【実施例】
【0140】
原材料
本明細書(以下の実施例を含む)で参照する特定の化学物質は、表1に示される供給元から得ることができる。
[この文献は図面を表示できません]
装置
【0141】
核磁気共鳴(NMR)スペクトルスコピー
【0142】
NMR実験は、Bruker Avance 400というNMRスペクトル分析器(400.13MHz
1H 周波数)で、5mmの三重共鳴広帯域プローブ(BB/
2H−
1H/
19F)、又は5mmのインバース広帯域プローブ(
1H/
2H−BB)を用いて行った。NMRによる分析のための溶液は、0.6mlの重水素クロロホルム(CDCl
3)に材料を溶解させることにより製造した。NMR実験は、試料を25±0.1℃に保って行った。
1H実験に対する化学シフトは、残りの溶媒シグナル(CHCl
3、δ 7.24ppm)について参照され、
13Cに対する化学シフトは、溶媒シグナル(CDCl
3、δ 77.23ppm)について参照される。
【0143】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
【0144】
高速液体クロマトグラフは、Waters 2695 Separation Module、及びWaters 2996 Photodiode Array(PDA)、又は2414示唆屈折(IR)検出器を用いて行った。カラムは、Alltima C18 150×4.6mmの逆相カラムであった。1.00mL/分の流量を使用し、移動相は、55%アセトニトリル(CAN/45%H
2O)から、65%アセトニトリル(CAN)/35%H
2Oに変化した。
【0145】
エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析(MS)
【0146】
質量スペクトル分析は、Thermo Scientific Q Exactive質量分析計に、HESI−IIイオン源を取り付けて行った。正及び/又は負のイオンエレクトロスプレーマススペクトルを、140,000質量分解能に設定した適切な質量範囲で記録した。プローブは、0.3ml/分の溶媒流量で使用した。蒸発のために使用した窒素の噴霧/脱溶媒和ガスを、これらの実験では350℃に加熱した。シースガスの流量は、35に設定し、補助ガスの流量は、25に設定した(いずれも任意の単位)。スプレー電圧は、3.0kVであり、キャピラリー温度は、300℃であった。
【0147】
示唆操作熱量測定(DSC)
【0148】
示唆操作熱量測定(DSC)は、Mettler DSC821
e DSCにより動的モードで、約5〜10gの試料を用いて行った。この試料を、封止されたアルミナるつぼに置き、窒素ブランケットのもと炉内に移した。最良の硬化温度を特定し、反応性の初期理解を得、網目構造のガラス転移温度を特定し、また硬化の程度を略式で理解するために、硬化した試料、及び硬化していない試料をいずれも、50℃から300℃へと、10℃/分の速度で加熱した。
略語
【0149】
表2は、ここで使用する略語の一覧を示す。
[この文献は図面を表示できません]
実施例1:N,N,N,N−テトラグリシジル 1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(144−TGAPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0150】
144−TGAPBの合成で使用する材料は、以下の通りである:
・1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)5.84g(2.00×10
−2モル);
・エピクロロヒドリン(27.75g、3.00×10
−1モル)
・ジクロロエタン(50ml)
・硝酸ランタン六水和物(55mg)
・NaOH(4.00g、1.00×10
−1モル)、及び
・イソプロパノール(30ml)。
【0151】
TPE−Q、エピクロロヒドリン、ジクロロエタン、及び硝酸ランタン(2mlのイソプロパノールに入れたもの)を、250mlの3つ首丸底フラスコに入れた。この混合物を、油浴で90分にわたり還流させた(油浴温約100℃、反応フラスコ内は約87℃)。980分経過後に、油浴の温度を約80℃に低下させ、反応フラスコ内の温度を約70〜75℃に低下させた。
【0152】
NaOHを粉砕して粗い粉末にし、イソプロパノール中に懸濁させた。この懸濁溶液を、TPE−Q/エピクロロヒドリン溶液に少量ずつ(スプーンで)30分にわたってゆっくりと添加した。添加終了後、混合物を70〜75℃でさらに15分間、撹拌し、室温に放冷した。
【0153】
塩をろ過し、溶媒及び余剰なエピクロロヒドリンを、ロータリーエバポレーター(油回転ポンプ)により約50℃で1〜2時間にわたり除去した。それからその残渣を、メタノール(50ml)中に懸濁させた。固体生成物をろ過し、それからメタノール(50ml)中に再懸濁させ、再度ろ過した。白色の固体生成物を、真空炉内で約70℃で一晩、乾燥させた。収量は、9.70g(94%)であった。この生成物をNMR(
1H及び
13C)(
図1、それぞれ順にイメージa)及びb))、高速クロマトグラフィー(HPLC)(
図2)、マススペクトル分析(MS)、示唆操作熱量分析(DSC)、並びに薄層クロマトグラフィー(TLC)により分析した。
【0154】
TLC(シリカプレート、溶媒:DCM中で2%v/vのMeOH)−R
f値は約0.8。
【0155】
MS(ESI)m/z516。
【0156】
HPLC:HPLCカラムはAltima C18、移動相:55%のアセトニトリル/水;17.267分の保持時間(RT)で単一のピーク;95.7%(
図2)。
実施例2:N,N,N,N−テトラグリシジル 1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134−TGAPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0157】
134−TGAPBの合成で使用する材料は、以下の通りである:
