(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層部において前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせる前記湿紙ウェブの含水率は60〜80質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の複合不織布製造装置。
前記積層工程において前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせる前記湿紙ウェブの含水率は60〜80質量%の範囲内であることを特徴とする請求項5または請求項6の何れか1つに記載の複合不織布の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1乃至特許文献4に記載された従来の技術においては、スパンボンド不織布に対し乾燥状態にある紙シートを積層し、それらを水流交絡処理するものであるから、弱い水圧の水柱流を噴射しただけでは、地合いが不良なものとなる問題があった。これは、乾式の紙シートでは、パルプのセルロース分子間が水素結合により結合しているから、その結合を解くのに多くのエネルギーを要するためと推測できる。即ち、弱い水圧の水柱流を噴射しただけでは、パルプ繊維の動きが少ないことで、繊維ムラが生じやすいものであった。そして、パルプ繊維のムラが大きいと、特に湿潤時の機械的強度が弱くなった。また、近年の不織布の普及、用途拡大に伴い、生産性の向上や歩留まりの向上による製造コストを重視したニーズも求められているところ、加工スピードを速くすると、地合いがますます悪化し、品質の低下を招くことになるから、生産性や歩止まりの向上も困難であった。
そこで、地合いをよくするためには高い水圧の水柱流が必要となるが、高い水圧の水柱流では、繊維同士を強く交絡させることになるから、得られる不織布が硬くなってしまっていた。また、紙粉の飛散も多くなるから、樹脂繊維にパルプ繊維が絡合しない箇所が存在し地合いの向上にも限度があり、歩留まりも良くはなかった。
つまり、特許文献1乃至特許文献4に記載された従来の技術においては、風合い、嵩高感、柔軟性を重視した低目付とすると、地合い不良となり、また、強度も低下する一方で、地合いを重視した高目付とすると、柔軟性に欠けるものとなり、複合不織布の柔軟性と強度との両立が難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、複合不織布の柔軟性と乾燥時及び湿潤時の強度との両立を可能とする複合不織布製造装置及び複合不織布の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の複合不織布製造装置は、スパンボンド不織布製造部で樹脂の長繊維からなるスパンボンド不織布を形成し、湿式抄紙ウェブ形成部のパルプ分散液調製部で水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製し、更に、抄紙部で前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げることによって、前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成し、そして、積層部でネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、そのスパンボンド不織布の上に前記湿潤状態にある前記湿紙ウェブを重ね合わせ、そして、スパンレース処理部で前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維とそれに重ね合わせた前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥部で前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥するものである。
【0010】
ここで、上記スパンボンド不織布製造部は、合成樹脂を溶融・紡糸してなる連続した長い樹脂繊維を集積するスパンボンド法によって不織布を形成するものである。即ち、上記スパンボンド不織布は、熱可塑性樹脂等の合成樹脂を原料とした連続長繊維で構成されている。このスパンボンド不織布は1層からなるものであってもよいし2層以上を積層してなるものであってもよい。
上記スパンボンド不織布を構成する樹脂繊維は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂からなる繊維である。
【0011】
上記湿式抄紙ウェブ形成部は、水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製するパルプ分散液調製部と、前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げる抄紙部とによって前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成するものである。
上記パルプ分散液は、パルプ繊維が離解して水に分散、懸濁されているものであり、例えば、シート状、板状に切断された所定厚みの板パルプ(パルプシート)を水に入れて攪拌することによって作製してもよいし、木材、古紙等の繊維原料を機械的、化学的に処理してパルプ化したそのパルプを水に入れて攪拌することによって作製してもよいし、抄紙された乾式の紙シートを離解して作製してもよい。
上記パルプとしては、一般的には、木材を原料とした木材パルプが使用されるが、木材以外の植物繊維、例えば、草、竹、綿、亜麻、エスパルト、ケナフ、ミルクウィード、藁、バガス等の非木材パルプであってもよい。
【0012】
上記積層部は、ネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、ネットコンベアに載せられたスパンボンド不織布の上面に前記湿潤状態にある前記湿紙ウェブを載せて重ね合わせるものであり、前記湿紙ウェブを上面とするものである。
【0013】
上記スパンレース処理部は、前記重ね合わせられた前記湿紙ウェブ及び前記スパンボンド不織布に対しウォータージェット施すことにより、通常は、湿紙ウェブの上面からスパンボンド不織布側にジェット水流を付与することにより、前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維と前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維を水流交絡によって一体化、結合するものである。
【0014】
上記乾燥部は、前記スパンボンド不織布を構成していた前記樹脂繊維と前記湿紙ウェブを構成していた前記パルプ繊維の前記水流交絡した水分を乾燥するものであり、ヒータまたは熱ロールでも、乾燥高温空気であっても良い。
【0015】
請求項
1の発明の複合不織布製造装置の前記スパンボンド不織布製造部は、前記樹脂繊維からなるスパンボンドウェブを形成するスパンボンドウェブ形成部と、前記スパンボンドウェブの前記樹脂繊維を熱エンボスロールにより熱溶着して熱エンボス加工する熱エンボス加工部とを有し、前記スパンボンド不織布がエンボス加工されたものである。
上記熱エンボス加工部は、熱エンボスロールの型押しによりスパンボンドウェブの長繊維を部分的に熱圧着によって、熱溶着、融合しエンボスパターンを形成するものである。
【0016】
請求項
2の発明の複合不織布製造装置の前記スパンボンド不織布は、その目付量(坪量)が、好ましくは、5g/m
2以上、20g/m
2以下、より好ましくは、8g/m
2以上、15g/m
2以下、更に好ましくは、10g/m
2以上、12g/m
2以下の範囲内のものである。
【0017】
請求項
3の発明の複合不織布製造装置の前記積層部にて前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせるときの前記湿紙ウェブの含水率は、好ましくは、60%以上、80%以下、より好ましくは、65%以上、80%以下の範囲内のものである。
【0018】
請求項
4の発明の複合不織布製造装置の前記スパンレース処理部で前記水流交絡させるときの水柱流の水圧は、好ましくは、2×10
6Pa以上、2×10
7Pa以下、より好ましくは、2×10
6Pa以上、1×10
7Pa以下、更に好ましくは、2×10
6Pa以上、5×10
6Pa以下の範囲内の低水圧であるものである。
【0019】
請求項
5の発明の複合不織布の製造方法は、スパンボンド不織布製造工程で樹脂繊維からなるスパンボンド不織布を形成し、湿式抄紙ウェブ形成工程のパルプ分散液調製工程で水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製し、更に、抄紙工程で前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げることによって、前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成し、そして、積層工程でネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、そのスパンボンド不織布の上に前記湿潤状態にある前記湿紙ウェブを重ね合わせ、スパンレース処理工程で前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維とそれに重ね合わせた前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥工程で前記一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥するものである。
【0020】
ここで、上記スパンボンド不織布製造工程は、合成樹脂を溶融・紡糸してなる連続した長い樹脂繊維を集積するスパンボンド法によって不織布を形成する工程である。即ち、上記スパンボンド不織布は、熱可塑性樹脂等の合成樹脂を原料とした連続長繊維で構成されている。上記スパンボンド不織布は、1層からなるものであってもよいし2層以上を積層してなるものであってもよい。
上記スパンボンド不織布を構成する樹脂繊維は、例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の合成繊維である。
【0021】
上記湿式抄紙ウェブ形成工程は、水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製するパルプ分散液調製部と、前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げる抄紙部とによって前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成する工程である。
上記パルプ分散液は、パルプ繊維が離解して水に分散、懸濁されているものであり、例えば、シート状、板状に切断された所定厚みの板パルプ(パルプシート)を水に入れて攪拌することによって作製してもよいし、木材、古紙等の繊維原料を機械的、化学的に処理してパルプ化したそのパルプを水に入れて攪拌することによって作製してもよいし、抄紙された乾式の紙シートを離解して作製してもよい。
上記パルプとしては、一般的には、木材を原料とした木材パルプが使用されるが、木材以外の植物繊維、例えば、草、竹、綿、亜麻、エスパルト、ケナフ、ミルクウィード、藁、バガス等の非木材パルプであってもよい。
【0022】
上記積層工程は、ネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、前記ネットコンベア上でそのスパンボンド不織布の表面に前記湿潤状態にある前記湿紙ウェブを載せて重ね合わせる工程であり、前記湿紙ウェブを上面とする。
【0023】
上記スパンレース処理工程は、前記重ね合わせられた前記湿紙ウェブ及び前記スパンボンド不織布に対しウォータージェット施すことにより、通常は、湿紙ウェブの上面からスパンボンド不織布側にジェット水流を付与することにより、前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維と前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維を水流交絡によって一体化、結合するものである。
【0024】
上記乾燥工程は、前記スパンボンド不織布を構成していた前記樹脂繊維と前記湿紙ウェブを構成していた前記パルプ繊維の前記水流交絡した水分を乾燥する工程であり、ヒータまたは熱ロールでも、乾燥高温空気であっても良い。
