【実施例】
【0062】
実施例1:結晶構造の決定
試料と方法
試料。セツキシマブの抗原結合フラグメント[F(ab)'](または「Fab」)を得るため
、IgGを固定化パパイン(Pierce社)で消化し、その後、プロテインAによる逆相精製およびSuperdex75カラム(GE Healthcare社)によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を
行った。セツキシマブの1本鎖結合フラグメント(scFvC225)を、軽鎖および重鎖の間に20アミノ酸長のリンカーを挿入して合成した。scFvC225および可溶性上皮細胞増殖因子受
容体ドメインIII(sEGFRdIII)をSf9細胞で発現させ、過去の報告(Donaldsonら, 2009)に従って精製した。
【0063】
過去の報告(Riemerら, 2005)でファージディスプレーから単離されたメディトープCQFDLSTRRLKC(cQFD;SEQ ID NO:1)およびCQYNLSSRALKC(cQYN;SEQ ID NO:2)を、シティ・オブ・ホープ 合成化学/高分子化学コア施設(City of Hope Synthetic and Polymer
Chemistry Core Facility)で合成、酸化、および精製した。
【0064】
結晶化および回折データ。セツキシマブのFabフラグメント(5mg/mL)を個々のメディ
トープと1:10(モル比)で混合し、Qiagen社JCSG Core Suites(IIV)を使用し、20℃に
おいてスクリーニングを行った。2.2A以上の回折を示す共結晶が、100mMリン酸ナトリウ
ム/クエン酸(pH4.5)、2.5Mリン酸ナトリウム/カリウム、および1.6%(w/v)メソ・
エリスリトール中で形成された。結晶を14%(w/v)メソ・エリスリトールを通してウィッキングし、液体窒素中で急速冷凍した。結晶化試験と初期スクリーニングはシティ・オブ・ホープのX線施設で実施した。Stanford Synchrotron Radiation Labで回折データを得
た(ビームライン9.1および11.1)。リガンド非結合型セツキシマブ(pdb:1YY8-A鎖およ
びB鎖)(Liら, 2005)で、Phaserプログラム(McCoyら, 2007)を使用し、分子置換法によって初期位相を求めた。2つのFabを非対称単位に配置したところ、Mathews係数は3.26、溶媒含有率は62.4%であった。Zスコア(平均値に対する解の標準偏差)は、ローテショナル・サーチでは27および25、トランスレーショナル・サーチでは38および71であった。第3のFabフラグメントは配置することができなかった(非対称単位セル中のFabを3分子とすると、溶媒43%で適正なMathews係数(2.18)となる)。Coot(Emsleyら, 2004)お
よびPhenix(Adamsら, 2002)を用いて複数回反復し、手動でメディトープを密度に組み
込んだ。
【0065】
結晶化および構造決定
セツキシマブ上のメディトープ結合部位を同定するために、Fabフラグメントを作製お
よび精製し、cQFDメディトープと1:10の割合で混合し、市販の因子(factorials)を用いて結晶形成のスクリーニングを行った。20℃で1-3日後に結晶が形成された。これらの結
晶の初期回折解析から、ユニット・セルは、既にProtein Data Bankに登録されているセ
ツキシマブFab(1YY8.pdb)(Liら, 2005)と同様であることが明らかとなり、結晶パッ
キング(例えば、CDRが除去された)から、ペプチドがCDRループに存在しないことが示唆された。しかしながら、分子置換によって構造が解明され、実験で得られたマップの解析から、メディトープと一致するモデリングされていない電子密度が同定された。初期Fo-Fcマップは、Fabフラグメントの中央部分が可能性のある結合部位であることを明示している(
図1)。Fabモデルだけを用いる初期ラウンドの精密化の後、メディトープと一致す
るひと続きのモデリングされていない密度が観察された。メディトープを密度に組み込み、それに伴ってRおよびRFreeは低下した。Phenix(Adamsら, 2002)を用いた精密化の際
に、水分子を付加した。回折データおよび精密化統計値を、以下の表3に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
これらの知見と比較から、ファージディスプレーで同定された第2のメディトープ、cQYNに結合したセツキシマブFabの結晶を得た。前述同様、明らかなモデリングされていない電子密度が、Fabの中央部分に観察された。第1の構造を用いて、配列の相違を適宜モデリングし、複数回ラウンドの精密化を行った。両メディトープの代表的な電子密度マップを
図1BおよびCに示す。
【0068】
実施例2:メディトープはセツキシマブFabのマウス・フレームワーク領域に特異的であ
る
試料と方法
上記実施例1に記載するものに加え、以下の 試料および方法を使用した。
メディトープおよび点変異。上記のように、CQFDLSTRRLKC(cQFD;SEQ ID NO:1)およ
びCQYNLSSRALKC(cQYN;SEQ ID NO:2)の合成、酸化、および精製をシティ・オブ・ホー
プ 合成化学/高分子化学コア施設で行った。アラニン点変異をcQFDメディトープ中の残基3(Phe3をAlaに)、残基5(Leu5をAlaに)、残基8(Arg8をAlaに)、および残基1
0(Leu10をAlaに)に作製し、SMT3のC末端にこのペプチドをコードさせ、細菌を用いて
生成した(Mossessovaら, 2000)。ユビキチン様プロテアーゼ(Ulp1)をサンプルに添加してペプチドを遊離させた後、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行った。
【0069】
メディトープ-Fabインターフェースのキャラクタリゼーション。SPRのアフィニティー
分析を、過去の報告(Donaldsonら, 2009;Liら, 2005)に従って実施した。簡潔に記載
