中で回転するようなことがなく、取り付け強度はより高いものとなって、被清掃面に強く押し当てられて汚れを確実にとらえて剥ぎ取る。また、被清掃面に凹凸等があってその形状が歪(いびつ)であったり面にわずかな窪みがあったりしても、清掃体がその弾力によってその歪な形状などに倣うため、清掃が円滑に行われる。
このとき、清掃体が円柱状(円筒状も含む)であれば、円筒状被清掃面に対向する清掃面はほぼ線(状)当たりになる。この線当たりの弾性線状体は面状当たりの清掃体よりも被清掃面の形状にフィットし易い。このため、清掃効果も高いものとなる。
さらに、上記清掃体が被清掃面に線当たりとなれば、清掃体の間隔も自ずと広くなって(清掃体の間隔を十分確保することができ)、その間において、剥ぎ取ったゴミなどの汚れを一時的に貯めるスペースを大きく確保できる。また、清掃体をクリーナ本体(回転円周上)に配置する数を多く設置することができる。回転円周上に清掃体が多く配置されれば、回転角が小さくても全面を清掃でき、清掃効率が高いものとなる。
【0012】
棒状の弾性材は、上記円柱状、円筒状や角柱状、角筒状等と任意であるが、清掃体が筒状(中空)であれば、変形量の度合いが大きいため、被清掃面の形状へのフィット性も向上し、清掃効果もより高いものとなるとともに、径方向の伸縮が容易となって弾性体の清掃体を溝に押し込むことがより容易となる。さらに、清掃体は端面に開口する孔を有するものとなるため、端面の孔に棒材等を差し込み、その棒材を介して清掃体を溝から引き出せば、溝から清掃体を容易に取り出すことができる。この端面開口は、筒状の中空の物に限らず、無垢(中実)の棒状体であっても、その端面に棒材等の差し込み孔を別途に形成して設けるようにし得る。
【0013】
ここで、穴内面からなる被清掃面が全長に亘って同一径の円筒状であると、通常、穴内面とクリーナ本体外面とに隙間が生じるため、クリーナをその軸心回りに回転させるだけではきれいに拭き取れない恐れがある。しかし、清掃体が弾性材からなれば、清掃体が膨縮して穴内面に倣い同径となるため、クリーナを穴に押し込むことができ、押し込めれば、回転させて綺麗に拭き取ることができる。このとき、上記のように、先端部が軸方向所要長さ同一太さとなってその同一太さ部分から後端に向かって徐々に太くなっていると、例えば、図3に示すクリーナAのように、テーパ面とストレート面が連続しているものにあっては、この作用による利点が顕著となる。
【0014】
さらに、溝の縦断面積に対し弾性材からなる棒状清掃体の縦断面積を大きくすれば、清掃体を溝に嵌める際、清掃体が収縮して溝内に押し込まれるため、嵌った後、清掃体は自身の弾力によって溝内周面全体に密着して十分な取り付け強度を有するものとなる。すなわち、溝の縦断面は開口が切り欠けた円形状であり、清掃体も縦断面円形状であり、溝の円形状径dと清掃体の円形状径rとの関係を(d<r)とする。例えば、その比を、0.85≦d/r≦0.97とすることができる。d/rが0.8未満であると、溝に清掃体を押し込みにくくなって作業性が悪くなり、一方、0.97を超えると、溝に嵌った清掃体の反発弾力が十分でなく、十分な取り付け強度を担保できない場合がある。
【0015】
上記各構成の工作機械部品用クリーナにおいて、円筒状被清掃面の端にその外側又は内側に延びる被清掃端面を有するものにあっては、上記清掃面の端に、前記被清掃端面に対向する清掃端面を有し、その清掃端面に前記外側又は内側に延びる溝に棒状清掃体が嵌って取り付けられており、その溝の長さ方向の開口は内側より幅狭に形成されている構成とすることができる。
このようにすれば、穴などの円筒状被清掃面のみならず、その清掃時に、その外側又は内側に延びる被清掃端面を清掃することができる。
【0016】
また、上記クリーナ本体の外周面に起伏片を設け、その起伏片の外面に清掃体を設ければ、その起伏片の起伏度合いに応じた大きさ(径)の穴内面の清掃を行うことができる。このため、鍔F等のクランプ部品が穴の開口付近にあっても(図9参照)、起伏片の倒伏によってそのクランプ部品を回避できてその穴を清掃することができる。