【0025】
請求項
5の発明の複合不織布の製造方法の前記スパンボンド不織布製造工程は、前記樹脂繊維からなるスパンボンドウェブを形成するスパンボンドウェブ形成工程と、前記スパンボンドウェブの前記樹脂繊維を熱エンボスロールにより熱溶着して熱エンボス加工する熱エンボス加工工程とを有し、前記スパンボンド不織布がエンボス加工されたものである。
上記熱エンボス加工工程は、熱エンボスロールの型押しによりスパンボンドウェブの長繊維を部分的に熱圧着によって、熱溶着、融合しエンボスパターンを形成する工程である。
【0026】
請求項
6の発明の複合不織布の製造方法の前記スパンボンド不織布は、その目付量(坪量)が、好ましくは、5g/m
2以上、20g/m
2以下、より好ましくは、8g/m
2以上、15g/m
2以下、更に好ましくは、10g/m
2以上、12g/m
2以下の範囲内のものである。
【0027】
請求項
7の発明の複合不織布の製造方法の前記積層工程では、前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせるときの前記湿紙ウェブの含水率は、好ましくは、60%以上、80%以下、より好ましくは、65%以上、80%以下の範囲内のものである。
【0028】
請求項
8の発明の複合不織布の製造装方法の前記スパンレース処理工程では、前記水流交絡させるときの水柱流の水圧は、好ましくは、2×10
6Pa以上、2×10
7Pa以下、より好ましくは、2×10
6Pa以上、1×10
7Pa以下、更に好ましくは、2×10
6Pa以上、5×10
6Pa以下の範囲内の低水圧であるものである。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明に係る複合不織布製造装置によれば、スパンボンド不織布製造部にて樹脂繊維からなるスパンボンド不織布を形成し、また、湿式抄紙ウェブ形成部のパルプ分散液調製部にて水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製してから抄紙部にて前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げることで、前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成し、積層部にてネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、そのスパンボンド不織布の上に前記湿紙ウェブを重ね合わせる。そして、スパンレース処理部にて、前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維とそれに重ね合わせた前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥部にて前記スパンレース処理部で一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥することで複合不織布が得られる。
【0030】
こうしてパルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブをスパンボンド不織布に重ね合わせ、それらをスパンレース処理するから、スパンレース処理時のウォータージェットの水柱流でパルプ繊維が動きやすく、樹脂繊維に対しパルプ繊維をムラなく貫入、交絡でき、地合いを良くできる。
よって、低水圧の水流絡合によって、または、スパンボンド不織布や湿紙ウェブの低目付によって、複合不織布の形成を低目付として柔らかさを向上させても、地合いがよいから、乾燥時及び湿潤時における強度が確保される。故に、複合不織布の柔軟性と強度の両立を可能とする。
【0031】
請求項
1の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記スパンボンド不織布製造部では、スパンボンドウェブ形成部にて前記樹脂繊維からなるスパンボンドウェブを形成し、熱エンボス加工部にて前記スパンボンドウェブを熱エンボスロールによりエンボス加工して、前記スパンボンド不織布を形成する。したがって、かかるスパンボンド不織布は、所望の低目付けとしても熱融着点(エンボス)によって強度、形態安定性が高いから、湿潤状態にある湿紙ウェブが重ね合わされて、湿紙ウェブの水分が浸透し、また、湿紙ウェブの重みを受けたときでも、更に、スパンレース処理の水柱流を受けたときでも、破れや、繊維の脱落、流失が生じ難い。加えて、かかるスパンボンド不織布では、熱融着されている部分では繊維が固定され、熱融着されていない部分の樹脂繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、スパンレース処理で、それら樹脂繊維間にパルプ繊維が捕捉されやすい。よって、スパンボンド不織布を低目付とした場合でも、強度を確保しつつ、樹脂繊維に対しパルプ繊維をムラなく貫入、交絡でききるか
ら、より低目付で柔らかくしても、地合いに優れ、かつ、強度がある複合不織布を得ることができる。
【0032】
請求項
2の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記スパンボンド不織布は、その目付量が、好ましくは、5〜20g/m
2の範囲内である。
スパンボンド不織布の目付量が小さすぎると、スパンレース処理部にて湿紙ウェブのパルプ繊維と水流絡合させたときにパルプ繊維の脱落、流失が多く生じる。一方で、スパンボンド不織布の目付量が多すぎると、湿紙ウェブのパルプ繊維が貫入し難く、良好な地合いが得られない。また、高い柔軟性が得られない。
スパンボンド不織布の目付量が好ましくは、5〜20g/m
2の範囲内であれば、請求項
1に記載の効果に加えて、パルプ繊維の捕捉性が高く、パルプの高含有率を確保でき、かつ、低目付でも優れた地合いを確保でき、また、柔軟性を高くできる。
【0033】
請求項
3の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記積層部において前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせる前記湿紙ウェブの含水率は60〜80%の範囲内であるから、十分な水分量によって、スパンレース処理前の状態で湿紙ウェブのパルプ繊維間の結合が弱く、かつ、水の表面張力で合成樹脂繊維とパルプ繊維同士を接近させるものとする。よって、請求項1
または請求項2に記載の効果に加えて、スパンボンド不織布の両面で湿紙ウェブを重ね合わせなくとも、スパンボンド不織布の片面に湿紙ウェブを重ね合せるのみで、スパンレース処理でパルプ繊維をスパンボンド不織布の樹脂繊維にムラなく貫入させることができ、低目付でも地合いに優れた複合不織布を形成できる。
【0034】
請求項
4の発明に係る複合不織布製造装置によれば、前記スパンレース処理部で前記水流交絡させるときの水柱流の水圧は、好ましくは、2×10
6〜2×10
7Paの範囲内であるから、請求項1乃至請求項
3の何れか1つに記載の効果に加えて、パルプ繊維の飛散を防止して、歩留まりや地合の向上を可能とする。また、低目付を可能とし、柔軟性、嵩高さ、または風合いを向上させることができる。
【0035】
請求項
5の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、スパンボンド不織布製造工程にて樹脂繊維からなるスパンボンド不織布を形成し、また、湿式抄紙ウェブ形成工程のパルプ分散液調製部にて水にパルプ繊維を分散させてパルプ分散液を調製してから抄紙工程にて前記パルプ分散液中の前記パルプ繊維を網上に抄き上げることで、前記パルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブを形成し、積層工程にて、ネットコンベア上に前記スパンボンド不織布を載せ、更に、そのスパンボンド不織布の上に前記湿紙ウェブを重ね合わせる。そして、スパンレース処理工程にて、前記スパンボンド不織布の前記樹脂繊維とそれに重ね合わせた前記湿紙ウェブの前記パルプ繊維とを水流交絡によって一体化し、乾燥工程にて前記スパンレース処理部で一体に交絡された前記樹脂繊維及び前記パルプ繊維を乾燥する。
【0036】
こうしてパルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブをスパンボンド不織布に重ね合わせ、それらをスパンレース処理するから、スパンレース処理時のウォータージェットの水柱流でパルプ繊維が動きやすく、樹脂繊維に対しパルプ繊維をムラなく貫入、交絡でき、地合いを良くできる。
よって、低水圧の水流絡合によって、または、スパンボンド不織布や湿紙ウェブの低目付によって、複合不織布の形成を低目付として柔らかさを向上させても、地合いがよいから、乾燥時及び湿潤時における強度が確保される。故に、複合不織布の柔軟性と強度の両立を可能とする。
【0037】
請求項
5の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記スパンボンド不織布製造工程では、スパンボンドウェブ形成工程にて前記樹脂繊維からなるスパンボンドウェブを形成し、熱エンボス加工工程にて前記スパンボンドウェブを熱エンボスロールにより熱エンボス加工して、前記スパンボンド不織布を形成する。したがって、かかるスパンボンド不織布は、所望の低目付けとしても熱融着点(エンボス)によって強度、形態安定性が高いから、湿潤状態にある湿紙ウェブが重ね合わされて、湿紙ウェブの水分が浸透し、また、湿紙ウェブの重みを受けたときでも、更に、スパンレース処理の水柱流を受けたときでも、破れや、繊維の脱落、流失が生じ難い。加えて、かかるスパンボンド不織布では、熱融着されている部分では繊維が固定され、熱融着されていない部分の樹脂繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、スパンレース処理で、それら樹脂繊維間にパルプ繊維が捕捉されやすい。よって、スパンボンド不織布を低目付とした場合でも、強度を確保しつつ、樹脂繊維に対しパルプ繊維をムラなく貫入、交絡でききるか
ら、より低目付で柔らかくしても、地合いに優れ、かつ、強度がある複合不織布を得ることができる。
【0038】
請求項
6の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記スパンボンド不織布は、その目付量が、好ましくは、5〜20g/m
2の範囲内である。
スパンボンド不織布の目付量が小さすぎると、スパンレース処理部にて湿紙ウェブのパルプ繊維と水流絡合させたときにパルプ繊維の脱落、流失が多く生じる。一方で、スパンボンド不織布の目付量が多すぎると、湿紙ウェブのパルプ繊維が貫入し難く、良好な地合いが得られない。また、高い柔軟性が得られない。
スパンボンド不織布の目付量が好ましくは、5〜20g/m
2の範囲内であれば、請求項
5に記載の効果に加えて、パルプ繊維の捕捉性が高く、パルプの高含有率を確保でき、かつ、低目付でも優れた地合いを確保でき、また、柔軟性を高くできる。
【0039】
請求項
7の発明に係る複合不織布の製造装置によれば、前記積層工程において前記ネットコンベア上に載せられた前記スパンボンド不織布に重ね合わせる前記湿式ウェブの前記含水率は60〜80%の範囲内であるから、十分な水分量によって、スパンレース処理前の状態で湿紙ウェブのパルプ繊維間の結合が弱く、かつ、水の表面張力で合成樹脂繊維とパルプ繊維同士を接近させるものとする。よって、請求項
5または請求項6に記載の効果に加えて、スパンボンド不織布の両面で湿紙ウェブを重ね合わせなくとも、スパンボンド不織布の片面に湿紙ウェブを重ね合せるのみで、スパンレース処理でパルプ繊維をスパンボンド不織布の樹脂繊維にムラなく貫入させることができ、低目付でも地合いに優れた複合不織布を形成できる。
【0040】
請求項
8の発明に係る複合不織布の製造方法によれば、前記スパンレース処理部で前記水流交絡させるときの水柱流の水圧は、好ましくは、2×10
6〜2×10
7Paの範囲内であるから、請求項
5乃至請求項7の何れか1つに記載の効果に加えて、パルプ繊維の飛散を防止して、歩留まりや地合の向上を可能とする。また、低目付を可能とし、柔軟性、嵩高さ、または風合いを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0043】
まず、本実施の形態の複合不織布1の製造について説明する。
本実施の形態の複合不織布製造装置は、
図1及び