・1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)5.84g(2.00×10
−2モル);
・エピクロロヒドリン(27.75g、3.00×10
−1モル)
・ジクロロエタン(50ml)
・硝酸ランタン六水和物(55mg)
・NaOH(4.0g、1.00×10
−1モル)、及び
・イソプロパノール(30ml)。
【0158】
TPE−R、エピクロロヒドリン、ジクロロエタン、及び硝酸ランタン(2mlのイソプロパノールに入れたもの)を、250mlの3つ首丸底フラスコに入れた。この混合物を、油浴で90分にわたり還流させた(油浴温約100℃、反応フラスコ内は約87℃)。90分経過後に、油浴の温度を約80℃に低下させ、反応フラスコ内の温度を約70〜75℃に低下させた。
【0159】
NaOHを粉砕して粗い粉末にし、これをイソプロパノール中に懸濁させた。この懸濁溶液を、TPE−R/エピクロロヒドリン溶液に少量ずつ(スプーンを用いて)30分にわたってゆっくりと添加した。添加終了後、この混合物を70〜75℃でさらに15分間、撹拌した。それからこの溶液を、室温まで放冷した。塩をろ過し、溶媒及び余剰なエピクロロヒドリンを、ロータリーエバポレーター(油回転ポンプ)により約50℃で1〜2時間にわたり除去した。その残渣を、ジクロロメタン(50ml)に溶解させ、水(50ml)で洗浄し、Na
2SO
4(無水)で乾燥させた。それから、Na
2SO
4を(セライトで)濾別し、ジクロロメタンを除去した。この生成物は、暗色の油であり、収量は9.90g(収率96%)であった。この油状の生成物を、NMR(
1H及び
13C、
図3でそれぞれ順にイメージa)及びb))、HPLC(
図4)、MS及びTLCで分析した。
【0160】
TLC(シリカプレート、溶媒:DCM中で2%v/vのMeOH)、R
f値は約0.7。
【0161】
MS(ESI)m/z516。
【0162】
HPLC:HPLCカラムはAltima C18、移動相:55%のアセトニトリル/水;18.73分のRTで単一のピーク;92.4%(
図4)。
実施例3:N,N,N,N−テトラグリシジル 1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133−TGAPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0163】
133−TGAPBの合成に使用する材料は、以下の通りである:
・1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133−APB)5.84g(2.00×10
−2モル);
・エピクロロヒドリン(27.75g、3.00×10
−1モル)
・ジクロロエタン(50ml)
・硝酸ランタン六水和物(55mg)
・NaOH(4.0g、1.00×10
−1モル)、及び
・イソプロパノール(30ml)。
【0164】
133−APB、エピクロロヒドリン、ジクロロエタン、及び硝酸ランタン(2mlのイソプロパノールに入れたもの)を、250mlの3つ首丸底フラスコに入れた。この混合物を、油浴で90分にわたり還流させた(油浴温約100℃、反応フラスコ内は約87℃)。90分経過後に、油浴の温度を約80℃に低下させ、反応フラスコ内の温度を約70〜75℃に低下させた。
【0165】
NaOHを粉砕して粗い粉末にし、それからイソプロパノール中に懸濁させた。この懸濁溶液を、133−APB/エピクロロヒドリン溶液に少量ずつ(スプーンで)30分にわたってゆっくりと添加した。添加終了後、混合物を70〜75℃でさらに15分間、撹拌し、室温に放冷した。塩をろ過し、溶媒及び余剰なエピクロロヒドリンを、ロータリーエバポレーター(油回転ポンプ)により約50℃で1〜2時間にわたり除去した。その残渣を、ジクロロメタン(50ml)に溶解させ、水(50ml)で洗浄し、Na
2SO
4(無水)で乾燥させた。Na
2SO
4を(セライトで)濾別し、ジクロロメタンを除去した。この生成物は、黄色の油であり、収量は9.90g(収率96%)であった。この油状の生成物を、NMR(
1H及び
13C、
図5でそれぞれ順にイメージa)及びb))、HPLC(
図6)、MS及びTLCで分析した。
【0166】
TLC(シリカプレート、溶媒:DCM中で2%v/vのMeOH)、R
f値は約0.85。
【0167】
MS(ESI)m/z516。
【0168】
HPLC:HPLCカラムはAltima C18、移動相:55%のアセトニトリル/水;18.56分のRTで単一のピーク;90.2%(
図6)。
実施例4:1,3−ビス−(3−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(133−BGOPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
工程1:1,3−ビス−(3−メトキシフェノキシ)ベンゼンの合成
【0169】
この合成は、L. Wang et al., Synthesis Communication, 30(2), 227-234, 2000で刊行された方法を変えて利用しており、その内容はここで参照により組み込まれる。
[この文献は図面を表示できません]
【0170】
3−メトキシフェノール(62.05g、5.00×0
−1mol)を、KOH(30.85g、5.50×10
−1mol)をエタノール/トルエン(75ml/150ml)に溶解させた混合物に添加した。固体が完全に溶解するまで、窒素雰囲気下でこの混合物を撹拌及び還流した。最初は蒸留により、それからロータリーエバポレーターを用いて、溶媒を除去した。第一塩化銅(1.25g、1.25×10
−2mol)及び1,3−ジブロモベンゼン(59g、2.50×10
−1mol)を、残渣に添加し、それから170〜180℃で16時間、撹拌した。次の日、反応フラスコを約50℃に温め、それからエタノール(200ml)及び水(200ml)を、この混合物に添加した。この生成物を、CH
