【文献】
鍜治 雅和,現代潜水艦の推進システム,世界の艦船,11月号(通巻第848集),日本,株式会社 海人社,2016年09月25日,第84頁〜第89頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リン酸型燃料電池システム(c)が、未調節直流電力を発生させるために、水素及び液体酸素をリン酸型燃料電池のスタックに供給する、請求項1に記載の潜水艦のための大気非依存型推進システム。
前記反応抑制システム(f)が、水素発生器中に、ポリアクリル酸ナトリウム、好ましくはメタクリル酸ナトリウムを注入することによって、水素発生を停止又は遅延させる、請求項1に記載の潜水艦のための大気非依存型推進システム。
前記燃料電池バランスオブプラント(g)中の水素ループが、PAFCセルスタックに供給され、電極中へ拡散して水素を発生させる湿潤水素を含む、請求項1に記載の潜水艦のための大気非依存型推進システム。
燃料電池バランスオブプラント(g)中の前記合成空気ループが、PAFCセルスタックに供給されて酸素を発生させる合成空気を含む、請求項1に記載の潜水艦のための大気非依存型推進システム。
前記燃料電池バランスオブプラント(g)中の加圧水システムが、デュアルモードで動作し、前記加圧水システムが、加圧水タンク(T−1)からの、加圧形態の熱水を再循環させて、PAFCスタック中の組み込まれた熱交換器を介してループ中での沸騰を回避することにより温度を維持し、温度が上昇した場合、加圧水冷却器(HE−5)からの冷却水が加圧熱水を冷却する、請求項1に記載の潜水艦のための大気非依存型推進システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、潜水した場合に、より長期間の水中での電力要求を抑えるための、オンデマンドベースの水素発生の必要性が存在する。他のAIPシステムは、種々のプラットフォームの制約に適合する必要がある。それらの中で最も重要なことは、水中で放射された騒音と空気伝播(air borne)騒音の両方に関して、低い騒音及び振動の特徴があるということである。低騒音特徴は別として、このユニットを、プラットフォームの期待される性能を達成するために、プラットフォーム設計者によって指定された空間及び質量の制約内に納める必要がある。
【0020】
艦内で、オンデマンドで水素を発生させることができ、同時に、様々なプラットフォーム制約に合致するAIPシステムが今、必要とされている。
【0021】
本発明者らは、完全に収容可能な仕方で動作し、ガス状副産物を生成しない、水中でより長い持久性、低い騒音レベルを有する搭載型水素発生システムを収納する潜水艦用途のためのPAFCベースの大気非依存型推進(AIP)を考案した。PAFCは、世界的に証明されているようなその長い寿命、及び水素の若干の不純物を含んでいても動作するその能力のために使用される。
【0022】
搭載型水素化ホウ素ナトリウム加水分解装置(hydrolyser)を備えたPAFCをベースとした本発明のAIPは、より高い持久性を有するより静かな潜水艦を提供する。
【0023】
本発明では、水素は、ガス状副産物を含まない純粋な状態で形成される。また、未使用ガスを携行し、それを酸素と反応させるために潜水艦換気システムを使用する必要がないか、又はそのシステムを排除することになる。
【0024】
更に、本発明者らは潜水した場合の、低温での水素化ホウ素ナトリウムの結晶化の問題に直面した。本発明者らは、潜水した場合の、濃厚NaBH4溶液の結晶形成及びスケーリングを防止するための結晶抑制剤を特定した。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、海洋環境から何かを取りこむか又は海洋環境に何かを排出することなく、ガス状副産物を生成せず、潜水艦のために完全に収容可能な仕方で稼働できる大気非依存型推進システムを提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、オンデマンドベースで稼働する大気非依存型推進システムを提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、頑丈であり、寿命の長い支持基礎電力を提供し、高度に信頼があり、パラメーター変動を許容する、PAFCスタックを有する大気非依存型推進システムを提供することである。
【0028】
更に、本発明の目的は、NaBH4加水分解装置及びPAFCスタックが分離された方式で動作し、大気非依存型推進(AIP)の動的動作を可能にする大気非依存型推進システムを提供することである。
【0029】
更に、本発明の目的は、加水分解装置で使用されるNaBH4溶液の結晶形成又は層化を防止することである。
【0030】
更に、本発明の目的は、NaBH4溶液のポンプ輸送性を改善することである。
【0031】
本発明の更に別の目的は、化学的手段によってより多くの水素を運ぶことができるために、より長い水中での持久性を可能にする艦内での水素発生を提供することである。
【0032】
本発明の更に別の目的は、潜水艦バッテリーの充電状態を感知することができ、特定の電力出力のためにプログラム化することができるインテリジェント電力調整器を提供することである。
【0033】
本発明の目的は、また、加水分解反応を被毒させることによって特別の安全性を提供することでもある。
【0034】
更に、本発明の目的は、展開を容易にするためのNaBH4の安定溶液を携行することであり、これは、安定剤としての混合アルカリ(NaOH/KOH)(混合された形態の最適反応速度論及び使用済み液中により小さい/より少ない結晶)を使用することによって行われる。
【0035】
本発明の別の目的は、内蔵式熱交換器を有する、水中用途のための搭載型水素発生システム用の加水分解装置を提供することである。
【0036】
更に、本発明の目的は、再循環ベースのホウ化水素加水分解を用いた、コンパクトな加水分解装置を提供することである。
【0037】
本発明の更に別の目的は、艦内での水素発生を提供して、より長い水中での持久性を可能にすることである。
【0038】
本発明の更に別の目的は、大気非依存型推進システム中の発電ユニットにおいて燃料電池に燃料を注ぐための、水素の継続的供給を提供することである。
【0039】
本発明の目的は、リン酸型燃料電池(PAFC)の結合強度を増進させることである。
【0040】
本発明の目的は、酸ホルダーマトリックスの接着強度を決定するための方法を提供することである。
【0041】
本発明の別の目的は、マトリックスの黒鉛電極構造物との接着強度を増大させる方法を提供することである。
【0042】
更に、本発明の目的は、マトリックスへの酸移動を推定する方法を提供することである。
【0043】
本発明の更に別の目的は、PAFCスタックの寿命及び性能を増進させることである。
【0044】
本発明の目的は、熱的接触を提供し、酸漏出を防ぐことによって金属チューブの腐食を防止し、剛性の黒鉛材料及び金属コイルの不均等な熱膨張に起因した熱応力を吸収する、伝導性で疎水性のコーク材料を提供することである。
【0045】
本発明の目的は、機械的損傷を引き起こすことなく、金属コイル及び黒鉛プレートの可変の熱膨張を提供することである。
【0046】
本発明の別の目的は、スタックのアセンブリーにおけるより高い安定性、及び改良された熱伝達特性を与える、硬質プレートとしての黒鉛熱交換器プレートを提供することである。
【0047】
本発明の一態様によれば、潜水艦のための大気非依存型推進(AIP)システムであって、
a.コンパクトベッセル中で水素を発生させるための燃料溶液、触媒を含む搭載型水素発生システム;
b.液体酸素(LOX)貯蔵及び供給分配システム;
c.水素及び酸素を消費して、未調節直流電力を発生させるリン酸型燃料電池(PAFC)システム;
d.未調節直流PAFC電力を適応させ、調節電圧制御された直流電力に変換する電力調整器システム;
e.プラットフォームの動的負荷要件での稼働及び統合を制御するプラグ管理システム;
f.反応抑制システム;
g.水素ループ、合成空気ループ及び加圧水システム(PWS)を含む燃料電池バランスオブプラント(BoP)配置
を含むシステムを提供する。
【0048】
本発明の別の態様によれば、潜水艦のための大気非依存型推進システムによる発電方法であって、
− 前記搭載型水素システム(a)中で、燃料溶液及び触媒を含む原料フィードから水素を発生させる工程;
− 生成された水素及び酸素をPAFCスタック(c)に供給し、その供給された水素及び酸素が消費されて、未調節生直流電力を発生させる工程;
− 前記未調節生直流電力を電力調整システム(d)に提供して調節直流電力を発生させる工程、
− 前記調節直流電力をプラットフォーム配電盤とインターフェースで連結して、プラットフォームへ電力を提供する工程、
− 脱塩水冷却回路で熱負荷を管理するための熱交換器のネットワークを提供する工程であって、前記脱塩水冷却回路が、冷却水タンク、冷却水タンク(複数)、冷却水ポンプ、配管ネットワーク、センサー手段及び弁手段並びに海水冷却ネットワークからなり、前記海水冷却ネットワークが、船体貫通部、海水熱交換器、海水循環ポンプ、海水配管ネットワーク並びにセンサー手段及び弁手段からなる工程、
− 使用済み液を追い出すための排出手段、及び前記システムの加熱及び冷却要件を実質的にバランスさせるガスのための主ベント手段を提供する工程、
− 好ましくは、
水素発生器を稼働させるためのPLC型コントローラー;
燃料電池からの電力が前記システムの電力需要に適合するように燃料電池スタック健全性を判定し、各スタックへの電流分布を最適化するためのアルゴリズムを有するモデル予測コントローラー;
全体的な制御、効能を監視し、不安定性を最少化するためにより低いパートのコントローラー設定点を調整するための節点コントローラー;
前記節点コントローラーが、電力需要を得、AIPパラメーターをオペレーターへ送るようにそれと相互作用する潜水艦コントローラー
を含む、コントローラー構成によって、
AIPシステム全体及び前記システムの個々のコンポーネントの自動運転のため、及び前記システムでの電力需要に従ってそれを調節するための、制御及び監視手段を提供する工程
を含む方法を提供する。
【0049】
本発明の別の態様によれば:
a)30%w/w〜40%w/wの範囲の水素化ホウ素ナトリウムの水溶液濃縮物;
b)水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムから選択される安定剤;及び
