(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記含侵工程において、前記誘導ロールにより前記原紙シートが屈曲する角度が90度以上120度以下であることを特徴とする、請求項4に記載の抗菌剤含有シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の各実施形態では、同一又は対応する部分については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0015】
また、原反ロールなど円筒形状を備えるものについては、中心軸と垂直に交わる平面において、中心軸から離間する方向を径方向と、円筒外周に沿う方向を周方向と表記する。
【0016】
図面の中の白抜きの矢印は抗菌剤36の噴霧方向を示し、白抜きの点線矢印は温風の吹き出す方向を示す。そしてそれら以外の矢印は、原紙シート10Aの流れる方向を示す。
【0017】
(実施形態の概要)
本実施形態の概要について、
図1を用いて説明する。原紙シート10Aは、厚みが400〜1100マイクロメートルであり、かつ坪量が1平方メートルあたり12g以上20g以下の軽量で薄い単層のシートである。本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1は、原紙シート10Aから抗菌剤含有シートを製造する。
【0018】
抗菌剤含有シート製造装置1は、2つの噴霧ノズル32を備え、原紙シート10Aの両面に抗菌剤36を噴霧する。抗菌剤は塩化ベンザルコニウムを主成分として含有する。紙ナプキン10Bにおいて、当該塩化ベンザルコニウムの含有量は、前記原紙シートの重量に対して0.005重量パーセント以上0.0200重量パーセント(以下「%」と表記する。)以下になるよう調製される。
【0019】
(実施形態の詳細)
抗菌剤含有シートの製造方法の一つの実施形態として、抗菌剤を含有する紙ナプキン10Bの製造方法について説明する。本実施形態の紙ナプキンの製造には抗菌剤含有シート製造装置1を用いる。以下、詳細を説明する。
【0020】
<抗菌剤含有シート製造装置1>
図1に示すように、本実施形態における抗菌剤含有シート製造装置1は、原反ロール10から送り出される原紙シート10Aを加工するものであり、両面エンボスロール24等のロール20のほか、塗布機30、乾燥機40、紙折機50および断裁機60を備える。以下、それぞれについて説明する。
【0021】
<原反ロール10>
原反ロール10は原紙シート10Aを供給するロールである。本実施形態において、原反ロール10は回転駆動力を有しない、いわゆるフリーロールである。原反ロール10を製造するまでの工程(叩解工程や抄紙工程)には公知の手法を用いることができるため省略する。
なお、原反ロール10もロールの一種であるが、便宜上、後述するロール20とは分けて表記する。
【0022】
<原紙シート10A>
原紙シート10Aは原反ロール10から送り出される単層のシートである。「単層の」とは、シートが2層以上に積層されていないことを意味し、例えばプライ加工されないことを意味する。
原紙シート10Aは原反ロール10と非連続的な別個のものではなく、原反ロール10から送り出されたものを便宜上このように表現する。
【0023】
原紙シート10Aはパルプを原料として含有する。原料となるパルプに特に規定はなく、広葉樹繊維を原料とするもの(広葉樹パルプ)、針葉樹繊維を原料とするもの(針葉樹パルプ)、またはそれらを配合したものが適宜用いられる。また原料となるパルプは、古紙から再利用されるものであっても良い。以下、特に区別する必要がない場合は、「パルプ含有原紙シート」を単に「原紙シート」と記載する。
【0024】
なお、本実施例における原紙シート10Aの原料におけるパルプの割合は100%である。しかし、パルプ繊維以外の繊維として、レーヨン繊維や合成繊維などが配合されていても良い。さらに、原料のパルプには凝集剤、接着剤、剥離剤等の添加剤が含まれていても良い。
【0025】
原紙シート10Aの坪量は1平方メートルあたり13g以上20g以下が好ましく、14g以上16g以下がより好ましく、14g以上15g以下が最も好ましい。
原紙シート10Aの坪量が1平方メートルあたり13g未満であると、製造工程において原紙シート10Aが破断しやすくなる。
一方、原紙シート10Aの坪量が1平方メートルあたり20gを超えると、抗菌剤含有シートがかさ高くなり、保存や運搬に不便である。原紙シート10Aの坪量が1平方メートルあたり14g以上15g以下の範囲にあると、シートのかさ高さが抑えられ、かつ製造安定性が高くなる。
なお坪量は、JIS規格P8124:2011に基づく紙及び板紙−坪量の測定方法により評価することができる。
【0026】
また、原紙シート10Aの厚みは400マイクロメートル以上1100マイクロメートル以下であることが好ましい。原紙シート10Aの厚みが400マイクロメートルより薄い場合、製造工程で破断しやすくなる。一方で、原紙シート10Aの厚みが1100マイクロメートル以上であるとかさ高くなるため、保存や運搬に不便である。なお、ここで言う厚みは原紙シート10Aの単層の厚みを指す。
【0027】
<ロール20>
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1は、原紙シート10Aを搬送するためのロールを備える。シートの流れる方向を誘導する誘導ロール22のほか、原紙シート10Aにエンボス加工を施すための両面エンボスロール24を備える。
【0028】
<誘導ロール22>
誘導ロール22は原紙シート10Aの流れる向きを変えるための金属ロールである。市販のものを適宜用いることができるが、平滑性が高く、耐久性や走行安定性が高いものが好ましい。
なお、本実施形態の誘導ロール22は回転駆動力を有しないいわゆるフリーロールであるが、モータ等を備え回転駆動力を有するものを用いても良い。
