(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御部が、検波部からのノイズスケルチ信号に基づいて、一定時間無線信号を受信しなかったことを検出すると、記憶されている起動周波数をクリアして、周波数サーチ処理を行い、選択された周波数を前記起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定することを特徴とする請求項1記載の受信装置。
制御部が、周波数サーチ処理において、複数の周波数の受信状態を比較する際に、復調されたシンボルについて、受信信号の信号点の誤差が最小となる周波数を最も受信状態のよい周波数として選択することを特徴とする請求項1又は2記載の受信装置。
制御部が、複数の周波数の受信状態を比較する際に、フレーム内の同期ワードについて、シンボル毎の受信信号の信号点と理想的な信号点との距離の2乗の和を、理想的な信号点と原点との距離の2乗の和で除した値を、信号点誤差の平均値として算出し、前記信号点誤差の平均値を、受信信号の信号点の誤差とすることを特徴とする請求項3記載の受信装置。
制御部が、複数の周波数の受信状態を比較する際に、フレーム内の同期ワードについて、シンボル毎の受信信号の信号点と理想的な信号点との距離の2乗の和を、理想的な信号点と原点との距離の2乗の和で除した値の対数を、信号点誤差の平均値の対数として算出し、前記信号点誤差の平均値の対数を、受信信号の信号点の誤差とすることを特徴とする請求項3記載の受信装置。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
無線通信システムの一種である同報系防災行政無線システムでは、一般家庭、事業所、自治体等に、防災行政無線の放送を受信して音声出力する受信装置(戸別受信機)が設けられている。
受信装置への放送は、基地局や中継局等の送信元から送信される。1つの送信元で構成されるシステムもあるが、複数の送信元を備えたシステムもある。各送信元は、それぞれ異なる周波数で送信する。
【0003】
受信装置には、システム内の複数の送信元の周波数が予め登録されており、それらの周波数の中から運用時に受信する周波数を1つ選択して設定する。この周波数を、運用周波数と称する。
【0004】
[無線通信システムの構成例:
図9]
一般的な無線通信システムの構成例について
図9を用いて説明する。
図9は、一般的な無線通信システムの構成例を示す概略説明図である。
図9に示すように、無線通信システム100は、自治体の役所等に設置される基地局11と、基地局11から離れた地域に設置される中継局12,13と、各家庭や事業所に設置される子局(受信装置、戸別受信機)14,15,16とを備え、基地局11には、担当者が操作する操作卓10が接続されている。
【0005】
操作卓10では、担当者が放送開始や停止等の操作を行い、音声を入力する。
基地局11は、操作卓10からの操作に基づいて、入力された音声データを周波数F1で子局向けに無線送信すると共に、中継局11,12には中継用の無線回線で送信する。
中継局12,13は、基地局11からの信号を受信して、それぞれ周波数F2,F3で子局向けに送信する。
【0006】
子局14,15,16は据付型で、無線区間は固定回線となり、運用時に受信する周波数は1波である。
各子局14,15,16は、電源投入時に、予め登録されている全ての周波数の受信電界強度を測定し、受信電界強度が最も高い周波数を運用周波数として選択して、運用を開始する。
【0007】
図9の例では、例えば、子局14は、当該無線通信システムで用いられている周波数F1,F2,F3について受信電界強度を測定し、その結果、基地局11からの周波数F1の電界強度が高いため、F1を運用周波数として設定する。
【0008】
[従来の受信装置における起動時の処理:
図10]
ここで、従来の受信装置(子局)における起動時の周波数サーチの処理について
図10を用いて説明する。
図10は、従来の受信装置における周波数サーチの処理を示すフローチャートである。
図10に示すように、従来の受信装置は、電源が投入されると、予め登録されている周波数の一つを設定し(500)、その受信電界強度を測定する(502)。そして、測定値が、予め設定されている受信電界強度の閾値を超えたかどうかを判断する(504)。
【0009】
処理504において、測定値が閾値を超えていない場合には(Noの場合)、処理508に移行して、全ての周波数について測定を行ったかどうかを判断する(508)。
また、処理504において、測定値が閾値を超えた場合には(Yesの場合)、受信装置は、当該周波数を運用周波数の候補として記憶し(506)、処理508に移行する。
【0010】
処理508で、全ての周波数について測定が完了していない場合(Noの場合)には、受信装置は、処理500に戻って、次の周波数を設定して受信電界強度を測定する。
