【文献】
Blood[online],2013年12月 5日,Vol.122,[検索日 2018.08.07],インターネット:<URL:http://www.bloodjournal.org/content/122/21/2665>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗原結合領域が、配列番号20、24、及び27の軽鎖可変領域CDR配列と、配列番号7、10、及び13の重鎖可変領域CDR配列を含む、請求項1に記載のCAR。
前記抗原結合領域が、配列番号21、24、及び28の軽鎖可変領域CDR配列と、配列番号8、10、及び14の重鎖可変領域CDR配列を含む、請求項1に記載のCAR。
前記膜貫通領域が配列番号35のCD8αヒンジ配列と配列番号36の配列の膜貫通領域とを含み、前記細胞内T細胞シグナル伝達領域が、配列番号37の4-1BBアミノ酸配列を含み、且つ、前記細胞内T細胞シグナル伝達領域が、配列番号38のCD3ゼータアミノ酸配列を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のCAR。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
急性リンパ性白血病(Acute lymphoblastic leukemia, ALL)は、小児においてよくみられる腫瘍診断(oncologic diagnosis)を表す。患者の大部分が治癒するように、小児ALLのための最前線の化学療法において具体的進展がなされてきた。それでもなお、細胞毒性化学療法の効果がもはやない疾患の再発に起因して、又は最前線の治療に対する治療抵抗性に起因して、ALLは、依然として小児のガンからのよくある死因のままである。更に、長期治療に伴う死亡率は、特に、再発のリスクが高いとみなされ、それゆえ、現在のリスクに応じたプロトコル下では、より強度の投薬計画(more intense regimen)で治療されるそれらの患者において、依然として大きな問題のままである。成人では、ALLは、小児においてよりもまれに発生するが、成人ALLに対する予後は、標準の細胞毒性化学療法を受ける小児においてよりも不良である。小児タイプの投薬計画における若年成人の治療は、アウトカムを改善させたが、小児において達成されたレベルまで改善させたわけではない。
【0009】
リンパ系細胞に発現された抗原を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝的に改変されたT細胞の養子細胞移植(ADT又はACT)は、ALL等のB細胞悪性腫瘍(B cell malignancy)において、強力な活性を示し、化学療法の難治性患者に寛解をもたらした。これらの試験の大半において標的とされた表面タンパク質は、悪性及び非悪性B細胞の両方に発現されているCD19抗原である。しかしながら、全ての患者が効果を示すわけではなく、いくつかの事例ではCD19発現の喪失に起因する再発が起こる。CD19の喪失は、CD19及びCD3を標的とする二重特異性抗体(bispecific antibody)をベースとする試薬を用いた治療後にも見られた。
【0010】
ゲノミクスにおける具体的進展は、ALLにおいて調節不全となる遺伝子及び経路の同定をもたらした。1のかかる部類は、IL-7及び、特に、CD127 (IL-7Rアルファ)を含むサイトカインシグナル伝達系(cytokine signaling)に関連するものである。胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、CD127を共有するが、第2の受容体鎖(receptor chain)、TSLPR (遺伝子名CRLF2)をヘテロ二量体シグナル伝達複合体の一部として利用するサイトカインである。TSLPRの過剰発現は、選択的プロモーター(alternative promoter)において生じる転座(translocation)又は欠失(deletion)に主に起因して、小児及び成人ALLのうちの5〜10%において確認されている。TSLPRの過剰発現は、ALLを有する小児及び成人の両方において予後不良に関連するように思われ、TSLPR経路の活性化がALL芽球(ALL blast)のために生物学的に重要である(as biologincally important)ように思われる。また、約50%の事例、特に患者の、高いリスクの下位群(subgroup)では、TSLPR発現が増加していることは、IKZF遺伝子の突然変異に関連している。TSLPRは、正常組織発現は限られるようにみえる。
【0011】
本発明の一実施態様は、TSLPRに特異的な抗原結合領域、膜貫通領域、及び細胞内T細胞シグナル伝達領域を含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。CARは、4-1BB細胞内領域、スペーサー、又は両方を更に含み得る。
【0012】
キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達領域に結合された抗体の抗原結合領域(例えば、1本鎖可変フラグメント(single chain variable fragment, scFv))を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴は、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHCに制限されない様式でT細胞特異性及び反応性を、選択された標的へ向け直すその能力を含む。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に抗原プロセシング(antigen processing)と独立して抗原を認識する能力を与え、それゆえ腫瘍回避(tumor escape)の主な機構を迂回する。さらに、T細胞に発現される場合、CARは、有利なことに内在性T細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖と二量体化しない。
【0013】
本明細書中に使用される場合、「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的反応を引き起こす」という語句は、抗原へのCARの結合が免疫反応を引き起こすように、CARが抗原に特異的に結合し、かつ、抗原を免疫学的に認識し得ることを意味する。
【0014】
本発明のCARは、胸腺間質性リンパ球新生因子受容体(TSLPR)に対する抗原特異性を有する。TSLPRは、約10%の成人及び小児のB前駆細胞性急性リンパ性白血病細胞(B cell precursor acute lymphoblastic leukemia, BCP-ALL)の表面に過剰発現されている。正常な、非腫瘍性の、又は非ガン性細胞によるTSLPRの発現は、腫瘍又はガン細胞の発現ほどにはロバスト(robust)でない。この点において、腫瘍又はガン細胞は、TSLPRを過剰発現し、又は正常な、非腫瘍性の、又は非ガン性細胞によるTSLPRの発現と比較して、有意に高いレベルでTSLPRを発現し得る。
【0015】
特定の理論又は機構に拘束されるものではないが、TSLPRに対する抗原特異的反応を生じさせることにより、本発明のCARは、以下: TSLPR-発現ガン細胞を標的とすること及びTSLPR-発現ガン細胞を破壊すること、ガン細胞を減少させ又は除去すること、免疫細胞の腫瘍部位(複数可)への浸潤を促進すること、並びに抗ガン反応を増進すること(enhancing)/延長すること(extending)、のうちの1以上を提供すると考えられる。
【0016】
本発明は、抗体、例えば、Lu et al., J. Exp. Med., 2009, 206:2111-9 に記載された通りの3G11又はRochman et al., J. Immunol., 2007, 178:6720-6724に記載された通りの2D10 (それぞれが参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる)に基づいて、TSLPRに特異的な抗原結合領域を含むCARを提供する。これらの抗体のscFvは、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。本発明の実施態様では、軽鎖及び重鎖は、例えば、下の表1に列挙されたように、軽鎖及び重鎖配列のいかなる適切な組み合わせも含み得る。
【0017】
一実施態様では、抗原結合領域がリンカーを含む。リンカーは、抗原結合領域の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をつなぐ。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を結合させるための適切ないかなるリンカーも本発明の抗原結合領域において使用され得る。一実施態様では、リンカーは、グリシン・セリンリンカー領域(glycine-serine linker domain)を含み、グリシン・セリンリンカー領域からなり、又は基本的にグリシン・セリンリンカー領域からなる。好ましくは、抗原結合領域は、scFvを含み、該scFvは、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、及びリンカーを含む。本発明の一実施態様では、軽鎖、重鎖、及びリンカーが、下の表1に列挙されるように、軽鎖、重鎖、及びリンカー配列のいかなる適切な組み合わせも含み得る。
【0018】
本発明の一実施態様では、抗原結合領域がscFvを含み、該scFvは、
QVTLKESGPGILKPSQTLSLTCSFSGFSLSTSGMGVGWIRQPSGKGLEWLAHIWWDDDKYYNPSLKSQLTISKDTSRNQVFLKITSVDTADTATYYCSRRPRGTMDAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQAASSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTIRNLEQEDIATYFCQQVYTLPWTFGGGTKLEIK (配列番号1)又は
QVTLKESGPGILKPSQTLSLTCSFSGFSLNTSGMGVGWIRQPSGKGLEWLAHIWWDDDKYYNPSLKSQLTISKDTSRNQVFLKITSVDTADSATYYCARRASHVSTVDSFDFWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLNWFQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSKFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGYTLPWTFGGGTKLEIK (配列番号2)
を含み、該配列からなり、あるいは基本的に該配列からなる。
【0019】
本明細書中に記載されたアミノ酸配列をコードするベクターは、開始コドンのすぐ前に、ASAT (配列番号3)等のAS、AT、又は両方をコードする核酸配列を含み得る。これらの配列は、CARの一部としては翻訳されない。
【0020】
一実施態様では、抗原結合領域は、リーダー/シグナル配列を含む。リーダー配列は、重鎖可変領域のアミノ末端に位置してい得る。リーダー配列は、いかなる適切なリーダー配列も含み得る。本発明の実施態様では、リーダー/シグナル配列は、下の表1に列挙される通りの配列を含み得る。T細胞の成熟形態では、リーダー配列は存在し得ない。
【0021】
本発明の一実施態様では、CARは、膜貫通領域を含む。本発明の一実施態様では、膜貫通領域がCD8を含む。CD8は、CD8α (CD8アルファ)ヒンジ及び膜貫通領域を含み得る。好ましい一実施態様では、CD8はヒトのものである。CD8は、CD8全体よりも小さいものを含み得る。本発明の実施態様では、CD8は、下の表1に列挙された通りの配列を含み得る。
【0022】
本発明の一実施態様では、CARは、細胞内T細胞シグナル伝達領域を含み、該細胞内T細胞シグナル伝達領域は、4-1BB (CD137)、CD3ゼータ(ζ)、又は両方を含む。好ましい一実施態様では、CD3ゼータ、4-1BB、又は両方がヒトのものである。4-1BBは、強い副刺激シグナル(costimulatory signal)をT細胞へ送り、該副刺激シグナルが、Tリンパ球の分化を促進し長期生存を増進する。CD3ζは、TCRと会合してシグナルを生成し、免疫受容活性化チロシンモチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif, ITAM)を含む。一実施態様では、CARが4-1BB領域を欠いている。別の実施態様では、CARがCD28領域を含む。CD28は、T細胞副刺激に重要なT細胞マーカーである。4-1BB、CD28、CD3ゼータ、又はこれらのいずれかは、それぞれ4-1BB又はCD3ゼータ全体よりも小さいものを含み得る。本発明の実施態様では、4-1BBが下の表1に列挙された通りの配列を含み得る。本発明の実施態様では、CD3ゼータが下の表1に列挙された通りの配列を含み得る。
【0023】
本発明の一実施態様では、CARがスペーサーを含む。スペーサーは、いかなる前述の領域の間にもあり得る。一実施態様では、CARは、IgG重鎖定常領域(CH2CH3)スペーサーを含む。更なる一実施態様では、スペーサーがscFv及び膜貫通領域の間にあり得る。好ましい一実施態様では、スペーサーの配列、例えば、CH2CH3が、ヒトのものである。本発明の実施態様では、スペーサーが下の表1に列挙された通りの配列を含み得る。
【0024】
本発明の実施態様は、下の表1中に提供された通りの配列を含む。
【0028】
本発明の実施態様は、上の表1中に提示された配列を含む表2中の以下の配列を含む。
【0030】
本発明の実施態様は、シグナルペプチドが存在しない場合に、上の表1中に提示された配列を含む、表3中の以下の配列を含む。
【0032】
本発明の範囲に含まれるのは、本明細書中に記載された本発明のCARの機能的部分である。「機能的部分」という用語は、CARを参照して使用される場合、CAR(親CAR)の生物活性の一部を保っている本発明のCARのいかなる部分又はフラグメントも指す。機能的部分は、例えば、親CARと、同様の程度に(similar extent)、同じ程度に(same extent)、又はより高度に、標的細胞を認識し、又は疾患を検出し、治療し、又は予防する能力を保っているCARのそれらの部分を包含する。親CARを参照して、機能的部分は、例えば、親CARの、約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、又はそれより多くを含み得る。
【0033】
