特許第6943525号(P6943525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943525情報提示装置、操舵装置、および情報提示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943525
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】情報提示装置、操舵装置、および情報提示方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/16 20200101AFI20210927BHJP
   B62D 1/06 20060101ALI20210927BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210927BHJP
   B62D 1/18 20060101ALI20210927BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   B60W50/16
   B62D1/06
   G08G1/16 C
   G08G1/16 F
   B62D1/18
   B60R16/027 T
【請求項の数】10
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-538334(P2018-538334)
(86)(22)【出願日】2017年8月18日
(86)【国際出願番号】JP2017029610
(87)【国際公開番号】WO2018047604
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-177706(P2016-177706)
(32)【優先日】2016年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】小野 彰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 弘和
(72)【発明者】
【氏名】宇治 博史
【審査官】 平井 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260439(JP,A)
【文献】 特開2015−225359(JP,A)
【文献】 特開2013−159151(JP,A)
【文献】 特開2015−184110(JP,A)
【文献】 特開2010−133810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
B62D 1/00− 1/28
B60R 16/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得するように構成された取得部と、
偏加速度を発生することにより、前記車両に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成された偏加速度発生部と、
前記取得部により取得された情報に基づき駆動信号を生成し、この駆動信号を前記偏加速度発生部に送信するように構成された信号生成部と
前記操舵部を車体に接続する軸機構と
を具備し、
前記偏加速度発生部は、前記軸機構に設けられており、
前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、
前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および
前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部
のうち少なくとも1つを含む
情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両から所定範囲内の移動体の動きに応じて、前記偏加速度が変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との相対位置に応じて、偏加速度の方向が変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との距離に応じて、偏加速度の大きさが変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報提示装置であって、
前記操舵部の操舵角を検出するように構成されたセンサをさらに具備し、
前記信号生成部は、検出された前記操舵部の操舵角に基づき、さらに前記駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の情報提示装置であって、
前記取得部は、車両内の情報として、ユーザーの動きまたは生理情報を取得するように構成される
情報提示装置。
【請求項7】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の情報提示装置であって、
前記取得部は、車両外の情報として、道路交通情報を取得するように構成される
情報提示装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか1項に記載の情報提示装置であって、
前記偏加速度発生部は、1軸以上の方向に沿う偏加速度を発生する機構を有する
情報提示装置。
【請求項9】
操舵部と、
前記操舵部に偏加速度を発生させるように構成された偏加速度発生部と
前記操舵部を車体に接続する軸機構と
を具備し、
前記偏加速度発生部は、前記軸機構に設けられており、
前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、
前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および
前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部
のうち少なくとも1つを含む
操舵装置。
【請求項10】
車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得するステップと
前記取得された情報に基づき駆動信号を生成するステップと
偏加速度の発生により、前記車両内に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成された偏加速度発生部に、前記生成された駆動信号を送信するステップと
を含み、
前記偏加速度発生部は、前記操舵部を車体に接続する軸機構に設けられており、
前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、
前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および
前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部
のうち少なくとも1つを含む
情報提示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、主に車両に搭載され、ユーザーに必要な情報を提示する情報提示装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車等の車両に設けられた、複数の振動子を有するステアリングホイールを備える情報提示装置が開示されている。この情報提示装置の制御部は、カーナビゲーションシステムと連動し、運転者に提示する情報に応じて駆動すべき振動子を、複数の振動子から選択する。制御部は、例えば、選択した1つの振動子のみに駆動信号を送信するか、または、複数の振動子に、振動開始時刻に差をつけるように駆動信号を順次送信する、などの駆動方法を実行する(例えば、明細書段落[0017]、[0032]、[0034]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2011/071044号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1において、複数の振動子を順次駆動させる形態では、ユーザー(運転者)は、それら振動子の一連の順次駆動が完了するまでその情報提示を待たなければならない。つまり、力覚情報の提示の時間幅が長いため、直感性が弱い、といった問題がある。
【0005】
本開示の目的は、車両を操縦するユーザーにとって直感的な力覚情報をユーザーに提示することができる情報提示装置、情報提示方法、また、これを利用した操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本技術に係る情報提示装置は、取得部と、偏加速度発生部と、信号生成部とを具備する。
前記取得部は、車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得するように構成される。