処理508で、登録されている全ての周波数について測定が完了した場合(Yesの場合)には、受信装置は、候補として記憶されている周波数の中から、受信電界強度が最大の周波数を運用周波数として設定し(510)、運用を開始する。
このようにして、従来の受信装置における起動時の周波数サーチの処理が行われる。
【0011】
[常送システム]
このような方法では、受信装置が起動時に周波数をサーチして運用周波数を決めるため、送信元は、常時、無線信号を送信(常送)する必要がある。送信元から無線信号を常時送信しているシステムを常送システムと称する。
【0012】
[非常送システム]
これに対して、送信元が、放送等必要な時だけ無線信号を送信する(非常送)システムの場合は、送信元がいつ無線信号を送信してくるのかわからないため、受信装置では、常時、周波数をサーチする必要がある。
【0013】
更に、周波数サーチにおいては、受信装置に登録されている全ての周波数について受信を試みるため、送信元は、受信装置が全ての周波数をサーチする間、送信元を識別するための信号(識別信号)を送信し続けなければならない。
つまり、非常送システムの送信元は、送信開始時に、受信装置における周波数サーチが完了するのに十分な時間だけ識別信号を送信し、その後で音声放送を行う。
【0014】
送信元は、識別信号を送信しているときには、音声等を放送するための信号を同時に送信することができないため、放送を開始するタイミング(識別信号の送信開始のタイミング)から、音声等を放送できるようになるまで大幅な遅延が発生することになる。
【0015】
送信元から、受信装置が全ての周波数をサーチする時間よりも短い時間しか識別信号を送信しなかった場合には、受信装置において、最適な周波数を選択できずに、放送を受信できなくなるおそれがある。
また、周波数サーチしている間は受信機能を停止させることができないため、受信装置の消費電力は大きくなり、商用電源の停電時等、バッテリー駆動している場合には、動作可能時間が短くなってしまう。
【0016】
[受信状態の判断]
上述したように、従来の受信装置では、周波数サーチにおいて各周波数の受信状態を判断する際に、受信電界強度を用いている。
しかしながら、受信電界強度のみに基づいて周波数を選択した場合には、マルチパスや妨害波などで無線回線品質が劣化している周波数を選択してしまうおそれがある。
【0017】
これを防ぐために、受信電界強度以外にBER(Bit Error Rate;ビット誤り率)を測定する方法も考えられるが、通信速度が遅いシステムにおいて、固定回線で安定した受信に期待するBER(1×10
4以下)を測定するには時間がかかる。
【0018】
[関連技術]
尚、受信装置及び無線通信システムに関する従来技術としては、特開2016−134678号公報「無線通信装置及び無線通信システム」(株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、第1の基地局からの第1のチャネルの受信電界レベルと、第2の基地局からの第2のチャネルの受信電界レベルとのレベル差に応じて、第1のチャネルをサーチする期間と第2のチャネルをサーチする期間の割合を変更することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、従来の受信装置及び無線通信システムでは、非常送システムにおいて、送信元が放送を開始する際に、受信装置において周波数サーチが完了するのに十分な時間、識別信号を送信し続けなければならず、音声放送を開始するまでに時間がかかるという問題点があった。
【0021】
また、従来の受信装置及び無線通信システムでは、周波数サーチの際に受信電界強度のみを用いているため、マルチパスや妨害波等により無線回線品質が劣化している周波数を通常受信周波数として選択してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0022】
更に、受信電界強度以外にBERを測定する場合、周波数サーチ全体の時間が長くなって、電源投入から運用開始までの時間が増大するという問題点があった。
【0023】
尚、特許文献1には、起動時の動作モードとして通常モードと機器据え付けモードとを備え、制御部が、起動時に通常モードが設定されている場合には、記憶されている起動周波数を通常受信周波数として設定し、起動時に機器据え付けモードが設定された場合には、周波数サーチを行うことは記載されていない。
【0024】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、受信装置が、起動時に、迅速に運用周波数を設定して、送信元における識別信号の送信時間を短縮して迅速に音声放送に移行することができ、周波数サーチを行う際には、無線回線品質が良好な周波数を短時間で選択して受信品質を良好にすることができる受信装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線信号を受信して中間周波数に変換する無線部と、中間周波数信号を検波してノイズスケルチ信号を検出する検波部と、中間周波数信号を復調する復調部と、無線部において使用する運用周波数を設定する制御部とを備え、制御部が、起動時の動作モードとして通常起動モードと機器据付モードとを備え、起動時に通常