【0017】
上記クリーナ本体は棒状清掃部からなり、その清掃部に把持棒を取り外し可能に延設したものとすれば、把持棒を外すことによって、狭い場所に清掃部を導いて清掃することができ、例えば、清掃部をその後面を掌で押しながら回すことによって清掃作業を行うことができる。
その把持棒を筒状とすれば、その筒状内部に予備の清掃体や他の部材等を収納することができる。このとき、その収納スペースの開口はねじ込み式やビス止めなどとし得る蓋で閉じることができる。さらに、把持棒や蓋には磁石を内蔵したり、付着させたり、フックを設けたり、チェーン等のストラップを設けたり等して、工作機械周辺やその部品収納スペース、作業スペースにクリーナを設置し易い手段を設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、以上のように構成したので、清掃体の十分な取り付けを担保でき、かつ清掃体の取り付け・取り外しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明に係るクリーナの一実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は左側面図、(c)は作用説明用拡大部分図
図2】同実施形態の分解斜視図
図3】他の実施形態の斜視図
図4】さらに他の実施形態の斜視図
図5】さらに他の実施形態の切断正面図
図6】さらに他の実施形態を示し、(a)は斜視図、(b)は左側面図、(c)は正面図
図7図1の実施形態の他例を示し、(a)は一部断面正面図、(b)は一部断面分解正面図、(c)は把持棒の左側面図
図8図1で示す実施形態の作用を示し、(a)はその概略断面図、(b)はクリーナ対象物の説明用概略断面図
図9図3及び図6で示す実施形態の作用説明用断面図
図10図4で示す実施形態の作用を示し、(a)はその概略断面図、(b)はクリーナ対象物の説明用概略断面図
図11図5で示す実施形態の作用説明用断面図
図12】この発明に係るクリーナの一実施形態の把持棒の変形例を示す部分斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明に係るクリーナの一実施形態を図1図2に示し、この実施形態のクリーナA(以下、A等を含めて、総称符号:A)は、図8に示すマシニングセンターの主軸(main spindle)Mの工具ホルダ嵌合穴H等を清掃するものであり、円錐台状のクリーナ本体10と、そのクリーナ本体10の後端に連設される把持棒20とからなる。クリーナ本体10、把持棒20は金属や樹脂製とする。嵌合穴Hは、通常、芯を取るため円錐台状である。
【0021】
クリーナ本体10は、前面開口11cの中空円錐棒状であって、その外周面の周囲等間隔に長さ方向(軸方向)の溝11が形成されている。清掃面となる外周面の傾斜度合い(テーパ度合θ)は、被清掃面となる穴内面の傾斜度合いに対応して適宜に設定すれば良いが、穴Hの円錐台状周面の傾斜度合と同じとすることができる。
溝11の本数は任意であり、必ずしも等間隔である必要はない。要は、後述の清掃が円滑に行い得れば、その数や間隔は適宜であり、実験などによって適宜に決定すればよい。
溝11は、縦断面一部(開口11b)欠如の円形をしている。このため、クリーナ本体10の先端面の開口11aも一部が欠けた円状となって、同外周面の軸方向の開口11bはその外周面全長に至っているとともに、その開口11bの幅tは円形溝11の径tより狭くなっている(t<t)。その狭さ度合いは、下記の棒状清掃体13を溝11に嵌め込みし得る反面、摺動程度では抜け出ないように、実験等によって適宜に設定する。溝11は、ドリル等で形成する。
【0022】
