【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
〔重合体粒子の平均粒子径の測定方法〕
重合体粒子の平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS 13 320」)及びユニバーサルリキッドサンプルモジュールによって行う。
具体的には、重合体粒子分散液2.0gを0.1質量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。
【0037】
測定は、ユニバーサルリキッドサンプルモジュール中でポンプ循環を行うことによって上記重合体粒子を分散させた状態、かつ、超音波ユニット(ULM ULTRASONIC MODULE)を起動させた状態で行い、粒子の体積平均粒子径(体積基準の
粒度分布における算術平均径)、個数平均粒子径(個数基準の粒度分布における算術平均径)を算出する。測定条件を下記に示す。
媒体=水
媒体の屈折率=1.333
固体の屈折率=粒子の屈折率
PIDS相対濃度:40〜55%程度
【0038】
なお、粒子の屈折率については、粒子を構成する重合体の屈折率を入力し測定を実施した。例えば、粒子を構成する重合体がポリメタクリル酸メチル又はポリメタクリル酸エチルである場合には、既知である屈折率1.495を入力し、粒子を構成する重合体がポリスチレンである場合には、既知である屈折率1.595を入力した。
【0039】
〔重合体粒子の分散液の分級前、分級後の固形分濃度の測定方法〕
重合体粒子を含む分散液を、ビーカーに5g精秤し、分散媒体の沸点に設定したオーブンで5時間乾燥させ、下記式にて固形分濃度を算出する。
固形分濃度(質量%)=(分散液を含む乾燥前のビーカーの質量−乾燥後のビーカー質量)÷ (分散液の質量)×100[%]
【0040】
〔遠心分級前の重合体粒子における、粒子径が50μm以上の粒子数の評価方法〕
重合によって得られた分散液の固形分を、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近になるように加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した後のスラリー中の重合体粒子(ディスク式遠心分離機にて分級する前のもの)を、SEM(走査電子顕微鏡)画像によって評価する。具体的には、撮影画面中に粒子がおよそ5000個となるように電子顕微鏡の倍率を調整後、SEM画像を40枚撮影する。撮影画像中の粒子総数と、粒子径が50μm以上に相当する粒子の数をカウントし、粒子総数に対する粗大粒子の濃度を算出する。
【0041】
〔体積平均粒子径の5倍以上の粒子数の評価方法〕
撮影画面中に粒子がおよそ2000個となるように電子顕微鏡の倍率を調整後、SEM画像を50枚撮影する。撮影画像中の粒子総数と体積平均粒子径の5倍以上に相当する粒子の数をカウントし、粒子総数に対する粗大粒子の濃度を算出する。
【0042】
〔実施例1〕
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ重合器に、水性媒体としての水3000g中に反応性の界面活性剤としてのポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム32gを溶解したものと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル640gと、メタクルリル酸アリル160gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながらセパラブルフラスコの内部を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。さらにセパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム4.00gを水50gに溶解させた水溶液を、セパラブルフラスコ内の内容物に添加した後、12時間重合反応させた。
【0043】
その後、得られた分散液の固形分は、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(20.3%)になるよう加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて分級した後、20枚のディスクをセットしたアルファラバル社製ディスク式遠心分離機LAPX202にて、遠心力13000G、原料フィード量20L/hrの条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0044】
〔実施例2〕
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ重合器に、水性媒体としての水3200g中に反応性の界面活性剤としてのポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム20gを溶解したものと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル680gと、メタクルリル酸アリル170gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながらセパラブルフラスコの内部を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を650℃に昇温した。さらにセパラブルフラスコの内温を65℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム4.00gを水50gに溶解させた水溶液を、セパラブルフラスコ内の内容物に添加した後、12時間重合反応させた。
【0045】
その後、得られた分散液の固形分は、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(20.1%)になるよう加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した後、20枚のディスクをセットしたアルファラバル社製ディスク式遠心分離機LAPX202にて、遠心力4000G、原料フィード量60L/hrの条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0046】
〔実施例3〕
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ重合器に、水性媒体としての水1200gと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル60gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン0.60gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながらセパラブルフラスコの内部を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。さらにセパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.32gを水50gに溶解させた水溶液を、セパラブルフラスコ内の内容物に添加した後、5時間重合反応させた。
【0047】
その後、新たにメタクリル酸メチル230gと、多官能ビニル系単量体としてのアリルメタクリレート(AMA)10gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン2.40gを予め溶解した混合液を重合反応液中に投入し、再度セパラブルフラスコの内部を窒素置換して、内温70℃の状態で後、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。セパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム1.28gを水50gに溶解させた水溶液を、セパラブルフラスコ内の内容物に添加した後、12時間重合反応させ、重合体粒子分散液を得た。
【0048】
