(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子顕微鏡では、フォーカス調整用のレンズとして磁場レンズが一般的に用いられている。フォーカスの調整は、例えば、フォーカス調整用の磁場レンズの励磁電流を変化させて、フォーカスが合う位置を探すことで行われる。ここで、フォーカスが合う位置を探す際には、フォーカス調整用のレンズの励磁電流を大きく変化させる。しかしながら、フォーカス調整用のレンズの励磁電流を大きく変化させると、磁場レンズのヒステリシスの影響によって、フォーカスの調整を精度よく行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る荷電粒子線装置のフォーカス調整方法の一態様は、
フォーカス調整用の磁場レンズと、非点収差補正器と、を含む荷電粒子線装置のフォーカス調整方法であって、
前記磁場レンズの励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて、互いにフォーカスの異なる複数の第1画像を取得し、前記複数の第1画像に基づいて前記磁場レンズの励磁電流の基準値を決定する
基準値決定工程と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲内で変化させる前に、前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲外にして、前記磁場レンズのヒステリシス除去を行う
第1ヒステリシス除去工程と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲内で変化させた後に、前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲外にして、前記磁場レンズのヒステリシス除去を行う
第2ヒステリシス除去工程と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記基準値を基準として変化させつつ、各励磁電流において前記非点収差補正器のスティグマ補正値を変化させて、互いにフォーカスおよび非点収差が異なる複数の第2画像を取得し、前記複数の第2画像に基づいて前記磁場レンズの励磁電流の最適値および前記スティグマ補正値の最適値を求める
最適値取得工程と、
を含
み、
前記第1ヒステリシス除去工程と前記第2ヒステリシス除去工程の間に、前記最適値取得工程は行われない。
【0007】
このような荷電粒子線装置のフォーカス調整方法では、磁場レンズの励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前後、すなわち、磁場レンズの励磁電流を大きく変化させる前後に、磁場レンズのヒステリシス除去を行うため、磁場レンズのヒステリシスの影響を低減できる。さらに、磁場レンズの励磁電流の基準値を基準として励磁電流を変化させてスティグマ補正値の最適値を求めるため、スティグマ補正値の最適値を求める際に、磁場レンズの励磁電流の変化を小さくできる。これにより、磁場レンズのヒステリシスの影
響を低減できる。
【0008】
(2)本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
フォーカス調整用の磁場レンズと、
非点収差補正器と、
前記磁場レンズおよび前記非点収差補正器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記磁場レンズの励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて、互いにフォーカスの異なる複数の第1画像を取得し、前記複数の第1画像に基づいて前記磁場レンズの励磁電流の基準値を決定する
基準値決定処理と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲内で変化させる前に、前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲外にして、前記磁場レンズのヒステリシス除去を行う
第1ヒステリシス除去処理と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲内で変化させた後に、前記磁場レンズの励磁電流を前記フォーカスサーチ範囲外にして、前記磁場レンズのヒステリシス除去を行う
第2ヒステリシス除去処理と、
前記磁場レンズの励磁電流を前記基準値を基準として変化させつつ、各励磁電流において前記非点収差補正器のスティグマ補正値を変化させて、互いにフォーカスおよび非点収差が異なる複数の第2画像を取得し、前記複数の第2画像に基づいて前記磁場レンズの励磁電流の最適値および前記スティグマ補正値の最適値を求める
最適値取得処理と、
を行
い、
前記第1ヒステリシス除去処理と前記第2ヒステリシス除去処理の間に、前記最適値取得処理は行われない。
【0009】
このような荷電粒子線装置では、制御部が、磁場レンズの励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前後、すなわち、磁場レンズの励磁電流を大きく変化させる前後に、磁場レンズのヒステリシス除去を行うため、磁場レンズのヒステリシスの影響を低減できる。さらに、制御部が、磁場レンズの励磁電流の基準値を基準として励磁電流を変化させてスティグマ補正値の最適値を求めるため、スティグマ補正値の最適値を求める際に、磁場レンズの励磁電流の変化を小さくできる。これにより、磁場レンズのヒステリシスの影響を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
