(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペルフルオロペルヒドロフェナントレン溶媒と、ポリフルオロカーボンと、1種類以上の脱フッ素化合物とを含む、カミソリ刃の刃先に適用するための溶液であって、前記脱フッ素化合物が、C14F10、C14F14、若しくはC14F18、又はこれらの任意の組み合わせからなる溶液。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、改善された刃先を提供するための新規な溶媒及びプロセスを提供する。
【0021】
本発明は、剃毛属性の改善を示すように形成される、カミソリ刃の刃先に関する。本発明の主要な一態様は、低い切断抵抗力及び低い摩擦力を有する薄いコーティングを刃先上に形成している新規な溶媒を製造することを目的とする。用語「薄い」とは、本発明のカミソリ刃縁部上のコーティングの厚さについての言及である。一般的に、刃先上のコーティングが薄くなるほど、切断抵抗力がより低くなり、剃毛属性はより良好になる。刃先のコーティングのために通常利用される材料は、フルオロポリマーの一種、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetratfluoroethylene)、すなわちPTFEである。したがって、PTFEは、本発明の説明の全体を通して言及されるが、実質的に等価として代用可能な任意の他の材料を排除するものではない。
【0022】
刃先上のPTFEコーティングが薄すぎると、ポリマー(PTFEなど)材料の固有特性によって、不十分な被覆率、及び低い耐摩耗性が生じる恐れがある。あるいは、PTFEコーティングが厚すぎると、非常に高い初期の切断抵抗力値が生じる場合があり、これは一般に、より大きな抵抗、引張り、及び引きずりをもたらし、結果として、切断効率が失われ、続いて剃毛の快適性が失われる恐れがある。
【0023】
一手法は、噴霧及び焼結のプロセスによって作り出された比較的厚いPTFEコーティングの厚さを低減する(例えば、又は薄化する)ことが可能な、本発明の譲受人に譲渡された、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,985,459号に記載の、FLUTEC(登録商標)技術の適用である。このプロセスは、
図1に示すように、流れ10で示され、先端部13の上及び周辺に、PTFE粒子11を噴霧してコーティングさせた刃12を、工程14で示すように、約1気圧(1atm)、及び摂氏約330度(℃)〜約370℃の温度でアルゴンを使用して焼結し、焼結PTFEコーティング16を作り出す。工程17で示すように、続いてFLUTEC(登録商標)技術をコーティング16上に適用し、薄化PTFEコーティング18を作り出す。このことには、典型的には、PTFEコーティングされた刃16を、約270℃〜約370℃の高温下、及び約3atm〜約6atmの圧力で、溶媒中に浸漬させることが含まれる。このFlutec(登録商標)プロセスで使用する溶媒としては、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロシクロアルカン、又はペルフルオロポリエーテルが挙げられ得る。
【0024】
本発明は、ポリマー材料の属性と、改善された剃毛属性の提供が可能な最も望ましいコーティングの獲得とを両立させるという技術的な課題を克服する。特定の実施形態では、本発明は、改善されたFLUTEC(登録商標)技術プロセス及び改善されたFLUTEC(登録商標)溶媒を提供する。例えば、米国特許第5,985,459号に記載されているように、刃は、Flutec PP11、すなわち、ペルフルオロペルヒドロフェナントレンなど、Flutecオリゴマー中に2分間以上浸漬され、圧力下で加熱される。この溶液は、刃上のコーティングを部分的に除去することによって刃を処理する。具体的には、除去されるコーティングは、一般に、外側コーティング、典型的には、以前に噴霧された、又は、所望により、噴霧されて焼結され得る、軟質の潤滑性コーティング(例えば、PTFEなどのポリマー材料)である。
【0025】
しかしながら、本発明は、FLUTEC(登録商標)溶媒(又は同等物)の初期使用が、一般に、ウールフェルト切断抵抗力値などの所望の刃先属性を改善するのに完全に有効ではないことを認識している。驚くべきことに、場合によっては、Flutecの初期使用は、ウールフェルト切断抵抗力試験値が刃先上で得られるときに負の影響を有することが見出された。