図2で示すように、主として、上流側に配設するスパンボンド不織布製造部10及び湿式抄紙ウェブ形成部20と、その下流側に配設する結合処理部30とを有する。
【0044】
まず、本実施の形態の複合不織布製造装置を構成しているスパンボンド不織布製造部10について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態のスパンボンド不織布製造部10は、繊維を作る紡糸から、直接、集積して樹脂繊維のスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成部11と、スパンボンドウェブ110Aに対し熱エンボスにより部分的に溶着する熱エンボス加工部12とを構成している。
【0045】
スパンボンドウェブ形成部11は、直径3〜5mm程度の米粒状の樹脂ペレットを供給するホッパー111と、ホッパー111に供給された原料のペレットを熔融して押し出す押出機112と、押出機112から押し出された熔融樹脂を噴射するノズル113と、ノズル113から連続噴射された樹脂を連続長繊維の紡糸として捕集し、冷却し、ネットコンベア(コレクター)NC1に噴射するエジェクター114とを有する。また、スパンボンド不織布製造部10のネットコンベアNC1では、エジェクター114の下方に、減圧手段により内部に空気を吸い込む吸引部(サクション部)115が配設され、外部に配設されたエアーポンプによってネットコンベアNC1の上面から下面方向に吸引し、紡糸された連続樹脂繊維をネットコンベアNC1の上面に集まりやすくしている。
このスパンボンドウェブ形成部11により、エジェクター114から連続噴出させた樹脂からなる長繊維がネットコンベアNC1の上面にウェブ状に積み重ねられて、集積繊維であるスパンボンドウェブ(フリースともいう)110Aが形成される。
そして、ネットコンベアNC1の上面に形成されたスパンボンドウェブ110Aは、ネットコンベアNC1により熱エンボス加工部12に送られる。
【0046】
熱エンボス加工部12は、形状、模様の凸部121a(
図3乃至
図5参照)を形成した熱エンボス凸部ローラ121及び特定曲率面からなる熱平滑ローラ122で構成される。
この熱エンボス加工部12により、スパンボンドウェブ110Aが熱エンボス凸部ローラ121と熱平滑ローラ122の間を通過することで、それら熱ローラによる型押しによってスパンボンドウェブ110Aの樹脂繊維が部分的に熱融着して凹凸が付与され、エンボス加工されたスパンボンド不織布110が形成される。
【0047】
こうして、本実施の形態のスパンボンド不織布110は、
図1に示したスパンボンド不織布製造部10のスパンボンドウェブ形成部11にて原料の合成樹脂を溶融・紡糸させて得られる連続した長い繊維を直接集積してスパンボンドウェブ110Aを形成した後、熱エンボス加工部12にて熱エンボスローラ121,122で繊維を熱圧着、熱融着することにより形成される。特に、このような熱エンボスローラ121,122による樹脂繊維の熱融着では、接着剤を使用しないために柔らかな風合いにでき、後述するパルプ繊維が絡みやすい仕上がりとなる。
【0048】
即ち、本実施の形態では、原料の樹脂チップを溶融・紡糸して得た長繊維をネットコンベアNC1に堆積させてスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成工程と、スパンボンドウェブ110Aを熱エンボス凸部ローラ121及び熱平滑ローラ122によってエンボス加工する熱エンボス加工工程とからなるスパンボンド不織布製造工程の実施によってエンボス加工されたスパンボンド不織布110が得られる。このように本実施の形態のスパンボンド不織布製造部10では、紡糸から、直接、不織布を製造する装置であり、紡糸から不織布の形成まで一貫して加工し、生産が高速化している。
なお、本実施の形態では、こうしてエンボス加工されたスパンボンド不織布110は、任意の長さでロール状に巻き取られ、後述の結合処理部30に供給される。
【0049】
このようにして得られた本実施の形態のスパンボンド不織布110は、長繊維を用いているから強度や安定性が高く、また、広幅なものを得ることも可能である。特に、エンボス加工により一部の繊維同士が熱融着されることによって、より強度や形態安定性に優れる。よって、所望の低目付けとしたスパンボンド不織布110であっても、それに、後述の結合処理部30で湿潤状態にあるパルプ繊維の湿紙ウェブ120が重ねられ、そして、スパンレース処理されたときに、スパンボンド不織布110の破れや樹脂繊維の脱落が生じ難い。また、このようにエンボス加工されたスパンボンド不織布110では、熱融着されていない部分の樹脂繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、スパンレース処理で、樹脂繊維に対しパルプ繊維をムラなく貫入できる。これより、例えば、20g/m
2以下の低目付量であっても極めて地合いに優れ、かつ、所定の強度となる複合不織布1を得ることができる。
【0050】
ここで、スパンボンド不織布110を構成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アラミド、アクリル、ポリスチレン等の合成樹脂が使用され、複合不織布1の用途、目的等によって選択される。原料の選択や製造工程での工夫で、ポリプロピレンとポリエチレンの複合タイプや、ポリ乳酸(PLA)ベースの生分解タイプ等としてもよく、また、複数の樹脂からなる芯鞘構造、並列構造、割繊構造の繊維としてもよい。繊維形状も一般的には丸形であるが、楕円形、菱形、三角形、T形、井形等であってもよい。
特に、ポリプロピレンは環境に優しい材料、柔らかい長繊維となることから、基材となる原材料にコポリマーのポリプロピレンを使用するのが望ましい。また、好ましくは、ソフトタイプの樹脂を使用することで、複合不織布1が濡れたときでもやわらかいものとなる。
【0051】
紡糸させて得られるスパンボンド不織布110の樹脂繊維は、例えば、0.7dtex〜9dtexの繊度の長繊維とする。繊度が大きすぎると、得られる複合不織布1の柔軟性及び地合いが低下する。一方で、繊度が小さすぎると生産性の低下や製造コストが上昇する。好ましくは、1.1dtex〜4.95dtexの範囲内、より好ましくは、1.65dtex〜2.75dtexの範囲内の繊維の維度であれば、複合不織布1の良好な柔軟性及び地合いの確保を可能とし、製造コストも問題にならない。なお、樹脂繊維の平均繊維径をコントロールすることで複合不織布1の各種特性の調整も可能である。
【0052】
そして、本実施の形態のスパンボンド不織布110では、好ましくは、5〜20g/m
2、より好ましくは、8〜15g/m
2、更に好ましくは、10〜12g/m
2の目付量(坪量)で柔らく仕上げられる。
本発明者らの実験研究によれば、スパンボンド不織布110の目付量が多すぎると、例えば、2×10
6Pa〜5×10
6Paと弱い水圧の水柱流を噴射しただけでは、後述する湿紙ウェブ120のパルプ繊維がスパンボンド不織布110の裏面側(湿紙ウェブ120が重ねられた面とは反対側の面)まで移動し難く、パルプ繊維の地合いに劣るものとなる。そして、パルプ繊維が複合不織布1の表層に偏在することになるから、濡れた時に剥離、破れが生じやすくなる。一方で、高水圧の水柱流とすれば、地合いが改善されるも、風合い、感触が硬くなる。また、逆に、目付量が低すぎると、スパンレース処理でスパンボンド不織布110からパルプ繊維が通過、流失しやすく、強度も不足し、歩留まりも悪くなる。
スパンボンド不織布110の目付量を、好ましくは、5〜20g/m
2、より好ましくは、10〜15g/m
2、更に好ましくは、11〜12g/m
2とすることにより、強度を確保しつつ、低目付量で柔らかくしても地合いに優れた複合不織布1が得られる。なお、スパンボンド不織布110の目付量は、原材料の樹脂の種類、エジェクター114のノズル孔径や間隔、吸引部115の吸引力、ネットコンベアNC1の速度、熱エンボス加工の熱量等で決定される。
【0053】
また、本実施の形態のスパンボンド不織布製造部10で使用するエンボス加工について、
図3及び
図4を参照して、具体例を説明すると、
図1で示した型押しする熱エンボス凸部ローラ121には、ネットコンベアNC1上におけるスパンボンドウェブ110Aの移送方向Y(搬送方向Y)に対して直交するX軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱する凸部121aが形成されている。なお、スパンボンドウェブ110Aの移送方向Yに対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、各種ローラの回転軸によって定まる。
【0054】
ここで、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の位置にある。
しかも、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定している。更に、スパンボンドウェブ110Aの移送方向に対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、熱融着部分の幅Xaを融合しない部分の幅Xbよりも狭くしている。
【0055】
即ち、融着しない部分の幅Xbは、Y軸成分方向のY軸成分方向に連続形成されている。また、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、X軸成分方向の熱融着しない部分の幅Xaとの面積Xa・Ybが型押しをしない面積である。つまり、面積Xa・Yaが型押しする熱エンボス凸部ローラ121の凸部121aとなっている。よって、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱されて熱融着され、エンボス加工される。なお、Xb/Xaの比率は、嵩高加工、機械的強度の指標として使用できる。特に、Xb/Xaの比率の融合しない部分の幅Xbは、摺動する際の摺動抵抗の指標にもなる。また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbは、加工が可能である。
【0056】
図3及び
図4においては、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着する部分の長さYaの1/2位置にある。本発明を実施する場合には、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着する部分の長さYaの何れかにあればよい。
【0057】
即ち、
図3及び
図4に示したエンボスでは、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着面とし、隣接するY軸成分方向の一直線上の配置において、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYb、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定して熱エンボス凸部ローラ121及び熱平滑ローラ122によるエンボス加工とするものである。
【0058】
また、本発明を実施する場合には、例えば、
図5に示すように、熱溶着するエンボス加工される融着部を「H」字形等のように、互いに干渉し会うX軸成分方向、Y軸成分方向に線対称の形状としてもよい。
図5に示したエンボスでは、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は、X軸成分方向に平行な熱融着部分の幅Xcによって融着部の幅が接続されている。エンボス加工の凸部121aにより熱融着される融着部の幅Xcは、単位図形が「H」字形等のように、凸部121aの熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側が、X軸成分方向に平行な熱融着部分の幅Xcによって融着部の幅が接続されている。これより、
図3及び
図4に示したエンボス加工よりも、更に、X軸成分方向とY軸成分方向に各々伸縮、膨張し難い構成となり、スパンボンド不織布110が平面的方向に変化する量が少なく、その平面に対して垂直方向の厚み方向の嵩は高くすることができる。
【0059】
即ち、
図5に示した単位図形が「H」は全平面的方向に変化する量が少なくなり、その平面に対して垂直方向の厚み方向の嵩は高くすることができる。
図5に示す「H」字形等のように、互いに干渉し会うX軸成分方向、Y軸成分方向に線対称の形状であれば、熱融着の加工性もよい。