2Cl
2(250ml×2)で抽出し、5%の水性NaOH溶液で別々に洗浄し(250ml×2)、最後に水で洗浄した(250ml×2)。Na
2SO
4で乾燥させた後、CH
2Cl
2溶媒を除去して、暗色の油46.9g(収率58.2%)が得られた。NMR分析により、これが期待通りの生成物であることが証明され、次の工程への準備が整った。
工程2:1,3−ビス−(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(133−BGOPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0171】
1,3−ビス(3−メトキシフェノキシ)ベンゼン(46.89g、1.46×10
−1mol)、氷酢酸(460ml)、及びHBr(300ml)の混合物を、5時間にわたり還流させ、その後、この反応混合物を室温まで放冷した。それからこの反応混合物を、水(5L)に注ぎ入れ、次いで生成物を2Lのエーテルで抽出した(500ml×4)。合わされたエーテル溶液を、それから水で洗浄し(750ml×2)、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過した。エーテルを真空下で除去し、得られた生成物は暗色の油であった(40.0g)(収率93%)。NMR分析によりこの生成物を実証し、これを次の工程で使用した。
工程3:1,3−ビス−(3−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(133−BGOPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0172】
エポキシ樹脂の合成は、1,3−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、エピクロロヒドリン(125.58g、1.36mol)、及びイソプロパノール(57g、9.50×10
−1mol)をともに混合し、撹拌しながら70℃で加熱することによって、完了させた。15%(w/v)のNaOH水溶液100mlを、上記撹拌溶液に2段階で添加することにより、エポキシ環を閉鎖した。まず、8〜9mlを5分間にわたり滴加し、それから残りの90mlをゆっくりと、10分間にわたって添加した。このような時間の後、混合物を70〜75℃でさらに30分間にわたり加熱し、それから室温に放冷した。有機相(生成物を含む下相)を、水相(上相)から分離し、水で洗浄した(250ml×2)。それから有機溶液を、CH
2Cl
2(200ml)で希釈し、Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過した。溶媒を真空下で除去し、生成物が暗色の油として得られた。溶媒としてCH
2Cl
2を用いて短いSiO
2カラムを通過させることにより、この生成物を精製した。純粋な生成物が、黄色い油として得られた(40g、収率72.6%)。133−BGOPBのエポキシ等価重量は、239mol/gであることが判明した。
【0173】
陽子及び炭素NMRスペクトルが、
図7のイメージa)及びb)に、それぞれ順に示されている。これらのスペクトルは、生成物がきれいであり、不純物を含まないことを示している。それぞれのピークは、挿入により示されたように、対応する水素原子又は炭素原子にうまく割り当てることができる。水素ピークの積分は、133BGOPB分子について予測されるものと、うまく一致している。この合成は、きれいな合成であり、容易に検出可能な不純物は含まれない。これに加えて、
図8におけるHPLCクロマトグラムは、133BGOPBについて分離された成分を示しており、この分子が純粋な単一成分のエポキシ樹脂であるという明確な証拠が得られる。HPLC分析のために、150×4.6mmのAltima C18カラムを使用した。移動相は、流速1.0ml min
−1の65%のアセトニトリル/水であった。
実施例5:1,4−ビス−(4−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(144−BGOPB)の合成
工程1:1,4−ビス−(4−アセトフェノキシ)ベンゼンの合成
【0174】
この合成は、G. W. Yeager et al., Synthesis, 1991, 63-68で刊行された方法を変えて利用しており、その内容はここで参照により組み込まれる。
[この文献は図面を表示できません]
【0175】
無水K
2CO
3(64.27g、4.65×10
−1mol)を、1,4−ジヒドロキシベンゼン(25.6g、2.33×10
−1mol)、4−フルオロアセトフェノン(64.17g、4.65×10
−1mol)及びDMAc(700ml)の撹拌溶液にゆっくりと添加し、それから、生じた混合物を窒素下で一晩、還流させた。次の日に、この混合物を室温まで放冷し、水(2.0L)にゆっくりと注ぎ入れた。この生成物は、固体として析出し、ろ過により溶液から単離した。この生成物を水(2×1L)中に懸濁させ、真空炉で50〜70℃で24時間、乾燥させた。収量は、74g(92%)であった。NMR分析により、これが期待通りの生成物であることが証明され、次の工程への準備が整った。
工程2:1,4−ビス−(4−アセトキシフェノキシ)ベンゼンの合成
[この文献は図面を表示できません]
【0176】
1,4−ビス(4−アセトフェノキシ)ベンゼン(69.2g、2.00×10
−1mol)、m−クロロペルオキシ安息香酸(107.5g)、及びCHCl
3(500ml)の混合物を、還流下で5時間、撹拌した。その後、反応混合物を室温まで放冷し、それからこの固体をろ過し、CH
2Cl
2(200ml)で洗浄した。これらを合わせた有機溶媒を、飽和NaHSO
3で洗浄し(2×250ml)、それから飽和NaHSO
3で洗浄し(2×250ml)、最後に水で洗浄した(2×500ml)。有機相を無水Na