その後、得られた分散液の固形分は、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(19.8%)になるよう加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した後、20枚のディスクをセットしたアルファラバル社製ディスク式遠心分離機LAPX202にて、遠心力3000G、原料フィード量100L/hrの条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0049】
〔実施例4〕
分散液の固形分を19.9%に調製し、分級条件を、遠心力4200Gに変更したこと以外は、上記実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0050】
〔実施例5〕
〈種粒子(1)の製造〉
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ重合器に、水性媒体としての水1450gと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてのメタクリル酸メチル250gと、分子量調整剤としてのn−オクチルメルカプタン2.5gとを仕込み、セパラブルフラスコの内容物を攪拌しながらセパラブルフラスコの内部を窒素置換し、セパラブルフラスコの内温を70℃に昇温した。さらにセパラブルフラスコの内温を70℃に保ちながら、重合開始剤としての過硫酸カリウム1.50gを水50gに溶解させた水溶液を、セパラブルフラスコ内の内容物に添加した後、12時間重合反応させた。重合後の反応液を400メッシュ(目開き32μm)の金網で濾過し、固形分としてポリメタクリル酸エチルからなる種粒子(種粒子(1)という)を14質量%含有する分散液を作製した。この分散液に含まれる種粒子(1)は、体積平均粒子径が0.41μmの真球状粒子であった。
【0051】
〈重合体粒子の製造〉
攪拌機、温度計及び還流コンデンサーを備えたセパラブルフラスコ重合器に、アニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(東邦化学株式会社製の「フォスファノール LO−529」)を純分として10g(2%/重合体粒子)添加したイオン交換水1500gを入れ、メタ(アク)リル酸エステル系単量体としてのアクリル酸ブチル(BA)350gと、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)150gと、連鎖移動剤としてのn−ドデシルメルカプタン5gと、重合開始剤としての2、2’-アゾビスイソブチロニトリル2.5gとを予め溶解して調整した単量体混合物を更に混合した。混合液中に高速分散・乳化機ホモミキサー(プライミクス株式会社製の「T.KホモミキサーMARK 2.5型」)を挿入し、8000rpmの回転数で10分間処理し乳化液を得た。この乳化液に、種粒子の製造例1で得られた種粒子(1)の分散液を、固形分(種粒子)として25.0g(分散液としては178.6g)となるように加え、30℃で2時間撹拌し、種粒子へ単量体混合物を吸収させた分散液を作製した。その後、その分散液の入ったセパラブルフラスコを加温し、内温が50℃の状態で5時間、次いで80℃の状態で3時間撹拌させながら重合反応を行い、重合体粒子分散液を得た。
【0052】
その後、得られた分散液の固形分は、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(20.0%)になるよう加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した後、20枚のディスクをセットしたアルファラバル社製ディスク式遠心分離機LAPX202にて、遠心力1700G、原料フィード量160L/hrの条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0053】
〔実施例6〕
上記実施例5の〈重合体粒子の製造〉工程における、メタ(アク)リル酸エステル系単量体としてのアクリル酸ブチル(BA)350gと、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)150gを、スチレン450gと、多官能ビニル系単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)50gにかえ、分級条件を、遠心力1800G、原料フィード量160L/hrに変更したこと以外は、上記実施例5と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0054】
〔実施例7〕
分級条件を、原料フィード量200L/hrに変更したこと以外は、上記実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0055】
〔実施例8〕
分級条件を、遠心力1000Gに変更し、原料フィード量を130L/hrに変更したこと以外は、上記実施例5と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0056】
〔実施例9〕
分級条件を、遠心力6000Gに変更したこと以外は、上記実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0057】
〔実施例10〕
実施例3と同様にして重合体粒子分散液を得た後、得られた分散液の固形分を、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(20.0%)になるようイソプロピルアルコール(IPA)によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した後、実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0058】
〔実施例11〕
実施例2と同様にして得られた重合体粒子分散液と、実施例3と同様にして得られた重合体粒子分散液とを、1対2の割合で混合し、混合して得られた分散液を、限外濾過装置を利用して濃縮し、固形分が20%付近(20.1%)になるよう加水によって微調整して、目開き45μmのメッシュ網にて濾過(粗分級)した。その後、実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0059】
〔実施例12〕
分散液の固形分を20.1%に調製し、分級条件を、遠心力5000Gに変更したこと以外は、上記実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0060】
〔比較例1〕
分級条件を、原料フィード量50L/hrに変更したこと以外は、上記実施例1と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0061】
〔比較例2〕
分級条件を、遠心力1000Gに変更したこと以外は、上記実施例3と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度、体積平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数を測定した。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0062】
〔比較例3〕
分散液の固形分が40.8%になるように調整し、分級条件を、遠心力1500Gに変更し、原料フィード量を130L/hrに変更し、係数Kが1090となる条件下で分級を行った以外は、上記実施例5と同じ条件で分級を行った。分級後の重合体粒子の平均粒子径、固形分濃度を測定した。また、重合体粒子10万個を3回測定し、平均粒子径の5倍以上の粗大重合体粒子の数をカウントした。分級前の物性を表1に、分級条件と分級後の物性を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1及び表2に示す結果から、体積平均粒子径が1μm以下で、多分散度が1.30以下である重合体粒子を含む分散液について、係数Kが1500以上となる条件下で分級を行うことで、粗大粒子を効率よくかつ精度よく除去することができることがわかる。一方、係数Kが1500未満となる条件下で分級を行った比較例1〜3においては、分級後においても粗大粒子が多く残存していることがわかる。
【0066】
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。