特許第6943960号(P6943960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943960乾燥の徴候を呈している皮膚を診断するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943960
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】乾燥の徴候を呈している皮膚を診断するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20210927BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20210927BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210927BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20210927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   C12Q1/6876 Z
   G01N33/50 Q
   G01N33/50 P
   G01N33/53 D
   A61P17/16
   A61Q19/00
   A61K8/00
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-532131(P2019-532131)
(86)(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公表番号】特表2020-501567(P2020-501567A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017082805
(87)【国際公開番号】WO2018109078
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】1662670
(32)【優先日】2016年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・カナニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ピフォー
(72)【発明者】
【氏名】オードゥ・フシェ
(72)【発明者】
【氏名】ニュクヘット・チャブシオール
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ドノヴァン
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/126391(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184448(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/007337(WO,A2)
【文献】 Exp. Dermatol.,,2012年,Vol. 21,pp. 205-210
【文献】 J. Allergy Clin. Immunol.,2011年,Vol. 127(1),pp. 186-194, e1-11.
【文献】 株式会社ファンケル, FANKEL Network News,「角層バイオマーカー」の新たな展望, 2015年7月3日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C12N 7/00−7/08
C12N 15/00−15/90
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における乾燥の徴候を呈している皮膚を検出するための方法であって、前記対象の顔から非侵襲的に採取した皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定するための工程を含み、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルを測定することによって決定される前記方法。
【請求項2】
対象における乾燥の徴候を呈している皮膚の美容処置のための非治療的方法であって、次の工程:
a)前記対象の顔から非侵襲的に採取した皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定し、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルを測定することによって決定される工程と、
b)前記対象の皮膚が乾燥の徴候を呈しているかどうかを工程a)から推測する工程と、
c)工程b)において皮膚が乾燥の徴候を呈する場合、前記皮膚を、皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化粧用組成物で処置する工程と
を含む前記方法。
【請求項3】
皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための方法であって、次の工程:
a)当該候補化合物に曝露した、対象の顔から非侵襲的に採取した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定し、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルを測定することによって決定される工程と、
b)工程a)において測定した前記発現のレベルを、前記化合物に曝露していない皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルと比較する工程と、
c)候補化合物に曝露していない皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルに対して、前記候補化合物に曝露した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの増加が検出された場合、前記候補化合物を、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物として同定する工程と
を含む前記方法。
【請求項4】
皮膚試料接着面を使用して採取したものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
対象の顔から非侵襲的に採取した皮膚試料はその対象によって採取したものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
LCN1をコードする遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルが、少なくとも1つのLCN1タンパク質の特異的リガンドを使用して測定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a)対象の顔から非侵襲的に採取した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現を、前記遺伝子によってコードされるタンパク質の発現のレベルを測定することによって検出するための手段と、
b)使用説明書と、
c)前記皮膚試料を採取するための手段と
を含むキット。
【請求項8】
皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現を検出するための手段が、少なくともLCN1の特異的リガンドである、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現を検出するための手段が、LCN1タンパク質に特異的な捕捉抗体と検出抗体との一対である、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための請求項7から9のいずれか一項に記載のキットの使用であって、皮膚試料を採取する手段が非侵襲的である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の乾燥を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々な生理学的障害、公害若しくは紫外線等の放射線等の環境的損傷、喫煙等の外因、器質化の変化、体重の変化に伴う皮下組織の密度、妊娠、肥満、脂肪沈着、又は実際に細胞外マトリックスの成分の組織が乱れることによって、全体として皮膚は脆弱になり、それにより皮膚の潤いの喪失、或いは脂質の喪失(バリア機能の破壊)のいずれの原因にせよ水分蒸発が増加して脱水が起こり、皮膚は乾きがちになる。