機能的部分は、該部分のアミノ末端もしくはカルボキシ末端において、又は両末端において付加的なアミノ酸を含み得、該付加的なアミノ酸は親CARのアミノ酸配列において発見されない。望ましくは、付加的なアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例えば、標的細胞を認識し、ガンを検出し、ガンを治療又は予防する等を妨げない。より望ましくは、付加的なアミノ酸は、親CARの生物活性に比べて、生物活性を増進する。
【0034】
本発明の範囲に含まれるのは、本明細書中に記載された本発明のCARの機能的バリアント(functional variant)である。本明細書中に使用された場合の用語「機能的バリアント」は、親CARに対し相当な(substantial)もしくは有意な配列同一性(sequence identity)又は類似性(similarity)を有するCAR、ポリペプチド、又はタンパク質を指し、該機能的バリアントは、該バリアントが、それについてバリアントであるCARの生物活性を保持している。機能的バリアントは、本明細書中に記載されたCAR(親CAR)のそのバリアントを包含し、該バリアントは、例えば、親CARと、同様の程度に、同じ程度に、又はより高度に標的細胞を認識する能力を保っている。親CARを参照して、機能的バリアントは、例えば、親CARに対し、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%又はそれを超えて一致するアミノ酸配列を有し得る。
【0035】
機能的バリアントは、例えば、親CARのアミノ酸配列に少なくとも1の保存アミノ酸の置換を有するものを含み得る。代替的に又は追加的に、機能的バリアントは、親CARのアミノ酸配列に少なくとも1の非保存アミノ酸(non-conservative amino acid)の置換を有するものを含み得る。この事例では、非保存アミノ酸の置換は、機能的バリアントの生物活性を妨げず、又は抑制しないことが好ましい。非保存アミノ酸の置換は、機能的バリアントの生物活性を親CARに比べて向上させるように、機能的バリアントの生物活性を増進し得る。
【0036】
本発明のCARのアミノ酸の置換は、好ましくは保存アミノ酸の置換である。保存アミノ酸の置換は、当分野において既知であり、いくつかの物理的及び/又は化学的性質を有する1のアミノ酸が同じ又は類似の化学的又は物理的性質を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存アミノ酸配列の置換は、酸性/負電荷極性アミノ酸が別の酸性/負電荷極性アミノ酸(例えば、Asp又はGlu)に置換されるもの、非極性側鎖を有するアミノ酸が非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Val、等)に置換されるもの、塩基性/正電荷極性アミノ酸が別の塩基性/正電荷極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Arg、等)に置換されるもの、極性側鎖を有する非荷電アミノ酸が極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、等)に置換されるもの、ベータ枝分かれ側鎖(beta-branched side-chain)を有するアミノ酸がベータ枝分かれ側鎖(例えば、Ile、Thr、及びVal)を有する別のアミノ酸と置換されたもの、芳香族側鎖を有するアミノ酸が芳香族側鎖(例えば、His、Phe、Trp、及びTyr)を有する別のアミノ酸と置換されるもの、等であり得る。
【0037】
また、アミノ酸は、ベクター設計に基いて、付加され得、又は配列から除去され得る。例えば、ベクター設計によるアミノ酸をベクターのBspEI部位に付加された配列番号34が、本明細書中に記載された通りのCARから除去され得、例えば、表2、表3、又は両方における配列から除去され得る。
【0038】
CARは、他の成分、例えば、他のアミノ酸が、機能的バリアントの生物活性を実質的に変更しないように、基本的に本明細書中に記載された特定のアミノ酸配列(単数又は複数)からなり得る。
【0039】
本発明の実施態様のCAR(機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、CAR (又はその機能的部分又は機能的バリアント)がその生物活性、例えば、抗原に特異的に結合し、哺乳動物において異常細胞(diseased cell)を検出し、又は哺乳動物において疾患を治療もしくは予防する、等の能力を保っているという条件で、いかなる長さでもあり得、すなわち、いかなる数のアミノ酸も含み得る。例えば、CARは、長さ50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000又はそれ以上のアミノ酸等、約50〜約5000アミノ酸長であり得る。
【0040】
本発明の実施態様のCAR (本発明の機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。かかる合成アミノ酸は、当分野において既知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0041】
本発明の実施態様のCAR (機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、グリコシル化され、アミド化され、カルボキシル化され、リン酸化され、エステル化され、N-アシル化され、例えば、ジスルフィド架橋によって環化され、又は酸付加塩に変えられ及び/又は所望により二量体化されもしくは重合させられ、又は結合させられ得る(conjugated)。
【0042】
本発明の実施態様のCAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、当分野において既知の方法によって取得され得る。CARは、ポリペプチド又はタンパク質を製造するいかなる適切な方法によっても製造され得る。ポリペプチド及びタンパク質をデノボ(de novo)に合成する適切な方法は、Chan et al., Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2000; Peptide and Protein Drug Analysis, ed. Reid, R., Marcel Dekker, Inc., 2000; Epitope Mapping, ed. Westwood et al., Oxford University Press, Oxford, United Kingdom, 2001;及び米国特許第5,449,752号等の参考文献に記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、本明細書中に記載されている核酸を用いて、標準の組み換え方法を用いて、組換え技術によって製造され得る。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual、 3
rd ed., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY 2001;及び Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons, NY, 1994を参照。更に、いくつかの本発明のCAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、植物、細菌、昆虫、哺乳動物、例えば、ラット、ヒト、等の供給源から単離され、及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は、当分野において周知である。別の方法として、本明細書中に記載されたCAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)は、企業により商業的に合成され得る。この点において、本発明のCARは、合成され、組換えられ、単離され、及び/又は精製され得る。
【0043】
本発明の一実施態様は、本発明のCARのエピトープ(epitope)に特異的に結合する、抗体、又はその抗原結合部分を更に提供する。抗体は、当分野において既知のいかなる種類の免疫グロブリンでもあり得る。例えば、抗体は、いかなるイソタイプ(isotype)、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、等のものでもあり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然に存在する抗体、例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト、等から単離され及び/又は精製された抗体であり得る。別の方法として、抗体は、遺伝子操作されている(genetically-engineered)抗体、例えば、ヒト化(humanized)抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、単量体型(monomeric form)又は多量体(polymeric)型のものであり得る。また、抗体は、本発明のCARの機能的部分に対するいかなるレベルの親和性(affinity)又は結合活性(avidity)も有し得る。
【0044】
本発明のCARのいかなる機能的部分に結合する能力について抗体を試験する方法も、当分野において既知であり、例えば、放射免疫測定(radioimmunoassay, RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降(immunoprecipitation)、及び競合阻害アッセイ(competitive inhibition assay)等のいかなる抗体-抗原結合アッセイも含む(例えば、下記Janeway et al.,、米国特許出願公開第2002/0197266 A1号、及び米国特許第 7,338,929号を参照)。
【0045】
抗体を製造する適切な方法は、当分野において既知である。例えば、標準のハイブリドーマ(hybridoma)法が、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5, 511-519 (1976), Harlow and Lane (eds.), Antibodies: A Laboratory Manual, CSH Press (1988),及び C.A. Janeway et al. (eds.), Immunobiology, 5
th Ed., Garland Publishing, New York, NY (2001))に記載されている。あるいは、EBV-ハイブリドーマ法(Haskard and Archer, J. Immunol. Methods, 74(2), 361-67 (1984)、及びRoder et al., Methods Enzymol., 121, 140-67 (1986))、及びバクテリオファージベクター発現系(例えば、Huse et al., Science, 246, 1275-81 (1989)を参照)等の他の方法が当分野において既知である。更に、非ヒト動物における抗体の製造方法は、例えば、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、及び第5,714,352号、米国特許出願公開第2002/0197266 A1号、及び米国特許第7,338,929号に記載されている)。
【0046】
ファージ提示法(Phage display)は、更に抗体を作製するために使用され得る。この点において、抗体の抗原-結合可変(V)領域をコードするファージライブラリ(phage library)は、標準の分子生物学技術及び組換えDNA技術(例えば、上記Sambrook et al.,、及び上記Ausubel et al.,を参照)を用いて作製され得る。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原に対する特異的結合性について選択され、完全又は部分的な抗体が、選択された可変領域を含んで、再構成される。モノクローナル抗体の特性を有する抗体が細胞により分泌されるように、再構成された抗体をコードする核酸配列が、ハイブリドーマ製造のために使用される骨髄腫細胞(myeloma cell)等、適切な細胞株に導入される(例えば、上記Janeway et al.、上記Huse et al.、及び米国特許第6,265,150号を参照)。
【0047】
抗体は、特異的な重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子について遺伝形質を転換した(transgenic)トランスジェニックマウスによって製造され得る。かかる方法は、当分野において既知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び第5,569,825号、及び上記Janeway et al.に記載されている。
【0048】
ヒト化抗体を作製するための方法は、当分野において周知であり、例えば、上記Janeway et al.、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号及び第5,693,761号、欧州特許第0239400 B1号、及び英国特許第2188638号に詳細に記載されている。ヒト化抗体は、米国特許第5,639,641号及びPedersen et al., J. Mol. Biol., 235, 959-973 (1994)に記載されている抗体表面再構成技術(antibody resurfacing technology)を用いて作製され得る。
【0049】
本発明の一実施態様は、本明細書中に記載されているいずれかの抗体の抗原結合部分も提供する。抗原結合部分は、Fab、F(ab’)
2、dsFv、sFv、二重特異性抗体(diabody)、及び三重特異性抗体(triabody)等の少なくとも1の抗原結合部位を有するいかなる部分でもあり得る。
【0050】
1本鎖可変領域フラグメント(sFv)抗体フラグメントは、所定の組換えDNA技術の手法(例えば、上記Janeway et al.を参照)を用いて作製され得る。同様に、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(disulfide-stabilized variable region fragments, dsFv)は、組換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Reiter et al., Protein Engineering, 7, 697-704 (1994)を参照)。しかしながら、本発明の抗体フラグメントは、これらの例示的な種類の抗体フラグメントに限定されない。
【0051】