すると、scFvC225またはFabC225を、アミン化学を用いてCM5チップ上に固定化した。ペプチドまたはsEGFRdIIIの親和性を20℃において平衡法によって測定し、式RU=[Rmax
*[L]]/[[L]
*Kd]+Roffsetに適用した。Superdex 200 10/30カラム(GE Healthcare社)を用いてSECを行った。タンパク質を混合し、室温で20分間インキュベートし、4℃でカラムに適用した。
【0070】
MDA-MB-468細胞株を用いて、ペプチドメディトープの存在下で、セツキシマブの結合を試験した。標識したセツキシマブ(AF488。Invitrogen社)を、60μMのcQFDペプチドの存在下または非存在下、4℃で20分間添加した。標識したMOPS-21を同位体コントロールとして使用した。FACS Calibur装置(BD Biosciences社)を用いて細胞の蛍光を測定した。
【0071】
メディトープ/Fabインターフェースの解析
本明細書で同定されたメディトープおよびFab間の結合部位のインターフェースは、IgGの4つのドメイン全てで形成される(例えば重鎖および軽鎖の可変ドメインおよび定常ド
メイン)。PISAサーバーを用いて、cQFDまたはcQYNメディトープ-Fabインターフェースの埋没した表面領域は、それぞれ904(±28)A2および787(±42)A2であり、軽鎖および重鎖に等しく分布していた。
図2および4に、メディトープと接触するFabの残基およびル
ープを示す。
【0072】
両メディトープは、セツキシマブFabと複数の水素結合および疎水性接触を成す。
図2Aは、セツキシマブFab(マウスキメラIgG)、ファージディスプレー実験で同位体コントロールとして使用したヒト化モノクローナルIgG(ch14.18)、およびヒト化トラスツズマブFabの間のわずかな相違を示している。ヒト化トラスツズマブFabをセツキシマブFabに重
ね合わせることにより、cQFDメディトープのArg9はマウス軽鎖可変領域が形成するユニークな空洞に結合することが判明した。特に、マウス軽鎖可変領域のAsp85、Ile83、およびThr40は、cQFDメディトープのArg9残基への結合に重要である(
図2B)。マウス・フレームワーク中のAsp85は、cQFDメディトープのArg9のグアニジニウム基と塩橋を形成する(dNE---OD1=2.8A & dNH1/2---OD2=3.0A)。また、Asp85のカルボキシル基はcQFDメディトープのLeu10のバックボーンアミドと水素結合を形成する(dOD2---HN=2.7A)。更に、軽鎖
のThr40の水素基はメディトープArg9のグアニジニウム基と水素結合を形成する(dOG1---NH1=3.1A)。ヒトFab中のPhe83のフェニル環およびPro40のピロリジン環は、Arg9の側鎖
を立体的に遮蔽する。
【0073】
cQFDメディトープ中のArg9側鎖の選択によってマウスおよびヒトFab配列間の相違が明
らかとなったが、これだけでなく、cQYNメディトープがcQFDメディトープ中のArg9と同じ位置にアラニンをコードしており、従って、ヒトFabに結合する可能性があることが明ら
かになった。ファージライブラリーをhu14.18抗体で前処理したにも拘わらず、なぜcQYN
メディトープが選択されたのかを解明するために、cQFDおよびcQYNメディトープ間の相違およびそれらのセツキシマブFabとの相互作用を測定した。cQFDおよびcQYN構造からの重
鎖および軽鎖FabのCa原子の重ね合わせにより、各メディトープのPhe/Tyr3、Leu5、およ
びLeu10残基の疎水性側鎖がほぼ同じ場所に位置することが明らかである(
図2B)。しかしながら、cQFDおよびcQYNペプチドのバックボーン・トレースはかなり逸脱する。特に、cQFDメディトープのArg8側鎖構造は伸長されており、Fab重鎖のGln111のバックボーン・
カルボニルと強力なバックボーン水素結合を形成している(dNH---0=C=2.8A)。一方、cQYNペプチドのTyr3のヒドロキシル基は立体的にArg8側鎖に干渉し(
図2B)、cQYNメディトープのArg8と重鎖のAsn111間の相互作用を阻害する。この知見と一致して、cQYN複合体中の両Arg8側鎖は、電子密度マップ中で不明瞭であり、少なくとも2つの異なる回転体をとる(非対称単位中に2つのFab-メディトープ複合体が存在する)。この変化に伴って、バ
ックボーン水素結合パターンのシフトが観察された。cQFDメディトープ中のThr7のアミドカルボニルは、セツキシマブFab軽鎖中のアミドAsn41と水素結合を形成する(dNH---OC=2.7A)。この水素結合は、cQYNペプチドではAsn41バックボーンのアミドでArg8バックボーンのカルボニルにシフトする(dC=0---HN=3.0A)。
【0074】
総合すると、cQFDおよびcQYN間の相違(例えばR8および重鎖Fab間の塩橋の喪失)およ
びcQFD中のArg9が結合するFab軽鎖中の箇所における配列の相違(例えばいずれのメディ
トープもAsp85とLeu10のアミド間の水素結合が喪失している)は、マウスキメラに結合するように選択されたメディトープが、ヒトFabフレームワークと実質的により弱い相互作
用を有し、選択の際の洗浄で除去されたことを示唆している。
【0075】
メディトープはFabに大きなコンフォメーション変化をもたらさない
メディトープ-Fabインターフェースの位置に基づいて、メディトープがリガンド非結合型構造および/またはリガンド結合型構造に対するIgGドメインの相対配向を妨害するか
否かを確認した。まず、両メディトープ複合体の非対称単位セル内の軽鎖および重鎖を比較した後、各鎖をリガンド非結合型構造およびEGFRリガンド結合型構造と比較した。いずれのメディトープに結合した軽鎖の可変ドメインも、本質的にセツキシマブのリガンド非結合型構造と同一であった(r.m.s.d.平均:cQFD,0.231±0.014A;cQYN,0.18±0.01A)。しかしながら、重鎖の可変ドメインは、有意に高い相違性を示した(r.m.s.d.平均:cQFD,0.85±0.01A;cQYN,0.88±0.01A)。留意すべきことに、この相違は主に、フレームワーク・ループ2(残基39-46)の位置に起因するものであり、これは、このループ中の残基