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、有機溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した。生成物は、黄色い個体として形成された。この固体生成物を、真空炉内で50℃で一晩、乾燥させた。収量は、64g(84.6%)であった。NMRにより生成物を実証し、これを次の工程で使用した。
工程3:1,4−ビス−(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの合成
[この文献は図面を表示できません]
【0177】
1,4−ビス(4−アセタトフェノキシ)ベンゼン(63.75g、1.69×10
−1mol)をMeOH(700ml)に入れた撹拌溶液に、0.5MのKOH/MeOH(85ml)を添加し、加熱して1時間、還流させた。その後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。残渣を水(800ml)中に懸濁させ、濃縮HClにより酸性化した。固体生成物をろ過によって溶液から単離し、水で二回洗浄し、それから真空炉内で70℃で一晩、乾燥させた。収量は、46.5g(93.8%)であった。この生成物をNMRにより確認し、次の工程への準備が整った。
工程4:1,4−ビス−(4−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(144−BGOPB)の合成
[この文献は図面を表示できません]
【0178】
1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(46.5g、1.58×0
−1mol)、エピクロロヒドリン(146.4g、1.58×10
−1mol)、及びイソプロパノール(66.4g、1.11mol)を、丸底フラスコ内で一緒に溶解させ、70℃で加熱、撹拌した。これに続き、15%(w/v)のNaOH溶液115mlを、上記撹拌溶液に2段階で添加した。まず、10mlを5分間にわたり滴加し、残りの105mlをゆっくりと、10分間にわたって添加した。このような時間の後、混合物をさらに30分間、70〜75℃に保ち、それから撹拌を続けながら、室温に放冷した。反応フラスコ内の固体をろ過し、水で洗浄し(250ml×2)、それからメタノール中に懸濁させ(300ml×2)、再度ろ過し、真空炉内で50℃で一晩、乾燥させた。この生成物を再度、CH
2Cl
2(300ml)に溶解させ、非常に微細な不溶性固体を濾別し、それからCH
2Cl
3をロータリーエバポレーターにより除去した。収量は、52.0g(81%)であった。
1H及び
13CNMRによって再度、きれいな期待通りの生成物についての証拠が得られ、またDSCは、約133℃で鋭い融点を示した。144−BGOPBのエポキシ等価質量は、226mol/gであると特定された。
【0179】
陽子及び炭素NMRスペクトルが、
図9のイメージa)及びb)に、それぞれ順に示されている。これらのスペクトルは、生成物がきれいであり、不純物を含まないことを示している。それぞれのピークは、挿入により示されたように、対応する水素原子又は炭素原子にうまく割り当てることができる。
【0180】
HPLCクロマトグラム(
図10)も、純粋で単一成分のエポキシ樹脂が形成されたことを示しているが、この例では、より長い溶離時間で非常に小さな幾つかのピークにより示される133 BGOPBと比べて、この合成手順についてのオリゴマー形成の上昇度は、それほど大きくない。HPLC分析のために、150×4.6mmのAltima C18カラムを使用した。移動相は、流速1.0ml min
−1の65%のアセトニトリル/水であった。
【0181】
ここで合成された144BGOPBは固体であったため(純粋な化合物の指標)、
図11に示したように融点をDCによって特定し、131℃であることが判明したが、これは典型的なエポキシ樹脂についての融点よりかなり高い。
【0182】
1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(134 BGOPB)は、44 BGOPBと同じ方法を用いて合成できる。
実施例6:メタ置換されたヒドロキシ前駆体を、エポキシ樹脂にする合成
工程1:ZnCl
2/SiO
2触媒の製造
【0183】
この触媒の製造は、適切な反応変換率及び選択性を保証するために、極めて重要である。シリカゲルに担持された塩化亜鉛を、シリカゲル(Wakogel C−200、31.7g)を、無水塩化亜鉛(5.0g)を無水メタノール(80ml)に入れた溶液で含侵することによって製造した。この混合物を室温で0.5時間、撹拌し、それからメタノールを、ロータリーエバポレーターにより除去した。生じる固体を真空(15mmHg)下、150℃で12時間、乾燥させた。
工程2:ビス(4−ヒドロキシフェニル)m−キシレン(BHPmX)の実験室スケールでの合成
【0184】
フェノール(403.30g、4.29モル)、及びジクロロ−m−キシレン(75g、4.29×10
−1モル)を、3つ首丸底フラスコ(3L)に入れた。ジクロロエタン(1.35L)を、このフラスコに添加し、この反応混合物を、窒素下で約10℃の水浴中で撹拌した。ZnCl
2/SiO
2(58.7g、8.57×10
−2モル)をゆっくりと、この反応混合物に添加し、約10℃で2時間、撹拌した。後者の工程の間、開始時に、フラスコ内の温度は、約5℃であった。ZnCl
2/SiO
2を混合物中に添加後、温度はゆっくりと約10℃に上昇した。水浴に氷をゆっくりと入れ、温度を10℃に保った。
【0185】
2時間後、ZnCl
2/SiO
2をろ過し、ジクロロメタンで洗浄した(100ml)。それから、この溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した(最初は庫内真空、それから油回転真空ポンプ)。この状態の間に、余剰なフェノールをある程度、溶媒により除去した。残った油(生成物、及び大量の余剰フェノール)を、500mlの熱水(65〜70℃)で洗浄した。この洗浄工程を、10回繰り返した。熱水は、フェノールを効果的に除去するために使用した(室温でフェノール8g/水100ml)。この油は、生成物からより多くのフェノールを除去すると、粘稠になった。
