(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜が予めラミネートされている前記光学装置の表面上に少なくとも補助層を提供するステップを更に含み、前記少なくとも1つの補助層は、熱可塑性薄膜、ハードコート層、下塗層、色付与層、フォトクロミック層、分極層、液晶層、エレクトロクロミック層、静電防止層、反射防止層、着色層、1つ又は複数の波長範囲をフィルタリングする選択的フィルタ、トップコート層、防汚、防曇層、抗雨層、疎水層、又はこれらの組合せからなるリスト内で選択される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
前記光学物品は、粗化ステップ及び微細化ステップの少なくとも1つと、粗化ステップ、微細化ステップ、及び粗さ消去ステップから選択される2つ以下のステップとを含む半完成光学物品の機械加工プロセスにより、受け入れ表面を提供するために前記半完成光学物品から予め製造される、請求項4〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
受け入れ表面となることを意図される表面の粗度を判定するステップは、前記表面の前記粗度を計測するステップと、前記表面の事前の製造データに基づいて前記表面の前記粗度を推定するステップと、前記表面を既知の粗度の表面と比較するステップと、類似の製造データを使用して予め製造されたサンプル表面の粗度に基づいて前記表面の前記粗度を判定するステップとからなるリスト内で選択される方法に従って実施される、請求項11に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学物品の光学表面上に層を提供するニーズが存在する。前記層は、光学物品の性能を改善するように設計される。これらは、例えば、光学表面の表面品質を変更し得、光学物品の色を変更し得、光学物品を磨滅から保護し得、反射防止機能を追加し得、且つ更なる層及び又は被覆を追加するための基材であり得る。
【0005】
従って、少なくとも1つの層を受け入れるのに適した形態である光学物品を提供するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の対象は、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜の同時ラミネーションに適した形態で提供される光学物品であって、互いに対向する凸状及び凹状光学表面を含み、凸状及び/又は凹状光学表面は、感圧接着剤であって、その上に熱可塑性薄膜が配置されることが意図される、感圧接着剤を受け入れることを意図された()受け入れ表面であり、前記受け入れ表面は、0.01μm以上且つ0.3μm以下の算術平均プロファイル粗度Raを有し、及び/又は前記受け入れ表面は、0.2°以上且つ1.2°以下のプロファイル粗度二乗平均平方根勾配Rdqを有する、光学物品である。
【0007】
「受け入れ表面は、0.01μm以上且つ0.3μm以下の算術平均プロファイル粗度Raを有し、及び/又は前記受け入れ表面は、0.2°以上且つ1.2°以下のプロファイル粗度二乗平均平方根勾配Rdqを有する」という条件は、以下では「選択された粗度特徴」と呼称される。一実施形態では、算術平均プロファイル粗度Raは、0.02μm以上又は更に0.03μm超である。
【0008】
一実施形態によれば、選択された粗度特徴は、受け入れ表面が0.01μm以上且つ0.3μm以下の算術平均プロファイル粗度を有するようなものである。
【0009】
上記のものと組み合わせられ得る別の実施形態によれば、選択された粗度特徴は、受け入れ表面が0.2°以上且つ1.2°以下のプロファイル粗度二乗平均平方根勾配Rdqを有するようなものである。
【0010】
本発明者らは、選択された粗度特徴が、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜を光学物品の受け入れ表面上に直接ラミネートした後に改善された特徴を取得するのに適することを実証した。
【0011】
従って、本発明の光学物品は、例えば、感圧接着剤層が前記光学物品の受け入れ表面上に接着され、及び熱可塑性薄膜が感圧接着剤層上に配置される場合、光学装置を更に製造するために有利である。
【0012】
本発明によれば、光学物品は、互いに対向し、且つ材料によって分離された凸状及び凹状光学表面を含む。一実施形態によれば、前記材料は透明材料である。
【0013】
通常の定義に従って、
