【文献】
Woon Ki Na,Feedback-Linearization-Based Nonlinear Control for PEM Fuel Cells,IEEE Transactions on Energy Conversion,2008年03月,Vol. 23, No. 1
【文献】
Long-Yi Chang,Linearization and Input-Output Decoupling for Nonlinear Control of Proton Exchange Membrane Fuel Cells,Energies,2014年,2014, 7,591-606
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、特に任意の種類の乗り物における移動体の用途のための未来のエネルギー源とみなされる。この場合、プロトン交換膜型燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell又はPEMFC)が、最も将来性のある技術のうちの1つとして注目されている。何故なら、当該プロトン交換膜型燃料電池は、低い温度で稼働され得、長い稼働時間を提供し、高い出力密度を有し、排気なしに稼働され得る(反応相手が、水及び酸素だけである)からである。しかしながら、さらに、例えば、アルカリ型燃料電池(AFC)、直接型メタノール燃料電池(DMFC)、直接型エタノール燃料電池(DEFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)等のような別の一連の燃料電池技術がある。燃料電池は、陽極及び陰極に対してそれぞれ1つの反応ガス、電流を生成するために電気化学反応する、例えば酸素O
2(又は空気)及び水素H
2を使用する。当該様々な燃料電池の構造及び機能は周知である。それ故に、ここでは、詳しく説明しない。当該反応ガスの調整は、燃料電池を稼働させるためには必ずしも必要でない。しかしながら、正確なガス調整だけによって、例えば乗り物での燃料電池の経済的で且つ効率的な使用に必要である耐久性及び効率性並びに出力密度が達成され得る。この場合、燃料電池の種類に応じて、当該両反応ガスのうちの1つの反応ガス又は当該両反応ガスを調整することが必要になり得る。特にガスの調整を含む燃料電池の正確な処理の実行が、燃料電池の効率性、耐久性及び確実な稼働のために重要であり、特に外乱及び内乱の影響時にも重要である。一般に、燃料電池の誤差を含む方法技術的な処理の実行は、可逆的又は非可逆的な出力損失(出力低下)を引き起こす。正常状態(英語のState of Healthを略してSoH)は、燃料電池の実際の効率性に対する目安である。燃料電池が、正常状態の所定の値(自動車では、一般に、新しい状態にある連続出力の80%)に到達すると、サービス終了となる。これは、当然に望ましくなく、回避されなければならない。
【0003】
当該ガスの調整の場合、状態変数の圧力、温度及び相対湿度(p、T、rH)並びに反応ガスの測定流量が重要である。
【0004】
例えば、非常に小さい質量流量が、反応不足を引き起こす。このことは、出力に悪影響を及ぼし、期間及び強度に応じて燃料電池に不可逆的な損傷を引き起こす。別の重要な影響変数は、反応ガスの圧力である。確かに、陽極と陰極との間の特定の圧力勾配が、稼働に良好な影響を及ぼすが、非常に大きい差圧の場合に膜及び燃料電池が損傷される。別の例は、反応ガスの相対湿度である。プロトン交換膜型燃料電池では、例えば、膜を乾燥から保護することが重要である。何故なら、水和膜だけが、水素の陽イオンを通し、したがって効率的だからである。しかしながら、同時に、非常に大量の液浄水によるガス流路及び拡散紙の遮断は回避される必要がある。当該遮断は、反応物質の不足を引き起こす。さらに、当該膜の周期的な加湿及び除湿が、この膜に対する機械的なストレスを引き起こし、したがって当該膜に亀裂及び欠陥箇所(ピンホール)をさらに引き起こす。当該亀裂及び欠陥箇所(ピンホール)は、水及び酸素の直接の通過を促進させる。したがって、両効果は、燃料電池の効率性及び状態に悪影響をさらに及ぼす。特に、温度も重要な役割を果たす。高温時の当該膜の加速する化学的な分解のほかに、相対湿度と温度とが物理的にも関連している。この場合、後者が、上記の効果を引き起こし得る。言及した例は、不完全なガス調整の場合に起こり得る効果の一例にすぎず、問題点をより良好に理解するために役立つ。