また、抗体、又はその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、蛍光色素分子(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate, FITC)、フィコエリトリン(phycoerythrin, PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)等の検出可能な標識を含むように改変され得る。
【0052】
本発明の一実施態様によって更に提供されるのは、本明細書中に記載されたいずれかのCAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)をコードする核酸配列を含む核酸である。本発明の核酸は、本明細書中に記載されたリーダー配列(leader sequence)、抗原結合領域、膜貫通領域、及び/又は細胞内T細胞シグナル伝達領域(intracellular T cell signaling domain)のうちのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0053】
いくつかの実施態様では、ヌクレオチド配列は、コドンを最適化され得る(codon-optimized)。特定の理論に拘束されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を向上させると考えられている。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然のコドンを、同じアミノ酸をコードするが細胞内においてより容易に利用可能なtRNAによって翻訳され得る別のコドンに置換し、それゆえ翻訳効率を向上させ得ることを含み得る。ヌクレオチド配列の最適化は、また、翻訳を妨げるであろう2次mRNA構造を減少させ、それゆえ翻訳効率を向上させ得る。
【0054】
本発明の一実施態様では、核酸が、本発明のCARの抗原結合領域をコードする、コドンを最適化されたヌクレオチド配列を含み得る。本発明の別の実施態様では、核酸は、本明細書中に記載されたCAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)のいずれかをコードする、コドンを最適化されたヌクレオチド配列を含み得る。
【0055】
本明細書中で使用された場合の「核酸」としては、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクオチド」、及び「核酸分子」が挙げられ、1本鎖又は2本鎖であり、合成され又は天然の供給源から入手され得(例えば、単離及び/又は精製される)、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含み得、かつ、修飾されていないオリゴヌクレオチドのヌクレオチドの間において見出されるホスホジエステルの代わりに、ホスホロアミダート結合(phosphoroamidate linkage)又はホスホロチオエート結合(phosphorothioate linkage)等の、天然、非天然又は改変されたヌクレオチド間結合(internucleotide linkage)を含み得る、DNA又はRNAの高分子化合物を通常、意味する。いくつかの実施態様では、核酸は、挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含まない。しかしながら、いくつかの例では、本明細書中において考察するように、核酸が、1以上の挿入、欠失、逆位、及び/又は置換を含むことが適切であり得る。
【0056】
本発明の一実施態様の核酸は、組換え体であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「組換え体」は、(i)天然又は合成核酸断片を、生きた細胞において複製され得る核酸分子に連結することにより、生きた細胞の外側で構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されたものの複製から生じる分子を指す。本明細書中の目的のために、複製は、インビトロ(in vitro)の複製又はインビボ(in vivo)の複製であり得る。
【0057】
組換え核酸は、天然に存在しない配列を有するものであり得、又は2のそうでなければ別々の配列の断片の人為的な組み合わせにより作られた配列を有するものであり得る。この人為的な組み合わせは、化学合成又は、より一般的には、核酸の単離された断片の人為的操作によって、例えば、上記Sambrook et al.に記載されたもの等の遺伝子工学技術によって、しばしば成し遂げられる。核酸は、当分野において既知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素性連結反応(enzymatic ligation reaction)に基づいて構築され得る。例えば、上記Sambrook et al.及び上記Ausubel et al.を参照。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、並びに、分子の生物学的安定性を向上させるように、又は、ハイブリダイゼーション状態で形成される2本鎖の物理的安定性を向上させるように、設計された(例えば、ホスホロチオエート誘導体(derivative)及びアクリジンで置換されたヌクレオチド)様々な修飾ヌクレオチドを用いて化学的に合成され得る。核酸を作製するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例としては、限定されるものではないが、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン(galactosylqueosine)、イノシン、N
6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N
6-置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン(mannosylqueosine)、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N
6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び2,6-ジアミノプリンが挙げられる。別の方法として、本発明の1以上の核酸が、Integrated DNA Technologies (Coralville, IA, USA)等の企業から購入され得る。
【0058】
核酸は、単離され又は精製されたいかなるヌクレオチド配列も含み得、該ヌクレオチド配列が、CAR又はその機能的部分もしくは機能的バリアントのうちのいずれかをコードする。別の方法として、ヌクレオチド配列は、配列のいずれかに対し縮重(degenerate)したヌクレオチド配列又は縮重した配列の組み合わせを含み得る。
【0059】
本発明の一実施態様は、また、本明細書中に記載された核酸のうちのいずれかのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、あるいは本明細書中に記載された核酸のうちのいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件(stringent condition)下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列を含む、単離された又は精製された核酸を提供する。
【0060】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシーの条件(high stringency condition)下でハイブリダイゼーションし得る。「高ストリンジェンシーの条件」により意味するのは、ヌクレオチド配列が、非特異的なハイブリダイゼーションと比べて検出可能により顕著な(stronger)量において、標的配列(本明細書中に記載された核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイゼーションすることである。高ストリンジェンシーの条件としては、ヌクレオチド配列に一致する少数の小領域(例えば、3〜10塩基)を偶然有するランダム配列(random sequence)から、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、又は少数の散在しているミスマッチ(scattered mismatch)のみを含むものを識別するであろう条件が挙げられる。相補性のあるかかる小領域は、14〜17又はそれを超える塩基の完全長の相補体より容易に融解し、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションがそれらを容易に識別可能にする。相対的に高ストリンジェンシーの条件は、例えば、約50〜70℃の温度で約0.02〜0.1 M NaCl又は同等のもの(equivalent)によってもたらされるといった低塩及び/又は高温条件を含むだろう。かかる高ストリンジェンシーの条件は、ヌクレオチド配列と鋳型(template)もしくは標的鎖との間のミスマッチを、たとえあったとしてもほとんど許容せず、本発明のCARのいずれかの発現を検出するのに特に適している。条件は、ホルムアミドの量を増加させる工程を追加することによって、よりストリンジェントな状態になり得ると通常理解される。
【0061】
また、本発明は、本明細書中に記載された核酸のいずれかと、少なくとも約70%以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%一致するヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0062】
一実施態様では、本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組み込まれ得る。この点において、本発明の一実施態様は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書中の目的に関し、用語「組換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む場合、及びベクターを細胞と、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドを細胞内に発現させるのに十分な条件下で接触させる場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドの発現を可能にする、遺伝子操作されている(genetically-modified)オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドコンストラクトを意味する。本発明のベクターは、全体としては天然に存在しない。しかしながら、ベクターの一部は、天然に存在し得る。本発明の組換え発現ベクターは、限定されるものではないが、1本鎖又は2本鎖であり、合成され又は天然の供給源から一部取得され、かつ天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含み得るDNA及びRNA等、いかなる種類のヌクレオチドも含み得る。組換え発現ベクターは、天然に存在する又は天然に存在しないヌクレオチド間結合、又は両方の種類の結合を含み得る。好ましくは、天然に存在しない又は改変されたヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写又は複製を妨害しない。
【0063】
一実施態様では、本発明の組換え発現ベクターは、いかなる適切な組換え発現ベクターでもあり得、いかなる適切な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトするためにも使用され得る。適切なベクターは、プラスミド及びウイルス等、伝播(propagation)及び増殖(expansion)のため、又は発現のため、又は両方のために設計されたものを含む。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences, Glen Burnie, MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech, Palo Alto, CA)からなる群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII (Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも、使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19 (Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo (Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター又はレンチウイルスベクターであり得る。
【0064】
多数のトランスフェクション技術が当分野において一般に既知である(例えば、Graham et al., Virology, 52: 456-467 (1973);上記Sambrook et al.; Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier (1986);及びChu et al., Gene, 13: 97 (1981)を参照。トランスフェクション方法としては、リン酸カルシウム共沈法(calcium phosphate co-precipitation) (例えば、上記Graham et al.を参照)、培養細胞への直接マイクロインジェクション法(direct micro injection)(例えば、Capecchi, Cell, 22: 479-488 (1980)を参照)、エレクトロポレーション法(例えば、Shigekawa et al., BioTechniques, 6: 742-751 (1988)を参照)、リポソーム媒介遺伝子導入(例えば、Mannino et al., BioTechniques, 6: 682-690 (1988)を参照)、脂質媒介形質導入(例えば、Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84: 7413-7417 (1987)を参照)、及び高速微粒子射出(high velocity microprojectile)を用いた核酸送達(例えば、Klein et al., Nature, 327: 70-73 (1987)を参照)が挙げられる。
【0065】