・算術平均プロファイル粗度Raは、平均ラインからの粗度プロファイルの垂直方向の逸脱に基づいて表面の特徴を判定する振幅パラメータである。算術平均プロファイル粗度Raは、粗度プロファイル縦座標の絶対値の算術平均値である。
・粗度二乗平均平方根勾配Rdqは、粗度プロファイルの勾配の特性を記述する勾配パラメータである。粗度二乗平均平方根勾配Rdqは、サンプリング長内におけるプロファイルの二乗平均平方根勾配である。
【0014】
すべての技術的に価値を有する実施形態に従って組み合わせることができる本発明の光学物品の異なる実施形態によれば、
− 同時にラミネートされることを意図された感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜は、感圧接着剤層が熱可塑性薄膜上に配置される多層薄膜の形態であり、
− 受け入れ表面は、以下の式:
RSM≧min(0.64×Ra;0.58×Ra+0.007)
による、RSMと呼称されるピーク間の平均間隔を有し、ここで、「min(x;y)」は、xとyとの間の最小値の選択を指し、
− 受け入れ表面は、以下の式:RSM≧0.64×Raによる、RSMと呼称されるピーク間の平均間隔を有し、
− 受け入れ表面は、以下の式:RSM≧0.58×Ra+0.007による、RSMと呼称されるピーク間の平均間隔を有する。
【0015】
本発明は、選択された粗度特徴を有する光学物品、感圧接着剤層、及び熱可塑性薄膜を含む光学装置であって、同時ラミネーションにより、感圧接着剤層は、光学物品の受け入れ表面上に接着され、及び熱可塑性薄膜は、感圧接着剤層上に配置される、光学装置も対象とする。
【0016】
同時にラミネートされた後、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜は分離することができないことを理解されたい。
【0017】
一実施形態によれば、感圧接着剤層の厚さは、20μm以上且つ250μm以下、例えば25μm以上且つ/又は75μm以下である。
【0018】
一実施形態によれば、熱可塑性薄膜の厚さは、30μm以上且つ500μm以下、例えば80μm以上且つ/又は200μm以下である。
【0019】
本発明は、光学装置を製造する方法であって、
・選択された粗度特徴を有する光学物品を提供するステップと、
・感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜を提供するステップと、
・感圧接着剤層が前記受け入れ表面上に接着し、及び熱可塑性薄膜が感圧接着剤上に配置されるように、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜を光学物品の受け入れ表面上に直接ラミネートするステップと
を含む方法も対象とする。
【0020】
すべての技術的に価値を有する実施形態に従って組み合わせられ得る本発明の製造方法の異なる実施形態によれば、
− 提供された感圧接着剤及び熱可塑性薄膜は、感圧接着剤層が熱可塑性薄膜上に配置される多層薄膜の形態であり、
− 熱可塑性薄膜は、被覆を更に含む構造化薄膜の一部分であり、前記被覆は、優先的に、感圧接着剤層と接触することを意図された熱可塑性薄膜の別の面とは反対側の熱可塑性薄膜の面上に配置され、更に場合により、被覆は、熱可塑性薄膜と感圧層との間に存在し得、この場合、前記被覆は、熱可塑性薄膜、ハードコート層、下塗層、フォトクロミック層、分極層、液晶層、エレクトロクロミック層、静電防止層、反射防止層などの干渉性積層体、ミラー若しくは反射性層又は可視スペクトルの一部の部分に反射性を有する層、着色層、1つ又は複数の波長範囲をフィルタリングする選択的フィルタ、防汚層、防曇層、抗雨層、疎水層、或いはこれらの組合せからなるリスト内で選択され、
− 前記製造方法は、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜が予めラミネートされている光学装置の表面上に少なくとも補助層を提供するステップを更に含み、この場合、前記少なくとも1つの補助層は、熱可塑性薄膜、ハードコート層、下塗層、フォトクロミック層、分極層、液晶層、エレクトロクロミック層、静電防止層、反射防止層などの干渉性積層体、ミラー若しくは反射性層又は可視スペクトルの一部の部分に反射性を有する層、着色層、1つ又は複数の波長範囲をフィルタリングする選択的フィルタ、防汚層、防曇層、抗雨層、疎水層、或いはこれらの組合せからなるリスト内で選択され、