起動モードである場合には、内部に記憶されている起動周波数を運用周波数として設定し、起動時に機器据付モードである場合には、予め登録されている複数の周波数の中から最も受信状態のよい周波数を選択する周波数サーチ処理を行って、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定し、起動時の動作モードを通常
起動モードに変更
し、制御部が、検波部からのノイズスケルチ信号に基づいて、一定時間無線信号を受信しなかったことを検出すると、記憶されている起動周波数をクリアして、周波数サーチ処理を行い、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定することを特徴としている。
【0026】
また、本発明は、上記受信装置において、制御部が、検波部からのノイズスケルチ信号に基づいて、一定時間無線信号を受信しなかったことを検出すると、記憶されている起動周波数をクリアして、周波数サーチ処理を行い、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定することを特徴としている。
【0028】
また、本発明は、上記受信装置において、制御部が、周波数サーチ処理において、複数の周波数の受信状態を比較する際に、復調されたシンボルについて、受信信号の信号点の誤差が最小となる周波数を最も受信状態のよい周波数として選択することを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、上記受信装置において、制御部が、複数の周波数の受信状態を比較する際に、フレーム内の同期ワードについて、シンボル毎の受信信号の信号点と理想的な信号点との距離の2乗の和を、理想的な信号点と原点との距離の2乗の和で除した値を、信号点誤差の平均値として算出し、当該信号点誤差の平均値を、受信信号の信号点の誤差とすることを特徴としている。
【0030】
また、本発明は、上記受信装置において、制御部が、複数の周波数の受信状態を比較する際に、フレーム内の同期ワードについて、シンボル毎の受信信号の信号点と理想的な信号点との距離の2乗の和を、理想的な信号点と原点との距離の2乗の和で除した値の対数を、信号点誤差の平均値の対数として算出し、当該信号点誤差の平均値の対数を、受信信号の信号点の誤差とすることを特徴としている。
【0031】
また、本発明は、互いに異なる周波数で無線信号を送信する複数の送信局と、送信局からの無線信号を受信する受信局とを備えた無線通信システムであって、受信局が、上記のいずれか記載の受信装置であることを特徴として要る。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、無線信号を受信して中間周波数に変換する無線部と、中間周波数信号を検波してノイズスケルチ信号を検出する検波部と、中間周波数信号を復調する復調部と、無線部において使用する運用周波数を設定する制御部とを備え、制御部が、起動時の動作モードとして通常起動モードと機器据付モードとを備え、起動時に通常
起動モードである場合には、内部に記憶されている起動周波数を運用周波数として設定し、起動時に機器据付モードである場合には、予め登録されている複数の周波数の中から最も受信状態のよい周波数を選択する周波数サーチ処理を行って、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定し、起動時の動作モードを通常
起動モードに変更
し、制御部が、検波部からのノイズスケルチ信号に基づいて、一定時間無線信号を受信しなかったことを検出すると、記憶されている起動周波数をクリアして、周波数サーチ処理を行い、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定する受信装置としているので、過去に良好に受信できた運用周波数を起動周波数に設定しておくことにより、通常の起動時において周波数サーチを行わずにすむ可能性を高め、迅速に運用周波数を決定でき、送信元からの識別信号の送信時間を短縮して、迅速に音声放送に移行することができると共に、受信装置が移動した場合等は機器据付モードで動作して、周波数サーチによって良好な運用周波数を設定することができ
、正常に受信できない状態となった場合には、周波数サーチによって適切な周波数を選択して、当該周波数を新たな起動周波数として、次回の起動時に迅速に運用を開始することができる効果がある。
【0033】