【0003】
上記から、皮膚の乾燥のこれらの徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させることができるように、皮膚乾燥を、特にその乾燥がまだ目に見えない時に検出するのに好適なバイオマーカーを見出すことが重要であることが理解される。所与の対象において好適な方法で反応しうるように、乾燥の特異的バイオマーカーが大いに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願WO2011/126249
【特許文献2】国際出願WO2015/009085
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、この必要性に応えることである。
【0006】
本出願人は、驚くべきことに、リポカリン1(LCN1)をコードする遺伝子の発現が、皮膚のレベルで、皮膚乾燥の徴候の存在と相関していることを発見した。
【0007】
リポカリン1(LCN1)は、20kDaの低分子分泌タンパク質である。LCN1は、カリシンスーパーファミリー、並びにレチノール及びレチノイン酸等の低分子親油性分子と結合してこれらを運ぶことが知られているリポカリンファミリーに属する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明の第1の態様によると、本発明は、対象における乾燥の徴候を呈している皮膚を、優先的にはインビトロで診断するための方法であって、次の工程:
a)前記対象からの皮膚試料における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベル、具体的にはLCN1をコードする遺伝子のタンパク質発現のレベルを測定する工程と、
b)任意選択で、工程a)において測定したLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルに基づき、前記対象の皮膚が乾燥の徴候を呈しているどうかを判断する工程と
を含む前記方法に関する。
【0009】
本発明はまた、対象における乾燥の徴候を呈している皮膚の美容処置のための方法であって、次の工程:
a)前記対象からの皮膚試料における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定する工程と、
b)前記対象の皮膚が乾燥の徴候を呈しているかどうかを工程a)から推測する工程と、
c)工程b)において皮膚が乾燥の徴候を呈していると同定される場合、前記皮膚を、皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化粧用組成物で処置する工程と
を含む前記方法に関する。
【0010】
皮膚の関連において、皮膚「乾燥」という用語は、皮膚の脱水(水分喪失)、及び皮膚からの脂質の喪失(一般に続いて脱水を起こす)の両方を包含する。
【0011】
「皮膚乾燥の徴候」という用語は、本明細書では、皮膚からの水分及び/又は脂質の喪失に伴って生じ、初期には目に見えないこともあるあらゆる皮膚の変化を意味し、具体的には、つっぱり感や荒いきめである。本明細書では、具体的には、顔の皮膚の乾燥、好ましくは頬の皮膚の乾燥に言及する。
【0012】
LCN1は、複数のアイソフォームにおいて既知のタンパク質であり、アミノ酸配列が既知であり、具体的にはアミノ酸配列が次のGenBank受託コード:AAH74926.1(2014年9月23日の日付のバージョン)を有する。LCN1をコードするmRNA配列もまた、当業者に既知であり、具体的にはNCBI受託コード:NM_002297.3(2016年6月12日の日付のバージョン)によって受託されている。
【0013】
「LCN1をコードする遺伝子の発現のレベル」という用語は、LCN1をコードする遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現のレベル、及び/又はLCN1タンパク質の発現のレベルを意味する。
【0014】
優先的には、LCN1タンパク質の発現のレベルは、LCN1タンパク質の特異的リガンド、例えばこのタンパク質に特異的な、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、Fab断片、scFv、又はナノボディ等を使用して測定される。次いで、発現のレベルは、当業者に既知の任意の方法により、例えば、ELISA試験、好ましくは、LCN1タンパク質に特異的な捕捉抗体と、加えてLCN1タンパク質に特異的な検出抗体とを使用するサンドウィッチELISAによって測定されてもよい。具体的には、LCN1タンパク質の発現のレベルの測定は、マイクロ流体チップ等、例えば国際出願WO2011/126249に記載されている、チップがLCN1タンパク質に対する特異的リガンドを含有しているマイクロ流体チップのような、小型化システムを使用して実施してもよい。続いて、LCN1タンパク質が前記リガンドと結合したかどうかを決定し、皮膚試料におけるLCN1の存在及び量に関する結論を得るために、好適な読み取り装置によりチップを分析してもよい。
【0015】
優先的には、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの発現のレベルの測定は、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの相補的ヌクレオチド配列でありLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列、若しくはLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列の断片であって、5〜50ヌクレオチド、優先的には10〜20ヌクレオチドを含む該配列若しくは該断片を用いて、又は、10〜60ヌクレオチドの、優先的には前記配列若しくは前記断片を含む15〜30ヌクレオチドのプライマー若しくはプローブの一対を用いて行われる。発現のレベルは、次いで、当業者に既知の任意の手段によって、例えば定量的PCRにより測定してもよい。
【0016】
本発明の範囲内において、「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」という用語は、当業者に周知であるように、好適な条件下で、具体的にはストリンジェントな条件下で、核酸配列が特定のヌクレオチド配列と結合することを指す。
【0017】
「ストリンジェントな条件」という用語は、本明細書において使用される場合、定義したレベルの相補性を有する核酸間で結合した対を産するには好適であるが、前記定義したレベルより低い相補性を有する核酸間で結合した対を形成させるには好適ではない条件に対応する。ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件に依存する。これらの条件は、当業者に既知の方法に従って改変してもよい。一般的には、高度にストリンジェントな条件は、融点(Tm)より低い約5℃、好ましくは塩基が完全に対になっている鎖のTmに近いハイブリダイゼーション温度である。ハイブリダイゼーション手順は、当技術分野では周知である。
【0018】
高度にストリンジェントな条件には、一般的に、約50℃から約68℃の温度での5×SSC/5×デンハルト液/1.0%SDS溶液中でのハイブリダイゼーションと、約60℃から約68℃の間の温度での0.2×SSC/0.1%SDS溶液中での洗浄とが含まれる。
【0019】
好ましい一実施形態によると、本発明による診断法及び美容処置法において使用される対象の皮膚試料は、好ましくは非侵襲的に、対象の皮膚で、優先的には対象の顔で、具体的には対象の頬で採取された試料である。優先的には、皮膚試料は、角質層から得られる。好ましくは、皮膚試料は、病変のない部分において対象の皮膚で採取された試料である。
【0020】
角質層は、表皮の最外層であり、皮膚表面を含む。これは本質的に死細胞からなる。
【0021】