− 前記製造方法では、熱可塑性薄膜は、被覆を更に含む構造化薄膜の一部分であり、及び方法は、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜が予めラミネートされている光学装置の表面上に少なくとも1つの補助層を提供するステップを更に含み、
− 前記製造方法では、熱可塑性薄膜又は感圧層のいずれかは、少なくとも染料、顔料、吸収剤、フォトクロミック染料の追加又は存在により、更なる光学特性を含み、
− 光学物品は、粗化ステップ及び微細化ステップの少なくとも1つと、粗化ステップ、微細化ステップ、及び粗さ消去ステップから選択される2つ以下のステップとを含む半完成光学物品の機械加工プロセスにより、受け入れ表面を提供するために半完成光学物品から予め製造され、一実施形態によれば、半完成光学物品の機械加工プロセスは、粗さ消去ステップのみを含み、一実施形態によれば、半完成光学物品の機械加工プロセスは、粗化ステップのみを含み、
− 前記製造方法は、制御ステップ及び意思決定ステップによって後続される、互いに対向する凸状及び凹状光学表面を含む供給された光学物品を提供する予備ステップを含み、この場合、
・制御ステップは、受け入れ表面となることを意図される供給された光学物品の表面の粗度を判定するステップを含み、
・意思決定ステップは、
i.前記光学表面の予め判定された粗度を、選択された粗度特徴を有する光学物品の受け入れ表面の1つと比較するサブステップと、
ii.選択された粗度特徴に対応する粗度要件が満たされる場合、供給された光学物品を製造方法の提供ステップに提供し、且つ選択された粗度特徴に対応する粗度要件が満たされない場合、供給された光学物品を補完ステップに提供するサブステップと
を含み、
− 受け入れ表面となることを意図される表面の粗度を判定するステップは、前記表面の粗度を計測するステップと、前記表面の事前の製造データに基づいて前記表面の粗度を推定するステップと、前記表面を既知の粗度の表面と比較するステップとからなるリスト内で選択される方法に従って実施され、
− 補完ステップは、供給された光学物品を拒絶するステップと、供給された光学物品を製造方法の提供ステップに提供するために、前記表面の粗度が、機械加工ステップ後、選択された粗度特徴を満たすように、受け入れ表面となることを意図される表面を更に前記機械加工するステップとのリスト内で選択され、一実施形態によれば、受け入れ表面となることを意図される表面を更に機械加工するステップは、フラッシュ研磨ステップからなる。
【0021】
以下では、添付図面を参照して例について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図中の要素は、簡潔性及びわかりやすさを目的として示されており、且つ必ずしも正確な縮尺で描画されていない。例えば、図中のいくつかの要素の寸法は、本発明の実施形態の理解の改善を支援するために他の要素との関係で誇張されている場合がある。
【0024】
添付の図では、同一の参照符号は同一の部分に対応する。
【0025】
図1は、光学物品10と、感圧接着剤層20と、熱可塑性薄膜30とを含む光学装置1を示す。前記光学物品10は、互いに対向する凸状光学表面11及び凹状光学表面12を含む。一例によれば、光学装置1は、眼科メガネレンズである。
【0026】
本発明の用語法によれば、「薄膜」は、単独で使用された場合、材料の単一の層を意味する。一例によれば、薄膜は、機能的な薄膜であり、一例によれば、薄膜は、自己支持型である。
【0027】
一例によれば、熱可塑性薄膜30は、セルローストリアセテート(TAC)薄膜である。
【0028】
一例によれば、感圧接着剤層20及び熱可塑性薄膜30は、多層薄膜として組み立てられる。本発明の枠内では、「多層薄膜」は、固有の階層化構造の一部分である感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜を意味し、この場合、感圧接着剤層は、熱可塑性薄膜上に配置される。
【0029】
本発明の用語法によれば、「構造化薄膜」は、階層化構造の一部分である材料の複数の薄膜又は層を意味する。一例によれば、構造化薄膜は、それ自体により自己支持されていない状態において、第1材料薄膜と、1つに接着された同一若しくは異なる特性を有する1つ若しくは複数の個々の薄膜層、又は同一若しくは異なる特性を有する更なる層とを含む階層化構造である。本発明の一実施形態によれば、熱可塑性薄膜は、被覆を更に含む構造化薄膜の一部分であり、前記被覆は、優先的に、感圧接着剤層と接触することを意図された熱可塑性薄膜の別の面とは反対側の熱可塑性薄膜の面上に配置される。