を欠失させてr.m.s.d.を再計算すると、かなり低い値となるためである(cQFD,0.18±0.01A;cQYN,0.31±0.01A)(
図6)。更に、このループはFab C225-EGFR共結晶構造中では
移動され、その相対B-factor値は、これがフレキシブルであることを示している(
図6)。最後に、メディトープの存在は、EGFR結合型または非結合型構造関してCDR構造に有意
な変化を与えない。EGFRリガンド結合型構造の重鎖CDRループ3中のTyr101のバックボー
ンは、いずれのメディトープに結合したFab構造と比較しても反転しているが、この反転
は、リガンド非結合型セツキシマブFab構造でも観察される(Liら, 2005)。
【0076】
メディトープ残基のインターフェースへの寄与
cQFDメディトープ-Fab複合体の構造、並びに、cQYNおよびcQFDの配列同一性に基づき、いくつかの点変異をcQFDメディトープ中に作製し(Phe3→Ala、Leu5→Ala、Arg8→Ala、
およびLeu10→Ala)、メディトープの全体的な結合親和性に対するこれらの残基の役割をキャラクタライズした。結合親和性を評価するために、標準的なアミン化学を用いてFab
フラグメントをCM5チップに結合させた。次に、合成cQFDおよびcQYNメディトープのセツ
キシマブFabに対する親和性を測定した。cQFDメディトープは950±30nMの親和性でFabに
結合し、cQYNメディトープの結合親和性は3.5±0.1μΜであった(n=3)。結合反応速度
も測定した(
図3)。二分子相互作用とした場合の結合定数は、cQFDおよびcQYNでそれぞれ4.2(±0.1)x104M-1s-1および1.8(±0.1)x104M-1s-1であった。解離定数は、cQFDおよびcQYNでそれぞれ2.5(±0.1)x10-2s-1および8.6(±0.1)x10-2s-1であった。それらの測定値に基づくKD値(cQFDで430(±30)nM、およびcQYNで3.5(±0.1)μΜ)は、平衡測定とほぼ
一致する。
【0077】
次に、各変異型cQFDメディトープの親和性を測定した。点変異型および野生型cQFDメディトープを、SMT3のC末端融合体として作製し、Ulp1で開裂した後、分析した。生物学的
に生成した野生型cQFDメディトープは合成したcQFDと同様、770nMの親和性で結合したが
、Phe3→Ala、Leu5→Ala、およびArg8→Ala変異は、Fabに対する親和性を著しく低下させた(表4)。特に、Arg8→Ala変異では、結合親和性が140倍低下した。
【0078】
【表2】
【0079】
最後に、ヒト化治療用モノクローナル抗体、トラスツズマブのFabをCM5チップに結合させ、ヒト・フレームワークに対するcQFDおよびcQYNメディトープの親和性をキャラクタライズした。平衡測定により、いずれのメディトープの解離定数も150μMを超えることが明らかになった。
【0080】
実施例3:セツキシマブFabはメディトープおよびEGFRに同時に結合する
試料と方法
上記実施例1および2に記載するものに加え、以下の試料および方法を使用した。
試薬。セツキシマブの1本鎖結合フラグメント(scFvC225)を、軽鎖および重鎖の間に20アミノ酸長のリンカーを挿入して合成した。ScFvC225および可溶性上皮細胞増殖因子受容体ドメインIII(sEGFRdIII)をSf9細胞中で発現させ、過去の報告(Donaldsonら, 2009)に従って精製した。
【0081】
メディトープおよび点変異。上記のように、CQFDLSTRRLKC(cQFD;SEQ ID NO:1)およ
びCQYNLSSRALKC(cQYN;SEQ ID NO:2)の合成、酸化、および精製をシティ・オブ・ホー
プ 合成化学/高分子化学コア施設で行った。アラニン点変異をcQFDメディトープ中の残基3(Phe3をAlaに)、残基5(Leu5をAlaに)、残基8(Arg8をAlaに)、および残基1
0(Leu10をAlaに)に作製し、SMT3のC末端にこのペプチドをコードさせ、細菌を用いて
生成した(Mossessovaら, 2000)。ユビキチン様プロテアーゼ(Ulp1)をサンプルに添加してペプチドを遊離させた後、表面プラズモン共鳴(SPR)分析を行った。
【0082】
FabへのEGFRおよびメディトープの同時結合
回折データは、これらのペプチドがワクチンとして有効であるという仮説と矛盾する。特に、原子モデルは、メディトープがCDRに直接結合しておらず、そのため、抗原エピト
ープを模倣しないことを示している。しかしながら、cQYNメディトープを接種したマウスから採取した血清は、細胞増殖を阻害した(Riemerら, 2005)。従って、メディトープが抗原結合を遮蔽するか否かを試験するために、セツキシマブFabをEGFRドメインIIIおよびcQFDと共にインキュベートし、SEC分析カラムに施与した。13.9mLにピークが観察され、
このピークの非還元SDS-PAGEにより、3つの成分全ての存在が確認された(
図4B)。個
々の成分は15.2mL(Fab C225)、15.6mL(sEGFRdIII)、および16.3mL(SMT-CQFDLSTRRLKC;SEQ ID NO:1)に溶出された。
【0083】
更に、メディトープがセツキシマブのscFvに結合しうるか否かを確認した。scFvでは、CDRループは無傷のままであるが、Fab可変ドメインは短鎖ペプチドリンカーを介して直接結合しており、Fab定常ドメインは除去されている。すなわち、scFvではメディトープ結
合ポケットが除去されており、CDRは最低限の影響しか受けていない。SPRは、EGFRドメイ
ンIIIおよびcQFDメディトープがCM5チップに連結されたセツキシマブFabに結合すること
を示している(
