(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943535
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/202 20210101AFI20210927BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20210927BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20210927BHJP
【FI】
H01M50/202 501B
H01M50/262 S
H01M50/271 S
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-233484(P2017-233484)
(22)【出願日】2017年12月5日
(65)【公開番号】特開2019-102328(P2019-102328A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐之介
(72)【発明者】
【氏名】川口 直登
(72)【発明者】
【氏名】目次 敦
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−055791(JP,A)
【文献】
特開平10−040891(JP,A)
【文献】
実開昭63−182463(JP,U)
【文献】
実開平4−031259(JP,U)
【文献】
実開昭54−166534(JP,U)
【文献】
中国実用新案第203826446(CN,U)
【文献】
国際公開第2014/006665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドさせて挿入されたコイン電池を収容する電池ケースであって、
前記コイン電池を収容する開口を備え、収容された前記コイン電池を保持する電池ケース本体部と、
前記電池ケース本体部の前記開口を閉じる蓋部と、を有し、
前記蓋部は、前記開口を閉じる際に前記電池ケース本体部に嵌挿され、且つ前記電池ケース本体部に保持された前記コイン電池を取り出す際に前記コイン電池を挿入方向とは逆方向に押し出す爪部を備える、
電池ケース。
【請求項2】
前記電池ケース本体部は、前記爪部が嵌挿される係止孔を内側面に備え、
前記爪部は、前記蓋部の一側面に設けられ、
前記蓋部を前記開口に沿ってスライドさせ、前記爪部を前記係止孔に嵌挿して前記蓋部を前記電池ケース本体部に固定する
請求項1に記載の電池ケース。
【請求項3】
前記電池ケース本体部内において、前記爪部を差し込み可能な空隙が、前記内側面の前記係止孔に面して配置される、
請求項2に記載の電池ケース。
【請求項4】
前記電池ケース本体部内の前記空隙は、前記爪部を差し込み、前記保持された前記コイン電池を、取り外し可能位置まで前記挿入方向とは逆方向に押し出すことができる大きさを有する、
請求項3に記載の電池ケース。
【請求項5】
前記電池ケース本体部は、前記コイン電池を保持する一体形成された電池ホルダーを更に備え、
前記電池ホルダーは、前記コイン電池を挟持する第1挟持部及び第2挟持部を含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池ケース。
【請求項6】
前記開口が閉じた状態において、前記蓋部の側に位置する前記第1挟持部は、前記爪部を差し込み可能な切り欠き部を含む、
請求項5に記載の電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池取り外し機能付き電池ケースに関し、特に保持するコイン電池を取り出し位置まで押し出し可能な蓋部を備える電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
小型の各種電子機器の電源として、コイン電池、ボタン電池等の扁平型電池が用いられている。これらの電子機器は、電池を装填するために、電池を収容する電池ケースを備えている。通常、電池ケースには電池を保持する電池ホルダーが設置されており、電池の着脱のための開口が設けられている。また、電池の遊動、脱落あるいは外部からの衝撃等による破損を防止するために、開口部分をカバー(蓋部)により閉じる構造となっている。
【0003】
一方、扁平型電池では、その薄い平坦な形状から、上下に配置された電気接点に対して側方に設けられる挿入口から、横方向にスライドさせて挿入及び取り出しを行う電池ホルダーが用いられる。この横スライド方式の電池ホルダーは電池の挿入は容易であるが、電池を保持するために、可撓性の突起部で電池を押圧する等の電池脱落防止機構を備えるため、取り出しにくい處がある。そのため、ホルダーに保持されている電池を、脱落防止機構から外して、挿入方向と逆方向にスライドさせるための仕組みが必要である。
【0004】
例えば、特許文献1に代表されるような電池ホルダーは、電池を挿入する開口端面を備え、開口端面の反対側の側面部から開口端面に向かって電池の一部の部位まで伸びる切り欠きが形成されている。電池を挿入するときは、開口端面から電池を押し込み、取り外すときは、取り出し用の工具を用いて、切り欠き部から開口端面方向に電池を押し出す仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−170517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような電池ホルダーでは、切り欠き部の構造に合致させたホルダーごとに専用の工具が必要である。特に、電池ホルダーが電池ケースあるいは電子機器に固定されている場合は、電池ホルダーの周囲に配置されている電子部品の形状や位置関係により電池の取り外すためのスペースが限定される。そのため、電池ホルダー構造に合致させた専用工具であっても、電池ケースや電子機器によっては使用できないことがある。そのときは、それぞれの電池ケースや電子機器に適合させた専用工具が必要となり、その分更なるコスト増となる。また、専用工具を、電池ホルダーを設置した電子機器と共に保持し管理する必要があり煩雑である。