【0026】
本発明の刃は、同一の既に利用されているFLUTEC(登録商標)溶媒溶液によって、1回又は複数回、時にはおよそ50、80又は100回(又は約1〜約100「ラン」の範囲で)処理されるか、又は「ラン」される。この新規プロセスは、予想外に、刃先上での改善されたウールフェルト切断抵抗力を達成した。更に、同一の既に利用されているFLUTEC(登録商標)溶媒による刃の数回の「ラン」、時にはおよそ50、80又は100「ラン」(又は約1〜約100「ラン」の範囲)後にのみ、得られた望ましいウールフェルト切断抵抗力値が維持され(例えば、安定し)、又は後続のランにおいて再現されるようになった。
【0027】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、「処理された」又は変性したFlutec溶媒が提供され、これは、ウールフェルト切断抵抗力値など、向上した刃先属性を提供するのに非常に有効である。また、変性したFlutec溶媒が、溶液に追加の利益を提供すると認識された1種類以上の化合物を有したことは驚くべきことであった。本明細書に記載される本発明のこれらの化合物は、脱フッ素化合物と呼ぶものとし、好ましくは1百万分率未満の濃度である。これらの化合物に加えて、除去された刃先コーティング、特に、テフロン又はPTFEコーティング、の部分又は粒子、及び鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物もまた、新規溶媒中に存在し得る。
【0028】
本発明は、元のFlutec溶媒、1種類以上の脱フッ素化合物、テフロン若しくはPTFE、及び/又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、若しくは粒子、表面若しくは化合物で、Flutec溶媒(元の又は変性したもの)をドープすること、又はこれに添加することを想到する。
【0029】
本明細書に記載される全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、重量に基づいて計算される。
【0030】
本明細書で使用するとき、用語「カミソリ刃縁部」又は「カミソリ刃の刃先」又は「刃先」は、刃の切断点及び切断小面を含む。
【0031】
本明細書で使用するとき、「溶液」は、構成成分が一緒に混合されることを意味する均質な混合物である。「溶液」は、溶解される物質である溶質から構成される。「溶媒」は、溶質がその中に溶解される最大量の物質である。本発明の溶液は、好ましくは、Flutec溶媒、又は他の化合物、成分、溶質、若しくはこれらの組み合わせを含む変性したFlutec溶媒を含む。本発明の溶質は、好ましくは、1種類以上の脱フッ素化合物、PTFE、又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物を含む。本発明の理想的な変性したFlutec溶液は、溶媒溶液の一種であり、したがって、溶媒及び溶液という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0032】
本明細書で使用するとき、「化合物」は、不純物、ドーパント、反応副生成物、分解生成物、又はこれらの任意の組み合わせとして定義される。
【0033】
本発明では、刃属性は、様々な試験を使用して測定することができる。切断抵抗力を測定することは、刃の切れ味と互いに関係がある。処理された刃の、刃の切れ味は、切断抵抗力について刃を試験することによって定量化され得る。切断抵抗力は、ウールフェルトを切断するのに各刃が必要とする力を測定することによって刃の切断抵抗力値を測定する、ウールフェルト切断機試験によって判定される。各刃はウールフェルト切断機に5回通され、各切断の抵抗力(例えば、ポンド)が記録器で測定される。5回の切断のうちの最も低いものが、切断抵抗力として定義される。本発明では、ウールフェルト切断機試験は、好ましくは、各処理又はラン後に刃又は刃のサンプルに対して実施される。シリコン油滴試験及び顕微鏡による高さ評価などの他の試験もまた、刃属性を判定するために本発明において想到される。
【0034】
図2に示すように、本発明の新規プロセス20の概略が提供される。
図3は、本発明の新規プロセスの相補的なフローチャート30を示す。
図2にはいくつかのカミソリ刃積層体22が存在しており、
