特許第6943546号(P6943546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943546
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
   A41B 11/00 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   A41B11/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-113550(P2016-113550)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-218689(P2017-218689A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年5月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】河村 篤
(72)【発明者】
【氏名】美濃辺 淳
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第204120248(CN,U)
【文献】 実開平02−029405(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/087726(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下の足甲側に滑り止め部を有し、
前記滑り止め部は、第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ第1中足骨、第
2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に配置され、中間楔状骨の全部及び舟状骨の全部に対応する足甲側には、滑り止め部を設けておらず、
前記滑り止め部は、樹脂で構成されている突起を複数個含む突起群であり、
前記突起は、線状、ハニカム状、トッド状、円柱状、半円球状、四角柱状、三角柱状、円錐状、四角錘状、及び三角錐状からなる群から選ばれる1以上の形状を有する(但し、靴下本体の開口部とは反対側のみに傾斜する形状を有する突起は除く)ことを特徴とする靴下。
【請求項2】
前記突起は、線状、ハニカム状、トッド状、円柱状、及び半円球状からなる群から選ばれる1以上の形状を有する請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記樹脂は、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマ
ー、ポリエステルエラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びアクリロニ
トリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる1種
以上の弾性樹脂である請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
前記突起群において、突起の長さL1は30mm以下であり、突起間の距離L2は0.1mm以上であり、突起群の横ピッチP1は1〜30mmであり、突起群の縦ピッチP2は1〜30mmである請求項1〜3のいずれかに記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下に関するものであり、一方の足を軸足として回転した場合でも、シューズと足の滑りを抑えることができる靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
靴下は、通常、足の保護や保温の目的で用いられるが、着用性を向上させることが検討されている。例えば、特許文献1には、歩行やスポーツ時に、シューズと足のすべりを押さえるために、靴下の足裏面に多数の滑り止めを配置した靴下が記載されている。また、特許文献2には、乳幼児が這い這いをする際、靴下が足からずれて脱げることを防止するため、足甲部、例えば、舟状骨近傍の内表面、或いは、舟状骨近傍の内表面と外表面の両面に滑止材をシート状に設けた乳幼児用靴下が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第309334号公報
【特許文献2】特表2010−126864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の靴下は、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う際、一方の足を軸足として回転した場合、シューズと足の滑りを抑えることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、一方の足を軸足として回転した場合でも、シューズと足の滑りを抑えることができる靴下を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、靴下の足甲側に滑り止め部を有し、前記滑り止め部は、第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に配置されていることを特徴とする靴下に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の靴下を着用すると、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う際、一方の足を軸足として回転した場合でも、シューズと足の滑りを効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例における靴下の模式的上面図である。
図2図2Aは本発明の一実施例における靴下の足甲側の模式的部分平面図であり、図2Bは突起の断面図である。
図3図3Aは本発明の他の一実施例における靴下の模式的上面図であり、図3Bは同底面図である。
図4図4は、シューズのアッパーにマーカーを貼り付けた状態を説明する模式的外側面図である。