前記偏加速度発生部は、偏加速度を発生することにより、前記車両に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成される。
前記信号生成部は、前記取得部により取得された情報に基づき駆動信号を生成し、この駆動信号を前記偏加速度発生部に送信するように構成される。
【0007】
本技術では、単なる振動ではなく、偏加速度発生部により、車両内の情報および/または車両外の情報に基づく力覚情報が、操舵部を介してユーザーに提示される。これにより、ユーザーは、直感的な力覚情報の提示を受けることができ、操縦の的確な支援を受けることができる。
【0008】
前記信号生成部は、前記車両から所定範囲内の移動体の動きに応じて、前記偏加速度が変化するような駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
これにより、ユーザーは、前記移動体の動きに応じた力覚情報の提示を受けることができる。
【0009】
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との相対位置に応じて、偏加速度の方向が変化するような駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
【0010】
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との距離に応じて、偏加速度の大きさが変化するような駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
【0011】
前記情報提示装置は、前記操舵部の操舵角を検出するように構成されたセンサをさらに具備してもよい。前記信号生成部は、検出された前記操舵部の操舵角に基づき、さらに前記駆動信号を生成するように構成されていてもよい。
これにより、ユーザーによる操舵角がどのような操舵角であっても、信号生成部は、的確な方向感を持つ力覚情報を提示するための駆動信号を生成できる。
【0012】
前記取得部は、車両内の情報として、ユーザーの動きまたは生理情報を取得するように構成されていてもよい。
【0013】
前記取得部は、車両外の情報として、道路交通情報を取得するように構成されていてもよい。
【0014】
前記偏加速度発生部は、1軸以上の方向に沿う偏加速度を発生する機構を有していてもよい。
これにより、情報提示装置は、少なくとも1軸に沿う方向の力覚情報をユーザーに提示することができる。
【0015】
前記操舵部は、フレーム体を有していてもよい。
前記偏加速度発生部は、前記フレーム体内に設けられた錘と、前記フレーム体と錘との間に配置されたアクチュエータとを有していてもよい。
アクチュエータが錘を動かすことにより、偏加速度発生部は、偏加速度を効率的に発生することができる。
【0016】
前記情報提示装置は、前記操舵部を車体に接続する軸機構をさらに具備し、前記偏加速度発生部は、前記軸機構に設けられていてもよい。
すなわち、偏加速度発生部は、操舵部内に設けられる必要はなく、このように操舵部の外部機構である軸機構に設けられていてもよい。
【0017】
前記偏加速度発生部は、前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および、前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0018】
一形態に係る操舵装置は、操舵部と、前記操舵部に偏加速度を発生させるように構成された偏加速度発生部とを具備する。
操舵部に偏加速度が加えられることにより、ユーザーは、操縦中に、直感的な力覚情報の提示を操舵装置から受けることができる。
【0019】
前記錘は、円環、円弧、または、直方体状を有していてもよい。
例えば操舵部が円形、円弧、またはそれに近い形状を有する場合、錘が円環や円弧状の部材により構成されることにより、偏加速度発生部は、ユーザーの操舵部の把持位置に関わらず、発生する力を、ユーザーに確実に伝達することができる。
【0020】
前記偏加速度発生部は、前記錘を支持する支持機構をさらに有していてもよい。
【0021】
前記支持機構は、前記錘が偏加速度の方向とは異なる方向に動くように、該錘を支持するスライド機構であってもよい。
これにより、アクチュエータによる1つの軸に沿う方向に動きやすくなるため、その駆動量を大きくすることができる。
【0022】
一形態に係る情報提示方法は、車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得することを含む。
前記取得された情報に基づき駆動信号が生成される。
偏加速度の発生により、前記車両内に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成された偏加速度発生部に、前記生成された駆動信号が送信される。
【発明の効果】
【0023】
以上、本技術は、車両を操縦するユーザーにとって直感的な力覚情報を、ユーザーに提示することができる。
【0024】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、車外情報検出部および撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
図3図3は、一実施形態に係る情報提示装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4図4は、自動車の車内の一例を示す。
図5図5は、一実施形態に係る操舵装置を示す正面図である。
図6図6Aは、ステアリングホイールのうちアクチュエータ部分が配置される領域を示す図である。図6Bは、ステアリングホイールの円周方向に垂直な方向に切断することにより現れる内部構造を含む、ステアリングホイール部の一部の図である。
図7図7は、アクチュエータの構成の例を示す斜視図である。
図8図8は、スライド機構に接続されたアクチュエータによる1軸方向での錘の変位等を測定した結果を示す。
図9図9A〜Fは、偏加速度発生部がx軸方向で振動する状態を示す図である。
図10図10A〜Fは、偏加速度発生部がy軸方向で振動する状態を示す図である。
図11図11A〜Fは、xアクチュエータおよびyアクチュエータが、xおよびy軸に沿って同期して振動する状態を示す図である。
図12図12は、情報提示装置の動作を示すフローチャートである。
図13図13は、左折時の巻き込みが発生する場面を示す。
図14図14は、左折時の巻き込みを未然に防ぐための力覚提示方法を示す。
図15図15A〜Cは、図14で説明した移動体の動きにそれぞれ対応した、偏加速度発生部で発生する偏加速度を示す。
図16図16は、他の実施形態に係る偏加速度発生部を備えるステアリングホイールを示す図である。
図17図17は、図16におけるA−A線断面図である。
図18図18は、他の実施形態に係る操舵装置を示す。
図19図19A〜Gは、偏加速度発生部により駆動されるステアリングホイールの動きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
1.本技術に係る情報提示装置が適用され得る移動体制御システム
【0028】
図1は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図1に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、および統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)またはFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0029】
さらに本実施形態に係る車両制御システム7000は、運転支援制御ユニット300を備える。
【0030】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラムまたは各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置またはセンサ等との間で、有線通信または無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図1では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680および記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/Fおよび記憶部等を備える。