一実施態様では、本発明の組換え発現ベクターは、例えば、上記Sambrook et al.,及び上記Ausubel et al.,に記載された標準の組み換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は直線状である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核の宿主細胞において機能的な複製系を含むように調製され得る。複製系は、例えば、ColEl、2 μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来し得る。
【0066】
組換え発現ベクターは、必要に応じて、ベクターが導入される予定の宿主細胞の種類(例えば、細菌、真菌、植物、又は動物)に特異的な転写及び翻訳開始並びに終止コドン等の調節配列も含み得、ベクターがDNA又はRNAをベースとするものであるかが考慮される。組換え発現ベクターは、クローニングを容易にする制限酵素認識部位を含み得る。
【0067】
組換え発現ベクターは、形質転換された又はトランスフェクトされた宿主細胞のセレクションを可能にする1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子は、殺生物剤耐性(biocide resistance)、例えば、抗生物質、重金属等に対する耐性、栄養要求性宿主(auxotrophic host)において原栄養性(prototrophy)をもたらすための補足性(complementation)、及び同様のものを含み得る。本発明の発現ベクターのための適切なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール(histidinol)耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0068】
組換え発現ベクターは、CAR (その機能的部分及び機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列、又はCARをコードするヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列、又はCARをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列に機能可能に結合(operably linked)された天然又は非天然のプロモーターを含み得る。例えば、強力な、弱い、誘導性 (inducible)、組織特異的及び発生特異的(developmental-specific)プロモーターの選択は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、プロモーターとのヌクレオチド配列の結合も、当業者の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーターであり得、例えば、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus, CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、又は、マウス幹細胞ウイルス(murine stem cell virus)の長い末端反復(long-terminal repeat)において見出されたプロモーターであり得る。
【0069】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性発現、安定発現のいずれか、又は両方のために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的(constitutive)発現又は誘導性発現のために作られ得る。
【0070】
更に、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子(suicide gene)を含むように製造され得る。本明細書中に使用される場合、用語「自殺遺伝子」は、該自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子が発現されている細胞において剤、例えば、薬品に対する感受性を付与(confer)し、かつ、細胞が剤と接触し、又は剤にさらされた(expose)場合に細胞を死滅させる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当分野において既知であり(例えば、Suicide Gene Therapy: Methods and Reviews, Springer, Caroline J. (Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research, Sutton, Surrey, UK), Humana Press, 2004を参照)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリン・ヌクレオシド・ホスホリラーゼ、及びニトロ還元酵素(nitroreductase)が挙げられる。
【0071】
本発明の範囲に含まれるのは、複合体(conjugate)であり、例えば、本発明のCARのいずれか(その機能的部分又はバリアントのいずれかを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、宿主細胞集団、又は抗体もしくはその抗原結合部分を含む生体複合体(bioconjugate)である。複合体、及び一般に複合体を合成する方法は、当分野において既知である(例えば、Hudecz, F., Methods Mol. Biol. 298: 209-223 (2005)及び Kirin et al., Inorg Chem. 44(15): 5405-5415 (2005)を参照)。
【0072】
本発明の一実施態様は、本明細書中に記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を更に提供する。本明細書中に使用される場合、用語「宿主細胞」は、本発明の組換え発現ベクターを含み得るいかなる種類の細胞も指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、又は藻、あるいは原核生物、例えば、細菌又は原虫(protozoa)であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞(primary cell)、すなわち、有機体、例えば、ヒトから直接単離されたものであり得る。宿主細胞は、接着細胞又は浮遊細胞、すなわち、懸濁液中で増殖する細胞であり得る。適切な宿主細胞は、当分野において既知であり、例えば、DH5α E. coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovarian cell)、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は、原核細胞、例えば、DH5α細胞であり得る。組換えCARを製造する目的のために、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞は、ヒト細胞であり得る。宿主細胞は、いかなる細胞種(cell type)でもあり得、いかなる種類の組織にも由来し、いかなる発生段階のものでもあり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(peripheral blood lymphocyte, PBL)又は末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell, PBMC)であり得る。宿主細胞は、T細胞であり得る。
【0073】
本明細書中の目的のために、T細胞は、培養T細胞、例えば、1次T細胞、又は培養T細胞株、例えば、Jurkat, SupT1等からのT細胞、又は哺乳動物から取得されたT細胞等のいかなるT細胞でもあり得る。哺乳動物から取得される場合、T細胞は、限定されるものではないが、血液、骨髄、リンパ節(lymph node)、胸腺、又は他の組織もしくは体液(fluid)を含む、多数の供給源から取得され得る。T細胞は、また、濃縮され(enriched for)又は精製され得る。T細胞は、ヒトT細胞であり得る。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、いかなる種類のT細胞でもあり得、かつ、限定されるものではないが、CD4
+/CD8
+ 2重陽性T細胞、CD4
+ヘルパーT細胞、例えば、Th
1及びTh
2細胞、CD8
+T細胞(例えば、細胞障害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞(tumor infiltrating cell)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞等を含む、いかなる発生段階のものでもあり得る。T細胞は、CD8
+ T細胞又はCD4
+ T細胞であり得る。
【0074】
一実施態様では、本明細書中に記載された通りのCARは、適切な非T細胞において使用され得る。かかる細胞は、例えば、多能性幹細胞(pluripotent stem cell)から作製された、NK細胞、及びT様細胞(T-like cell)等の免疫エフェクター機能を有する細胞である。
【0075】
また、本発明の一実施態様によって提供されるのは、本明細書中に記載された少なくとも1の宿主細胞を含む細胞集団である。細胞集団は、不均一な(heterogeneous)集団であり得、該不均一な集団は、少なくとも1の他の細胞、例えば、どの組換え発現ベクターも含まない宿主細胞(例えば、T細胞)、又は、T細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ(macrophage)、好中球、赤血球、肝細胞(hepatocyte)、内皮細胞(endothelial cell)、上皮細胞(epithelial cell)、筋細胞(muscle cell)、脳細胞等に加えて、記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む。別の方法として、細胞集団は、実質的に均一な(homogeneous)集団であり得、該集団は、主に組換え発現ベクターを含む宿主細胞を、主に含む(例えば、基本的に該宿主細胞からなる)。集団は、また、細胞のクローン集団(clonal population)であり得、該集団の全細胞が組換え発現ベクターを含むように、該集団の全細胞が組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンである。本発明の1の実施態様では、本明細書中に記載されたように、細胞集団が、宿主細胞を含むクローン集団であり、該宿主細胞が組換え発現ベクターを含む。
【0076】
CAR (機能的部分及びそのバリアントを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のこれらの全ては、以降の本明細書中において集合的に「本発明のCAR物質(material)」と呼ばれ、単離され及び/又は精製され得る。本明細書中で使用された場合の用語「単離され」は、その天然環境から取り去られたこと(having removed)を意味する。用語「精製され」又は「単離され」は、完全な(absolute)精製又は単離は必要とせず、むしろ、それは相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された(又は単離された)宿主細胞調製物は、宿主細胞が体内のその天然環境中の細胞よりも純粋な調製物である。かかる宿主細胞は、例えば、標準の精製技術により製造され得る。いくつかの実施態様では、宿主細胞が、調製物の総細胞量のうち、少なくとも約50%、例えば少なくとも約70%に相当するように、宿主細胞の調製物が精製される。例えば、精製は、少なくとも約50%であり得、約60%を越え、約70%又は約80%、あるいは約100%であり得る。
【0077】
本発明のCAR物質は、医薬組成物等の組成物に調合され得る。この点において、本発明の一実施態様は、CAR、機能的部分、機能的バリアント、核酸、発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、及び抗体(その抗原結合部分を含む)のいずれか、及び製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。本発明のCAR物質のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1を超える本発明のCAR物質、例えば、CAR及び核酸、又は2以上の異なるCARを含み得る。別の方法として、医薬組成物は、化学療法剤(chemotherapeutic agent)等、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リッキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、等の他の薬剤活性のある剤又は薬品と組み合わされた本発明のCAR物質を含み得る。好ましい一実施態様では、医薬組成物は、本発明の宿主細胞又はその集団を含む。
【0078】
本発明のCAR物質は、塩、例えば、製薬上許容可能な塩の形態において提供され得る。適切な製薬上許容可能な酸付加塩(acid addition salt)としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、及び硫酸等の無機酸、並びに、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、及び例えば、p-トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸等の有機酸から誘導されるものが挙げられる。
【0079】
医薬組成物に関し、製薬上許容可能な担体は、慣例的に使用されるもののいずれかであり得、溶解度(solubility)及び活性薬剤(active agent)(複数可)との反応性を欠いていること等の物理化学(chemico-physical)の考慮、並びに投与経路のみにより、限定される。本明細書中に記載された製薬上許容可能な担体、例えば、ビヒクル(vehicle)、アジュバンド、賦形剤、及び希釈剤(diluent)は、当業者に周知であり、公衆が容易に利用可能である。製薬上許容可能な担体は、活性薬剤(複数可)に対し化学的に不活性なものであり、かつ使用条件下において有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0080】