図5図5は、ゴルフでドライバーショッを行った際のアッパーの伸びの程度を示すシューズのアッパーの上面図である。
図6図6は、足の骨格の模式的上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、足裏面に滑り止めを設けた靴下を着用しても、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う際、一方の足を軸足として回転した場合、シューズと足の滑りを抑えることができない原因について検討を重ねた。その結果、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う際、足がシューズ内で浮いているフェースがあり、足裏面に滑り止めを設けた靴下を着用しても、シューズと足の滑りを抑えることができないことに辿りついた。また、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う場合、シューズのアッパーの歪が大きい部分と足の滑りを抑えることでフィット感が改善されることに辿りついた。
【0010】
一方の足を軸足として回転した場合のシューズのアッパーの歪みについて、アッパーがネオプレンで作製されたシューズを用いて検討した。具体的には、アッパーがネオプレンで作製されたシューズを着用して、ドライバーショットを行った。その際に、シューズのアッパーに貼り付けたマーカーの座標をEagle(Motion Analysis社製)によって計測し、その結果からアッパーの歪みの程度を算出した。マーカー30は、図4に示すようにシューズのアッパー100に貼り付けた。図5にアッパーの歪みの程度を示すシューズのアッパー100の上面図を示した。図5において、度合い200は、アッパーの歪みの程度を示し、IからII方向に行くほど、歪みが強くなることを意味する。図6に足の骨格の模式的上面図が示されている。図5及び図6から、アッパー100において、第1から第5基節骨全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域の歪みが大きいことが分かる。つまり、一方の足を軸足として回転した場合等の運動時の足の甲側がシューズ内で浮くことにより、アッパー100に歪みを与えている事が分かった。
【0011】
本発明では、靴下の足甲側の第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に滑り止め部(以下において、「足甲側滑り止め部」とも記す。)を配置することで、歩行時や、ゴルフ及び野球等のスポーツを行う際、一方の足を軸足として回転した場合でも、シューズと足の滑りを抑えることができ、シューズと足のフィット性が向上する。シューズのアッパーがネオプレン等の柔らかい素材で構成されている場合でも好適に用いることができる。アッパーが伸びにくいもので、足を固定するシューズであっても、シューズ内で足とアッパーには隙間が生じ、垂直方向の足の動きが発生するため、好適に用いることができる。
【0012】
上記靴下は、足甲側滑り止め部に加えて、足裏にも滑り止め部を有してもよい。例えば、足裏側において、母指球、第一指、踵部等を覆う領域に滑り止め部を配置することで、よりシューズとのフィット感を高めることができる。
【0013】
上記滑り止め部は、樹脂で構成された突起を複数個含む突起群であることが好ましい。着脱を容易にすることができる。突起の形状は、特に限定されず、例えば、線状、ハニカム状、トッド状、円柱状、半円球状、四角柱状、三角柱状、円錐状、四角錘状、三角錐状及びこれらの組み合わせ等のいずれの形状であってもよい。突起の大きさや突起間の間隔は、特に限定されず、所望の滑り止めの程度に合せて適宜調整すればよい。
【0014】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、弾性を有するものを用いることができる。弾性を有する樹脂としては、例えば、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ゴム系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)及びアクリル樹脂等が挙げられる。
【0015】
靴下の足甲側の所定領域に、例えば、これらの樹脂材料を流動可能な状態(例えば、液状)でプリント加工により塗布し、加熱し、硬化させることで滑り止め部を形成する。各々の突起の形状、大きさ、密度等を調整することで、滑り止めの程度を調整することができる。足裏側の滑り止め部も同様にして形成することができる。
【0016】
本発明において、靴下本体は、着用感の観点から、伸縮性を有することが好ましい。JIS L 1096に準じて測定した15N荷重下におけるタテ方向及び/又はヨコ方向の伸長率が40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0017】
本発明において、靴下本体に使用する繊維は、弾性糸を含む繊維糸が好ましい。弾性糸は、ポリウレタン系弾性糸及びポリエステル系弾性糸からなる群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。ストレッチ性が高く、靴下に適しているからである。上記弾性糸は、ベアヤーン(裸糸)として、非弾性糸(リジッド糸)と引きそろえて使用しても良いし、又は表面にポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ウール、木綿等が被覆されたカバードヤーンとして使用しても良い。
【0018】
以下図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における靴下の模式的上面図であり、図2Aは同足甲側の模式的部分平面図であり、図2Bは突起の断面図である。靴下1は、足甲側に滑り止め部2を有し、滑り止め部2は、第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に配置されている。また、中間楔骨及び舟状骨に対応する足甲側には、足首の屈曲性を阻害しないように滑り止めを設けないことで、さらにフィット感が改善される。
【0019】