【0186】
洗浄に続いて、それから油をジクロロメタンに再度溶解させ、Na
2SO
4(無水)で乾燥させ、ろ過した。ジクロロメタンを除去し、生成物をNMR、TLC、及びGC/MS分析により同定した。収率は通常、75〜80%であった。
【0187】
生成物中で<10%のフェノールをNMRで検知することは、非常に困難であった。TLCは、生成物中にフェノールが存在するかどうかを確認する最も早い手段だが(シリカ/溶媒としてのCH
2Cl
2、UV及びヨウ素のもとでフェノールはR
f値が約0.4〜0.45である)、生成物中にどれくらい多くのパーセンテージでフェノールが存在するのかを特定することはできない。GS/MSは、フェノールのパーセンテージ、及び3種の異性体のパーセンテージを確認するために使用できるが、沸点が高いオリゴマーを検知することはできない。HPLCは、生成物中に存在するフェノール、3種の異性体及びオリゴマーのパーセンテージを特定するために、最もよい手法であろう。HPLCが、生成物中に5%より多いフェノールが存在するという結果を示した場合(ピークの面積%により算出)、生成物は再度、水で洗浄する必要がある。
実施例7:パラ置換されたヒドロキシ前駆体を、エポキシ樹脂にする合成
工程1:ZnCl
2/SiO
2触媒の製造
【0188】
この触媒は、実施例6の工程1と同じやり方で製造した。
工程2:ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン(BHPpX)の大規模合成
【0189】
フェノール(21.50kg、228.57モル)、及びジクロロ−p−キシレン(4.00kg、22.86モル)を、100Lの反応槽に入れた。ジクロロメタン(50L)を、この反応混合物に添加し、反応槽をゆっくりと40℃に加熱しながら、撹拌した。反応槽内の温度が25℃〜30℃に達したら、ZnCl
2/SiO
2(3.13kg、4.57モル)を、反応混合物の撹拌溶液にゆっくりと添加し、35〜40℃で3時間、穏やかに還流させた。反応から放出されるHClは、水酸化ナトリウム溶液を通過させる必要がある。4.0kgの規模では、最大1170LのHClガスが産生され得るという計算結果が得られた。
【0190】
3時間後、加熱器のスイッチを切り、反応槽内の溶液の体積を、真空により約60Lに減少させた(当所体積は約70L)。ZnCl
2/SiO
2をろ過し、2〜3Lのジクロロメタン(DCM)で洗浄した。ジクロロメタン溶液は、バケット(20Lのバケット5個)内に室温で一晩、貯蔵した。生成物は、微細な白色の固体としてDCM溶液から析出し、これを翌日にろ過した(このろ液は保存しておかなければならない。このろ液からは後に、さらなる生成物が回収可能になるからである)。この白色の固体生成物を、洗浄溶液のpHが中性になるまで、温かい水(40〜50℃)で洗浄した。それから、この白色の固体生成物を、洗浄溶液が無色になるまで、DCMで洗浄した(2〜3回、洗浄する必要があり得る)。最後に、白色の固体生成物を、空気中、室温で週末にわたり乾燥させた。収量は、約1.8〜2.0kgであった。
【0191】
第二の獲得物を、以下の方法により回収した。DCMを、ろ液から除去した。残った油(生成物及び余剰フェノール)を、温かい(50〜60℃)水(40L)で洗浄した。残った油が半固体になるか、又は粘稠なペーストになるまで、洗浄工程を繰り返した(40Lの水で7回の洗浄が、必要になり得る)。それから、この粘稠なペーストをDCM(8〜10L)中に一晩、懸濁させた。微細な白色の固体として形成された生成物をろ過し、洗浄溶液が無色になるまで、DCMで洗浄した。第二の獲得生成物は、DCMによる洗浄が不充分な場合、ピンク色をしている。白色の固体生成物を、真空ボックス内で室温にて一晩、乾燥させた。収量は、約1.0〜1.2kgであった。第一及び第二の獲得生成物を、NMR及びHPLCで確認したところ、合計収率は、42〜48%の間で様々であった。
実施例8:ビス−ヒドロキシフェニル−m−キシレン(BHPmX)及びビス−ヒドロキシフェニル−p−キシレン(BHPpX)の異性体組成物
【0192】
フェノール基のオルト及びパラ指向性、並びにフェノールの二重置換性により、様々な置換パターンの異性体範囲が予想されることになる。これは実際にその通りであることが判明しており、そのことは
図12における典型的なHLPCクロマトグラムに示されており、ここでは3つの一次ピークが明瞭である。これらのピーク以外に、フェノール出発材料及び比較的高分子のオリゴマー種について、ある程度の証拠がある。標準的な形状を考慮すると、これらの異性体は、4,4置換、2,4置換、及び2,2置換された異性体(組成はそれぞれ順に1:4:4)から成ることが予測される。これは明らかに、これらの異性体の組成が16:43:19の比率で存在していた場合に観察されたものではない。この相対的な組成は一般的に、メタヒドロキシ化合物を複数回にわたり合成した場合に存在することが判明している。予想された組成からの変化は、より困難なオルト置換に対して優位にパラ置換を促進する立体的制限によって説明することができる。その結果、4,4異性体及び2,4異性体の相対的な濃度が、2,2異性体濃度の代わりに上昇する。このことは、
図12に示されたHLPCクロマトグラムでの場合に、はっきりと観察される。HPLCトレースはまた、メタヒドロキシ化合物の合成が、著しい水準の比較的高分子のオリゴマーを含むことを示している。
図13における
1H−NMRスペクトルは、この化合物が、高水準の純度で合成されたことを示している。
【0193】
パラ置換されたヒドロキシ化合物についてのHPLCトレースが、