また、本発明によれば、制御部が、検波部からのノイズスケルチ信号に基づいて、一定時間無線信号を受信しなかったことを検出すると、記憶されている起動周波数をクリアして、周波数サーチ処理を行い、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定する上記受信装置としているので、正常に受信できない状態となった場合には、周波数サーチによって適切な周波数を選択して、当該周波数を新たな起動周波数として、次回の起動時に迅速に運用を開始することができる効果がある。
【0034】
また、本発明によれば、本発明は、制御部が、周波数サーチ処理において、複数の周波数の受信状態を比較する際に、復調されたシンボルについて、受信信号の信号点の誤差が最小となる周波数を最も受信状態のよい周波数として選択する上記受信装置としているので、マルチパスや妨害波の影響が小さく無線回線品質が良好な周波数を運用周波数に設定でき、精度が高く良好な受信信号を得ることができる効果がある。
【0035】
また、本発明によれば、互いに異なる周波数で無線信号を送信する複数の送信局と、送信局からの無線信号を受信する受信局とを備えた無線通信システムであって、受信局が、上記のいずれか記載の受信装置である無線通信システムとしているので、非常送システムにおいて、送信元からの識別信号の送信時間を短縮して、迅速に音声放送に移行することができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る受信装置及び無線通信システムは、受信装置の制御部が、起動時の動作モードとして通常起動モードと機器据付モードとを備え、起動時に通常モードが設定されている場合には、内部に記憶されている起動周波数を運用周波数として設定し、起動時に機器据付モードが設定された場合には、周波数サーチ処理を行って、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定し、起動時の動作モードを通常モードに設定するようにしており、受信装置が、これまでに良好に受信できた運用周波数を起動周波数に設定しておくことにより、通常の起動時において周波数サーチを行わずにすむ確率を高くして、迅速に運用周波数を決定することができ、送信元からの識別信号の送信時間を短縮して、迅速に音声放送に移行することができると共に、受信装置が移動した場合等は機器据付モードで動作して、周波数サーチによって良好な運用周波数を設定することができるものである。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係る受信装置及び無線通信システムは、受信装置の制御部が、周波数サーチにおいて、復調されたシンボルについて、受信信号の信号点のシンボル誤差が最小となる周波数を最も受信状態のよい周波数として選択するようにしており、マルチパスや妨害波の影響が小さく、無線回線品質が良好な周波数を短時間で選択して、送信元からの識別信号の送信時間を短縮すると共に、受信品質を良好にすることができるものである。
【0039】
[実施の形態に係る無線通信システムの構成例:
図1]
本発明の実施の形態に係る受信装置(本受信装置)を備えた無線通信システムの構成例(本無線通信システム)について
図1を用いて説明する。
図1は、本受信装置を備えた本無線通信システムの構成例を示す説明図である。
図1に示すように、本無線通信システムは、
図9に示した従来の無線通信システムとほぼ同様の同報系防災行政無線システムであり、自治体の役場20に設けられた基地局21と、基地局21から離れた場所に設けられた中継局22,23と、基地局21又は中継局22,23の通信エリアに存在する複数の受信装置25とを備えている。
そして、受信装置25の構成及び起動時の動作等が、従来とは異なっている。受信装置25については後述する。
【0040】
図1の例では、基地局21は周波数F1で受信装置25に送信し、中継局22はF2で送信し、中継局23はF3で送信する。
図1では、後述する起動時の処理が終わって運用が開始された状態を示しており、各受信装置25は、予め登録された複数の周波数の中から、最も受信状態のよい周波数を運用周波数として設定して受信する。
各受信装置2には、当該システムで用いられる複数の周波数(
図1の例では周波数F1,F2,F3)が予め登録されている。
【0041】
例えば、中継局23のエリアに位置する受信装置25aは、周波数F3を運用周波数として設定し、受信を開始する。
受信装置25b及び25cは、基地局21のエリアと、中継局23のエリアの両方に属しているが、周波数サーチの結果、受信装置25bは周波数F1を運用周波数とし、受信装置25cは、周波数F3を運用周波数としている。
【0042】
[受信装置が別のエリアに移動した状態:
図2]
受信装置が別のエリアに移動した状態について
図2を用いて説明する。
図2は、受信装置が別のエリアに移動した状態を示す説明図である。
図2では、
図1において中継局23のエリアにあった受信装置25aが、基地局21のエリアに移動した状態を示している。
【0043】
受信装置25aは、
図1の状態では、運用周波数としてF3が設定されている。従って、基地局21のエリアに移動した場合に、周波数F1は受信できない。