また、以下では、本発明に係る荷電粒子線装置として、電子線を照射して試料の観察を行う電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る荷電粒子線装置は電子線以外の荷電粒子線(イオン等)を照射して試料の観察を行う装置であってもよい。本発明に係る荷電粒子線装置としては、例えば、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナライザー、集束イオンビーム装置などが挙げられる。
【0013】
1. 電子顕微鏡
まず、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。電子顕微鏡100は、走査電子顕微鏡である。
【0014】
電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子銃10と、集束レンズ12と、偏向器14と、非点収差補正器16と、対物レンズ18と、試料ステージ20と、電子検出器30と、EDS40と、制御部50と、を含む。
【0015】
電子銃10は、電子線EBを発生させる。電子銃10は、所定の加速電圧により加速された電子線EBを試料Sに向けて放出する。
【0016】
集束レンズ12は、電子銃10から放出された電子線EBを集束させるためのレンズである。偏向器14は、電子線EBを二次元的に偏向させる。偏向器14によって、電子プローブを試料S上で走査させることができる。
【0017】
非点収差補正器16は、非点収差を補正する。非点収差補正器16によって、レンズの非点収差と直交方向に同じ強さの非点収差を作ることで非点収差を補正できる。制御部50がスティグマ補正値を設定することによって、非点収差補正器16は設定されたスティグマ補正値に応じた非点収差を作る。
【0018】
対物レンズ18は、電子線EBを試料S上で集束させるためのレンズである。集束レンズ12および対物レンズ18で電子線EBを集束させることによって電子プローブが形成される。
【0019】
対物レンズ18は、磁場によってレンズ作用を生じさせる磁場レンズである。対物レンズ18は、磁場を発生させる電磁場コイルを含み、電磁場コイルに供給される励磁電流によってレンズ作用の強さを制御できる。対物レンズ18は、フォーカス調整用のレンズとして機能する。
【0020】
なお、フォーカス調整用のレンズは、複数のレンズで構成されていてもよい。例えば、フォーカス調整用のレンズは、対物レンズ18と、不図示の開き角最適化レンズと、の組み合わせであってもよい。開き角最適化レンズは、対物レンズ18に対して開き角を自動的に最適化するためのレンズである。
【0021】
試料ステージ20は、試料Sを支持している。試料ステージ20上には、試料Sが載置される。図示はしないが、試料ステージ20は、試料Sを移動させるための移動機構を備えている。試料ステージ20で試料Sを移動させることにより、試料S上での電子線EBが照射される位置を移動させることができる。
【0022】
電子検出器30は、試料Sから放出された電子を検出するための検出器である。電子検出器30で試料Sから放出された電子を検出することによって、走査電子顕微鏡像(SEM像)を取得できる。電子検出器30は、反射電子を検出する反射電子検出器であってもよいし、二次電子を検出する二次電子検出器であってもよい。
【0023】
エネルギー分散型X線検出器40は、X線をエネルギーで弁別し、EDSスペクトルを得るための検出器である。エネルギー分散型X線検出器40は、電子線EBを試料Sに照射することによって試料Sから発生する特性X線を検出する。
【0024】
制御部50は、電子顕微鏡100を構成する各部を制御する。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含むコンピューターである。制御部50では、CPUで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行うことができる。制御部50の処理の詳細については以下の「2.動作」説明する。
【0025】
2. 動作
次に、電子顕微鏡100の動作について説明する。電子顕微鏡100では、自動で、フォーカスを調整することができる。以下では、電子顕微鏡100のフォーカス調整方法について説明する。
【0026】
図2は、制御部50の処理の一例を示すフローチャートである。
図3および
図4は、対物レンズ18のヒステリシスを除去する処理を説明するための図である。
【0027】
ユーザーが不図示の操作部を介してフォーカスを調整する処理を開始する指示を入力すると、制御部50は、フォーカスを調整する処理を開始する。
【0028】
制御部50は、まず、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外にする(S10)。
【0029】
制御部50は、
図3に示すように、対物レンズ18の励磁電流を、処理開始時の励磁電流からフォーカスサーチ範囲外にする。例えば、対物レンズ18の励磁電流を処理開始時の励磁電流から最小励磁電流にする。次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外とした状態で、所定時間維持する。これにより、対物レンズ18のヒステリシスを除去できる。最小励磁電流は、対物レンズ18に供給される励磁電流の最小値である。なお、本処理において、対物レンズ18の励磁電流は、最小励磁電流に限定されず、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の下限よりも小さくすればよい。また、本処理において、対物レンズ18の励磁電流は、フォーカスサーチ範囲の上限よりも大きい励磁電流であってもよい。例えば、対物レンズ18の励磁電流を最大励磁電流にしてもよい。この場合でも、対物レンズ18のヒステリシスを除去できる。最大励磁電流は、対物レンズ18に供給される励磁電流の最大値である。