図2Aの拡大図に示されるように、それぞれが個々のカミソリ刃22aを含む。最初に、これらの刃はコンテナ24内に配置される。本発明のいくつかの刃積層体22は、互いに隣接して配置された最大5000枚の刃を有し得る。本発明における処理のために調製された1〜約50以上の刃積層体が存在し得る。これらの調製された刃は、望ましくは、ポリマーの軟質の潤滑層、好ましくは、テロマー又はポリテトラフルオロエチレン、すなわちPTFEなど、ポリフルオロカーボンでコーティングされる。コーティングされた刃は、
図3のフローチャート30の工程31に示されている。コーティングプロセスは、噴霧によって、又は噴霧及び焼結によって起こり得るが、本発明では、刃先へのこのコーティングの任意の実現可能な適用が想到されている。例えば、コーティングは、これらに限定されるものではないが、浸漬、スピンコーティング、スパッタリング、又は熱化学気相成長法(CVD)を含む、任意の方法によって最初に付着され得る。
【0035】
複数のコーティングされた刃22aを有する調製されたカミソリ刃積層体22のうちの1つ以上は、槽26に入れられる。次いで、溶媒25が槽26に入れられる。これはまた、
図3のフロー工程32に示されている。このプロセスに使用することができる溶媒の種類は、例えば、米国特許第5,985,459号に開示されているように、ポリフルオロカーボン溶解性、溶解温度、極性、及び他のパラメータに基づいて選択することができる。
【0036】
本発明の溶媒の好ましい式は、C
14F
24である。本発明では、この式を有する任意の構造が想到される。本発明のC
14F
24溶媒の1つの例示的な化合物構造42を
図4に示す。本発明の1つの好ましい溶媒は、ペルフルオロテトラデカヒドロフェナントレンである。本発明で使用するための溶媒の好ましいブランド名は、FLUTEC(登録商標)である。好ましい種類のFLUTEC(登録商標)溶媒は、Flutec PP−11である。
【0037】
元の状態又は未変性状態のFlutec溶媒25は、供給元から受け取ったときの溶媒であるという点において「バージン」又は出発状態溶媒と見なされ得る。次いで、この元のFlutec溶媒は、刃先上のポリマーコーティングを薄くする及び/又は溶解する温度まで加熱される。本発明では、溶媒を加熱する好ましい温度は、華氏約500度〜約700度、好ましくは華氏約618度の範囲である。刃は、好ましくは、約30秒〜約1時間の範囲の時間にわたって、好ましくは約90秒の時間にわたって、加熱された溶媒中に、望ましくは密閉された槽26内に配置される。刃を槽から取り出すために、溶媒は、望ましくは槽から排出され得、刃は、望ましくは冷却され得る。
【0038】
本発明で使用するとき、用語「ラン」は、好ましくは、槽に刃を入れる工程と、槽を密封する工程と、槽に溶媒を入れる工程と、溶媒を一定時間加熱するために槽を加熱する工程と、変性した溶媒を除去する工程と、刃を冷却する工程と、試験するために刃を取り出す工程と、を含むが、これらに限定されない。本発明の代替実施形態では、「ラン」は、上記の全ての工程を含まなくてもよく、又はランは異なる順序の工程を含んでもよい。
【0039】
これらの条件下で、刃は、刃先からPTFEコーティングを部分的に除去するように(例えば、
図3の工程33において)処理される。述べたように、この除去は、刃先上のコーティングを低減、溶解、又は薄くすることが望ましい。したがって、コーティングされたカミソリ刃縁部は変性しており、これらの変性した刃22a’が
図2で参照されている。加えて、Flutec溶媒25もまた変性しており、除去された刃先コーティング、特にテフロン又はPTFEコーティング、の少なくとも部分又は粒子を含むようになったため、
図2では溶媒25’になっている。
【0040】
PTFE部分又は粒子は、望ましくは、Flutec溶液中に溶解される。この変性したFlutec溶媒25’は、例えば、
図2に示されている。
【0041】
本発明の好ましい実施形態の新規な態様によれば、
図2及び
図3にそれぞれ矢印27及び37で示されるように、この変性したFlutec溶液25’は1回以上再使用される。変性した溶媒25’は、好ましくは、刃積層体22上の変性した刃22a’のいずれでも再使用されないか、又は一部、若しくは全てで再使用される。
【0042】
刃は、変性したFlutec溶媒中で処理及び/又は再処理される。本発明は、変性した溶媒中での再処理のためにいくつかの「刃」シナリオを想到する。場合によっては、
図3の工程38に示されるように、同じ刃(例えば、同じ刃積層体)を処理し続けることが望ましいことがある。他の場合では、