【0030】
レンズなどの光学物品は、例えば、望ましい形状に成形されると共に、例えば、成型、及び/又は研削、及び/又は研磨された例えばガラス又はプラスチック材料などの材料から製造される。一実施形態によれば、前記材料は透明材料である。
【0031】
一実施形態によれば、レンズなどの光学物品は、「半完成」品とも呼称されるブランクから機械加工される。レンズ、即ち、メガネレンズ用のブランクは、例えば、完成した前部表面と、着用者用の処方仕様などの光学仕様を得るために、通常、「表面処理」と呼称されるプロセスを通じた作業(表面加工とも呼称される)を依然として必要としている後部表面とを有する「厚いレンズ」であってもよい。これは、光学仕様を得るように、前部表面と後部表面との両方が作業(又は表面加工)を必要としている「厚いレンズ」であってもよい。
【0032】
光学表面の表面処理は、以下の一般的に使用される機械加工ステップの1つ又はいくつかにより実施することができる。
【0033】
・その望ましい厚さ及び曲率半径を光学物品に付与するために、ダイヤモンド砥石又はブレードによって光学物品の材料をミリングするステップからなる「粗化」。粗化後、光学表面は、そのほとんどが最終的な形状を得ているが、依然として粗く半透明な表面を有し、粗化は、以下の方法の少なくとも1つを使用して実行することができる。
○その望ましい厚さ及び曲率半径を光学物品に付与するために、砥石車(通常、接合されたダイヤアモンドの微細粒子から製造されている)によって光学物品の材料を研削するステップからなる「研削」。
○その望ましい厚さ及び曲率半径を光学物品に付与するために、回転駆動された切削ツールによって光学物品の材料を除去するステップからなる「ミリング」。
【0034】
・その曲率半径を変更することなく光学表面の粒を微細化するステップからなる、「スムージング」又は「微細切削」とも呼称される「微細化」。これは、十分な表面特性、即ち、ミクロンレベル未満の表面下損傷や小さい欠陥のうねりを有するレンズに対してその望ましい厚さ及び曲率半径を付与するように、過剰な材料を除去するステップを含む。一実施形態によれば、堅固に保持された光学物品は、研磨パッド又はディスクが装着されたツールと接触されており、ツールの曲率半径は、求められるレンズのものと同一である。光学物品及びツールは、潤滑液により作動し且つ冷却される。別の実施形態によれば、粗化ステップよりも微細なペースを伴う、欧州特許出願公開第2724815A1号明細書に示されているものなどの旋盤の動作では、表面をミリングするために単結晶ダイヤモンドブレードを使用することができる。数分間にわたって継続する微細化動作の終了時点において、光学物品は、表面の形状が光学物品について判定された光学補正をもたらすものにほぼ等しくなるように、必要とされる正確な厚さ及び曲率を有するものの、表面は、依然として完全に滑らか且つ透明な状態ではない。プロセスに応じて、微細化ステップは、以下の1つ又は複数のサブステップを含むことができる。
【0035】
・「研磨」とも呼称される粗さ消去ステップは、透明性を光学物品に付与するために使用される仕上げ動作である。この動作は、粗化及び仕上げステップに起因する痕跡を除去し、これにより、ダイヤモンドブレードによって形成された溝のスムージングを可能にする。これは、表面下損傷を除去するために全体表面上で数マイクロメートルの材料を除去するステップを含み、且つ残っている微細切削のうねり及び粗さをフィルタリングする。この段階は、表面及び研磨環境(ミクロンレベルの砥粒を含むスラリ)内の表面に対してそれ自体を準拠させるように適合されたソフトな研磨ツール間で相対運動を適用するステップを含み。従って、これは、多くの場合、ソフトな研磨ディスクと、非常に微細な粒を有する研磨液とを使用し、且つ従って、多くの場合に「ソフト研磨ステップ」と呼称される。ソフト研磨ステップでは、研磨された表面の曲率の変更は不可能である。換言すれば、これは、光学物品の表面の光学機能を定義する波長における表面の形状に対して影響を及ぼすことができない。
【0036】
現時点の光学表面は、多くの場合、上述の3つの機械加工ステップを連続的に実施することによって製造される。但し、他の製造方法が実施されてもよい。
【0037】
図1では、凹状光学表面12に、前記表面に接触する感圧接着剤層20と、感圧接着剤層上に配置された熱可塑性薄膜30とが提供される。本発明の枠内では、光学表面12は「受け入れ表面」と呼称されており、その理由は、これが、熱可塑性薄膜がその上に配置されることを意図された感圧接着剤を受け入れることを意図されるからである。感圧接着剤層20及び熱可塑性薄膜30は、受け入れ表面12上にラミネートされる。