誘導ロール22により、原紙シート10Aの流れる方向を自由に設計できる。これにより、製造装置の小型化を図ることができる。
【0029】
さらに、後述する抗菌剤36の噴霧後、当該原紙シート10Aの抗菌剤36塗布面が誘導ロール22に押圧されることにより、抗菌剤36を原紙シート10Aに十分含侵させることができる。
即ち、抗菌剤36の塗布後、原紙シート10Aを誘導ロール22に少なくとも1度通過させることにより、抗菌剤36が原紙シート10Aに十分に含侵する。これにより、原紙シート10Aがその後の工程で他の素材に触れたとしても、抗菌剤36が脱離しない。例えば紙ナプキン10B同士が積層されたとしても、抗菌剤36が他の紙ナプキン10Bに付着しない。
上記の観点から、抗菌剤36の塗布後、乾燥工程に入る前に誘導ロール22を通過させることが好ましい。
【0030】
<両面エンボスロール24>
両面エンボスロール24は、原紙シート10Aに型付けをするための金属ロールである。両面エンボスロール24はエンボスロール242とペーパーロール244を備える。エンボスロール242とペーパーロール244で原紙シート10Aを押圧することにより、エンボス加工を行う。
【0031】
ペーパーロール244はモータによる回転駆動力を備える。よって、原紙シート10Aはエンボスロール242とペーパーロール244により挟持され、さらにプレスロール28の回転により張力を得て原紙ロール10Aから送り出される。
【0032】
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1により製造された紙ナプキン10Bは、エンボス加工による装飾を備える。エンボス加工により、紙ナプキン10Bに意匠性を付与することができる。また、エンボス加工は紙ナプキン10B同士の接触面積を低下させて取り出しやすくする効果があるほか、紙ナプキン10Bに滑り止めや、破断しにくくする効果も付与する。
【0033】
<プレスロール26>
プレスロール26は、後述する紙折機50と断裁機60の間に配設される金属ロールである。
図1に示すように、プレスロール26は上下一対のロールを備える。プレスロール26の上側のロールは駆動力を備えないいわゆるフリーロールであり、下側のロールはモータによる回転駆動力を備える。本実施形態におけるモータはVSモータである。
プレスロール26に挟持された原紙シート10Aは、プレスロール28の回転により張力を得て原紙ロール10Aから送り出される。
【0034】
<塗布機30>
塗布機30は抗菌剤36を原紙シート10Aに塗布する装置である。本実施形態において、塗布機30は抗菌剤36を噴霧により塗布する噴霧器である。本実施形態の塗布機30は、噴霧ノズル32と貯蔵タンク34、および不図示のポンプを備える。抗菌剤36は貯蔵タンク34からポンプにより移液され、噴霧ノズル32を通じて原紙シート10Aに噴霧される。
【0035】
<噴霧ノズル32>
噴霧ノズル32は抗菌剤36を噴霧するノズルである。ノズルは抗菌剤36を噴霧可能なものであれば市販のものが適宜用いられる。そのようなノズルとして例えば、液体を扇形扁平形に噴射することが可能なフラット型、液体を円錐形に噴射が可能なコーン型、または開口部にスリットを備えるスリット型などが挙げられる。また、1流体方式のノズルのほか、2流体方式のノズルを用いても良い。
このような噴霧ノズルとして、扶桑精工株式会社製の自働スプレーガン(ルミナ(登録商標)シリーズ)が挙げられる。
図1に示すように、本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1は第一の噴霧ノズル322および第二の噴霧ノズル324を備えるが、各ノズルは同一の型であっても良いし、異なる型であっても良い。
【0036】
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1は噴霧する部分が2つあれば良く、1つの噴霧ノズル32を備える塗布機30を2台用意しても良いし、1台の塗布機30のノズル部分を分岐させて2つの噴霧ノズル32としても良い。
【0037】
<第一の噴霧ノズル322>
第一の噴霧ノズル322は原紙シート10Aの一方の面に抗菌剤36を噴霧するノズルである。
図1に本実施形態における第一の噴霧ノズル322の配設状態を示す。第一の噴霧ノズル322近傍において、原紙シート10Aは右から左へと地面から略並行方向に流れており、第一の噴霧ノズル322はその上側に配設される。第一の噴霧ノズル322の噴出口は原紙シート10Aの一方の面側に対向する。
【0038】
<第二の噴霧ノズル324>
第二の噴霧ノズル324は原紙シート10Aの他方の面に抗菌剤36を噴霧するノズルである。
図1に本実施形態における第二の噴霧ノズル324の配置を示す。第二の噴霧ノズル324近傍において、原紙シート10Aは下から上へと略垂直方向に流れており、第二の噴霧ノズル324はその側面(図中左側)に配設される。第二の噴霧ノズル324の噴出口は原紙シート10Aの他方の面側に対向する。
【0039】
原紙シート10Aを略垂直方向に流し、横から抗菌剤36を噴霧する工程を加えることにより、製造装置の小型化が可能になる。また、一方の面に抗菌剤36を塗布した後、誘導ロール22を介して原紙シート10Aの流れる方向を変え、略垂直方向に流れる原紙シート10Aに対して横から抗菌剤36を噴霧することにより、原紙シート10Aが破断しにくくなる。
【0040】
これは、第一の噴霧ノズル322による噴霧と第二の噴霧ノズル324による噴霧との距離が開いていることにより、その間に抗菌剤36が原紙シート10A内に浸透しているためと考えられる。
【0041】
なお、誘導ロール22により流れる方向が変化する前の原紙シート10Aと、変化した後の原紙シート10Aの成す角であって、原紙シート10Aの一方の面側が成す角と他方の面側が成す角のうち小さい方の角(以下、「誘導ロール22により原紙シート10Aが屈曲する角度」とする。)は90度以上120度以下であることが好ましい。この場合、原紙シート10Aの抗菌剤塗布面が誘導ロール22によって押圧されるため、抗菌剤が原紙シートに含侵しやすくなる。