【0030】
次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて互いにフォーカスの異なる複数のSEM像を取得し、合焦点評価値が極大となる励磁電流を探す(S12)。
【0031】
制御部50は、対物レンズ18を最小励起電流からフォーカスサーチ範囲の下限の電流とする。そして、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の下限から上限に向かって変化させつつ、すなわち、対物レンズ18を弱励磁から強励磁に変化させつつ、各励磁電流でSEM像(第1画像の一例)を取得する。制御部50は、例えば、フォーカスサーチ範囲内を下限から+1ステップずつ変化させて上限まで変化させ、各ステップにおいてSEM像を取得する。制御部50は、励磁電流ごとに(ステップごとに)取得したSEM像から、励磁電流ごとに(ステップごとに)合焦点評価値を求める。
【0032】
ここでは、+1ステップは、対物レンズ18の励磁電流を、強励磁側に最小単位だけ変化させることをいう。なお、後述する−1ステップは、対物レンズ18の励磁電流を、弱励磁側に最小単位だけ変化させることをいう。
【0033】
合焦点評価値は、フォーカスを評価するための値であり、フォーカスのずれが大きいほ
ど小さな値となり、フォーカスがあっている場合に最大値をとる。合焦点評価値は、例えば、コントラストが高いSEM像ほど高い値となるコントラスト法による評価値である。すなわち、制御部50は、各励磁電流で得られたSEM像に基づいて、各励磁電流における合焦点評価値を求める。
【0034】
なお、合焦点を評価する方法は、上記のコントラスト法に限定されず、公知の様々な手法を用いることができる。例えば、SEM像が鮮明であるほど高周波成分が多くなることを利用したフーリエ変換法により合焦点を評価してもよい。
【0035】
また、上記では、制御部50は、フォーカスサーチ範囲の下限から上限まで励磁電流を変化させて、各励磁電流における合焦点評価値を求める場合について説明したが、制御部50は、フォーカスサーチ範囲の下限から上限に向かって励磁電流を変化させ、合焦点評価値の極大が見つかった時点で、ステップS12の処理を終了してもよい。
【0036】
次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外にする(S14)。
【0037】
制御部50は、
図4に示すように、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の上限からフォーカスサーチ範囲外にする。例えば、対物レンズ18の励磁電流を最小励磁電流にする。次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外にした状態で、所定時間維持する。これにより、対物レンズ18のヒステリシスを除去できる。ステップS14の処理は、上述したステップS10の処理と同様に行われる。このように、本実施形態では、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前後に、ヒステリシスを除去する処理(S10,S14)が行われる。
【0038】
次に、制御部50は、ステップS12の処理でみつけた合焦点評価値の極大値の数が1つの場合(S16のYes)、合焦点評価値が極大となる対物レンズ18の励磁電流を、対物レンズ18の励磁電流の基準値として設定する(S18)。
【0039】
一方、制御部50は、ステップS12の処理でみつけた合焦点評価値の極大値の数が1つでない場合、すなわち、極大値の数が2つの場合、2つの極大値の中点となる対物レンズ18の励磁電流を、対物レンズ18の励磁電流の基準値として設定する(S20)。
【0040】
図5および
図6は、対物レンズ18の励磁電流の基準値を設定する処理を説明するための図である。なお、
図5は合焦点評価値の極大値が1つの場合を示し、
図6は合焦点評価値の極大値が2つの場合を示している。また、
図5および
図6では、各励磁電流におけるSEM像と、当該SEM像から求めた合焦点評価値を示している。
【0041】
合焦点評価値の極大値が1つの場合、
図5に示すように、合焦点評価値が極大となる励磁電流で、フォーカスがあう。そのため、合焦点評価値が極大となる励磁電流を基準値に設定する。
【0042】
合焦点評価値の極大値が2つの場合、すなわち、アンダーフォーカス側の合焦点位置(前焦線)による極大値と、オーバーフォーカス側の合焦点位置(後焦線)による極大値と、が存在する場合、
図6に示すように、2つの極大値の中点となる励磁電流を基準値に設定する。2つの極大値の中点の位置は、最小錯乱円の位置である。
【0043】
制御部50は、上記のようにして、対物レンズ18の励磁電流の基準値を設定する。そして、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を、設定した基準値とする。これにより、フォーカスがあった状態にすることができる。
【0044】
このように、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて、互いにフォーカスの異なる複数のSEM像を取得し、複数のSEM像に基づいて対物レンズ18の励磁電流の基準値を設定する(S12,S16,S18,S20)。
【0045】