そこで、受信装置25aは、後述する機器据付モードで起動することにより、再び周波数サーチ処理を行って、最も受信状態のよい周波数F1を運用周波数として決定し、
図2の状態で運用を開始する。周波数サーチの処理については後述する。
【0044】
[本受信装置の構成:
図3]
次に、本受信装置の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、本受信機の構成を示す構成ブロック図である。
図3に示すように、本受信装置は、空中線31と、無線部32と、IF検波部33と、A/D変換部34と、復調部35と、音声データ復号化部36と、D/A変換部37と、スピーカ38と、周波数シンセサイザ39と、制御部40と、外部制御インタフェース41とを備えている。
【0045】
空中線31は、無線信号を受信するアンテナである。
無線部32は、受信した無線信号を増幅し、周波数シンセサイザ39からの周波数信号を乗算して中間周波数(IF;Intermediate Frequency)の信号に変換する。
【0046】
IF検波部33は、IF信号を増幅し、帯域制御を行う。また、IF信号からノイズスケルチ(NSQ)信号を検出して、制御部40に出力する。更に、IF検波部33は、受信電界強度を測定し、制御部40に出力する。
A/D変換部34は、IF検波部33から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0047】
復調部35は、復調処理を行って、受信シンボルを出力すると共に、シンボル判定誤差を算出する。シンボル判定誤差については後述する。
音声データ復号化部36は、符号化された音声データを復号化する。
D/A変換部37は、復号化されたデジタル音声をアナログ信号に変換する。
スピーカ38は、音声を出力する。
【0048】
周波数シンセサイザ39は、無線部32におけるダウンコンバートに用いられる周波数信号を生成し、IF信号の周波数を特定する。
外部制御インタフェース41は、本受信装置をユーザが制御するためのインタフェースであり、例えば、後述するように機器据付モードの設定等を行う。
【0049】
制御部40は、本受信装置全体の制御を行う処理部であり、内部の記憶部に記憶されたプログラムを読み出して、処理を実行する。本受信装置では、起動時に運用周波数を設定する処理や周波数サーチの処理が特徴となっている。
【0050】
具体的には、制御部40は、起動時の動作モードとして、通常起動モードと機器据付モードとを備えており、設定されたいずれかの動作モードで動作する。通常は、通常起動モードが設定されているが、機器据付時には、作業員等が手動操作で機器据付モードに設定する。
また、本受信装置の特徴として、制御部40は、内部に起動周波数を記憶している。
【0051】
通常起動モードは、例えば、既に本受信装置の据え付けが完了して運用を開始している状態において、再起動する場合等に用いられ、制御部40は、内部に記憶された起動周波数を運用周波数として設定する。
【0052】
起動周波数は、前回の運用で良好に受信できた周波数が設定されているため、再起動時にも良好に受信できる可能性が高く、周波数サーチを行わずに起動周波数を運用周波数に設定して運用することで、起動後、運用開始までの時間の短縮を図るものである。
尚、後述するように、起動周波数で正常に運用できない場合には、周波数サーチを行う。
【0053】
また、機器据付モードは、新たに本受信装置を設置する場合や、本受信装置を移動した先で据え付けを行う場合に用いられる動作モードであり、周波数サーチを行って良好に受信できる周波数を選択して、運用周波数として設定するものである。
起動時の具体的な処理については後述する。
【0054】
更に、本受信装置の制御部40は、周波数サーチにおいて、受信電界強度だけではなく、復調部35から入力されるシンボル判定誤差に基づいて無線回線の品質を判断して、運用周波数を選択するものであり、マルチパスや妨害波の影響を受けにくい周波数を迅速に選択できるものである。
周波数サーチの具体的な処理については後述する。
【0055】
[本受信装置の起動時の処理:
図4]
次に、本受信装置の起動時(電源投入時)の処理について
図4を用いて説明する。
図4は、本受信装置の起動時の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、本受信装置の制御部40は、電源が投入されると、現在の動作モードとして、通常モードが設定されているか、若しくは外部からの手動操作等で、機器据付モードが設定されたかを判断する(100)。
機器据付モードが設定された場合には、制御部40は、処理120に移行して、周波数サーチ処理を行う。周波数サーチ処理については後述する。
【0056】
また、処理100において、通常モードが設定されている場合には、制御部40は、起動周波数が記憶されているかどうかを判断し(102)、起動周波数が記憶されていない場合(Noの場合)には、周波数サーチ処理を行う(120)。
