(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判別部は、前記複数の物理量測定部によりそれぞれ測定された複数の物理量データの統計値を算出すると共に、前記統計値に基づいて更新用基準比較関係を算出し、予め定められた前記第1基準比較関係を、前記更新用基準比較関係に更新する第4の機能を更に有する、請求項4〜7のいずれか1項に記載の射出成形機の集中管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[射出成形機の管理システム]
射出成形機の管理システムの一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、射出成形機の管理システムの一実施形態の概要を示す図である。
図2は、管理部の一実施形態を示すブロック図である。
図1に示すように、射出成形機の管理システムは、射出成形機1と、射出成形機1を管理する管理部100と、を備える。
【0012】
射出成形機1は、大別して、固定金型21及び可動金型22からなる金型部2と、固定金型21及び可動金型22の型締めを行う型締機構部3と、固定金型21と可動金型22との間の図示しないキャビティ内に成形材料を射出する射出機構部4と、を有する。
【0013】
型締機構部3はトグル式の型締機構部である。この型締機構部3において、固定プラテン31とリアプラテン32が複数のダイバー34によって連結されている。固定プラテン31とリアプラテン32との間には可動プラテン33が配置されている。可動プラテン33は、ダイバー34に沿って移動可能であり、固定プラテン31に対して前後進するように設けられている。固定プラテン31には、固定金型21が取り付けられている。可動プラテン33には、可動金型22が取り付けられている。可動プラテン33には、可動金型22から成形品を突き出すためのエジェクタ装置35が設けられている。
【0014】
リアプラテン32と可動プラテン33との間には、可動プラテン33を前後進させるためのトグル機構36が設けられている。トグル機構36は、クロスヘッド361と、上クロスヘッドリンク362aと、下クロスヘッドリンク362bと、上前方トグルリンク363aと、下前方トグルリンク363bと、上後方トグルリンク364aと、下後方トグルリンク364bとで構成されている。なお、トグル機構36は、型締機構部3に左右(
図1における紙面垂直方向)対称に設けられる。このため、各部位は型締機構部3にそれぞれ2つずつ設けられている。
【0015】
クロスヘッド361は、リアプラテン32に回転可能で軸方向(
図1の左右方向)に移動不能に取り付けられたボールネジ365と螺合している。ボールネジ365にはプーリ365aが取り付けられ、型締用モータ366の出力軸に架け渡されたベルト366aを介して型締用モータ366から駆動力が伝達されるようになっている。クロスヘッド361は、ボールネジ365の回転により、ボールネジ365の軸方向に沿って前後進する。
【0016】
上クロスヘッドリンク362aの下端部は、クロスヘッド361の上端部に軸着されることにより回動可能に連結されている。下クロスヘッドリンク362bの上端部は、クロスヘッド361の下端部に軸着されることにより回動可能に連結されている。上クロスヘッドリンク362aの上端部は、上後方トグルリンク364aに軸着されることにより回動可能に連結されている。下クロスヘッドリンク362bの下端部は、下後方トグルリンク364bに軸着されることにより回動可能に連結されている。
【0017】
上前方トグルリンク363a、下前方トグルリンク363b、上後方トグルリンク364a及び下後方トグルリンク364bは、リアプラテン32と可動プラテン33との間に亘って配設されている。上前方トグルリンク363aの後端部と上後方トグルリンク364aの前端部、及び下前方トグルリンク363bの後端部と下後方トグルリンク364bの前端部は、それぞれ中央ブッシュ367を介して回動可能に連結されている。上前方トグルリンク363aの前端部及び下前方トグルリンク363bの前端部は、それぞれ前方ブッシュ368を介して可動プラテン33に回動可能に連結されている。上後方トグルリンク364aの後端部及び下後方トグルリンク364bの後端部は、それぞれ後方ブッシュ369を介してリアプラテン32に回動可能に連結されている。
【0018】
上クロスヘッドリンク362aの上端部は、上後方トグルリンク364aにおける中央ブッシュ367と後方ブッシュ369との間に軸着されることにより回動可能に連結されている。また、下クロスヘッドリンク362bの下端部は、下後方トグルリンク364bにおける中央ブッシュ367と後方ブッシュ369との間に軸着されることにより回動可能に連結されている。
【0019】
従って、クロスヘッド361がボールネジ365の軸方向に沿って前進(
図1の右方向に移動)すると、上後方トグルリンク364a及び下後方トグルリンク364bが、上クロスヘッドリンク362a及び下クロスヘッドリンク362bに押されて、後方ブッシュ369を中心にして上方及び下方にそれぞれ回動する。これにより、上後方トグルリンク364a及び下後方トグルリンク364bは、上前方トグルリンク363a及び下前方トグルリンク363bと略一直線状となる。その結果、可動プラテン33が固定プラテン31に向けて前進し、
図1に示すように、金型部2が型締めされる。
【0020】
一方、クロスヘッド361がボールネジ365の軸方向に沿って後進(
図1の左方向に移動)すると、上後方トグルリンク364a及び下後方トグルリンク364bが、上クロスヘッドリンク362a及び下クロスヘッドリンク362bに引っ張られて、それぞれ後方ブッシュ369を中心にして下方及び上方に回動する。これにより、上前方トグルリンク363aと上後方トグルリンク364a及び下前方トグルリンク363b及び下後方トグルリンク364bは、それぞれ中央ブッシュ367を中心にして内側に折れ曲がる。その結果、可動プラテン33が固定プラテン31から離れるように後進し、金型部2が型開きされる。