図4B参照)。更に、EGFRドメインIIIは、第2のCM5チップに連結したscFvに、親和性をほとんど喪失せずに結合した。しかしながら、Fab結合に比較して、cQFDメ
ディトープは、100μMという高濃度でもscFvを飽和しなかった。これは、メディトープのCDRへの親和性が(あったとしても)最低限であることを示しており、結晶学的解析と一
致している。
【0084】
メディトープはセツキシマブのEGFR発現細胞への結合に影響を与えない
FabはメディトープおよびEGFRドメインIIIへ同時に結合できるが、メディトープが完全長IgGとしてのセツキシマブのEGFR発現細胞への結合に影響を与えるか否かを確認した。
これを試験するために、FACS分析を用いて、メディトープ濃度の関数として、IgGのMDA MB-468細胞(EGFRを過剰発現する)への結合を追跡した。細胞を、漸増濃度のcQFDメディ
トープ存在下でセツキシマブと共にインキュベートした。60μMを超えるメディトープ濃
度でも、セツキシマブの細胞への結合に有意な変化は見られなかった(
図5)。この知見は上記のSEC分析と一致しており、メディトープが抗原結合のアロステリック調節剤とし
て作用しないことを示している。
【0085】
EGFRドメインIIIおよびメディトープがFabに同時に結合していることが、メディトープのKdより有意に高い濃度で明らかになっている。cQFDおよびcQYNメディトープと同様、スーパー抗原SpAおよびPpLはFabフレームワーク領域に結合し、抗原結合に影響を与えない
(Grailleら, 2000;Grailleら, 2001;Grailleら, 2002;Youngら, 1984)。
【0086】
更に、固相に化学結合させたメディトープを用いてマウスキメラ化セツキシマブを精製することができ、これは、マウスキメラIgG、並びに、メディトープを移植したIgGの新規の精製法である。
図10参照。この精製法にはいくつかの利点がある。第1に、メディト
ープは合成が容易であり、一般的な固相(例えば磁性ビーズ)に容易に付加することができる。第2に、メディトープの親和性は点変異によって容易に調節されるため、精製工程の微調整が可能であり、激しい条件(例えば、抗体の溶出に一般的に使用される低pH)が回避される。最後に、本明細書に記載するように、メディトープを2価または多価とし(例えば後述の実施例4に記載するように)、これを使用して無傷のマウスまたはマウス化ヒトIgGを抽出することができる。また、ペプチドの使用には、プロテインAまたはプロテインLを使用する現行の精製法に優る利点がある(例えば、プロテインAまたはプロテインLの生成に伴う高コスト、ライフサイクルが限られていること、および外来の生体物質(
例えば細菌性病原体)導入の可能性)。
【0087】
立体的遮蔽
メディトープを、マウスキメラ化またはマウス化ヒトmAbの軽鎖または重鎖N末端に、フレキシブルなリンカーを介して連結することができる(
図11)。mAbIgGのN末端は抗原
結合部位と並列しており、フレキシブル・リンカーを介するN末端からの伸長によって抗
原結合は立体的に妨害される。リンカー内に腫瘍特異的プロテアーゼ部位(例えばMMP9、MMP14、前立腺特異的抗原(PSA)セリンプロテアーゼ、または他の好適な部位)をコードさせることにより、分子内「遮蔽された」IgG構築物の立体的な制約が腫瘍部位切断され
、抗体結合が可能となる。この設計原理では、分子内「遮蔽された」IgGの正常組織への
結合が阻害され、オフターゲット結合による有害な副作用が回避される。セツキシマブ上のアビジン-ペプチド遮蔽のオフレート測定を
図12に示す。この図は、多価メディトー
プが1価メディトープより高い親和性で結合するが、遮蔽はしないことを示している。
【0088】
実施例4:多価メディトープの作製
同じ抗原(例えばEGFR)上の独自のエピトープを認識する複数のモノクローナル(mAb
)を組み合わせることにより、細胞死が促進され、腫瘍増殖が阻害されることが明らかに
なっている。この細胞死促進の正確なメカニズムは議論されているところであるが(免疫応答vs受容体の抑制的制御vsリガンド拮抗の促進)、過去の研究から、いずれのmAbも、
細胞死を促進するためには多価(例えば完全長IgGまたはF(ab)'
2)である必要があることが示唆されている。そのように、多価メディトープを、後述のように第2の抗体として代用してもよい。従って、本明細書に記載するメディトープをスキャホールドに連結させ、選択性および結合親和性を向上するための多価メディトープ作製してもよい。
【0089】
特異性および親和性は、多くの場合、多価性によって得られる。これは、2価リガンドではΔG
Total=ΔG1+ΔG2-ΔG
linkerで表され、K
Total=K
1*K
2/K
linkerと等しい。リンカーが自由エネルギーに寄与しない場合(K
linker〜1)、2価標的では、2価リガンドの見かけの親和性は単量体結合定数の積である。従って、親和性を有意に増加させることができる(例えばK
D=1μΜのメディトープでは、2価メディトープの親和性の「理論値」は1pM
である)。しかしながら、そのような増加が見られるのは稀であり、これは主に、2価/3価/多価受容体の幾何学的構造による。受容体の幾何学的構造によってリンカーは厳しい制約を受けるが、これによって、標的化送達の重要なゴールである特異性が保証される。
【0090】
リンカーに対する受容体の制約に対処するため、未改変メディトープまたは最適化メディトープを多価スキャホールドに結合させることができる。これを行うために、リンカーを最適化する。腫瘍細胞は抗原密度が高いため、多価メディトープを隣接するIgGにはめ
込むように結合(latch-on)させ、「デイジーチェーン」様アレイを形成させるべきである(
図8)。2価メディトープとIgGの分子内結合が可能であるが、IgGのC2対称性により、それらの相互作用ではリンカーに厳しい幾何学的制約が与えられる。3価またはそれ以上のスキャホールドにより、1つより多い抗体が「デイジーチェーン」を成すことが保証される。第3のメディトープ・アームを包含させることにより、3価メディトープの抗原結合抗体への初期接触のライフタイムが延長される。同様に、これにより、近接する抗原結合抗体に更なるアームが結合する可能性が上昇し、複合体全体が安定化される。