c)0.02%〜0.15質量%の、メチルパラベン又はプロピルパラベンから選択される結晶化抑制剤
を含む、大気非依存型推進システムのための燃料溶液を提供する。
【0050】
本発明の更に別の態様によれば、燃料タンク、触媒タンク、内蔵式熱交換器を有するコンパクトベッセル、中間タンク、使用済み貯蔵タンク、圧力制御手段を含む搭載型水素発生システムから水素を発生させる方法であって、前記方法が:
a.燃料タンクから燃料溶液及び苛性溶液を、触媒タンクから触媒を、内蔵式熱交換器を有するコンパクトベッセルへポンプ輸送する工程;
b.前記コンパクトベッセルにおいて、触媒の存在下で、燃料溶液中のホウ化水素を加水分解して、必要とされるよりも高い速度で水素を発生させる工程;
c.工程bにおいて副産物として生成した得られたホウ砂溶液を、断続的に中間タンクへ放出する工程であって、ホウ砂溶液中の微量のホウ化水素を水素に変換させ、次いで、得られた残留水素を主水素ラインと一緒にし、残りを使用済み貯蔵タンクへ放出する工程;
d.工程bにおける加水分解反応が圧力の増大をもたらし;それが、圧力制御手段を活性化して、工程aにおける燃料溶液供給を停止させる工程;
e.水素がリン酸型燃料電池(c)によって消費されるのにしたがって、コンパクトベッセル中の圧力が低下し、それによって、燃料溶液供給を再スタートさせる工程;
f.前記コンパクトベッセルに、熱の除去及び反応物混合のための共形型(conformal)熱交換器を提供する工程;
g.前記コンパクトベッセルに、生成物水素を冷却するための頂部に搭載される熱交換器を提供する工程;
h.前記コンパクトベッセルに、ホウ酸塩液を循環させるシェル側及び脱塩水を循環させるチューブ側を含む、熱の除去及び反応器温度維持のための非従来型の熱交換器コイルを提供する工程
を含む方法を提供する。
【0051】
本発明の別の態様によれば、潜水艦用の大気非依存型推進システムのためのリン酸型燃料電池(PAFC)スタックであって、リン酸電解質をキャスティングする前に黒鉛電極構造物にウォッシュコートを塗布することによって、リン酸型燃料中でのリン酸電解質の黒鉛電極構造物への接着強度を増大させるスタックが提供される。
【0052】
本発明の別の態様によれば、リン酸型燃料電池スタックアセンブリーのための多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートであって、
a)一方の側面に燃料電池カソードチャンネルを有する高密度の伝導性黒鉛の溝付きプレート中に組み込まれた異なる経路構成を有する多重の蛇行金属チューブであって、
前記金属チューブが、チューブと黒鉛壁に、剥離状黒鉛粉末及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を含む成形混合物を使用することによって溝付きプレート中に組み込まれている金属チューブと、
b)薄い接着組成物を塗布することによって、金属チューブがそこからフィットされる高密度の黒鉛プレートの溝付き側面に取り付けられた高温の酸に耐性のある薄い、電気伝導性シート
を含む黒鉛熱交換器プレートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
添付の図面を参照しての以下の説明は、本発明の例示的な実施形態を包括的に理解するのを支援するために提供されるものである。これは、その理解を支援するための様々な具体的詳細を含むが、これらは、単なる例示と見なされるものとする。
【0055】
本発明は、そうした実施形態の関連で説明されるが、本発明はどの実施形態にも限定されないものとする。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多くの代替実施形態、改変実施形態及び均等実施形態を包含する。本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な説明を以下の説明において示す。これらの詳細は、例示の目的で提供されるものであり、これらの具体的な説明の一部又は全部がなくても、本発明は、特許請求の範囲にしたがって実践することができる。明確にするために、本発明に関連する技術分野において公知の技術的材料は詳細には説明されていないが、だからといって、本発明が必ずしも曖昧であるということではない。
【0056】
したがって、本発明の一実施形態では、潜水艦のための大気非依存型推進(AIP)システムであって、
a.コンパクトベッセル中で水素を発生させるための燃料溶液及び触媒を含む搭載型水素発生システム;
b.液体酸素(LOX)貯蔵及び供給分配システム;
c.水素及び酸素を消費して、未調節直流電力を発生させるリン酸型燃料電池(PAFC)システム;
d.未調節直流PAFC電力を適応させ、調節電圧制御された直流電力に変換する電力調整器システム;
e.プラットフォームの動的負荷要件での稼働及び統合を制御するプラグ管理システム;
f.反応抑制システム;
g.水素ループ、合成空気ループ及び加圧水システム(PWS)を含む燃料電池バランスオブプラント(BoP)配置
を含むシステムを提供する。
【0057】
本発明のAIPシステムでは、水素は、艦内で、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解によって発生させる。必要な酸素は、極低温で貯蔵された液体酸素(LO
X)から供給される。水素及び酸素をリン酸型燃料電池スタック(PAFC)のバッテリーに供給して、未調節直流電力を発生させ、燃料電池からの副産物として水が生成する。その未調節直流出力は、電力調整器を通して、潜水艦品質の電力に調整され、変換される。燃料電池で生成した水は、次いで水素発生器(水素化ホウ素ナトリウム加水分解装置)に供給され、水素と一緒に生成した使用済み液(ホウ砂溶液)は、海へ放出されるか又はタンク内に保持され、潜水艦の補償目的で使用される。プラグ管理システムは、プラットフォームの動的負荷要件での動作及び統合を制御する。提起されるAIPの主要技術ブロックは、
図1に図式的に示されている。
【0058】
図1は、本発明のPAFCベースのAIPシステムの全体的なプロセスを表す。水素発生は、このプロセストレインにおける第1のサブシステムである。水素発生は、オンデマンドベースであり、原料供給タンク、水素発生システム及び使用済み材料貯蔵タンクを含む。水素は、燃料電池スタック中に流れ込み、そこでその水素は、酸素と一緒に消費されて水と未調節生直流電力をもたらす。燃料電池で産出された水は、水素発生器で使用され、その未調節直流電力は、パワーエレクトロニクスシステムに供給される。制御されたユーザー指定品質の直流電力をもたらすパワーエレクトロニクスシステムの出力は、次いで電力をプラットフォームへ提供するプラットフォーム配電盤とインターフェースで連結されている。
【0059】
本発明において、熱交換器のネットワークは、AIPシステムの熱負荷を管理し、最終的に、熱はポートアウト(port out)され、海水熱交換器中で海水と熱交換される。
【0060】
インテリジェント制御システムは、本発明のAIPシステム全体を操作し、その階層的戦略は、全体的に自動化された方式でのプラント操作を可能にする。持久性のあるプラニングを可能にする、診断モジュール及び貴重なアプレット、例えばリアルタイムエネルギー計算機も、制御システムでインターフェース連結される。
【0061】
本発明では、水素発生器は、水素バッファーベッセルのような役割も果たすコンパクトな1つのベッセルシステムを使用する。水素は、オンデマンドで生成され、以下の特徴にしたがった負荷を獲得するために、以下の手法が用いられる。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、再循環ベースのホウ化水素加水分解を使用する加水分解装置が提供される。水素化ホウ素ナトリウム加水分解プロセスによる水素発生の能力又は規模が、本発明において最初に開発される。水素化ホウ素ナトリウム加水分解の本発明のプロセスでは、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)の水溶液は、NaBH4の存在下、反応器中で、触媒のような役割を果たすNi/NiB又はCo/CoB粒子に変換される、NiCl2又はCoCl2溶液の形態の触媒と一緒に、それを反応器システム内部に投入することによって、水素を発生させるために使用される。水素化ホウ素ナトリウムは、この触媒の存在下で、水と反応して水素及びホウ酸塩スラリーを生成する。加水分解反応は、本来、発熱的であり、発生した熱は、水、また更には空気で冷却されていてよい熱交換器を通して、NaBH4/触媒/生成物液スラリーをポンプ輸送することによって逸散する。熱交換器後のスラリーは、そのスラリーがポンプアウトされる同じベッセル中にフラッシュされる。
【0063】
溶液形態の触媒と一緒に供給タンク中に貯蔵されたNaBH4溶液は、所要速度より速く水素を生成できる速度でH2発生器へポンプ輸送される。これは、水素発生器の圧力を増大させ、圧力制御システムを介してNaBH4溶液供給ポンプを停止させて水素発生を制御する。H2が使い果たされると、H2発生器中の圧力は低下し、ポンプは再スタートする。この考え方は、水素発生を、電力要件によって左右される下流での燃料電池における水素の使用から分離できるようにする。H2発生器内部で起こる反応は:
NaBH4+2H2O=NaBO2+4H2
である。
【0064】
使用済み液、すなわち、触媒粒子及び微量のNaBH4と一緒になったNaBO2溶液を、H2発生器から中間保持タンクへ断続的に排出して、H2発生器ベッセル内の液レベルを維持する。使用済み液中の微量のNaBH4は、中間タンク内で触媒の存在下で反応し、生成した水素は、主水素ストリームと合流し、これは、濾過され、制御投入によるPAFC使用のために送り出される。
【0065】
本発明の一実施形態では、貯蔵材料からの水素ガスの発生のための方法及び材料を提供する。特に、本発明は、コバルト又はニッケル等の触媒の存在下で、水を水素化ホウ素ナトリウムと接触させることによる、水素ガスの発生に関する。
【0066】
本発明の一実施形態では、本発明の加水分解装置のコンポーネントは以下の通りである:
・ 均一な混合を確実にするための撹拌、及びスラリーの温度を制御して保持するための熱伝達は、NaBH4/触媒及び生成物スラリーを、熱交換器及びポンプ輸送デバイスを介して再循環することによって遂行される。