この角度が120度を超えると押圧力が不十分である。一方で、この角度が90度未満であると、水分を吸った原紙シートが張力により破断する場合がある。
【0042】
<貯蔵タンク34>
貯蔵タンク34は抗菌剤36を貯蔵するタンクである(不図示)。本実施形態における貯蔵タンク34は抗菌剤36用のタンクのみ備えるが、2種以上の抗菌剤を使用する場合は2つ以上のタンクを用いても良い。
貯蔵タンク34にはポンプと接続する液体取込口(不図示)が差し込まれ、ポンプの駆動により抗菌剤が噴霧ノズル32側に移液される。
【0043】
<抗菌剤36>
抗菌剤36は抗菌作用を有する化合物である。そして、抗菌剤36は第四級アンモニウム塩化合物を主成分として含有する。
このような抗菌性を有する第四級アンモニウム塩化合物として例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェンなどが挙げられる。その他、抗菌性を有するものであれば、これらの第四級アンモニウム塩がアニオン交換されたものであっても良い。
これらの中で、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムが好ましく、高い抗菌性能を示す塩化ベンザルコニウムが最も好ましい。
【0044】
なお、「主成分として含有する」とは、2以上の抗菌剤を含む場合において、当該2以上の抗菌剤のうち、第四級アンモニウム塩化合物抗菌剤の重量比率が最も高いことを意味する。抗菌剤が単一の第四級アンモニウム塩化合物のみの場合は、当該第四級アンモニウム塩化合物が主成分であるとする。
【0045】
抗菌剤36は水で希釈して使用される。抗菌剤含有シートは例えば、飲食店の紙ナプキンなどに用いられることから、抗菌剤36は極めて低濃度で調整される。例えば本実施形態において、希釈後における抗菌剤36の含有濃度は、抗菌剤水溶液全体に対して0.05重量%以下になるよう調整される。
【0046】
なお以下において、抗菌剤36を水で希釈したことを強調する場合は「抗菌剤水溶液」と記載する。特に強調する必要が無い場合は、抗菌剤水溶液であっても区別せず「抗菌剤」と称する。
【0047】
なお、水で希釈した抗菌剤水溶液には、抗菌成分の他、カルキの量を水道水と同じにするためのカルシウム剤が含まれていても良い。カルシウム剤として例えば、次亜塩素酸カルシウムや水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。この場合、カルシウム量は水に対して0.001%から0.010%の間に調製される。本実施形態において、水2000kgに対して次亜塩素酸カルシウム40gが投入される。
【0048】
本実施形態において、抗菌剤36は塩化ベンザルコニウムである。抗菌効果の高い塩化ベンザルコニウムを含むことで、少量の添加でも十分な殺菌性能が得られる。またこの場合、噴霧する水分量も抑えられるため、紙の破断を軽減する利点がある。
【0049】
なお抗菌剤36には、上述した第四級アンモニウム塩化合物に加え、さらに抗菌成分が含まれていても良い。そのような抗菌成分として例えば、非イオン性抗菌剤やイオン性抗菌剤のほか、エタノールなどのアルコール類が挙げられる。
【0050】
さらに、抗菌剤36には抗菌成分の他、任意の成分が含まれていても良い。任意の成分として例えば、塩素剤や界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0051】
<乾燥機40>
乾燥機40は、抗菌剤水溶液を塗布した原紙シート10Aから不要な揮発性成分を除去し、乾燥する装置である。本実施形態において、乾燥機は温風乾燥機である。
なお、乾燥機40の温風吹出口42には吐出温度センサーが備えられている(不図示)。
以下乾燥機40の温度について言及する場合、温風吹出口42における温度を意味する。よって、原紙シート10Aが乾燥機の温風吹出口42から離れるにつれて乾燥温度は低下する。
本実施形態において、乾燥機40の温度は125度以上300度以下が好ましい。この場合、紙のシワが抑制される。
【0052】
また、乾燥機40に加え、抗菌剤36の噴霧後に原紙シート10Aが接触するロールを温めることによって乾燥を行っても良い。例えば
図1において、誘導ロール22fまたは誘導ロール22gを温めて原紙シート10Aを乾燥させても良い。この場合、さらに紙のシワが抑制される。紙のシワ低減の面から、誘導ロール22fおよび誘導ロール22g双方を温めて乾燥させることがより好ましい。
【0053】
乾燥機40は温風乾燥機に限られるものではなく、抗菌剤36に含まれる不要な揮発性成分を蒸発させるものであれば良い。そのような乾燥機として、例えば赤外線を照射する方式の赤外線乾燥機などが挙げられる。
温風乾燥機は、風力により揮発した成分を原紙シート10A近傍から排除することができるため、乾燥効率の点でより好ましい。赤外線乾燥機は、原紙シート10Aに物理的な力が掛からない点で好ましい。
これらの方法は、誘導ロール22を温める方法に比べると、乾燥効率が高く、好ましい。
また例えばヤンキードライヤーのような大型のドラムによる乾燥方法では、揮発成分によるムラができる場合があるが、温風乾燥や赤外線乾燥によるとこのような問題が生じないため、好ましい。
【0054】
<紙折機50>
紙折機50は、原紙シート10Aを任意の形状に折り加工を施すための装置である。紙折機50は本実施形態の製造速度に適した市販の紙折機を適宜用いることができる。本実施形態において、紙折機50は原紙シートをC折りに加工する。
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1により製造される紙ナプキンは、折り畳まれた状態で保管され、また使用時には必要に応じて広げて使用される。