【0005】
当該ガス調整のための大きな問題は、言及した4つの影響変数が、物理的な(例えば、熱力学的な)関係に起因して互いに依存し、このために非線形な挙動を有する点である。この問題は、多くの場合は、ガス調整装置の構成要素及びガス調整装置用の制御概念が互いに調整されることによって回避される。このため、(例えば、PID制御器のような)簡単な制御器に関連する特性領域、特性値、特性点等に基づく正確で簡単な制御が、多くの部分に対して十分である。この場合、補正係数が、正常状態に依存する制御のパラメータ(特性領域、特性値、特性点)に付加されることも可能である。
【0006】
燃料電池の可能性を完全に発揮させたい場合、当該ガス調整装置のこのような簡単な制御は、多くの場合に不十分である。特に、通常は、燃料電池の(非常に)動的な稼働は、(試験台又は実際の用途では)実現され得ない。この場合、(非常に)動的な稼働は、特に制御の速い応答挙動を意味する。すなわち、当該制御は、目標変数の速い変化も可能な限り小さい制御偏差で当該制御に追従することができることを意味する。特に、(燃料電池の影響変数及び負荷の変化率を意図して)燃料電池が一般に動的に試験運転されようとする試験台上で燃料電池を開発する場合、当該簡単な制御は、燃料電池の挙動を検査又は改良するためには問題である。
【0007】
したがって、ガス調整装置を動的に制御するためには、制御される変数を速く且つ正確に、特に過渡的に調整することができる制御器が必要とされる。
【0008】
このため、本明細書には、燃料電池のガス調整装置を制御するための様々な式が記載されている。これらの式の多くが、熱力学的な関係をだいたい強く簡略化したものに基づく。多くの場合、言及した影響変数のうちの2つの影響変数だけが制御され、その他の影響変数に対しては仮定が行われる。このため、適切な制御器が構成される。多くの場合、圧力又は湿度が制御される。これに対する例は、Damour C.et al.“A novel non−linear model−base control strategy to improve PEMFC water management−The flatness−based approach”,Int.Journal of Hydrogen Energy40(2015),S.2371−2376である。当該比特許文献では、膜湿度のモデルに基づく微分平面の公知の理論を使用した相対湿度用の制御器が構成されている。当該平面に基づく制御器は、目標値の追従の優れた挙動、高い外乱抑制度、高い安定性を示す。これにもかかわらず、全ての影響変数は制御され得ない。その結果、この制御器は、ガス調整装置の想定される制御に適しない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を
図1の参照の下で普遍性を制限することなしにプロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)2用の試験台1を例示して説明する。当然に、燃料電池2は、電源として機械又は設備で使用されてもよい。このため、ガスの調整及び制御が、この機械又は設備で実行される。それ故に、以下で燃料電池2の稼動と言うときは、試験台1上での燃料電池2の稼動と、機械又は設備での燃料電池2の実際の稼動とが考えられる。
【0016】
図1による例では、燃料電池2が、試験台1に設置されていて、この試験台1で稼働される。周知であるように、燃料電池2は、第1反応ガス、例えば空気としての酸素が供給される1つの陰極Cと、第2反応ガス、例えば水素H
2が供給される1つ陽極Aとを有する。当該両反応ガスは、燃料電池2の内部で高分子膜によって互いに隔てられている。電圧Uが、陰極Cと陽極Aとの間で取り出され得る。燃料電池2のこの基本的な構造及び機能は周知である。それ故に、ここでは、さらに詳しく説明しない。
【0017】
少なくとも1つの反応ガス、通常は酸素を供給する反応ガス、特に空気が、ガス調整装置3内で調整される。圧力p、相対湿度φ、温度T及び温度調整される反応ガスの質量流量
【0019】