一方で、
図3及び
図4に示した単位図形「I」は、平面的方向に変化する量が少なくなるが、X軸成分方向のみは横伸びが発生する可能性は高くなる。しかし、熱融着長さYa、熱融着しない部分の幅Yb、熱融着長さXa、熱融着しない部分の幅Xbの寸法を変更することにより、X軸成分方向に外力を加えた時の伸びを任意に設定できる。
【0060】
なお、エンボス加工を行う凸部121aを形成した熱エンボス凸部ローラ121により接着したポリプロピレン(PP)繊維からなる現物の複合不織布1のエンボスパターンの接着部分は透明に近いが、これは穴が開いているわけではなく、基材のポリプロピレン繊維の部分が熱で熔融し、透明に見えているだけで一体になっているから、縦横伸びも抑えることができる。また、拭き取った汚れ等も表面から裏面に通過しないため、複合不織布1を持つ手等に汚れが付着することがない。
本発明を実施する場合には、熱エンボスローラ121,122は、各ローラで1/2の高さの凸部121aとすることも可能である。但し、回転のタイミングを同一とする必要がある。また、熱エンボス凸部ローラ121及び熱平滑ローラ122を逆の構成としてもよい。熱エンボス凸部ローラ121及び熱平滑ローラ122は、所定の直径で形成された同一径のものであればよい。
【0061】
こうして、本実施の形態のスパンボンド不織布110では、エンボス形成用に周面において部分的に凸部121aを形成した熱エンボス凸部ローラ121及び所定の直径の筒からなる均一周面を形成した熱平滑ローラ122により熱融着型押しされたエンボスパターンを有する。即ち、型押しする凸部121aを形成した熱エンボス凸部ローラ121及び特定曲率面からなる熱平滑ローラ122により、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱される
図3乃至
図5に示した凸部121aのエンボスパターンが形成される。
【0062】
このように、本実施の形態のスパンボンド不織布110は、合成樹脂からなる連続繊維の繊維間が自己融着による結合点(熱融着点)、即ち、エンボスを有し、連続繊維相互間が結合されているため、強度、形態安定性が高いものである。また、その熱融着部以外では、繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、後述するパルプ繊維が容易に交絡できる。
したがって、本実施の形態のスパンボンド不織布110に対し、後述するように、積層部31にて湿潤状態にある湿紙ウェブ120が重ね合わされ、湿紙ウェブ120の水分がスパンボンド不織布110に浸透し、また、湿紙ウェブ120の重みを受けても、スパンボンド不織布110は熱融着点(エンボス)によって強度、形態安定性が高いから、スパンボンド不織布110が低目付けであっても、その樹脂繊維の破れ、脱落、流失が生じ難い。更に、スパンレース処理部32にて、ウォータージェットの水柱流を受けても、スパンボンド不織布110の樹脂繊維の破れ、脱落、流失が生じ難い。また、本実施の形態のスパンボンド不織布110は、熱融着点(エンボス)の部分では樹脂繊維が固定されている一方で、スパンボンド不織布110の熱融着されていない部分の樹脂繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、スパンレース処理で、それら樹脂繊維間でパルプ繊維が捕捉されやすい。よって、スパンボンド不織布110を低目付としたときであっても、強度を確保しつつパルプ繊維のムラのない貫入、交絡を可能とし、地合いに極めて優れた複合不織布1を得ることができる。故に、低目付で柔らかくしても、強度が確保され、かつ、地合いに優れた複合不織布1を得ることができる。
【0063】
好ましくは、
図3乃至
図5に示したように、スパンボンド不織布110の移送方向Yに対して直交するX軸成分、当該X軸成分に対して直交するY軸成分は、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定し、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着する熱エンボス凸部ローラ121と熱平滑ローラ122によるエンボス加工を行うものである。
【0064】
このようなエンボス加工では、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xaと熱融着しない部分の幅XbをX軸成分方向に張力を加えると、熱融着しない部分の幅Xb及び熱融着しない部分の長さYbに外力が加わり、最も引っ張り力が弱くなるが、他の斜め角度またはY軸成分方向に加えられた外力は、エンボス加工した凸部121aの幅Xaとの面積Xa・Yaで分散されて外力に耐える構造となっている。熱エンボス凸部ローラ121の周囲面に、幅Xaで、長さYaの熱融着部分を繰返し形成しているが、X軸成分方向に外力を加えると、直接、外力が熱融着しない部分の幅Xbに加えられることになる。
したがって、乾燥時(非湿潤時)であっても、湿潤時であっても、Y軸成分方向の熱融着しない部分の幅Ybの両先端が隣接の熱融着部分の長さYaよりも短い両端内にあり、熱融着部分の長さYaの両端に外力が加わらないので、複合不織布1の使用時にも柔らかくて、縦伸びや横縮みをしない腰が強い嵩高加工ができる。
【0065】
特に、X軸成分方向とY軸成分方向に各々伸縮、膨張し難い構成でスパンボンド不織布110が平面的方向に変化する量が少なく、その平面に対して垂直方向の厚み方向の嵩は高くすることができるから、後述のスパンレース処理で、ウォータージェットの水柱流を受けたときでも、樹脂繊維が流動、移動、流出し難くなり、熱融着しない部分の樹脂繊維間でパルプ繊維が捕捉、交絡されやすく、地合いが向上する。
また、Y軸成分方向の熱融着しない部分の幅Ybの両先端が隣接の熱融着部分の長さYaの両端内にあるから、柔らかくても樹脂繊維やパルプ繊維の脱落が生じ難い。そして、縦(Y軸成分方向)伸びが生じず、また、横(X軸成分方向)縮みをしない腰が強い嵩高加工となる。更に、伸び難いから、加工時、例えば、ロール状に巻くまたはロール状に引き出す際にも、幅入りの影響を受け難いため、高速生産を可能とする。
【0066】
ところで、本発明を実施する場合には、
図6に示すように、スパンボンド不織布製造部10において、熱エンボス加工部12の下流に、更に、親水性処理部13を設けることも可能である。この親水性処理部13では、界面活性剤等の親水化処理剤を含む親水化処理液13Aに対し、ローラ13Bによる押し付けでスパンボンド不織布110の片面または全体を接触または浸漬させ、更に、乾燥部13Cで親水化処理液13Aの水分を乾燥させる。このような親水処理部13により、スパンボンド不織布110の表面または全体に親水化処理を施し、親水性のスパンボンド不織布110を形成するようにしてもよい。なお、乾燥部13Cでは、一般的に、非接触式の乾燥方法、例えば、エアースルードライヤ(熱風通気方式)等のドライヤ、ヒータ(空気中乾燥処理)、赤外線放射法、蒸気缶、真空脱水法、超音エネルギー法、超短波エネルギー法で乾燥される。
このように親水加工されたスパンボンド不織布110によれば、後述する積層部31にて湿紙ウェブ120が重ね合わせられたときに、湿紙ウェブ120との馴染みがよいから、スパンレース処理時に、湿紙ウェブ120のパルプ繊維がスパンボンド不織布110に貫入しやすくなる。よって、パルプ繊維の地合い向上を可能とする。
【0067】
なお、スパンボンド不織布110の表面のみを親水処理した場合には、後述の積層部31にて、スパンボンド不織布110の親水処理された表面側を上側とし、そこに湿紙ウェブ120が供給されるようにするのが好ましい。
また、本発明を実施する場合には、複合不織布1の用途等に応じ、スパンボンド不織布製造部10において、親水性処理または非処理の選択をできる構成としてもよい。即ち、スパンボンド不織布製造部10において、親水性処理部13を設けていても、ローラ13Bは上下動できるようにし、ローラ13Bを下げた状態では、スパンボンド不織布110が親水化処理液13Aに接触し、ローラ13Bを上げた状態では、スパンボンド不織布11が親水化処理液13Aに接触することなく通過するようにしてもよい。そして、親水化処理液13Aに接触することなく、ローラ13Bを通過させたときには、乾燥部13Cを非稼働状態としてそこを通過させてから、ロール状に巻き取る。このように、実質的に親水処理部13を機能させないでそこを通過できるようにして、親水性処理をしない構成としてもよい。
【0068】
次に、本実施の形態の複合不織布製造装置を構成している湿式抄紙ウェブ形成部20について
図2を参照して説明する。
図2に示すように、本実施の形態の湿式抄紙ウェブ形成部20は、パルプ繊維を水Wに分散させてパルプ分散液(パルプ懸濁液)212を調製するパルプ分散液調製部21と、調製されたパルプ分散液212を短網または長網からなるワイヤー(網)で抄紙する抄紙部22とを構成している。
【0069】
パルプ分散液調製部21では、複数の槽(T
1,T
2,T
3,・・・T
n)を用い、順次、低濃度から高濃度のパルプ分散液212を調製する。特に、本実施の形態では、板パルプ(板状ペーパ、乾燥パルプシート)Pを水Wに投入し、攪拌することで、パルプの解繊、離解を行い、最終的にパルプ繊維が、好ましくは、約0.8〜1.2%濃度、より好ましくは、0.9〜1.1%濃度となるパルプ分散液212が調製される。パルプ繊維の濃度が薄いと、得られる複合不織布1の吸水性や保水性が低下し、実用的な用途に使用できなくなる。一方で、パルプ繊維の濃度が高すぎると、地合い及び柔軟性が低下し、また、パルプの高い吸湿性、保水性により湿潤時に所定の強度が得られ難くなり、実用的な用途に使用できなくなる。パルプ分散液212中のパルプ繊維の濃度が、好ましくは、約0.8〜1.2%濃度、より好ましくは、0.9〜1.1%濃度であれば、後のスパンレース処理で低圧の水柱流を施したときでも、パルプ繊維がムラなく樹脂繊維に交絡し、得られる複合不織布1において、低目付でも優れた地合い及び強度の確保を可能とし、所定の吸水性、保水性及び柔軟性の確保を可能とする。なお、必要に応じ、離解促進剤、分散剤、界面活性剤、消泡剤等の一般的に抄紙の際に使用する薬品を適宜配合することも可能である。
【0070】
このようにして調製されたパルプ分散液212は、パルパー等の離解機PPに投入されて更に攪拌による解繊、離解がなされ、必要に応じ、図示しないリファイナー等で叩解され、チェストでの貯槽を経てから、ヘッドボックス部Hのストックインレット部Sから抄紙部22の短網または長網からなるワイヤーを有するワイヤーパート部22Aへ噴出される。
抄紙部22のワイヤーパート部22Aでは、ストックインレット部Sから噴出されたパルプ分散液212がワイヤー上で走行しながら下方に水分が落とされる。特に、短網または長網のワイヤーを有するワイヤーパート部22Aでは、ワイヤーに振動を加えることで水分を落ちやすくし、更に、地合いを整え均一にできる。なお、ワイヤーパート部22Aの下には排水部(図示せず)が設けられており、落下した水分を回収している。
このワイヤーパート部22Aでの抄紙により、パルプ繊維の集積体からなる湿紙ウェブ120が形成される。そして、湿紙ウェブ120は、ロール部22Bを通して、結合処理部30に送られる。
【0071】
ここで、本発明者らの実験研究によれば、抄紙部22を構成するワイヤーパート部22A及びロール部22Bを通して脱水された湿紙ウェブ120は、好ましくは、含水率が60〜80%の範囲内で、パルプ繊維濃度が20%〜40%の範囲内とされる。
後の積層部31でスパンボンド不織布110に重ね合わせる湿紙ウェブ120の含水率が低すぎると、パルプ繊維のムラが生じやすくなり、低目付としたときに優れた地合いが得られない。一方で、湿紙ウェブ120の含水率が高すぎると、湿紙ウェブ120の水分過多及び重みにより積層部31でスパンボンド不織布110に重ね合わせたときにスパンボンド不織布110の破れや、樹脂繊維の脱落、流出が生じやすくなり、所定の強度及び優れた地合いが得られない。
スパンボンド不織布110に重ね合わせるときの湿紙ウェブ120の含水率が、好ましくは、60〜80%の範囲内、パルプ繊維濃度が20%〜40%の範囲内であれば、十分な水分量によって、スパンレース処理前の状態で、湿紙ウェブ120のパルプ繊維間の結合が弱く、かつ、水の表面張力で樹脂繊維とパルプ繊維同士を接近させるものとする。これより、スパンレース処理で、厚み方向で均一にパルプ繊維をスパンボンド不織布110の樹脂繊維に貫入、交絡させることができ、強度を損なうことなく、低目付でも地合いに優れた複合不織布1の形成を可能とする。特に、スパンボンド不織布110の両面で湿紙ウェブ120を重ね合わせなくとも、スパンボンド不織布110の一方の片面に湿紙ウェブ120を重ね合せるのみで、低目付でも地合いに優れた複合不織布1が得られる。より好ましくは、湿紙ウェブ120の含水率は65〜80%の範囲内で、湿紙ウェブ120のパルプ繊維濃度は20%〜35%の範囲内である。