清掃体13は、オレフィン系熱可塑性連続気泡の多孔質プラスチック製の円筒状の棒状部材からなり、図1に示すように、溝11に押し込み嵌め込みで取り付ける。このとき、清掃体13が多孔質プラスチックの弾性材からなるため、収縮変形し易くその嵌め込みは容易である(図1(c)の実線から鎖線参照)。また、前記気泡は微細であり、かつ清掃体表面が平滑であることから、嵌め込みは容易である。
棒状清掃体13を溝11に嵌め込めば、図1(b)に示すように、清掃体13は溝11内に隙間無く入り込んで、溝11の開口幅tが径tより狭くなっているため、清掃体13が容易に抜け出る事はない。このため、円筒の清掃体13であっても溝11の中で回転するようなことがなく、取り付け強度の高いものとなる。
清掃体13の材質は熱可塑性連続気泡の多孔質プラスチックに限らず、棒状清掃体とし得る弾性体であれば、何れでも良い。また、円筒状に限らず、角筒状であったり、無垢(中実)の円柱状であったり、角柱状であったりとし得る。このとき、筒状の中空であればさらに収縮変形しやすく、上記溝内への嵌り込みや清掃時の押圧力がさらに得られる等の好ましい態様となる。
【0023】
クリーナ本体10の後部は棒状把持部14となって、その表面に綾目等のローレット加工15が施されて滑り止めがなされている。この把持部14の長さ(軸方向)は、その後面を掌に当てて外周面を把持できる程度とする。
把持棒20は、上記クリーナ本体10の円筒状把持部14に差し込み可能となっており、把持部14の孔16から取り付けねじ17をねじ孔27にねじ込むことによってクリーナ本体10に一体となる。把持棒20にもローレット加工25が施されて滑り止めがなされている。
【0024】
このクリーナAによって、例えば、図8(b)に示す、BTシャンクの工具ホルダT用主軸Mにあっては、同図(a)に示すように、従来と同様に、円錐台状の穴HにクリーナAを差し込んでその軸心周りに回転することによって清掃する。このとき、通常、主軸Mの前方は広いスペースがあるため、把持棒20は装着した状態で行う(同図鎖線状態)。図中、Dはドロバー、CはそのドロバーD先端の工具ホルダTのプルスタットPの把持用コレットである。
マシニングセンター等の工具ホルダ収納ポットの穴清掃の場合は、その作業が狭いスペースで行うこととなる場合が多いため、図8(a)実線に示すように、把持棒20を外して清掃する。この場合は、把持部14の後面を掌に当てて外周面を把持して清掃を行う。
クリーナAのクリーナ本体10の傾斜度合(図1のθ参照)と穴Hの円錐台状周面の傾斜度合が異なれば、クリーナAを穴Hの軸心に対し傾け回転等して穴H内周面全域に清掃体13を摺接してその全域の汚れを除去する。
【0025】
清掃体13が摩耗などして交換する場合、その交換は、例えば、図2鎖線に示すように、棒材30を清掃体13の中心孔13aに差し込んで持ち上げることによって行う。溝11から清掃体13が取り外されれば、新たな清掃体13を溝11に嵌め込む。棒材30は図示のように、二本を一体としたものとすれば、二本の清掃体13、13を同時に取り外すことができる。清掃体13は中心孔13aを有しない無垢の弾性体とし得る。
【0026】
クリーナ本体10の形状としては、上記実施形態に限らず、被清掃面の形状・大きさ等に応じて適宜に決定すれば良い。例えば、図3に示すように、把持部14の形状を変えたり、図4に示すように、HSKシャンク(中空テーパシャンク)に対応する、テーパ筒状部分とその縁の鍔部10aとに清掃面を有する中空のクリーナ本体10としたりし得る。このとき、鍔部10aの面(側面)の上記溝11と同一形状(t<t)の溝11に清掃体13を嵌め込み取り付けする。
【0027】
図3に示す実施形態のクリーナAは、クリーナ本体10の先端部が同一径の筒状となっているため、例えば、図9に示すように、工具ホルダTの同一形状工具取り付け穴H等に嵌めてその内周面を清掃する。
