(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943910
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】点検工具
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20210927BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20210927BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20210927BHJP
G03B 15/02 20210101ALI20210927BHJP
【FI】
G01N21/954 A
E02D29/12 B
G03B15/00 L
G03B15/02 T
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-41690(P2019-41690)
(22)【出願日】2019年3月7日
(65)【公開番号】特開2020-144045(P2020-144045A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2019年3月7日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)山田 凱、遠藤 浩三は、公知日平成30年11月27日、28日NTT西日本グループKAIZEN推進大会2018in福岡 マリンメッセ福岡にて、及び(2)東日本電信電話株式会社は、展示日平成31年1月16日、17日第12回現場力向上フォーラム、NTT中央研修センタにて、「マンホール点検ツール「極」」について公開した
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】山田 凱
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩三
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−057602(JP,A)
【文献】
実開昭49−084022(JP,U)
【文献】
米国特許第09241616(US,B1)
【文献】
特開2017−138598(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3040447(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3034301(JP,U)
【文献】
韓国登録特許第10−1820058(KR,B1)
【文献】
特開2017−068160(JP,A)
【文献】
特開2018−113106(JP,A)
【文献】
特開2005−201750(JP,A)
【文献】
特開2015−175695(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/065777(WO,A1)
【文献】
特開平05−053065(JP,A)
【文献】
特開2018−031476(JP,A)
【文献】
特開平08−062145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − A61B 1/32
E02D 29/00
E02D 29/045 − E02D 37/00
G01N 21/84 − G01N 21/958
G02B 23/24 − G02B 23/26
G03B 15/00 − G03B 15/035
G03B 15/06 − G03B 15/16
G03B 17/56 − G03B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持棒の端部に撮像装置を備えた点検工具において、
前記支持棒の側部に固定される四角柱型の載置体と、
前記載置体の表面に固定される金属体と、
前記支持棒の側面を囲むように前記金属体に配置され、磁石の磁力によりそれぞれが脱着可能に前記金属体に装着される少なくとも4つの照明装置と、
前記載置体の側部に固定され、前記撮像装置の先端部の位置を超える位置まで伸び、前記撮像装置のマンホール底部からの高さを調整するための伸縮棒と、
前記伸縮棒の長さを縮めるために用いるコードと、
を備えることを特徴とする点検工具。
【請求項2】
前記照明装置は、
充電式電池を備えることを特徴とする請求項1に記載の点検工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンホール内を点検する点検工具の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホール内を点検する作業が実施されている。保守者は、マンホール内の貯留水を排水装置で取り出した後、自らマンホール内に直接立ち入り、デジタルカメラで撮影することで、マンホール内に配備されているクロージャ等の通信設備の状態を把握していた。
【0003】
近年、マンホール内の点検作業の効率化を図るため、非特許文献1のように、細いポールの端部に360度撮影カメラ(以下、カメラ)を装着し、当該ポールの側部に充電式ライト(以下、ライト)を取り付けた点検工具が用いられている。保守者は、地表からポールを把持してカメラをマンホール内に挿入して降下させ、充電式ライトで周囲を照らしつつ高さを変えながら撮影することで、点検作業を実施する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“管口カメラ調査”、株式会社フジヤマ、[平成31年2月26日検索]、インターネット<URL : https://www.con-fujiyama.com/business/consultant/civildesign/abi13/abi14/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記点検工具において、ライトは暗いマンホール内を照らすために必須であり、マンホール内に落下しないように粘着テープで固定される。例えば、保守者は、ポールを中心に4つのライトを4方向に1つずつ両端部を粘着テープで緩まないように巻き付けて固定する。