図3の工程38に示されるように、1回以上のラン後に、変性した刃積層体を取り出し、それをテロマーでコーティングされた刃の新しい刃積層体(例えば、新たに噴霧された刃及び/又は新たに噴霧され、焼結されたもの)に置き換えることが望ましいことがある。更にまた、
図3の工程38に示されるように、まだ溶媒で処理されていない、新たに噴霧された刃及び/又は新たに噴霧され、焼結された刃と、処理された刃(例えば、1つ以上の処理を受けた積層体上にある刃)、したがって、PTFE除去が行われた変性した刃と見なされる刃と、の組み合わせを有することが望ましい場合がある。更にまた、
図2に示されるように、PTFE若しくは他のポリマー28及び/又は元のFlutec溶媒29は、Flutec溶媒に直接添加され得る。したがって、
図2又は
図3に示されるように、ポリマー28、元のFlutec溶媒29、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、若しくはこれらの粒子、表面若しくは化合物21、及び/又は1種類以上の脱フッ素化合物23は、最初からを含めて、本明細書に記載されるプロセス工程のいずれか1つの間に、任意の量で任意の時間に、溶媒25に添加され得る。ポリマー又はPTFE 28及び元のFlutec溶媒29を添加するこの態様、及びこれらの他の化合物もまた、
図3において矢印37から流れる工程38に示されている。
【0043】
各後続の溶媒処理又はラン(例えば、変性したFlutec溶液の使用及び再使用)により、残りのPTFEコーティングのより多くの部分が刃先から除去された。これにより、コーティングされたカミソリ刃縁部が再び変性し(例えば、より薄いコーティング)、Flutec溶液が再び変性する(例えば、除去された刃先コーティングの更なる粒子が、変性したFlutec溶液中に溶解される)。
【0044】
溶媒溶液が変性すると、溶媒の色は予想外に変化する。色は、元のFlutecの色とは異なる。色は、溶媒がその元の状態又は「バージン」状態にあるときの、透明かつ着色されていない(例えば、水のような)色から、溶媒がその理想的な変性状態にあるときの、淡黄(例えば、尿のような)色〜黄色の範囲に変化する。場合によっては、溶媒は黄褐色である。
【0045】
1回又は複数回のラン後、刃属性は試験され得る。これは、例えば、
図3の試験工程35において行われる。1つの既知の刃属性は切れ味である。上述したように、切断抵抗力を測定することは、切れ味と互いに関係がある。処理された刃の、刃の切れ味は、切断抵抗力について刃を試験することによって定量化され得る。切断抵抗力は、ウールフェルトを切断するのに各刃が必要とする力を測定することによって刃の切断抵抗力値を測定する、ウールフェルト切断機試験によって測定される。各刃はウールフェルト切断機に5回通され、各切断の抵抗力(例えば、ポンド)が記録器で測定される。5回の切断のうちの最も低いものが、切断抵抗力として定義される。本発明では、ウールフェルト切断機試験は、好ましくは、各処理又はラン後に刃又は刃のサンプルに対して実施される。
【0046】
シリコン油滴試験及び顕微鏡による高さ評価などの他の既知の試験もまた、刃属性を判定するために本発明において想到される。
【0047】
ある量のテフロン又はPTFEが溶解されている又はそうでなければ存在している溶液の再使用が有効な溶媒を提供することは、明確には理解されておらず、また明白でもなかった。
【0048】
本発明の変性したFlutec溶液はまた、驚くべきことに、以下でより詳細に記載される1種類以上の脱フッ素化合物からもなる。これらの1種類以上の脱フッ素化合物は、Flutec溶媒と共に均質な溶液中にあり得る。変性したFlutec溶液はまた、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)からもなり得る。これらの後者の要素、粒子、化合物、又は表面は、槽が鋼からなる場合、カミソリ刃又は槽に由来し得る。例えば、鉄の存在は、鉄がFlutec溶液(変性した溶液であるか否かにかかわらず)と接触しているときに有益な1種類以上の脱フッ素化合物を生成する触媒であり得る。変性したFlutec溶液はまた、好ましくは黄色からもなる。
【0049】
変性したFlutec溶液のこれらの新規な態様を以下に説明する。
【0050】
更に、本発明では、Flutec溶媒25(元のFlutec溶媒)はテフロン又はPTFEなどのポリフルオロカーボンの固体粒子でドープされ得ることが想到される。