次に、制御部50は、非点収差補正器16を用いて、非点収差を補正する(S22)。具体的には、制御部50は、設定された基準値を基準として対物レンズ18の励磁電流を変化させつつ、各励磁電流において非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、互いにフォーカスおよび非点収差が異なる複数のSEM像を取得する。そして、制御部50は、取得した複数のSEM像に基づいて対物レンズ18の励磁電流の最適値、およびスティグマ補正値の最適値を求める。
【0046】
対物レンズ18の励磁電流を基準値を基準として変化させる場合とは、例えば、基準値を初期値として、励磁電流を強励磁側または弱励磁側に変化させる場合を含む。
【0047】
対物レンズ18の励磁電流の最適値は、フォーカスのずれが最も小さくなる対物レンズ18の励磁電流である。また、非点収差補正器16のスティグマ補正値の最適値は、対物レンズ18の非点収差が最も小さくなる非点収差補正器16の制御値(例えば励磁電流)である。
【0048】
図7は、非点収差を補正する処理(S22)の一例を示すフローチャートである。
【0049】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を、ステップS18またはステップS20の処理で求めた基準値とする(S100)。これにより、フォーカスがあった状態となる。
【0050】
次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値とした状態で、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を探す(S102)。
【0051】
例えば、制御部50は、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変更しつつSEM像を撮影することによって、互いにスティグマ補正値の異なる複数のSEM像(第2画像の一例)を取得する。そして、複数のSEM像の各々について合焦点評価値を求め、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を得る。これにより、対物レンズ18の励磁電流が基準値のときのスティグマ補正値の最適値を得ることができる。
【0052】
次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+1ステップずらす(S104)。
【0053】
次に、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+1ステップずらした状態で、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を探す(S106)。ステップS106の処理は、ステップS102の処理と同様に行われる。これにより、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を得ることができる。
【0054】
次に、制御部50は、ステップS102の処理で得られた、対物レンズ18の励磁電流を基準値としたときの合焦点評価値の最大値と、ステップS106の処理で得られた、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値とを比較する(S108)。これにより、どちらの状態が、よりフォーカスが合っており、かつ、非点収差が小さい状態であるかがわかる。
【0055】
制御部50は、励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値としたときの合焦点評価値の最大値以上と判定した場合(S108のYes)、対物レンズ18の励磁電流を+1ステップずらす(S110)。これにより、対物レンズ18の励磁電流は、基準値から+2ステップずれた状態となる。
【0056】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+2ステップずらした状態で、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を探す(S112)。ステップS112の処理は、ステップS102の処理と同様に行われる。これにより、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+2ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を得ることができる。
【0057】
次に、制御部50は、ステップS106の処理で得られた、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値と、ステップS112の処理で得られた、対物レンズ18の励磁電流を基準値から+2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値とを比較する(S114)。
【0058】
制御部50は、励磁電流を基準値から+2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値以上と判定した場合(S114のYes)、ステップS110に戻って、対物レンズ18の励磁電流を、+1ステップずらす(S110)。これにより、対物レンズ18の励磁電流は、基準値から+3ステップずれた状態となる。そして、制御部50は、ステップS112の処理、ステップS114の処理を行う。
【0059】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を+1ステップずらした後の合焦点評価値の最大値が、対物レンズ18の励磁電流を+1ステップずらす前の合焦点評価値の最大値よりも小さくなるまで、ステップS110、ステップS112、およびステップS114の処理を繰り返す。
【0060】