・ 触媒/NaBH4フィード及びNaBO2生成物を保持する主ベッセルは、気液分離器及び水素用のバッファータンクのような役割も果たす。
・ このシステムはガス状副産物を生成せず、したがって、水中又は閉鎖領域での水素発生に理想的である。
・ 発生した水素は、マイクロフィルターを用いて濾過され、発電のための燃料電池区域に移送される。加水分解反応は、以下のようにして反応器システム内部で起こる。
NaBH
4+2H
2O=NaBO
2+4H
2
・ 主ベッセルから出てくる生成された水素の冷却は、プロセスをコンパクトにするために反応ベッセルの頂部で合体されたフィン付きチューブ熱交換器によって行われ、出口温度は、脱塩水循環によって維持される。水素化ホウ素ナトリウム加水分解プロセスによる水素発生のための図式ダイアグラムを
図1に示す。設計は、傾き(tilting)、衝撃、騒音、振動等の潜水艦環境条件を考慮して行われる。
【0067】
この時点で、水素発生システムの全般的な操作を、その構造及び機能を参照して説明する(
図5、
図6及び
図7)。
【0068】
本発明の加水分解装置の働き:
図6は、本発明の加水分解装置を用いた、水素化ホウ素ナトリウム溶液からの艦内での水素発生の概略図である。水素化ホウ素ナトリウムを、燃料タンク内に貯蔵された混合苛性溶液に溶解し、懸濁触媒粒子、及びホウ酸塩スラリーと称される反応副産物ホウ砂溶液を含む主ベッセルへポンプ輸送する。反応マスと一緒にホウ酸塩スラリーをポンプと熱交換器を通して再循環させ、ベッセルへ戻す。そこで水素はフラッシュされ、スラリーから分離される。ベッセル中で分離された水素を冷却し、アルカリラインのミスト分離フィルタートレインに通し、続いて、酸スクラバーに通す。清浄なガスは最終的に燃料電池システムに取り込まれる。生成物ホウ酸塩液を、加水分解装置を通して断続的に中間タンクへ、最終的に使用済み貯蔵タンクへ排出する。中間ホウ酸塩タンクは、ホウ酸塩スラリー中の微量のNaBH4の変換を可能にするように保持され、生成したこの残留水素は主水素ラインと合流する。主ベッセルの圧力に関係なく、一定量の水素が燃料電池に供給されるように、二段式圧力調整器が提供される。
【0069】
本発明の加水分解装置は、熱除去及び反応物混合のための共形型熱交換器システムを主ベッセル内に配置することによってコンパクト化される。生成物水素の冷却は、凝縮形態物が主ベッセル中に押し戻され得るように頂部に搭載された熱交換器を介して、同じ単一ベッセル中で行われる。
図6及び
図7に示すように、非従来型の熱交換器コイルは、反応熱を除去し、反応器温度を維持するように設計される。冷却のためには水が使用される。
【0070】
シェル側はホウ酸塩液のために使用され、チューブ側は脱塩水循環のために使用される。プロセス要件、容易な一体化及びメンテナンス目的を達成するために、チューブ束は、シェル境界に対して同心円状にする。検査ノズルが、チューブの健全性をチェックするために提供される。
【0071】
本発明の一実施形態では、触媒溶液は、NiCl2、CoCl2等のような触媒金属の塩の水溶液であってよい。この溶液は、NaBH4と接触して、インサイチュで反応し、Ni2B又はNiのような金属ホウ化物粒子を形成する。これは活性な触媒である。
【0072】
NaBH4溶液は、貯蔵タンク内で、触媒なしではより遅い速度ではあるが、それ自体加水分解する可能性がある。他の安定剤を一緒にNaOH/KOHを、NaBH4と混合して、この自己加水分解速度を無視できるほどの速度まで低下させる。
【0073】
発生器からの水素は、多重PAFCスタックに供給され、未反応水素は水分と一緒にこのスタックから出てきて、水分が除去された後、ブロワーシステムを介してスタックへ再循環される。
【0074】
H2発生器からFCシステムへの水素流は、スタック内で生じる圧力及び全電流によって制御される。
【0075】
ガス状酸素は、熱媒体として水を使用してLOXを蒸発させることによって発生する。水は、このプロセスで冷却され、この冷水は、潜水艦のミクロ環境の空気調節目的で使用される。
【0076】
次いで、水素と一緒にそれをN2(任意選択)で希釈した後、ガス状酸素をPAFCシステムに投入して電力を発生させる。N2及び生成水分と一緒になった未反応酸素がPAFCスタックからもたらされ、海水冷却を用いて水分を凝縮させ、除去した後、これを、ブロワーを使用してフィードバックする。PAFCスタックへの酸素注入は、酸素再循環ループ中の酸素濃度をもとにする。
【0077】
燃料電池からの水をH2発生器へポンプ輸送し、使用済み液を希釈して、液のポンプ輸送性を改善し、その結晶化を減少させる。しかし、特定の設計では、微量のリン酸除去のためにPAFC生成水を処理した後、生成した水を、潜水艦使用のための新鮮な水供給源として使用することができる。
【0078】
本発明のPAFCスタックにおいて発生した電力は、未調節直流PAFC電力を適合させる電力調整器システムに連結され、潜水艦バッテリー群電圧と適合する調節された(電圧制御された)直流電力に変換され、それによって、PAFC発生電力は、潜水艦バッテリーを充電するか、又は潜水艦の種々の電気負荷のために使用することができる。
【0079】
燃料タンクは、タンクの上部空間での水素蓄積を回避するために、排気システムの均圧バーナーを介した閉ループ空気換気をもつことになる。
【0080】
タンクは、頂部からの充填ポート、及び底部での出口をもつことになる。遮断弁を通る出口パイプは、マニホールドに至り、それを通して、燃料溶液は水素発生システムに供給される。燃料供給ポンプ及びマニホールドは、1つのタンク区域から他のタンク区域への燃料溶液の移送のために使用することもできる。
【0081】
外部火炎の場合にタンクが加熱するのを防止するために、タンクは、緩徐に動く(limp)冷却水及び絶縁断熱材でレース(lace)される。緩徐に動く冷却水のみが提供され、必要な場合には、それを、タンクを冷却するための脱塩冷却水回路と連結させることができる。
【0082】
NaBH
4の艦内貯蔵
固体NaBH
4を水に溶解し、添加剤で安定化させる。NaBH
4は水と接触して徐々に加水分解するので、これは必須である。更に、外部海水温度が低い場合にNaBH4の結晶化及び/又は層化を防止するために、燃料溶液に、少量の特殊化学薬品を添加する。これらすべての添加剤はNaBH4と一緒に水に溶解され、したがって、「燃料溶液」と称される。
【0083】
水素ガスは燃料電池用の燃料として使用され、これは、コンパクトで、高密度の制御可能な水素ガス源を必要とする。例えば水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)、水素化ホウ素亜鉛(ZnBH
4)、水素化ホウ素カリウム(KBH
4)、水素化ホウ素カルシウム(CaBH
4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH
4)、トリメトキシ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH(OCH
3)
3)等の金属水素錯体は、水素の魅力的な固体供給源である。適切な触媒の存在下で水と反応した場合、これらの金属水素錯体は、水素ガスを、11〜14質量%(これは、金属水素化物の場合より、グラム当たり5〜6倍より多く水素が放出される)の収率で提供することができる。
【0084】
水素化ホウ素ナトリウムは、その等価エネルギー密度がディーゼル燃料のそれとほぼ等しいので、特に魅力的な水素の固体供給源である。水素化ホウ素ナトリウムは、以下の反応にしたがって、触媒の存在下で(又は酸性化された場合)、水と発熱的に反応して、水素ガス及びメタホウ酸ナトリウム(すなわち、ホウ砂)を生成する:
【0086】
水素化ホウ素ナトリウムが水素ガス分子(H
2)を2つ供給し、水が他の2つの分子を供給し、全部で4つのH
2分子を供給するので、この反応は、水素ガスの発生に特に効率的である。この反応は、発熱的であり;開始させるのに加熱又は高圧の使用を必要とせず;低温でも水素を発生させることができる。
【0087】
本発明の燃料電池溶液:
本発明の一実施形態によれば、燃料溶液は、水素化ホウ素ナトリウムの水溶液濃縮物、安定剤及び相形成抑制剤/結晶化抑制剤を含む。
【0088】
燃料電池におけるより高い発電又はより長い稼働期間をもたらすように水素発生能力を増大させるために、アルカリで安定化された濃厚なNaBH4水溶液を運ぶことが必要である。しかし、環境の温度変動とともに、濃厚液体燃料(例えば、40w%のNaBH
4)における結晶形成は、溶液のポンプ輸送性を制限し、数時間で、配管を閉塞させる可能性がある。燃料溶液における相形成又はスケール形成が、最終的に水素発生をもたらすのに反映される場合、これらの欠点は特に重大なことになる。
【0089】
したがって、艦内での濃厚NaBH4溶液の結晶形成及びスケーリングを防止する材料の必要性がある。本発明者らは、メチルパラベンが、この問題を回避するための適切な化学品であることを見出した。メチルパラベンは、p−ヒドロキシ安息香酸のエステルであり、多種多様の化粧品並びに食品及び薬物において使用されている。
【0090】
このメチルパラベンは、水素化ホウ素ナトリウムをアルカリ溶液中に均一に分散させ、結晶又はスケールの形成を回避する。これは、ポンプ輸送性も改善し、温度がより著しく低下した場合、より小さい結晶を形成する。更に、必要とされる量は、約<0.05%で極めて少ない。メチルパラベンは、水素発生器システムの触媒を妨害することもない。
【0091】
本発明の一実施形態によれば:
a)30%w/w〜40%w/wの範囲の水素化ホウ素ナトリウムの水溶液濃縮物;
b)水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムから選択される安定剤;及び
c)0.02%〜0.15質量%のメチルパラベン又はプロピルパラベンから選択される結晶化抑制剤
を含む燃料溶液を提供する。
【0092】
本発明の別の実施形態によれば、水素発生のための濃厚水素化ホウ素ナトリウム水溶液(30w/wt%〜40w/wt%)の結晶形成又は層化を防止する方法を提供する。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、15〜25℃等の低温でもポンプ輸送性を保持する燃料溶液の調製方法を提供する。
【0094】
本発明者らは、メチルパラベンは、低温での燃料溶液における相形成/スケール形成を防止することを見出した。