図14に示されており、ここでは、2,2異性体が非常に僅かしか存在しないことが観察される。ここで、メタ置換されたキシレン合成と、パラ置換されたキシレン合成との差異は、よじれたメタ置換ヒドロキシ化合物と比べて、中央フェニル環のよりしっかりとしたパラ置換について、可溶性が異なることに関連する。パラ置換されたものは、メタ置換されたものよりも可溶性が低く、合成の間に溶液から容易に析出する。これによって単離がより容易になるが、その欠点は、2,2異性体が溶液中に残存すること、また精製中に事実上失われてしまうことである。よってこれが、2種の異性体しか存在しない理由であり、収率が、メタ合成よりもずっと低いことの理由である。逆に、可溶性に欠けることの利点は、オリゴマー濃度の水準がずっと低いことである。なぜならオリゴマーも、溶液中に残存することが判明しているからである。
図15におけるNMRスペクトルもまた、パラ置換された化合物が、高水準の純度で合成されたことを示している。
ヒドロキシ及びエポキシ樹脂合成についての概要
【0194】
ここでは、メチレン結合を介して結合された3つのベンゼン基から作製された新規エポキシ樹脂を合成し、その異性体組成について同定した。メチレン結合によって変形移動性が付与され、また芳香族環により、熱安定性、及び溶媒侵入に対する耐性がもたらされると理解される。ビスヒドロキシとエポキシ樹脂との構造的な差異は、メタ置換又はパラ置換されている中央のキシレン基に起因する。分子を形成する反応メカニズムには何ら影響を与えないものの、メタ化合物のよじれた骨格対パラ化合物のしっかりとした直線的な骨格が、形成される生成物全体に対して、著しい影響を与えるのである。別の方法とは区別される、合成のカギとなる実験態様のうち幾つかは、以下の通りである:
BHPmX
1.反応後に触媒を濾別し、DCMを完全に蒸発させる。
2.油っぽい生成物を、水で連続的に洗浄してフェノールを除去する。フェノール除去における洗浄工程を補助するので、このことは利点である。
3.最終的な生成物は、3種の異性体、高分子量のオリゴマーを含む油であり、収率は実験室で約75%である。
BHPpX
1.反応後、触媒を濾別し、生成物が溶液から晶出するまで、DCM体積を減少させる。
2.生成物をろ過して、3種の異性体を有する白色の固体を生成する。しかしながら、第三の異性体、すなわち2,2置換された異性体は、極めて低い濃度でしか存在しない。
3.最終的な生成物は、収率が約50%であり、高分子量のオリゴマーは、極めて僅かしか認められない。
実施例9:ビス(ヒドロキシフェニル)−p−キシレン(BHPpX)合成のスケールアップ
【0195】
パラ−ヒドロキシ化合物26kgを、3つの別個の期間にわたり、CSIRO実験用プラントで合成した。第一の期間は、条件最適化のための1kgによる試行であり、第二の期間では16.2kgを製造し、第三の期間では、約10kgを製造した。しかしながら、スケールアップの間、実験用プラントの作製上の制約が原因でそれぞれの場合において、2〜4kgの生成物を製造した。各バッチを製造し、HPLCにより同定し、異性体の組成を特定した。
図16は、様々な異性体(フェノール出発反応体及びオリゴマー種を含む)について各濃度のプロットを示す。スケールアップ合成の間、ろ液から第二の獲得物を得ることが典型的であった。それと言うのも生成物は、最初に析出する第一の生成物よりも、混和性が高かったからである。予測された通り、これらの異性体組成が、高水準のオリゴマー、及び2,2置換された異性体の濃度上昇により影響を受けるという点が、これらの生成物に特徴的である。このことは、2,2置換された異性体が実際に合成されるものの、単純に溶媒中により可溶性であり、最初の例では析出しないという点で、重要である。
実施例10:カルボニル結合された芳香族アミン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン(133BABB)、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(134BABB)、及び1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(144BABB)の硬化、及び同定
樹脂の製造
【0196】
一連のエポキシ/アミン調製物は、1:1のエポキシド対アミノ化学量論調製物でブレンドし、混合し、110℃の温度で湯浴を用いてロータリーエバポレーターにより脱気した。
【0197】
使用したエポキシ樹脂は、以下ものであった:
・ビスフェノールA(BisA)のグリシジルエーテル
・ビスフェノールF(BisF)のグリシジルエーテル、及び
・1,4ビス(4−グリシジルエーテルフェノキシ)ベンゼン(144BGOPB)、
[この文献は図面を表示できません]
[この文献は図面を表示できません]
[この文献は図面を表示できません]
【0198】
使用したアミンは、式4’の化合物に基づいていた:
[この文献は図面を表示できません]
【0199】
具体的には、以下のアミンを試験した:
・1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン(133BABB)
・1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(134BABB)、及び
・1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(144BABB)。
【0200】
幾つかの調製物では、反応する可能性があること、また混和性を欠いていることを考慮して、アミンがエポキシ樹脂に完全に溶解し、気泡が無くなったことが明らかになったらすぐに、一般的に混合を止めた。
【0201】
それからこの樹脂を、屈曲試験及び動的機械熱分析のために、予熱したシリコン型に注ぎ入れた。これらの型は、110℃で最低1時間、予熱した。その後、エポキシ樹脂を空気循環炉内で、典型的には177℃で10時間、硬化させ、210℃で後硬化させた。
【0202】
表3は、製造した例示的なBABBに基づく樹脂を示す。それぞれの場合において、硬化プロファイルは、177℃で10時間、それから210℃で2時間であった。
[この文献は図面を表示できません]
同定
【0203】
動的熱機械分析(DMTA)スペクトルが、