制御部50は、例えば、励磁電流を基準値から+2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値よりも小さいと判定された場合(S114のNo)、励磁電流を基準値から+1ステップずらした状態を対物レンズ18の励磁電流の最適値に設定し、励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を非点収差補正器16のスティグマ補正値の最適値に設定する(S116)。そして、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を最適値とし、非点収差補正器16のスティグマ補正値を最適値とする。これにより、フォーカスが合い、かつ、非点収差が補正される。
【0061】
制御部50は、励磁電流を基準値から+1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値としたときの合焦点評価値の最大値よりも小さいと判定した場合(S108のNo)、対物レンズ18の励磁電流を−2ステップずらす(S118)。これにより、対物レンズ18の励磁電流は、基準値から−1ステップずれた状態となる。
【0062】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値から−1ステップずらした状態で、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を探す(S120)。ステップS120の処理は、ステップS102の処理と同様に行われる。これにより、対物レンズ18の励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を得ることができる。
【0063】
次に、制御部50は、ステップS102の処理で得られた対物レンズ18の励磁電流を基準値としたときの合焦点評価値の最大値と、ステップS120の処理で得られた対物レ
ンズ18の励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値とを比較する(S122)。
【0064】
制御部50は、励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値としたときの合焦点評価値の最大値以上と判定した場合(S122のYes)、対物レンズ18の励磁電流を−1ステップずらす(S124)。これにより、対物レンズ18の励磁電流は、基準値から−2ステップずれた状態となる。
【0065】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を基準値から−2ステップずらした状態で、非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、合焦点評価値が最大となるスティグマ補正値を探す(S126)。ステップS126の処理は、ステップS102の処理と同様に行われる。これにより、対物レンズ18の励磁電流を基準値から−2ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を得ることができる。
【0066】
次に、制御部50は、ステップS120の処理で得られた対物レンズ18の励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値と、ステップS126の処理で得られた対物レンズ18の励磁電流を基準値から−2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値とを比較する(S128)。
【0067】
制御部50は、励磁電流を基準値から−2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値以上と判定した場合(S128のYes)、ステップS124に戻って、対物レンズ18の励磁電流を、−1ステップずらす(S124)。これにより、対物レンズ18の励磁電流は、基準値から−3ステップずれた状態となる。そして、制御部50は、ステップS126の処理、ステップS128の処理を行う。
【0068】
制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を−1ステップずらした後の合焦点評価値の最大値が、対物レンズ18の励磁電流を−1ステップずらす前の合焦点評価値の最大値よりも小さくなるまで、ステップS124、ステップS126、およびステップS128の処理を繰り返す。
【0069】
制御部50は、例えば、励磁電流を基準値から−2ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値が、励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときの合焦点評価値の最大値よりも小さいと判定した場合(S128のNo)、励磁電流を基準値から−1ステップずらした状態を対物レンズ18の励磁電流の最適値に設定し、励磁電流を基準値から−1ステップずらしたときのスティグマ補正値の最適値を非点収差補正器16のスティグマ補正値の最適値に設定する(S116)。そして、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流を最適値とし、非点収差補正器16のスティグマ補正値を最適値とする。これにより、フォーカスが合い、かつ、非点収差が補正される。
【0070】
3. 効果