【0055】
<断裁機60>
断裁機60は、原紙シート10Aを任意の長さに断裁する装置である。断裁機60は本実施形態の製造速度に適した市販の断裁機を適宜用いることができる。
断裁された原紙シート10Aは包装フィルム等に梱包されて保管され、出荷される。
【0056】
<紙ナプキン10B>
紙ナプキン10Bは最終的に原紙シート10Aを断裁機60により断裁して得られる個々のシートであり、便宜上このように表現する。紙ナプキン10Bは単独で使用され、例えばレストランなどにおいて、手指を消毒する用途で使用される。
紙ナプキン10Bは複数枚が1包装単位として梱包される。例えば本実施形態において、紙ナプキン10Bは100枚単位で包装フィルムに梱包される。
【0057】
ここで、抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量について説明する。以下重量比率を説明する場合において、「原紙シート(10A)の重量に対して」とは、「抗菌剤塗布前の乾燥状態における原紙シート(10A)の重量に対して」を意味する。
【0058】
抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量は、原紙シート10Aの重量に対して0.0005重量%以上であることが好ましく、0.0010重量%以上がより好ましく、0.0050重量%以上が最も好ましい。抗菌剤量が多くなるについて、抗菌性能が向上するためである。
一方、抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量が、原紙シート10Aの重量に対して0.0001重量%未満である場合、抗菌剤としての効能が不十分であるため好ましくない。
【0059】
また、抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量は、原紙シート10Aの重量に対して0.0400重量%以下が好ましく、0.0200重量%以下が好ましく、0.0100重量%以下が最も好ましい。
例えば紙ナプキンのように、抗菌剤含有シートは手指の消毒に用いられることから、人体への影響を考慮すると、抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量は、抗菌性能を保てる範囲でより少ない方が好ましい。
【0060】
抗菌剤含有シートに含まれる第四級アンモニウム塩の量が原紙シート10Aの重量に対して0.0400重量%を超える場合、抗菌剤含有シートの使用感が悪化する。例えば塩化ベンザルコニウムの場合、塩化ベンザルコニウム特有の臭気が強くなり、好ましくない。
また、同重量比率が0.0400重量%を超える場合、抗菌剤含有シート同士が貼りつきやすくなる。この使用感等の官能評価結果を考慮すると、同重量比率が0.0200重量%以下であると好ましい。
【0061】
紙ナプキン10Bなどの抗菌剤含有シートに含まれる抗菌剤の含有量を測定する方法は、公知の測定方法が適宜用いられる。例えば、抗菌剤塗布後の紙ナプキン10Bをシャーレに入れ、そこに一定量の水やアセトニトリルといった溶媒を加えて振とうした後、溶媒が揮発しないようにしてしばらく静置する。溶媒に溶出した抗菌剤成分をガスクロマトグラフ(GC−MS)や液体クロマトグラフ(LC−MS)により分析することで、抗菌剤の含有量を算出することができる。
このような測定装置として例えば、島津製作所株式会社製のガスクロマトグラフGCMS−TQシリーズなどを用いることができる。
【0062】
また、紙ナプキン10Bなどの抗菌剤含有シートに含まれる水分量は、抗菌剤含有シート全体の重量に対し20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下が最も好ましい。
抗菌剤含有シート全体に対する水分の含有量が20重量%以下であると、抗菌剤含有シート同士の貼りつきがなく、それぞれのシートが剥がれやすくなる。
なお、当該含有量(含有比率)は、((抗菌剤含有シートの重量−乾燥した原紙シートの重量)÷抗菌剤含有シートの重量×100)で求められる。
【0063】
なお、本実施形態においては抗菌剤水溶液を噴霧して用いるため、製造直後の抗菌剤含有シートには水分が含まれる。例えば、製造直後の抗菌剤含有シートには、抗菌剤含有シート全体の重量に対し、水分が1重量%以上含まれる。
【0064】
<製造工程>
以下、本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1による紙ナプキン10Bの製造工程(以下単に「紙ナプキン製造工程」とする。)について説明する。
紙ナプキン製造工程は順に、送り出し工程、エンボス加工工程、抗菌剤塗布工程、乾燥工程、紙折工程、断裁工程を備える。
【0065】
原反ロール10から送り出される原紙シート10Aの両面に抗菌剤36を順次塗布し、乾燥させることで、抗菌剤36が両面に付着した紙ナプキン10Bを製造する。
本実施形態に係る紙ナプキン製造工程は、坪量の小さい単層の薄葉紙を破断させることなく抗菌剤含有紙ナプキンを製造することを特徴とする。本実施形態の紙ナプキン製造工程は、単層の薄葉紙をそのまま加工することができ、例えば紙を2層にするプライ工程を要しない。
【0066】
<送り出し工程>
送り出し工程は、単一の層で構成されるパルプ含有原紙シート10Aを原反ロール10から送り出す工程である。本実施形態において、原反ロール10はフリーロールである。よって、以降の工程の回転駆動力を有するロールから生じる張力により、原紙シート10Aが送り出される。
【0067】
<エンボス加工工程>
エンボス加工工程は、原反ロール10から送り出される原紙シート10Aに対し、両面エンボスロール24を用いてエンボス加工を施す。エンボス加工により、原紙シート10Aに凹凸を付与し、意匠性を高める。また、エンボス加工による凹凸により、拭き取り対象物との接触時に接触面積が増えるという利点などがある。