【0006】
一方、点検作業は一定期間内に毎日実施され、各日の点検作業を確実に行うためにはライトを必ず毎日充電する必要がある。しかし、ライトは粘着テープで固定されているため、日々の点検作業の終了後に当該粘着テープを剥がし、充電終了後の次の日に再び粘着テープで固定しなければならず、ライトの取り付け及び取り外しが面倒という課題があった。
【0007】
また、点検工具をマンホールに挿入した状態において、地表の保守者から見てカメラはライトの奥に位置するため、手前のライト本体によりカメラの位置を把握することが難しく、また、ライトの光はカメラの更に奥までは十分に届かないため、マンホール内の降下先の状況を確認することは困難である。それゆえ、カメラを降下中にマンホール内の構造物にぶつけてしまい故障するという課題もあった。一般にカメラは高価であり、交換すると不要な支出となる。また、同一の予備カメラがすぐに用意できなければ、点検作業のロスに繋がる。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、点検工具の実用性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の点検工具は、支持棒の端部に撮像装置を備えた点検工具において、前記支持棒の側部に固定される角柱型の載置体と、前記載置体の表面に固定される金属体と、磁石の磁力により前記金属体に装着される照明装置と、を備える。
【0010】
上記点検工具において、前記支持棒の側部に固定される滑り止め用の把持部を更に備える。
【0011】
上記点検工具において、前記載置体の側部に固定され、前記撮像装置の大きさよりも長く伸びる伸縮棒を更に備える。
【0012】
上記点検工具において、前記伸縮棒の長さを縮めるために用いるコードを更に備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、点検工具の実用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る点検工具の側面図である。
【
図2】
図1に示した点検工具のX−X’での断面図である。
【
図3】
図1に示した点検工具(一部)の斜視図である。
【
図4】第2の実施形態に係る点検工具の側面図である。
【
図5】
図4に示した点検工具のX−X’での断面図である。
【
図6】
図4に示した点検工具(一部)の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施する一実施の形態について図面を用いて説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る点検工具の側面図である。
図2は、
図1に示した点検工具のX−X’での断面図である。
図3は、
図1に示した点検工具(一部)の斜視図である。
【0017】
第1の実施形態に係る点検工具100は、
図1〜
図3に示すように、主として、ロングポール1と、360度撮影カメラ2と、アダプタ3と、スポンジ4と、4つのL字金物5と、4つの充電式ライト6と、グリップ7と、を備えて構成される。
【0018】
ロングポール1は、点検工具100の構成部材を支持するための細い支持棒である。
【0019】
360度撮影カメラ2は、ロングポール1の一端部に装着され、360度方位を撮影可能な撮像装置である。360度撮影カメラ2は、無線又は有線で、保守者の保持するコンピュータ端末(不図示)と通信可能であり、当該コンピュータ端末にインストールされた撮像アプリで撮影処理が指示されることで撮影を行い、撮影画像をコンピュータ端末のモニタに出力し、コンピュータ端末内のファイルに保存する。
【0020】
アダプタ3は、360度撮影カメラ2をロングポール1の一端部に回動自在に装着するための接合器具である。
【0021】
スポンジ4は、四角柱型の形状を有し、長手方向の長さが充電式ライト6と概ね同じ長さを有し、長手方向に沿って内部中心に柱状の孔を有し、当該柱状の孔においてロングポール1に挿入され、360度撮影カメラ2の位置側でロングポール1の側部に固定される充電式ライトの載置体である。点検工具100には、軽量化及び耐久性が求められるので、載置体の例としては振動にも強く成形容易なスポンジが好適である。また、2方向では光強度が足りず、8方向では充電式ライト6のコストがかかるので、4方向に対応する四角柱が好適である。勿論、プラスチック等の材質でもよいし、8角柱でもよい。
【0022】
L字金物5は、スポンジ4の表面に固定される磁性を含む金属体である。L字金物5を4つ備え、2つのL字金物5をスポンジ4の一端部の表面全体を囲うように固定し、残り2つのL字金物5をスポンジ4の他端部の表面全体を囲うように固定する。なお、スポンジ4に対するL字金物5の固定方法は、粘着テープでもよいし、接着剤でもよい。また、金属体としては、平板金物等を用いてもよい。
【0023】
充電式ライト6は、充電池を含み蛍光灯本体に接続される2つのソケット6aと、2つのソケット6aの底面にそれぞれ固定された2つのマグネット(磁石)6bと、を有し、当該2つのマグネット6bの磁力により、スポンジ4の一表面の両端にある各L字金物5にそれぞれ装着される照明装置である。充電式ライト6を4つ備え、スポンジ4の4つの表面にそれぞれ装着される。
【0024】