図17に示されており、高性能エポキシ網目構造についてかなり典型的な挙動を示す。tan δスペクトルは特に、鋭く対照的であるように見え、たいていは、極めて均質的であること、及び大量の化学的欠陥がないことに帰する。133BABB生成物は、140〜170℃(tan δmax)というレベルの最低Tgを有する網目構造を産生し、144BABBで硬化した網目構造が、約160〜200℃と最も高い。134BABBで硬化した網目構造についてのTg値は、144BABBのものとよく似ており、Tg値が、外側芳香族環の置換パターンによって主に決まることを示唆している。BisA樹脂は、最高のTg値を示し、これに144BGBOP及びBisFが続き、アミンに拘わらず似たTg値が得られた。
【0204】
硬化された網目構造の屈曲特性が、
図18において相互に比較されている。この場合、これらの結果は、4,4−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)で硬化させたBisA及びBisF樹脂とも比較した。ここに示されているように、BABBで硬化された網目構造についての圧縮弾性率及び圧縮強度は、BisA及びBisF樹脂と少なくとも同等であり、実際に、133BABBアミンで硬化させた場合、優れた強化を示す。メタ置換された網目構造は一般的に、低いガラス転移温度を有するので、このことは若干、意外である。断裂変位もまた、延性が増加していることを示唆しており、このためBABBアミンを用いて様々なエポキシ樹脂を硬化させることにより、改善された強度、剛性及び延性(通常は同時には改善されない特性)を有する、網目構造が産生された。
【0205】
図19は、硬化したエポキシ樹脂網目構造を、メチルエチルケトン(MEK)に含浸させる間の質量増加について得られた結果を示す。この結果は全体的に、BABBで硬化された網目構造によるMEK取り込みに対する耐性を示す。133BABBで硬化された網目構造により、非常に優れた化学耐性がもたらされる。MEK侵入に対する大きな耐性は、BiSFを用いることによって達成され、これに144BGBOPが続き、それからBisAが続く。
例11:メチレン結合された芳香族エポキシ樹脂、ビスアミン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン(133BABB)、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(134BABB)及び1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン(144BABB)の硬化及び同定
樹脂の製造
【0206】
この調製物では、ビスフェノールF(BisF)のジグリシジルエーテル、ビス[(グリシジルエーテル)フェニル)]−m−キシレン(BGOPmX)、ビス[(グリシジルエーテル)フェニル)]−p−キシレン(BGOPpX)、及びジグリシジルエーテルビフェニル(BGOBP)を使用した:
[この文献は図面を表示できません]
【0207】
エポキシ樹脂を硬化させるために使用したアミン硬化剤は、4,4−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、及びメチレンジアニリン(MDA)であった。
[この文献は図面を表示できません]
試料製造
【0208】
エポキシ樹脂は、100℃で約0.5時間にわたりコンディショニングしてから、ロータリーエバポレーターで真空下、約120℃で一緒に混合した。それからこれらを、約95℃、−100kPaに設定した真空炉内に1時間置き、溶解されたガスの水準を最小化した。それから硬化剤をエポキシ樹脂に、化学量論全体が1:1のエポキシド:アミノ基になるように添加し、硬化剤がエポキシ樹脂内に溶解されるまで、ロータリーエバポレーターで混合を続けた。これは調製物の反応性に応じて、約1〜2時間続けた。この間、テフロンでコーティングされた型を、120〜150℃で4時間、予熱し、混合が終わったときに、樹脂試料をテフロン型に注ぎ入れ、空気循環炉内で硬化させた。MDA系の反応性が比較的高いため、これらを150℃で12時間、硬化させ、続いて3時間、177℃で後硬化した。一方で比較的反応性の低い4,4DDS系は、177℃で12時間、硬化させ、続いて3時間、205℃で後硬化した。
【0209】
均一に硬化させ、かつ均質な網目構造を達成するため、硬化前に、硬化剤がエポキシ樹脂内に完全に溶解していることが保証されることについて、細心の注意を払う必要があった。このことは、アミンを溶解させるためにより高い温度が必要とされる場合であっても、当てはまった。これが適切に行われなかった場合、非常に悪い特性を有する不均一な網目構造が生じた。これに加え、BGOBPエポキシ樹脂は室温で固体なので、加工性を改善するために、30mol%のBiSFエポキシとブレンドする必要があった。
【0210】
このプログラムで製造した試料の一覧、及びこれらの硬化プロファイル、及び後硬化規範が、表4に示されている。
[この文献は図面を表示できません]
同定
【0211】
DMTA分析が
図20に示されており、44DDS及びMDAの硬化された系についてはそれぞれ、Tg値が、最低のTgを有するBGOPmXによる傾向に続き、これにBGOPpX、BisFが続き、最後にBGOBPでブレンドした調製物が、BisFエポキシ樹脂を30mol%含有するにも拘わらず最も高いことが分かる。tanδトレースは、極めて対称性及び均質なものが観察され、これはMDA及び4,4DDSに基づく系の双方にとって単純な硬化メカニズムの指標となる。しかしながら、44DDSで硬化された系については、エポキシ樹脂が、Tgを超える高温ではより小さなピークを実際に示していることに留意すべきであり、これはより高い硬化温度では悪化し、また後硬化を続けると上昇する。tanδスペクトルにおけるピークは、44DDS及びMDA系についての表5に示されており、Tg値が、事前に判明したものに近いことが確かめられる。
[この文献は図面を表示できません]
表5:例11の44DDS及びMDAの硬化された系についてのtanデルタスペクトルから測定された、硬化後のTg値