滑り止め部2は、樹脂で構成された突起2aを複数含む突起群である。図2Bに示されているように突起2aが半円球状の場合、特に限定されないが、靴下の着脱の容易性及び一方の足を軸足として回転した場合のシューズと足の滑りを効果的に抑える観点から、高さH1を0.1〜5mmにし、長さL1を0〜30mmにし、突起間の距離L2を0.1mm以上にし、突起群の横ピッチP1を1〜30mmにし、突起群の縦ピッチP2を1〜30mmにすることが好ましい。ここで、長さL1が0mmということは、0.1mm単位までを測定できる測定具では長さL1を測定できないことを意味する。
【0020】
上記において、突起2aが略半円球状の場合を説明したが、突起2aの形状は、線状、ハニカム状、トッド状、半円球状、円柱状、四角柱状、三角柱状、円錐状、四角錘状、三角錐状及びこれらの組み合わせ等のいずれの形状であってもよい。突起の大きさや突起間の間隔も、特に限定されず、所望の滑り止めの程度に合せて適宜調整すればよい。
【0021】
図3Aは本発明の他の一実施例における靴下の模式的上面図であり、図3Bは同底面図である。図3Aに示されているように、該実施例の靴下10は、靴下1と同様、足甲側に滑り止め部2を有し、滑り止め部2は、第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に配置されている。図3Aでは、図1と同一の部分には同一の符合を付けており、重複する説明は省略する。
【0022】
また、図3Bに示されているように、靴下10は、足裏側に滑り止め部3を有する。滑り止め部3は、母指球、第一指、踵部等を覆う領域に配置されていることが好ましい。滑り止め部3は、樹脂で構成された突起3aを複数含む。突起3aは、突起2aと同様の形状及び大きさを有してもよく、突起2aと異なる形状及び大きさを有してもよい。滑り止め部3において、突起間の距離、突起群の横ピッチ及び突起群の縦ピッチは、滑り止め部2の場合と同様にしてもよく、滑り止め部2の場合と異なるようにしてもよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
(1)靴下本体の作製
<使用糸>
本実施例の靴下の糸使いは、表糸として、綿50%/ポリエステル50%紡績糸(32/−:毛番手)、裏糸として、ポリウレタンにナイロンをカバーリングしているFTY(ファイバーツイステッドヤーン)(繊度:33decitex(30d)/77decitex(70d))及び弾性糸として、ポリウレタンにナイロンをカバーリングしているDCY(ダブルカバードヤーン)(繊度:77decitex(70d)/77decitex(70d))の3種類からなり、表糸、裏糸及び弾性糸が靴下の全体を、表糸と裏糸が履き口部分を構成している。
<編成方法>
編み物組織はシングル編みとし、図1に示すような靴下本体(サイズ:26cm用)を作製した。
(2)足甲側の滑り止め部の形成
靴下の足甲側の第1基節骨から第5基節骨までの基節骨の全て、且つ第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に、シリコーン樹脂をプリント加工により塗布し、加熱し、硬化させて、図1に示すように滑り止め部2を形成した。滑り止め部2は、突起2aを複数含む突起群であった。突起2aは、高さH1が2mm、長さL1が4mmであった。また、滑り止め部2において、突起2a間の距離L2は2mm、突起群の横ピッチP1は4.2mm、突起群の縦ピッチP2は4.2mmであった。
【0025】
図2Aの足甲側の模式的部分平面図、すなわち靴下を平置きにした場合、各サイズは以下のとおりであった。靴下1の最大幅Waは105mm、滑り止め部2の全体幅Wbは80mm、靴下の先端から第1中足骨側滑り止め部2の末端までの長さLaは130mm、靴下の先端から第2中足骨側の滑り止め部2の末端までの長さLbは102mm、靴下の先端から第5中足骨側の滑り止め部2の末端までの長さLcは95mm、靴下の先端から第5基節骨側(或いは第1基節骨側)の滑り止め部2の先端までの長さLdは23mm、第5基節骨側(或いは第1基節骨側)の滑り止め部2の先端から第3基節骨側の滑り止め部2の先端までの長さLeは12mmであった。
【0026】
(実施例2)
実施例1と同様にして、靴下本体及び足甲側の滑り止め部を形成した。
<足裏側の滑り止め部の形成>
靴下の足裏側の第1指、母指球、踵部、第5基節骨、第5中足骨を覆う領域に、シリコーン樹脂をプリント加工により塗布し、加熱し、硬化させて、図3Bに示すように滑り止め部3を形成した。滑り止め部3は、突起3aを複数含む突起群であった。突起3aは、高さH1が2mm、長さL1が4mmであった。また、滑り止め部2において、突起3a間の距離L2は2mm、突起群の横ピッチP1は4.2mm、突起群の縦ピッチP2は4.2mmであった。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様にして、靴下本体を作製し、比較例1とした。
【0028】
健康な男性被験者10名に靴下を着用させ、歩行、ゴルフスイング時の足とシューズのフィット感を下記の5段階基準で官能評価した。歩行は、被験者に靴下を着用させ、シューズを履き、トレッドミル上を時速4kmで10分間歩行した時のフィット感を官能評価した。ゴルフスイングは、被験者に靴下を着用させ、シューズを履き、ドライバーにて実打を10球した時のフィット感を官能評価した。その結果を下記表1に示した。
1:かなり悪い
2:悪い
3:普通
4:良い
5:かなり良い
【0029】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の靴下は、歩行用や、野球、ゴルフ、ホッケー、サッカー、ジョギング、マラソン、テニス、バドミントン、スカッシュ、卓球、登山、トレッキング、ハイキング、スキー、スノーボード及びスケート等あらゆるスポーツ用として好適である。その他、一般の靴下として用いることもできる。
【符号の説明】
【0031】
1、10 靴下
2、3 滑り止め部
2a、3a 突起
100 シューズのアッパー
30 マーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6