【0057】
処理102において、起動周波数が記憶されている場合には(Yesの場合)、制御部40は、当該起動周波数を運用周波数に設定し(104)、受信を開始する。
そして、制御部40は、運用周波数として設定された起動周波数で一定時間有効な信号を受信できなかった(未受信)かどうかを判断し(108)、一定時間未受信であった場合(Yesの場合)には、記憶部に記憶されている起動周波数をクリアして(110)、周波数サーチ処理を行う(120)。処理108における判定は、IF検波部33からノイズスケルチ信号が一定時間入力されなかった場合に未受信と判断する。
【0058】
また、処理108において、一定時間内に有効な信号を受信した場合(Noの場合)、制御部40は、送信元から周波数サーチを指示する信号(サーチ指示)を受信したかどうかを監視し(112)、サーチ指示を受信した場合には(Yesの場合)、周波数サーチ処理、ここでは設定されている起動周波数の受信状態の確認を行う(120)。
【0059】
本システムでは、基地局21は定期的に周波数のサーチ指示を送信していることが好ましく、これにより、非常送のシステムであっても、本受信装置は設定された起動周波数の受信状態を定期的に確認することができ、放送の聞き逃しを少なくすることができる。
【0060】
処理112で周波数サーチの指示を受信しなかった場合には(Noの場合)、制御部40は通常の運用に移行して(122)、送信元からの信号を待ち受けると共に、処理108に戻って、受信が正常に行われているかどうか、また、周波数サーチの指示の有無を監視する。
このようにして、本受信装置における起動時の処理が行われるものである。
【0061】
尚、
図4の処理108〜122に示したように、本受信装置では、運用開始後においても、無線信号を正常に受信できない場合や、送信元からの指示があった場合等、必要であれば周波数サーチを行って、改めて良好な周波数を運用周波数に設定できるものである。
【0062】
これにより、本受信装置では、特に、起動時に通常モードが設定されている場合に、迅速に運用を開始することができ、非常送モードのシステムにおいて、送信側で識別信号を送信する時間を短縮することができるものである。
【0063】
[周波数サーチ処理:
図5]
次に、
図4の処理120に示した周波数サーチ処理について
図5を用いて説明する。
図5は、
図4の処理120に示した周波数サーチ処理を示すフローチャートである。
図5に示すように、周波数サーチ処理が開始されると、制御部40は、まず、登録されている複数の周波数(システム内で使用される周波数)の内の一つを受信周波数として設定する(200)。
【0064】
そして、制御部40は、IF検波部33からのノイズスケルチ(NSQ)信号を監視して、一定時間以内にノイズスケルチ信号を受信したかどうかを判断し(200)、受信していない場合には(Noの場合)、登録された全ての周波数についてチェックしたかどうかを判断する(220)。
処理220で、全ての周波数について終わっていない場合(Noの場合)には、制御部40は、処理200に戻って次の周波数を設定する。
【0065】
処理202でノイズスケルチ信号を受信した場合には、制御部40は、同期検出を行って、受信した信号が自分のシステムの無線信号であるかどうかを確認し(208)、一定時間内に同期検出ができない場合(Noの場合)、処理220に移行する。
【0066】
また、処理208で同期が検出できた場合(Yesの場合)には、制御部40は、周波数情報を取得して(212)、自分宛の有効な信号であるかどうか、つまり受信可能であるかどうかを判断し(214)、受信可能でなければ(Noの場合)、処理220に移行する。
【0067】
処理214で受信可能な信号であると判断した場合、制御部40は、当該信号について受信状態をチェックする受信状態チェック処理を行って(216)、当該周波数が運用周波数の候補となるかどうかを判断し、候補となる場合には当該周波数及びその受信状態を記憶部に記憶して、処理220に移行する。
【0068】
受信状態チェック処理については後述するが、本受信装置の特徴として、従来と同様に受信電界強度を測定するのに加え、復調後の受信シンボルの精度に基づいて無線通信回線の品質を推定し、受信状態の判断に用いる。
これにより、受信電界強度のみによって受信状態を判断する場合に比べて、無線回線品質が良好な周波数を精度良く且つ迅速に選択することができるものである。
【0069】
そして、処理220において、全ての周波数について受信状態をチェックした場合には(Yesの場合)、制御部40は、記憶されている運用周波数の候補となった周波数の中から、受信状態がもっとも良好である周波数を選択して、運用周波数として設定する(222)。
本受信装置の特徴として、制御部40は、受信電界強度が閾値以上で、且つ、後述する信号点誤差の平均値が最も小さい周波数を運用周波数として設定する。