【0051】
また、本発明では、Flutec溶媒25(元のFlutec溶媒)は1種類以上の脱フッ素化合物でドープされ得ることも想到される。
【0052】
また、本発明では、Flutec溶媒25(元のFlutec溶媒)は、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)でドープされ得ることも想到される。
【0053】
脱フッ素化合物、PTFE部分又は粒子を含む本発明の好ましい理想的な変性したFlutec溶液25’を含む槽26を示す図が、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)と共に、
図9に示されている。図示されていないが、理想的な変性した溶液25’は、1種類以上の脱フッ素化合物のみ、又はPTFEのみ、又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、若しくはこれらの粒子、表面若しくは化合物のみ、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0054】
溶媒の再使用が、本明細書に記載されるものからいくつか例を挙げると、脱フッ素化合物又は鉄若しくは鉄化合物など、新しい構造が提供されるような方法で溶媒を変性させること、及びこれらの構造又は粒子が有効な溶媒を提供することもまた、認識されていなかった。
【0055】
本発明では、望ましい刃(例えば、最終の一連の刃上での5回の切断に対して約0.7lbs〜約1.4lbsの範囲のウールフェルト切断抵抗力値)を得るために、好ましくは、変性した溶媒中での数回の処理又はラン(例えば、刃及び溶媒の変性)が必要とされる。許容可能な属性を有する刃が製造されると、溶媒を再使用して更に処理する必要はない。それらの望ましい刃を製造する溶液は、理想的な変性した溶媒を含むと考えられる。この溶液は、望ましくは、
図3の工程36に示されるように、よりはるかに大きなスケールでの刃の製造に使用することができる。
【0056】
本発明では、刃上で望ましいウールフェルト切断抵抗力を得るための、ひいては、望ましい溶液又は理想的な変性した溶媒を得るためのラン回数は、1〜約100ランの範囲であり得る。
【0057】
図8を参照すると、新規溶媒を製造するための本発明プロセスの多数回のランにわたるウールフェルト切断抵抗力値の分布がチャート80に示されている。このチャート80は、ウールフェルト切断抵抗力値83に関連するものとして、「ラン」回数81、すなわち、刃が溶媒中で処理され、変性した回数を示している。チャートからは、初期の数回のラン後、チャート80の領域82内のウールフェルト切断抵抗力値が、一般に約1.6ポンド(lbs.)であることが分かり、これは、切断抵抗力値として一般に望ましくないものである。約35〜45回のラン又は処理の後、領域84に示されるウールフェルト切断抵抗力値は、一般に約1.6lbs〜約1.8lbsの範囲で、予想外にかつ不所望に増加する。
図8のチャート領域86においては、刃上で所望のウールフェルト切断抵抗力値(例えば、約1.2lbs)を得てそれを維持するために、有効には略80回の「ラン」が必要であったことが分かる。このチャートでは80回のランが示されているが、他の例では、刃上で所望のウールフェルト切断値を達成するために80回未満のランが必要とされることもあり得、又は刃上で所望のウールフェルト切断値を達成するために80回を超えるランが必要とされることもあり得る。
【0058】
したがって、
図3のフロープロセス30を再び参照すると、試験工程35の後に望ましい切断抵抗力値が得られた時点で、最終の一連の刃が槽16から取り出され、その結果、工程36において、溶媒そのものが保持され、コンテナ24(例えば、製造)からの新しい刃のバッチと共に利用され得ることに留意されたい。
【0059】
脱フッ素化合物
本明細書に記載されるように、本発明の元の溶媒は、好ましくは、
図4に示される例示的な構造42を有する分子式C
14F
24を有する化合物からなるが、本発明では、この式の他の立体異性体及び構造異性体が想到される。
【0060】
本明細書にも記載されるように、本発明の変性した溶媒は、望ましくは、1種類以上の脱フッ素化合物からなる。これらの化合物は、処理の1回以上の繰り返し又は「ラン」、好ましくは処理の1〜約100回の繰り返し又は「ラン」、より好ましくは30〜90回の繰り返し、最も好ましくは約50〜60回の繰り返しの後に、溶媒中に得られる。