が、ガス調整装置3内で調整される。
図1では、これらの4つの影響変数は、陰極Cの入力部に示されている。この場合、本発明によれば、これらの4つの影響変数のうちの少なくとも3つの影響変数、特に全ての4つの影響変数が調整される。この場合、「調整」は、影響変数の値が予め設定されている値である目標値に合わせられることを意味する。1つの影響変数が、ガス調整装置3によって調整されない場合には、仮定が、この影響変数に対して行われる。例えば、この影響変数が一定に保持され得る。
【0020】
これらの影響変数を調整するため、対応するアクチュエータが、ガス調整装置3内に設けられている。特に、反応ガスを加湿して当該反応ガスの相対湿度φを調整するための加湿装置4と、当該反応ガスの温度Tを調整するために当該反応ガスを温度調整するための温度調整装置5と、当該反応ガスの質量流量
【0022】
を調整するための質量流量調整装置6と、当該反応ガスの圧力pを調整するための圧力調整装置7とが設けられている。調整すべき影響変数と同様に、これらの4つの装置のうちの少なくとも3つの装置、特に全ての4つの装置が、ガス調整装置3内に設けられている。当然に、ガス調整装置3に接続されているか又は同様にガス調整装置3内に配置されている当該反応ガス用のガス源8が設けられてもよい。
【0023】
ガス源8は、例えば、圧縮され乾燥した反応ガス、例えば空気を有する蓄圧器である。空気を使用する場合は、代わりに、例えば濾過され、圧縮され、乾燥等された大気がガス源8として提供されてもよい。
【0024】
温度調整装置5は、例えば電気式の加熱装置及び冷却装置又は熱交換器である。オーストリア特許出願公開第516385号明細書に記載されているような装置が、温度調整装置5として使用されてもよい。
【0025】
この実施の形態では、加湿装置4は、水蒸気発生装置9と水蒸気用の質量流量計10と混合室11とを有する。商業的に入手可能で調整可能な既存の適した質量流量計が、水蒸気用の質量流量計10として使用されてもよく、また質量流量調整装置6として使用されてもよい。燃料電池2用の調整された反応ガスにするため、当該水蒸気が、混合室11内でガス源8から供給されるガスと混合される。
【0026】
当然に、加湿装置4のその他の構成も考えられる。例えば、水が、ガス源8からのガスに供給、例えば噴射され得る。
【0027】
この例では、背圧弁が、調整可能な開口横断面によって反応ガスの圧力pを調整する圧力調整装置7として使用される。背圧弁7は、ガス調整装置3内の燃料電池2の下流に配置されている。このことは、燃料電池2の前方の圧力を調整することを可能にする。これにより、当該圧力調整は、ガス調整装置3の別の構成要素内での場合によっては起こり得る圧力損失によって影響されない。
【0028】
それ故に、所定の温度Tと所定の相対湿度φと所定の圧力pと所定の質量流量
【0030】
とを有する反応ガスが、混合室11から流出後の燃料電池2又は燃料電池2の陰極C若しくは陽極Aに接続されている反応ガス管12内に供給される。
【0031】
しかしながら、
図1に示されているこのガス調整装置3の構成は例示にすぎず、当然に、その他の構成のガス調整装置3が考えられ、加湿装置4、質量流量調整装置6、温度調整装置5及び圧力調整装置7のその他の具体的な構成も考えられる。
【0032】
影響変数を調整できるようにするため、加湿装置4、質量流量調整装置6、温度調整装置5及び圧力調整装置7が、それぞれの制御変数によって調整可能である。この場合、当該制御変数は、制御器Rが実装されている制御装置15によって計算される。
図1に示された実施の形態では、加湿装置4は、水蒸気用の質量流量計10によって制御変数u
Sで調整され、質量流量調整装置6は、制御変数u
Gで調整され、温度調整装置5は、制御変数
【0034】
で調整され、圧力調整装置7は、制御変数u
Nで調整される。当該影響変数の変化を引き起こすため、それぞれのアクチュエータが、当該制御変数によって制御される。
【0035】
ガス調整装置3を調整するための制御器Rを設計するため、最初に、ガス調整装置3のモデルを作成する必要がある。ここでも、様々なモデルが考えられる。好適なモデルを以下で説明する。全部で4つの影響変数が考慮される。このため、最初に、
図1による構成のためのシステム方程式が作成される。