【0095】
この材料は、艦内での濃厚NaBH4溶液の結晶形成及びスケーリングを防止し、同時に、艦内で携行し貯蔵するのに好都合である。更に、得られる燃料溶液は、低温で、相形成又はスケール形成を全く示さない。
【0096】
本発明は、濃厚水素化ホウ素ナトリウム溶液(40%w/v)中での結晶/スケール形成の問題を解決する。水素生成の間、水素化ホウ素ナトリウム溶液(40%w/v)は高度にアルカリ性の媒体中に貯蔵されるが、数日後に、その特定の溶液において結晶/スケールが形成される。このため、微粒子溶液をポンプ輸送するのは不可能であり、したがって、水素の生成の間に障害を引き起こすことになる。この問題を解決するために、メチルパラベンを非常に少量(0.06%w/v)加え、この溶液を12時間撹拌する。このメチルパラベンは、水素化ホウ素ナトリウムをアルカリ溶液中に均一に分散され、結晶又はスケール形成を回避する。
【0097】
メチルパラベン及びプロピルパラベン、より好ましくはメチルパラベンが、金属ホウ化水素の水性濃縮物中に混ぜ込まれた場合、相分離を抑制することが分かった。酒石酸ナトリウムも相分離抑制を示したが、その性能はメチルパラベンより劣っていた。
【0098】
アルカリ溶液中で水素化ホウ素ナトリウムに均一に分散された場合、メチルパラベンは、結晶又はスケール形成を防止する。これは、ポンプ輸送性も改善し、温度が大幅に低下した場合、より小さい結晶を形成する。更に、必要な量は、極めて少なく、好ましくは0.02%〜0.15%、より好ましくは約0.05%である。より重要なことであるが、メチルパラベンは、水素発生器システムの触媒を妨害しない。
【0099】
様々な濃度のNaBH4、安定剤(水酸化ナトリウム)及びメチルパラベンでの本発明の燃料溶液組成物(Table A):
【0101】
一連の実験を、3〜7m3の代表的な大きなタンクで実施した。温度は、ジャケット冷却を用いて低下させ、定常状態が長時間確実に達成されるように保持した。
【0102】
図2−1は、相分離抑制剤なしで、25℃で6.35%wt/wtのNaOHを含む40%wt/wtのNaBH4溶液を用いた燃料溶液を表す。
図2−2は、25℃で6.35%wt/wtのNaOH及び0.06%wt/wtのメチルパラベンを含む40%wt/wtのNaBH4溶液を用いた燃料溶液を表す。
図2−3は、25℃で6.35%wt/wtのNaOH及び0.1%wt/wtのメチルパラベンを含む40%wt/wtのNaBH4溶液を用いた燃料溶液を表す。本発明の
図2−2及び
図3−3は、燃料溶液(NaOH/KOHで安定化された濃厚NaBH4溶液)中への少量のメチルパラベンの取り込みが、相分離及び結晶化の抑制をもたらすことを例示している。相分離の発生はなく、燃料溶液を、水素発生システムにおいて低温で、何の困難もなくポンプ輸送することができる。
【0103】
燃料溶液中への少量のメチルパラベンの取り込みで、より高い量のNaBH4が限定された空間において利用可能となり、それによって持久性を増進する。
【0104】
水素発生システム
燃料電池に必要な水素は、ナトリウム−ホウ化水素(NaBH
4)の加水分解によってオンラインで発生させる。燃料供給ポンプは、リアルタイムベースの水素要求にもとづいて、所定量の燃料を、AIPプラグ内のタンクから水素発生器システムに注ぐ。
【0105】
水素の発生
燃料溶液、触媒溶液及び生成した水(燃料電池システムによって、燃料電池水バッファータンク中に蓄えられている)は、水素発生器中にポンプ輸送される。
【0106】
液滴を除去するための濾過後の生成された水素は、水蒸気で飽和され(約70℃である水素発生器の稼働温度により)、下流の燃料電池(PAFC)区域へ進む。燃料電池区域中への水分の通過は、水素発生器区域の出口で、水素ガスを必要レベルに冷却することによって制御される。
【0107】
反応器は、水素と一緒にホウ酸ナトリウム(NaBO
2)を生成する。ホウ酸ナトリウムは、水素発生器から、AIPプラグの使用済み液排気システムの使用済み用バッファータンクへ出る使用済み液体ストリーム(使用済み液)に溶解保持される。燃料溶液濃度は、使用済み液中のホウ酸ナトリウムが溶解した状態に留まるように調整されることに留意することができる。燃料電池生成水は水素発生器システムへ供給され、これは、ホウ酸塩液と混合された後、使用済み液取り扱いシステムにおけるホウ酸ナトリウムの結晶化を防止するのを助ける。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、燃料タンク、触媒タンク、内蔵式熱交換器を有するコンパクトベッセル、中間タンク、使用済み貯蔵タンク、圧力制御手段を含む搭載型水素発生システムから水素を発生させる方法であって、前記方法が:
a.燃料タンクから燃料溶液及び苛性溶液を、触媒タンクから触媒を、内蔵式熱交換器を有するコンパクトベッセルへポンプ輸送する工程;
b.前記コンパクトベッセルにおいて、触媒の存在下で、燃料溶液中のホウ化水素を加水分解して、必要とされるよりも高い速度で水素を発生させる工程;
c.工程bにおいて副産物として生成した得られたホウ砂溶液を、断続的に中間タンクへ放出する工程であって、ホウ砂溶液中の微量のホウ化水素を水素に変換させ、次いで、得られた残留水素を主水素ラインと一緒にし、残りを使用済み貯蔵タンクへ放出する工程;
d.工程bにおける加水分解反応が圧力の増大をもたらし;それが、圧力制御手段を活性化して、工程aにおける燃料溶液供給を停止させる工程;
e.水素がリン酸型燃料電池(c)によって消費されるのにしたがって、コンパクトベッセル中の圧力が低下し、それによって、燃料溶液供給を再スタートさせる工程;
f.前記コンパクトベッセルに、熱の除去及び反応物混合のための共形型熱交換器を提供する工程;
g.前記コンパクトベッセルに、生成物水素を冷却するための頂部に搭載される熱交換器を提供する工程;
h.前記コンパクトベッセルに、ホウ酸塩液を循環させるシェル側及び脱塩水を循環させるチューブ側を含む、熱の除去及び反応器温度維持のための非従来型の熱交換器コイルを提供する工程
を含む方法を提供する。
【0109】
酸素貯蔵及び供給分配システム
液体酸素(LOX)は極低温タンクに貯蔵され、LOX気化器熱交換器はLOXを蒸発させてガス状酸素にし、これは、発電、燃料電池プラント区域へ供給される。LOXタンクの圧力は、LOXを蒸発させ、それをLOXタンク上部空間に戻して、酸素を供給するのに必要なタンクでの必要圧力を保持する別個の圧力蓄積熱交換器によって維持される。グリコール−水閉ループシステムは、気化器及び圧力蓄積熱交換器においてLOXを蒸発させるために使用され、低温の水グリコール溶液は、AIP区域の局所的な空気調節のために使用される。LOXタンクの上部空間(head space)からのタッピングも、乗員の呼吸のために使用される。乗員呼吸ネットワークは、プラットフォーム設計者の範囲内である。
【0110】
発電、燃料電池プラント
リン酸型燃料電池(PAFC)システムは、水素と酸素を消費して水蒸気と電力をもたらす。燃料電池バランスオブプラント(BoP)配置は、水素ループ、加圧水システム(PWS)と一緒になった合成空気ループ、燃料電池システムの熱システムからなる(
図4)。燃料電池からの電力取り込みは、電気的ネットワーク、燃料電池電力出力区域に別個に示されている(
図3)。
【0111】
基礎燃料電池スタック、すなわちN−11ユニットは、スタックの直列及び並列の組合せを介して必要な電力を具現化するために、ホルダーフレーム中に配置される。
【0112】
燃料電池システムは、水素と合成空気(酸素)の両方のための閉ループにおいて機能する。燃料電池で消費される水素は、水素ループにおける水素圧の低下を感知することによって作製されるが、メイクアップ酸素は、合成空気ループにおける酸素濃度の低下により供給される。これらの閉ループの詳細を以下の節において提供する。
【0114】
水素ループ:
湿潤水素はPAFCスタックに供給され、これは電極内部で拡散し、電力取り込みに応じて、反応して水を生成する。生成水は、空気側ループを通して出てくる。未反応水素は水分と一緒に、スタックから出てきて、冷却されて任意の過剰水分が分離され、水素発生区域の上流水素バッファータンクからのメイクアップ水素と一緒に、PAFCスタックへフィードバックされる。メイクアップ水素供給は、水素ループでの圧力を感知することによって行われる。経時的な不純物の蓄積を回避するために、圧力が蓄積された場合に、管理されたベントを介して触媒バーナーシステムへパージする、計装化されたパージを提供する。バーナー中で、合成空気ストリーム周りのループにおいて酸化されることによって、水素は水に変換される。生成した水は凝縮し(P−2)、燃料電池水バッファータンクへ送られ、その水は、水素発生器の節で論じたように、そこから最終的に水素発生器へ供給される。
【0115】
合成空気ループ:
合成空気ループは、空気又は濃縮空気の酸素濃度を有する、酸素と窒素の混合物を使用する。合成空気は、純粋酸素の代わりに使用され、これは、燃料電池の稼働寿命を延長させ、また、機械的な破損及び漏出の場合の火災の危険性を回避するためでもある。
【0116】
加湿された合成空気を、再循環ブロワーによって燃料電池スタック中に供給する。未反応酸素、窒素及び水蒸気は燃料電池スタックから排出され、そこで、これは所定のレベルに冷却され、それによって、水分の一部は凝縮し(P−3)、気液分離器(VS−2)において分離される。凝縮水は、燃料電池水バッファータンクへ送られる。メイクアップ酸素は、空気ループ中の酸素センサーにもとづいて添加され、燃料電池にフィードバックされる。
【0117】
不純物に起因した圧力の増大の可能性は、合成空気を上記したような触媒バーナー中に時々パージすることによって排除され、その酸素は、水素発生器から適切な量の水素を添加することによって、水に変換される。発生器中で生成した水は、凝縮し、燃料電池水バッファータンクに送られる。
【0118】
加圧水システム(PWS):PAFC熱システム:
PAFCスタックは、最大で170℃の温度で稼働する。PAFCシステムの温度を維持するための主要媒体として、高純度加圧水システム(PWS)が使用される。PWSは、ループ中での沸騰を回避するために、加圧形態で、熱水を、PAFCスタック内の組み込まれた熱交換器を通して再循環させる。
