【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したポリオールは以下の方法により合成した。
【0043】
(合成例1)
先ず、アクリル酸ブチル99.0質量部、メタクリル酸ブチル85.5質量部、スチレン45.0質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル162.0質量部、アクリル酸13.5質量部、メタクリル酸メチル45.0質量部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン4.5質量部、イオン交換水170質量部、及び乳化重合剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「ラテムルPD−104」)25.0質量部を混合し、ミキサーを用いて攪拌して乳化させ、モノマープレエマルションを調製した。
【0044】
次に、攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器及び窒素導入管等を備えた通常のアクリル系樹脂エマルジョン製造用反応容器に、イオン交換水320質量部、乳化重合剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「ラテムルPD−104」)5.0質量部、及び重合開始剤として過硫酸アンモニウム水溶液(過硫酸アンモニウム(APS、アルドリッチ社製)1.0質量部とイオン交換水10.0質量部とを混合したもの)を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。次いで、この反応容器に、前記モノマープレエマルションのうちの5質量%を添加し、80℃で10分間保持した。その後、残りのモノマープレエマルションを上記反応容器中に3時間かけて攪拌しながら滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で1時間撹拌を継続して反応させた。その後、イオン交換水500質量部を添加し、室温まで冷却した。冷却後、50質量%ジメチルエタノールアミン水溶液33.4質量部を添加し、10分間撹拌して、水酸基を含有するアクリルエマルション(ポリアクリルポリオールエマルション)を調製した。
【0045】
<HLB値>
実施例及び比較例で使用した非イオン性界面活性剤のHLB値は下記式:
HLB値=20×親水性基部分の式量の総和/非イオン性界面活性剤の分子量
により求めた。
【0046】
(実施例1)
先ず、容器に、イオン交換水80質量部及びHLB値が13.3の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−212」)20質量部を仕込み、非イオン性界面活性剤を溶解させた後、硬化触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL、東京化成工業株式会社製)2質量部を添加して60℃で8時間攪拌し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1を調製した。なお、ジラウリン酸ジブチル錫の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
【0047】
次に、合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びイオン交換水10.5質量部を混合した。得られた水溶液に前記硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1を3.0質量部添加して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0048】
(実施例2)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.2の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−215」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−2を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−2を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0049】
(実施例3)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が12.5の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンID−206」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−3を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−3を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0050】
(実施例4)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.3の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンID−209」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−4を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−4を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0051】
(実施例5)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が14.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンEH−208」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−5を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−5を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0052】
(実施例6)
硬化触媒として2−エチルヘキサン酸ビスマスミネラルスピリット溶液(2EHBi、和光純薬工業株製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−6を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−6を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。なお、2−エチルヘキサン酸ビスマスミネラルスピリット溶液の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
【0053】
(実施例7)
硬化触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート(Zr(acac)
4、マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC−700」)4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−7を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−7を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。なお、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.1g/100ml以下であった。
【0054】
(比較例1)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が4.9の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−202」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−1を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−1を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0055】