【0072】
こうして、本実施の形態の湿紙ウェブ120は、
図2に示した湿式抄紙ウェブ形成部20のパルプ分散液調製部21にて原料の板状パルプPを水Wに投入し、攪拌することでパルプが離解したパルプ分散液212を調製し、続く抄紙部22にてパルプ分散液212をワイヤーで抄き上げることにより形成される。
即ち、本実施の形態では、板状パルプPを水Wに投入し、攪拌することでパルプ繊維を水Wに分散させてパルプ分散液212を調製するパルプ分散液調製工程と、パルプ分散液212をワイヤー上に抄き上げる抄紙工程とからなる湿式抄紙ウェブ形成工程の実施によってパルプ繊維が集積された湿紙ウェブ120が得られる。
【0073】
ここで、湿紙ウェブ120の原料のパルプは、例えば、スギ、ヒノキ、カラマツ、ダグラスファー、サザンパイン、ラジアータパイン、スラッシュパイン、スプルース、ロッジボールパイン等の針葉樹や、ユーカリ、アカシア等の広葉樹の木材を、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイト法等で蒸解した化学パルプ、または、グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ、或いは、再生パルプ等が使用される。針葉樹パルプや広葉樹パルプは混合して用いてもよく、広葉樹由来のパルプの含有率が高いと、柔らかい風合いで地合いの良い複合不織布1を得ることができ、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒パルプ(NUKP)等の針葉樹由来のパルプの含有率が高いと、繊維の脱落が少なくて強度が高く歩留まりがよい複合不織布1を形成できる。バージンパルプまたは再生パルプの何れも使用できるが、再生パルプの方が短い繊維が多い傾向にあり、柔らかく地合いがより良好な複合不織布1を形成できる傾向にある。
【0074】
板状パルプPとしては、針葉樹や広葉樹等のパルプや再生パルプをシート状に加工(パルプシート化)し、所定寸法に切断して、所定の厚み、例えば、厚み3mm〜5mmの板状(シート状)に形成されたものを使用できる。しかし、本発明を実施する場合には、パルプ繊維が分散、懸濁したパルプ分散液212を得ることができれば、板状パルプPに限定されず、ロール状に巻かれたシート状パルプを適宜切断して、水Wに投入してもよいし、パルプを抄紙化した紙シートを用いてもよいし、パルプを直接水Wに投入してもよい。
そして、本実施の形態では、複数の槽(T
1,T
2,T
3,・・・T
n)を用い、初めは、パルプ繊維が低濃度の分散液(懸濁液)の液槽(T
1,T
2,T
3,T
4・・・)を作製して、繊維の分散を安定させてから、それら低濃度の分散液の液槽(T
1,T
2,T
3,T4・・・)と新たな板パルプPとの混合により高濃度の分散液の液槽(T
11,T
12,・・・)を作製し、再び繊維の分散を安定させてから、さらにその調製された分散液の液槽(T
11,T
12,・・・)と新たな板パルプPとの混合により更に高濃度の分散液の液槽(T
21,T
22,・・・)を調製し、それらの繰り返しで、所定濃度のパルプ分散液212を得ている。これにより、短時間で効率的に安定した所定濃度のパルプ分散液212の調製が可能である。
【0075】
このようにして調製された所定濃度のパルプ分散液212は、ストックインレット部Sからワイヤーパート部22Aへ供給されて抄紙されるが、ワイヤーパート部22Aに供給される離解したパルプ繊維の長さは、好ましくは、平均繊維長が0.5〜8mmの範囲内であり、より好ましくは、0.8〜6mmの範囲内、更に好ましくは、1〜5mmの範囲内である。即ち、湿紙ウェブ120を形成するパルプ繊維の好ましい平均繊維長は、0.5〜8mmの範囲内であり、より好ましくは、0.8〜6mm範囲内、更に好ましくは、1〜5mmの範囲内である。
当該範囲内であれば、抄紙時の繊維落ちが少なくて絡合性や歩留まりが良好であり、また、スパンレース処理時のウォータージェットで紙粉が発生し難く、パルプ繊維が容易に移動できて樹脂繊維と絡合性も良好であり、パルプ繊維がムラなく樹脂繊維に交絡する。
【0076】
続いて、本実施の形態の複合不織布製造装置を構成している結合処理部30について
図2を参照して説明する。
図2に示すように、本実施の形態の複合不織布製造装置を構成する結合処理部30は、湿式抄紙ウェブ形成部20の下流に配設し、上述したスパンボンド不織布製造部10にて形成されロール状に巻き取られたスパンボンド不織布110を展開してネットコンベアNC2に載せ、更にそのスパンボンド不織布110の上に、湿式抄紙ウェブ形成部20にて形成された湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層部31と、それら重ね合わせられたスパンボンド不織布110及び湿紙ウェブ120を水流交絡させるスパンレース処理部32と、スパンレース処理された集積交絡繊維を乾燥する乾燥部33とを構成している。
【0077】
積層部31では、ロール状に巻かれたスパンボンド不織布110が巻き出されて、ニップ部の押圧ローラ、案内ローラを通過し、結合処理部30のネットコンベアNC2上に載せられる。そして、抄紙部22のワイヤーパート部22Aの廻転ローラ及びロール部22Bによって送り出された水に濡れた湿潤状態(ウエットな状態)にある湿紙ウェブ120が、ネットコンベアNC2に載せられたスパンボンド不織布110の上面に載せられる。しがって、積層されたスパンボンド不織布110及び湿紙ウェブ120は、水に濡れた湿潤状態(ウエットな状態)にあり、その状態でネットコンベアNC2によって、下流側のスパンレース処理部32へと搬送される。
なお、ネットコンベアNC1,NC2の支持体は、特に問われないが、一般的には、合成樹脂製または金属製の縦糸と横糸からなる平織りの20〜100メッシュのワイヤー等の網状の支持体やパンチングプレート等の多孔質支持体である。
【0078】
スパンレース処理部32では、ネットコンベアNC2の搬送方向に沿って、多段階的に、複数のスパンレースノズル(N
1,N
2,・・N
n)が配設されており、それらスパンレースノズル(N
1,N
2,・・N
n)から、ネットコンベアNC2に向かってウォータージェットが施される。本実施の形態では、スパンボンド不織布110及びその上に積層された湿紙ウェブ120に対し、それらを貫通するように湿紙ウェブ120側の上方からスパンボンド不織布110側に向かってウォータージェットのジェット噴流を噴射する。なお、スパンレースノズル(N
1,N
2,・・N
n)から噴出される水柱流は、ネットコンベアNCCの進行方向に対して垂直である。ウォータージェットのノズル(N
1,N
2,・・N
n)は、例えば、ノズル径(φ)が0.01〜3mm、好ましくは、0.5〜1.5mm、より好ましくは、0.75〜1.25mmの範囲内のノズル孔(オリフィス)を複数有し、複数のオリフィスが、例えば、0.3〜10mmの間隔、好ましくは、0.5〜2mmの間隔で設けられている。このときの搬送方向に沿うノズル(N
1,N
2,・・N
n)の個数(1,2,・・・n)や、ノズル(N
1,N
2,・・N
n)の能力等は、複合不織布1の用途、所望とする特性に合わせて適宜設定される。
【0079】
ここで、本実施の形態では、スパンボンド不織布110に湿紙ウェブ120を積層してそれらにスパンレース処理施すものであるから、ウォータージェットのノズル(N
1,N
2,・・N
n)からは、好ましくは、2×10
6〜2×10
7Paの水圧の水、より好ましくは、3×10
6Pa〜5×10
6Pa程度の低水圧の水でウォータージェットを施しても、湿紙ウェブ120のパルプ繊維が運動しやすいことで、スパンボンド不織布110を形成している樹脂繊維に対し、湿紙ウェブ120のパルプ繊維をムラなく交絡させ、地合いをよくできる。
なお、スパンレース処理部32の管路にマ二ホールドを配置し、マ二ホールドでノズル(N
1,N
2,・・N
n)の圧力を調整することで、樹脂繊維に絡合させるパルプ繊維のスパンレースのエネルギー調整を行うことも可能であるし、ノズルの孔径によっても調節可能である。更に、複数のスパンレースノズル(N
1,N
2,・・N
n)によるスパンレース処理では、上流側から下流側に向かって、同一の水圧で水柱流を施してもよいし、好ましくは、上流側から下流側に向かって徐々に水圧を高くするようにすることで、より地合いを良好にできる。
【0080】
こうして、スパンレース処理部32では、スパンボンド不織布110及びその上に積層された湿紙ウェブ120に対し、それらを貫通するように湿紙ウェブ120側の上方からウォータージェットのジェット噴流を噴射することにより、ウォータージェットの水柱流によって湿紙ウェブ120のパルプ繊維が運動してスパンボンド不織布110の樹脂繊維に絡合し、樹脂繊維及びパルプ繊維が一体に交絡する。即ち、ウォータージェットのジェット噴流を上から下に噴射させながら、湿紙ウェブ120のパルプ繊維及びスパンボンド不織布110の樹脂繊維の繊維同士を絡み合わせる。
【0081】
なお、ネットコンベアNC2の下方には、水を吸引除去するノズル(図示せず)が設置されており、スパンボンド不織布110の上に載せられた湿紙ウェブ120のパルプ繊維をスパンボンド不織布110の樹脂繊維に貫入しやすくしている。また、ネットコンベアNC2の下には排水部(図示せず)が設けられており、ウォータージェットで落下した水を回収できるようにしている。特に、本実施の形態では、スパンボンド不織布110の上に湿紙ウェブ120を載せてそれらをスパンレース処理するものであるから、ウォータージェットの水柱流によるパルプ繊維の飛散が少なく、パルプ繊維が樹脂繊維にムラなく貫入し交絡して脱落、流出し難いものである。また、本実施の形態のスパンボンド不織布110はエンボス加工されているから、樹脂繊維が融着されていることで、ウォータージェットによる樹脂繊維の脱落、流出も生じ難い。このため、ウォータージェットの使用後の水を回収し、フィルター濾過して、ウォータージェットに再利用するときでも、その回収した水に繊維の混入が少なく、フィルターの目詰まりや、フィルタメンテナンスの負荷を少なくできる。更に、連続作業性もよくできる。また、回収せずに排水する場合でも、繊維の混入が少ないことで環境負荷も少ないものである。
【0082】
こうしてウォータージェット処理により一体交絡された樹脂繊維及びパルプ繊維の交絡体は、ネットコンベアNC2によって、更に下流側の乾燥部33へと搬送される。即ち、ネットコンベアNC2の搬送によりスパンレース処理部32を通過し樹脂繊維及びパルプ繊維の一体交絡された集積体は水に濡れた湿潤状態(ウエットな状態)にあるから、スパンレース処理部32の下流側(出口側)に配設された乾燥部33で乾燥させ、水分を除去する。
【0083】
乾燥部33での乾燥方法としては、エアースルードライヤ(熱風通気方式)等のドライヤ、ヒータ(空気中乾燥処理)、赤外線放射法、蒸気缶、真空脱水法、超音エネルギー法、超短波エネルギー法等の非接触型(非圧縮型)乾燥であってもよいし、乾燥ローラやヤンキードライヤ(熱板圧着方式)等の接触型(圧縮型)乾燥であってもよく、複合不織布1の用途等に応じて選択できる。例えば、エアースルードライヤでは、筒状体の回転ローラの周表面に多数の貫通孔が設けられて、その貫通孔から熱風が噴き出すことにより乾燥を行うことから、嵩高な仕上げが可能である。
【0084】
そして、このような乾燥部33での乾燥を終えたところで、樹脂繊維及びパルプ繊維が一体交絡された集積体である複合不織布1が得られる。乾燥後の複合不織布1は、ネットコンベアNC2でその終端まで搬送されて、巻取りロッド部にて巻き取られて一連の工程が完了する。
【0085】
こうして、本実施の形態の結合処理部30では、
図2に示した積層部31にてネットコンベアNC2上に載せられたスパンボンド不織布110の上に湿紙ウェブ120を重ね合わせ、更に、スパンレース処理部32にて、それらにウォータージェットを施すことにより、スパンボンド不織布110の樹脂繊維と湿紙ウェブ120のパルプ繊維を水流絡合させ、そして、乾燥部33にて、水流絡合した水分を除去することで、樹脂繊維及びパルプ繊維が3次元的に一体交絡してなる複合不織布1が形成される。