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池ホルダーに保持されたコイン電池を、取り外し用の専用工具なしで容易に取り外すことができる電池ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である電池ケースは、スライドさせて挿入されたコイン電池を収容する電池ケースであって、前記コイン電池を収容する開口を備え、収容された前記コイン電池を保持する電池ケース本体部と、前記電池ケース本体部の前記開口を閉じる蓋部と、を有し、前記蓋部は、前記開口を閉じる際に前記電池ケース本体部に嵌挿され、且つ前記電池ケース本体部に保持された前記コイン電池を取り出す際に前記コイン電池を挿入方向とは逆方向に押し出す爪部を備える。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様において、前記電池ケース本体部は、前記爪部が嵌挿される係止孔を内側面に備え、前記爪部は、前記蓋部の一側面に設けられ、前記蓋部を前記開口に沿ってスライドさせ、前記爪部を前記係止孔に嵌挿して前記蓋部を前記電池ケース本体部に固定する。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、上記第2の態様において、前記電池ケース本体部内において、前記爪部を差し込み可能な空隙が、前記内側面の前記係止孔に面して配置される。
【0011】
本発明の第4の態様によれば、上記第3の態様において、前記電池ケース本体部内の前記空隙は、前記爪部を差し込み、前記保持された前記コイン電池を、取り外し可能位置まで前記挿入方向とは逆方向に押し出すことができる大きさを有する。
【0012】
本発明の第5の態様によれば、上記第1乃至4のいずれか一つの態様において、前記電池ケース本体部は、前記コイン電池を保持する一体形成された電池ホルダーを更に備え、前記電池ホルダーは、前記コイン電池を挟持する第1挟持部及び第2挟持部を含む。
【0013】
本発明の第6の態様によれば、上記第5の態様において、前記開口が閉じた状態において、前記蓋部の側に位置する前記第1挟持部は、前記爪部を差し込み可能な切り欠き部を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池ケース本体部の電池を収容するための開口を、蓋部により閉じて、その蓋部に設置された爪部で電池ケース本体部に固定することにより、コイン電池の遊動及び脱落、並びに外部からの衝撃等による破損を防止することができる。さらに、電池ケース本体部から分離した蓋部の爪部を、電池ケース本体部に設けられた空隙に差し込んで、コイン電池を挿入方向の逆方向に押し出すことにより、専用工具なしで容易に取り出すことができる。
【0015】
このように、電池の遊動及び脱落による動作不良、並びに外部からの衝撃等による破損を回避しながら、且つ電池の交換が容易な電池ケースを低コストで実現するという特有の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例に係る電池ケースの蓋部の斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る電池ケースの蓋部で開口を閉じた状態の斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る電池ケースの蓋部により電池を取り出す状態の斜視図である。
【
図4】本発明の実施例に係る電池ケースの平面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る電池ケースの
図4に示す線分A−A’の断面図である。
【
図6】本発明の実施例に係る電池ケースの
図4に示す線分B−B’の断面図である。
【
図7】(A)〜(D)本発明の実施例に係る電池ケースの
図4に示す線分A−A’の断面図における、電池の電池ホルダーへの設置手順を示す。
【
図8】(A)〜(D)本発明の実施例に係る電池ケースの
図4に示す線分A−A’の断面図における、蓋部による電池の取り外し手順を示す。
【
図9】本発明の変形例の電池ケースの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0018】
<実施例>
図1〜
図3に、本発明の実施例に係る電池ケース1の斜視図を示す。本発明の実施例に係る発明の電池ケース1は、電池ケース本体部2と蓋部10から構成される。電池ケース本体部2には、コイン電池を収容するための開口6が設けられ、蓋部10により、開口6を閉じることができるように構成されている。
【0019】
蓋部10は、その一側面から側方に突出した2つの爪部11を備える(
図1)。蓋部10は、爪部11が電池ケース本体部2に設置された係止孔(図示省略)に嵌挿されることにより、開口6を閉じると共に電池ケース本体部2に固定される(
図2)。
【0020】
一方、電池を取り出すときは、
図3に示すように蓋部10を電池ケース本体部2から外して、その爪部11を電池ケース本体部の係止孔に面して設けられた空隙に差し込み、コイン電池30を挿入口23の方向へ押し出して取り出すことができる。このように、爪部11は蓋部10を固定するだけではなく、コイン電池30を取り出すために押し出す機能も備えている。よって、爪部11は、それぞれの機能を実現するために必要な機械的強度を満たすように形成される。
【0021】
図4は本発明の実施例の平面図である。
図5及び
図6には、