【0070】
更に、制御部40は、当該運用周波数として設定した周波数を、起動周波数に設定して記憶する(224)。尚、処理222として、受信状態がもっとも良好である周波数を選択して、起動周波数として記憶し、その後、処理224として、当該起動周波数を運用周波数として設定してもよい。
【0071】
そして、制御部40は、起動時の動作モードとして通常モードを設定し(226)、周波数サーチ処理を終わらせ、
図4の通常の運用に移行する(122)。つまり、機器据付モードで起動して周波数サーチ処理を行った場合には、周波数サーチ完了により起動時の動作モードを通常モードに変更することになる。
これにより、次回の電源投入時には、通常モードで動作して、当該起動周波数で受信を開始することになる。
このようにして、本受信装置における周波数サーチ処理が行われるものである。
【0072】
[無線回線品質と受信信号点:
図6]
次に、本受信装置の周波数サーチ処理における受信状態の判断に用いられる無線回線品質と信号点との関係について
図6を用いて説明する。
図6は、理想的な信号点と受信信号点との関係を表す模式説明図である。
図6では、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式で「10」(2進数)のデータを受信した場合の、デジタル復調された信号のコンスタレーション(信号点配置)の例を示している。
【0073】
図6に示すように、データ「10」の理想的な信号点は点Aである。
しかし、雑音等の影響により、受信信号の信号点は理想的な点Aからずれた位置、例えば点Bに現れる。
受信した信号点が点Bであれば、「10」として復調されるため、ビット誤りは生じない。
更に回線品質が劣化して、受信信号の信号点が点B′となった場合には、判定閾値を超えるため、「00」のデータとして復調され、1ビットの誤りが生じる。
【0074】
このように、マルチパスや妨害波などによって無線区間の品質が低下すると、受信信号の信号点が理想的な信号点から大きくずれる確率が高くなる。
そのため、受信信号の信号点について、理想的な信号点からのずれを測定することにより、無線回線品質を推定することが可能である。
【0075】
[受信信号の雑音成分:
図7]
ここで、無線回線品質を推定するための雑音成分について
図7を用いて説明する。
図7は、受信信号の雑音成分を示す説明図である。
図7に示すように、理想的な信号点を点Rとすると、理想的な受信信号ベクトルはr
kで表されるが、無線通信において雑音成分e
kが発生すると、受信信号の信号点は点S、受信信号ベクトルはs
kとなる。
【0076】
つまり、雑音成分e
k及びその絶対値の2乗|e
k|
2は、理想的な信号点Rと受信信号の信号点Sの同相成分及び直交成分から、
【数1】
と表すことができる。
ここで、kは、シンボルのサンプル時刻を表す整数である。
【0077】
そこで、本受信装置では、送信元からの既知の信号を受信して、各シンボルで発生した雑音成分の大きさを表す|e
k|
2を平均して、無線回線品質を推定するようにしている。
例えば、ARIB STD-T115第2編のシステムでは、1フレームの同期ワードで48個のシンボルがあり、次式により、無線フレーム内の全てのシンボルにおける雑音成分の大きさを平均して信号点誤差の平均値(E)を求め、この値に基づいて無線回線品質を推定する。
【0078】
【数2】
あるいは、次式により、Eをデシベル値に変換したE’ を求め、この値に基づいて無線回線品質を推定する。
【数3】
【0079】
(式2)、(式3)において、Nは、平均するシンボルの個数であり、48個のシンボルから成る同期ワードの誤差を平均する場合には、N=48とする。
(式2)、(式3)に示すように、本受信装置では、(式1)で求めたシンボル毎の雑音成分の絶対値の2乗の総和(48シンボル分)を、理想的な信号ベクトルの絶対値の2乗の総和で除した値、つまり、シンボル毎の受信信号の信号点と理想的な信号点との距離の2乗の総和を、理想的な信号点と原点との距離の2乗の総和で除した値、あるいはそのデシベル値を信号点誤差の平均値として算出する。
【0080】
信号点誤差の平均値が最も小さい周波数が、妨害波やマルチパスの影響が少なく、シンボルの精度が最も高い周波数となるものである。
尚、本受信装置では、制御部40が、復調部35から雑音成分(シンボル判定誤差)を入力して信号点誤差の平均値を算出する。
【0081】
[周波数サーチにおける受信状態チェックの処理:
図8]
次に、本受信装置の周波数サーチにおける受信状態チェックの処理について
図8を用いて説明する。
図8は、
図5の処理216に示した受信状態チェック処理を示すフローチャート図である。
受信状態チェック処理は、
図5に示したように、周波数サーチ処理において、サーチした周波数について周波数情報を取得すると開始される処理である。
【0082】