【0061】
本発明の1種類以上の脱フッ素化合物は、分子式C
14F
nを含み、式中、変数「n」は10〜23の範囲の値を有する。本発明の好ましい実施形態では、例示的な脱フッ素化合物は、10、14、及び18に等しいnの値を有する。好ましい脱フッ素化合物は、以下の式、C
14F
10、C
14F
14、若しくはC
14F
18のそれぞれの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせからなる。本発明の代替の好ましい実施形態では、分子式C
14F
nを含む1種類のみの脱フッ素化合物が存在し、式中、変数「n」は10〜23の範囲の値を有する。
【0062】
C
14F
18、C
14F
14、及びC
14F
10の分子式についての本発明の例示的な脱フッ素化合物構造は、それぞれ、構造52、構造54、及び構造56として
図5に示されているが、それぞれについて、本発明では、これらの構造の他の立体異性体及び構造異性体が想到される。
【0063】
全てのこれらの化合物構造は、変性した溶媒中で観察される場合、元の溶媒からの6、10、及び14個のフッ素原子の脱フッ素、又は損失を表し得る。化合物は、相対濃度で存在し得る。
【0064】
溶媒中の1種類以上の脱フッ素化合物のうちのいずれか1つは、全溶媒の組成物の約1重量百万分率以下である。
【0065】
変性した溶媒中のC
14F
18化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲、好ましくは約0.7%である。変性した溶媒中のC
14F
14化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲、好ましくは約0.4%である。変性した溶媒中のC
14F
10化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲、好ましくは約0.1%である。2種以上の脱フッ素化合物が存在する場合、化合物はそれぞれ、変性した溶媒中に略同じ濃度レベルで、又は異なるレベルで、存在し得る。例えば、一実施形態では、C
14F
18化合物の濃度は、C
14F
14化合物の濃度よりも高い濃度であり得、これら前者濃度の両方は、変性した溶媒中のC
14F
10化合物の濃度よりも高いものであり得る。
【0066】
図6は、変性したFlutec溶液及び蒸留したFlutec溶液をそれぞれ表している、クロマトグラフィーのオーバーレイスペクトル60b及び60cを示しており、両者は、蒸留した溶媒中であるか、変性した(例えば、ならされた)溶媒中であるかにかかわらず、本発明の溶媒のピーク62及びピーク64においてそれぞれ示される式C
14F
18及びC
14F
14の脱フッ素化合物の存在を示している。また、
図6には、元の溶媒C
14F
24のピーク66も示されている。元の未変性のFlutec溶液を表すスペクトル60aでは、元の溶媒を表すピーク66以外にピークは存在せず、したがって、元の溶媒中に脱フッ素化合物が存在しないことが認識されることに留意されたい。
【0067】
図7は、変性したFlutec溶媒及び蒸留したFlutec溶媒をそれぞれ表している、クロマトグラフィーのオーバーレイスペクトル70b及び70cを示しており、両者は、本発明の溶媒のピーク72、ピーク74、及びピーク76においてそれぞれ示されるC
14F
18、C
14F
14、及びC
14F
10の脱フッ素化合物の存在を示している。
図7にも示されている、元の「バージン」又は未変性のFlutec溶媒を表すスペクトル70aでは、このようなピークは存在せず、したがって、脱フッ素化合物は存在しないことに留意されたい。
【0068】
図9は、新規な状態の変性したFlutec溶液25’を有する槽26を示す。その理想的な変性状態では、本発明のFlutec溶液は、
図9に示すように、1種類以上の脱フッ素化合物92、94、及び96を含む。記載されるように、各種類の化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲である。
【0069】
別の実施形態では、本発明の理想的な変性したFlutec溶液は、
図9に示すように、ある濃度のテフロン粒子又はPTFE93を含む。テフロン又はPTFE粒子の濃度は、約50ppm〜約1000ppmの範囲であり得る。
【0070】
更に別の実施形態では、理想的な変性したFlutec溶液は、