図4に示した線分A−A‘及び線分B−B’における断面図をそれぞれ示した。
【0022】
図5に示す電池ケース本体部2は、電池ケース本体部2と一体形成され、第1挟持部21及び第2挟持部22を含む電池ホルダー20が設置されている。ここで、電池ケース本体部2に固定されているのは第2挟持部22である。電池ホルダー20は、第1挟持部21及び第2挟持部22でコイン電池30aを挟持する。なお、第1挟持部21及び第2挟持部22のいずれか一方あるいは両方に、コイン電池30を押圧して保持可能な可撓性の突起部を設けてもよい。
【0023】
また、保持されたコイン電池30を保護するために蓋部10により電池ケース本体部2の開口6の全体を閉じることができる。
図6に示すように、蓋部10の一側面から側方に突出した爪部11を、電池ケース本体部2の内側面に設けられた係止孔3に嵌挿して蓋部10を電池ケース本体部2に固定する。
【0024】
一方、
図4に示すように、電池ケース本体部2の内側面4には、蓋部10の一側面が内側面4に対向して固定されるときに、爪部11の位置と合致する位置に係止孔3が配置されている。なお、2つの爪部11は蓋部10の一側面の中心に対して互いに対称となる位置に形成されている。従って、蓋部10の一側面が内側面4の幅と合致するようにして、内側面4に沿って爪部11を電池ケース本体部2の開口6の内部の差し込むと、爪部11は係止孔3に面した位置にくる。このとき、コイン電池30が保持された状態にあっても爪部11を差し込むことに支障が無いように、内側面4とコイン電池30との間に、爪部11を挿入できる空隙5が確保されている。
【0025】
加えて、電池ホルダー20の第1挟持部21は、係止孔3に面する近傍に配置された空隙5を塞がないための切り欠き24aを含む。この、切り欠き24aは、空隙5に挿入された爪部11が、コイン電池30を取り出し可能位置まで押し出せるように、コイン電池30の一部を露出させている。
【0026】
次に、このような構造の電池ケース1における、コイン電池30の着脱の手順を
図7(A)〜(D)及び
図8(A)〜(D)を引用して説明する。これらはいずれも
図4の示された線分B−B‘部分の断面図である。
【0027】
図7(A)は、蓋部10が外され、開口6が開放されている電池ケース本体部2である。図中の符号24bは、第1挟持部21の切り欠き部の側面を示す。コイン電池30は電池ホルダー20の側方の挿入口23から挿入され、挿入方向にスライドさせながら押し込み、
図7(B)に示す保持位置まで挿入する。
【0028】
次に、
図7(C)に示ように、蓋部10を電池ケース本体部2の側方から開口6に沿ってスライドさせ、爪部11を係止孔3に嵌挿し固定する。これにより電池ケース本体部2の開口6は閉じられ、
図7(D)に示ように、コイン電池30が電池ケース1内に収容された状態となる。
【0029】
図8(A)は
図7(D)と同じ図面で、コイン電池30が電池ケース1内に収容された状態である。ここで、蓋部10の爪部11を、電池ケース本体部2の係止孔3から外し、
図8(B)に示すとおり、蓋部10を挿入方向と逆方向にスライドさせて電池ケース本体部2から分離する。
【0030】
分離した蓋部10の2つの爪部11を、電池ケース本体部2の内側面4及びコイン電池30の側面30bに囲まれた空隙5に差し込む。このとき、第1挟持部21は、十分な大きさの切り欠き24bを設けたことにより爪部11を差し込む際の障害とはならない。そして
図8(C)に示ように蓋部10を倒しこんで、コイン電池30を挿入方向と逆方向に押し出す。仮に、取り出し可能位置までコイン電池30が到達しないときは、蓋部10を更に押してコイン電池30を追加移動させてもよい(
図8(D))。
【0031】
上述したように、電池ケース本体部2のコイン電池30を収容するための開口6を、蓋部10により閉じて、その蓋部10に設置された爪部11で電池ケース本体部2に固定することにより、コイン電池30の遊動及び脱落、並びに外部からの衝撃等による破損を防止することができる。さらに、電池ケース本体部2から分離した蓋部10の爪部11を、電池ケース本体部2に設けられた空隙5に差し込んで、コイン電池30を挿入方向の逆方向に押し出すことにより、専用工具なしで容易に取り出すことができる。
【0032】
このように、電池の遊動及び脱落による動作不良、並びに外からの衝撃等による破損に対する耐性が強く、且つ電池の交換が容易な電池ケースを低コストで実現するという特有の効果を奏することができる。
【0033】
<変形例>
上記実施例においては、蓋部10が2つの爪部11を有し、電池ケース本体部2には係止孔3が2か所に設置されているが、爪部11の数は2つに限定するものでは無く、蓋部の大きさ(幅)によって爪部11の数は異なる場合がある。このような場合を変形例として説明する。
【0034】
図9は、爪部11が1つのときの電池ケース本体部の平面図である。係止孔3は内側面の中央近傍に設置され、蓋部10の一側面には、この係止孔3に対応する位置に爪部11が形成されている。空隙5及び第1挟持部21の切り欠き24aも、それぞれ係止孔3に面した近傍に設置されている。
【0035】
この変形例は、電池のサイズが小さく、蓋部10の幅が狭い場合に適している。そして、変形例においても、電池の遊動及び脱落による動作不良、並びに外部からの衝撃等による破損を回避しながら、且つ電池の交換が容易な電池ケースを低コストで実現するという特有の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 電池ケース
2 電池ケース本体部
3 係止孔
4 内側面
5 空隙
6 開口
10 蓋部
11 爪部
20 電池ホルダー
21 第1挟持部
22 第2挟持部
23 挿入口
24a 切り欠き(領域)
24b 切り欠き(第1挟持部21の側面)
30 コイン電池
30a コイン電池(断面)
30b コイン電池(側面)