【0068】
なお、原紙シート10にシワなどの意匠を与えるクレープ加工と比較すると、エンボス加工による加飾は、同一の意匠を繰り返し付与することができるという利点がある。また、本実施形態の原紙シート10Aは薄くて破断しやすいため、例えば接着と剥離が必要なクレープ加工よりも、押圧のみで加飾か可能なエンボス加工がより好ましい。
【0069】
<抗菌剤塗布工程>
抗菌剤塗布工程は、エンボス加工工程を経た原紙シート10Aに、抗菌剤36を均一に塗布する。第一の塗布工程で原紙シート10Aの一方の面に抗菌剤36を塗布し、続く第二の塗布工程で原紙シート10Aの他方の面に抗菌剤36を塗布する。
【0070】
なお「均一に塗布する」とは、機械的に制御された方法により均一に塗布することを意味する。これは、霧吹き器のような手動操作により塗布する方法と区別するための用語である。
よって、機械的に制御されているのであれば、原紙シート10Aの同一面内において、噴霧剤36の塗布量分布に傾斜があっても良い。
【0071】
(第一の塗布工程)
本実施形態において、第一の塗布工程は、第一の噴霧ノズル322により原紙シート10Aの一方の面に抗菌剤36を噴霧する工程である。
抗菌剤36は、原紙シート10Aの上側に配設された第一の噴霧ノズル322により、原紙シート10Aの上側から噴霧される。
【0072】
(第二の塗布工程)
本実施形態において、第二の塗布工程は、第二の噴霧ノズル324により原紙シート10Aの他方の面に抗菌剤36を噴霧する工程である。
図1に示すように、抗菌剤36は、原紙シート10Aの横側に配設された第二の噴霧ノズル324により、原紙シート10Aが流れる方向の側面(
図1において左側)から噴霧される。
【0073】
第一の噴霧ノズル322を原紙シート10Aの上側に配設することにより、重力を利用した塗布ができるため、広範囲に塗布ムラが少ない塗布ができるという利点がある。
また、第二の噴霧ノズル324を原紙シート10Aの側面に配設することにより、製造装置のスペースを取ることなく塗布が可能となり、かつ破断しにくいという利点がある。
上述したロール22による効果も合わせ、第一の噴霧ノズル322および第二の噴霧ノズル324をこのように配設することにより、紙の破断や蛇行を抑制することができる。
【0074】
なお、2つの噴霧ノズル(362、364)が原紙シート10Aを挟んで対向する形で同時噴霧すると紙が破断しやすくなる。よって、第一の噴霧ノズル322による噴霧の後に364による噴霧がなされることが好ましい。
【0075】
原紙シート10Aの両面に抗菌剤36を噴霧するためには、第一の噴霧ノズル322により上から噴霧し、第二の噴霧ノズル324により下から噴霧することも考えられる。しかし、噴霧ノズルを原紙シート10Aの下側に配設すると、原紙シート10Aに付着しなかった抗菌剤36が重力に従って落下し、噴霧ノズル324を汚染する可能性がある。
したがって、原紙シート10Aの一方の面に抗菌剤36を塗布した後、誘導ロール22により原紙シート10Aの流れる向きを変え、側面に配置した第二の噴霧ノズル324から原紙シート10Aの他方の面に対して抗菌剤36を噴霧することがより好ましい。
【0076】
本実施形態による塗布方法によると、原紙シート10Aの表面近傍に抗菌剤36を含侵させることができる。
ここで、「表面近傍に抗菌剤を含浸する」とは、原紙シートの表面近傍に抗菌剤が最も多く塗布され、表面から厚み方向内側に至るにつれて抗菌剤量が少なくなることを意味する。即ち、抗菌剤量は厚み方向に従って傾斜する。これは、原紙シート1OA内部に抗菌剤が均一に含まれるものと区別される。
表面近傍に抗菌剤を含浸することにより、少ない抗菌剤量であっても効率的に抗菌作用を得ることができる。
【0077】
ここで、
図1に示すように、前記第一の塗布工程の後であって前記第二の塗布工程の前に、誘導ロールにより前記抗菌剤を前記原紙シートに含侵させる含侵工程を備えることが好ましい。
原紙シート10Aの抗菌剤36塗布面が誘導ロール22に押圧されることにより、抗菌剤36を原紙シート10Aに十分含侵させることができるためである。
【0078】
図1を例に説明すると、第一の噴霧ノズル322による第一の噴霧後に、誘導ロール22dにより原紙シート10Aの一方の面を押圧する工程が含侵工程に該当する。同様に、第二の噴霧ノズル324による第二の噴霧後に、誘導ロール22fにより原紙シート10Aの他方の面を押圧する工程も含侵工程に該当する。
【0079】
なお、上述の通り、誘導ロール22(誘導ロール22d、22f)により原紙シート10Aが屈曲する角度は、90度以上120度以下であることが好ましい。この場合、原紙シート10Aが誘導ロール22によってより強く押圧され、抗菌剤36が原紙シート10Aに含侵しやすくなる。
【0080】
図1に示すように、本実施形態では、原紙シート10Aがペーパーロール244から温風吹出口42至るまでに、誘導ロール22を5つ配設している。ペーパーロール244から温風吹出口42までの間に誘導ロール22が少なくとも3つ以上あると、紙の断裂等が生じないため好ましい。
噴霧ノズル32を2箇所に配設し、原紙シート10Aが通過する誘導ロール22を増やすことで、1台分の液量や噴霧器のエアーの圧力を分散させることができ、原紙シート10Aの断裂やシワが抑制できる。
【0081】
<乾燥工程>
乾燥工程は、乾燥機40により、抗菌剤含有水溶液を塗布した原紙シート10Aから不要な揮発性成分を除去し、乾燥する。
乾燥工程における温風の温度は125度以上300度以下が好ましい。この温度範囲に設定すると、所望の水分を除去するのに適しており、シートのシワが抑制される。
【0082】
なお、乾燥工程前後で原紙シートに付着している抗菌剤量は変化しない。また、乾燥工程前後で原紙シートに含まれる水分量もほぼ変わらない。よって、抗菌剤水溶液の抗菌剤濃度を塗布後の抗菌剤濃度と置き換えても差し支えない。
【0083】