図4に示すように、冷却水は、PAFC稼働の間に温度が上昇した場合、加圧熱水を冷却する。低温開始期、一時的運転停止又はスタンバイ期の間、触媒水素バーナー又は電気加熱による加熱が、PWSの温度を維持するために用いられ、これは、PAFCシステムの温度を維持する。そうしたデュアルモード媒体ベースの熱システムは、容易で安全な制御を可能にする。
【0119】
本発明の一実施形態では、燃料電池バランスオブプラントにおける加圧水システムは、デュアルモードで稼働し、そこで、前記加圧水システムは、ループ中での沸騰を回避するために、加圧水タンク(T−1)から、加圧形態で熱水を、PAFCスタック中の組み込まれた熱交換器を通して再循環することによって温度を維持し、温度が上昇した場合、加圧水冷却器(HE−5)の冷却水は加圧熱水を冷却する。
【0120】
本発明のリン酸型燃料電池(PAFC)スタック:
リン酸型燃料電池(PAFC)は、炭素/黒鉛基材に支持された貴触媒の存在下で、反応物の化学エネルギーを直接直流電力に変換する電気化学的デバイスである。
【0121】
PAFCセルにおける酸ホルダーマトリックスの電極基材への接着性が劣っているという問題がある。酸ホルダーマトリックスと黒鉛化支持体の間の接着性が劣っているという問題に対処するという満たされていないニーズがある。
【0122】
本発明者らは、黒鉛化支持体、酸ホルダーマトリックスで、マトリックスの接着強度を増大させる方法、酸ホルダーマトリックスの接着強度を決定する方法を見出し、また、マトリックス中での酸移動を推定する方法も見出した。
【0123】
本発明の一実施形態によれば、ウォッシュコートによって、マトリックスの黒鉛電極構造物との接着強度を増進させる方法を提供する。
【0124】
本発明の実施形態によれば、本発明のリン酸型燃料電池におけるリン酸電解質の黒鉛電極構造物への接着強度を、リン酸電解質をキャスティングする前に、黒鉛電極構造物上にウォッシュコートを塗布することによって増大させる。
【0125】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のリン酸型燃料電池におけるリン酸電解質の黒鉛電極構造物への接着強度を増大させるためのウォッシュコートは、90〜97%の炭化ケイ素(SiC)、2%のポリエチレンオキシド及び3〜10%のポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0126】
本発明の別の実施形態によれば、マトリックスにおける酸移動を推定する方法を提供する。
【0127】
本発明の更に別の実施形態によれば、酸ホルダーマトリックスの接着強度を決定する方法を提供する。
【0128】
典型的なPAFCアセンブリー(
図8)は2つの電極を含み、電解質ホルダーの多孔質のマトリックス(3)がその2つの電極(2及び4)の間に入る。次いで、このアセンブリーを、反応物ガスがそれぞれの電極へ進むように、2つの黒鉛バイポーラプレート(1及び6)の間にサンドイッチ状に挟み込む。これは、リン酸を電解質として使用し、長時間稼働させるために、酸ホルダーマトリックスの多孔質の不活性媒体中に保持しなければならない。一般に、水素は燃料として使用され、空気/酸素は酸化剤として使用される。2つの電極は、炭素又は黒鉛基材に支持されたPt又はPt合金でコーティングされる。フルオロカーボン結合剤を混合することによって、触媒を、ガス拡散層上にコーティングする。電極に、それぞれの反応物が供給されると、触媒の存在下で酸素の還元又は水素の酸化が起こり、イオンは電解質マトリックスを通して移動し、それによって電力が発生する。これらの反応は、マトリックス中に保持されたイオン的に伝導性電解質と導電性の電極の界面で起こる。
アノードでは:
H
2→2H
++2e
− (1)
カソードでは:
1/2O
2+2e
−→H
2O (2)
である。
【0129】
リン酸型燃料電池の商業的利用は、スタックの増進された寿命及び性能を必要とする。その寿命及び性能は、使用される触媒支持体の安定性によって大きく支配される。これは、支持体の腐食を回避するために、カーボンブラックの代わりに、黒鉛化された触媒支持体の使用を必要とする。しかし、黒鉛化支持体は本来的に疎水性であり、層を形成させるために使用される結合剤は、疎水性を更に増大させる。層の低い表面エネルギーは、マトリックススラリーの表面上への付着を妨げ、結合が弱いので、結局、形成されるマトリックスは機械的に安定ではない。一般に、製紙、スクリーン印刷、噴霧、グラビアカーテンコーティング技術が、電極上にマトリックスコーティングを作製するために使用される。
【0130】
本発明の実施形態を詳細に説明することとする:−
a)ウォッシュコートによって、マトリックスの黒鉛電極構造物との接着強度を増大させる方法。
マトリックスは、一般に、SiC及びポリエチレンオキシドのスラリーをボールミル粉砕し、続いてテフロン(登録商標)(Teflon)を添加し、その混合物を数分間撹拌し、次いで、電極上にキャストすることによって作製される。マトリックスの電極表面との接着を改善するために、ウォッシュコート法が開発されている。ウォッシュコートは、それを蒸留水で希釈することによって、同じSiC+PTFE/フルオロエチレンポリマー(FEP)キャスティング材料から作製され、塗装、噴霧、又はX方向とY方向の両方にスポンジを回転させることによって、電極表面上に塗布される。ウォッシュコートを空気乾燥する。このウォッシュコートに続いて、慣行的なSiCスラリーを結合剤及びスラリー安定剤と一緒に、標準的な作業、すなわち、カーテンコーティング、ワイヤーバーコーティング、スクリーン印刷法等によって、ウォッシュコート上にコーティングし、乾燥し焼結させる。このウォッシュコートは、電極表面上でのマトリックスの結合、並びにマトリックスの機械的安定性を改善する。これは、上記した接着試験によって決定される。
【0131】
本発明のウォッシュコートの調製:
ウォッシュコート懸濁液調製:4〜5ミクロの平均粒径を有する95%のSiC粉末を2%のPEOを用いてボールミル粉砕した。これに、5%のポリテトラフルオロエチレンを加え、5分間撹拌する。このスラリーから5質量部を取り、それに、湿潤剤(アルコール、特にイソプロピルアルコール)と水を加えて50部にした。この希釈されたスラリーを、ワイヤーバーコーターを使用して、実際のマトリックス層をコーティングする前に、ウォッシュコートとして使用した。
【0132】
b)マトリックスにおける酸移動を推定する方法:
典型的な燃料電池環境では、電極サンドイッチ型、すなわち、それらの間に炭化ケイ素マトリックスがある2つの電極を、電極の接触抵抗を最少化するために十分な接触圧を印加することによって、2つのバイポーラプレートの間に保持して、周辺部でのガス漏れを防止し、燃料電池スタックの機械的安定性を提供する。この取り付け圧に応じて、電極とマトリックスは一定レベルまで圧縮される。
【0133】
スプリングプレートアセンブリーは、マトリックスへの均一な圧力を可能にし、締め付けている間のスプリング定数及びスプリング圧に応じて、マトリックス上への圧力を推定することができる。
【0134】
ウィッキング機構によってもたらされる酸移動抵抗を最少化するために、酸リザーバは、マトリックスのすぐそばで、且つマトリックスと同じ高さの酸レベルに保持される。
【0135】
稼働の間、電解質は、乾燥反応物ガスによって運び出される。したがって、リザーバから補充しなければならない。マトリックスは、加圧下での酸によってウィッキング可能でなければならず、移動速度を決定しなければならない。マトリックスの圧縮のため、マトリックスの単位容積当たりの酸保持能力並びに酸移動特性及びイオン移動抵抗は変化する。
【0136】
リン酸型燃料電池スタックの稼働の間、酸は、電極を介して失われ、リザーバからマトリックスの酸枯渇部分への毛細管作用により、酸リザーバを介して補給される。したがって、酸移動速度、イオン抵抗性及びリン酸占拠度(phosphoric acid occupation)(PAO)等のマトリックス特性の特性評価は、マトリックスのそうした加圧条件下で測定しなければならない。
【0137】
リン酸占拠度(PAO)は、マトリックスのグラム質量当たりに、SiCマトリックス中に保持されるリン酸の量と定義される。
【0138】
電極上にコーティングされたマトリックスの移動試験は、
図10に示すように、アセンブリー固定具を使用して試験することができる。このセットアップは、図自体の中で説明されている。
【0139】
図10は、0.7MPaの圧力下での、リン酸移動を見出すために使用される酸移動アセンブリーを示している。31は、マトリックスビューのための開口部を有する金属フレームである。32は、透明なポリカーボネート又はアクリルシートである。33は、触媒層及び多孔質のガス拡散カーボン紙34の上に支持されているSiCマトリックスである。37は、所要圧力を均一に印加するための頂部金属プレートで均等に拡がっている、コイル状のスプリングを有するスプリングプレートアセンブリーである。36は、底部押し込みプレートである。35は留め具である。38は、酸リザーバスタンドであり、40は酸リザーバであり、39は、リザーバとマトリックス33を連結するウィックである。スプリングプレートアセンブリー37は、マトリックスに対する均一な圧力を可能にし、マトリックスへの圧力を増強している間のスプリング定数及びスプリング圧に応じて推定することができる。ウィッキング機構によってもたらされる酸移動抵抗を最少化するために、酸リザーバ40は、マトリックス33のすぐそばで、且つマトリックス33と同じ高さでの酸レベルに保持される。
【0140】
乾燥マトリックス(電極上にコーティングされた)を、アセンブリーの内側に保持し、燃料電池環境と同じような圧力が、スプリングを介してマトリックスに印加されるように留め具を締める。マトリックスを、酸湿潤した布を使用して周辺部で湿潤させ、次いで、これを、小さい酸リザーバに連結する。酸の伝播は、
図3に示すように、アセンブリーの透明な頂部を通して見ることができる。アセンブリー全体を、フードの下に保持することができ、高温での目標の酸の粘度が室温での希薄酸の粘度と同じになるように、ある程度希釈された酸で、室温で使用することができる。しかし、適切な材料を使用すれば、このアセンブリーは、電気加熱器及び濃リン酸を用いて、高温でも使用することができる。
【0141】
酸を、加圧下でマトリックスにロード(充填)した後、アセンブリーを開放し、マトリックスを計量して、マトリックスの単位質量当たりに占拠されたリン酸の量を見出すことができる。
【0142】