【0091】
スキャホールドの合成
FITC標識した2価メディトープの合成を、(化合物2)を用い、「クリック」ケミストリーに基づいて行った(
図13)。テンプレート4および5(
図13)を使用することにより、それぞれから2価および3価メディトープの形成が可能となる。この合成はすばらしい進歩である。なぜなら、この発見は多価メディトープ調製のために開発された化学を表すものであり、最適な結合のために種々の長さのポリエチレングリコール(PEG)(ま
たは他の)リンカーの検討に重点的に取り組むことができる。合成法はまた、放射性核種イメージングのためのDOTA導入にも適している。例えば30AのPEG2価アームが、FITC標識された2価メディトープ(すなわち化合物13)の合成で導入された(
図13)。IgG内
でのCDR領域間の距離は〜130Aである。このように、PEGリンカーの長さは体系的に多様であり、この方法は確かに最適である。市販のPEGの末端から末端までの距離は90Aであり(Pierce社)、IgGの距離より長い。
【0092】
多価性のキャラクタリゼーション
それぞれの多価メディトープのキャラクタリゼーションをSPRおよびITCによって行い、多価スキャホールドへのコンジュゲーションがメディトープ-IgG相互作用に影響しないことを確認した。しかながらこれらの測定は、IgGが腫瘍表面に結合しないため、多価性の
測定における有効性に限界がある。これに代わって、FACS分析および細胞生存率アッセイを使用して、多価メディトープの影響をEGFRを過剰発現する細胞上で直接定量してもよい。
【0093】
FACS分析では、EGFRを過剰発現する細胞株(MDA-MB-468およびA431)を、種々の濃度(
1nMから100nM)のセツキシマブと共にインキュベートした。次に、セツキシマブ処理した細胞を漸増濃度(0.1nMから1μM)の標識された多価メディトープと共にインキュベート
し(
図17;メディトープ-Fc)、CyAn FACSソーターを用いて結合特性を分析した。1価メディトープで観察されたよりかなり低い濃度でのシフト(
図17)および/またはシフトする細胞のパーセンテージの増加が観察される。多価メディトープで期待されるこれ以外の効果を更に確認するために、標識されていない1価メディトープを用いて、抗原が結合したセツキシマブを巡って、標識された多価メディトープと競合させてもよい。
【0094】
細胞生存率アッセイを用いて、セツキシマブ介在型細胞死の向上の際の多価メディトープの有効性を測定することができる。簡潔に記載すると、MDA-MB-468およびA431細胞を播種し、種々の濃度のセツキシマブおよび多価メディトープで処理する。セツキシマブ単独と同じ結果を生じる1価メディトープをコントロールとして用いる。MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を用いて生存細胞数を
定量してもよい。活性を示す多価メディトープは、ウエスタンブロット分析を行い、EGFR並びにEGFRシグナリング経路の一部であるAKTおよびMAPのリン酸化状態を追跡してもよい。その後、これらのデータをセツキシマブ単独処理細胞およびチロシンキナーゼ阻害剤処理細胞(AG1478)からのデータと比較する。総合すると、これによって細胞死が多価メディトープ濃度の関数として増加すると考えられる。
【0095】
MTTアッセイ
セツキシマブと併用した場合の単量体メディトープまたは2価メディトープ-Fcの細胞
死誘導に対する効果を、MTTアッセイを用いて評価した。4000個のMDA-MB-468細胞を80μlの培養液中、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。10μlの1μMセツキシマブを10μlの0.1、1、または10μMのメディトープまたはメディトープ-Fcと共に添加し、最終濃度を0.1μMセツキシマブ、および、0.01、0.1、および1μMメディトープまたはメディトープ-Fcとする。また、コントロールとして各成分を単独でPBSと共に添加した。48時間のイン
キュベーション後、10μlのMTT試薬を添加し、更に4時間インキュベートした。その後、
培養液上清を除去し、100μlのMTT結晶溶解液を添加し、プレートを630nmで測定した。メディトープまたはメディトープ-Fc単独では細胞増殖は有意に変更されなかったが、メデ
ィトープ-Fcだけがセツキシマブとの併用で細胞増殖を阻害した(単量体メディトープは
阻害しなかった)(
図28A)。
【0096】
多価メディトープがセツキシマブへの添加で第2の抗EGFR抗体の効果と同様の細胞死滅促進効果を有することを示すために、セツキシマブ+メディトープ-Fcまたはセツキシマ
ブ+M425のいずれかによる腫瘍細胞増殖阻害効果を比較した。4000個のMDA-MB-468細胞を80μlの培養液中、96ウェルプレートの各ウェルに播種した。10μlの1μMセツキシマブを10μlの2、4、または8μMのメディトープFcまたはM425と共に添加し、最終濃度を0.1μM
セツキシマブ、および、0.2、0.4、または0.8μMメディトープ-FcまたはM425とする。コ
ントロールとしてセツキシマブをPBSと共に添加した。48時間のインキュベーション後、10μlのMTT試薬を添加し、更に4時間インキュベートした。その後、培養液上清を除去し、100μlのMTT結晶溶解液を添加し、プレートを630nmで測定した。メディトープ-Fcはセツ
キシマブの細胞死滅能の向上を示したが、M425ほどの有効性はなかった(
図28B)。
【0097】
別の方法として、種々のスキャホールドおよびリンカーを用いて高親和性多価メディトープを作製してもよい。例えば、DNAをメディトープのスキャホールドとして使用し、よ
り柔軟性の低いスキャホールドを作製してもよい。
【0098】
メディトープ(野生型)をIgGのFc領域のN末端に、フレキシブルなリンカーを介して融合させた(「メディトープ-Fc」)(