【0031】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関または駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、および、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)またはESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0032】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数または車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置またはブレーキ装置等を制御する。
【0033】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカーまたはフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波または各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波または信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0034】
運転支援制御ユニット300には、偏加速度発生部100が接続される。偏加速度発生部100は、上記ステアリングホイールを含むステアリング機構に設けられ、運転者(ユーザー)による運転(操舵)を支援するための情報である力覚情報を提示するように構成される。運転支援制御ユニット300は、プログラムにしたがって駆動信号を生成し、偏加速度発生部100にその駆動信号を送信する。偏加速度発生部100については、後に詳述する。
【0035】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧またはバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御またはバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0036】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410および車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラおよびその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候または気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物または歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0037】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、および降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置およびLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410および車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0038】
ここで、図2は、撮像部7410および車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドアおよび車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910および車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパまたはバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両または、歩行者、障害物、信号機、交通標識または車線等の検出に用いられる。
【0039】
なお、図2には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパまたはバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0040】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナおよび車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサまたはレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドアおよび車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920〜7930は、主として先行車両、歩行者または障害物等の検出に用いられる。
【0041】
図1に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置またはLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波または電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識または路面上の文字等の物体検出処理または距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧または路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0042】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識または路面上の文字等を認識する画像認識処理または距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正または位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像またはパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0043】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサまたは車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面またはステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者またはステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合いまたは集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0044】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチまたはレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線またはその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話またはPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0045】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、および各種パラメータ、演算結果またはセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0046】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX、LTE(Long Term