【0212】
図21は、DMTAスペクトルにおける様々な後硬化の影響を示す。ここから見て取れるように、高温ではゴム領域においてある程度のさらなる反応が起こるものの、網目構造のTgに対しては、ごく僅かな影響しかない。Tg値の一貫性は、硬化メカニズムが非常に堅牢であり、安定的なことを示唆している。
【0213】
網目構造のそれぞれについて測定した圧縮特性が、
図22及び23に示されている。
図22における弾性率の結果は、BGOPmXにより、最も高い弾性率が得られることを明らかにしており、これにBGOPpX網目構造、そしてBisF網目構造が続く。硬質ロッドビフェニルポリマー網目構造の弾性率が、これら全ての中で最も低い。これらの結果からは、ガラスポリマーにおける弾性率が、短い範囲の動き及び自由体積によって、また架橋密度よりはむしろ充填密度によって、制御されることが分かる。
【0214】
BGOPmXの場合、メタ置換により、より良好な充填、減少された自由体積、従ってより高い弾性率を提供する傾向のある骨格構造が生じる。BGOPpXパラ置換された網目構造は、より硬質なポリマー網目構造であり、その結果、幾分低い弾性率を有する。ビフェニルに基づく網目構造は、想像できるように、その硬質構造に起因して充填密度がさらに悪く、自由体積の増大、より低い密度、及びかなり低い弾性率をもたらす。これとは対照的に、降伏ひずみ及び降伏応力は、より長い範囲の要因(例えば架橋密度)によってより制御され、その結果、これらのパラメータは、BisF及び硬質ロッドビフェニル網目構造ネットワークと比較して、BGOPpX及びBGOPmXエポキシ樹脂について著しく低い。
【0215】
圧縮測定に使用したものに似た試料を、MEK及びSkydrol(Solutia Inc.)に室温で約45日間、入れ、重量の取り込みを適切な時間間隔で測定した。
図24a)及びb)は、44DDS及びMDAのそれぞれで硬化された系について得られた結果を示しており、44DDSで硬化されたビフェニル及びBGOPmX樹脂が、市販で利用可能なBisF/44DDS系と比べて、吸収されたMEKの水準を低下させることを示している。これらの結果は、この例ではBGOPmX網目構造が、BisFをやや下回るというよりはやや上回るものの、対応するMDA網目構造についても同様である。しかしながらこの研究からの重要な結果は、BGOPpXが、使用したアミンに拘わらずBisFと比較して、ずっと高い水準のMEK取り込みを有するということである。このことは、充填効率の減少に起因する、予測されたより大きい自由体積(これ自体は、より高い硬質性、及びパラ置換された網目構造の直線性に由来する)によって説明できる。
例12:44ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)で硬化された、1,4−ビス(4−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(144BGOPB)及び1,3−ビス(3−グリシジルオキシフェノキシ)ベンゼン(133BGOPB)の硬化及び同定と、44ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)で硬化された、ビスフェノールA(BisA)のジグリシジルエーテル、及びビスフェノールF(BisF)のジグリシジルエーテルの硬化及び同定の比較
試料製造
【0216】
エポキシ樹脂の144−BGOPB及び133−BGOPBをそれぞれ、約140℃(133−BGOPB)及び145℃(144−BGOPB)の湯浴内にある丸底フラスコ内に置き、5分間、ロータリーエバポレーターで脱気した。それから、4,4ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)(又は、3,3ジアミノジフェニルスルホン(33DDS))を、ゆっくりと約10分間にわたり添加し、樹脂が透明になり、気泡が無くなるまで混合を続けた。この組成物は、エポキシアミン樹脂が常に、1:1の化学量論比ブレンドであるようにした。それから、これらの樹脂を、150℃に予熱しておいた、テフロンでコーティングされた型に注ぎ入れ、空気循環路で硬化させた。製造した調製物、及びそれらの硬化プロファイルがそれぞれ、表6に列挙されている。
[この文献は図面を表示できません]
[この文献は図面を表示できません]
同定
【0217】
図25は、12時間、177℃で硬化させた後の、133及び144BGOPB系についてtanδトレースの選択をそのまま示しており、同じ条件のもと33DDS及び44DDSで硬化させたBisF(広く使用される航空宇宙用エポキシ樹脂)と、比較している。ここから分かるように、144BGOPBポリマー網目構造は、BisF/44DDS網目構造と比べて、Tgが約10℃しか低くない。しかしながらこれとは対照的に、133BGOPB/44DDSで硬化されたポリマー網目構造は幾分低く、43℃のレベルより低い。
【0218】
図26は、133及び144BGOPB系の機械特性における差異を説明する圧縮応力対圧縮ひずみのプロットを、特に、降伏及び剛性の程度との関連で、そのまま示す。結果全体は、表7に示されている。特筆すべき重要な点は、系の相互で比較して、144BGOPBの弾性率が低く(1239Mpa)、次に低いのはBisF/4,4DDS系である(1612MPa)ことである。これにも拘わらず、144BGOPB網目構造についての降伏ひずみ(ひずみ樹脂として作用する網目構造能力のカギとなる指標)は、その他の樹脂よりも極めて高い。それ以外に144BGOPBは、応力に関して顕著な傾向を示さない傾向があるものの、降伏応力が低い。応力破断及びひずみ破断は、似ているように見える。
[この文献は図面を表示できません]
【0219】
本開示の一般的な広さの範囲を外れない限り、上記実施例について無数の変更及び修正を行えることは、当業者に評価されるであろう。よってこれらの実施例は、あらゆる点において、説明的なものとして考慮されるべきであり、限定的なものとして考慮されるべきではない。