制御部40は、受信状態チェック処理が開始されると、IF検波部33で測定された受信電界強度を入力し(図では「受信電界強度を測定」と記載)(300)、受信電界強度の値が閾値を超えたかどうかを判定し(302)、超えていない場合(Noの場合)には、受信状態チェックの処理を終えて、
図5の処理220に移行する。つまり、受信電界強度が閾値を超えていない周波数は運用周波数の候補から除外する。
【0083】
また、処理302で受信電界強度の値が閾値を超えた場合(Yesの場合)には、制御部40は、当該周波数を運用周波数の候補とし、復調部35から入力されたシンボル判定誤差に基づいて、上述した(式2)又は(式3)により、受信信号の信号点誤差の平均値(E)或はそのデシベル値(E’)を算出する(304)。
【0084】
そして、制御部40は、候補となる周波数と信号点誤差の平均値(又はそのデシベル値)を対応付けて記憶して(306)、受信状態チェックの処理を終了する。
図5において、登録された全ての周波数について受信状態チェックの処理が行われると、制御部40には、運用周波数の候補となる全ての周波数とその信号点誤差の平均値(又はそのデシベル値)が記憶されることになる。
【0085】
そして、制御部40は、
図5の処理222において、記憶された全ての候補の中から信号点誤差の平均値(又はそのデシベル値)が最も小さい周波数(シンボル精度が最も高い周波数)を、運用周波数として選択するようにしている。これにより、妨害波やマルチパスの影響が少ない周波数を運用周波数として、良好な品質の受信信号を得ることができるものである。
【0086】
[BER測定と信号点誤差測定との比較]
受信品質を推定する際、本受信装置のように信号点誤差の測定を行うのではなく、ビット誤り率(BER)を測定して求める方法もある。
そこで、ビット誤り率を測定する場合と、信号点誤差を測定する場合の所要時間を比較する。
【0087】
BER測定を実施する場合は、基地局からの送信信号に含まれる既知のビットパターンである同期ワード部分の受信信号を用いてBERを測定する必要がある。
上述したARIB STD-T115第2編のシステムの場合、80msの無線フレーム毎に、96ビットの同期ワードが1回だけ送信される。
BERが1×10
-4以下となる回線品質を確認するためには、少なくとも10,000ビット分の同期ワードを受信する必要があるため、約8.3秒の時間を要することになる。
【0088】
これに対し、信号点誤差測定を行う場合は、1フレームで測定可能であるため、80msで測定が完了する。
従って、周波数サーチにおいて、信号点誤差測定で受信品質の推定を行うことにより、BER測定を行う場合に比べて、電源投入から運用開始までの時間を大幅に短縮することができるものである。
【0089】
例えば、周波数が3波の場合、BER測定では8.3秒×3波=24.9秒かかるが、本受信装置における信号点誤差測定では、80ms×3波=240msとなり、短時間で最も回線品質のよい周波数を選択することができるものである。
【0090】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る受信装置及び無線通信システムによれば、受信装置の制御部40が、起動時の動作モードとして通常起動モードと機器据付モードとを備え、起動時に通常モードが設定されている場合には、内部に記憶されている起動周波数を運用周波数として設定するようにしているので、受信装置がこれまでに良好に受信できた運用周波数を起動周波数に設定しておくことにより、通常の起動時において周波数サーチを行わずにすむ確率を高くして、迅速に運用周波数を決定することができ、非常送システムにおいて、送信元からの識別信号の送信時間を短縮して、迅速に音声放送に移行することができる効果がある。
【0091】
また、本発明の実施の形態に係る受信装置及び無線通信システムによれば、受信装置の起動時に機器据付モードが設定された場合には、制御部40が、登録されている複数の周波数の中から最も受信状態のよい周波数を選択する周波数サーチ処理を行って、選択された周波数を起動周波数として記憶すると共に運用周波数として設定し、起動時の動作モードを通常モードに設定するようにしているので、受信装置が移動した場合等は機器据付モードで動作して、周波数サーチによって良好な運用周波数を設定することができ、次の起動時には通常起動モードで起動して、運用開始までの時間を短縮できる効果がある。
【0092】
また、本発明の実施の形態に係る受信装置及び無線通信システムによれば、受信装置の制御部40が、復調されたシンボルについて、復調部35からのシンボル判定誤差に基づいて、フレーム毎に信号点誤差の平均値を算出して、信号点誤差の平均値が最小となる周波数を運用周波数として選択するようにしているので、受信電界強度だけではわからないマルチパスや妨害波の影響を考慮して、無線回線品質が良好な周波数を選択でき、受信品質を良好にすることができ、更に、BERを測定するのに比べて大幅に測定時間を短縮でき、起動から運用開始までの時間短縮にも寄与する効果がある。