したがって、このアセンブリーを使用して、乾燥マトリックス中での酸移動速度を、リン酸占拠度(PAO)と併せて測定することができる。いずれかの側に金めっきした金属電極を有する同様のアセンブリーを使用して、必要ならDC/AC法によって、イオン伝導度を見出すことができる。
【0143】
本発明の一実施形態は、直流電力を生産するために、炭化ケイ素のマトリックスを保持する多孔質電解質によって分離された一対のガス拡散電極を含む燃料電池を提供する。前記マトリックスは、所望の特性を達成するために、最低で90%、最高で97%のSiC、及び3〜10%の結合剤を有する。最も好ましい結合剤は、約5wt%でのPTFEである。
【0144】
一実施形態では、本発明のSiCマトリックスは、両方の電極又は単一の電極上にコーティングされる。
【0145】
一実施形態によれば、本発明のマトリックスの厚さは、より好ましくは50〜60ミクロンの範囲である。そのコーティングの厚さは、より好ましくは40〜100ミクロンである。
【0146】
本発明で使用される炭化ケイ素マトリックスの平均粒径は4〜5ミクロンであり、マトリックスの多孔率は50%である。SiC粒子は、より好ましくは25ミクロン以下、好ましくは10ミクロン未満である。
【0147】
好ましくは使用される結合剤は、フルオロカーボン、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フルオロエチレンポリマー(FEP)又はその混合物である。
【0148】
一実施形態では、本出願のウォッシュコートは、接着を増大させるために、黒鉛基材上、また炭素基材上のSIC及びPTFE及び/又はFEPから作製される。
【0149】
一実施形態では、本発明のウォッシュコートは、手又は機械装置によってブラッシング又は噴霧により塗布することができる。
【0150】
別の実施形態では、塗布するための本発明のウォッシュコートの組成物は、2部〜10部、より好ましくは5質量部変化させ得る。
【0151】
好ましい実施形態では、本発明は、特定のアダプターを有するワイヤーバーコーターやグラビアのような他のコーティング方法を使用してコーティングする方法を提供するが、カーテンコーティングも使用することができる。
【0152】
好ましい実施形態によれば、本発明は、燃料電池電極、特にリン酸型燃料電池のための、疎水性の黒鉛及び炭素基材上にマトリックスをコーティングする方法を提供する。
【0153】
別の実施形態では、本発明は、前記マトリックスの安定性をチェックする方法も提供する。本発明は、加圧下での酸移動を測定する方法も提供する。
【0154】
その実施形態によれば、本発明は、PAFC用途でリン酸を保持するための、多孔質湿潤性の均一で機械的に安定なマトリックスを生産する方法を提供する。
【0155】
c)酸ホルダーマトリックスの接着強度を決定する方法:−
酸ホルダーマトリックスは、一般にSiC、及び電解質をリン酸型燃料電池に保持するためのポリマー結合剤でできている。接着が劣っていると、イオン抵抗性の増大、スタックの酸含浸及びアセンブリーの間のマトリックスのチッピングがもたらされることになるので、接着はマトリックスのために重要である。
【0156】
例えばプルオフ試験、クロスカット試験及びスクラップ接着試験等の軟質及び硬質基板上への通常のコーティングについて行われる一般的な接着試験は、塗膜のために塗料製造業者によって用いられる。これらの試験は、基材が本来的に脆弱であり、これは試験の間のコーティング脱離のために印加される力に耐えられないため、本発明における評価に適用できない状態になる。
【0157】
本明細書で採用される手法は、電極コートしたマトリックス(試料)を、制御撹拌によってかき混ぜられている、水で満たされたベッセル中に浸漬させることによって行われる接着試験プロセスをもとにしている。水によってマトリックス層上に与えられるせん断力は、軟質マトリックスの摩耗を引き起こす。
図9に示すように、電極コートしたマトリックスのピースを、いくらかの耐水性の粘着剤を用いて、マトリックス側を上にして、撹拌子(stirrer)ベッセルの底部上に固定する。或いは、これを、その撹拌子から所定の距離で、ベッセル中で垂直に保持し、撹拌することができる。撹拌子を所定の速度で稼働させ、マトリックス試料を一定時間曝露させた後、これを取り出し、マトリックスが除去されているかを目視で検査した。このピースを更に乾燥し計量して、マトリックスの損失を測定し、その表面を観察する。マトリックスの質量損失又はその表面での浸食から、マトリックス接着の程度を把握することができる。状況に応じて、撹拌子のタイプ、ベッセル形状/サイズ、撹拌回転数(stirring rpm)及び曝露時間を標準化して、異なる試料について、マトリックス接着強度を比較することができる。
【0158】
ウォッシュコート及び圧縮なし;ウォッシュコートありで圧縮なし;及びウォッシュコート及び圧縮ありで実施した、酸移動試験の結果についての比較データを以下のTable 4(表4.a〜表4.c)に示す。
図11は、0.7Mpaでの異なるマトリックスの酸移動の経時的なグラフ表示である。
図11は、ウォッシュコート及び圧縮ありでSic+5%のPTFEを用いた酸移動が、より良好であることをはっきり示している。酸の移動が、ガスのクロスオーバー及びイオン抵抗性の低下を回避するより良好な毛細管作用を示しているので、より高い酸移動値は、PAFCがより良好に機能していることを表している。
【0159】
[実施例]
(実施例1)
ウォッシュコート及び圧縮なしでのマトリックス−実施例1
95質量部の4〜5ミクロンサイズの炭化ケイ素(Electro Abrasives USAからの1200GW)、及び100質量部の2%のPEO懸濁液(PEO、40,0000−Aldrich)を、遊星型ボールミル中で1時間ボールミル粉砕した。この均一な混合スラリーに、5質量部のポリテトラフルオロエチレン(60%wt/wt、Hiflon Indiaから)を加え、5分間撹拌した。マトリックス材料は、SiC及びテフロン(登録商標)の形態の50〜52%の固体を含む。炭化ケイ素スラリーを、触媒層の厚さ変動に対応できるアダプター上に固定されたワイヤーバーコーターで、その電極の上にキャストした。電極は、20%の黒鉛基材担持Pt及び30%のテフロン(登録商標)のインクをスクリーン印刷して作製する。すべての実施例におけるキャスティング及び試験に次いで、カソードへのPtローディングは0.7mg/cm
2であり、アノードについては0.5mg/cm
2が用いられる。滑らかで均一な層が、ピンホールなしで得られた。この層を、22℃で12時間乾燥し、次いで70℃で乾燥し、最後に310℃で焼結させる。得られたマトリックスは、約8mg/cm
2の炭化ケイ素を含んでおり、厚さは50〜60ミクロンであった。乾燥層の電気抵抗率は、5×10
8ohm−cmであった。単一電極の気泡圧力を測定した。マトリックスでの仕上がり電極を、マトリックスの接着、酸移動及び電気化学的性能について試験した。安定性試験のため、電極から、40×40mmサイズのSiCコーティングマトリックスを鋭利な刃で3〜4ピース切り出し、その端部からダスト粒子を注意深く取り除いた。1000mlビーカー中に600mlの蒸留水を取り、1/4’’の垂直な細長い隙間分解ヘッド(vertical slotted disintegrating head)を有するSilversonミキサー(Model−L5M、Silverson Machines Ltd.、England)をビーカーに浸漬させた。試験ピースをミキサーのヘッドから1cmの距離で保持し、silversonミキサーの速度を6500rpmに設定した。電極をこの位置で5分間保持し、電極の表面及びビーカー中の水を、SiC層のチッピング、又はクラック及びSiC粒子についてチェックした。セットアップを
図9示す。
【0160】
図9:(a)は、マトリックス接着試験アセンブリーを表し、26及び27は水の高さ及び使用されるガラスベッセルの直径を表す。28は試料25と撹拌子22の間の距離である。試料25は、ベッセルの底部上に固定された、SiCマトリックスでコーティングされた電極である。
図9(b)では、試料23、触媒層でコーティングされた電極及びSiCマトリックスは、撹拌子22から距離29で、マトリックス側が撹拌子に面して、垂直に保持されている。26及び27は、水の高さ及びガラスベッセルの直径である。撹拌子ポット直径(27)、撹拌子ヘッド、撹拌子の回転速度、撹拌子とポット底部の間の空間、試料と撹拌子の間の空間(28 & 29)、ポット中の水レベル(26)等は、比較目的のために標準化されることになる。
【0161】
マトリックス接着試験アセンブリー;a)試料は、底部上に保持されている;b)試料は、垂直に保持されている。撹拌子ポット直径(dia)(27)、撹拌子ヘッド、撹拌子の回転速度、撹拌子とポット底部の間の空間(L)、試料と撹拌子(S)の間の空間、ポット中の水レベル(H)等は、比較のために標準化されることになる。
【0162】
安定性試験は、乾燥による質量損失を示し、薄い頂部層は取り除かれた。これは、前記マトリックスの長期安定性問題を表している。結果をTable 4(表4.a〜表4.c)に示す。リン酸移動を、
図10に示すように、アセンブリー固定具において実施した。マトリックスでコーティングされた電極を、2cm幅をおいて酸移動固定具中に組み込んだ。マトリックスの端部にワットマン(Whatmann)濾紙No1を、圧力0.7MPaで印加した。ガラスマットの他方の末端を酸リザーバに浸漬させた。酸の粘度が、90℃での88%の酸と同様に留まるように、25%濃度のリン酸を室温で使用した。以下の表は、0.7MPaのクランプ圧で締め付けられている、リン酸単位セル中、150℃/1atmで上記マトリックスを使用した性能を示す。
【0164】
実施例1は、SiC及び結合剤PTFEを含むマトリックス材料でのリン酸電解質を電極の上にキャストする、米国特許第4017644号を表す。
【0165】
(実施例2)
ウォッシュコートありで圧縮なしのマトリックス:
95質量部の4〜5ミクロンサイズの炭化ケイ素(Electro Abrasives USAからの1200GW)、及び100質量部の2%のPEO懸濁液(PEO、40,0000−Aldrich)を、遊星型ミル中で1時間ボールミル粉砕した。この均一な混合スラリーに、5質量部のポリテトラフルオロエチレン(60%wt/wt、Hilfon Indiaから)を加え、5分間撹拌した。本発明のウォッシュコートのため、5質量部の炭化ケイ素スラリーを取り、湿潤剤(例えば、イソプロピルアルコール)及び水で10倍希釈した。希釈したスラリーを、黒鉛化触媒層表面上でのウォッシュコート塗布のために使用し、空気乾燥した。炭化ケイ素スラリーを、触媒層の厚さ変動に対応できるアダプター上に固定されたワイヤーバーコーターで、その電極の上にキャストした。滑らかで均一な層が、ピンホールなしで得られた。この層を、22℃で12時間乾燥し、次いで70℃で乾燥し、最後に310℃で焼結させる。得られたマトリックスは、約8mg/cm
2の炭化ケイ素を含んでおり、厚さは50〜60ミクロンであった。この層の電気抵抗率は、5×10
8ohm−cmであった。試料の安定性試験、気泡圧力酸移動を、実施例−1で述べたようにして実施した。結果をTable 4(表4.a〜表4.c)に示す。安定性試験の間、剥離又は質量損失は観察されなかった。以下の表は、150℃/1atmで酸素及び空気を用いて、リン酸単位セル中で上記マトリックス及び電極を使用した性能を示す。
【0167】
(実施例3)
マトリックス−ウォッシュコート及び圧縮ありで:
質量で95部の炭化ケイ素及び100質量部の2%のPEO溶液を加え、遊星型ミル中で1時間ボールミル粉砕した。このスラリーに、5%のPTFE溶液(60%wt/wtのHiflon)を加え、数分間撹拌した。得られたスラリーをプレウォッシュコートされた黒鉛電極上にキャストした。マトリックスを、22℃で12時間乾燥し、次いで70℃で1/2時間乾燥した。次いで、緑色のマトリックスを、6kg/cm2で圧縮し、最後に310℃で焼結した。得られたマトリックスは、厚さ50ミクロンで親水性であり、50%の多孔率を有している。0.7Mpa下での前記マトリックスの気泡圧力及び酸移動を実施した。結果をTable 4(表4.a〜表4.c)に示す。前記のものは安定であり、質量損失及び剥離を示さなかった。上記のマトリックス構造を有するPAFCセルの性能をTable 3(表5)に示す。
図5及び
図6は、H2/O2及びH2/空気での3つの実施例の比較を示している。
【0169】
単位セル性能は、実施例1から実施例3への性能の改善を示した。実施例2では、接着は、電極とSiC層のイオン接触を改善し、圧縮は、接着を増大させ、電圧損失に至るガスのクロスオーバーも減少させた。
【0173】
リン酸型燃料電池では、水素は燃料電池のアノードに供給され、酸素は、酸化剤としてカソードに供給される。PAFC燃料電池は、多孔質の炭化ケイ素マトリックスコーティングされたアノード及びカソードアセンブリーを含み、そこで、アノード及びカソードの炭化ケイ素コーティングされた表面は互いに向き合っている。この多孔質の炭化ケイ素は、反応性ガスの直接混合のためのバリアの役割を果たすリン酸を吸収する。このアセンブリーは、1つのリン酸型燃料電池を求める(call)。このアセンブリーは、燃料電池で使用される反応性ガスのためのチャンネルを両側面上に有する、2つの不浸透性で電気伝導性の耐食性プレートに挟まれている。
【0174】
「PAFCスタックモジュール」という用語は、通常、より高い電圧及び電力出力が得られるように、上記のリン酸型燃料電池の数を直列に加えたものを指すために使用される。
【0175】
不浸透性で耐食性の導電性のプレートは、燃料電池のガス状反応物、すなわち水素をアノード表面にわたって、且つ空気の形態の酸素をカソードの表面にわたって分配するために、両側面上に流れチャンネルを含むリン酸型燃料電池を挟んでいる。これらのチャンネルは、反応性ガスを供給するための複数のヘッダー、及びチャンネルの反対側末端での排出ヘッダーのための複数のチャンネル、したがって、プレートの端部での複数のガスポートと連結されている。
【0176】
リン酸型燃料電池スタックでは、多数のセルが、不浸透性で耐食性の導電性バイポーラプレートによって分離された電気的シリーズで一緒に積み重ねられている。これらのバイポーラプレートでは、燃料電池によって生成した熱を取り除くための冷却流体用のチャンネルを作製することによって、又は、バイポーラプレートの間に冷却流体用のチャンネルを有する金属プレートを置くことによって形成されたアセンブリーがある。
【0177】
燃料電池スタックの所要温度を維持するために、黒鉛熱交換器プレートを配置する。これは、燃料電池によって生成した熱を取り除くプレーナー(planer)黒鉛プレートであり、その中を流れる加圧水を介して燃料電池のスタートアップ動作のための熱を提供し、不浸透性で耐食性の導電性バイポーラプレートと一緒での燃料電池アセンブリーのnos.の後、これを燃料電池スタック中に配置する。
【0178】
プレートの膨張及びゆがみ、プレートの柔らかさに起因した接触圧損失、及び薄い寸法を有するプレーナー燃料電池配置に適合すべきである黒鉛表面を介した加圧水の汚染を回避するために、より強い硬さを有する多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートを開発する必要性がある。
【0179】
この問題は、金属チューブ(
図17は、単一の金属コイルチューブを示す)を、硬い溝付き黒鉛プレート(
図18)で成形することによって、改良された熱伝達のための、多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートを作製することに関係している。最も重要なことは、組み込まれた黒鉛熱交換器プレートが、チューブ壁によって発生した熱応力で黒鉛プレートにクラックが入らないようにすべきであり、同時にプレートによる酸吸収に起因して膨潤しないようにすべきであるということである。
【0180】
本発明によって作製された黒鉛交換器プレート(
図19)は、加圧水システムを介してのPAFCスタックの加熱及び冷却に有用であり、黒鉛プレートのチューブ壁による熱応力でクラックが入ったり、膨潤したり、ゆがんだりすることはない。本発明者らは、チューブの壁と溝付き黒鉛プレートチャンネルの表面の壁の間に、最適比の剥離状黒鉛粉末及びポリテトラフルオロエチレンの懸濁液を調製することにより開発された混合粉末を充填することによって、異なる経路構成を有する多重の蛇行金属チューブが、ガスポートホールを通して、一方の側面が金属チューブのための溝付きのチャンネルを有し、他方の側面が燃料電池の任意の反応性ガスのためのガスチャンネルを有する高密度の溝付き黒鉛プレートの内側に成形される独特の成形プロセスを見出した。
【0181】
薄い電気伝導性シートは、高温の酸に対して耐性のある保護層として、0.2mm未満の厚さを有する薄い電気伝導性剥離状黒鉛シートであり、高密度の黒鉛プレートの溝付き側面に取り付けられており、その側面から、金属チューブは、最小粒径を有する微細な天然黒鉛粉末を最小限の耐酸性樹脂と混合することによって開発された薄い接着剤を塗布し、次いで、適切な成形プロセスによりそのシートを固定することによってフィットされる。開発された接着組成物及び成形プロセスがそうであるため、プレートは、プレートにわたる熱及び電流の移動に耐えられない。
【0182】
この多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートは、6超〜12個のPAFC(リン酸型燃料電池)セルの後で、加圧水を介してPAFCスタックモジュールにおいて繰り返す仕方で、それらを配置することによって、リン酸型燃料電池スタック中で発生した熱の熱伝達において非常に効率的である。
【0183】
この種の多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートは、多重金属チューブ中の加圧水の流れを介して所要温度を維持するために、PAFCスタックの加熱及び冷却を行うことになり、黒鉛の浸食に起因して、数時間の稼働後、水汚染の機会がない。
【0184】
黒鉛熱交換器プレート構成物がそうであるため、それは、剥離状黒鉛粉末及びテフロン(登録商標)ミックスによって酸を防止しないことになり、したがって、プレートが、最少でポリマー結合剤での剥離状黒鉛粉末によってのみ作製された場合にそうなるような、酸でプレートの膨張の機会はなくなってくる。この種の金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレートは酸やガスに対して不浸透性である。
【0185】
リン酸型燃料電池スタックアセンブリーのための多重金属チューブが組み込まれた黒鉛熱交換器プレート構成物は一般に、一方の側面に燃料電池カソードチャンネルを有する高密度の伝導性黒鉛の溝付きプレート中に組み込まれた異なる経路構成を有する複数の(2つ以上)蛇行金属チューブを含む。異なる経路を有する本発明の多重の蛇行金属チューブは、溝付き黒鉛プレート中に組み込まれた異なる経路構成を有する多くの別個のチューブを意味する。したがって、チューブ中に流れ込む冷却流体は、熱交換器プレートの表面上にわたって均一に熱を逸散させる。黒鉛プレート中の溝の幅は、7〜13mmの範囲、より好ましくは9〜11mmの範囲である。本発明の黒鉛プレート中の溝の深さは、好ましくは4〜10mmの範囲、より好ましくは6〜8mmの範囲である。
【0186】
チューブは、チューブ壁と黒鉛壁の間に剥離状黒鉛粉末とPTFE懸濁液の混合を施すことによって開発された混合粉末の成形を用いることにより、溝付きプレート中に組み込まれる。この混合物は、チューブの壁で発生した熱応力を吸収することになり、ベース黒鉛プレートへのショックを吸収し、それによって、ベース黒鉛プレートのクラッキングが回避される。同時に、薄い電気伝導性の成形、黒鉛プレートの溝付き表面での高温の酸保護層シートに起因して、熱交換器プレートによる酸吸収は起こらず、また、プレートの端部並びにガスポート位置での膨張も起こらない。その理由は、それが高密度黒鉛プレートでできているためである。
【0187】
本発明の一実施形態では、PTFE懸濁液は、50%〜70%のPTFE、2〜5%の界面活性剤及び約25〜45%の水を含む。
【0188】
本発明の黒鉛熱交換器プレートは、スタックのアセンブリーにおけるより高い安定性、及び改良された熱伝達特性を提供する硬質プレートである。
【0189】
この組み込まれた黒鉛熱交換器プレートは、加圧水を介したスタックの加熱及び冷却のためのより高性能のPAFCスタックモジュールに適格である。
【0190】
本発明の一実施形態によれば、「微細な天然黒鉛ミックスフェノール系」接着剤は、コイルチャンネルと頂部プレートの間のリッジ上に塗布されており、熱的並びに電気的連続性を可能にしており、したがって、燃料電池内に挿入された場合、このケインはスタックを通る電流を支援する。