担体の選択は、特定の本発明のCAR物質により、及び本発明のCAR物質を投与するために使用される特定の方法により、一部において決定されるだろう。それゆえに、本発明の医薬組成物の様々な適切な剤形がある。保存剤も使用され得る。適切な保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。2以上の保存剤の混合物が、任意に使用され得る。保存剤又はその混合物は、全組成物の重量で約0.0001%〜約2%の量において通常存在する。
【0081】
適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、及び様々な他の酸及び塩が挙げられ得る。2以上の緩衝剤の混合物が、任意に使用され得る。緩衝剤又はその混合物は、全組成物の重量で約0.001%〜約4%の量において通常存在する。
【0082】
製剤処方(pharmaceutical formulation)における本発明のCAR物質の濃度は、例えば、重量で約1%未満から、通常約10%又は少なくとも約10%、約20%〜約50%程度まで又はそれを越えて変化し得、選択された投与の特定の様式に従って、主に液量及び粘性で選択され得る。
【0083】
投与可能な(例えば、非経口で投与可能な)組成物を調製する方法は、当業者に既知又は明白であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)により詳細に記載される。
【0084】
経口、吸入、非経口(例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び髄腔内)、及び局所投与のための以下の剤形は、単に例示であり、決して限定するものではない。1を超える経路が本発明のCAR物質を投与するために使用され得、いくつかの例では、特定の経路が、別の経路よりも即時的かつより効果的な反応をもたらし得る。
【0085】
経口投与に適した剤形は、(a)水、生理食塩水、又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解された有効量の本発明のCAR物質等の液体溶液; (b)カプセル、サシェ(sachet)、錠剤、ドロップ(lozenge)、及びトローチ(troche)( それぞれが固形物質又は顆粒として所定量の活性成分を含む); (c)粉末; (d)適切な液体中の懸濁液;及び(e)適切なエマルジョン(emulsion)を含み得、又はこれらからなり得る。液剤としては、水並びに、アルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール等の希釈剤に、製薬上許容可能な界面活性剤を添加したもの又は添加しないものが挙げられ得る。カプセル製剤は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、並びに、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、及びコーンスターチ等の不活性フィラーを含む通常の硬ゼラチン又は軟ゼラチン(softshelled)型のものであり得る。錠剤の剤形としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース(microcrystalline cellulose)、アカシア (acacia)、ゼラチン、グァーガム(guar gum)、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク(talc)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、加湿剤、保存剤、香味剤(flavoring agent)、及び他の薬理学的に適合性の賦形剤のうちの1以上が挙げられ得る。ドロップ製剤は、香料(flavor) (通常スクロース及びアカシア又はトラガカント(tragacanth))中に本発明のCAR物質を含み得、不活性の基剤(base) (例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア)中に、本発明のCAR物質を含むトローチ(pastille)、エマルジョン、ジェル(gel) (当分野で既知のかかる賦形剤を加えて含む)も同様である。
【0086】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤(bacteriostat)、及び製剤を、意図されたレシピエントの血液と、等張な状態にする溶質を含み得る水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤(solubilizer)、増粘剤(thickening agent)、安定剤(stabilizer)、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。本発明のCAR物質は、水、生理食塩水、水性デキストロース(aqueous dextrose)及び関連の糖溶液、エタノール又はヘキサデシルアルコール(hexadecyl alcohol)等のアルコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール等のケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール) 400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル又はグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリド(acetylated fatty acid glyceride)に、石鹸又は洗剤(detergent)等の製薬上許容可能な界面活性剤を添加したもの又は添加しないもの、ペクチン、カルボマー(carbomer)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース等の懸濁剤(suspending agent)、又は乳化剤及び他の医薬的アジュバンド(pharmaceutical adjuvant)を含む滅菌液あるいは混合液等の医薬的担体における生理学的に許容可能な希釈剤において投与され得る。
【0087】
非経口製剤において使用され得る油としては、石油(petroleum)、動物油、植物油、 又は合成油(synthetic oil)が挙げられる。油の特定の例としては、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ワセリン、及び鉱油が挙げられる。非経口製剤における使用のための適切な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。
【0088】
非経口製剤における使用のために適した石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属(fatty alkali metal)、アンモニウム、及びトリエタノールアミンの塩が挙げられ、適した洗剤としては、(a)例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、及びアルキルピリジニウムハライド等のカチオン性洗剤、(b)例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、並びにスルホコハク酸塩等のアニオン性洗剤、(c)例えば、脂肪アミンオキシド(fatty amine oxide)、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー等の非イオン性洗剤、(d)例えば、アルキル-β-アミノプロピオン酸塩、及び2-アルキル-イミダゾリン第4級アンモニウム塩等の両性洗剤、並びに(e)それらの混合物が挙げられる。
【0089】
非経口製剤は、通常、例えば、溶液中の本発明のCAR物質の重量で約0.5%〜約25%を含むだろう。保存剤及び緩衝剤が使用され得る。注射部位の炎症を最小化又は除去するため、かかる組成物は、例えば、約12〜約17という親水性-親油性バランス(hydrophile-lipophile balance, HLB)を有する1以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。かかる剤形における界面活性剤の量は、通常、例えば、重量で約5%〜約15%に及ぶだろう。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート(sorbitan monooleate))、及びプロピレングリコールとのプロピレンオキシドの縮合(condensation)によって形成された、疎水性基剤(hydrophobic base)とのエチレンオキシドの高分子量付加物(high molecular weight adduct)が挙げられる。非経口製剤は、アンプル及びバイアル等の単位用量又は複数回用量の密封容器において提示され、使用直前に注射のための滅菌液体賦形剤(liquid excipient)、例えば、水の付加のみが必要なフリーズドライの(凍結乾燥された)状態において保存され得る。即時注射(Extemporaneous injection)溶液及び懸濁液は、先に記載された種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0090】
注射製剤は、本発明の一実施態様に従うものである。注射可能な組成物のための有効な医薬的担体の要件は、当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J.B. Lippincott Company, Philadelphia, PA, Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982), and ASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622-630 (1986)を参照)。
【0091】
経皮薬物放出(transdermal drug release)のために有用なものを含む局所製剤は、当業者に周知であり、皮膚への適用のための本発明の実施態様との関連で適している。本発明のCAR物質は、単独で又は他の適切な成分との併用で、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤にされ得る。これらのエアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の加圧された許容可能な噴霧剤の中に入れられ得る。それらは、ネブライザー(nebulizer)又はアトマイザー(atomizer)内といった非加圧調製物のための薬剤としても製剤化され得る。かかるスプレー製剤は、粘膜にスプレーするためにも使用され得る。
【0092】
「有効量」又は「治療のための有効量」は、個体中のガンを予防又は治療するために適切な用量を指す。治療又は予防上の使用のための有効量は、例えば、治療されている疾患又は疾病の段階及び重症度、患者の年齢、体重、及び健康の全身状態、並びに処方する医師の判断によって決まるだろう。用量の大きさは、選択された活性(active)、投与方法、投与のタイミング及び頻度、特定の活性の投与に付随して起こる有害な副作用の存在、性質及程度、並びに所望の生理作用によっても決定されるだろう。様々な疾患又は疾病が長期の治療を必要とし、該長期の治療は、各ラウンド又は様々なラウンドの投与において本発明のCAR物質をおそらく用いる複数回投与を含み得るということを当業者は理解するだろう。例示の目的であり、本発明を限定する意図ではないが、本発明のCAR物質の用量は、約0.001〜約1000 mg/治療されている被験体のkg体重/日、約0.01 〜約10 mg/kg体重/日、約 0.01 mg〜約 1 mg/kg体重/日であり得る。本発明の一実施態様では、用量は、1 kg体重当たり、本発明のCAR物質を発現する、約1 x 10
4 〜約 1 x 10
8の細胞であり得る。本発明のCAR物質が宿主細胞である場合、宿主細胞の例示的な用量は、100万細胞(1 mg細胞/用量)という下限値であり得る。本発明のCAR物質がウイルスにパッケージングされた核酸である場合、ウイルスの例示的な用量は、1 ng/用量であり得る。
【0093】
本発明の目的のために、投与された本発明のCAR物質の量又は用量は、合理的な期間にわたって被験体又は動物において治療又は予防反応をもたらすのに十分である必要がある。例えば、本発明のCAR物質の用量は、投与時から約2時間以上、例えば、約12時間以上から、約24時間まで又はより長い期間で、抗原を結合させ、又は、疾患を検出、治療又は予防するために十分である必要がある。いくつかの実施態様では、期間は更に長いことがあり得る。用量は、特定の本発明のCAR物質の効能及び治療される予定の動物(例えば、ヒト)の状態、及び動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるだろう。
【0094】
本発明の目的のために、アッセイは、例えば、1組の哺乳動物のそれぞれが異なる用量のT細胞を与えられ、該1組の哺乳動物のうちの哺乳動物へ所与の用量のかかるT細胞を投与したときに、標的細胞が溶解し及び/又はIFN-gが本発明のCARを発現するT細胞によって分泌される程度を比較することを含み、該アッセイが、哺乳動物へ投与される予定の開始用量(starting dose)を決定するために使用され得る。一定の用量の投与時に標的細胞が溶解し及び/又はIFN-γが分泌される程度は、当分野において既知の方法によってアッセイされ得る。
【0095】
前述の医薬組成物に加えて、本発明のCAR物質は、シクロデキストリン包摂錯体等の包摂錯体(inclusion complex) 、又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、本発明のCAR物質を特定の組織へ向ける働きをし得る。リポソームは、本発明のCAR物質の半減期を増大させるためにも使用され得る。例えば、Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9, 467 (1980)及び米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、及び第5,019,369号に記載されたように、リポソームを調製するための多くの方法が利用可能である。
【0096】
本発明の組成物の送達が、治療される予定の部位の感作に先だって、かつ該感作を引き起こすのに十分な時間、起こるように、本発明の実施態様との関連で有用な送達系が、時限放出(time-released)、遅延放出(delayed release)、及び徐放(sustained release)送達系を含み得る。本発明の組成物は、他の治療剤又は治療と併用して使用され得る。かかる系は、本発明の組成物の連続投与を回避し、それによって被験体及び医師に対する利便性を向上させ得、本発明の所定の組成物の実施態様に特に適してい得る。
【0097】