即ち、本実施の形態では、上述したスパンボンド不織布製造工程及び湿式抄紙ウェブ形成工程の実施の後、ネットコンベアNC2上に載せられたスパンボンド不織布110の上に湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層工程と、積層されたスパンボンド不織布110の樹脂繊維及び湿紙ウェブ120のパルプ繊維を水流交絡によって一体化するスパンレース処理工程と、一体に交絡した樹脂繊維及びパルプ繊維を乾燥する乾燥工程の実施によって複合不織布1が得られる。
【0086】
このように、本実施の形態の複合不織布1は、原料の樹脂チップを溶融・紡糸して得た長繊維をネットコンベアNC1上で堆積させてスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成工程、及び、スパンボンドウェブ110Aを熱エンボス凸部ローラ121と熱平滑ローラ122による熱エンボス加工により部分的に熱溶着する熱エンボス加工工程によりスパンボンド不織布を製造するスパンボンド不織布製造工程と、水Wにパルプ繊維を分散させてパルプ分散液212を調製するパルプ分散液調製工程、及び、パルプ分散液212を長網または短網からなるワイヤーパート部22Aで抄き上げる抄紙工程により湿潤状態の湿紙ウェブ120を形成する湿式抄紙ウェブ工程と、網状(例えば、プラスチックまたはステンレス製)のベルトコンベアであるネットコンベアNC2上にスパンボンド不織布110を載せて、更に、そのスパンボンド不織布110の上に湿潤状態の湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層工程と、ネットコンベアNC2上でスパンボンド不織布110の樹脂繊維とそれに重ねられた湿潤状態の湿紙ウェブ120のパルプ繊維とを水流交絡処理によって一体化するスパンレース処理工程と、ネットコンベアNC2上で一体に交絡された樹脂繊維及びパルプ繊維を乾燥する乾燥工程とによって製造されたものである。
【0087】
また、本実施の形態の複合不織布1は、原料の樹脂チップを溶融・紡糸して得た長繊維をネットコンベアNC1に堆積させてスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成部11、及び、スパンボンドウェブ110Aを熱エンボス凸部ローラ121と熱平滑ローラ122による熱エンボス加工により部分的に熱圧着する熱エンボス加工部12からなるスパンボンド不織布製造部10と、水Wにパルプ繊維を分散させてパルプ分散液212を調製するパルプ分散液調製部21、及び、パルプ分散液212を長網または短網からなるワイヤーパート部22Aで抄き上げる抄紙部22により湿潤状態の湿紙ウェブ120を形成する湿式抄紙ウェブ部20と、網状のベルトコンベアであるネットコンベアNC2上にスパンボンド不織布110を載せて、更に、そのスパンボンド不織布110の上に湿潤状態の湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層部31と、ネットコンベアNC2上でスパンボンド不織布110の樹脂繊維とそれに重ねられた湿潤状態の湿紙ウェブ120のパルプ繊維とを水流交絡処理によって一体化するスパンレース処理部32と、ネットコンベアNC2上で一体に交絡された樹脂繊維及びパルプ繊維を乾燥する乾燥部33とからなる製造装置によって製造されたものである。
【0088】
このような本実施の形態の複合不織布1の製造方法または複合不織布1の製造装置よれば、地合いに優れた複合不織布1が得られる。
これは、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または複合不織布1の製造装置においては、湿潤状態にある湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ね合わせて、そこにウォータージェットを施して樹脂繊維及びパルプ繊維を水流絡合させるものであることで、即ち、スパンボンド不織布110に供給されるパルプ繊維は湿潤状態にある湿紙ウェブ120の形態であることで、スパンレース処理の際にパルプ繊維が容易に運動するためである。
【0089】
即ち、本実施の形態では、まず、スパンボンド不織布110に供給されるパルプ繊維は湿潤状態にある湿紙ウェブ120の形態であるから、このような湿紙ウェブ120ではパルプ繊維のムラが少なくパルプ繊維が均等に存在した地合いのよいものである。そして、そのような湿潤状態にある湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ねることで、ウォータージェットを施すスパンレース処理の前に、即ち、水流絡合の前に、スパンボンド不織布110と湿紙ウェブ120が密着しやすく、また、水の表面張力でスパンボンド不織布110の樹脂繊維と湿紙ウェブ120のパルプ繊維同士が接近しやすく、両者は馴染みが良いものとなる。更に、湿紙ウェブ120のパルプ繊維が湿潤状態にあるから、パルプ繊維は解繊(開繊)が容易な状態にある。つまり、パルプ繊維は軟化して、運動、移動しやすい状態にある。加えて、湿紙ウェブ120のパルプ繊維は比較的ランダムな配列の集積である。
このような状態で、ウォータージェットが施されるから、パルプ繊維は、スパンボンド不織布110の樹脂繊維に容易に貫入して絡合する。特に、湿潤状態にある湿紙ウェブ120では、パルプのセルロース分子が水和しているから、弱いエネルギーで繊維同士を引き離して、スパンボンド不織布110の樹脂繊維に交絡させることができる。即ち、水柱流のエネルギーの多くがパルプ繊維を解繊するのに消費されず、水柱流のエネルギーを効率的にパルプ繊維の運動、移動及びパルプ繊維と樹脂繊維の交絡に使用できるようになるから、パルプ繊維が樹脂繊維の繊維間にムラなく貫入、交絡できる。加えて、水流絡合の前に湿紙ウェブ120のパルプ繊維が湿潤状態にあるから、ウォータージェットの水柱流圧によって、パルプ繊維が飛散し難い。よって、パルプ繊維の地合いに優れ、歩留まりもよいものとなる。
【0090】
こうして、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、湿潤状態にある湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ね合わせそれらを水流絡合させるものであるから、ウォータージェットの水柱流でパルプ繊維が飛散し難く容易に動きやすいため、パルプ繊維がその供給側に偏在することなく、湿紙ウェブ120側からパルプ繊維をスパンボンド不織布110の樹脂繊維に巻き込んで固定でき、厚み方向にパルプ繊維が均等に分散される。更に、スパンボンド不織布110のY軸成分方向(MD方向)及びX軸成分方向(CD方向)におけるパルプ繊維のムラ、バラつきも少なくできるから、厚みの均一性が向上する。したがって、地合いに優れた複合不織布1が得られる。
更に、パルプ繊維がウォータージェットの水柱流で移動しやすいから、加工スピードを速くしても、良好な地合いにできる。故に、地合いを低下させることなく、生産性の向上を可能とする。
【0091】
特に、スパンボンド不織布110に供給するパルプ繊維が湿紙ウェブ120の状態であることで、パルプ繊維の解繊に大きなエネルギーを必要とせず、パルプ繊維が容易に動きやすいため、低水圧の水柱流、好ましくは、2×10
6〜2×10
7Pa、より好ましくは、3×10
6〜5×10
6Pの低水圧のエネルギー量でもパルプ繊維をスパンボンド不織布110の樹脂繊維にムラなく交絡させることができ、低目付でもパルプ繊維の地合い形成が容易となる。更に、低水圧の水流絡合であれば、繊維の飛散、貫通、流失も少ないから、地合い形成の向上に有利であるうえ、材料の歩留まりも向上し、製造コストを抑えることできる。加えて、複合不織布1を柔らかくできる。
【0092】
また、スパンボンド不織布110に供給するパルプ繊維が湿紙ウェブ120の状態であることで、ウォータージェットの水柱流でパルプ繊維が飛散し難いから、スパンボンド不織布110に供給するパルプ繊維の濃度が少なくとも、厚み全体で均質にパルプ繊維を合樹脂繊維に交絡させることができる。更に、本実施の形態のスパンボンド不織布110によれば、エンボス加工されているから、低目付としても、ウォータージェットの水柱流で樹脂繊維が流出、脱落し難く、かつ、熱融着しない部分でパルプ繊維を捕捉しやすく、パルプ繊維の地合い形成を容易とする。
【0093】
よって、低目付でも地合いの良い複合不織布1が得られ、柔軟性の向上を可能とする。また、このように柔らかくしても地合いがよいから、乾燥時(非湿潤状態)のみならず湿潤時(湿潤状態)においても破れや繊維の脱落が生じ難い強度が得られる。加えて、湿潤時で合成繊維とパルプ繊維の硬さ等の違いがあっても、地合いがよいから、濡れたときの違和感も少ない。
【0094】
このように、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、低水圧の水流絡合によって、または、スパンボンド不織布110や湿紙ウェブ120の低目付によって、複合不織布1の形成を低目付、好ましくは、15〜45g/m
2、より好ましくは、15〜40g/m
2、更に好ましくは、20〜30g/m
2として柔らかさ、嵩高感、風合い等を向上させても、地合いが良いから、乾燥時及び湿潤時においても強度が確保され、複合不織布1の柔軟性と強度の両立を可能とする。例えば、スパンボンド不織布110が11〜12g/cm
2、パルプ繊維が28〜29g/cm
2とできる。
【0095】
更に、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、水Wにパルプ繊維を分散させて調製したパルプ分散液212を抄紙して湿潤状態の湿紙ウェブ120を形成し、その湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ね合わせスパンレース処理するものであるから、パルプ分散液212のパルプ繊維濃度の調節で、スパンボンド不織布110に積層するパルプ繊維の濃度、目付量を容易に、かつ、低コストで調節でき、従来の乾燥状態(非湿潤状態)にある紙シートをスパンボンド不織布に重ね合わせてスパンレース処理するものと比較して、複合不織布1において、所望とする目付量の設定、所望の特性に容易に制御できる。即ち、複合不織布1の目的、用途に応じて目付量、機械的強度、保水性、吸水性、嵩高加工等の特性の任意の設定を容易とする。加えて、低コストで製造できることになる。
【0096】
特に、従来、乾燥状態(非湿潤状態)にある紙シートをスパンボンド不織布に重ね合わせてスパンレース処理するものでは、紙粉が飛散しやすかった。このようにスパンレース処理時にパルプ繊維の流失が多いと、用途に応じて吸湿性、強度等の所望の特性を備えた複合不織布1を設計するのに当たり、スパンボンド不織布110の樹脂繊維に交絡させるパルプ繊維量の設定において、パルプ繊維の流失分を考慮してスパンレース処理させる紙シートのパルプ繊維量、目付量を選定する必要があり、更には、供給する紙シートの目付量や厚みによっても、スパンボンド不織布110に交絡させることができるパルプ繊維量が変動することから、紙シートの最適な選定が容易でなく、複合不織布1の設計、特性の制御が容易でない。
しかし、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、水Wにパルプ繊維を分散させて調製したパルプ分散液212を抄紙してなる湿潤状態の湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ね合わせ、それらをスパンレース処理するものであるから、湿紙ウェブ120のパルプ繊維量、目付量の調節が容易であるうえ、スパンレース処理時にパルプ繊維が流失し難く、また、偏在し難くて厚み全体で均質にパルプ繊維を樹脂繊維に交絡できるから、樹脂繊維とパルプ繊維の配合比の設定が容易で、複合不織布1の設計、特性の制御が容易になる。即ち、複合不織布1の用途等に応じ、スパンボンド不織布110の樹脂繊維と湿紙ウェブ120のパルプ繊維の配合比や材料変更を行うときの切り替えが容易にできる。
【0097】
このように本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、スパンボンド不織布110に湿潤状態の湿紙ウェブ120を重ね、それらをスパンレース処理するものであることで、スパンレース処理時にパルプ繊維が動きやすいから、低目付であっても高目付であっても地合いがよい。そして、地合いが良いことで、強度を確保できるから、パルプ繊維と樹脂繊維の割合を広範囲に設定でき、また、低目付量から高目付量まで広範囲に設定でき、幅広い特性の付与が可能となる。