【0021】
射出機構部4には、台座41上における型締機構部3に近い側の端部に、射出シリンダ42が載置されている。射出シリンダ42内には射出スクリュ421が挿通されている。射出スクリュ421は、射出スクリュ回転用モータ422により、プーリ、ベルト等で構成される伝動機構423を介して回転する。射出シリンダ42には、射出シリンダ42内に成形材料を供給するためのホッパ424が取り付けられている。
【0022】
射出スクリュ421の端部は、射出ボールねじハウジング部43に回転可能に取り付けられている。射出ボールねじハウジング部43には、射出スクリュ421と反対側に向けて射出ボールねじ431が回転可能に突設されている。射出ボールねじ431は、台座41上における型締機構部3から遠い側の端部に設けられたナット部44に螺合しており、射出用モータ432により、プーリ、ベルト等で構成される伝動手段433を介して回転することにより、射出ボールねじハウジング部43を、射出軸ガイド部434に沿ってスライド移動させる。この射出ボールねじハウジング部43のスライド移動により、射出スクリュ421は射出シリンダ42内を型締機構部3に向けて直線移動する。なお、射出ボーねじハウジング部43のスライド移動の構造は、同一構造の射出ボールねじ431を並列配置させた二軸式の構造であってもよい。
【0023】
台座41の下側には、ノズルタッチ機構45が配設されている。ノズルタッチ機構45は、台座41を型締機構部3に対して接離移動させることによって、射出シリンダ42のノズル部425を固定プラテン31に対して当接又は離隔させる。
【0024】
このような射出成形機1において、例えば、型締機構部3のトグル機構36を構成する各リンクは、金型部2の開閉のために頻繁に回動動作する可動部位である。その他、射出機構部4の射出ボールねじ431とナット部44との螺合部位も可動部位のうちの一つである。射出成形機1におけるこれらの可動部位を含む各可動部位は、油脂不足、異常摩耗、歪み、振動等の異常状態を監視することが望まれる部位である。
【0025】
図2に示すように、管理部100は、物理量測定部101と、判別部102と、警報部103と、を有する。
図1中の管理部100は、射出成形機1の近傍に配置されるように示されているが、特に制限はない。管理部100は、射出成形機1の動作を制御する図示しない制御装置に設けられていてもよい。
【0026】
物理量測定部101は、
図1には示されていないが、射出成形機1上の測定点に取り付けられることにより、当該測定点における物理量を測定する。具体的な物理量測定部101は、測定すべき物理量に応じて適宜決定される。例えば、物理量として温度を測定する場合は温度センサが用いられる。物理量として歪み量を測定する場合は歪みセンサが用いられる。また、物理量として振動量を測定する場合は振動センサが用いられる。
【0027】
管理部100は複数の物理量測定部101を有する。複数の物理量測定部101は、射出成形機1が有する上述の複数の可動部位を測定点として、各可動部位にそれぞれ取り付けられる。物理量測定部101は、可動部位の物理量を測定可能であれば、可動部位に直接取り付けられてもよいし、可動部位の近傍の部位に取り付けられてもよい。各物理量測定部101で測定された物理量データは、判別部102に入力される。
【0028】
本実施形態の判別部102は、複数の物理量測定部101によりそれぞれ測定された物理量データに基づいて、複数の可動部位間の物理量データの比較関係が予め定めた関係状態から外れたか否かを判別する。判別部102は、比較関係算出部104と、判定部105とを有する。
【0029】
比較関係算出部104は、複数の物理量測定部101から入力された物理量データから、各可動部位間の物理量データの関係状態を示す比較関係を算出する。「比較関係」とは、物理量データ相互間の大小(高低)の関係である。この物理量データの比較関係は、物理量の測定対象である複数の可動部位の状態(温度、歪み、振動等)のバランスを表すものである。例えば、複数の可動部位がいずれも正常状態であるときに、物理量としての温度が全て同一温度である場合、物理量データの比較関係の状態は全て同一温度の状態となる。比較関係は、各可動部位の物理量データの絶対値ではなく、バランスを示すため、例えば、外部環境の変化や成形条件の変更による温度上昇により全ての可動部位の温度が上昇しても、比較関係の状態のバランスが崩れることはない。しかし、複数の可動部位のうちのいずれか一つの可動部位に油脂不足や異常摩耗等の異常状態が発生することにより温度が上昇すると、物理量データの比較関係は、異常状態が発生した可動部位の物理量データのみが上昇し、同一温度の正常状態に対してバランスが崩れることになる。
【0030】
このような物理量データの比較関係は、例えば次のようにして求めることができる。射出機構部4で射出ボールねじ431を並列配置させた二軸式の構造の場合、まず、各々の射出ボールねじ(ここで、一方の射出ボールねじを431Aとし、他方の射出ボールねじを431Bとする。)の給脂部の温度を測定する。機械稼働時の一方の射出ボールねじ431Aの温度が40℃、他方の射出ボールねじ431Bの温度が42℃の場合、比較関係は「42−40=2」となる。求められた比較関係のデータは、判定部105に出力される。
【0031】