Evolution)若しくはLTE−A(LTE−Advanced)などのセルラー通信プロトコル、または無線LAN(Wi−Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局またはアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワークまたは事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバまたは制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、またはMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0047】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、またはセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信および歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0048】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度および高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、または測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0049】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止めまたは所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0050】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)またはWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(および、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)、またはMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、または車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号またはデータ信号を交換する。
【0051】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0052】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660および車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構または制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、または車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構または制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0053】
車内情報検出ユニット7500、車外情報検出ユニット7400、運転者状態検出部7510、車外情報検出部7420、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、およびビーコン受信部7650のうち少なくとも1つは、車両内の情報および車両外のうち少なくとも一方の情報を取得する「取得部」として機能する。
【0054】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660および車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接または通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0055】
本実施形態では、主にマイクロコンピュータ7610および/または運転支援制御ユニット300は、上記「取得部」で取得された情報に基づき、偏加速度発生部100を駆動する駆動信号を生成する「信号生成部」として機能する。
【0056】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者または車外に対して、視覚的または聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声および画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図1の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720およびインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイおよびヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタまたはランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果または他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データまたは音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0057】
なお、図1に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部または全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサまたは装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0058】
2.情報提示装置
【0059】
図3は、一実施形態に係る情報提示装置の機能的な構成を示すブロック図である。情報提示装置1は、運転者に運転の支援情報を提示する装置である。情報提示装置1は、上述した取得部20、信号生成部40、および偏加速度発生部100を備える。信号生成部40は、取得部20で取得された情報に基づき、運転の支援情報を生成し、力覚演算を実行することで、駆動信号を生成する。
【0060】
3.操舵装置が適用される自動車の車内の例
【0061】
図4は、自動車の車内の一例を示す。自動車の車内のフロントガラスの下に、ダッシュボード(ダッシュパネルやインストルメントパネルなどと称されることがある)10が配設されている。ダッシュボード10における運転席の正面には、ステアリングホイール11が取り付けられるとともに、計器類12が配設されている。計器類12は、例えば、スピードメータ、タコメータ、燃料計などである。
【0062】
ダッシュボード10の略中央には、表示部13が配設されている。表示部13(図1に示した表示部7720等)は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)などの表示パネルである。表示部13には、メニュー画面やエアーコンディショナの調整のための画面、オーディオの再生に関する操作を行う画面、ナビゲーション機能に基づく地図などが表示される。
【0063】
ダッシュボード10の内部には、各種の制御を行う車載装置が収納されている。車載装置は、ステアリングホイール11と電気的に接続される。車載装置は、上記車両制御システム7000のうち、統合制御ユニット7600を主に構成する装置である。車載装置は、その他、運転支援制御ユニット300やその他のユニットも含んでいてもよい。
【0064】
4.操舵装置
【0065】
4.1)操舵装置の構成
【0066】
図5は、一実施形態に係る操舵装置を示す正面図である。操舵装置50は、操舵部として機能するステアリングホイール11と、ステアリングホイール11に偏加速度を発生させる上述の偏加速度発生部100とを備える。説明の便宜上、ステアリングホイール11の正面で見て、左右方向をx方向とし、上下方向をy方向とする。
【0067】
ステアリングホイール11は、全体の形状を構成するフレーム体11f(図6A、B)を有する。フレーム体11fは筐体構造を有しており、その表面には図示しない外装が施されている。図5に示すように、ステアリングホイール11は、ほぼ円環状のホイール部11a、ホイール部11aの中央に設けられたセンターパッド部11b、およびセンターパッド部11bとホイール部11aとの間に設けられたスポーク部11cを有する。
【0068】
偏加速度発生部100は、フレーム体11f内に設けられた錘35と、フレーム体11fと錘35との間に配置されたアクチュエータ30とを備える。図6Aは、ステアリングホイール11のうちアクチュエータ30が配置される領域を示す。この領域は、図5の一点鎖線の四角で囲まれた領域XA、YAを示す。図6Bは、ステアリングホイール11の円周方向に垂直な方向に切断して模式的に現される内部構造を含む図である。
【0069】
図6Aに示すように、錘35は、円環状を有し、アクチュエータ30に支持されるように、フレーム体11f内のホイール部11aに相当する位置に配置されている。
【0070】
錘35は、円環状を有する形態に限られず、円弧状や直方体状であってもよい。このような円弧状の錘が、2つ以上設けられ、それらが、円周に沿って等角度間隔または非等角度間隔で設けられていてもよい。錘35が円環状を有することにより、運転者がホイール部11aの把持位置に関わらず、発生する力を、運転者の手に確実に伝達することができる。
【0071】