図15;SEQ ID NO:3-4)。メディトープ-Fcの配列
および構造をそれぞれ
図15および16に示す。Fc領域の「2量体化」リガンドへの使用
は十分確立されている(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18215087)。この例では
グリシンおよびセリンから成る17アミノ酸長のリンカーを選択したが、任意の好適な長さのリンカーを使用してもよい。多価性による結合の向上を証明するために、0.5x10
6個
のMDA-MB-468細胞を10nMのセツキシマブで、室温において30分間標識し、洗浄した後、0.1、0.3、1、および3μMの2価メディトープ-Fcまたは単量体メディトープと共に室温で30分間インキュベートし、洗浄し、FACS分析を行った。
図17に示すように、FACS分析は、メディトープ-Fc(化学量論的に補正)がセツキシマブで前処理した細胞に有意に高い
親和性で結合することを示している。更に出願人は、この相互作用がメディトープ使用可能mAb(セツキシマブ)に特異的であることを証明する。このデータは、メディトープ-Fcとメディトープ使用可能mAbの組み合わせが相乗的であり、第2の抗体を代替できること
を示している。
【0099】
生物学的および化学的起源の異なるスキャホールドを使用して多価性を得ることができる。これには、限定される訳ではないが、ストレプトアビジンまたはコラーゲン(http://ip.com/patapp/EP2065402A1)を用いる2価または3価スキャホールド、4価スキャホールドとしてのストレプトアビジンを用いるもの、ユニークなスキャホールド(http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283611000283)、Origami DNA(http://www.nature.com/nnano/journal/v4/n4/abs/nnano.2009.5.html)などを使用するものがある。化学スキャホールドの作製は、限定される訳ではないが以下のような分子を使用して行うことができる:DNA(1本鎖、2本鎖、ホリディ構造(Holliday junction)、アプタマーなど)、RNA(1本鎖、ヘパリン、ステム・ループ、アプタマーなど)、PNA(ペプチド核酸)、DNA/PNA2本鎖および3本鎖(柔軟性を低くするため)、ナノ粒子(直接結合
するか、またはPEGのような有機ポリマーを介して結合する)、それ自身と、および/ま
たはDNAもしくはPNAと2本鎖を形成することができる有機ポリマー。例えば
図13では、3価のメディトープの合成に成功した。
図14は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識したメディトープダイマー7のキャラクタリゼーションを示す。
【0100】
更に、Fcおよびメディトープの組成およびその間の距離は、親和性および特異性が最適となるように、体系的に検討することができる。ある態様では、それぞれの天然型または非天然型残基をリンカー内の任意の位置で置換して最適化を行うことができる。更に、2-100、またはそれ以上の残基間にリンカーを施与することが可能である(例えば 、現行の、および今後開発されるDNA合成装置によって作製し、メディトープおよびFc領域間
に挿入してもよい)。また、リンカーの「柔軟性を低下」させ、旋回範囲を制限してFc-
メディトープの親和性および特異性を向上してもよい。例えば、コイルドコイルドメインをメディトープおよびFc間に配してもよい(
図18)。あるいはまた、不活性なタンパク質ドメイン(例えば免疫グロブリン折りたたみ構造)をリンカーの代わりに用いてもよい。複数の免疫グロブリン折りたたみ構造を、メディトープおよびFcドメイン間に配することができる。ある態様では、リンカーの組成は、抗原性の可能性を軽減するために、ヒト由来のものであってもよい。
【0101】
実施例5:メディトープポケットの改変
メディトープ部位の内表面に並ぶ残基を体系的または無作為的に変更し(縮重ライブラリーおよび選択)、メディトープまたはメディトープ類似体の特異性を向上および/または変更することができる(改変方法については、例えばSheedyら 2007およびAkamatsuら 2007(参照により本明細書に組み込まれる)参照)。これらの位置を非天然アミノ酸、天然アミノ酸、またはその両方で置換し、メディトープ相互作用の親和性を向上することができる。近年、二重特異性抗体を作製するための非天然アミノ酸の抗体への導入が報告された(Hutchinsら 2001)。
【0102】
メディトープに接触し/空洞の内表面に並ぶ(結合したメディトープ-cQFDのいずれか
の原子から8A以内にある)残基で、体系的または無作為的に変更して水素結合、イオン相互作用、静電相互作用、または立体相互作用を介するメディトープ親和性を向上することができるものとして、1つまたはそれ以上の軽鎖残基(例えば、軽鎖のP8、V9、I10、S14、E17、Q38、R39、T40、N41、G42、S43、P44、D82、I83、A84、D85、Y86、Y87、G99、A100、G101、T102、K103、L104、E105、K107、R142、S162、V163、T164、E165、Q166、D167
、S168、もしくはY173;または重鎖のQ6、P9、R38、Q39、S40、P41、G42、K43、G44、L45、S87、D89、T90、A91、I92、Y93、Y94、W109、G110、Q111、G112、T113、L114、V115、T116、Y151、E154、P155、V156、T171、F172、P173、A174、V175、Y182、S183、もしくはL184)、またはそれらを組み合わせたものがある。更に、メディトープ結合領域中の他の
残基を変異させ、メディトープ群がこれと水和し、高親和性で結合できるようにしてもよい。例えば、軽鎖のTyr87残基、重鎖のTyr94残基、またはその両方を使用して、メディトープ類似体由来のアルデヒドまたはホウ素含有化合物と水和させてもよい。