乾燥工程は、抗菌剤塗布工程の直後にあることが好ましい。抗菌剤が製造装置の部品等に付着することを防ぐためである。
【0084】
<紙折工程>
紙折工程では、乾燥工程により乾燥した原紙シート10Aを紙ナプキンの使用に適した形に折り畳む。紙折工程では原紙シート10Aが機械的に折り畳まれる。「機械的に」とは、工業機械を用いて連続的に折り畳むことを指す。上述の通り、市販の紙折機を適宜選択することができる。折り加工の態様として特に制限はないが、連続的に処理できるC折加工が好ましい。
【0085】
<断裁工程>
断裁工程は、紙折工程により折り畳まれた原紙シート10Aを、断裁機60を用いて所定の長さに断裁する工程である。原紙シート10Aは、シートの流れる方向と直交する向きに裁断される。
【0086】
この際、紙巾と裁断長さ(カット長)の比率は1:1から1:2の間にあることが好ましく、1.3:1.7の間にあることがより好ましい。紙巾と裁断長さの比率がこの間にあると、紙ナプキンを立てかけた際に幅を取らず、また使用感が向上する。本実施形態において、紙巾と裁断長さの比率は1:1.5である。
断裁工程により断裁されたシートは、所定の枚数毎に積層され、包装フィルム等により包装される。
【0087】
<製造量>
製造効率を考慮すると、1分当たりの製造量は多い方が好ましい。例えば1分当たりの製造量は10平方メートル以上が好ましい。本実施形態の紙ナプキンの製造方法によると、1分当たり15平方メートル以上の抗菌剤含有紙ナプキンが安定的に製造可能であった。
なお、1分当たりの製造量が20平方メートルを超えると、原紙シート10Aが破断しやすくなるため、1分当たりの製造量は15平方メートル以下が好ましい。
【0088】
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1により紙ナプキン10Bを製造することにより、抗菌剤36の液量や噴霧器のエアーの圧力を分散させることができ、原紙シート10Aの断裂やシワを抑制することができる。また、抗菌剤36を原紙シート10Aの一方の面と他方の面の両面に塗布することで、原紙シート10A全体に抗菌剤36を塗布することができる。
【実施例】
【0089】
本実施形態の抗菌剤含有シートの製造方法を用いて紙ナプキン10Bを製造し、得られた紙ナプキン10Bについて抗菌効果を評価した。
【0090】
(実験例1)
<紙ナプキン10Bの製造方法>
図1に記載の抗菌剤含有シート製造装置1により紙ナプキン10Bを製造した。原反ロール10、両面エンボスロール24、塗布機30、乾燥機40、紙折機50および断裁機60は上述した通りである。塗布工程以降、主に塗布機30、乾燥機40等について以下具体的に説明する。
【0091】
塗布機30として噴霧ノズルを備える噴霧器を用いた。貯蔵タンク34として重力式容器を用いて、噴霧ノズル32に抗菌剤36を供給した。塗布機30はルミナ自働スプレーガン(ST−5)を2台使用した。また、噴霧ノズル32の吹き付けパターンは平吹きを使用した。エアーは抗菌剤含有シート製造装置1から供給した。
【0092】
図1を用いて、噴霧ノズルやロール等の距離関係について一例を示す。第一の噴霧ノズル322から原紙シート10Aまでの距離は500mmとし、第二の噴霧ノズル324から原紙シート10Aまでの距離は280mmとした。
【0093】
同様に、ペーパーロール244から誘導ロール22bまでの距離は580mm、誘導ロール22bから誘導ロール22cまでの距離は545mm、誘導ロール22cから誘導ロール22dまでの距離は482mm、誘導ロール22dから誘導ロール22eまでの距離は410mm、誘導ロール22eから誘導ロール22fまでの距離は830mm、誘導ロール22fから誘導ロール22gまでの距離は160mmとした。
【0094】
誘導ロール22bにより原紙シート10Aが屈曲する角度(
図1において、ペーパーロール244から誘導ロール22bまでの原紙シート10Aと、誘導ロール22bから誘導ロール22cまでの原紙シート10Aが成す角度)は120度である。
【0095】
同様に、誘導ロール22cにより原紙シート10Aが屈曲する角度は45度、誘導ロール22dにより原紙シート10Aが屈曲する角度は110度、誘導ロール22eにより原紙シート10Aが屈曲する角度は135度、誘導ロール22fにより原紙シート10Aが屈曲する角度は90度、誘導ロール22gにより原紙シート10Aが屈曲する角度は100度である。
【0096】
誘導ロール22と誘導ロール22の間の距離、及び誘導ロール22により原紙シート10Aが屈曲する角度を適宜調整し、上記のような距離と角度にすることで、破断が生じにくい安定した製造方法を構築することができた。
【0097】
なお、誘導ロール22dと誘導ロール22fは上述した含侵工程に関わる誘導ロールである。上述の通り、誘導ロール22dにより原紙シート10Aが屈曲する角度は110度であり、誘導ロール22fにより原紙シート10Aが屈曲する角度は90度である。上述した通りこれらの角は90度以上120度以下の範囲内にあるため、原紙シート10Aの抗菌剤36塗布面が誘導ロール22によって押圧され、抗菌剤36が原紙シート10Aに含侵しやすくなる。
【0098】
乾燥機40の温度は255度に設定した。乾燥後、紙折機50により原紙シート10Aを折り板でC折にし、断裁機60で断裁した。断裁して得られた紙ナプキン10Bは、100枚集積で個包装した。
【0099】
具体的な操作については、機械稼働後、機械スピードを400ショットまで上げた後、エアーバルブを手動にて開放し、噴霧を開始した。
抗菌剤含有シート製造装置1のモータの停止に伴ってエアーが停止し、噴霧が停止した。
抗菌剤含有シート製造装置1による上記工程を経て、一方の面と他方の面の両面に抗菌剤36が付着した紙ナプキン10Bを製造した。
【0100】