一実施形態によると、本発明による方法は、対象から皮膚試料を採取するための工程を含む。この工程は、優先的には非侵襲的に実施され、具体的には、局所麻酔薬を必要としない。好ましい一実施形態によると、試料を採取するための工程は、皮膚表面を擦ることによって、又はD-squame(登録商標)ディスク等の接着面を用いて実施される。
【0022】
「対象」という用語は、ヒト、好ましくは20歳から90歳までの、優先的には35歳から80歳までの、45歳から80歳までの、更により優先的には60歳から80歳までのヒトを意味する。好ましくは、対象は女性である。優先的には、対象は、皮膚科学的病変及び/又は皮膚科学的疾患を患っていない。
【0023】
特定の実施形態において、基準値は50から90ng/mlの間のLCN1タンパク質、好ましくは、基準値は60から80ng/mlの間のLCN1タンパク質であり、より好ましくは、基準値は67から75ng/mlの間のLCN1タンパク質である。
【0024】
特定の一実施形態において、工程(b)は、得られたLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを基準値と比較した後に行われる。一実施形態において、基準値は、定義した集団における、例えば定義した年齢群及び/又は定義したスキンタイプ(白人、アジア人等)を有する集団における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの平均値によって決定される。特定の一実施形態において、基準値は、60歳から80歳までの女性における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの平均値によって決定される。更なる実施形態において、基準値は、ROC分析によって決定された最適閾値である。本発明によると、基準値は、複数の試料、好ましくは50、100、200、300、又は500例を超える試料によって決定してもよい。
【0025】
「比較」という用語は、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが、基準値と本質的に同一であるか基準値と異なるかを決定することを指す。好ましくは、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルは、認められた差異が統計的に有意であれば、基準値とは異なるとみなされる。差異が統計的に有意でなければ、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルと基準値とは本質的に同一である。
【0026】
この比較に基づき、皮膚が乾燥の徴候を呈しているかどうかを決定することができる。典型的には、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが基準値より有意に低い場合、皮膚は乾燥の徴候を呈しているとみなされ、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが基準値と本質的に同一である又は有意により大きい場合、皮膚は乾燥の徴候を呈していないとみなされる。
【0027】
「皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化粧用組成物」という用語は、皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な、当業者に既知のあらゆる化粧用組成物を意味する。
【0028】
本発明はまた、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための方法であって、次の工程:
a)当該候補化合物に曝露した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定する工程と、
b)前記発現のレベルを、前記化合物に曝露していない前記皮膚の試料における発現のレベルと比較する工程と、
c)候補化合物に曝露していない皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルに対して、前記候補化合物に曝露した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの増加が検出された場合、前記候補化合物を、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物として同定する工程と
を含む前記方法に関する。
【0029】
好ましい一実施形態によると、本発明による、皮膚老化の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための方法において使用される皮膚試料は、皮膚細胞培養物、表皮培養物、再構成された皮膚全体、ヒト皮膚外植体、又は上記で定義したような対象からの皮膚試料である。
【0030】
優先的には、本発明による方法は、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの測定の準備のために試料を処理するための工程を含む。例えば、処理される試料は、可溶性タンパク質抽出物である。具体的には、皮膚試料がD-squame(登録商標)ディスク等の接着面を用いて得られている場合、可溶性タンパク質抽出物は、タンパク質抽出システム、例えばD-squame試料を最少量の抽出緩衝液と接触させることによって可溶性タンパク質抽出物を得るのに好適である、国際出願WO2015/009085に記載されているタンパク質抽出システムを使用して得てもよい。
【0031】
本発明はまた、
a)皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段と、
b)使用説明書と
を含むキットに関する。
【0032】
「LCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段」という用語は、LCN1タンパク質の特異的リガンド、例えばこのタンパク質に特異的な、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、Fab断片、scFv、若しくはナノボディ等、又はマイクロ流体チップ、例えば国際出願WO2011/126249に記載されている、チップがLCN1タンパク質に対する特異的リガンドを含有しているようなマイクロ流体チップを意味する。別法として、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの相補的ヌクレオチド配列でありLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列、若しくはLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列の断片であって、5〜50ヌクレオチド、優先的には10〜20ヌクレオチドを含む該配列若しくは該断片、又は10〜60ヌクレオチドの、優先的には前記配列若しくは前記断片を含む15〜30ヌクレオチドのプライマー若しくはプローブの一対を意味する。
【0033】
好ましくは、LCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段は、少なくとも1つのLCN1の特異的リガンド、具体的にはLCN1タンパク質に特異的な捕捉抗体と検出抗体との一対である。
【0034】
一実施形態によると、本発明によるキットは更に、D-squame(登録商標)ディスク等の皮膚試料を採取するための手段を含む。
【0035】
本発明は更に、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための本発明によるキットの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を次の実施例によって例示する。
【実施例】
【0037】
目に見える皮膚乾燥のレベルを、36〜75歳の女性376名の頬について評価した。また、チップ上で実施するELISA試験を使用して可溶性タンパク質抽出物を分析するD-squame試料によって、LCN1をコードする遺伝子のタンパク質発現のレベルも、これらの女性の頬について評価した。
【0038】
得られた結果の単変量統計分析によって、乾燥のこれらの徴候の存在とLCN1タンパク質の発現との間の相関関係を示す。
【0039】
【表1】