このクリーナAの場合、被清掃面(嵌合穴H内面)が全長に亘って同一径の円筒状であると、通常、穴内面とクリーナA外面とに隙間が生じるため、クリーナAをその軸心回りに回転させるだけではきれいに拭き取れない恐れがある。しかし、清掃体13が弾性材からなる円筒状であれば、清掃体13が膨縮して穴内面に倣い同径となるため、クリーナAを穴に押し込むことができ、押し込めれば、回転させて綺麗に拭き取ることができる。特に、図3に示すクリーナAのように、テーパ面とストレート面が連続しているものにあっては、この作用による利点が顕著となる。
【0028】
図4に示す実施形態のクリーナAは、例えば、図10(b)に示す、HSKシャンクの工具ホルダT用主軸Mにあって、同図(a)に示すように、従来と同様に、その穴HにクリーナAを差し込んで回転することによって清掃する。図中、CはドロバーD先端の工具ホルダTのHSK用コレットである。
通常、この種のテーパ筒状部分と鍔部10aとに清掃面を有するクリーナによって、図10に示す、テーパ面と端面の2面を有する嵌合穴Hのその両面を同時に清掃する場合、テーパ筒状部分の清掃面が嵌合穴Hのテーパ面に当たると、鍔部10aの清掃面と嵌合穴Hの端面との間には隙間が生じ易い。このとき、ドロバー等の機械的な機構による引っ張り力(例えば、5700N)であれば、テーパ面に当たる筒状部分を変形させたり、鍔部を変形させたりして鍔部10aの清掃面を嵌合穴Hの端面に当てることができるが、この種の清掃は手作業で行うため、そのクリーナの変形は容易ではなく殆ど不可能である。すなわち、手作業の力ではクリーナ本体10等は変形し得ず、両面に清掃面を強く当てることはできない。しかし、このクリーナAの清掃体13は弾性材からなる中空の円筒状であるため、その変形量を多く得やすい。このため、テーパ面と端面の2面を有する嵌合穴Hのその両面に対し、前記テーパ面にクリーナ本体10の円錐台状外面(テーパ面)、前記端面に前記外面端縁から立ち上がる端面(鍔部10a側面)のそれぞれの清掃体13がそれぞれ当接し、同時に強く当てて清掃することができる。なお、各清掃体13の取付面(テーパ筒状部分外面及び鍔部側面)からの突出量は、弾性清掃体13の縮径によりテーパ面の傾きに応じてテーパ面及び端面に同時に強く当接し得るように適宜に設定する。
【0029】
また、図5に示すように、有底円筒クリーナ本体10の内周面及び端面の溝11に清掃体13を嵌め込み取り付けしたクリーナAとすれば、例えば、図11に示す、HSKシャンクの工具ホルダTのシャンク外周面に嵌めて回転することによってその外周面を清掃することができる。この場合も、清掃体13は弾性材からなる中空の円筒状であるため、その変形量を多くして、テーパ面と端面の2面を有する嵌合穴Hのその両面を同時に強く当てて清掃することができる。
【0030】
さらに、クリーナ本体10の態様としては、図6に示すように、断面三角形状とし、その各稜の溝11に清掃体13を嵌め込み取り付けし、さらに、平面部に起伏自在の起伏片19を設け、その起伏片19の外面に清掃体13を上記溝11と同一形状(t<t)の溝11を介して設けたものとすることができる。
起伏片19は、基部19aをピン19bを介して径方向に回転自動に取付け、バネ(図示せず)によって径方向外側に揺動可能としている。ピン19bを設けず、起伏片19自身の弾性によって径方向外側に起立可能とすることもできる。
【0031】
この実施形態のクリーナAは、例えば、図9に示すように、HSK規格の工具ホルダTのシャンク(HSKシャンク)のようにその穴Hの開口部に内方に突出する鍔F等の凸部がある場合、起伏片19を鎖線のように倒伏させて穴H内に差し込み、その後、起伏片19を起立させて起伏片19の清掃体13を穴Hの内面に摺動させて清掃する。このクリーナAは穴Hの全内周面を清掃し得る。このとき、前記鍔FやクーラントダクトGの存在によって、穴H内に指も入らない場合にあっても、起伏片19の起伏によって、クリーナAは穴Hの全内周面に嵌ってその全内周面を清掃し得る。すなわち、シャンク嵌合穴Hの内径が14mm程度であっても、起伏片19の倒伏時の外径が鍔F内を通り抜ける大きさであれば、その穴Hの全内周面を清掃することができる。
【0032】