本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1により、抗菌剤36として塩化ベンザルコニウムを付着させた紙ナプキン10Bを100枚製造した。紙ナプキン10Bの1枚当たりの紙巾は162mm、カット寸法は243mmである。また、紙ナプキン10Bの1枚当たりの厚みは550マイクロメートルである。なお、本実施例では1分当たり400枚(400ショット)製造したことから、1分当たりの製造量は15.75平方メートルである。
【0101】
乾燥時における原紙シート10Aの秤量は1平方メートルあたり14.0gであった。よって、抗菌剤36を塗布していない紙ナプキン10Bの1枚当たりの重さは0.55gである(100枚当たり55g)。
【0102】
本実施例において、抗菌剤水溶液(抗菌剤濃度0.05重量%)の塗布(噴霧)工程、乾燥工程後における紙ナプキンの100枚あたり重さは56gであった。即ち、塩化ベンザルコニウムが付着した紙ナプキン10Bの1枚当たりの重さは0.56gである。
このとき、1枚紙ナプキン10B(0.56g)に残った抗菌剤水溶液(0.01g)に含まれる塩化ベンザルコニウムの量は0.000005gである(0.01×0.05重量%)。即ち、このときの紙ナプキン10Bに含まれる第四級アンモニウム塩の量は、原紙シート10Aの重量に対して0.0009重量%となる(0.000005g÷0.55g×100=0.000909%)。
このようにして得られた紙ナプキン10Bの抗菌性能について、評価した結果を以下に示す。
【0103】
<評価方法>
本実施形態によりJIS規格L1902:2002に基づく繊維製品の抗菌性試験(定量試験・菌液吸収法)を行った。試験に際し、試験菌懸濁液に界面活性剤(Tween80)を0.05重量%添加した。供試細菌としてEscherichia coli NBRC 3301(大腸菌)とStaphylococcus aureus NBRC 12732(黄色ブドウ球菌)を用いた。
静菌活性値が2.2以上で抗菌防臭効果が有るものとした(JTETC基準)。この試験は、増殖値が1.0以上で成立するものとした。なお静菌活性値とは、18時間培養後の標準布の生菌数を18時間培養後の加工布の生菌数で除した値の対数である。
【0104】
以下において、抗菌剤36の塗布量を変化させて評価を行った。表において、一番左の列の数値は、抗菌剤36の噴霧、乾燥工程後における紙ナプキン10Bの100枚あたりの重さである。抗菌剤36を噴霧していない紙ナプキン10Bの100枚当たりの重量は55グラムである。
【0105】
例えば、抗菌剤36の噴霧工程、乾燥工程後における紙ナプキンの100枚あたりの重さが56gである場合(表1上段の表、「56g」の記載がある行)、その紙ナプキン100枚に含まれる抗菌剤36と水分とを合わせた重量は1gである(紙ナプキン1枚当たりの場合、抗菌剤36と水分とを合わせた重量は0.01g)。評価結果を示す。
【0106】
表1において、抗菌剤比率とは、原紙シート10Aの重量に対する第四級アンモニウム塩の量である(第四級アンモニウム塩の重量÷抗菌剤塗布前の原紙シートの重量×100)。また、抗菌防臭効果が有るものを判定有、効果が無いものを判定無とした。
【0107】
<評価結果>
【表1】
【0108】
表1の上の表が示すように、大腸菌の試験結果では、抗菌剤を塗布した紙ナプキンのいずれも、対象実験データ(以下「ブランクデータ」という。)に比べ、生菌数が減少した。特に、100枚当たり紙ナプキンの重量が61gのものは、静菌活性値が2.2以上であり、優れた抗菌効果が認められた。
【0109】
表1の下の表が示すように、黄色ブドウ球菌の試験結果では、抗菌剤を塗布した紙ナプキンのいずれも、ブランクデータに比べ、生菌数が大幅に減少した。特に、100枚当たり紙ナプキンの重量が58g、59g、61gのものは、静菌活性値が2.2以上であり、優れた抗菌効果が認められた。
以上より、本実施例の紙ナプキン10Bには十分な抗菌効果があることを確認した。
【0110】
(比較例1)
比較例として、第一の噴霧ノズル322を用いて原紙シート10Aの片方の面のみに抗菌剤36を噴霧した場合について実験を行った。紙ナプキン10Bの製造条件は実験例1と同様である。
この場合、抗菌剤を全く塗布しないものに比べて菌の増殖抑制効果は見られたものの、大腸菌と黄色ブドウ球菌のいずれに対しても静菌活性値は2.2未満であった(不図示)。
【0111】
(比較例2)
また、抗菌剤36の塗布量を、原紙シートの重量に対して0.0001重量%(抗菌剤比率0.0001重量%)とした場合について実験を行った。紙ナプキン10Bの製造条件は実験例1と同様である。
この場合、大腸菌と黄色ブドウ球菌のいずれに対しても静菌活性値は2.2未満であり、上記実施例のような優れた抗菌効果が認められなかった。
【0112】
(実験例2)
続いて、上記の実験例1で作成した紙ナプキン10Bについて、官能評価試験を行った。本試験では、5人の被験者により紙ナプキン10Bの臭気を評価した。また、紙ナプキン10B同士の貼りつきについても評価した。紙ナプキン10Bの製造条件は実験例1と同様である。
抗菌剤36の塗布量を、原紙シートの重量に対して0.0050重量%としたもののほか、0.0100重量%、0.0200重量%、0.0400重量、0.0500重量%の場合の計5水準で評価した。
【0113】
抗菌剤36の塗布量が原紙シートの重量に対して0.0050重量%、0.0100重量%、および0.0200重量%の紙ナプキン10Bの場合、塩化ベンザルコニウム特有の臭気が認められなかった。
一方、同重量比率が0.0400重量%の場合において、塩化ベンザルコニウム特有の臭気が認められた(被験者のいずれも同じ判断)。
【0114】
また同様に、紙ナプキン10B同士の貼りつきについて評価した。抗菌剤36の塗布量が原紙シートの重量に対して0.0050重量%のもの、および0.0100重量%のものは紙ナプキン10B同士の貼りつきが認められなかった。
【0115】