【0037】
が、混合室11内の質量平衡方程式から得られる。
ここで、m
Gは、ガスの質量であり、
【0039】
は、混合室11内に流入するガスの質量流量であり、
【0041】
は、混合室11から流出するガスの質量流量であり、
【0043】
は、混合室11内に流入する水蒸気の質量流量であり、
【0045】
は、混合室11から流入する水蒸気の質量流量である。
【0046】
混合室11から流出するガス及び水蒸気の質量流量は、
【0048】
によって与えられている。ここで、mは、ガス調整装置3内の全質量であり、m
Gは、ガスの質量であり、m
Sは、水蒸気の質量であり、
【0052】
が、ガス調整装置3のエネルギー平衡方程式から導かれる。
【0053】
この場合、Uは、内部エネルギーを示し、hは、(ここ及び以下でインデックスGによって示された)ガスの特定のエンタルピーと(ここ及び以下でインデックスSによって示された)水蒸気の特定のエンタルピーと混合室11から流出後の(ここ及び以下でインデックスなしに示された)反応ガスの特定のエンタルピーとを示し、u
iは、当該ガス及び当該水蒸気の特定の内部エネルギーを示す。知られているように、ガスの特定のエンタルピーhは、一定の圧力の場合の特定の熱容量c
pと当該ガスの温度Tとの積である。水蒸気の場合、潜熱r
0が、さらに加算される。ガスの内部エネルギーu
iは、一定の体積の場合の特定の熱容量c
vと当該ガスの温度Tとの積である。水蒸気の場合、潜熱r
0が、さらに加算される。これら全てを当該エネルギー平衡方程式に代入し、当該質量平衡方程式を考慮すると、ガス調整装置3の温度動特性を示す以下のシステム方程式
【0057】
が、理想的なガスに対する熱動特性状態方程式から得られる。
ここで、pは、圧力であり、Tは、燃料電池2の入力部の温度である。Rは、ガス(インデックスG)、水蒸気(インデックスS)又は反応ガス(インデックスなし)に対する既知のガス定数を示す。この場合、体積Vは、特に、混合室11の体積だけではなくて、ガス調整装置3内の配管の体積も示す。反応ガスの圧力p及び質量流量
【0059】
が、背圧弁7によっても著しく影響される。当該背圧弁7は、以下のようにモデル化され得る。
【0061】
ここで、Aは、背圧弁7の開口横断面を示し、p
0は、大気圧を示す。
【0064】
によってモデル化される。この場合、p
W(T)は、例えば
【0066】
によって与えられている飽和分圧を示す。パラメータp
m、C
1、C
2は、例えばPlant R.S.et al.“Parameterization of Atmospheric Convection”,Vol.1,Imperial College Press,2015から読み取られ得る。
【0067】
さらに、当該アクチュエータの動特性が、時定数τ
1,τ
2,τ
3,τ
4を有する一時遅れ要素として制御変数u
S,u
G,
【0071】
ここで、T
G,0及びA
0は、予め設定されているオフセット変数である。
【0072】
非線形の複数入出力(MIMO、multiple input multiple output)システムが連立方程式
【0074】
として存在することが、上記のシステム方程式から分かる。
ここで、以下のように、xは、状態ベクトルであり、uは、入力ベクトルであり、yは、出力ベクトルである:
【0076】
図1には、何処にこれらの変数がそれぞれ発生するかが、より良好に理解するために示されている。
【0077】
当該非線形は、それぞれ状態ベクトルxに依存する当該状態方程式によるシステム関数f(x),g(x)と当該出力方程式によるシステム関数h(x)とから発生する。
【0078】
しかし、ガス調整装置3の当該モデルは、非線形であるだけではなくて、その個々の状態方程式が何回も結合されている。これにより、入力ベクトルuの制御変数u
S,u
G,
【0080】
,u
Nが、出力ベクトルyにおける出力変数T,p,φ,
【0082】
に割り当てられ得ない。したがって、当該複数の制御変数u
S,u
G,
【0084】
,u
Nのうちの1つの制御変数が変更されると、複数の出力変数が影響される。このことは、
図2に示されている。
【0085】
図2の右側には、時間tに対する制御変数u
S,u
G,