図9に例示するように、ある濃度の鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物95を含む。これらの粒子の濃度は、約5ppm〜約1000ppmの範囲であり得る。
【0071】
また別の実施形態では、本発明の変性したFlutec溶液は黄色を含む。
図10では、それぞれが黄色110a、110b、110cをそれぞれ有する、本発明の変性したFlutec溶液のいくつかのサンプル100a、100b、100cの写真が示されている。黄色110cは、サンプル100a及び100bの黄色110a及び110bよりもそれぞれ明るい色調であることが分かる。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明の理想的なFlutec溶液は、以下のうちの1つ以上を含む:1種類以上の脱フッ素化合物、約50ppm〜約1000ppmの範囲の濃度のテフロン粒子、約5ppm〜約1000ppmの範囲の濃度の鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、若しくはこれらの粒子、表面若しくは化合物、黄色、又はこれらの任意の組み合わせ。
【0073】
更には、様々な製造供給元からの原材料の、種々の分散体又は他の形態を容易に使用して、薄く均一なコーティングを達成することができる。
【0074】
本発明は、PTFEに加えて他のフルオロポリマーとの適用性を想到しており、それらのフルオロポリマーとしては、PFA(ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂)、FEP(フッ素化エチレン−プロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、及びECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本発明は、フルオロポリマー(例えば、PTFE)複合体との適用性を想到しており、それらのフルオロポリマー複合体としては、PTFE/ナノダイヤモンド、PTFE/シリカ、PTFE/アルミナ、PTFE/シリコーン、PTFE/PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、及びPTFE/PFAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
更には、本発明のプロセスは、必ずしも、PTFE又はPTFE型の材料への適用に制約されるものではなく、他の非フルオロポリマー(例えば、非PTFE)コーティング材料にもまた適用可能であり、それらのコーティング材料としては、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、パリレン、及び/又は他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
更には、カミソリ刃の基材は、クロム(Cr)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、非結晶ダイヤモンド、クロム/白金(Cr/Pt)、又は他の好適な材料、若しくは材料の組み合わせなどの最上層コーティングを有する鋼、あるいはこのコーティングを有さない鋼からなってもよい。
【0078】
本発明の別の実施形態では、刃は、湿式シェーバーに加えて、乾式シェーバーに関連して使用し得ることが想到され、この乾式シェーバーの切断刃は、本明細書に記載されるのと同様に製造される。
【0079】
本発明の更に別の実施形態では、上述の本発明を、外科用の刃、手術用メス、ナイフ、ピンセット、ハサミ、大ハサミなどのような内科的若しくは外科的器具において実装される刃、又は他の非外科用の刃若しくは切断器具において実装される刃に関連して使用され得ることが、更に想到される。
【0080】
実施例/組み合わせ
A.溶媒と、1種類以上の脱フッ素化合物と、を含む、カミソリ刃の刃先に適用するための溶液。
B.上記溶液が、ポリフルオロカーボン、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物、又はこれらの任意の組み合わせを更に含む、段落Aに記載の溶液。
C.上記脱フッ素化合物がC
14F
nを含み、式中、n=10〜23である、段落A又はBに記載の溶液。
D.上記1種類以上の化合物が、C
14F
10、C
14F
14、若しくはC
14F