【0038】
ラミネーションは、1つに接合された複数の層を含み部分を製造する周知の技法である。従って、これは、表面上でこれらの層を形成するように、前記層を前記表面上に転送し且つ糊付けするステップを含み。ラミネーションは、複数の層を1つに圧縮及び圧延することによって得ることができる。ラミネーションステップでは、圧力が層上に印加される。国際公開第2006/105999号パンフレットは、薄膜を、本発明を実施するのに適し得る眼科レンズ上にラミネートするための装置を開示している。一例によれば、層上における圧力は、1バール以上であり、例えば、圧力は2バール〜3バールであり、一例によれば、圧力は30秒〜2分の期間にわたって層上に印加される。
【0039】
「PSA」とも呼称される感圧接着剤は、光学物品の光屈折特性を保持しつつ、薄膜を光学物品の表面上に配置するために光学装置の分野で既知である。このタイプの接着剤材料に関与する接着のメカニズムは、化学的な接合を伴わず、PSA材料の特定の粘弾性特性を活用することに留意されたい。それぞれのPSA処方に固有のこれらの特性は、接着の境界面におけるファンデルワールス静電相互作用の確立を可能にする。これは、圧力の印加により、PSAが固体材料との接触状態に配置された場合に生成されるものである。
【0040】
いくつかの感圧接着剤材料を使用することができる。有利には、使用される感圧接着剤材料は、ポリアクリレートベース、スチレンに基づいたコポリマー、及び天然ゴムを含む混合物を含む群から選択される。更に詳しくは、ポリアクリレートやポリメタクリレートに基づいた一般的な組成を有するPSA、エチレンビニルアセテート、エチレンエチルアクリレート、エチレンエチルメタクリレートなどに基づいたエチレン系コポリマー、シリコーン、ポリウレタン、ブタジエンスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンを含む、合成ゴム及びエラストマのベースを有するPSA、亜硝酸塩又はアクリロニトリルを含みポリマーに基づいたPSA、ポリクロロプレンに基づいたPSA、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンを含みブロックコポリマーに基づいたPSA、ポリビニルピロリドン及びビニルピロリドンコポリマーに基づいたPSAのみならず、(連続又は不連続相の)上述のものの組成物及び混合物のみならず、上述のものを使用して得られたブロックコポリマーを非限定的な例として挙げることができる。これらのPSAは、その処方において、特に粘着付与剤、可塑剤、接合剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、着色料、分散剤、及び拡散剤から選択される1つ又は複数の添加剤を含むこともできる。本発明の一実施形態によれば、アクリルに基づいたPSAが好ましい。
【0041】
「熱軟化プラスチック」とも呼称されるサーモプラスチックは、本発明の枠内では、特定の温度超で成型可能となると共に冷却された場合に固化するプラスチック材料(ポリマー)である。ポリマーチェーンは、分子間力を通じて関連付けられており、分子間力は、温度の増大に伴って急速に弱化し、その結果、粘性液体をもたらす。従って、サーモプラスチックは、加熱によって再成形することができる。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアミド、ポリ乳酸(ポリラクチド)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレン(PE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポチフェニレンスルフィド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリウレタン(PU/TPU)、シクロ−オレフィンコポリマー(COC)、及びポリイミドをサーモプラスチックの非限定的な例として挙げることができる。本発明の熱可塑性薄膜は、優先的に、ポリカーボネート(PC)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエチレン(PE)、セルローストリアセテート(TAC)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリウレタン(PU/TPU)、及びシクロ−オレフィンコポリマー(COC)のリスト内で選択される。