一方、同重量比率が0.0200重量%、同重量比率が0.0400重量%の場合において、僅かながら紙ナプキン10B同士の貼りつきが認められた。特に、同重量比率が0.0400重量%の場合において、強い貼りつきが認められた。
【0116】
以上のように、本実施形態によれば、抗菌剤含有シート製造装置1により、坪量の小さい薄葉紙の両面に抗菌剤を塗布した抗菌剤含有紙ナプキン10Bを得ることができる。本実施形態の方法によれば、製造の過程で破断することが無く、連続的に大量生産が可能である。また得られた紙ナプキン10Bは、少量の抗菌剤含有量でありながら、十分な抗菌効果を示す。
【0117】
抗菌剤に浸漬させる方法と比べ、原紙シート10Aにムラなく抗菌剤を塗布することができ、また抗菌剤の量も少なくすることができる。抗菌剤含有シート製造装置1により製造した紙ナプキン10Bは坪量が小さいため、レストランなどの飲食物提供施設においてもスペースを取ることがなく、経済的である。
【0118】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0119】
例えば、上述の実施形態において、紙ナプキン10Bの1枚当たりの厚みは550マイクロメートルであったが、この厚みを400マイクロメートルとしても、製造工程途中で原紙シート10Aが破断することなく、所望の抗菌作用を有する紙ナプキン10Bを得ることができた。
【0120】
上述の実施形態において、抗菌剤36として塩化ベンザルコニウムを用いていたが、塩化ベンザルコニウムの代わりに塩化ベンゼトニウムを用いても良い。塩化ベンゼトニウムを用いても塩化ベンザルコニウムと同様の抗菌防臭効果が得られた(表省略)。
【0121】
上述の実施形態において、紙ナプキン10B全体の重量に対する水分の含有量は約9.8重量%(例えば表1の61gの場合において、抗菌剤量は微小であるため、水分量はおおよそ(61g−55g)÷61g×100=9.8%と計算できる。)以下であったが、この水分量は適宜調整可能である。
【0122】
例えば、紙ナプキン10Bに対する抗菌剤36および水分の含有量を20重量%にしても、紙ナプキン10Bの貼りつきは見られなかった。
紙ナプキン10Bに対する抗菌剤36および水分の含有量は、20重量%よりも15重量%の方がシート同士の貼りつきがなくて剥がれやすく、15重量%よりも10重量%の方がより貼りつきが少なくなった。
【0123】
本発明の趣旨の範囲内において、誘導ロール22の数や配置は図面のものに限られるものではなく、適宜変更することができる。
【0124】
また、上述した実施形態において、塗布機30として噴霧ノズル32を備える噴霧器により抗菌剤36を塗布していたが、グラビア印刷法やフレキソ印刷法により抗菌剤36を塗布しても良い。ただし、広範囲に微量の抗菌剤水溶液を塗布できるため、上述の実施形態に示したような噴霧器による方法がより好ましい。
【0125】
上記では抗菌剤含有シートの例として抗菌剤含有紙ナプキンの製造方法を例に挙げて説明したが、抗菌剤含有シートは、紙製の前掛けや、食器の下に敷く紙シート用のシートであっても良い。
ただし、抗菌剤含有シートが折り加工された手指消毒用の紙ナプキンである場合、少ない抗菌剤量であっても十分に用途に適した抗菌効果を発揮する。特に、C折り加工を施しても製造工程中に原紙シート10Aの破断が起こらない利点がある。
【0126】
上述した実施形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、製造工程の順序を入れ替えることができる。例えば、エンボス加工工程を乾燥工程後にしても良い。また、上述の実施形態では紙折工程の後が裁断工程であったが、原紙シート10Aを裁断した後に紙折機に掛けて折り畳んでも良い。
【0127】
また、上述の実施形態において、噴霧ノズル32は2つであったが、噴霧ノズル32は2つに限られるものではなく、3つ以上のノズルを配設しても良い。この場合、同一量の抗菌剤36をさらに分散して塗布することができるため、紙が破断しにくくなる利点がある。
図1を例に挙げると、この場合の第三のノズルは、誘導ロール22eと誘導ロール22fの間であって、原紙シート10Aの紙面右側に配設することが好ましい。この場合、抗菌剤36は原紙シート10Aの一方の面(紙面右側の面)に噴霧される。
【0128】
図2はエンボス加工工程を省略した場合の抗菌剤含有シート製造装置1を示した図である。上述した実施形態の製造方法ではエンボス加工工程を備えていたが、エンボス加工工程を省いていても良い。ただし、上述した通り、エンボス加工を施すことによる破断抑制効果等があるため、エンボス加工工程を備えている方が好ましい。
【0129】
図3は紙折機50と断裁機60を備えない抗菌剤含有シート製造装置1を示したものである。本変形例では、回転駆動力を備える巻き取りロール28を用いて原紙シート10Aを巻き取る。
【0130】
本実施形態の抗菌剤含有シートの製造方法は、抗菌剤塗布工程、乾燥工程、のあとそのまま紙折工程と断裁工程の順に処理しても、原紙シート10Aの破断が生じない利点がある。よって、製造効率を考慮すると、紙折機50と断裁機60を備えた
図1や
図2に示した抗菌剤含有シート製造装置1により、紙折工程と断裁工程まで行うことが好ましい。
【課題】坪量が小さい単層の原紙シートから抗菌剤含有シートを製造するに際し、破断にくい製造方法を提供する。また、十分な抗菌効果を示す一方で、飲食店での用途に適した抗菌剤含有シートを提供する。
【解決手段】本実施形態の抗菌剤含有シート製造装置1は、厚みが400〜1100マイクロメートル、坪量が1平方メートルあたり12g以上20g以下である単層の原紙シート10Aから紙ナプキン10Bに製造する。抗菌剤含有シート製造装置1は、2つの噴霧ノズル32を備え、原紙シート10Aの両面に抗菌剤36を順次噴霧する。抗菌剤は塩化ベンザルコニウムを主成分として含有し、当該塩化ベンザルコニウムの含有量は原紙シートの重量に対して0.005重量%以上0.0200重量%以下である。