(比較例2)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−2を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−2を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0056】
(比較例3)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0057】
(比較例4)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例6と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−4を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−4を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。
【0058】
(比較例5)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例6と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−5を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−5を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.36質量%)を調製した。
【0059】
(比較例6)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が9.0の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−205」)20質量部を用いた以外は実施例7と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−6を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−6を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。
【0060】
(比較例7)
非イオン性界面活性剤としてHLB値が16.6の非イオン性界面活性剤(日油株式会社製「ノニオンE−230」)20質量部を用いた以外は実施例7と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−7を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−7を12.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.70質量%)を調製した。
【0061】
(比較例8)
硬化触媒としてジアザビシクロウンデセンp−トルエンスルホン酸塩(DBU塩、アルドリッチ社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−8を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−8を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロウンデセンp−トルエンスルホン酸塩の20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
【0062】
(比較例9)
硬化触媒としてジアザビシクロウンデセン(DBU、東京化成工業株式会社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−9を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−9を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロウンデセンの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
【0063】
(比較例10)
硬化触媒としてジアザビシクロノネン(DBN、東京化成工業株式会社製)2質量部を用いた以外は実施例1と同様にして硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−10を調製し、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の代わりに、この硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−10を3.0質量部添加した以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。なお、ジアザビシクロノネンの20℃、大気圧条件下における水への溶解度は0.5g/100ml以上であった。
【0064】
(比較例11)
合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びアセトン10.5質量部を混合した。得られた溶液に、硬化触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(DBTL、東京化成工業株式会社製)0.06質量部を添加して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%)を調製した。
【0065】
(比較例12)
合成例1で得たポリアクリルポリオールエマルション33.0質量部、ポリイソシアネート(DIC株式会社製「バーノックDNW5500」)10.5質量部、及びイオン交換水10.5質量部を混合して水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0質量%)を調製した。
【0066】
(実施例8)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.1質量部とイオン交換水10.4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して5質量部)を調製した。
【0067】
(実施例9)
イオン交換水10.5質量部の代わりに2−プロパノール(IPA、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:83℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
【0068】
(実施例10)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−プロパノール(PrOH、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:97℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
【0069】
(実施例11)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−ブタノール(BuOH、水への溶解度(20℃):10g/100ml、沸点:118℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
【0070】
(実施例12)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
【0071】
(実施例13)
イオン交換水10.5質量部の代わりにエチレングリコールモノブチルエーテル(EGBE、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:171℃)0.2質量部とイオン交換水10.3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して10質量部)を調製した。
【0072】
(実施例14)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.4質量部とイオン交換水10.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して20質量部)を調製した。
【0073】
(実施例15)