【0042】
感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜は、別個に又は多層薄膜の形態で提供することができる。
【0043】
熱可塑性薄膜は、被覆を更に含む構造化薄膜の一部分であってもよく、前記被覆は、感圧接着剤層上に配置された熱可塑性薄膜の別の面の反対側の熱可塑性薄膜の面上に配置されている。
【0044】
熱可塑性薄膜は、薄く、即ち、1mm未満であり、且つ一般には500μmよりも薄く、更に好ましくは300μmよりも薄い。熱可塑性薄膜は、本発明の場合、平らな薄膜であってもよく、又はドームとも呼称され得る疑似球形キャップを形成するように湾曲した部分を含むこともできる。更に、熱可塑性薄膜は、自己支持型となるように十分な剛性を有することもできる。
【0045】
図2は、粗化後の光学表面の詳細図を示す。前記表面は、多数の不規則性12を含み、且つ従って大きい粗度を有する。
【0046】
図3は、本発明による光学装置を製造する方法が使用された場合の、感圧接着剤層20及び熱可塑性薄膜30がその上にラミネートされている光学物品10の光学表面の詳細図を示す。感圧接着剤材料が表面の不規則性の周りで流動することができ、且つほとんど空洞を伴うことなく、更にはまったく空洞を伴うことなく連続的な媒体を提供し得ることを観察することができる。本発明者らは、光学装置がこのような構成を提示する場合、良好な光学特性が得られることを実証した。
【0047】
前記構成を得ることができる条件を判定するために、本発明者らは、複数の実験を実行した。
【0048】
前記実験は、メガネレンズを使用して実行された。
【0049】
メガネレンズの透明性は、このようなレンズの適切な品質指数である。
【0050】
光学コンポーネントは、そのコンポーネントを通じた画像の観察が、大きいコントラストの損失を伴うことなく知覚される場合に透明と見なされる。換言すれば、画像と画像の観察者との間の透明な光学コンポーネントの介在が画像の品質を大幅に低減しない。この透明という用語の定義は、本発明の意味では、本説明でそのように見なされているすべての物体に対して適用可能である。特定の場合、この定義は、光学物品が約1未満のヘイズ(haze)を有する場合に満たされたものと見なされる。
【0051】
更に、ヘイズの値とは無関係に、光学装置は十分な光学品質を有する必要がある。
【0052】
サンプルの光学品質の特徴を判定するために1つの方法を使用した。前記方法は、透過法であり、且つサンプルの光学品質は、訓練を受けた観察者により所定のプロトコルに従って計測される。
【0053】
図4及び
図5は、第1光学品質装置と、透明なサンプルの光学品質を判定するためのこの装置の使用法とを示す。前記装置は、不透明な壁104を有すると共に細長い光源105を含むボックス103を含む。前壁は、光源に対して平行に配置された細長いスリット106を含む。光源は、スリットに対向すると共に方向100に沿って観察している観察者107によって観察されないように、スリットからシフトされている。例えば、レンズ108などの計測対象のサンプルは、スリット106に対向するように、且つその光軸が方向100に対して平行になるように観察ゾーン109内に配置される。光源とサンプルとの間の距離D1は200mmである。サンプルと観察者の眼との間の距離D2は500mmである。周辺光は、60〜130ルクスでチューニングされる。主に光源105に起因する観察ゾーン109内の光は、600〜1200ルクスでチューニングされる。訓練を受けた観察者は、それぞれの眼ごとに10/10の視力を有するように選択される。観察者の観察位置では、観察者は、
図5に従ってレンズを観察する。観察者は、例えば、レンズ108の表面の約3分の1である検査ゾーン110を観察することができる。検査ゾーン110は、レンズ108を通じて観察される光源105のエッジ111により、且つレンズ108を通じて観察されるスリット106のエッジ112により境界が画定される。レンズは、そのすべての表面が検査ゾーン110内で連続的に出現するように平行移動される。訓練を受けた観察者は、判定された期間にレンズ表面を観察し、且つ自身が、例えば、表面の異質性や引っ掻き傷などの光学的な欠陥を観察することができた場合に通知する。
【0054】
訓練を受けた観察者は、まず、昼光でサンプルを観察し、且つ次いで第1光学品質装置を使用し、且つ最後に第2光学品質装置を使用する。観察者は、1つ又は複数の光学的な欠陥が観察された場合、自身の観察を停止する。