例えば一対のアクチュエータ30、30が、錘35を挟むように支持している。一対のアクチュエータ30、30は、ステアリングホイール11の円周方向に例えば90°間隔で、複数対設けられている。具体的には、x軸駆動用の一対のxアクチュエータ30x、30yの対が180°間隔で2箇所(2つの領域XA)に設けられ、合計4つのxアクチュエータ30xが設けられている。同様に、y軸駆動用の一対のyアクチュエータ30y、30yが180°間隔で2箇所(2つの領域YA)に設けられ、合計4つのyアクチュエータ30yが設けられている。
【0072】
以降では、説明の便宜上、「xアクチュエータ30x」と「yアクチュエータ30y」を区別して説明する必要がない場合、それを単に「アクチュエータ30」として説明する。
【0073】
図7は、アクチュエータ30の構成の例を示す斜視図である。アクチュエータ30は、例えば板状の圧電要素31と、この圧電要素31に固定された接続部32、33とを有する。接続部32は、例えば圧電要素31の両端部に設けられ、フレーム体11fに固定される。接続部33は、例えば圧電要素31の中央部に設けられ、後述するスライド機構60を介して錘35に接続される。圧電要素31には、図示しないが電気信号の入力端子が設けられ、駆動信号が入力される。これによりアクチュエータ30は、接続部32、32を節とし、接続部33を腹として、図7中、上下方向に振動することが可能となっている。すなわち、図5を参照して、錘35がx、y軸の2軸、つまりx−y平面内の任意の方向、振幅、加速度で振動可能となる。
【0074】
なお、上記アクチュエータ30の構成はあくまでも一例であり、圧電要素31を利用する様々な形状、サイズ、構造のデバイスが適用され得る。
【0075】
偏加速度発生部100は、zアクチュエータもさらに有していてもよい。zアクチュエータは、x、y軸に直交するz軸(図5において紙面に垂直方向の軸:第3軸)に沿う方向で振動可能なデバイスであり、xアクチュエータ30x、yアクチュエータ30yと同様に、図7に示した構造を採ることができる。この場合、zアクチュエータも複数設けられることが望ましい。その場合、例えばzアクチュエータは、上下方向(y方向)に2つ配置されるか、または、左右方向(x方向)に2つ配置されればよい。
【0076】
図6Bに示すように、偏加速度発生部100は、錘35を支持する支持機構として、スライド機構60を有する。スライド機構60は、そのアクチュエータ30により発生する偏加速度による圧電要素31の変位方向とは異なる方向(例えば直交方向)に錘35が動くように、錘35を支持するように構成される。
【0077】
例えば、スライド機構60は、錘35に取り付けられたレール部62を有し、レール部62に沿って接続部33を相対的にスライドさせるように構成される。例えば、xアクチュエータ30xはy方向に延設されたレール部62を有し、yアクチュエータ30yはx方向に延設されたレール部62を有する。すなわち、このスライド機構60は、リニアモーションガイド構造を有する。
【0078】
このようなスライド機構60が設けられることにより、アクチュエータ30による1つの軸に沿う方向の駆動量(振幅)を大きくすることができる。例えば、xアクチュエータ30xのx軸方向の振動による錘35のx方向の動きに追従するように、yアクチュエータ30yの接続部33が、x方向に設計された範囲だけレール部62に相対的に動くことができる。同様に、yアクチュエータ30yのy軸方向の振動による、錘35のy方向の動きに追従するように、xアクチュエータ30xの接続部33が、y方向に設計された範囲だけレール部62に相対的に動くことができる。
【0079】
なお、スライド機構60には、リニアモーションガイド構造の他、ボールブッシュ構造、または、自己潤滑軸受構造等が適用され得る。あるいは、スライド機構60として、接続部33がレール部62に沿って動くような構造ではなく、弾性変形可能な材料、例えば異方性弾性係数材料が用いられてもよい。
【0080】
図8は、スライド機構60に接続されたアクチュエータ30による1軸方向での錘35の変位等を測定した結果を示す。この測定では、実質的に正方形の外形を有する錘が用いられた。錘35の重さは18gとされ、直方体状のものが用いられた。このグラフでは、変位(μm)の他、アクチュエータへの出力電圧(V)と、加速度(G)を示している。グラフから、一方向(正方向)に47.1G加速度が発生し、それとは逆方向(負方向)に32.1Gの加速度が発生した。したがって、一方向(+方向)に15.0Gの偏加速度が発生したことがわかる。偏加速度発生部100は、発生する偏加速度およびその偏加速度の変化のパターンにより、ステアリングホイール11を把持する運転者に、様々な力覚情報を提示することができる。
【0081】
「力覚」とは、主に人が、対象物に触れることで、その対象物から受ける力である。「力覚」は、「触覚」の概念も含み、また、擬似力覚、仮想力覚、錯力覚などのように錯覚的に力を知覚する概念も含む。
【0082】
以上のような偏加速度発生部100による詳細な動作原理は、国際公開第2015/151380号に開示されている。
【0083】
4.2)偏加速度発生部の基本的な動きの例
【0084】
図9A〜Fは、偏加速度発生部100がx軸方向で振動する状態を示す。図10A〜Fは、偏加速度発生部100がy軸方向で振動する状態を示す。これらの図は、図6Aと同様に、ステアリングホイール11のうちアクチュエータ30の部分を示す。具体的に、図9A〜C、図10A〜Cは、yアクチュエータ30yの駆動による錘35の動きを示し、図9D〜F、図10D〜Fは、xアクチュエータ30xの駆動による錘35の動きを示す。
【0085】
図9A、D、図10A、Dは、中立位置(変位が0)における偏加速度発生部100の状態を示す。図9B、Eは、錘35が右方向(正方向とする)に動いた状態を示し、図9C、Fは、錘35が左方向(負方向とする)に動いた状態を示す。図10B、Eは、錘35が上方向(正方向とする)に動いた状態を示し、図10C、Fは、錘35が下方向(負方向とする)に動いた状態を示す。
【0086】
例えば、図9Eに示すように、xアクチュエータ30xが正方向に動く。このとき、錘35がx軸正方向に動き、図9Bに示すように、yアクチュエータ30yに接続されたスライド機構60により、錘35のx軸正方向の動きが許容される。例えば図10Cに示すように、yアクチュエータ30yが負方向に動く。このとき、錘35がy軸負方向に動き、図10Fに示すように、xアクチュエータ30xに接続されたスライド機構60により、錘35のy軸負方向の動きが許容される。
【0087】
図11A〜Fは、xアクチュエータ30xおよびyアクチュエータ30yが、xおよびy軸に沿って同期して同じ振幅で振動する状態を示す。図11A、Dは、中立位置(変位が0)、図11B、Eがx、y軸ともに正方向に錘35が動いた状態を示す。図11C、Fは、x、y軸ともに負方向に錘35が動いた状態を示す。
【0088】
偏加速度発生部100は、このように、2次元内で振動パターンを発生させることができ、2次元内の力覚情報を、ステアリングホイール11を把持する運転者に提示できる。偏加速度発生部100は、zアクチュエータをさらに備えていれば、3次元内での力覚情報を運転車に提示できる。
【0089】
5.情報提示装置の動作
【0090】
5.1)フローチャートの説明
【0091】
図12は、情報提示装置1の動作を示すフローチャートである。典型的には、情報提示装置1が、他の車両(移動体)を検出し、それに応じた力覚情報を提示することを想定した例について述べる。
【0092】
統合制御ユニット7600は、運転者が車両を運転しているか否かを判定する(ステップ101)。運転者が車両を運転している場合とは、例えば、エンジンが所定回転数以上で回転しているか、車両が所定速度以上で走行しているか等により判定される。あるいは、それらのうち少なくとも一方に、運転者がステアリングホイール11を握っているかの判定基準が加えられてもよい。運転者がステアリングホイール11を握っていることを検出する手段として、ステアリングホイール11に備えられた圧力センサや接触センサ等が挙げられる。
【0093】
運転者が車両を運転していると判定された場合、統合制御ユニット7600(ここでは取得部20)は、車両内の情報および/または車両外からの情報を取得する(ステップ102)。例えば、車外情報検出ユニット7400が、他の車両(移動体)の位置(車両に対する移動体の相対位置。以下同じ。)や動きを検出したり、駆動系制御ユニット7100が運転者の操舵状態を検出したりする。操舵状態とは、例えば運転者による、ステアリングホイール11の操舵角や、ステアリングホイール11の把持位置等である。
【0094】
上記検出により移動体が存在することが判明した場合(ステップ103のYes)、信号生成部40は、上記取得した各種の情報に基づいて、駆動信号を生成する。具体的には、信号生成部40は、支援情報を生成し(ステップ104)、力覚を演算する(ステップ105)。
【0095】