上記実施形態においては、円柱状清掃体13の外径r:5mm、溝11の縦断面径d:4.7mm(d/r=0.94)、同r:3mm、同d:2.7(d/r=0.9)、同r:2mm、同d:1.8(d/r=0.9)の3通りを試作して、図1(c)に示すように、各溝11に清掃体13を嵌め込み、適宜な太さ(径)のクリーナ本体10や被清掃面の適宜な大きさにおいて清掃試験をしたところ、弾性体の清掃体13は溝11の内周全面にしっかり密着して飛び出す(抜け出る)こともなく、円滑な清掃を行うことができた。
【0033】
上記クリーナ本体10と把持棒20との連結は、着脱可能な態様であれば、種々の構造を採用することができる。例えば、図7に示すように、把持棒20のボルト21をクリーナ本体10の雌ねじ孔14aにねじ込むことによって両者10、20を連結する。このとき、クリーナ本体10と把持棒20の対向面の少なくとも一方には、放射方向の凹凸条の(スジ目)ローレット加工15aをすることが好ましい。このローレット加工15aは、他の各実施形態のクリーナ本体10において、把持部14の把持棒20との対向面の少なくとも一方に形成することができる。図7では、把持棒20の対向面にローレット加工15aを施した。
また、図12に示すように、把持棒20を筒状とすれば、その筒状内部に予備の棒状清掃体13や他の各種の部材等を収納することができる。その収納スペース20aの開口はねじ込み式やビス止めなどし得る蓋28で閉じることが好ましい。さらに、把持棒20や蓋28には磁石Mを内蔵したり、付着させたり、フックを設けたり、チェーン等のストラップ29を設けたり等して、工作機械周辺やその部品収納スペース、作業スペースにクリーナA(A〜A)を設置し易くする。
【0034】
以上から、この発明は、HSK規格の主軸Mや工具ホルダシャンクのような複雑な構造を有する穴であっても、弾性体の清掃体13が溝11の内周全面にしっかり密着して飛び出すこともなく清掃することができるとともに、清掃体13を容易に取り付け・取外しを行うことができることが理解できる。
また、清掃体13を容易に取り付け・取外しを行うことができれば、上記各実施形態において、溝11の形状は、断面円形に限らず、溝11の開口11aが幅狭となって、溝11に嵌めた清掃体13が抜け出なければ(飛び出なければ)、四角等の多角形や蟻溝形などでも良い。また、クリーナ本体10の形状は、清掃対象物に応じて適宜に変更し得ることは勿論であり、その断面形状は、円形や三角形に限らず、楕円形、四角等の他の多角形とし得る。多角形の場合、正多角形が好ましい。
さらに、清掃体13は、円筒状の棒材に限らず、上記各実施形態(A〜A)において、円柱状、角筒状、角柱状等と溝11に嵌って抜け止めされ得る形状であれば、適宜に選択し得ることは言うまでもない。
【0035】
上記各クリーナA(A〜A)は、上記主軸M、HSKシャンクのみならず、清掃の必要なBTシャンク等の各種の工具ホルダの内外周面等の種々の工作機械部品の穴や外周面の清掃に使用し得ることは言うまでもない。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
なお、図6に示した、清掃体13を有する起伏片19をクリーナ本体10の外周面に設けた態様は、本願に係る発明に係わらず、清掃体13を接着固定したクリーナ等の従来の種々の態様のクリーナに適応できる。
【符号の説明】
【0037】
A、A、A、A、A、A クリーナ
M 主軸
、T、T 工具ホルダ
H 嵌合穴(取付穴)
d 溝の径
:円形溝の長さ方向の開口幅
円形溝の径
r 棒状清掃体の径
10 クリーナ本体
11 溝
11a 溝の端面開口
11b 溝の外周面開口
13 棒状清掃体
13a 棒状清掃体の端面孔
14 棒状把持部
15 ローレット加工
16 貫通孔
17 ねじ
19 起伏片
20 棒
20a 清掃体収納部(収納スペース)
25 ローレット加工
30 棒材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図12