【0055】
以下のプロトコルに従って、マークが付与される。
・5秒以下の期間に光学品質装置によってサンプルを観察した後、1つ(又はいくつか)の光学的欠陥が観察された場合、マーク=2である。欠陥の例は、歪円、ヘイズ円、引っ掻き傷である。
・5秒超且つ20秒以下である期間に品質装置によってサンプルを観察した後、1つ(又はいくつか)の光学的欠陥が観察された場合、マーク=1である。欠陥の例は、歪円、ヘイズ円、引っ掻き傷である。
・光学品質装置によってサンプルを観察した後、光学的欠陥が観察されない場合、マーク=0である。
マーク=1という結果は、受け入れ可能な結果として見なされ、マーク=0という結果は、良好な結果として見なされる。マーク=0とマーク=1との両方を有する結果を有するサンプルは、満足できる光学的品質を有するものとして見なされる。
【0056】
受け入れ表面上で複数の粗度を得るように、異なる基材材料の137個のレンズサンプルを調製し、次いで0.00D〜−2.00Dで変化する光強度の137個のレンズ光学装置を提供するように、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜を前記受け入れ表面上にラミネートした。結果的に得られたレンズ光学装置の光学品質を上述のプロトコルに従って計測した。
【0057】
これらの実施形態では、感圧接着剤層は、その商品名が3M(商標)Optically Clear Adhesive 8146−Xである感圧薄膜接着剤の一部分として提供され、感圧薄膜接着剤は、感圧接着剤層と、剥離可能な保護熱可塑性薄膜とを含み、感圧接着剤層は、保護熱可塑性薄膜上に存在するアクリルポリマーであり、感圧接着剤層が光学装置の受け入れ表面上に配置され、且つ保護熱可塑性薄膜が除去される。次いで、光学装置の熱可塑性薄膜が感圧接着剤上に適用される。光学装置の熱可塑性薄膜は、SZ80という品名でFuji Companyによって市販されているセルローストリアセテート(TAC)薄膜である。
【0058】
受け入れ表面の粗度は、Taylor Hobson Companyによって市販されているForm TalySurf(FTS)スタイラス装置によって計測した。スタイラスは、2μmのダイヤモンドポイントを有し、一定の圧力を伴って、1mm/sの速度においてこのスタイラスを受け入れ表面上で移動させる。計測誤差は、+/−2nmであるものと推定される。
【0059】
データの分析は、使用される薄膜が同一のものに留まる場合、光学品質に大きい影響を及ぼす唯一のパラメータが受け入れ表面の粗度であることを明らかにした。粗度がレンズサンプル間で類似している場合、レンズ材料の屈折率の変動は、光学品質に対して大きい影響を及ぼさない。
【0060】
感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜の同時ラミネーションは、本発明の教示に従って実施された場合にサンプルの良好な品質を得るのに適することが実証された。
【0061】
感圧接着剤層の厚さが20μm以上且つ250μm以下である場合、且つ更に好ましくは25μm以上且つ/又は75μm以下である場合に優れた結果が得られることが実証された。
【0062】
図6は、サンプルの計測されたプロファイル粗度二乗平均平方根勾配R
dqに応じたレンズ光学製品の計測された光学品質の変動を示す。(縦軸における)計測された光学品質は、上述のマーク番号付けに従って示されている。受け入れ表面が1.2°以下のプロファイル粗度二乗平均平方根勾配R
dqを有する場合、受け入れ可能な結果(マーク=1)が得られ、且つR
dqが1.2°超である場合、結果が受け入れ不能である(マーク=2)ことを明瞭に理解することができる。
【0063】
従って、本発明者らは、感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜がその上に直接ラミネートされる、前記特徴に応じた受け入れ表面を有する光学物品を含む光学装置を製造する場合に、優れた光学品質を実現することができる粗度特徴の範囲を選択した。
【0064】
図7及び
図8は、上述のように製造された光学装置の計測された光学品質に対する受け入れ表面の粗度特徴の影響を示す。これらの図のグラフでは、算術平均プロファイル粗度Raが横座標に示され、且つRSMと呼称されるピーク間の平均間隔が縦座標に示されている。
【0065】
実験データは、
図7及び