支援情報とは、例えば、車両からの移動体の位置情報を含む情報である。支援情報は、その他、その移動体の位置が車両から所定範囲内か(力覚情報を提示するための条件を満たす範囲内に移動体がいるか)、または、移動体の位置情報に応じた力覚をどのような種類やパターンで提示するか、などの情報を含んでいてもよい。信号生成部40は、力覚を演算後、駆動信号を偏加速度発生部100に送り、偏加速度発生部100が駆動されることで、力覚情報を運転者に提示する。
【0096】
ステップ102において、操舵角を検出する理由について説明する。操舵角によって、図5に示した、ステアリングホイール11において、アクチュエータ30が配置される4つの領域XA、YAの位置が、運転者に対して変わる。どのような操舵角にも関わらず、力覚方向に的確に提示するために、情報提示装置1は、操舵角の情報を取得する。例えば、運転者によりステアリングホイール11が反時計回りに45°回転したとする(-45°の回転パラメータ)。そうすると、信号生成部40は、ステップ105の力覚演算時において、時計回り45°(+45°)の修正パラメータを加えて、力覚方向の演算を実行する。
【0097】
5.2)移動体の位置を力覚情報として提示する例
【0098】
図13に示すように、交差点で、移動体としての自転車500が直進し、自動車400が左折する場面を想定する。また、交通規定として車両は左車線を走行するものとする。符号111は、ステアリングホイールおよびその回転の状態を示す。自動車400の運転者の不注意により周囲の確認不足のまま、自動車400が左折した場合、自転車500と衝突する可能性があり、いわゆる「巻き込み」事故が発生する可能性がある。
【0099】
本実施形態に係る情報提示装置1は、図13に示したような危険の存在を、力覚情報(以下、単に力覚と言う場合もある)によって、予め自動車の運転者に提示することにより、事故を回避することができる。図14に示すように、車外情報検出ユニット7400が自転車500の位置を逐次検出し、信号生成部40は、その位置情報に対応する偏加速度発生部100の駆動信号を逐次生成する。
【0100】
ここで、例えば車外情報検出ユニット7400が自転車500の位置を検出してはいるが、自転車500の位置が、力覚を提示するための条件として設定された所定範囲にない場合、図14の最も左の図に示すように、信号生成部40は偏加速度発生部100の駆動信号を生成しないようにしてもよい。あるいは、車外情報検出ユニット7400で検出されたことを条件として、信号生成部40は、偏加速度発生部100の駆動信号を生成するようにしてもよい。
【0101】
力覚の提示を実行する条件が満たされた場合において、図14中、左から2つ目の図に示すように、自転車500が自動車450の斜め左後方に位置する場合、偏加速度発生部100は、それに対応した斜め左後方の偏加速度を錘35に発生させる。図15Aは、このとき錘35に与えられる偏加速度の波形を示す。偏加速度は、x軸負方向、y軸負方向のベクトル成分を持つ。
【0102】
左から3つ目の図に示すように、自転車500が自動車450の真横に位置する場合、偏加速度発生部100は、それに対応した左方向の偏加速度を錘35に発生させる。図15Bは、このとき錘35に与えられる偏加速度の波形を示す。偏加速度は、x軸負方向のベクトルを持ち、y軸方向には実質的に0である。
【0103】
左から4つ目の図に示すように、自転車500が自動車450の斜め左前方に位置する場合、偏加速度発生部100は、それに対応した斜め左前方の偏加速度を錘35に発生させる。図15Cは、このとき錘35に与えられる偏加速度の波形を示す。偏加速度は、x軸負方向、y軸正方向のベクトル成分を持つ。
【0104】
左から5つ目の図に示すように、自転車500が自動車450の斜め左前方を超え危険を回避する位置情報をなった時点で運転者はステアリングホイールを操舵し左折を行えばよい。このように、移動体の位置に応じて、偏加速度発生部100が駆動信号を逐次生成することにより、情報提示装置1は、移動体の動きに対応する力覚を運転者に動的に提示することができる。これにより、運転者は、移動体の動きを、視聴覚以外の力覚で直感的に認識することができ、危険を回避することができる。
【0105】
以上の説明では、移動体として自転車を例に挙げたが、その他、他の自動車、緊急車両、バイク、歩行者、落下物等が挙げられる。もちろん、移動体が、運転者が運転する車両に後方から近づく場面だけでなく、正面から、あるいは別の方向から近づく場合も、本技術の適用範囲である。
【0106】
以上のように、本実施形態では、単なる振動ではなく、偏加速度発生部により、車両内の情報および/または車両外の情報に基づく力覚情報が、操舵部を介して運転者に提示される。これにより、運転者は、直感的な力覚情報の提示を受けることができ、運転の的確な支援を受けることができる。
【0107】
6.車内外の他の情報例、力覚情報の他の提示例
【0108】
(例1)
情報提示装置1は、車両外からの情報として、外部環境7750等から取得される情報を活用することができる。例えば、サーバからインターネットを介して汎用通信I/F7620により得られる情報、または、ビーコン受信部7650で得られる情報として、道路の損傷(陥没等)、事故現場、工事現場、路面凍結等の危険対象の情報が挙げられる。
【0109】
この場合、情報提示装置1は、運転者が運転する車両に対する、それら危険対象の位置を、力覚情報として運転者に提示する。また、上記自転車500(図14)の例の実施形態で説明したように、その危険対象の車両に対する位置に応じた方向感が、力覚として提示される。
【0110】
(例2)
汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、または、ビーコン受信部7650で取得される危険対象の情報として、緊急車両等、特殊な車両の位置情報も挙げられる。
【0111】
(例3)
情報提示装置1は、ナビゲーションによる道路情報(道路交通情報の一部)を力覚によって提示することができる。道路情報は、GPS情報の他、ビーコン受信部7650、汎用通信I/F7620、車外情報検出ユニット7400により取得され得る。例えば、直進、右折、左折、右斜め方向直進、左斜め方向直進、右急カーブ、左急カーブなどの道案内情報が、力覚として提示される。
【0112】
例えば、「直進」なら、上方向(y軸正方向)、「左折」なら左方向(x軸負方向)の力覚が提示される。例えば「右急カーブ」なら、上方向から右方向へ変化する力覚の繰り返しが提示される。偏加速度発生部100がzアクチュエータを有する場合、「直進」の場合、車両の前進方向としてz軸正方向の力覚が提示されてもよい。
【0113】
ナビゲーションに関する道路情報として、さらに、車線合流、車線増減等の道路規制の情報が挙げられる。例えば車両が車線合流位置に近づいていく場合、「車線合流位置が前方にある」→「車線合流位置が左前方にある」→「車線合流が左にある」という順で、力覚情報が提示される。道路規制の他の情報として、通行止め、渋滞等の情報が挙げられる。
【0114】
(例4)
上記ナビゲーションに関する道路情報に代えて、情報提示装置1は、目的地の方向を示す情報を、力覚として提示することもできる。例えば、x−y軸平面内の360°の方向、または、x−z軸平面内の360°の方向で、目的地の方向が力覚として提示されることにより、運転者は直感的に目的地の方向を認識することができる。また、情報提示装置1は、偏加速度の大きさを可変に制御すること、すなわち、例えば車両が目的地が近いほど、その偏加速度の大きさを大きくすることも可能である。
【0115】
「目的地」は、例えば1つの目的地ではなく、例えばジャンルごとに指定された目的地であってもよい。例えば「コンビニエンスストア」、「病院」、「公園」などのジャンル別に目的地が指定されることにより、情報提示装置1は、ある特定のジャンルの1つの目的地を車両が通りすぎてしまっても、車両の周辺におけるそれと同じジャンルの他の目的地を探して力覚で提示することができる。
【0116】
(例5)
車外から取得される情報のさらに別の例として、交通信号の状態の情報(道路交通情報の一部)が力覚として提示され得る。交通信号の情報は、車外情報検出ユニット7400、またはビーコン受信部7650により取得される。例えば、情報提示装置1は、赤(停止)信号に変わる、または変わろうとしていることを検出した場合、運転車の前方から運転者に向かう方向(z軸負方向)に力覚を提示する。また、情報提示装置1は、青(進行)信号に変わることを検出した場合、前方方向(z軸正方向)に力覚を提示する。
【0117】
(例6)
情報提示装置1は、例えば移動体等の危険対象への衝突や、あるいは、運転のふらつきによる車線逸脱等を回避するため、操舵のサポートを行うような力覚を提示してもよい。例えば、運転者が左方向(反時計回り)に操舵しようとしているが、その先には歩行者がいる場合、情報提示装置1は、右方向(時計回り)に操舵させるための力覚を提示することができる。この場合、情報提示装置1は、右方向(時計回り)に操舵させるための力覚として、例えば上方向(または左方向)から右方向へ変化する力覚の提示を繰り返すようにすればよい。また、例えば車両がふらついて右方向へ車線を逸脱しようとするとき、情報提示装置1は、左方向へ車両を戻すような力覚、例えば左方向の力覚を提示することができる。