判定部105は、比較関係算出部104から入力された比較関係のデータを、予め定められた基準比較関係のデータと比較し、比較関係算出部104で求められた比較関係が基準比較関係から外れたか否かを判断する。「基準比較関係」とは、物理量の測定対象である複数の可動部位が正常状態にあるときの各可動部位の物理量データの理想的な比較関係を表すものである。基準比較関係のデータは、判別部102b内に既定値として予め記憶される。判定部105は、比較関係のデータと基準比較関係のデータとを比較した結果、比較関係が基準比較関係から外れていると判断した場合に、その旨の信号を警報部103に出力する。
【0032】
比較関係が基準比較関係から外れているか否かの判断は、例えば、比較関係と基準比較関係の両データの差分値が所定の閾値の範囲内に収まっているか否かを判断することによって行うことができる。例えば、測定される物理量が温度である場合、求められた比較関係と基準比較関係との差が「0」(温度が等しい場合)を基準として、測定誤差等の所定の閾値、例えば「±5」(±5℃)、を考慮した範囲内に収まっているか否かを判断することによって、比較関係が基準比較関係から外れているか否かを判断することができる。
【0033】
また、判定部105は、測定された比較関係が基準比較関係から外れていると判断した場合に、比較関係算出部104で求められた比較関係のデータに基づいて、複数の可動部位のうちの状態のバランスが崩れている異常可動部位を特定することができる。例えば、上記の比較関係の例の場合では、温度が高い方の可動部位で異常摩耗等の異常が生じている可能性がある。また、例えばA、B、Cの3カ所の可動部位の測定点で比較関係を監視していた場合、測定点の比較関係の組み合わせは、AB、BC、CAの3通りが存在する。その中でBCの測定点の比較関係のみが正常であった場合に、測定点Aに対応する可動部位に状態のバランスが崩れていること、即ち異常があること、を判断することができる。特定された異常可動部位の情報は、警報部103に出力される。
【0034】
警報部103は、判別部102により異常状態が判別された場合、射出成形機1が異常状態であることをオペレータに報知する。また、これと同時に、判別部102から出力される異常可動部位の情報もオペレータに報知することができる。具体的な報知手段の例としては、液晶モニタ等への画面表示、音声表示が挙げられる。
【0035】
次に、本実施形態の射出成形機の管理システムによる具体的な制御について、
図3を用いて説明する。
図3は、射出成形機の管理システムによる制御の一例を示すフローチャートである。
複数の物理量測定部101による複数の可動部位からの物理量データの取得は、射出成形機1の稼働中に、予め定められた所定の制御周期で繰り返し実行される。管理部100は、所定の制御周期が来ると、射出成形機1の複数の可動部位にそれぞれ設けられた物理量測定部101から、それぞれ物理量データを取得する(STEP1)。
【0036】
次いで、判別部102の比較関係算出部104において、取得された各物理量データから比較関係が算出される。算出された比較関係のデータは、判定部105に出力される(STEP2)。判定部105は、比較関係算出部104で算出された比較関係のデータを、予め定められた基準比較関係のデータと比較し、比較関係が基準比較関係から外れているか否かを判断する(STEP3)。
【0037】
判定部105における比較の結果、比較関係が基準比較関係から外れていないと判断された場合(STEP3においてNoの場合)はリターンし、次の制御周期が来たらSTEP1からの処理を繰り返す。一方、比較の結果、比較関係が基準比較関係から外れていると判断された場合(STEP3においてYesの場合)、判定部105は、比較関係算出部104で算出された比較関係のデータに基づいて、複数の可動部位のうちの状態のバランスが崩れている異常可動部位を特定する(STEP4)。
【0038】
判定部105において異常可動部位が特定された後、判別部102は、その異常可動部位の情報と共に警報部103に信号出力する。これにより、警報部103は、射出成形機1に異常可動部位が発生していることを示す警報を発し、その異常可動部位の情報と共にオペレータに射出成形機1の異常を報知する(STEP5)。
【0039】
警報の発令により、オペレータは、射出成形機1の異常可動部位の状態を確認することができる。異常可動部位の状態が、オペレータにより単純な油脂不足であると判断された場合は、オペレータにより給脂が行われる。警報の発令の後、処理はリターンするが、オペレータにより、異常可動部位の状態が単純な油脂不足ではなく、異常摩耗等の異常状態であると判断された場合は、射出成形機1の稼働はオペレータにより停止され、部品交換等が行われる。また、管理部100は、警報の発令と同時に、射出成形機1の稼働を自動的に停止してもよい。
【0040】
以下、射出成形機1における可動部位の異常検出の具体例を示す。
(具体例1)
・測定部:型締機構部3
・物理量測定部:温度センサ
・測定物理量:温度
・測定点(可動部位):トグル機構36におけるリンク連結部の給脂点
測定点A:それぞれ左右の上クロスヘッドリンク362a及び下クロスヘッドリンク362bの合計4カ所
測定点B:それぞれ上下左右の前方ブッシュ368の合計4カ所
測定点C:それぞれ上下左右の中央ブッシュ367の合計4カ所
測定点D:それぞれ上下左右の後方ブッシュ369の合計4カ所
・正常時の測定点の比較関係の定義
測定点Aの4カ所の可動部位は、正常時は全て同一温度を示す。
測定点Bの4カ所の可動部位は、正常時は全て同一温度を示す。
測定点Cの4カ所の可動部位は、正常時は全て同一温度を示す。
測定点Dの4カ所の可動部位は、正常時は全て同一温度を示す。
【0041】
測定点である各リンク連結部が正常に動作している間は、測定点A〜測定点Dのそれぞれは、同一温度という比較関係を保っている。この場合、外部環境の変化や高負荷成形による射出成形機1の温度上昇によって各リンク連結部の温度も上昇するが、その温度上昇は各リンク連結部で一様であるため、測定点A〜測定点Dはそれぞれ同一温度であるという比較関係は変化しない。このため、外部環境や高負荷成形による温度変化があっても、管理部100が異常判定するおそれはない。