図8の(算術平均プロファイル粗度及びピーク間の平均間隔の)軸に従ってプロットされており、且つ
図7と
図8との間で変化しているのは情報の提示のみである。
【0066】
図7では、データは、3つの別個の標識を使用して示されており、この場合、
・エッジ上の黒色正方形は、良好な計測光学品質(マーク=0)を有するサンプルを示し、
・円形は、受け入れ可能な計測光学品質(マーク=1)を有するサンプルを示し、
・灰色の三角形は、受け入れ不能な計測光学品質(マーク=2)を有するサンプルを示す。
【0067】
本発明者らは、算術平均プロファイル粗度とピーク間の平均間隔との間において、満足できる光学品質の取得を許容する受け入れ表面の粗度特徴の選択を許容する関係が存在することを発見した。
【0068】
以下の式
RSM≧min(0.64×Ra;0.58×Ra+0.007)
の要件が満たされるサンプルは、満足できる光学品質を有するサンプルであることが実証された。
【0069】
図7では、
・直線の点線D1は、以下の式:
RSM=0.58×Ra+0.007
に対応し、
・直線の実線D2は、以下の式:
RSM=0.64×Ra
に対応する。
【0070】
図8にはいくつかのデータがプロットされ、且つ同一のラインD1及びD2が報告されており、このデータは、5つの別個の標識を使用して示されており、この場合、
・正方形は、光学物品が1.67の屈折率を有するサンプルを示し、
・明るい三角形は、光学物品が1.59の屈折率を有するサンプルを示し、
・星形は、光学物品が1.53の屈折率を有するサンプルを示し、
・灰色の円形は、光学物品が1.56の屈折率を有するサンプルを示し、
・黒色の三角形は、光学物品が1.49の屈折率を有するサンプルを示す。
【0071】
これらのデータは、光学物品の特性が、算術平均プロファイル粗度とピーク間の平均間隔との間において、満足できる光学品質の取得を許容する受け入れ表面の粗度特性の選択を許容する関係を判定する際に役割を果たしていないことを明瞭に実証している。
【0072】
本発明の選択された粗度特徴により、本発明者らは、驚くべきことに、光学装置が、凸状及び/又は凹状の受け入れ表面と、受け入れ表面上に直接ラミネートされた感圧接着剤層及び熱可塑性薄膜とを含む光学物品を含む場合、良好な、更には優れた光学品質を有する光学装置を取得することが可能であり、この場合、前記受け入れ表面の粗度は、通常の研磨された受け入れ表面の粗度を大幅に上回っており、この場合、Rdq<0.2°又はRa<0.1μmであることを実証した。
【0073】
従って、その受け入れ表面が、粗化ステップ、微細化ステップ、及び研磨ステップの2つ以下によって表面処理されている光学物品を使用することができる。
【0074】
その受け入れ表面が粗化ステップのみによって表面処理されている光学物品を使用することもできる。
【0075】
従って、受け入れ表面を表面処理する際に機械加工ステップを節約するために、且つ本発明による光学装置の良好な、更には優れた光学品質を依然として得るために、本発明による光学物品を使用することができる。
【0076】
従って、本発明の光学装置を製造する方法は、非常に高度な費用効率を有することができる。
【0077】
前記方法は、上述のように多数のサブステップを伴って実施することができる。
【0078】
それらのうち、制御ステップ及び意思決定ステップによって後続される、互いに対向する凸状及び凹状の光学表面を含む供給された光学物品を提供する予備ステップを実施することが可能であり、この場合、
・制御ステップは、受け入れ表面となることを意図される供給された光学物品の表面の粗度を判定するステップを含み、
・意思決定ステップは、
i.前記光学表面の予め判定された粗度を、選択された粗度特徴を有する光学物品の受け入れ表面の1つと比較するサブステップと、
ii.選択された粗度特徴に対応する粗度要件が満たされる場合、供給された光学物品を製造方法の提供ステップに提供し、且つ選択された粗度特徴に対応する粗度要件が満たされない場合、供給された光学物品を補完ステップに提供するサブステップと
を含む。
【0079】
受け入れ表面となることを意図される表面の粗度を判定するステップは、例えば、前記表面の粗度を計測するステップと、前記表面の事前の製造データに基づいて前記表面の粗度を推定するステップと、前記表面を既知の粗度の表面と比較するステップとからなるリスト内で選択される方法に従って実施することができる。
【0080】
補完ステップは、上述の微細化又は研磨ステップに類似したステップであってもよい。