【0087】
,u
Nが描かれていて、左側には、出力ベクトルyの出力変数が描かれている。
制御変数u
S,u
G,
【0089】
,u
Nのうちのそれぞれ1つの制御変数が、時点50s、100s、150s及び200
sに対して変更された。この場合、全ての出力変数T,p,φ,
【0092】
当該結合された非線形のMIMOシステムに対しては、ガス調整装置3を調整し得る制御器が設計される必要がある。このため、多くの可能性がある。以下に、制御器の好適な構成を説明する。
【0093】
当該結合された非線形の複数入出力システム
【0095】
が、第1ステップとして分離され線形化される。このため、出力、すなわち出力変数y
jが、
【0099】
が得られる。ここで、L
fh及びL
ghは、当該結合された非線形の複数入出力システムの状態方程式のシステム関数f(x)及びg(x)に対する出力方程式のシステム関数h(x)の公知のリー微分を示す。したがって、当該リー微分L
f及びL
gは、
【0104】
上記から、
Lgihj(x)=0のとき、制御変数u
iが、出力変数y
iのそれぞれの時間微分に影響しないことが導かれる。それ故に、制御変数u
iが、出力変数y
jに影響する限り、出力ベクトルyが、それぞれの出力変数y
jに対して時間微分される、すなわちδ
j回の微分まで時間微分される。このとき、j番目の出力変数y
jが、δ
jによって示される。これから、以下のリー微分を有する表記が得られる。
【0108】
は、δ
j番目のリー微分を示し、(δ
j)は、δ
j番目の時間微分を示す。このことが、全部でj=1,...,mの出力変数に対して適用されると、一般に、分離行列J(x)を有する行列式
【0110】
が得られる。出力変数yのδ
j番目の時間微分を含むベクトルが、新しい合成入力ベクトルv、すなわち
【0114】
が得られる。これから、当該新しい合成入力vと当該複数入出力システムの出力ベクトルyにおける出力変数との間の関係が分離されていて、連続する複数の積分器と解釈され得ることが導かれる。1つの新しい合成入力変数v
jδ
j回時間積分されると、当該複数入出力システムの出力変数y
jが得られる。
【0115】
さらに1つの新しい状態ベクトルzが、
【0117】
として定義されると、1つの新しい複数入出力システムが、
【0119】
にしたがう結合されなかった線形の状態空間モデルとして得られる。
ここで、
【0123】
の当該結合されなかった線形の複数入出力システムに適用され得、このため、任意の線形制御が設計される。
【0124】
当該制御のため、調整された出力変数y
jを、予め設定されている目標変数y
j,dmdに可能な限り良好に追従させる(軌跡追跡)ことが意図する課題である。この場合、当該制御は、可能な限り正確でなくてはならない。このため、例えば2自由度制御器(Two−Degree−of−Freedom(2DoF))Rが提供される。当該2自由度制御器は、1つのフィードフォワード制御器FWと1つのフィードバック制御器FBとから成り、例えば
図3に示されている。この場合、フィードフォワード制御器FWは、軌跡追跡(trajectory tracking)を保証しなければならず、フィードバック制御器FBは、発生し得る外乱を制御しなければならない。
【0125】
分離された線形の複数入出力システム20の1つの新しい入力変数v
jが、出力変数y
jのδ
j番目の微分に相当する。したがって、制御器Rのフィードフォワード部分が、出力変数y
jのδ
j番目の微分として得られる。目標変数ベクトルy
dmdのそれぞれの目標変数y
j,dmdが、その相対次数δ
jに応じて微分され、フィードバック制御器FBの出力部に加算入力される。
【0126】
フィードバック制御器FBは、目標変数ベクトルy
dmdにおける目標変数y
j,dmdと出力変数yの実際の実際値との間の偏差、すなわちe
j(t)=y
j(t)−y
j,dmd(t)として制御誤差ベクトルeを受け取る。基本的に、任意のフィードバック制御器が、誤差を制御するために使用され得、このような制御器を規定する様々な方法が公知である。以下に、簡単なフィードバック制御器FBを説明する。
【0127】
フィードバック制御器FBは、相対次数δ
jを考慮し、以下の誤差部分
【0131】