【0042】
一方、いずれかのリンク連結部において温度上昇が大きくなった場合、測定点A〜測定点Dの比較関係が、所定の閾値を超えて予め定められた基準比較関係から外れる。この場合、管理部100は、給脂エラーや異常摩耗等の異常状態が発生していることを判別し、判定部105で特定された異常可動部位の情報と共に、警報部103によってオペレータに報知する。
なお、測定点B,C,D間における比較関係は、各測定点の負荷、速度、移動量等の差から理論的に算出するようにしてもよい。
【0043】
(具体例2)
・測定部:二軸式の射出機構部4
・物理量測定部:温度センサ
・測定物理量:温度
・測定点(可動部位):二軸式の射出シリンダ42における各射出ボールねじ431とナット部44との螺合部位の給脂点
・正常時の測定点の比較関係の定義
二軸式の射出シリンダ42の場合、2本の射出ボールねじ431は同じ仕様であり、各射出ボールねじ431の温度は同一温度を示す。
【0044】
測定点である各射出ボールねじ431とナット部44との螺合部位が正常に動作している間は、各螺合部位は同一温度という比較関係を保っている。この場合、外部環境の変化や高負荷成形による射出成形機1の温度上昇によって各螺合部位の温度も上昇するが、その温度上昇は各螺合部位で一様であるため、螺合部位間は同一温度であるという比較関係は変化しない。このため、外部環境や高負荷成形による温度変化があっても、管理部100が異常判定するおそれはない。
【0045】
一方、いずれかの螺合部位において温度上昇が大きくなった場合、螺合部位間の比較関係が、所定の閾値を超えて予め定められた基準比較関係から外れる。この場合、管理部100は、給脂エラーや異常摩耗等の異常状態が発生していることを判別し、判定部105で特定された異常可動部位の情報と共に、警報部103によってオペレータに報知する。
【0046】
(具体例3)
・測定部:型締機構部3
・物理量測定部:歪みセンサ
・測定物理量:歪み
・測定点(可動部位):トグル機構36におけるリンク中央部
測定点E:それぞれ左右の上前方トグルリンク363aの合計2カ所
測定点F: それぞれ左右の下前方トグルリンク363bの合計2カ所
測定点G:それぞれ左右の上後方トグルリンク364aの合計2カ所
測定点H:それぞれ左右の下後方トグルリンク364bの合計2カ所
・正常時の測定点の比較関係の定義
測定点Eの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一歪み量を示す。
測定点Fの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一歪み量を示す。
測定点Gの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一歪み量を示す。
測定点Hの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一歪み量を示す。
【0047】
測定点である各リンク中央部が正常に動作している間は、各リンク中央部は同一歪み量であるという比較関係を保っている。この場合、外部環境の変化や高負荷成形による射出成形機1の温度上昇によって各リンク中央部の歪み量も変化するが、その変化は各リンク中央部で一様であるため、各リンク中央部間は同一歪み量であるという比較関係は変化しない。このため、外部環境や高負荷成形による温度変化により歪み量の変化があっても、管理部100が異常判定するおそれはない。
【0048】
一方、いずれかのリンク中央部において歪み量が大きくなった場合、リンク中央部間の比較関係が、所定の閾値を超えて予め定められた基準比較関係から外れる。この場合、管理部100は、給脂エラーや異常摩耗等の異常状態が発生していることを判別し、判定部105で特定された異常可動部位の情報と共に、警報部103によってオペレータに報知する。
【0049】
なお、トグル機構36の上部と下部(上前方トグルリンク363aと下前方トグルリンク363b、上後方トグルリンク364aと下後方トグルリンク364b)とを比較した場合、重力方向の力が上部と下部とでは同じリンク形状に対して逆に働くため、それを考慮した歪み量の比較関係を計算した基準比較関係を設定するようにしてもよい。
また、上記以外にも、測定点E,F,G,H間における比較関係は、各測定点の負荷、速度、移動量等の差から理論的に算出するようしてもよい。
【0050】
(具体例4)
・測定部:型締機構部3
・物理量測定部:振動センサ
・測定物理量:振動
・測定点(可動部位):トグル機構36におけるリンク中央部
測定点E:それぞれ左右の上前方トグルリンク363aの合計2カ所
測定点F: それぞれ左右の下前方トグルリンク363bの合計2カ所
測定点G:それぞれ左右の上後方トグルリンク364aの合計2カ所
測定点H:それぞれ左右の下後方トグルリンク364bの合計2カ所
・正常時の測定点の比較関係の定義
測定点Eの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一振動量を示す。
測定点Fの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一振動量を示す。
測定点Gの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一振動量を示す。
測定点Hの2カ所の可動部位は、正常時は全て同一振動量を示す。
【0051】
測定点である各リンク中央部が正常に動作している間は、各リンク中央部は同一振動量であるという比較関係を保っている。この場合、射出成形機1による成形条件に応じて各リンク中央部の振動量も変化するが、その変化は各リンク中央部で一様であるため、各リンク中央部間は同一振動量であるという比較関係は変化しない。このため、成形条件の変更により振動量の変化があっても、管理部100が異常判定するおそれはない。