イオン交換水10.5質量部の代わりに1−メトキシ−2−プロパノール(PGME、水への溶解度(20℃):10g/100ml以上、沸点:120℃)0.6質量部とイオン交換水9.9質量部を用いた以外は実施例1と同様にして水性塗料組成物(硬化触媒の含有量:0.10質量%、有機溶媒の含有量:樹脂分100質量部に対して30質量部)を調製した。
【0074】
<水性塗料組成物の硬化挙動>
得られた水性塗料組成物をステンレス鋼板(40mm×50mm、厚さ0.5mm)上に焼付け後の膜厚が35±5μmとなるように塗布した。具体的には、前記ステンレス鋼板を水平な台に設置し、このステンレス鋼板の対向する2辺の縁からそれぞれ5mm程度の領域に厚さ70μmの粘着テープを貼付けた。粘着テープで囲まれた領域内に、前記水性塗料組成物を適量滴下した後、刃先が直線のナイフを粘着テープ上で滑らせて前記ステンレス鋼板とナイフの刃先との隙間に水性塗料組成物を塗り込んだ。
【0075】
前記ステンレス鋼板上に前記水性塗料組成物からなる塗膜を形成してから7±1分後に、刃先角度40°のナイフエッジを取付けた直径74mmの円環状振子を装着した剛体振子型物性試験機(株式会社エー・アンド・ディ製「RPT−5000型」を用いて、室温(25℃)から焼付温度(70℃、100℃、又は140℃)まで昇温速度20±4℃/分で昇温し、その後、焼付温度(70℃、100℃、又は140℃)で維持する温度プログラムで、前記塗膜の相対貯蔵弾性率(Er’)を測定した。測定は、下記の変曲点から15分間以上経過するまで継続した。
【0076】
得られた相対貯蔵弾性率(Er’)の測定値を時間に対してプロットし、時間の経過に従って下に凸の曲線から上に凸の曲線に変化した点(以下、この変化した点を「変曲点」という)から15分間の部分について下記式:
Er’=A〔1−exp{k(t−t
d)}〕
(式中、Aは定数であり、kは反応速度定数を表し、tは時間を表し、t
dは反応開始時間を表す)
を当てはめ、非線形最小二乗法により反応速度定数kを求めた。その結果を表1〜表4に示す。なお、このkの値が大きいほど、硬化が進行していることを意味する。
【0077】
<水性塗料組成物の貯蔵安定性>
得られた水性塗料組成物を40℃に設定したオーブン中で8時間静置し、静置前後の水性塗料組成物の粘度を、粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製「ARES−G2レオメーター)を用いて、温度:25.0±0.1℃、剪断速度:1000s
−1、ジオメトリ:径25mmのコーンプレート及び角度0.04rad、ギャップ:50μmの条件で測定した。その結果を表1〜表4に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
表1〜表3に示したように、水への溶解度(20℃、大気圧条件下)が1g/100ml以下である疎水性硬化触媒とHLB値が10〜15である非イオン性界面活性剤とを含有するイソシアネート硬化型水性塗料組成物は、100℃における高い硬化性と40℃における高い貯蔵安定性とが両立していることが確認された(実施例1〜7)。これは、40℃では、前記疎水性硬化触媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに取り込まれて保護され、触媒機能が発現しなかったのに対して、100℃では、ミセルが崩壊して前記疎水性硬化触媒が解放され、触媒機能が発現した(スイッチ性が発現した)ためと考えられる。
【0083】
一方、非イオン性界面活性剤のHLB値が9以下になると、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例1〜2、4、6)。これは、疎水性硬化触媒がミセルに取り込まれず、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。また、非イオン性界面活性剤のHLB値が16.6になると、100℃における硬化性が低下することがわかった(比較例3、5、7)。これは、温度が100℃になっても、疎水性硬化触媒がミセルから放出されず、触媒機能が発現しなかったためと考えられる。
【0084】
また、アミン系硬化触媒を用いた場合にも、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例8〜10)。これは、アミン系硬化触媒が、水への溶解性が高いものであることから、ミセル中だけでなく、水溶媒中にも分配され、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。
【0085】
さらに、界面活性剤を使用しなかった場合にも、40℃における貯蔵安定性が低下することがわかった(比較例11)。これは、界面活性剤が存在しないことから、ミセルが形成されず、スイッチ性が発現しなかったためと考えられる。
【0086】
また、硬化触媒及び界面活性剤の両者を含まない場合には、40℃における貯蔵安定性は確保されるものの、100℃における硬化性が低く、実施例1で得られた水性塗料組成物の100℃における硬化性と同等の硬化性を得るためには、140℃で焼付ける必要があることがわかった(比較例12)。
【0087】
さらに、表4に示したように、水への溶解度(20℃)が10g/100ml以上かつ沸点が50〜200℃の有機溶媒を含有するイソシアネート硬化型水性塗料組成物においても、100℃における高い硬化性と40℃における高い貯蔵安定性とが両立していることが確認された(実施例8〜15)。これは、高親水性の前記有機溶媒が前記非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに取り込まれにくいため、前記疎水性硬化触媒がミセルから放出されることなく、ミセル内で安定に保護されたためと考えられる。
【0088】
<硬化触媒含有界面活性剤水溶液のNMR測定>
実施例1で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1及び比較例3で調製した硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3について
1H−NMRスペクトルを測定した。具体的には、硬化触媒含有界面活性剤水溶液を通常測定用のNMR試料管(直径:5mm)に入れ、フーリエ変換核磁気共鳴(NMR)装置(日本電子株式会社製「JNM−ECA500」)を用いて、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1については室温から90℃の温度範囲で、硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3については50℃で、
1H−NMRスペクトルを測定した。その結果を
図1及び
図2に示す。
【0089】
図1に示したように、硬化触媒含有界面活性剤水溶液S−1の
1H−NMRスペクトルにおいて、DBTL由来のピークは、室温から40℃までの温度では不明瞭なものであったが、温度が50℃以上になると明瞭になることがわかった。この結果は、室温から40℃までの温度では、DBTLが非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包されて保護され、分子運動が抑制されていたのに対して、温度が50℃以上になると、ミセルが崩壊してDBTLの保護が解放され、DBTLの分子運動が活発になったことを示している。したがって、HLB値が所定の範囲にある非イオン性界面活性剤を含有する本発明の水性塗料組成物においては、40℃以下の温度では、非イオン性界面活性剤により硬化触媒の分子運動が抑制され、ポリオール及びポリイソシアネートと硬化触媒との接触が抑制されるため、硬化反応が進行しないのに対して、50℃以上の温度では、硬化触媒が、非イオン性界面活性剤による保護から解放されて分子運動が活発となり、ポリオール及びポリイソシアネートと接触して活性化するため、100℃においても硬化反応が進行すると考えられる。
【0090】
一方、
図2に示したように、硬化触媒含有界面活性剤水溶液CS−3の
1H−NMRスペクトルにおいて、DBTL由来のピークは、温度が50℃であっても不明瞭なものであった。この結果は、温度が50℃になっても、非イオン性界面活性剤により形成されたミセルに内包されたDBTLの保護が解放されず、分子運動が抑制されていることを示している。したがって、HLB値が所定の値より大きい非イオン性界面活性剤を含有する水性塗料組成物においては、温度が50℃になっても、硬化触媒が非イオン性界面活性剤による保護から解放されず、分子運動が抑制され、ポリオール及びポリイソシアネートと硬化触媒との接触が抑制されるため、硬化反応が進行しないと考えられる。