【0103】
メディトープ部位の発展。メディトープは抗原結合に影響を与えず、薬物の送達、他の抗体のデイジーチェーン/架橋、または治療用抗体の効率および有効性を増加させるための他の方法に使用できることが明らかにされた。メディトープ結合部位の組成を改変し、現行のメディトープに高親和性で結合できるように、または、種々のメディトープ類似体もしくはDOTA(放射性物質送達のための)のような小分子に結合できるようにしてもよい。メディトープ結合部位の内表面に並ぶ各残基を体系的に改変、作製、およびキャラクタライズしてもよい。しかしながら、変異の数は膨大である(>20
6の組み合わせ、可能性としては>20
16の組み合わせ)。メディトープへの結合を可能とするFab中の変異をより効率的に同定するために、各アミノ酸が所定の部位で置換されるようにして、IgGのライブラ
リーをDNAレベルで構築してもよい。最も有用な組み合わせを選択し、詳細にキャラクタ
ライズし、それを用いて更なる改変を行う。
【0104】
これを行う一つの方法は、目的の部位(例えば重鎖のIle90、Thr92、Leu114、およびThr116、および、軽鎖のLys103およびGlu165)に縮重オリゴを用いてDNAライブラリーを作
製し、これらの部位に20個の天然型アミノ酸全てをコードさせる。更に、GPIドメインをIgG重鎖のC末端に付加してもよい。標準的な方法によってライブラリーをトランスフェク
トし、独自のIgGを発現させてもよい。抗原結合が影響されないようにするため、蛍光標
識した抗原(例えばHer2、EGFR、IGFR、CLTA-4など)に結合する細胞をFACSでソーティングしてもよい(
図20)。その後、抗原に結合した細胞を、特定のメディトープ、メディトープ類似体、または他の目的分子(例えばDOTA)への結合について選択する。細胞をソーティングした後、PCRを用いてメディトープ/類似体/小分子結合を可能とする、また
は促進する変異を同定する。これを複数回反復し、結合を「発展/最適化」することができる。
【0105】
実施例6:メディトープ使用可能抗体の作製
ある態様では、メディトープ結合部位を既存の抗体および全ての今後開発される抗体、例えばIgG1-4(λおよびκアイソフォーム)、IgE、IgA1、IgA2、IgD、およびIgM上に、
他のIgG(例えばヒト、マウス、またはニワトリ)の残基の変異を介して作製することが
できる。
【0106】
メディトープに結合するフレームワークはユニークであり、Fab可変領域(Fv)がマウ
スであり、Fab定常領域(CH1)がヒトである。更に、このFabは成熟して(既知のIgGの配列アラインメントに基づいて)マウスまたはヒトキメラIgGには見られない残基の組み合
わせを各IgGドメイン内に生ずる。これを明らかにするために、元のメディトープが完全
長ヒト血清IgGまたは完全長マウス血清IgGに結合しないことを実証した。そのため、メディトープ結合部位を任意のフレームワーク(ヒトIgGを含む)上にマッピング(または遺
伝子操作もしくは変異)し、メディトープ結合を可能にすることができる。現行のメディ
トープ使用可能モノクローナル抗体の抗原特異性を、既存のモノクローナル抗体のCDRを
移植するによって改変してもよい(
図21)。
【0107】
ヒトフレームワーク配列およびセツキシマブ・フレームワーク間の配列相違をセツキシマブFabの結晶構造上にマッピングした。メディトープ部位の内表面に並ぶヒトフレーム
ワーク中の残基(トラスツズマブ-1N8Z.pdb)を、セツキシマブ中の対応する残基に変異
した。標準的な方法を用いて重鎖および軽鎖を合成し、標準的な哺乳動物発現ベクターにサブクローニングし、標準的な方法を用いて変異型IgGを精製し、Her2およびメディトー
プ結合についてキャラクタライズした。
図23Aおよび23Cは、それぞれ重鎖(SEQ ID NO:5)および軽鎖(SEQ ID NO:8)の核酸配列を示す;
図23Bおよび23Dに、軽鎖(SEQ ID NO:6)および重鎖(SEQ ID NO:9)の対応するアミノ酸配列をメディトープ使用可能トラスツズマブの野生型配列(SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:10)と比較して示す。
【0108】
抗原結合をキャラクタライズするために、標準的なプロトコルを使用して野生型トラスツズマブおよびメディトープ使用可能トラスツズマブをAlexa647で標識した。同様に、メディトープ-Fcを同じプロトコルを用いてAlexa488で標識した。メディトープ-Fcがメディトープ使用可能トラスツズマブに結合し、野生型トラスツズマブには結合しないことを示すために、Her2を過剰発現するSKBR3細胞(0.5x10
6)を、標識された野生型トラスツズマブまたはメディトープ使用可能トラスツズマブと共に30分間インキュベートした。未結合の抗体を洗浄し、細胞をメディトープ-Fcコンストラクトと共に30分間インキュベートし
た。抗体結合およびメディトープ結合のFACS分析を行った。「メディトープ移植」の重要な要素として、メディトープ使用可能トラスツズマブはSKBR3で発現されたHer2に結合す
ることがFACSのデータから明らかである(例えば、抗原特異性を喪失させずにメディトープ部位を抗体上に移植できる)(
図22A)。また、FACSデータから、メディトープ-Fcはメディトープ使用可能トラスツズマブに結合するが、野生型トラスツズマブには結合しないことが明らかである(
図22B)。
【0109】
留意されるように、メディトープ使用可能トラスツズマブの生成は、正確な定量的キャラクタリゼーションを行えるよう、より多くの物質が得られるように最適化しなくてはならず、これはみかけ上の親和性の低下(例えば、メディトープ使用可能トラスツズマブの最終濃度とAlexa647での標識が不確実であること)の要因である。同様に、抗原結合並びにメディトープ結合を最適化する標準的な方法もある(メディトープ結合部位の最適化を参照)。いずれにせよ、データから、メディトープ使用可能トラスツズマブがHer2過剰発現SKBR3細胞に結合し、メディトープ使用可能トラスツズマブで前処理した細胞はメディ