【0052】
一方、いずれかのリンク中央部において振動量が大きくなった場合、リンク中央部間の比較関係が、所定の閾値を超えて予め定められた基準比較関係から外れる。この場合、管理部100は、給脂エラーや異常摩耗等の異常状態が発生していることを判別し、判定部105で特定された異常可動部位の情報と共に、警報部103によってオペレータに報知する。
【0053】
以上のように、本実施形態の射出成形機の管理システムは、射出成形機1の複数の可動部位間の物理量データの比較関係が、予め定められた基準比較関係から外れたか否かを判別するので、外部環境の変化や成形条件の変更等の影響を受けることなく、射出成形機1の可動部位における異常状態を正確に判別することができる。
【0054】
[射出成形機の集中管理システム]
次に、射出成形機の集中管理システムの一実施形態について
図4を参照して詳細に説明する。
図4は、射出成形機の集中管理システムの一実施形態を示すブロック図である。
本実施形態の射出成形機の集中管理システムは、
図1に示す射出成形機1を複数台用いて成形を行う場合に、各射出成形機1の異常状態の判別を行うものである。
【0055】
図4に示すように、本実施形態の射出成形機の集中管理システムは、複数の射出成形機1A、1B、1Cと、複数の射出成形機1A、1B、1Cを一括管理する一つの集中管理部200と、を備える。ここで、射出成形機1A、1B、1Cのそれぞれの構成は、
図1に示した射出成形機1の構成と同一であるため、それらの詳細な説明は上記説明を援用し、本実施形態の説明では省略する。なお、本実施形態の3台の射出成形機1A、1B、1Cは、同一の成形を行う同一機種の射出成形機である。但し、本実施形態において、射出成形機1は複数台であればよく、3台に限定されない。
【0056】
集中管理部200は、物理量測定部201と、判別部202と、警報部203とを有する。
図4に示す集中管理部200の配置も、上述した射出成形機の管理システムにおける管理部100と同様に、特に制限はない。
【0057】
物理量測定部201は、上述した射出成形機の管理システムにおける物理量測定部101と同一のものであり、射出成形機1A、1B、1Cのそれぞれの複数の可動部位に対応して複数個ずつ設けられている。
図4では、射出成形機1A、1B、1Cのそれぞれの物理量測定部201で測定されて判別部202に入力される物理量データを、白抜き矢印で模式的に示している。従って、射出成形機1A、1B、1Cから判別部202にそれぞれ入力される物理量データは、上述した射出成形機の管理システムの場合と同様に、射出成形機1A、1B、1Cにそれぞれ設けられた複数の物理量測定部201で測定された複数の物理量データである。
【0058】
本実施形態の判別部202は、複数の比較関係算出部204と、一つの総合判定部205とを有する。
比較関係算出部204は、3台の射出成形機1A、1B、1Cに1対1に対応して設けられている。各比較関係算出部204は、上述した射出成形機の管理システムにおける比較関係算出部104と同一の機能を有する。即ち、射出成形機1A、1B、1Cのそれぞれの複数の物理量測定部201から入力された物理量データから、射出成形機1A、1B、1C毎の可動部位間の物理量データの関係状態を示す比較関係(以下、第1比較関係という。)を算出する。「第1比較関係」とは、上述した「比較関係」と同じく、物理量データ相互間の大小(高低)の関係であり、物理量の測定対象である複数の可動部位の状態(温度、歪み、振動等)のバランスを表すものである。
【0059】
各比較関係算出部204は、求めた第1比較関係のデータを、共通の総合判定部205にそれぞれ出力する。また、本実施形態の各比較関係算出部204は、第1比較関係のデータに加えて、物理量測定部201から入力された物理量データ自体も総合判定部205にそれぞれ出力するようになっている。
【0060】
総合判定部205は、各比較関係算出部204から入力された第1比較関係のデータ及び物理量データに基づいて、射出成形機1A、1B、1Cの異常の有無を総合的に判別する。総合判定部205は、第1判定部206と、第2判定部207と、更新部208と、を有する
【0061】
第1判定部206は、3つの比較関係算出部204からそれぞれ入力された第1比較関係のデータを、第1判定部206に予め定められた基準比較関係(以下、第1基準比較関係という。)のデータとそれぞれ比較し、射出成形機1A、1B、1C毎に、第1比較関係が第1基準比較関係から外れているか否かを判断する機能を有する。「第1基準比較関係」は、上述の「基準比較関係」と同じく、物理量の測定対象である複数の可動部位が正常状態にあるときの各可動部位の物理量データの理想的な関係状態を表すものである。従って、この第1判定部206の第1の機能による判断は、射出成形機1A、1B、1C毎に、上述した射出成形機の管理システムの場合と同様にして行われる。このような第1判定部206における機能は、判別部202の第1の機能である。
【0062】
また、第1判定部206は、射出成形機1A、1B、1C毎に第1比較関係と第1基準比較関係とを比較した結果、第1比較関係が第1基準比較関係から外れているものがあると判断した場合に、複数の射出成形機1A、1B、1C間の複数の第1比較関係のデータ同士を相互に比較し、第1比較関係相互間にバランスが崩れた比較関係があるか否かを判断する機能を有する。このような第1判定部206における機能は、判別部202の第2の機能である。
【0063】
