【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明の第1の態様によると、本発明は、対象における乾燥の徴候を呈している皮膚を、優先的にはインビトロで診断するための方法であって、次の工程:
a)前記対象からの皮膚試料における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベル、具体的にはLCN1をコードする遺伝子のタンパク質発現のレベルを測定する工程と、
b)任意選択で、工程a)において測定したLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルに基づき、前記対象の皮膚が乾燥の徴候を呈しているどうかを判断する工程と
を含む前記方法に関する。
【0009】
本発明はまた、対象における乾燥の徴候を呈している皮膚の美容処置のための方法であって、次の工程:
a)前記対象からの皮膚試料における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定する工程と、
b)前記対象の皮膚が乾燥の徴候を呈しているかどうかを工程a)から推測する工程と、
c)工程b)において皮膚が乾燥の徴候を呈していると同定される場合、前記皮膚を、皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化粧用組成物で処置する工程と
を含む前記方法に関する。
【0010】
皮膚の関連において、皮膚「乾燥」という用語は、皮膚の脱水(水分喪失)、及び皮膚からの脂質の喪失(一般に続いて脱水を起こす)の両方を包含する。
【0011】
「皮膚乾燥の徴候」という用語は、本明細書では、皮膚からの水分及び/又は脂質の喪失に伴って生じ、初期には目に見えないこともあるあらゆる皮膚の変化を意味し、具体的には、つっぱり感や荒いきめである。本明細書では、具体的には、顔の皮膚の乾燥、好ましくは頬の皮膚の乾燥に言及する。
【0012】
LCN1は、複数のアイソフォームにおいて既知のタンパク質であり、アミノ酸配列が既知であり、具体的にはアミノ酸配列が次のGenBank受託コード:AAH74926.1(2014年9月23日の日付のバージョン)を有する。LCN1をコードするmRNA配列もまた、当業者に既知であり、具体的にはNCBI受託コード:NM_002297.3(2016年6月12日の日付のバージョン)によって受託されている。
【0013】
「LCN1をコードする遺伝子の発現のレベル」という用語は、LCN1をコードする遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現のレベル、及び/又はLCN1タンパク質の発現のレベルを意味する。
【0014】
優先的には、LCN1タンパク質の発現のレベルは、LCN1タンパク質の特異的リガンド、例えばこのタンパク質に特異的な、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、Fab断片、scFv、又はナノボディ等を使用して測定される。次いで、発現のレベルは、当業者に既知の任意の方法により、例えば、ELISA試験、好ましくは、LCN1タンパク質に特異的な捕捉抗体と、加えてLCN1タンパク質に特異的な検出抗体とを使用するサンドウィッチELISAによって測定されてもよい。具体的には、LCN1タンパク質の発現のレベルの測定は、マイクロ流体チップ等、例えば国際出願WO2011/126249に記載されている、チップがLCN1タンパク質に対する特異的リガンドを含有しているマイクロ流体チップのような、小型化システムを使用して実施してもよい。続いて、LCN1タンパク質が前記リガンドと結合したかどうかを決定し、皮膚試料におけるLCN1の存在及び量に関する結論を得るために、好適な読み取り装置によりチップを分析してもよい。
【0015】
優先的には、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの発現のレベルの測定は、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの相補的ヌクレオチド配列でありLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列、若しくはLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列の断片であって、5〜50ヌクレオチド、優先的には10〜20ヌクレオチドを含む該配列若しくは該断片を用いて、又は、10〜60ヌクレオチドの、優先的には前記配列若しくは前記断片を含む15〜30ヌクレオチドのプライマー若しくはプローブの一対を用いて行われる。発現のレベルは、次いで、当業者に既知の任意の手段によって、例えば定量的PCRにより測定してもよい。
【0016】
本発明の範囲内において、「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」という用語は、当業者に周知であるように、好適な条件下で、具体的にはストリンジェントな条件下で、核酸配列が特定のヌクレオチド配列と結合することを指す。
【0017】
「ストリンジェントな条件」という用語は、本明細書において使用される場合、定義したレベルの相補性を有する核酸間で結合した対を産するには好適であるが、前記定義したレベルより低い相補性を有する核酸間で結合した対を形成させるには好適ではない条件に対応する。ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件に依存する。これらの条件は、当業者に既知の方法に従って改変してもよい。一般的には、高度にストリンジェントな条件は、融点(Tm)より低い約5℃、好ましくは塩基が完全に対になっている鎖のTmに近いハイブリダイゼーション温度である。ハイブリダイゼーション手順は、当技術分野では周知である。
【0018】
高度にストリンジェントな条件には、一般的に、約50℃から約68℃の温度での5×SSC/5×デンハルト液/1.0%SDS溶液中でのハイブリダイゼーションと、約60℃から約68℃の間の温度での0.2×SSC/0.1%SDS溶液中での洗浄とが含まれる。
【0019】
好ましい一実施形態によると、本発明による診断法及び美容処置法において使用される対象の皮膚試料は、好ましくは非侵襲的に、対象の皮膚で、優先的には対象の顔で、具体的には対象の頬で採取された試料である。優先的には、皮膚試料は、角質層から得られる。好ましくは、皮膚試料は、病変のない部分において対象の皮膚で採取された試料である。
【0020】
角質層は、表皮の最外層であり、皮膚表面を含む。これは本質的に死細胞からなる。
【0021】
一実施形態によると、本発明による方法は、対象から皮膚試料を採取するための工程を含む。この工程は、優先的には非侵襲的に実施され、具体的には、局所麻酔薬を必要としない。好ましい一実施形態によると、試料を採取するための工程は、皮膚表面を擦ることによって、又はD-squame(登録商標)ディスク等の接着面を用いて実施される。
【0022】