【0118】
以上の例1〜6の説明では、力覚情報は、車両と、移動体、危険対象、あるいは目的地との相対位置に対応した情報であったが、それに加え、車両と移動体との距離(相対距離)に対応する情報であってもよい。すなわち、情報提示装置1は、相対距離に応じて偏加速度の大きさを可変に制御する。例えば、情報提示装置1は、相対距離が小さくなるほど、偏加速度発生部100により発生する偏加速度の大きさが大きくなるような力覚を提示することができる。これにより、相対距離が小さいほど、危険度が大きくなり、あるいは目的地が近くなることを、運転者は直感的に認識することができる。
【0119】
(例7)
情報提示装置1は、車両内の情報として、運転者の動きまたは生理情報を、車内情報検出ユニット7500により取得してもよい。例えば、情報提示装置1は、運転者のわき見や居眠りをしているかを取得し、それによる危険を回避するための力覚を提示することができる。例えば、車両が直進しているにも関わらず、運転者の目線や頭部が向く方向が、所定時間以上、前方以外の方向を維持していることがカメラにより検出された場合、それを前方向に向けさせるための力覚が提示される。あるいは、例えば運転者が左方向へわき見している場合、右方向の力覚が提示される。
【0120】
7.他の実施形態に係る偏加速度発生部
【0121】
図16は、他の実施形態に係る偏加速度発生部を備えるステアリングホイール61を示す図である。偏加速度発生部150は、例えば、ステアリングホイール61の上下左右の4つの領域(2つの領域XA、2つの領域YA)にそれぞれ設けられた力覚デバイス80を有する。力覚デバイス80は、例えばブロック状を有している。力覚デバイス80は、筐体を有し、上記実施形態のアクチュエータ30および錘をその筐体内に有している。典型的には、力覚デバイス80としては、上記国際公開第2015/151380号に開示された各種のデバイスが用いられる。
【0122】
図17は、図16におけるA−A線断面図である。符号69で示す部分は、外装部である。図17に示すように、ステアリングホイール61は、図示しない外装部内にフレーム体61fを備え、そのフレーム体61fの運転者側に面する表側と、その反対側のそれぞれに、力覚デバイス80が取り付けられている。もちろん、表側および裏側のうちいずれか一方にのみ力覚デバイス80が設けられていてもよい。
【0123】
情報提示装置は、フレーム体61fの表側の力覚デバイス80と、その反対側の力覚デバイス80とで異なる力覚情報を提示してもよい。例えば表側の力覚デバイス80は、移動体の位置に対応する力覚を提示し、その反対側の力覚デバイス80は、ナビゲーションに関する情報に対応する力覚を提示するようにしてもよい。
【0124】
本実施形態に係る力覚デバイス80は、4つ(合計8つ)だけでなく、ステアリングホイール61の円周上に5つ(合計10以上)設けられていてもよい。
【0125】
8.他の実施形態に係る操舵装置
【0126】
図18は、他の実施形態に係る操舵装置を示す。操舵装置90は、ステアリングホイール201と、このステアリングホイール201を図示しない車体に接続する軸機構250と、この軸機構250に設けられた偏加速度発生部200とを有する。偏加速度発生部200は、例えば第1偏加速度発生部としてのテレスコピック装置260、第2偏加速度発生部としての上下動チルト装置270、および第3偏加速度発生部としての左右動チルト装置280を有する。
【0127】
上記信号生成部40は、上記取得部20により取得された情報に基づき駆動信号を生成し、この駆動信号を、テレスコピック装置260、上下動チルト装置270、および左右動チルト装置280のうち少なくとも1つに送信するように構成される。
【0128】
テレスコピック装置260では、ステー261を介してスライダ262がロアチューブ220に支持されている。スライダ262内には雌螺子部が形成されており、これに螺合し軸方向移動可能に螺子軸263が支持されている。一方、ホルダ264を介して電動モータ265が固定ブラケット210に支持されている。電動モータ265の出力軸にはウォームホイール266が固着されており、これに螺合してウォームギヤを構成するウォーム263aが、螺子軸263の前端に固着されている。電動モータ265が回転駆動されると螺子軸263が軸を中心に回転し、スライダ262およびロアチューブ220が固定ブラケット210に対して前後動するので、ステアリングホイール201が前後動し、所望の前後方向位置に調整される。
【0129】
上下動チルト装置270は、ロアチューブ220およびアッパチューブ230の下方に取り付けられている。上下動チルト装置270では、ステー271を介して、スライダ272がロアチューブ220に球面の支点P2を中心に揺動可能に支持されている。スライダ272内には雌螺子部が形成されており、これに螺合し軸方向移動可能に螺子軸273が支持されている。一方、ホルダ274を介して電動モータ275がアッパチューブ230に支持されている。電動モータ275の出力軸にはウォームホイール276が固着されており、これに螺合してウォームギヤを構成するウォーム273aが、螺子軸273の後端に固着されている。
【0130】
電動モータ275が回転駆動されると螺子軸273が軸を中心に回転し、電動モータ275がスライダ272に対して前後動する。この動きにより、電動モータ275が支点P2を中心に揺動すると共に、アッパチューブ230がロアチューブ220に対して球面の支点P1を中心に揺動する。その結果、ステアリングホイール201が上下方向でチルト作動し、所望の傾斜角度に調整される。
【0131】
左右動チルト装置280は、ロアチューブ220およびアッパチューブ230の側方に取り付けられている。左右動チルト装置280では、ステー281を介して、スライダ282がロアチューブ220に球面の支点P3を中心に揺動可能に支持されている。スライダ282内には雌螺子部が形成されており、これに螺合し軸方向移動可能に螺子軸283が支持されている。一方、ホルダ284を介して電動モータ285がアッパチューブ230に支持されている。電動モータ285の出力軸にはウォームホイール286が固着されており、これに螺合してウォームギヤを構成するウォーム283aが、螺子軸283の後端に固着されている。
【0132】
電動モータ285が回転駆動されると螺子軸283が軸を中心に回転し、電動モータ285がスライダ282に対して前後動する。この動きにより、電動モータ285が支点P3を中心に揺動すると共に、アッパチューブ230がロアチューブ220に対して球面の支点P1を中心に揺動する。その結果、ステアリングホイール201が左右方向でチルト作動し、所望の傾斜角度に調整される。
【0133】
なお、これらの構造は一例を示すものであり、これに限られない。操舵装置は、ステアリングホイール201が軸方向(前後方向)および揺動方向(左右上下方向)に駆動されるものであればどのような構造でもよく、必要に応じて並進運動構造が設けられていればよい。
【0134】
図19A、Bは、テレスコピック装置260の駆動によるステアリングホイール201の動きをそれぞれ示す上面図、側面図である。図19C、Dは、上下動チルト装置270の駆動によるステアリングホイール201の動きをそれぞれ示す上面図、側面図である。図19E、Fは、左右動チルト装置280の駆動によるステアリングホイール201の動きをそれぞれ示す上面図、側面図である。図19Gは、上下動チルト装置270および左右動チルト装置280の駆動による、軸機構250の軸方向で見たステアリングホイール201の動きを示す図である。
【0135】
これらの図に示すように、操舵装置90は、各装置260、270、280の3軸方向での駆動により、それら偏加速度のベクトル加算により、3次元内の任意の方向に力覚を運転者に提示することができる。
【0136】
偏加速度発生部は、これらテレスコピック装置260、上下動チルト装置270、および左右動チルト装置280のうち1つ(1軸駆動)、または、2つ(2軸駆動)で構成されていてもよい。
【0137】
以上のように、偏加速度発生部200は、ステアリングホイール201の内部構造として設けられる必要はなく、ステアリングホイール201の外部機構である軸機構250に設けることもできる。
【0138】
9.他の種々の実施形態
【0139】
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0140】