多くの種類の放出送達系(release delivery system)が、利用可能であり、当業者に既知である。それらは、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリ無水物等の高分子基剤系を含む。薬品を含む前記高分子化合物のマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系は、コレステロール、コレステロールエステル等のステロール、及び脂肪酸又はモノ-ジ-及びトリ-グリセリド等の中性脂肪を含む脂質である非高分子化合物(non-polymer)の系;ヒドロゲル放出(hydrogel release)系;シラスティック系(sylastic system);ペプチドベース(peptide based)の系;ワックスコーティング(wax coating);標準の結合剤及び賦形剤を用いた圧縮錠;部分融合移植物(partially fused implant);及び同様のものも含む。具体的な例としては、限定されるものではないが: (a)米国特許第4,452,775号、第4,667,014号、第4,748,034号、及び第5,239,660号に記載されたものといった、活性組成物がマトリクス内の形態で含まれる浸食(erosional)系及び(b)米国特許第3,832,253号及び第3,854,480号に記載されているものといった、活性成分が、調節された速度で高分子化合物から浸透する拡散(diffusional)系が挙げられる。加えて、ポンプベースのハードウェア送達系が使用され得、該ハードウェア送達系のうちのいくつかが移植に適している。
【0098】
当業者は、本発明のCAR物質の治療又は予防の効能が変更によって向上するように、本発明のCAR物質が様々な方法において変更され得ることを容易に理解するだろう。例えば、本発明のCAR物質は、直接的又は間接的のいずれかで結合部分を介して標的部分(targeting moiety)に結合し得る。化合物、例えば、本発明のCAR物質を、標的部分へ結合させることの実践は、当分野において既知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3: 111 (1995)及び米国特許第5,087,616号を参照。
【0099】
別の方法として、本発明のCAR物質が投与された体内に放出される態様が、体内で時間及び位置に関して調節されるように、本発明のCAR物質は、デポー製剤(depot form)に変更され得る(例えば、米国特許第4,450,150号を参照)。本発明のCAR物質のデポー製剤は、例えば、本発明のCAR物質及び高分子化合物等の多孔又は 無孔の物質を含む、注入可能な(implantable)組成物であり得、本発明のCAR物質は、該物質に封入され、あるいは、該物質の至る所で拡散され及び/又は無孔の物質の分解の間中ずっと拡散される。デポーは、その結果、体内の所望の位置に注入(implant)され、本発明のCAR物質は、注入物から所定の速さで放出される。
【0100】
本発明のCAR物質は、1以上の付加的な治療剤とともに投与される場合、1以上の付加的な治療剤が、哺乳動物に併用(coadministered)され得る。「併用」は、本発明のCAR物質が1以上の付加的な治療剤の効果を増進し得、又は逆も同様となり得るように、1以上の付加的な治療剤及び本発明のCAR物質を十分に近接した時間内に投与することを意味する。この点において、本発明のCAR物質は、1番目に投与され得、1以上の付加的な治療剤は、2番目に投与され得、又は逆も同様となり得る。あるいは、本発明のCAR物質及び1以上の付加的な治療剤は、同時に(simultaneously)投与され得る。
【0101】
CAR物質とともに併用され得る例示的な治療剤は、IL-2等のT細胞活性化(active)サイトカインである。IL-2は、本発明のCAR物質の治療効果を増進すると考えられる。特定の理論又は機構に拘束されるものではないが、IL-2は、本発明のCARを発現する細胞の数及び/又はエフェクター機能のインビボでの増大を増進することによって治療を増進すると考えられる。他の例示的なサイトカインとしては、IL-7及びIL-15が挙げられる。本発明の方法の目的のために、宿主細胞又は細胞集団が哺乳動物に投与される場合、細胞は、該哺乳動物に対し異系(allogeneic)又は自己移植(autologous)の細胞であり得る。
【0102】
本発明のCAR物質は、哺乳動物における疾患を治療又は予防する方法において使用され得ることが期待される。特定の理論又は機構に拘束されるものではないが、本発明のCARが、細胞によって発現される場合には、抗原、例えば、TSLPRであって、該TSLPRについてCARが特異的であるTSLPRを発現する細胞に対する免疫反応を媒介し得るように、本発明のCARは、生物活性、例えば、抗原、例えばTSLPRを認識する能力を有する。この点において、本発明の一実施態様は、哺乳動物へ、哺乳動物においてガンを治療又は予防するための有効量の本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/又はその抗原結合部分、及び/又は医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物においてガンを治療又は予防する方法を提供する。
【0103】
本発明の一実施態様は、本発明のCAR物質を投与するより前に哺乳動物のリンパ球を枯渇させる(lymphodepleting)ことを更に含む。リンパ球を枯渇させることの例としては、限定され得るものではないが、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法(nonmyeloablative lymphodepleting chemotherapy)、骨髄破壊的リンパ球枯渇化学療法(myeloablative lymphodepleting chemotherapy)、全身照射法(total body irradiation)、等が挙げられる。
【0104】
本発明の方法の目的のために、宿主細胞又は細胞集団が投与される場合に、細胞は、該哺乳動物に対し異系又は自己移植の細胞であり得る。好ましくは、細胞は、哺乳動物に対し自己移植のものである。
【0105】
本明細書中に言及されている哺乳動物は、いかなる哺乳動物でもあり得る。本明細書中に使用されるように、用語「哺乳動物」は、限定されるものではないが、マウス及びハムスター等の齧歯目の哺乳動物、及びウサギ等のウサギ目(order Logomorpha)の哺乳動物を含む、いかなる哺乳動物も指す。哺乳動物は、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む、食肉目からのものであり得る。哺乳動物は、ウシ亜科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含む偶蹄目、又はウマ科(ウマ)を含む奇蹄目(order Perssodactyla)からのものであり得る。哺乳動物は、霊長目、セボイド(Ceboid)目、又はシモイド(Simoid)目(サル)又は類人猿(Anthropoid)目(ヒト及び類人猿(ape))のものであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0106】
本発明の方法に関し、ガンは、いかなるガンでもあり得、該ガンは、急性リンパ性ガン(acute lymphocytic cancer)、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫(alveolar rhabdomyosarcoma)、膀胱ガン(bladder cancer)(例えば、膀胱ガン(bladder carcinoma))、骨ガン(bone cancer)、脳腫瘍(例えば、髄芽腫)、乳ガン、肛門ガン、肛門管ガン、もしくは肛門直腸(anorectum)ガン、眼ガン、肝内胆管ガン、関節ガン(cancer of the joint)、頸部ガン(cancer of the neck)、胆嚢ガン(gallbladder)、又は胸膜ガン(pleura)、鼻のガン(cancer of the nose)、鼻腔ガン、又は中耳ガン、口腔ガン、外陰ガン、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性ガン(chronic myeloid cancer)、結腸ガン、食道ガン、子宮頸ガン、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、頭頸部ガン(例えば、頭頸部扁平上皮ガン)、ホジキンリンパ腫、下咽頭ガン、腎臓ガン、咽頭ガン、白血病、液性腫瘍、肝ガン、肺ガン(例えば、非小細胞肺ガン(non-small cell lung carcinoma)及び肺腺ガン)、リンパ腫、中皮腫(mesothelioma)、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭ガン、非ホジキンリンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病(B-chronic lymphocytic leukemia)、有毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、急性リンパ性白血病(ALL)、及びバーキットリンパ腫(Burkitt’s lymphoma)、卵巣ガン、膵臓ガン、腹膜ガン(peritoneum)、網癌(omentum cancer)、及び腸間膜癌(mesentery cancer)、咽頭ガン、前立腺ガン(prostate cancer)、直腸ガン、腎ガン、皮膚ガン、小腸ガン(small intestine cancer)、軟部組織ガン(soft tissue cancer)、固形腫瘍、滑膜肉腫、胃ガン、精巣ガン、甲状腺ガン、及び尿管ガンのいずれも含み得る。好ましくは、ガンはTSLPRの発現によって特徴づけられる。
【0107】
本明細書中に使用されるように、用語「治療する」及び「予防する」及びそれらの派生語は、100%又は完全な治療又は予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する様々な程度の治療又は予防がある。この点において、本発明の方法は、哺乳動物においていかなる量又はいかなるレベルのガンの治療又は予防も提供する。更に、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防されている疾患、例えば、ガンの1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書中の目的のために、「予防(prevention)」は、疾患、又はその症状もしくはその状態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0108】
本発明の別の実施態様は、哺乳動物においてガンの存在を検出する方法を提供し、該方法は:(a)本発明の、CAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体、及び/又はその抗原結合部分、あるいは医薬組成物と、哺乳動物からの1以上の細胞を含む試料を接触させて、それによって複合体を形成すること、(b)及び複合体を検出することを含み、前記複合体の検出が哺乳動物におけるガンの存在を示す。
【0109】
本発明の別の実施態様は、増殖性疾患のある被験体がキメラ抗原受容体を用いる治療の候補であるか否かを決定する方法であって、該キメラ抗原受容体がTSLPRに特異的な抗原結合領域を含み、該方法が、前記被験体からの生体試料中のTSLPR発現レベルを測定することと;前記生体試料の前記TSLPR発現レベルが、増殖性疾患のない対照被験体からの試料と比べて、増加しているか否かを決定することとを含む、方法を含む。
【0110】
試料は、任意の適切な方法、例えば、生検又は剖検によって取得され得る。生検は、個体から組織及び/又は細胞を取り去ることである。このように取り去ることは、取り去られた組織及び/又は細胞において実験を行うことを目的として、個体から組織及び/又は細胞を集めることであり得る。この実験は、個体が特定の状態又は病態を有している及び/又は患っているかを決定するための実験を含み得る。状態又は疾患は、例えば、ガンであり得る。
【0111】
例えば、哺乳動物におけるガン等の増殖性疾患の存在を検出する本発明の方法の一実施態様に関して、哺乳動物の細胞を含む試料は、細胞全体、その溶解物、又は細胞溶解物全体の画分、例えば、核もしくは細胞質画分、タンパク質画分全体、又は核酸画分を含む試料であり得る。試料が細胞全体を含む場合、細胞は、哺乳動物のいかなる細胞、例えば、血液細胞又は内皮細胞等のいかなる器官又は組織でもあり得る。
【0112】
接触は、哺乳動物に関してインビトロ又はインビボで行われ得る。好ましくは、接触は、インビトロでのものである。
【0113】
また、複合体の検出は、当分野において既知のいくつもの方法によって行われ得る。例えば、本明細書中に記載されている、本発明のCAR、ポリペプチド、タンパク質、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、又は抗体、もしくはその抗原結合部分は、例えば、放射性同位体、蛍光色素分子(例えば、フルオレセインイソチアネート(fluorescein isothiocyanate, FITC)、フィコエリトリン(phycoerythrin, PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、及び元素粒子(例えば、金粒子)等の検出可能な標識で標識され得る。
【0114】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、当分野において既知である。例えば、Clay et al., J. Immunol., 163: 507-513 (1999)は、サイトカインの放出を測定する方法を教示する(例えば、インターフェロン-γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF-α)又はインターロイキン2 (IL-2))。加えて、Zhao et al., J. Immunol., 174: 4415-4423 (2005)に記載されているように、CAR機能は、細胞障害性の測定によって評価され得る。
【0115】
本発明の別の実施態様は、哺乳動物における増殖性疾患、例えば、ガンの治療又は予防のための、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体、もしくはその抗原結合部分、及び/又は医薬組成物の使用を提供する。ガンは、本明細書中に記載されたどのガンでもあり得る。好ましくは、ガンは、BCP-ALLである。