「対象」という用語は、ヒト、好ましくは20歳から90歳までの、優先的には35歳から80歳までの、45歳から80歳までの、更により優先的には60歳から80歳までのヒトを意味する。好ましくは、対象は女性である。優先的には、対象は、皮膚科学的病変及び/又は皮膚科学的疾患を患っていない。
【0023】
特定の実施形態において、基準値は50から90ng/mlの間のLCN1タンパク質、好ましくは、基準値は60から80ng/mlの間のLCN1タンパク質であり、より好ましくは、基準値は67から75ng/mlの間のLCN1タンパク質である。
【0024】
特定の一実施形態において、工程(b)は、得られたLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを基準値と比較した後に行われる。一実施形態において、基準値は、定義した集団における、例えば定義した年齢群及び/又は定義したスキンタイプ(白人、アジア人等)を有する集団における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの平均値によって決定される。特定の一実施形態において、基準値は、60歳から80歳までの女性における、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの平均値によって決定される。更なる実施形態において、基準値は、ROC分析によって決定された最適閾値である。本発明によると、基準値は、複数の試料、好ましくは50、100、200、300、又は500例を超える試料によって決定してもよい。
【0025】
「比較」という用語は、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが、基準値と本質的に同一であるか基準値と異なるかを決定することを指す。好ましくは、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルは、認められた差異が統計的に有意であれば、基準値とは異なるとみなされる。差異が統計的に有意でなければ、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルと基準値とは本質的に同一である。
【0026】
この比較に基づき、皮膚が乾燥の徴候を呈しているかどうかを決定することができる。典型的には、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが基準値より有意に低い場合、皮膚は乾燥の徴候を呈しているとみなされ、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルが基準値と本質的に同一である又は有意により大きい場合、皮膚は乾燥の徴候を呈していないとみなされる。
【0027】
「皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化粧用組成物」という用語は、皮膚乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な、当業者に既知のあらゆる化粧用組成物を意味する。
【0028】
本発明はまた、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための方法であって、次の工程:
a)当該候補化合物に曝露した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルを測定する工程と、
b)前記発現のレベルを、前記化合物に曝露していない前記皮膚の試料における発現のレベルと比較する工程と、
c)候補化合物に曝露していない皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルに対して、前記候補化合物に曝露した皮膚試料においてLCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの増加が検出された場合、前記候補化合物を、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物として同定する工程と
を含む前記方法に関する。
【0029】
好ましい一実施形態によると、本発明による、皮膚老化の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための方法において使用される皮膚試料は、皮膚細胞培養物、表皮培養物、再構成された皮膚全体、ヒト皮膚外植体、又は上記で定義したような対象からの皮膚試料である。
【0030】
優先的には、本発明による方法は、LCN1をコードする遺伝子の発現のレベルの測定の準備のために試料を処理するための工程を含む。例えば、処理される試料は、可溶性タンパク質抽出物である。具体的には、皮膚試料がD-squame(登録商標)ディスク等の接着面を用いて得られている場合、可溶性タンパク質抽出物は、タンパク質抽出システム、例えばD-squame試料を最少量の抽出緩衝液と接触させることによって可溶性タンパク質抽出物を得るのに好適である、国際出願WO2015/009085に記載されているタンパク質抽出システムを使用して得てもよい。
【0031】
本発明はまた、
a)皮膚試料におけるLCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段と、
b)使用説明書と
を含むキットに関する。
【0032】
「LCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段」という用語は、LCN1タンパク質の特異的リガンド、例えばこのタンパク質に特異的な、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、Fab断片、scFv、若しくはナノボディ等、又はマイクロ流体チップ、例えば国際出願WO2011/126249に記載されている、チップがLCN1タンパク質に対する特異的リガンドを含有しているようなマイクロ流体チップを意味する。別法として、LCN1をコードする遺伝子のmRNAの相補的ヌクレオチド配列でありLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列、若しくはLCN1をコードする遺伝子のmRNAと特異的にハイブリダイズする配列の断片であって、5〜50ヌクレオチド、優先的には10〜20ヌクレオチドを含む該配列若しくは該断片、又は10〜60ヌクレオチドの、優先的には前記配列若しくは前記断片を含む15〜30ヌクレオチドのプライマー若しくはプローブの一対を意味する。
【0033】
好ましくは、LCN1をコードする遺伝子の発現を測定するための手段は、少なくとも1つのLCN1の特異的リガンド、具体的にはLCN1タンパク質に特異的な捕捉抗体と検出抗体との一対である。
【0034】
一実施形態によると、本発明によるキットは更に、D-squame(登録商標)ディスク等の皮膚試料を採取するための手段を含む。
【0035】
本発明は更に、皮膚の乾燥の徴候を低減し、且つ/又はその進行を遅延させるのに好適な化合物を同定するための本発明によるキットの使用に関する。