【0098】
そして、本実施の形態では、複合不織布1におけるパルプ繊維の含有量が、例えば、20質量%〜90質量%の範囲内、好ましくは、30〜85質量%、より好ましくは、55〜85質量%の範囲内とされ、樹脂繊維の含有量が、例えば、10質量%〜80質量%の範囲内、好ましくは、15〜70質量%、より好ましくは、15〜45質量%の範囲内とされる。パルプ繊維の含有量が少なすぎると、所望とする保水性、吸水性が得られない一方で、合成樹脂の含有量が少なすぎると、所望の強度が得られない。特に、本実施の形態では、パルプ繊維をムラなく分散し地合いよく樹脂繊維に交絡できるから、パルプ繊維の含有量を高めても、乾燥時(非湿潤時)のみならず、濡れたときでも所定の強度が得られ、吸水性・保水性と強度との両立を可能とする。また、例えば、パルプ繊維を75〜85質量%、樹脂繊維が15〜25質量%とし、パルプ繊維の含有量を多くしても、地合いがよいから、特に濡れたときでも所定の強度を確保できる。
【0099】
このように湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ね合わせてスパンレース処理するものでは、ウォータージェットの水柱流でパルプ繊維が動きやすく、また、ウォータージェットの水柱流によるパルプ繊維の飛散も少ないから、スパンボンド不織布110に供給するパルプ繊維を増やしたときでも、パルプ繊維が偏り難くて樹脂繊維にムラなく貫入、交絡でき、パルプ繊維の増量に見合った特性、即ち、吸水性、保水性の向上を得ることができ、かつ、パルプ繊維が均一に分散するから、濡れたときでも破れ難い強度が得られ、使用時の強度及び形態安定性に優れる。また、歩留まりがよく低コストで製造できる。
即ち、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または複合不織布1の製造装置によれば、パルプ繊維の地合い形成が向上することで、パルプ繊維を増量してもパルプ繊維が偏在しないから、パルプ繊維の偏在部分における過多の吸水による強度の低下が阻止され、濡れたときでも破れ難い。また、パルプ繊維の偏在部分における過多の吸湿による複合不織布1の変形(うねり、カール等)も生じ難い。故に、強度を損なうことなく、吸水性、保水性の向上を可能とする。
【0100】
こうして、本実施の形態の複合不織布1の製造装置によれば、積層部31にてネットコンベアNC2の支持網上にスパンボンド不織布110を載せ、更に、その上面に、湿潤状態にあるパルプ繊維の湿紙ウェブ120を積層し、湿紙ウェブ120の上面側からスパンボンド不織布110側に向けてウォータージェットを施すことにより、湿紙ウェブ120を形成しているパルプ繊維とスパンボンド不織布110を構成している樹脂繊維とを水流交絡させるものである。
また、本実施の形態の複合不織布1の製造方法によれば、ネットコンベアNC2の支持網上にスパンボンド不織布110を載せ、更に、その上面に、湿潤状態にあるパルプ繊維の湿紙ウェブ120を積層し、湿紙ウェブ120の上面側からスパンボンド不織布110側に向けてウォータージェットを施すことにより、湿紙ウェブ120を形成しているパルプ繊維とスパンボンド不織布110を構成している樹脂繊維とをスパンレース処理するものである。
【0101】
こうして本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、樹脂繊維にパルプ繊維がムラなく交絡された複合不織布1を得ることができる。このようにして得られた本実施の形態の複合不織布1は、パルプ繊維の親水性によって、吸水性や保水性がよく、また、ポリプロピレン等の樹脂繊維によって吸油性がよく、更に、水や油等の液体を吸収した際でも強度、剛性の低下が抑制され、破れにくい適度な強度、形態安定性を有し、使用しやすい。特に、パルプ繊維を地合いよく樹脂繊維に交絡し一体化されるから、非湿潤状態のみならず、水等の液体を吸収した湿潤時の状態でも強度の低下が少ない。使用時においても、繊維の脱落が生じ難く、また、破れ難いものである。更に、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または複合不織布1の製造装置によれば、このようにパルプ繊維が樹脂繊維にムラなく貫入、交絡してパルプ繊維の地合い形成が向上することで、吸水速度(吸油速度)の向上や、吸水性(吸油性)、保水性(保持性)の向上を可能とする。フィルター性能を持たせる用途であれば、濾過速度の向上も可能とする。
【0102】
そして、本実施の形態では、スパンボンド不織布110に供給されるパルプ繊維が湿潤状態にある湿紙ウェブ120であるから、スパンボンド不織布110に馴染みやすく、また、スパンレース処理時に湿紙ウェブ120を形成しているパルプ繊維が動きやすく、スパンボンド不織布110の樹脂繊維にパルプ繊維がムラなく貫入して交絡し、パルプ繊維の地合いが良くなる。よって、低水圧の水流絡合によって、または、スパンボンド不織布110や湿紙ウェブ120の低目付によって、複合不織布1の形成を低目付としても、地合いがよいから、非湿潤状態のみならず湿潤状態であっても、所定の強度の確保を可能とし、使用時に破れ難いものとなる。即ち、低目付によって柔軟で風合いに優れるものとしても、水、薬剤、化粧量等の液体が浸み込んだときの湿潤強度を満足でき、使用時に破れ難いものとなる。そして、低目付とした複合不織布1では、それを把持したときに柔らかいソフトな感触であり、特に、人体等の柔らかいものに使用されたりする用途では肌触りが柔らかくて肌当たりがよく、また、毛羽立ちがなく低刺激でソフトな感触を得ることができる。更に、床上のほこり、髪の毛、固形ゴミ、しみ汚れ、付着液体等の異物の除去を行う清掃や、床の保護、床のつや出し等、床の手入れに用いられる用途においては、清掃や手入れの対象物の凹凸形状等にも追従、密着し軽い力で拭き取り、手入れの高い効果を得ることが可能となる。加えて、地合いの均一性がよいからそれらの安定した性能が得られる。
【0103】
即ち、このような本実施の形態の複合不織布1は、パルプ繊維と連続樹脂繊維がムラなく交絡、一体化しており、均一な開孔パターンを有した強度に優れるものであるから、例えば、床材の保護や、床材のつや出しや、床材の清掃や、テレビ、パソコン、冷蔵庫等の家電機器、キッチン周り、眼鏡やレンズ等の光学機器、窓、車の清掃等として使用される清掃シート(クリーニングシート、使い捨て雑巾、ワイパー等の化学雑巾)、ウエットティッシュ、使い捨てお手拭き(おしぼり)、体拭き、化粧落し、フェイスマスク、防護服の生地、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、紙おむつ、ペット用シート、おしぼり、キッチンペーパー(キッチン用タオル)、テーブルカバー、ディナー用マット等の雑貨用シート、ドリップ吸収材、包装材料、自動車の内装、土木建築資材、各種フィルター、産業用マスク、ワイピングクロス等の用途に好適である。
【0104】
これらの用途では、必要に応じて、水やプロピレングリコールのような湿潤剤や、アルコール類、パラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム等の抗菌剤、防かび剤、香料等の薬剤や、化粧料等が付与されて使用されるが、本実施の形態の複合不織布1では、パルプ繊維が地合いよく合成樹脂繊維に交絡し一体化されていることで、それら液体が浸透しても、強度の低下が少なく、作業時や使用時に破れ難い。更に、水、薬液、化粧料等が添加されウェットな状態で用いる用途であっても、パルプ繊維が複合不織布1の片面に偏在せず、地合いがよいから、全体の吸水性、保水性を向上できるうえ、吸収した水分が蒸発し難く、乾燥し難いものとなる。また、使い捨て雑巾、ワイパー等の水分の拭き取りや、防水シーツ、枕カバー、介護シーツ、紙おむつ、ペット用シートの水分を吸収させる使途に供するものであっても、水分、液分の吸収による強度の低下が少なく、作業時や使用時に破れ難い。パルプ繊維が偏在しないから、嵩高で柔らかく、風合いもよくなる。
【0105】
特に、低水圧の水流絡合によって、または、スパンボンド不織布110や湿紙ウェブ120の低目付によって、任意の嵩高の厚みで、柔らかく、風合いをよくした複合不織布1では、人体等の柔らかいものに使用されたりする用途において、肌触りが柔らかいソフトな感触を得ることができる。また、清掃や手入れの対象物の凹凸形状等にも追従、密着し軽い力で拭き取り、手入れの高い効果を得ることが可能である。そして、柔らかく、風合いをよくしても、地合いがよいから、水分、液分の吸収による強度の低下が少なく、作業時や使用時にも破れ難い。
【0106】
更に、ポリプロピレン等の樹脂繊維で形成されるスパンボンド不織布110では縦方向及び横方向の繊維の配向性が小さいうえ、その上に重ねるパルプ繊維の湿紙ウェブ120においてもそのパルプ繊維の配向性が小さいものである。したがって、得られる複合不織布1においては、自然の縦伸び(Y軸方向)や横縮(X軸方向)をすることなく乾燥引張強度の縦横比差も極めて小さい。
【0107】
また、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置によれば、パルプ分散液212は、パルプ繊維からなる所定厚みの板パルプPを水Wに入れて攪拌することにより調製されるから、板パルプPからは離解がスムーズであり、生産効率がよく、また、抄紙時にフロックを形成し難く、低コストで抄紙時において地合いを均一に整えることができる。特に、パルプ繊維及びポリプロピレン繊維の組み合わせであると、安価にできる。
【0108】
なお、湿紙ウェブ120を形成するパルプ繊維は、例えば、その幅が10〜60μmである。このパルプ繊維は叩解パルプまたは未叩解パルプの何れであってもよいが、叩解パルプであると、パルプ繊維が樹脂繊維に交絡しやすく、強度をより向上できる。一方で、未叩解パルプであると、パルプ分散液2121を長網または短網で抄き上げたときの湿紙ウェブ120のパルプ繊維間の結合を緩くできるから、スパンレース処理時に、パルプ繊維が動きやすく、地合いをより向上できる。
【0109】
また、本実施の形態の複合不織布1の製造方法または製造装置では、このようにスパンボンド不織布110の樹脂繊維と湿紙ウェブ120のパルプ繊維とを水流交絡によって一体化するものであるから、接着剤を付与することなく、繊維の絡合によって所定の強度が得られ、接着剤による接合よりも吸収性が良く、また、非湿潤状態または湿潤状態においても柔軟でソフトな感触、風合いが良好な複合不織布1を形成できる。
【0110】
以上説明してきたように、本実施の形態の複合不織布製造装置は、樹脂の長繊維からなるスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成部11及びスパンボンドウェブ110Aの樹脂繊維を熱エンボスロール121,122により部分的に熱溶着する熱エンボス加工部12によって樹脂の長繊維からなるスパンボンド不織布110を形成するスパンボンド不織布製造部10と、水Wにパルプ繊維を分散させてパルプ分散液212を調製するパルプ分散液調製部21及びパルプ分散液212をワイヤーパート部22Aの短網または長網上に抄き上げる抄紙部22によってパルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブ120を形成する湿式抄紙ウェブ形成部20と、ネットコンベアNC2上にスパンボンド不織布110を載せ、更に、そのスパンボンド不織布110の上に湿潤状態にある湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層部31と、スパンボンド不織布110の樹脂繊維とそれに重ね合わせた湿紙ウェブ120のパルプ繊維とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理部32と、一体に交絡された樹脂繊維及びパルプ繊維を乾燥する乾燥部33とを具備するものである。
【0111】
また、本実施の形態の複合不織布製造方法は、樹脂の長繊維からなるスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成部11及びスパンボンドウェブ110Aの樹脂繊維を熱エンボスロール121,122により部分的に熱溶着する熱エンボス加工部12によって樹脂の長繊維からなるスパンボンド不織布110を形成するスパンボンド不織布製造工程と、水Wにパルプ繊維を分散させてパルプ分散液212を調製するパルプ分散液調製工程及びパルプ分散液212をワイヤーパート部22Aの短網または長網上に抄き上げる抄紙工程によってパルプ繊維からなる湿潤状態の湿紙ウェブ120を形成する湿式抄紙ウェブ形成工程と、ネットコンベアNC2上にスパンボンド不織布110を載せ、更に、そのスパンボンド不織布110の上に湿潤状態にある湿紙ウェブ120を重ね合わせる積層工程と、スパンボンド不織布110の樹脂繊維とそれに重ね合わせた湿紙ウェブ120のパルプ繊維とを水流交絡によって一体化するスパンレース処理工程と、一体に交絡された樹脂繊維及びパルプ繊維を乾燥する乾燥工程とを具備するものである。