【0116】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然ながら、多少なりともその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0117】
実施例1
本実施例は、3G11 TSLPR CAR - 短い3G11 (配列番号39及び43)及び長い3G11 (配列番号40及び44)の作製及び試験を実例で示す。リーダー配列は、初めにコードされ、細胞表面への輸送(trafficking)を増進させる。それは、成熟形態において切断される可能性がある。
【0118】
以下のB細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞株を使用した: MUTZ-5 (DSMZ ACC 490)、(ヒトTSLPRを用いて形質導入した)REH-TSLPR及びTSLPR陰性対照としてのREH。培地における細胞株培養に、10%加熱不活性化FBS (Gemini Bioproducts, West Sacramento, CA, USA)、10mM HEPES、100 U/mLペニシリン、100 ug/mLストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を添加した。細胞株をパッケージングする293Tレトロウイルスベクター(Clonetech, Mountain View, CA, USA)をDMEM (Invitrogen)において培養した。加えて、天然にTSLPRを過剰発現する前駆B細胞ALL(pre-B cell ALL)異種移植片(xenograft) JH331、JH352、NH362をインビボモデルとして使用した。これらは、IRBが承認したプロトコルに関する患者の同意後に樹立された患者由来のALL異種移植片である。健康なドナーからのヒトPBMCを、NIH Clinical Centerの輸血医学部門から、ヘルシンキ宣言に合致するインフォームドコンセント後にNIH IRBが同意したプロトコル下で得た。ヒトPBMCを、5% FBSを有するAIMV中で培養した。
【0119】
TSLPRキメラ抗原受容体の構築。TSLPR結合性1本鎖フラグメント可変(binding single chain fragment variable, scFv)配列を、抗TSLPRを産生するハイブリドーマ3G11から決定した(Lu et al., J. Exp. Med., 2009, 206:2111-2119、参照により本明細書中に組み込まれる)。3G11を、ピルビン酸ナトリウム(1 mM)、ペニシリンストレプトマイシン(pen/strep)及び10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地中で培養した。細胞がすぐに分けられる場合、培地を、抗体製造のための、又は全RNA抽出用の細胞の採取のためのRPMI培地にピルビン酸ナトリウム、pen/strep、及びGIBCO (Grand Island, NY, USA; Cat# 16250)からの5%の極低(ultra-low) IgG FBSを加えたものに変更した。3G11全RNAを、RNeasy Mini kit (Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて抽出し、その後、cDNAにSuperScript III (Invitrogen)を用いて逆転写した。cDNAを、その後、重鎖の可変領域と重鎖の可変領域(V
H)についての定常ガンマ鎖とからの縮重プライマー(degenerated primer)の組み合わせを用いるPCR増幅、及び同様に、カッパ可変領域からの縮重プライマーとカッパ軽鎖(V
L)についてのカッパ鎖定常領域からの特異的プライマーとを用いるPCR増幅のために使用した(Kettleborough et al., Eur. J. Immunol., 1993, 23:206-211、参照することにより本明細書中にその全体が組み込まれる)。PCR試薬を、Roche Diagnostics (PCR Buffer Set, Indianapolis, IN, USA)又はNew England BioLabs (One Taq DNA Polymerase, Ipswich, MA, USA)のいずれかから購入した。以下のPCR条件を、増幅に適用した: 95℃で1分間、(95℃で15秒間、50℃で30秒間、68℃で45秒間)の35サイクル、68℃で5分間の最後の伸長。結果として生じたPCR産物をゲル精製(gel purified)し、TOPOベクター(TOPO TA Cloning Kit for Sequencing, Invitrogen)にクローニングし、その後、One Shot(登録商標)TOP10 Chemically Competent E. coli (Invitrogen)に形質転換した。単一クローンをミニプレップ(mini-prep)のためにピッキング(picked)し、結果として生じたプラスミドを配列解析(sequencing analysis)に出した。重鎖可変領域の先頭(beginning)の二次構造を克服する(overcome)ため、5’の先頭により近い、新たな抗体サブタイプに特異的なリバースプライマーを設計して、V
Hの5’領域の増幅のための5’末端の縮重プライマーと組み合わせた。PCRエンハンサーベタインを1 Mで使用して、PCR反応を促進した。長いCARコンストラクトの構築のため、IGHG1 (gb|AAC82527.1 aa 98-329)からのCH2CH3領域を含めた。T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖をコードする、scFvのためのリーダー配列を、膜輸送(membrane trafficking)を促進するために含めた。CARをコードするアミノ酸配列を逆翻訳(reverse translated)し、コドンを最適化し、単一のコンストラクトとして合成した(DNA 2.0, Menlo Park, CA, USA)。これらのコンストラクトを、その後、CD8膜貫通領域、41BB (CD137)シグナル伝達領域及びCD3ゼータ領域を含む第3世代レンチウイルスプラスミド(pELNS-19BBzeta)にサブクローニング(subcloned)した(Hudecek et al., “The non-signaling extracellular spacer domain of chimeric antigen receptors is decisive for in vivo antitumor activity,” Cancer Immunol. Res., 2014 and Milone et al., Molecular Therapy, 2009, 17(8): 1453-1464に先に記載されており、各該文献は、参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0120】
レンチウイルスベクター製造及びT細胞の形質導入。上記Hudecek et al.,及び上記Milone et al.,に先に記載されたように、TSLPR CARをコードするレンチウイルスベクターを、293T細胞株の一過性(transient)トランスフェクションによって製造した。簡潔には、293T細胞を、ポリ-Dリジンでコーティング(coated)された15 cmプレートにまいた(BD Bioscience, San Jose, CA, USA)。次の日に、293T細胞に、リポフェクタミン2000 (Invitrogen)を用いて、TSLPR CARをコードするプラスミドを、パッケージング及びエンベロープベクターpMDLg/pRRE、pMD-G、及びpRSV-Revとともにトランスフェクトし、該ベクターは、Dr. R. Morgan (Surgery Branch, Center for Cancer Research, NCI, NIH) の厚意により提供された。レンチウイルス上清を、トランスフェクションの48〜72時間後に採取し、3000 RPMで10分間、遠心分離機にかけて、細胞残屑(cell debris)を除去し、その後-80℃で保存した。正常なドナーからのヒトPBMCを、1:1の比率のCD3/CD28マイクロビーズ(Invitrogen)を用いて、40 IU/mL組換えIL-2 (teceleukin, rhIL-2; Roche, Indianapolis, IN, USA)を含むAIM-V培地中で24時間、活性化した。活性化されたT細胞を、1 mlの新鮮なAIM-V培地を加えた3 mlのレンチウイルス上清ごとに2百万細胞で、10 mg/ml硫酸プロタミン及び40 IU/ml IL2とともに再懸濁し、6ウェルプレート中で培養した。プレートを、1000gで2時間、32℃で遠心分離し、その後、37℃で一晩インキュベートした。第2の形質導入を次の日に行った。形質導入後3日目に、CD3/CD28ビーズを除去し、細胞を、300,000細胞/mLで100IU/mL IL-2を含むAIM-V中において培養し、新鮮なIL2を含む培地を、2〜3日ごとに8又は9日目の採取まで加えた。
【0121】
フローサイトメトリー解析。CARを形質導入されたT細胞の表面発現を、TSLPR-Fcを用いるフローサイトメトリーによって決定し(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)、続いて、ヒトIgG-Fcに特異的なPE-F(ab)
2又はAPC-F(ab)
2 (Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA, USA)とともにインキュベーションした。別の方法として、ビオチン結合プロテインL (Thermo Scientific, Waltham, MA, USA) を使用して、ストレプトアビジン-結合PE (BD Bioscience)とのインキュベーション後のCAR発現を検出した。白血病株におけるCD19、CD22、及びTSLPR発現を、以下の抗ヒト抗体を用いて検出した: CD45-PerCP-Cy5.5 (eBioscience, San Diego, CA, USA)、CD19-Pac-Blue、CD19-APC-Cy7、CD10_PE-Cy7、及びCD22-PE、TSLPR-APC (BioLegend, San Diego, CA, USA)。T細胞を以下の抗体を用いて特徴付けした: CD3-APC-Cy7、CCR7-FITC (CD197)、CD45RA-APC、CD4-PacBlue, (BioLegend)、CD45-PerCP-Cy5.5 (eBioscience)、CD8-V500 (BD, Franklin Lakes, NJ, USA)。3G11ハイブリドーマ上清の、TSLPR発現ALL株に対する結合性を、ヤギ-抗-マウス-PE (BD BioScience)を用いて検出した。死細胞(Dead cell)を、Fixable Viability Dye eFluor(登録商標) 506 (eBioscience)を用いて染色することにより除外した。
【0122】
細胞障害性及びサイトカインアッセイ。REH-TSLPR及びMUTZ5細胞株の両方が高レベルのTSLPRを発現する。REHをTSLPR発現についての陰性対照として使用した。標的細胞を、100 uCi
51Crを用いて(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA) 1時間、標識した。洗浄後、1ウェル当たり5,000の標的を、4〜6時間、ビーズで精製された(bead-purified)、Pan T Cell II isolation kit (Miltenyi Biotec, San Diego, CA, USA)を用いた、形質導入されたT細胞とともに、様々なエフェクター対標的(E:T)の比率で共インキュベート(coincubate)した。アッセイ上清を、LumaPlates (Perkin Elmer)及びTop Count Reader (Packard、 Meriden、 CT)を用いて、
51Cr遊離(release)について計数した。特異的な溶解を以下のとおり計算した: %溶解 = (実験的溶解 - 自発的溶解)/(最大溶解(maximum lysis) - 自発的溶解) X 100。上清中のサイトカインレベルを、24時間後にマルチプレックスアッセイ(multiplex assay)(Meso Scale Discovery, Rockville, MD, USA)を用いて決定した。K562細胞を含む研究のためのものである。K562細胞は、不死化されたヒト骨髄性赤白血病細胞(human myelogenous erythroleukemia)である。それらは、TSLPRを細胞表面に発現せず、通常、NK活性を検出するために使用される。K562及びREHを陰性標的対照として使用し、REH-TSLPR及びMUTZ5を陽性標的対照として使用した。CARを形質導入されたT細胞を、Pan-T isolation kitを用いてNKを枯渇させ、その後、異なる標的細胞とともにインキュベートした。サイトカイン産生のために、以下のプロトコルを使用した:標的細胞を計数し、3回(3X times)洗浄し、RPMI中において1E6/mlで再懸濁し、100ulを96ウェルプレートにおける各ウェル(最終1E5/ウェル)に入れ;形質導入されたT細胞を計数し、3回洗浄し、RPMI中において1E6/mlで再懸濁し、100ulを96ウェルプレートにおける各ウェルに入れ(最終1E5/ウェル); T細胞のみ及び腫瘍細胞のみを準備し; 24時間37℃でインキュベートし、サイトカイン産生の試験のために100 ulの上清を採取する。全ての試料を3重化(triplicate)した。
【0123】
インビボでの研究。動物研究を、NCI Bethesda Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコル下で行った。前駆B細胞ALL細胞株及び異種移植片を、NSGマウスへ静脈内注入した(NOD scid gamma, NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ JAX, Jackson ImmunoResearch Laboratories)。ルシフェラーゼ発現株について、白血病を、Xenogen IVIS Lumina (Caliper Life Sciences)を用いて検出した。NSGマウスに、腹腔内へ3mg D-ルシフェリン(Caliper Life Sciences)を注入し、6分後に3分の露出時間で撮像した。Living Image Version 4.1 software (Caliper Life Sciences, Hopkinton, MA, USA)を用いて、生物発光シグナルを各マウスについて光子/s/cm
2/srとして解析した。ルシフェラーゼを発現しない異種移植片を、末梢血又は骨髄のフローサイトメトリーを用いて追跡(track)した。