トープに結合することは明らかである。
【0110】
Her2CDRを移植したメディトープ使用可能抗体。CDR移植は現在、ヒト化モノクローナル抗体の作製に標準的に実施されている。メディトープ結合部位はセツキシマブ・フレームワークに独自のものである(そして、ヒト、マウス、または他のマウス-ヒトキメラ(例
えばリツキシマブ)にはない)。別の態様では、他の抗体のCDRループをセツキシマブ・
フレームワーク上に移植し、トラスツズマブのCDRループをセツキシマブ・フレームワー
ク上に移植することによってメディトープ結合を提供することができる。mAbのCDRループの「境界線」は一般に配列ホモロジー構造法によって明確に定義されているが、トラスツズマブの結晶構造をセツキシマブ上に重ね合わせ、各残基の位置を確認して、CDRループ
のコンフォメーションへの二次的影響を有しうるCDRループ外の相違の可能性を検討した
。得られた軽鎖および重鎖のアミノ酸配列(例えばセツキシマブ上のトラスツズマブCDR
ループ)をDNA配列に翻訳し、それぞれをコードする遺伝子を合成した。その後、遺伝子
を残りのIgG DNA配列中にインフレームでサブクローニングし、DNAシーケンシングによって確認し、個々の発現ベクターに配した。得られた発現ベクターをNS0細胞に形質転換し
、重鎖および軽鎖を共発現させた。発現された完全長のCDR移植IgGが分泌されるので、遠
心分離によって上清を得、濃縮し、プロテインAカラムを通過させた。低pH溶液を用いてIgGを溶出し、直ちに中和した。還元条件下で完全長CDR移植IgGのSDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)を行ったところ、軽鎖および重鎖の質量と一致する明白な2つのタ
ンパク質バンドが観察された。バンドの位置は野生型セツキシマブと同様の位置に泳動した。
【0111】
抗原結合をキャラクタライズするために、標準的なプロトコルを使用して、野生型トラスツズマブおよびトラスツズマブのCDRを移植したメディトープ使用可能mAbをAlexa647で標識した。前回同様、メディトープ-Fcを同じプロトコルを用いてAlexa488で標識した。
メディトープ-FcがトラスツズマブCDRを移植したメディトープ使用可能mAbに結合し、野
生型トラスツズマブには結合しないことを示すために、Her2を過剰発現するSKBR3細胞(0.5x10
6)を標識した野生型トラスツズマブまたはメディトープ使用可能mAbと共に30分間
インキュベートした。未結合の抗体を洗浄し、細胞をメディトープ-Fc構築物と共に30分
間インキュベートした。抗体結合およびメディトープ結合をFACSで分析した。「CDR移植
」の重要な要素として、トラスツズマブCDRを移植したメディトープ使用可能mAbはSKBR3
細胞で発現されたHer2に結合することがFACSのデータから明らかである(例えば、CDRル
ープをセツキシマブ・フレームワーク領域上に移植し、Her2に結合させることができる)(
図24A)。また、FACSデータから、メディトープ-FcはトラスツズマブのCDRを移植し
たメディトープ使用可能mAbに結合するが、野生型トラスツズマブには結合しないことが
明らかである(
図24B)。
【0112】
留意されるように、メディトープ使用可能トラスツズマブの生成は、正確/定量的なキャラクタリゼーションを行えるよう、より多くの物質が得られるように最適化しなくてはならず、これはみかけ上の親和性の低下(例えば、メディトープ使用可能トラスツズマブの最終濃度とAlexa647での標識が不確実であること)の要因である。当該分野で公知の抗原結合最適化のための方法があり、これをメディトープ結合に適用することができる。データはメディトープ使用可能トラスツズマブがHer2過剰発現SKBR3細胞に結合し、メディ
トープ使用可能トラスツズマブで前処理した細胞はメディトープに結合することを明らかに示している。Her2CDRを移植したメディトープ結合mAbの配列を
図25A(重鎖;SEQ ID NO:11-12)および
図25B(軽鎖;SEQ ID NO:13-14)に示す。
【0113】
この方法を、抗体を産生する任意の生物(限定される訳ではないが、ニワトリ、マウス、ラット、ウシ、霊長類、およびヤギ)由来の、任意の抗体(IgA、IgE、IgD、およびIgMなど)に使用することができる。一例として、IgGおよびIgEの「Fab」ドメインの配列お
よび構造アラインメント(メディトープ結合部位近傍のIgE上の残基)を示す(
図26)
。
【0114】
実施例7:pHの関数としてのメディトープ結合親和性
メディトープの組成を変更して、pHの関数として結合親和性に影響を与えることができる。
図27に示すように、3つの異なるメディトープ改変体の結合親和性を、バッファーpHの関数として測定した。QYDメディトープ改変体は、低pHで著しい親和性の低下を示す。QYN改変体中のアスパラギン酸をアスパラギンに置換すると、pH依存性はフラットとなる
。同様に、QFD改変体の親和性は、pHが高くなるにつれ、わずかに上昇する。総合すると
、これらの実験は、メディトープ-mAb相互作用の親和性はpHに合わせて調整できることを示している。
【0115】
従って、ある態様では、低pHで(例えば薬剤送達のためのリポソーム中で)特異的に遊離されるようなメディトープ改変体(または「類似体」)の改変;および低酸素環境において高度の親和性で結合するようなメディトープの改変を提供する(例えば腫瘍間質のpHは多くの場合、正常組織より低い)。
【0116】
前述の本発明の実施例および方法は、単に例証であって、本発明をいかなる様にも制限することを意図しない。当業者に認識されるように、前述の種々の改変は本発明の意図の範囲内にある。
【0117】
参考文献
下記および明細書に引用されるすべての参考文献は、すべてが本明細書に記載されているように、その全体が参照として組み込まれる。
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