したがって、分離された線形の複数入出力システム20の1つの新しい入力変数v
jが、
【0134】
2次の相対次数δ
jに対しては、PID制御器と同様である。この場合、K
j,0は、積分項であり、K
j,1は、比例項であり、K
j,2は、微分項である。1次の相対次数δ
jに対しては、PI制御器が得られる。
【0137】
である。
ここで、A
c及びB
cは、上記の規定された行列であり、
【0142】
その後に、フィードバック制御器FBの制御器パラメータK
jが、希望した制御器挙動を得るために確定され得る。これに対しても、様々な公知の方法、例えば、(A
c−B
cK)に対する極配置法がある。この場合、安定性を保証するため、希望した全ての極が、特に虚軸の左側に位置される。
【0143】
上記の
図3のΣ
−1を特徴とする結合された非線形の複数入出力システムの線形化及び分離に対しては、方程式から分かるように、
図3にも示されているように、状態変数xもさらに必要になる。
【0144】
このため、状態変数xが、ガス調整装置3内で、特に制御のそれぞれの走査時点に対して測定され得る。代わりに、状態変数xは、特に同様に制御のそれぞれの走査時点に対して観察者によって入力変数u及び/又は出力変数yから評価されてもよい。しかし、状態変数xは、別の簡単な方法で計算されてもよい。
【0145】
微分に依存しない出力変数y=(y
1,...,y
m)のベクトルの場合、一般式
【0147】
の非線形の複数入出力システムが、微分平面の特性を有する。その結果、状態変数x及び入力変数uは、この平面と呼ばれる出力yの関数及びこの出力yの微分の関数である:
【0149】
これから、出力変数y(t)のそれぞれの任意の経時変化に対して、入力変数u(t)の付随する経時変化及び状態変数x(t)の付随する経時変化が、当該複数入出力システムの微分方程式を積分することなしに、出力変数y(t)の経時変化だけから計算され得ることが導かれる。
【0150】
上記の非線形の複数入出力システムは微分平面であることが分かる。したがって、状態変数xは、目標変数y
dmdの経時変化から簡単に計算され得、測定される必要がなく、評価される必要がない。このことは、
図3に状態変数xのインデックスFによって示されている。目標変数y
dmdの経時変化は、例えば実行すべき試験運転によって試験台1で確定されていて、したがって既知である。したがって、状態変数x
Fは、オフラインで目標変数y
dmdの経時変化から事前に計算され得、当該試験運転の実行時に制御のために提供される。
【0151】
燃料電池2の稼働用のガス調整装置3を制御するため、以下のような点が提唱され得る。
【0152】
最初に、場合によっては、上記のような制御器Rが構成される。当該制御器Rは、良好な軌跡追跡(Fuehrungsgroessenverhalten)を有し、安定で且つロバストである、すなわち外乱に対しても鈍感である。このことは、例えば、主にフィードバック制御器FBの極を選択することによって達成される。しかし、場合によっては、既にパラメータ化された制御器Rが使用されてもよい。燃料電池2を稼働するため、目標変数の経時変化y
dmd(t)が、目標変数として使用される出力変数T,p,φ,
【0154】
のために予め設定される。この目標変数の経時変化y
dmd(t)は、燃料電池2の実際の稼働から取得してもよく、予め設定されてもよく、又は燃料電池2を検査するための試験運転によって試験台上で確定されてもよい。機械又は設備内の燃料電池2の実際の稼働中に、燃料電池2又はガス調整装置3が誘導されなければならない軌跡が、例えば1つの動作点から1つの新しい動作点への移行時に計算され得る。このことは、例えば燃料電池制御装置内で実行され得る。この場合、当該燃料電池制御装置は、当該動作点も当該実際の稼働から予め設定する。当該軌跡に対する基準は、例えばより速い移行である。この場合、当該移行の推移が、燃料電池2を損傷させてはならない。したがって、状態変数x
F(t)が、オフラインで目標変数y
dmd(t)の経時変化から事前に計算され得る。代わりに、状態変数x
F(t)は、オンラインで制御のそれぞれの走査時点に対して(すなわち、新しい制御変数が計算されるそれぞれの時点に対して)計算され又は測定されてもよい。当該制御のための走査期間は、一般に、ミリ秒の範囲内にあり、例えば、当該制御は、試験台1上で100Hz(10msの走査期間)によって実行される。その結果、例えば試験運転にしたがう目標変数y