例えば、射出成形機1A、1B、1C毎の型締機構部3の中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368から測定される物理量データとしての温度及びその温度から算出される第1比較関係が、以下の表1に示す温度及び関係状態である場合、射出成形機1A、1B、1C毎に観察すると、いずれの第1比較関係も正常状態に対してバランスを崩した状態であり、第1基準比較関係との比較関係の正常範囲(2〜8℃)から外れている。しかし、第1比較関係のデータ同士を比較すると、3台の射出成形機1A、1B、1Cはほぼ同一の値を示しており、全ての射出成形機1A、1B、1Cの第1比較関係が同様のバランスを有している(第1比較関係はバランスを崩していない)ことがわかる。このような場合は、射出成形機1A、1B、1C固有の状態変化ではなく、例えば、室温変化や、射出成形機1A、1B、1Cに共通の温調媒体を使用する温調システム側のトラブル等による変化に起因するものであると想定される。
【0065】
第1比較関係相互がバランスを崩しているか否かは、複数の射出成形機1A、1B、1C間の複数の第1比較関係相互の関係状態を示す比較関係(以下、第2比較関係という。)を求め、その第2比較関係のデータを、第1判定部206に予め定められた基準比較関係(以下、第2基準比較関係という。)のデータと比較することによって判断することができる。「第2比較関係」は、第1比較関係のデータ相互間の大小(高低)の関係であり、第1比較関係のバランスを表すものである。また、「第2基準比較関係」は、射出成形機1A、1B、1Cが正常状態にあるときの射出成形機1A、1B、1C間の第1比較関係のデータの理想的な関係状態を表すものである。従って、第2比較関係が第2基準比較関係から外れる場合は、第1比較関係相互がバランスを崩している(異常状態である)と判断され、第2比較関係が第2基準比較関係から外れていない場合は、第1比較関係相互はバランスを崩していない(異常状態ではない)と判断される。
【0066】
その結果、第2比較関係が第2基準比較関係から外れておらず、第1比較関係相互は一定のバランスを保っている関係状態にある場合は、射出成形機1A、1B、1C自体の異常状態ではないと判断でき、オペレータによる確認や給脂等の作業を不要又は簡略化することができる。
【0067】
第1判定部206において、第2比較関係が第2基準比較関係から外れているか否かの判断も、例えば、第2比較関係と第2基準比較関係の両データの差分値が所定の閾値の範囲内に収まっているか否かを判断することによって行うことができる。即ち、求められた第2比較関係と第2基準比較関係との差が「0」(温度が等しい場合)を基準として、測定誤差等の所定の閾値、例えば「±5」(±5℃)、を考慮した範囲内に収まっているか否かを判断することによって、第2比較関係が第2基準比較関係から外れているか否かを判断することができる。
【0068】
第2判定部207は、各比較関係算出部204からそれぞれ入力された物理量データから、射出成形機1A、1B、1Cにおける同一の可動部位間の物理量データの関係状態を示す比較関係(以下、第3比較関係という。)を求め、その第3比較関係のデータを、第2判定部207に予め定められた基準比較関係(以下、第3基準比較関係という。)のデータと比較し、第3比較関係が第3基準比較関係から外れたか否かを判断する機能を有する。「第3比較関係」は、射出成形機1A、1B、1Cにおける同一の可動部位間の物理量データ相互間の大小(高低)の関係であり、物理量データのバランスを表すものである。また、「第3基準比較関係」は、射出成形機1A、1B、1Cが正常状態にあるときの射出成形機1A、1B、1Cにおける同一の可動部位間の物理量データ相互間の理想的な関係状態を表すものである。このような第2判定部207における機能は、判別部202の第3の機能である。
【0069】
総合判定部205は、この第2判定部207において、3台の射出成形機1A、1B、1C間の第3比較関係を第3基準比較関係と比較することで、第1判定部206による射出成形機1A、1B、1C毎の第1比較関係の監視では検出できないような特定の射出成形機の可動部位の異常状態の判別を行う。
【0070】
例えば、射出成形機1A、1B、1C毎の型締機構部3の可動部位である中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368から測定される物理量データとしての温度及びその温度から算出される第1比較関係が、以下の表2に示す温度及び関係状態である場合、第1判定部206においては、射出成形機1A、1B、1C毎に第1比較関係を第1基準比較関係と比較した結果、いずれも正常範囲(2〜8℃)に収まっているため正常と判別される。しかし、中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368の温度を射出成形機1A、1B、1C間で比較すると、射出成形機1Aと射出成形機1Cとはほぼ等しい値を示しているものの、射出成形機1Bの温度だけが高くなってバランスを崩していることがわかる。このような場合は、射出成形機1Bの中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368に異常摩耗等の何らかの異常が発生していると想定される。
【0072】
従って、第2判定部207において、射出成形機1A、1B、1C間の中央ブッシュ367、前方ブッシュ368について、例えば中央ブッシュ相互間の差分値、前方ブッシュ相互間の差分値を第3比較関係としてそれぞれ算出することにより、射出成形機1Bの中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368が他の射出成形機1A、1Cの中央ブッシュ367及び前方ブッシュ368に比較して温度が高い関係状態にあることを判別することができる。
【0073】