【0124】
3G11ハイブリドーマによって産生された抗TSLPR抗体の、TSLPR過剰発現前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病細胞(「TSLPRhi ALL」)に対する結合性を確認した(
図1)。
図2は、市販のTSLPR抗体によって決定される発現を示す。重鎖及び軽鎖可変領域(Fv)についての配列をその後決定した。単鎖Fv (scFv)配列を、グリシンリンカーを用いて構築し、CD8αヒンジ及びCD8膜貫通領域をコードするキメラ抗原受容体レンチウイルスベクター骨格へ、CD3ゼータ及び41BB (CD137)細胞内領域とともに挿入した(
図3及び4)。T細胞表面からのscFvの距離がCAR機能に影響を与え得るため、scFvと膜貫通配列との間の免疫グロブリンCH2CH3スペーサー領域を含むコンストラクトも、「長い」CARのために作製された。TSLPR CARをコードするレンチウイルスベクターを次に用いて、CD3/CD28ビーズで活性化されたヒトT細胞に形質導入し、プロテインL及びTSLPRFc融合タンパク質の両方により検出されたように、高効率の遺伝子導入をもたらした(
図5A及び5B)。形質導入を培養の2日目及び3日目に行ったにもかかわらず、CAR発現T細胞の画分は、それに続く培養の間に増加し、CARコンストラクトを発現するT細胞の優先的な生存又は増殖の増進を示唆した。TSLPRは、免疫系を除く通常の組織には限定的に発現する。それは樹状細胞及び活性化T細胞の小集団(subset)に見出されている。正常な小児組織マイクロアレイにおける免疫組織化学に基づいて、リンパ系組織においてロバストな膜(membraneous)発現を有する散在性のまれな細胞があった場合、樹状細胞を示していた可能性がある。膵臓、尿細管細胞、及び結腸粘膜にも染色があり、これらの組織における染色は、細胞表面の発現と整合しなかった。心臓には染色はなかった。一次(primary)前駆B ALLで示されたように、TSLPRhi ALL細胞株(MUTZ5)及びヒトTSLPRhi異種移植片(JHH331)は、TSLPRを、CD19及びCD22と同程度に発現する(
図2)。
【0125】
TSLPR CARコンストラクトを形質導入されたT細胞が、前駆B ALL細胞株に対し、活性を示すか否かを決定するために試験を行い、REHに、天然にTSLPRを過剰発現するALL株(MUTZ5)と同じようにTSLPRを発現するように形質導入した(REH-TSLPR)。
図6に示すように、短い及び長いCAR T細胞の両方が、REH-TSLPRとともにインキュベートされた場合に、高レベルのインターフェロンガンマ(IFNγ)及び腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)を産生する。加えて、TSLPR CARを有するT細胞は、TSLPR形質導入及び天然の過剰発現ALL細胞の両方の存在下で、多様な炎症性サイトカインを産生する(
図7A〜7H及び8A〜8E)。TSLPR CAR T細胞の溶解能力を測定した場合、短い及び長いコンストラクトがREH-TSLPRに対し同等の活性を示した。しかしながら、REH-TSLPR及びMUTZ5の両方においてTSLPRのレベルは同等であるにもかかわらず、短いTSLPR CARは、長いCARよりもMUTZ5のより多くの溶解を媒介した(
図2及び9A〜D)。
【0126】
TSLPR CAR T細胞が、TSLPR過剰発現ALLを有するマウスに注入された場合に、ALLを減少させる能力を次に試験した。ルシフェラーゼを発現するREH-TSLPRの静脈内注入4日後、白血病は、低レベルで検出可能であった。15 x 10
6の短いCAR T細胞の注入は、ALLを完全に減少させたようにみえ、該ALLは、画像化(
図10)及びCD45+/GFP+細胞の存在についての白血病細胞注入後12日目の末梢血のフローサイトメトリーにより評価されたものである(
図11)。興味深いことに、REH-TSLPRに対するインビトロでの活性は同等であるにもかかわらず、長いCAR T細胞は、画像化により評価するに、GFPを形質導入されたT細胞を受容したマウスと比べて(統計上は異ならないが)、末梢血中で白血病負荷(leukemic burden)を減少させたことについてのいくつかの根拠を伴うものの、マウスにおける白血病の進行にわずかな影響しか及ぼさなかった。長い及び短いCARコンストラクトの活性が異なる理由を決定するために、フローサイトメトリーによりCAR T細胞の持続性を調査して、短いCAR T細胞が、長いCAR T細胞と比較して、末梢血中により多数存在することが見出された(
図12A〜B)。
図12Bは、TSLPR Fc対CD8を示す。CAR T対CD45は、以下の結果を示した: 16日目に、短いCAR T細胞は、3.02% (5.36%のCD45小集団)であり、長いCAR T細胞は、0.038% (CD45小集団0.213%)であった; 27日目に、短いCAR T細胞は、44.1% (89.4%のCD45小集団)であり、長いCAR T細胞は、2.14% (CD45小集団7.54%)であった。興味深いことに、長いTSLPR CAR T細胞を受容したマウスでは、ALLの進行がTSLPRの発現を維持したにもかかわらず、より後の時点になるほど、末梢血中により多数の短いCAR T細胞が存在することが、最も顕著であった。従って、短いTSLPR CARコンストラクトを用いると、長いコンストラクトと比べて活性の著しい増加がみられるのは、短いCARを発現するT細胞がより長く持続することに関連付けられた。
【0127】
より定着した(established)白血病において短いTSLPR CAR T細胞を試験するため、点滴をREH-TSLPR注入後16日目まで遅延させた(
図13)。意外なことに、10x10
6の短いTSLPR CAR T細胞は、マウスの大部分において40日目に至るまで維持されたTSLPRhi ALLの迅速な除去を誘導することがまだ可能であった(
図13)。重要なことに、TSLPR CAR T細胞により過剰発現されない(「TSLPRlo ALL」)場合には、TSLPRの発達(progression)のいかなる変更の痕跡もなく、このことは活性がCAR標的発現に依存することを示した。短いTSLPR CAR T細胞を用いて処理されたマウスにおける再発の解析は、CD19、CD10及びTSLPRの発現が保たれていることを示し、失敗(failure)が抗原の損失に起因しないことを示した。CD8+ T細胞は、通常、CD4+ T細胞と比較して、インビトロでのより大きな溶解機能を示し、インビボでの直接的な抗腫瘍活性の重要な媒介物質(mediator)であると考えられる。興味深いことに、これらの実験に利用されたインビトロでの増殖プロトコルが、点滴より前にはCD4+ T細胞の優位性をもたらすが、50日目までには、CD8+ T細胞が著しく増殖し、インビボでの最も大きなT細胞小集団に相当した(
図14)。CD8+ CARを発現するT細胞のこの増殖は、表面マーカーの発現に関連しており、該表面マーカーの発現は、50日目までのエフェクター表現型に関連している(
図15、TSLPR CARの物理的分配を示す)。CCR7+/CD45RA表現型を有するかなりの割合のCAR T細胞があり、該CAR T細胞は、セントラルメモリー小集団に一致し、持続性及び持続した抗腫瘍活性のために重要であると考えられた。
【0128】
インビボでの短いCAR T細胞の用量漸増法(dose titration)を行って、活性が観察される範囲を決定し、短いTSLPRが定着した白血病を減少させ得るか否かを決定した。
図16A〜Cに示すように、特に注目すべきは生存率の改善であり、1マウス当たり15 x 10
6細胞の短いTSLPR CAR細胞ではALLを大いに減少させ、また1マウス当たり5〜10 x 10
6細胞でも明確な活性があり、1マウス当たり1 x 10
6との少量であってもある程度の活性を示した(
図16C)。また、長いCAR T細胞の点滴後に、GFP T細胞と比較して、末梢血中のほんのわずかな白血病の負荷の減少(
図11)及び6日目のルシフェラーゼ活性の減少(
図16B)だけを伴う微小な活性がみられたが、その後のどの時点においても2の群の間に違いはなく、長いCAR T細胞が持続しなかったことに一致した。
【0129】
短いTSLPRコンストラクトを、天然にTSLPRを過剰発現する前駆B細胞ALLの3の異種移植モデルにおいて試験した。
図17に示すように、短いTSLPR CARは、ルシフェラーゼを発現するヒトALL TSLPRhi異種移植片を大いに減少させた。また、短いTSLPR CARは、マウスの血液及び骨髄の両方から追加的なTSLPRhi異種移植片を大いに減少させた(
図18A及び18B)。
【0130】
図19は、短いTSLPR CARが120万まで低いCAR T細胞を用いて患者の異種移植においてALLを減少させ得ることを示す。
図20は、マウス血液試料中に存在するCAR T細胞のパーセンテージを示すドットプロットである。
図21は、インビボでの注入後のCAR T細胞のCD4の、CD8への転換を示す。
【0131】
短いTSLPR CARを、NSGマウスにおいて静脈内注入60日後までに致死性をもたらす悪性(aggressive)TSLPR ALLに対して、試験した。100万の悪性TSLPRhi ALL細胞をNSGマウスに静脈内へ1日目に注入し、その後、120万のTSLPR CAR+ T細胞を用いて14日目に処理した。短いTSLPR CARは、強力な活性を示し(
図22〜25)、早くもCAR注入後14日目に、脾腫の減少及び脾臓及び血液における芽球数(blast count)の減少をもたらした。興味深いことに、骨髄における活性も同様にあるようであったが、白血病の除去は、迅速でなく、この早期の評価時間において統計的に有意ではなかった。しかしながら、CARの処理は、悪性TSLPRhi ALLの最終除去及び生存期間の延長と関係があった。
【0132】
短いTSLPR CAR活性を、同じscFv (FM68 scFv - CD8 - CD137 - CD3ゼータ)を含むCD19 CAR及びCD22 CARコンストラクト(m971 scFv - CD8 - CD137 - CD3ゼータ)の活性と比較した。全てが同じ41BB副刺激領域を有し、同等の形質導入効率をもたらした。短いTSLPR CARは、JHH331 Luc TSLPRhi異種移植片を減少させることにおいてCD19及びCD22 CARの両方と同等だった(
図24)。
【0133】
実施例2
本実施例は、2の付加的なTSLPR CAR (短い2D10 (配列番号41及び45)及び長い2D10 (配列番号42及び46))の試験と、実施例1のCARとの比較とを実例で示す。リーダー配列は、初めにコードされ、細胞表面への輸送を増進する。それは、成熟形態において切断される可能性がある。
【0134】
実施例1の方法に、全体的に従った。
【0135】
図25A〜C及び
図26は、結果を示す。
図25A〜Cは、TSLPR発現白血病細胞株とともにインキュベートされた場合の、異なるTSLPR CARコンストラクトを有する形質導入されたT細胞の細胞障害性機能を示し、REHが陰性発現株としての機能を果たした。
図26は、異なるCARコンストラクトのインビボでの治療作用を示す。
【0136】
刊行物、特許出願、及び特許を含む、本明細書中に引用された全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、その全体が本明細書中に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0137】
本発明の説明との関連で(特に以下の請求項との関連で)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1(at least one)」及び同様の指示対象の使用は、本明細書中に別段の指示がない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1」)は、本明細書中に別段の指示がない又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙された事項から選択された1の事項(A又はB)又は列挙された事項の2以上のいかなる組合せ(A及びB)も意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」「有する」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、他に注記がなければ、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。また、「含む(comprising)」(又はそれと同意義のもの)がどこで記載されている場合でも、「含む」が「基本的に〜からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を包含すると判断される。従って、構成要素(複数可)を「含む」一実施態様は、「基本的に(記載された構成要素(複数可))からなる」実施態様と、記載された構成要素(複数可)「からなる」実施態様とをサポートする。「基本的に〜からなる」がどこで記載されている場合でも、「からなる」を包含すると判断される。従って、「基本的に(記載された構成要素(複数可))からなる」一実施態様は、記載された構成要素(複数可)「からなる」実施態様をサポートする。本明細書中の値の範囲の記載は、本明細書中に別段の指示がない限り、該範囲内に入る各個別の値に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、本明細書中に個々に記載されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り又は別途文脈と明らかに矛盾しない限り、いかなる適切な順序でも行われ得る。本明細書中で提供されるいかなるかつ全ての例、又は例示的用語(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、別途特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中の用語は、いかなる特許請求されていない構成要素も本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0138】
本発明を実施するために本発明者らが知る最良の形態を含む、本発明の好ましい実施態様が本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜使用することを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上記構成要素のいかなる組合せも、本明細書中に別段の指示がない又は文脈と明確に矛盾しない限り、本発明に包含される。