dmd(t)の経時変化が、ガス調整装置3に入力される。予め設定されている試験運転時の燃料電池2の挙動を確認するため、例えば燃料電池2に対する希望した測定が、試験台1でさらに実行されてもよい。
【0155】
このような試験運転が、予め設定されている目標変数y
dmd(t)の経時変化としてシミュレーションされ、その結果が、
図4に示された。以下のパラメータが、当該シミュレーションのために採用された:加湿装置4の調整範囲u
S=[0−30kgh
−1]、温度調整装置5の調整範囲
【0157】
=[0−9kW]、質量流量調整装置6の調整範囲u
G[4−40kgh
−1]、圧力調整装置7の調整範囲u
N=[0−2cm
2]、温度の制御範囲T=[20−100℃]、圧力の制御範囲p=[1.1−3bar]、相対湿度の制御範囲φ=[0−100%]及び質量流量の制御範囲
【0160】
さらに、以下のパラメータが規定された:体積V=14137cm
3、水蒸気の温度T
S=141℃、大気圧p
0=1bar、ガスの特定の熱容量c
p,G=1.04kJkg
−1K
−1、水蒸気の特定の熱容量c
p,S=1.89kJkg
−1K
−1。フィードバック制御器FBの極が、相対次数δ
j=2を有する出力変数y
jに対してs
1=−1,s
2,3=−8±1jに確定され、相対次数δ
j=1を有する出力変数y
jに対してs
1,2=−5に確定された。
【0161】
図4の左側には、予め設定されている目標変数y
dmd(t)の経時変化が示されている。その右側には、制御器Rによって設定される入力変数uが示されている。また、左側のグラフには、シミュレーション中に計算された出力変数yが示されている。一方では、制御器の優れた軌跡追跡が確認される。すなわち、認識可能な偏差なしに、出力変数yが目標変数y
dmdに追従することが確認される。しかし、他方では、個々の出力変数y
jが互いに分離されて設定され得ることも分かる。1つの出力変数y
jの変化が、別の出力変数に関与しない。このため、制御器Rは、それぞれの走査時点に対して、ガス調整装置3のアクチュエータによって設定される必要がある入力変数uを与える新しい入力変数vの組み合わせを計算する。
【0162】
本発明を、全ての4つの影響変数又は出力変数y
j、すなわち温度T、圧力p、相対湿度φ及び質量流量
【0164】
の制御に基づいて説明する。しかしながら、これらの4つの影響変数のうちの3つの影響変数だけが調整されてもよい。このとき、調整されない4番目の影響変数に対して、対応する仮定が行われてもよい。例えば、この4番目の影響変数が一定に保持され得る。調整される影響変数が3つだけの場合、上記のシステム方程式の次数が、1つだけ減らされる。しかしながら、これにより、分離された非線形の複数入出力システムを分離し線形化するための基本式は当てはまらず、同様に制御器の構成の説明した式も当てはまらない。しかし、調整されない4番目の影響変数が、当該仮定にしたがって予め設定されてもよい。すなわち、この目標変数が、予め設定されている目標変数y
dmd(t)の経時変化中に、例えば一定に保持され得る。
【0165】
燃料電池2の反応ガスをガス調整するための調整されたガス調整装置3の用途は多様である。当該ガス調整装置は、特に試験台(スタック又はセルの試験台)上で使用されてもよく、燃料電池システム、例えば乗り物(船舶、列車、飛行機、乗用車、貨物車、自転車、二輪自動車等)、発電所(コージェネレーション)、非常用電源設備、ハンドヘルドデバイス、及び燃料電池システム内のあらゆる機器に設置され使用され得る。したがって、当該ガス調整装置3は、燃料電池システム内で燃料電池の稼働中に使用されてもよく、燃料電池を検査又は開発するための試験台上で使用されてもよい。
【0166】
当該ガス調整装置は、別の用途にも使用可能であり、例えば内燃機関の吸気の調整に使用可能であり、同様に実際の稼働中に又は試験台上で使用可能である。したがって、ガスが、プロセス技術、方法技術又は医療技術で調整されてもよい。また、正確な測定用の測定ガスを正確に調整するため、当該ガス調整装置は、測定技術で使用されてもよい。