第2判定部207において、第3比較関係が第3基準比較関係から外れているか否かの判断も、例えば、第3比較関係と第3基準比較関係の両データの差分値が所定の閾値の範囲内に収まっているか否かを判断することによって行うことができる。即ち、求められた第3比較関係と第3基準比較関係との差が「0」(温度が等しい場合)を基準として、測定誤差等の所定の閾値、例えば「±5」(±5℃)、を考慮した範囲内に収まっているか否かを判断することによって、第3比較関係が第3基準比較関係から外れているか否かを判断することができる。
【0074】
このような第1判定部206と第2判定部207とによる判別処理は、判別部202において順次に又は並行して行うことができる。第1判定部206又は第2判定部207により異常可動部位の存在が判別された場合は、その異常可動部位を有する射出成形機及び異常可動部位の情報が警報部203に出力される。
【0075】
警報部203は、上述した射出成形機の管理システムにおける警報部103と同様に、判別部202により異常状態が判別された場合、射出成形機1A、1B、1Cの異常状態をオペレータに報知する。また、これと同時に、判別部202から出力される異常可動部位の情報もオペレータに報知することができる。
【0076】
次に、判別部202における総合判定部205の更新部208について説明する。
図5は、更新部208の構成を示すブロック図である。
本実施形態の集中管理システムにおける判別部202は、更新部208を備えることにより、以下に説明するように、比較関係と比較する基準比較関係を算出し、算出された基準比較関係を新たな基準比較関係に更新する機能を有する。この機能は、判別部202の第4の機能である。
【0077】
具体的には、更新部208は、
図5に示すように、記憶部208aと、統計値算出部208bと、基準比較関係算出部208cと、を有する。
【0078】
記憶部208aは、各比較関係算出部204から総合判定部205に入力される物理量データを一時的に保存する。物理量データの取得は所定の制御周期で繰り返し行われるため、更新部208の記憶部208aには、同一の可動部位について、一定期間に亘って複数の物理量データが入力されて保存される。
【0079】
統計値算出部208bは、一定期間に亘って記憶部208aに入力されて保存された複数の物理量データに基づいて、物理量データの統計値を算出する。統計値は、例えば、複数の物理量データの標準偏差、最大値、最小値、平均値等により求めることができる。
【0080】
基準比較関係算出部208cは、統計値算出部208bで算出された物理量データの統計値に基づいて、射出成形機1A、1B、1C毎の可動部位間の比較関係(以下、更新用基準比較関係という。)を算出する。この基準比較関係算出部208cで算出された更新用基準比較関係のデータは、第1判定部206において第1比較関係と比較される新たな第1基準比較関係のデータとして利用される。即ち、更新部208は、基準比較関係算出部208cにおいて更新用基準比較関係が算出された後、第1判定部206に予め定められている第1基準比較関係のデータを、この更新用基準比較関係のデータに更新する。以後、第1判定部206は、更新された新たな第1基準比較関係を用いて各比較関係との比較を行う。
【0081】
統計値算出部208bで算出される物理量データの統計値は、射出成形機1A、1B、1C毎の同一の可動部位について、一定期間に亘って入力された複数の物理量データの統計値であるため、測定誤差や機械の個体差等も加味された物理量データである。このため、基準比較関係算出部208cで算出される更新用基準比較関係を新たな基準比較関係として利用することにより、測定誤差や機械の個体差等に起因する異常状態の判別誤差を低減することができ、より精度の高い異常状態の判別を行うことが可能である。
【0082】
次に、本実施形態の射出成形機の集中管理システムによる具体的な異常判別のための制御について、
図6A、
図6Bを用いて説明する。
図6A、
図6Bは、
図4に示す射出成形機の集中管理システムの制御の一例を示すフローチャートである。ここでは、第1判定部206、第2判定部207の順に処理を行うようにしている。しかし、第2判定部207、第1判定部206の順に処理を行ってもよく、また、第1判定部206による処理と第2判定部207による処理とを並行して行ってもよい。
【0083】
本実施形態においても、射出成形機1A、1B、1Cからの複数の物理量データの取得は、射出成形機1A、1B、1Cの稼働中に、予め定められた所定の制御周期で繰り返し実行される。集中管理部200は、所定の制御周期が来ると、射出成形機1A、1B、1Cのそれぞれの複数の可動部位に設けられた物理量測定部201から、それぞれ複数の物理量データを取得し、判別部202の各比較関係算出部204に入力する(STEP11)。このSTEP11において取得された物理量データは、各比較関係算出部204から総合判定部205にも入力される。
【0084】
次に、判別部202の各比較関係算出部204において、取得された各物理量データから、射出成形機1A、1B、1C毎の第1比較関係をそれぞれ算出する(STEP12)。算出された第1比較関係のデータは総合判定部205にそれぞれ出力される。
【0085】
総合判定部205において、第1判定部206は、各比較関係算出部204で算出された射出成形機1A、1B、1C毎の第1比較関係のデータを、第1判定部206に予め定められた第1基準比較関係のデータとそれぞれ比較し、第1比較関係が第1基準比較関係から外れているものがあるか否かを判断する(STEP13)。
【0086】
STEP13における比較の結果、第1比較関係が第1基準比較関係から外れているものがあると判断された場合(STEP13においてYesの場合)、次に、第1判定部206は、各比較関係算出部204で算出された射出成形機1A、1B、1C毎の複数の第1比較関係のデータに基づいて、第1比較関係相互の比較関係である第2比較関係を算出する(STEP14)。