電子顕微鏡100のフォーカス調整方法は、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて、互いにフォーカスの異なる複数のSEM像を取得し、複数のSEM像に基づいて対物レンズ18の励磁電流の基準値を決定する工程と、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前に、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外にして、対物レンズ18のヒステリシス除去を行う工程と、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させた後に、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲外にして、対物レンズ18のヒステリシス除去を行う工程と、を含む。さらに、対物レンズ18の励磁電流の基準値を基準として変化させつつ、各励磁電流において非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、互いにフォーカス
および非点収差が異なる複数のSEM像を取得し、複数のSEM像に基づいて励磁電流の最適値およびスティグマ補正値の最適値を求める工程と、を含む。
【0071】
このように、電子顕微鏡100のフォーカス調整方法では、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前後、すなわち、対物レンズ18の励磁電流を大きく変化させる前後に、対物レンズ18のヒステリシス除去を行う。そのため、対物レンズ18の励磁電流を大きく変化させたことによる対物レンズ18のヒステリシスの影響を低減できる。
【0072】
また、電子顕微鏡100のフォーカス調整方法では、対物レンズ18のヒステリシスを除去した後に、対物レンズ18の励磁電流を基準値を基準として変化させて、スティグマ補正値の最適値を求める。このように、対物レンズ18の励磁電流を基準値を基準として変化させることによって、スティグマ補正値の最適値を求める際に、ほぼフォーカスがあった状態を基準としてスティグマ補正値の最適値を探すことができる。そのため、スティグマ補正値の最適値を求める際に、対物レンズ18の励磁電流の変化を小さくできる。したがって、対物レンズ18のヒステリシスの影響を低減できる。この結果、フォーカス調整を精度よく行うことができる。また、電子顕微鏡100のフォーカス調整方法では、例えば、ヒステリシスが少ないオートフォーカス用のレンズを設ける必要がないため、装置を小型化できる。
【0073】
電子顕微鏡100のフォーカス調整方法では、対物レンズ18の励磁電流の基準値を決定する工程、すなわち、ステップS12の処理において、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の下限から上限に向かってのみ変化させる。このように、対物レンズ18の励磁電流を、弱励磁から強励磁に向かってのみ変化させることによって、対物レンズ18のヒステリシスの影響を低減できる。
【0074】
電子顕微鏡100では、制御部50が、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させて、互いにフォーカスの異なる複数のSEM像を取得し、複数のSEM像に基づいて励磁電流の基準値を決定する処理と、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させる前に、対物レンズ18の励磁電流を、フォーカスサーチ範囲外に設定して、対物レンズ18のヒステリシス除去を行う処理と、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲内で変化させた後に、対物レンズ18の励磁電流を、フォーカスサーチ範囲外に設定して、対物レンズ18のヒステリシス除去を行う処理と、を行う。さらに、制御部50は、対物レンズ18の励磁電流の基準値を基準として変化させつつ、各励磁電流において非点収差補正器16のスティグマ補正値を変化させて、互いにフォーカスおよび非点収差が異なる複数のSEM像を取得し、複数のSEM像に基づいて励磁電流の最適値およびスティグマ補正値の最適値を求める処理を行う。そのため、電子顕微鏡100では、フォーカス調整の際に、対物レンズ18のヒステリシスの影響を低減でき、フォーカス調整を精度よく行うことができる。
【0075】
4. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0076】
上記の実施形態では、
図2に示すステップS12の処理において、対物レンズ18を弱励磁から強励磁に一方向に変化させているが、対物レンズ18を強励磁から弱励磁に一方向に変化させてもよい。すなわち、例えば、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲より強励磁にした後、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の上限の電流とし、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の上限から下限に向かって一方向に変化させつつ(すなわち、対物レンズ18を強励磁から弱励磁に変化させつつ)
、各励磁電流でSEM像を取得し、当該SEM像から合焦点評価値を求めてもよい。
【0077】
このような電子顕微鏡100のフォーカス調整方法では、対物レンズ18の励磁電流の基準値を決定する工程、すなわち、ステップS12の処理において、対物レンズ18の励磁電流をフォーカスサーチ範囲の上限から下限に向かってのみ変化させてもよい。このように、対物レンズ18の励磁電流を、強励磁から弱励磁に向かってのみ変化させることによって、対物レンズ18のヒステリシスの影響を低減できる。
【0078】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。