【0112】
したがって、本実施の形態の複合不織布製造装置または複合不織布製造方法によれば、積層部31にてスパンボンド不織布110に湿潤状態にある湿紙ウェブ120を重ね、それらをスパンレース処理部32にて水流交絡させるから、スパンレース処理の前に湿紙ウェブ120及びスパンボンド不織布110はパルプ繊維及び樹脂繊維が水の表面張力で接近して馴染みが良く、更に、湿紙ウェブ120ではパルプ繊維の結合が弱い状態にあるから、スパンレース処理するウォータージェットにより、パルプ繊維が容易に動いてスパンボンド不織布110の樹脂繊維に貫入し、樹脂繊維間に捉えられ、交絡する。これより、パルプ繊維のムラ、偏在が抑制され、地合いがよい複合不織布1を形成できる。
【0113】
即ち、スパンボンド不織布110の樹脂繊維に交絡させるパルプ繊維が湿潤状態の湿紙ウェブ120の形態でスパンボンド不織布110に供給されることで、スパンレース処理のウォータージェットでパルプ繊維が動きやすく、低水圧の水柱流でも、パルプ繊維がスパンボンド不織布の樹脂繊維にムラなく貫入して、交絡できるから、低水圧の水流絡合による低目付であっても地合いがよいものとなる。そして、このような低水圧の水流絡合によって、或いは、スパンボンド不織布110や湿紙ウェブ120のパルプ繊維の低目付によって、複合不織布1の形成を低目付とし、柔らかさ、嵩高感、風合いを向上させても、地合いが良いから、乾燥時及び湿潤時における強度が確保される。よって、複合不織布1の柔軟性と強度の両立を可能とする。
【0114】
また、本実施の形態の複合不織布製造装置または複合不織布製造方法によれば、水Wにパルプ繊維を分散させたパルプ分散液212を抄き上げて湿紙ウェブ120を形成し、その湿紙ウェブ120をスパンボンド不織布110に重ねあわせ、スパンレース処理するものであり、このような湿紙ウェブ120の形成では、水Wにパルプ繊維を分散させる濃度調整により、湿紙ウェブ120のパルプ繊維の濃度、目付制御が容易である。加えて、スパンボンド不織布110に重ねる湿紙ウェブ120のパルプ繊維は、湿潤状態にあるから、ウォータージェットによる飛散も少なく、また、上述したように、パルプ繊維の地合い形成に優れ、パルプ繊維の偏在や流失が少ないから、スパンボンド不織布110に重ね合わせる湿紙ウェブ120のパルプ繊維の供給量が、複合不織布1の特性に反映しやすいものである。故に、樹脂繊維とパルプ繊維の配合比の設定が容易で、複合不織布1の目付量、機械的強度、保水性、吸水性等の特性の任意の設定が容易にできる。
【0115】
特に、積層部31においてネットコンベアNC2上に載せられたスパンボンド不織布110に重ね合わせる湿紙ウェブ120の含水率は、好ましくは、60質量%〜80質量%の範囲内であると、十分な水分量によって、湿紙ウェブ120のパルプ繊維間の結合が弱く、かつ、水の表面張力で樹脂繊維とパルプ繊維同士を接近させることができるから、スパンボンド不織布110の両面で湿紙ウェブ120を重ね合わせなくとも、スパンボンド不織布110片面に湿紙ウェブ120を重ね合せるのみで、厚み方向で均一にパルプ繊維をスパンボンド不織布110の樹脂繊維に貫入させ、交絡させることができる。また、スパンボンド不織布110を低目付とした場合でも、湿紙ウェブ120の水分及び重みで樹脂繊維が脱落、流出することがない強度である。よって、表裏面の差が殆どなく地合いに極めて優れた複合不織布1が得られる。
【0116】
そして、本実施の形態の複合不織布製造装置によれば、スパンボンド不織布製造部10は、樹脂繊維からなるスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成部11と、スパンボンドウェブ110Aの樹脂繊維を熱エンボスロール121,122によって部分的に熱溶着する熱エンボス加工部12とによって、スパンボンド不織布110を形成する。
また、本実施の形態の複合不織布製造方法によれば、スパンボンド不織布製造工程は、樹脂繊維からなるスパンボンドウェブ110Aを形成するスパンボンドウェブ形成工程と、スパンボンドウェブ110Aの樹脂繊維を熱エンボスロール121,122によって部分的に熱溶着する熱エンボス加工工程とによって、スパンボンド不織布110を形成する。
【0117】
これより、本実施の形態のスパンボンド不織布110では、積層部31にて、含水率が60質量%〜80質量%の範囲内の湿潤状態にある湿紙ウェブ120が重ね合わされて、その水分がスパンボンド不織布110に浸透し、また、湿紙ウェブ120の重みを受け、更にその状態でスパンレース処理されても、スパンボンド不織布110の熱融着点(エンボス)によって強度、形態安定性が高いことで、また、伸びが抑えられていることで、所望の低目付けとしたスパンボンド不織布110であってもその樹脂繊維の脱落が生じ難く、そして、樹脂繊維の流動、移動が少ないも熱融着されていない部分の樹脂繊維相互間は動きが自由な状態で集積されているため、その樹脂繊維間にパルプ繊維をムラなく貫入できる。故に、スパンボンド不織布110を低目付とした場合でも、強度を確保できると共に、安定して地合いのよい複合不織布1が得られる。よって、複合不織布1を低目付により柔らかくした場合でも、水、薬剤、化粧量等の液体が浸み込んだときの湿潤強度を良好に維持でき、使用時に破れ難いものとなる。即ち、複合不織布1の柔軟性及び強度の向上を可能とする。また、熱エンボスによって厚手感や嵩高感を出すことができる。
【0118】
なお、このときのエンボス加工は、例えば、スパンボンド不織布110の移送方向のY軸成分に対して直交するX軸成分は、Y軸成分方向に長く、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、融合しない部分の幅Xbとするとき、Xa<Xbの範囲とし、また、Y軸成分方向の熱融着部分の長さYaと、Y軸成分方向の熱融着しない部分の長さYbとは、Y軸成分方向の一直線上の配置であり、熱融着部分の長さYaのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着しない部分の長さYbとなり、かつ、熱融着しない部分の長さYbのY軸成分方向の1/2位置の両側は熱融着部分の長さYaに設定する。
【0119】
このようなエンボスでは、熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着したエンボス加工であるから、X軸成分方向及びY軸成分方向は勿論、斜めの外力に対しても、縦伸びや横縮みをしない腰が強いものとなる。即ち、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xaと熱融着しない部分の幅XbをX軸成分方向に張力を加えると、熱融着しない部分の幅Xb及び熱融着しない部分の長さYbに外力が加わり、X軸成分方向に最も引っ張り力が弱くなるが、他の斜め角度またはY軸成分方向に加えられた外力は、エンボス加工する部分の幅Xaとの面積Xa・Yaで分散されて外力に耐える構造となっている。
【0120】
こうして、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的に加熱される凸部121aが形成され熱エンボス凸部ローラ121と熱平滑ローラ122により熱融着部分の幅Xaと熱融着部分の長さYaの面を熱融着するエンボス加工を行うものであるから、縦伸びや横縮みが内部歪となって対抗するから、全体的に縦伸びや横縮みに対する抵抗力が強く形状変化に至らない。
【0121】
即ち、乾燥時であっても、湿潤時であっても、Y軸成分方向の熱融着しない部分の幅Ybの両先端が隣接の熱融着部分の長さYaよりも短い両端内にあり、熱融着部分の長さYaの両端に外力が加わらないので、製品使用時にも柔らかく、柔らかくても繊維の脱落がなく縦伸びや横縮みをしない腰が強い嵩高加工となる。したがって、使用時に柔らかくて繊維や製品の脱落がなく、縦伸びや横縮みをしない腰が強いもので嵩高加工及び機械的強度を任意に形成できる。
特に、X軸成分方向の熱融着部分の幅Xa、Y軸成分方向の熱融着部分の幅Yaによって、部分的にエンボス加工されることにより熱融着される融着部が形成されて縦伸びや横縮みをしないから、スパンレース処理時における樹脂繊維の流動、移動を抑え、地合い形成をよくできる。
【0122】
また、本実施の形態の複合不織布製造装置または複合不織布製造方法によれば、スパンボンド不織布110は、その目付量が5〜20g/m
2であると、湿潤状態にある湿紙ウェブ120が重ね合わされても破れ難い強度を有し、かつ、優れた地合いを確保でき、また、柔軟性を高くできる。特に、複合不織布1が濡れたときでもやわらかいものとなる。
【0123】
更に、本実施の形態の複合不織布製造装置または複合不織布製造方法によれば、スパンレース処理部32で水流交絡させるときの水柱流の水圧は、2×10
6〜2×10
7Paの範囲内であると、パルプ繊維の飛散を防止して、歩留まりを向上できると共に、低目付を可能とし、ごわつきを防止して、柔軟性や嵩高さをよくし、風合いよく仕上げることができる。また、低水圧の水柱流では、繊維表面へのダメージ、毛羽立ちも少ないことで、耐久性の向上も可能である。
【0124】
なお、本発明を実施する場合には、乾燥部33で熱エンボスロールによる乾燥を行ってエンボス加工を施してもよいし、乾燥部33の後に熱エンボス加工部を設けてもよい。乾燥部33の後に熱エンボスした場合には、エンボスの形状保持性がよいものとなる。また、より効果的に繊維の脱落を防ぎ、加工適性が良い状態になり伸びを抑えること可能となる。
【0125】
ところで、本発明を実施する場合には、スパンボンド不織布110は、1層に限定されることはなく、2層以上が複数積層してなるものとしてもよい。なお、不織布層の「層」とは厚みが「0」でない不織布を意味する。2層以上が複数積層は、例えば、スパンボンド不織布層のみを直接「スパンボンド不織布層」+「スパンボンド不織布層」として2層以上が重ね合わせられたものであってもよいし、「スパンボンド不織布層」と「スパンボンド不織布層」との間に「メルトブロー不織布層」を積層した「スパンボンド不織布層」+「メルトブロー不織布層」+「スパンボンド不織布層」の組み合わせでもよい。結果的に、「スパンボンド不織布層」を有しておれば、他の不織布層、合成樹脂層を有していてもよい。スパンボンド不織布の配設位置及びそれらの厚みからそれぞれの性能を発揮する複合層を作ることができる。
なお、「メルトブロー不織布層」とは、溶融した熱可塑性プラスチック樹脂を押出機の後に設置し、その設置したダイ(紡口)から、ネットコンベアまたは捕集スクリーン上に高速高温の気流を吹き出すことにより、ファイバーのサイズがφ1μm〜15μm、通常、2〜4μmの自己接着性ウェブを作りだすことで形成されるものである。2層以上の重ね合わせは、通常、不織布層同士が熱圧着、熱融着されてなるものである。即ち、各層のウェブを積層し、熱エンボス加工部12で熱エンボスロール121,122によって積層されたウェブを熱圧着、熱融着することで全層融合接着した2層以上の積層とすることができる。この場合には、積層する各ウェブの目付量は均一とし、各層の柔らかさを決定している。本発明を実施する場合には、スパンボンド不織布110を2層以上にするか否かは用途によって決定される。
【0126】
更に、湿紙ウェブ120は、パルプ繊維のみに限定されず、再生繊維、ガラス繊維、合成樹脂繊維等の異種繊維を混合した複数種の繊維からなる湿式ウェブ120とすることも可能であり、目的に応じ、複数の繊維を任意の割合で混合することも可能である。これらの複数種の混合により各種繊維の性能による幅広い特性、機能性を容易に持たせことができる。
【0127】
なお、本発明を実施するに際しては、複合不織布製造装置や複合不織布製造工程のその他の部分の構成については、上記実施の形態に限定されるものではない。
また、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は製造コスト、製造が容易な形態等から決定した値であり、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。