【0087】
次に、第1判定部206は、算出された第2比較関係のデータを、第1判定部206に予め定められた第2基準比較関係のデータとそれぞれ比較し、第2比較関係が第2基準比較関係から外れているものがあるか否かを判断する(STEP15)。
【0088】
ここで、第2比較関係が第2基準比較関係から外れているものがないと判断された場合(STEP15においてNoの場合)は、処理はリターンする。また、第2比較関係が第2基準比較関係から外れているものがあると判断された場合(STEP15においてYesの場合)、第1判定部206は、第2比較関係のデータに基づいて、射出成形機1A、1B、1Cのうちの状態のバランスが崩れている可動部位(以下、異常可動部位Xという。)とその異常可動部位Xを有する射出成形機を特定する(STEP16)。
【0089】
STEP16において、異常可動部位Xとその異常可動部位Xを有する射出成形機が特定された場合、判別部202は、その異常可動部位Xと射出成形機の情報を警報部203に信号出力する(STEP17)。これにより、警報部203は、射出成形機1A、1B、1Cのいずれかに異常可動部位Xが発生していることを示す警報を発し、オペレータに射出成形機1A、1B又は1Cの異常を報知する。
【0090】
警報部203による警報の発令により、オペレータは、射出成形機1A、1B又は1Cの異常可動部位Xの状態を確認することができる。異常可動部位Xの状態が、オペレータにより単純な油脂不足であると判断された場合は、オペレータにより給脂が行われる。
【0091】
STEP17における警報の発令の後、処理はリターンするが、オペレータにより、異常可動部位Xが油脂不足ではなく、異常摩耗等の異常状態であると判断された場合は、射出成形機1A、1B又は1Cの稼働はオペレータにより停止され、部品交換等が行われる。また、集中管理部200は、STEP17における警報の発令と同時に、異常可動部位Xを含む射出成形機1A、1B又は1Cの稼働を自動的に停止してもよい。
【0092】
一方、STEP13における比較の結果、第1比較関係が第1基準比較関係から外れているものがないと判断された場合(STEP13においてNoの場合)、次に、第2判定部207は、各物理量データに基づいて、射出成形機1A、1B、1C間における同一の可動部位についての第3比較関係を算出する(STEP18)。
【0093】
次に、第2判定部207は、算出された第3比較関係のデータを、第2判定部207に予め定められた第3基準比較関係のデータとそれぞれ比較し、第3比較関係が第3基準比較関係から外れているものがあるか否かを判断する(STEP19)。
【0094】
ここで、第3比較関係が第3基準比較関係から外れているものがないと判断された場合(STEP19においてNoの場合)は、処理はリターンする。また、第3比較関係が第3基準比較関係から外れているものがあると判断された場合(STEP19においてYesの場合)、第2判定部207は、第3比較関係のデータに基づいて、射出成形機1A、1B、1Cのうちの状態のバランスが崩れている可動部位(以下、異常可動部位Yという。)とその異常可動部位Yを有する射出成形機を特定する(STEP20)。
【0095】
STEP20において、異常可動部位Yとその異常可動部位Yを有する射出成形機が特定された場合、判別部202は、その異常可動部位Yと射出成形機の情報を警報部203に信号出力する。そして、STEP17において、警報部203は、判別部202からの信号出力に基づいて、上記同様、警報を発する。
【0096】
本実施形態では、このようにして複数の射出成形機1A、1B、1Cを集中して管理することにより、各射出成形機1A、1B、1C毎については、判別部202の第1の機能により、外部環境の変化や成形条件の変更等の影響を受けることなく、それぞれの可動部位における異常状態を正確に判別することができる。
【0097】
また、射出成形機1A、1B、1Cの物理量データから求められる比較関係(第1比較関係)が、正常状態の比較関係に対してバランスを崩した状態であっても、全ての射出成形機1A、1B、1Cの比較関係のデータがそれぞれ同様にバランスを崩している場合には、判別部202の第2の機能により、射出成形機1A、1B、1C固有の状態変化ではなく、室温変化や温調システム側のトラブル等による変化によるものである(異常状態ではない)と判断することができ、オペレータによる確認や給脂等の無駄な作業を省くことができる。
【0098】
更に、射出成形機1A、1B、1C毎の物理量データから求められる比較関係が、正常状態であっても、射出成形機1A、1B、1C間の物理量データ同士を比較する判別部202の第3の機能により、特定の射出成形機の異常を判別することができ、より正確な判別を行うことが可能である。
【0099】
以上説明した射出成形機の管理システム及び射出成形機の集中管理システムの各実施形態において、物理量測定部101、201で得られる物理量データは、温度データ、振動データ、歪みデータのうちのいずれか1つであってもよいが、温度データ、振動データ、歪みデータのうちのいずれか2つ以上の異なる種類の物理量データを測定し、各物理量データの種類毎に比較関係を算出し、それぞれの比較関係毎に定められた基準比較関係と対比するようにしてもよい。
【0100】
また、射出成形機の管理システム及び射出成形機の集中管理システムの各実施形態において、物理量測定部101、201は、射出成形機1、1A、1B、1Cにおける金型部2、型締機構部3、射出機構部4のうちの1つの複数の可動部位に設けられるものに限らない。物理量測定部101、201は、金型部2、型締機構部3、射出機構部4のうちのいずれか2つ以上の複数の可動部位にそれぞれ設けられてもよい。