【0191】
本発明の一実施形態によれば、水素及び酸素の流れ場は黒鉛プレートの外側上に成形されて、スタックの圧縮性を増進させる。
【0192】
本発明の伝導性疎水性のコーキング材料は、熱的接触を提供し、酸漏出を防止することにより金属腐食を防ぎ、剛性の黒鉛材料及び金属コイルの不均等な熱膨張による熱応力を吸収する最適の比で調製される。
【0193】
本発明の一実施形態によれば、成形混合物は、70〜80質量%の量の剥離状黒鉛粉末及び30〜20質量%の量のPTFEを含む。
【0194】
本発明の一実施形態によれば、剥離状黒鉛粉末の粒径は、好ましくは220ミクロン<D
10>300ミクロン、600ミクロン<D
50>750ミクロン、1200ミクロン<D
90>1400ミクロンの範囲である。
【0195】
本発明の一実施形態によれば、接着組成物は、約80〜95%の微細な天然黒鉛粉末及び5〜20%のフェノール系樹脂を含む。
【0196】
本発明の電気的ネットワーク
電気的ネットワークは、以下に詳述するような2つのサブシステムに分けられる。
【0197】
本発明の燃料電池電力出力
燃料電池モジュール、25Nos.(各モジュール:N−11PAFCスタック)生出力直流電力を、本質的に制御された幅広い入力DC−DCスタビライザーである電力調整器システム(PCS)のアレー中に供給する。このシステムは、燃料電池発生電力を入力フィードに受け入れ、母線を介してプラットフォーム配電盤へ連結されている出力で、潜水艦品質に制御された直流電力を提供する。本発明の
図3は、燃料電池出力からプラットフォーム電力センターへのPCSを介した電気的連結の主要スキームを示している。
【0198】
パワーエレクトロニクスモジュールは高い冗長性を有する。燃料電池タワーからのパワーエレクトロニクス格付けに適合するための適切な電力タッピングポイントは、各DC−DCスタビライザーユニットに利用できるようになっている。マスターコントローラーは、負荷駆動モードか、又はユーザープログラム化負荷モードで動作する。燃料電池ブランチの健全性監視をもとにして、モジュールは、DC−DCスタビライザーアレーの電力共有を決定する。したがって、HFSPCコントローラーは、リアルタイムでのDC−DCスタビライザーにおける負荷を共有する。スタビライザーアレーの出力は、それから電力の一部がAIPパラサイト電力のために使用される共通母線に提供され、残りは、マスターコントローラー電力供給プログラムにより、プラットフォームへ供給される。
【0199】
本発明の脱塩水冷却回路
AIPプラントの種々の装置は、冷却を必要とする。これは、脱塩冷却水ネットワークによって行われる。冷却水によって吸収される熱は、海水冷却ネットワークの海水交換器を介して海水へ放出される。脱塩水冷却ネットワークは、冷却水タンク、冷却水ポンプ、配管ネットワーク並びに関連するセンサー及び弁を含む。一般に、タンク中の冷却水は約40℃である。
【0200】
本発明の海水冷却ネットワーク
海水冷却ネットワークは、船体貫通部(海水を取り入れ、海水を送り出すため)、海水熱交換器、海水循環ポンプ、海水配管並びに関連する弁及びセンサーを含む。海水は、第1の熱交換器を通って流れ、脱塩水冷却回路からの脱塩冷却水は、第2の熱交換器を通って流れる。詳細はプラットフォーム設計者によってなされることになる海水冷却ネットワークは、脱塩水冷却の要件にもとづく。
【0201】
本発明の排気システム
排気システムは、以下で詳述するように2つの部分に分けられる。
【0202】
本発明の使用済み液排出システム
水素発生システムからの使用済み液は、海へ排出する必要がある。使用済み液溶液は、2つの使用済みバッファータンクのうちの1つへ移送される。一方のタンクは充填され、上流から隔てられている他方は、その液を海へ排出するための高圧ポンプと連結されている。バッファータンクは、外部海水圧に曝されても(ポンプ故障の場合)十分な強度がある。液でタンクが充填された後、排出要求が、液を海へ排出するポンプを稼働させるプラットフォームIPMSにもたらされる。
【0203】
本発明のガスのためのマスター排気システム
すべてのサブシステム、すなわち、燃料供給システム、水素発生システム、発電燃料電池プラント、酸素貯蔵及び供給分配システム等は、排気系による圧力蓄積/不純物蓄積防止プロセスを有する。この排気系は、触媒バーナーに連結されている。ループ内で過剰の水素又は酸素を感知すると、バーナー制御システムは、バーナーへの専用ラインを通して、水素発生器から水素を、又はLOXシステムから酸素を供給する。生成した水は凝縮し、燃料電池水バッファータンクへ供給される。
【0204】
他の不純物(ガス状)の場合、小さい圧縮機を通して、ガスをバーナーブロックから海へ排出するバーナーユニットと連結されたマスターベントがある。したがって、このサブシステムはすべて、次いで、任意の圧力蓄積を軽減させるように計装化され積極的に制御される単一のマスターベントポートと連結される。
【0205】
本発明の加水分解反応を被毒させることによって特殊化された安全性
本発明の一実施形態では、そうした緊急時の場合に、加水分解反応を被毒させ、反応を低下/停止するために化学抑制剤を注入することによって、水素発生器内での水素過圧を防止するための方法を提供する。
【0206】
水素発生器は主要な危険源であり、H2発生器における加水分解反応を停止し/遅延させるために、化学品(触媒毒)を特定する。その化学品は粉末形態でキャニスター中に貯蔵され、水素発生器での警報レベルの圧力の場合、触媒毒ホルダーポットを通して再循環ポンプ流出液をかわすことによって、その化学品をシステムに投入する。更に、加圧水キャニスターを、触媒毒を水素発生器に注入させるための追加の駆動機構として触媒毒ポットに連結する(
図14に示すようにして)。
【0207】
この化学品は、上記したようなNaBH4加水分解反応が停止されるか又は速度が低下するように、システムから遊離水を除去するポリアクリル酸ナトリウム、より好ましくはメタクリル酸ナトリウムである。ポリアクリル酸ナトリウム粉末以外に、多量の水を吸収できる他の化学品を同じ目的で使用することもできる。
図14に示したように、粉末は、異なる形態で配置することができる。この方法によって、粉末は、加圧水システムを使用して投入される。しかし、乾燥粉末を携行し、中へ急速に投入するために、水ポンプの使用のような他の投入方法もあり得る。
【0208】
約0.8kgのメタクリル酸ナトリウムを注入する場合の40kwシステム(スケールダウンAIP)での例として、水素抑制の比較を
図15に示す。H2発生器においてNaBH4供給を停止した後、触媒毒を用いないケースと触媒毒を用いるケースで比較する。残留NaBH4を反応してH2を生成させ、抑制剤の効能を比較する。触媒毒が、NabH4供給が停止された直後に注入された場合、触媒部位から水を除去することによって生成される水素はより少ないことが示された。
【0209】
本発明の制御及び監視システム
制御及び監視システムは、AIPシステム全体の自動運転を可能にする包括的に分散されたコントローラーである。
【0210】
コントローラー構成は層状構造であり、水素発生器のような主要サブシステムは、PLC型コントローラーを使用して稼働される。燃料電池ループは、電流対電圧プロファイルによって燃料電池スタックの健全性を監視するためのアルゴリズムを有するモデル予測コントローラーで管理する。このアルゴリズムは、燃料電池からの全電力が、電力需要を満たし、最少量(min amount)の水素が消費されるように、燃料電池スタック健全性を判定し、各スタックへの電流分布を最適化するために使用される。同じ情報が、設定点で電力調整器システムに提供される。
【0211】
最上層は、全体的な制御効能を監視し、より低いパートのコントローラー設定点を調整して不安定性を最少化する節点(nodal)コントローラーである。節点コントローラーは、潜水艦コントローラーとも相互作用して、電力需要を得、潜水艦オペレーターが使用するための重要なAIPパラメーターも送る。
【0212】
本発明の一実施形態によれば、潜水艦のための大気非依存型推進システム(AIP)による発電方法であって、
− 前記搭載型水素システム(a)中で、燃料溶液及び触媒を含む原料フィードから水素を発生させる工程;
− 生成された水素及び酸素をPAFCスタック(c)に供給し、その供給された水素及び酸素が消費されて、未調節生直流電力を発生させる工程;
− 前記未調節生直流電力を電力調整システム(d)に提供して、調節直流電力を発生させる工程、
− 前記調節直流電力をプラットフォーム配電盤とインターフェースで連結して、プラットフォームへ電力を提供する工程、
− 脱塩水冷却回路で熱負荷を管理するための熱交換器のネットワークを提供する工程であって、前記脱塩水冷却回路が、冷却水タンク、冷却水タンク(複数)、冷却水ポンプ、配管ネットワーク、センサー手段及び弁手段並びに海水冷却ネットワークからなり、前記海水冷却ネットワークが、船体貫通部、海水熱交換器、海水循環ポンプ、海水配管ネットワーク並びにセンサー手段及び弁手段からなる工程、
− 使用済み液を追い出すための排出手段、及び前記システムの加熱及び冷却要件を実質的にバランスさせるガスのための主ベント手段を提供する工程、
− 好ましくは、
水素発生器を稼働させるためのPLC型コントローラー;
燃料電池からの電力が前記システムの電力需要に適合するように燃料電池スタック健全性を判定し、各スタックへの電流分布を最適化するためのアルゴリズムを有するモデル予測コントローラー;
全体的な制御、効能を監視し、不安定性を最少化するためにより低いパートのコントローラー設定点を調整するための節点コントローラー;
前記節点コントローラーが、電力需要を得、AIPパラメーターをオペレーターへ送るようにそれと相互作用する潜水艦コントローラー
を含む、コントローラー構成によって、
AIPシステム全体及び前記システムの個々のコンポーネントの自動運転のため、及び前記システムでの電力需要に従ってそれを調節するための、制御及び監視手段を提供する工程;
を含む方法を提供する。
【0213】
したがって、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する実施形態の様々な変更及び改変を行うことができることを理解されよう。そうした改変形態、変更形態及び適合形態は、本発明の範囲内あるものとする。更に、周知の機能及び構造の説明は、明瞭さ及び簡潔さのために省くこととする。