上記偏加速度発生部100のアクチュエータは圧電素子に限られず、例えば回転モータ、リニアモータ(リニアアクチュエータ)が用いられてもよい。アクチュエータの駆動方式としては、圧電式の他、電磁式、静電式、磁歪式、空圧式、共振式が挙げられる。
【0141】
図5に示した実施形態では、偏加速度発生部100は、ステアリングホイール11の4つの領域XA、YAにそれぞれ2つずつ、合計8つのアクチュエータを有していた。しかし、例えば、ステアリングホイール61の4つの領域のうち、上下のうちいずれか一方の領域と、左右のうちいずれか一方の領域にのみ2つずつ、合計4つのアクチュエータが設けられていてもよい。その場合、残り2つの領域には、アクチュエータ30は設けられず、錘35を支持する支持機構が設けられていればよい。支持機構は、弾性変形可能な材料を利用した機構であってもよいし、錘をスライドさせる上述した各種のスライド機構であってもよい。
【0142】
図5に示した実施形態では、ステアリングホイールの4つの領域XA、YAのうち任意の1つの領域において一対のアクチュエータ30が錘35を挟むように支持していた。しかし、それら一対のうち一方のみがアクチュエータ30であり、他方にはアクチュエータ30は設けられず、支持機構が設けられていてもよい。その場合、その一方のアクチュエータ30がxアクチュエータ30xであるなら、他方の支持機構は、y方向に錘35をスライド可能なスライド機構60であることが好ましい。
【0143】
図5に示した実施形態では、ステアリングホイール11の4つの領域XA、YAにアクチュエータ30が設けられていた。しかし、それら4つの領域XA、YAだけでなく、例えば5つの領域以上の領域に、円周方向に等角度間隔または非等角度間隔で、アクチュエータ30が配置される構成であってもよい。このことは、図16、17に示した力覚デバイス80についても同様である。
【0144】
例えば図16、17に示した実施形態において、力覚デバイス80が、例えば6つ以上、あるは8つ以上の領域にそれぞれ設けられる場合、把持位置検出部が、運転者によるステアリングホイールの把持位置を検出してもよい。この場合、情報提示装置は、検出された把持位置に最も近い力覚デバイス、または、把持位置に比較的近い複数の力覚デバイスに、力覚提示のための駆動信号を送信するように構成されていてもよい。把持位置を検出するデバイスとしては、例えば圧力センサや接触センサ等が挙げられる。
【0145】
情報提示装置1は、自動車の他、二輪車(バイク、自転車等)や、その他作業用の特殊な車両にも、適用可能である。
【0146】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【0147】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)
車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得するように構成された取得部と、
偏加速度を発生することにより、前記車両に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成された偏加速度発生部と、
前記取得部により取得された情報に基づき駆動信号を生成し、この駆動信号を前記偏加速度発生部に送信するように構成された信号生成部と
を具備する情報提示装置。
(2)
前記(1)に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両から所定範囲内の移動体の動きに応じて、前記偏加速度が変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
(3)
前記(2)に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との相対位置に応じて、偏加速度の方向が変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
(4)
前記(2)または(3)に記載の情報提示装置であって、
前記信号生成部は、前記車両と前記移動体との距離に応じて、偏加速度の大きさが変化するような駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
(5)
前記(1)に記載の情報提示装置であって、
前記操舵部の操舵角を検出するように構成されたセンサをさらに具備し、
前記信号生成部は、検出された前記操舵部の操舵角に基づき、さらに前記駆動信号を生成するように構成される
情報提示装置。
(6)
前記(1)または(2)に記載の情報提示装置であって、
前記取得部は、車両内の情報として、ユーザーの動きまたは生理情報を取得するように構成される
情報提示装置。
(7)
前記(1)から(3)のうちいずれか1項に記載の情報提示装置であって、
前記取得部は、車両外の情報として、道路交通情報を取得するように構成される
情報提示装置。
(8)
前記(1)から(7)のうちいずれか1項に記載の情報提示装置であって、
前記偏加速度発生部は、1軸以上の方向に沿う偏加速度を発生する機構を有する
情報提示装置。
(9)
前記(8)に記載の情報提示装置であって、
前記操舵部は、フレーム体を有し、
前記偏加速度発生部は、
前記フレーム体内に設けられた錘と、
前記フレーム体と錘との間に配置されたアクチュエータとを有する
情報提示装置。
(10)
前記(1)から(8)のうちいずれか1つに記載の情報提示装置であって、
前記操舵部を車体に接続する軸機構をさらに具備し、
前記偏加速度発生部は、前記軸機構に設けられている
情報提示装置。
(11)
前記(10)に記載の情報提示装置であって、
前記偏加速度発生部は、
前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、
前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および
前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部
のうち少なくとも1つを含む
情報提示装置。
(12)
操舵部と、
前記操舵部に偏加速度を発生させるように構成された偏加速度発生部と
を具備する操舵装置。
(13)
前記(12)に記載の操舵装置であって、
前記操舵部は、フレーム体を有し、
前記偏加速度発生部は、
前記フレーム体内に設けられた1以上の錘と、
前記フレーム体と錘との間に配置されたアクチュエータとを有する
操舵装置。
(14)
前記(13)に記載の操舵装置であって、
前記錘は、円環、円弧、または、直方体状を有する
操舵装置。
(15)
前記(13)または(14)に記載の操舵装置であって、
前記偏加速度発生部は、前記錘を支持する支持機構をさらに有する
操舵装置。
(16)
前記(15)に記載の操舵装置であって、
前記支持機構は、前記錘が偏加速度の方向とは異なる方向に動くように、該錘を支持するスライド機構である
操舵装置。
(17)
前記(12)に記載の操舵装置であって、
前記操舵部を車体に接続する軸機構をさらに具備し、
前記偏加速度発生部は、前記軸機構に設けられている
操舵装置。
(18)
前記(17)に記載の操舵装置であって、
前記偏加速度発生部は、
前記軸機構の軸方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第1偏加速度発生部、
前記軸方向に直交する第2の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第2偏加速度発生部、および
前記軸方向に直交し、かつ、前記第2の方向に直交する第3の方向で前記操舵部に偏加速度を発生させる第3偏加速度発生部
のうち少なくとも1つを含む
操舵装置。
(19)
車両内の情報および車両外の情報のうち少なくとも一方の情報を取得し、
前記取得された情報に基づき駆動信号を生成し、
偏加速度の発生により、前記車両内に設けられた操舵部を介してユーザーに力覚情報を提示するように構成された偏加速度発生部に、前記生成された駆動信号を送信する
情報提示方法。
【符号の説明】
【0148】
1…情報提示装置
11、61、201…ステアリングホイール
11f、61f…フレーム体
20…取得部
30…アクチュエータ
35…錘
40…信号生成部
50、90…操舵装置
60…スライド機構
61f…フレーム体
80…力覚デバイス
100、150、200…偏加速度発生部
250…軸機構
260…テレスコピック装置
270…上下動チルト装置
280…左右動チルト装置
7110…車両状態検出部
7400…車外情報検出ユニット
7410…撮像部
7420…車外情報検出部
7500…車内情報検出ユニット
7510…運転者状態検出部
7600…統合制御ユニット
7610…マイクロコンピュータ
7640…測位部
7650…ビーコン受信部
7920…車外情報検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19