グリップ7は、ロングポール1の径よりも大きい径を有し、ロングポール1の他端部に固定される滑り止め用の把持部である。把持部は、保守者が点検工具100を持つための部材であり、スポンジやゴム等、様々な部材を用いて形成可能である。ロングポール1の径よりも大きい径とは、保守者が把持しやすいように、例えば、直径5cm程度が好ましい。
【0025】
次に、上記点検工具100の使用方法について説明する。
【0026】
保守者は、ロングポール1、360度撮影カメラ2、アダプタ3、スポンジ4、L字金物5、充電式ライト6、グリップ7、コンピュータ端末(不図示)を、それぞれ別々に持ち運び可能である。
【0027】
点検作業現場に到着後、保守者は、ロングポール1に、アダプタ3を用いて360度撮影カメラ2を装着するとともに、L字金物5が予め固定されたスポンジ4を挿入して固定する。その後、保守者は、4つの充電式ライト6を、底面のマグネット6bで、スポンジ4の4面でL字金物5にそれぞれ磁力で取り付ける。最後に、グリップ7をロングポール1に装着する。点検作業終了後は、その逆の手順となる。
【0028】
このように、磁力で充電式ライト6を取り付け、取り外しするので、充電式ライト6の取り付け及び取り外しを簡便に実施できる。また、グリップ7をロングポール1に装着するので、点検工具100が滑り落下を防止できる。
【0029】
以上より、本実施形態によれば、ロングポール1の端部に360度撮像カメラを備えた点検工具100において、スポンジ4をロングポール1の側部に固定し、L字金物5をスポンジ4の表面に固定し、充電式ライト6をマグネット6bの磁力によりL字金物5に取り付けるので、充電式ライトの取り付け及び取り外しの負担を軽減できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、滑り止め用のグリップ7をロングポール1の端部に固定したので、細いロングポール1を握り易くなり、点検工具100が滑り落下する状況を回避できる。
【0031】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、充電式ライトの取り付けの容易性を確保すること、滑りによる落下から点検工具を保護することを目的とした場合について説明した。第2の実施形態では、点検工具のうち特に高価な360度撮影カメラを保護しつつ、点検に適切な高さで撮像できるようにすることを目的とする。
【0032】
図4は、第2の実施形態に係る点検工具の側面図である。
図5は、
図4に示した点検工具のX−X’での断面図である。
図6は、
図4に示した点検工具(一部)の斜視図である。
【0033】
第2の実施形態に係る点検工具100は、
図4−
図6に示すように、第1の実施形態で説明した構成に、指示棒8と、紐9と、を更に備えて構成される。
【0034】
指示棒8は、スポンジ4の長手方向に沿って当該スポンジ4の側部に固定され、360度撮影カメラ2の大きさよりも長く伸びる伸縮棒である。指示棒8を4つ備え、4つの360度撮影カメラ2のそれぞれの間に固定され、当該固定位置から360度カメラ2の頭部(指示棒8から最も遠い360度カメラ2の端部)までの長さよりも長く伸長し、かつ、元の長さに縮む構造を持つ。伸縮性を有する構造であればよく、例えば、内側のロッドが外側のロッドに収容される入れ子構造、提灯のような蛇腹構造である。
【0035】
紐9は、伸長された指示棒8の長さを縮めるために用いるコードである。紐9を指示棒8と同じ4つ備え、一端部が4つの指示棒8の先端の内側にそれぞれ装着され、他端部が4つの指示棒8の内部を介して後端から出力し、グリップ7の位置までの長さを有する。
【0036】
次に、4つの指示棒8及び紐9の使用方法について説明する。
【0037】
4つのうち1つの指示棒8は、360度撮像カメラ2をマンホール内の床から所定の高さに位置させるために用い、残りの3つの指示棒8は、360度撮像カメラ6をマンホール内の構造物から保護するために用いる。
【0038】
例えば、保守者は、1つの指示棒8を、360度カメラ2の頭部よりも長く、かつ、360度撮像カメラ2がマンホール内の床から点検に適切な所定高になるように伸長する。また、保守者は、残り3つの指示棒8を、固定位置から360度カメラ2の頭部までの長さと同じ長さにする。
【0039】
その後、保守者は、点検工具100をマンホール内に挿入し、上記1つの指示棒8がマンホール内の床に到達したときに360度撮影カメラ2で撮影する。当該1つの指示棒8がマンホール内の床に到達するまで、360度撮影カメラ2は4つの指示棒8で囲われているので、360度撮影カメラ2を確実に保護できる。
【0040】
但し、4つの指示棒8を伸長した状態で撮影すると、当該4つの指示棒8が撮影画像内に映り込み、マンホール内の状態を把握できない。そこで、保守者は、上記1つの指示棒8がマンホール内の床に到達した後、撮影開始前に、4つの紐9を全て引き上げて各指示棒8の長さを元の長さに戻す。これにより、360度撮影カメラ2を保護しつつ、点検に適切な所定の高さで、マンホール内の状態をより正確に撮影できる。
【0041】
なお、4つの指示棒8を全て元の状態に戻す作業は時間がかかるので、2つの指示棒8のみ用いるようにしてもよい。また、紐9を引き上げる手間を排除するため、グリップ7の近くにリールを装着してもよい。
【0042】
以上より、本実施形態によれば、360度撮像カメラ2の大きさよりも長く伸びる指示棒8をスポンジ4の側部に固定したので、360度撮影カメラ2を保護しつつ、点検に適切な所定の高さで、マンホール内の状態を撮像できる。
【0043】
また、本実施形態によれば、指示棒8の長さを縮めるために用いる紐9を備えるので、360度撮影カメラ2を保護しつつ、点検に適切な所定の高さで、マンホール内の状態をより正確に撮像できる。
【符号の説明】
【0044】
100…点検工具
1…ロングポール
2…360度撮影カメラ
3…アダプタ
4…スポンジ
5…L字金物
6…充電式ライト
6a…ソケット
6b…マグネット
7…グリップ
8…指示棒
9…紐