18、又はこれらの任意の組み合わせからなる、段落A〜Cのいずれか1つに記載の溶液。
E.上記溶媒中の1種類以上の化合物のうちのいずれか1つの濃度が、約1百万分率以下である、段落A〜Dのいずれか1つに記載の溶液。
F.上記溶媒中の上記C
14F
18化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶媒中の上記C
14F
14化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶媒中の上記C
14F
10化合物の濃度が、約0.05%〜約1%である、段落A〜Eのいずれか1つに記載の溶液。
G.上記溶媒がC
14F
24である、段落A〜Fのいずれか1つに記載の溶液。
H.カミソリ刃がフルオロポリマーでコーティングされている、段落A〜Gのいずれか1つに記載の溶液。
I.上記フルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレンである、段落A〜Hのいずれか1つに記載の溶液。
J.上記ポリフルオロカーボンがポリテトラフルオロエチレンを含む、段落A〜Iのいずれか1つに記載の溶液。
K.上記ポリテトラフルオロエチレンの濃度が、約50ppm〜約1000ppmの範囲である、段落A〜Jのいずれか1つに記載の溶液。
L.上記鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物の濃度が、約5ppm〜約1000ppmの範囲である、段落A〜Kのいずれか1つに記載の溶液。
M.黄色を更に含む、段落A〜Lのいずれか1つに記載の溶液。
N.上記溶液が、上記1種類以上の化合物でドープされ、ポリテトラフルオロエチレンでドープされ、上記鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物、又はこれらの任意の組み合わせでドープされている、段落A〜Mのいずれか1つに記載の溶液。
O.1種類以上の化合物でドープされた溶媒を含む、刃先に接触させるための溶液。
P.上記1種類以上の化合物が、1種類以上の脱フッ素化合物、1種類以上のポリフルオロカーボン、1種類以上の鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物、又はこれらの任意の組み合わせを更に含む、段落Oに記載の溶液。
Q.上記溶媒がC
14F
24である、段落O又はPに記載の溶液。
R.上記脱フッ素化合物がC
14F
nを含み、式中、n=10〜23である、段落O又はP又はQのいずれか1つに記載の溶液。
S.上記1種類以上の化合物が、C
14F
10、C
14F
14、若しくはC
14F
18、又はこれらの任意の組み合わせからなる、段落O〜Rのいずれか1つに記載の溶液。
T.上記溶媒中の1種類以上の化合物のうちのいずれか1つの濃度が、約1百万分率以下である、段落O〜Sのいずれかに記載の溶液。
U.上記溶媒中の上記C
14F
18化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶媒中の上記C
14F
14化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶媒中の上記C
14F
10化合物の濃度が、約0.05%〜約1%である、段落O〜Tのいずれかに記載の溶液。
V.上記ポリフルオロカーボンがポリテトラフルオロエチレンを含む、段落O〜Uのいずれかに記載の溶液。
W.上記ポリテトラフルオロエチレンの濃度が、約50ppm〜約1000ppmの範囲である、段落O〜Vのいずれかに記載の溶液。
X.上記鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物の濃度が、約5ppm〜約1000ppmの範囲である、段落O〜Wのいずれかに記載の溶液。
Y.黄色を更に含む、段落O〜Xのいずれかに記載の刃先に接触させるための溶液。
Z.Flutec溶媒と、ポリフルオロカーボンと、を含む、カミソリ刃の刃先に適用するための溶液。
AA.上記溶液が、上記ポリフルオロカーボンでドープされている、段落Zに記載の溶液。
BB.上記ポリフルオロカーボンがPTFE粒子からなる、段落Z又はAAに記載の溶液。
CC.上記ポリフルオロカーボンの濃度が、約50ppm〜約1000ppmの範囲である、段落Z又はAA又はBBに記載の溶液。
DD.1種類以上の脱フッ素化合物を更に含む、段落Z又はAA又はBB又はCCに記載の溶液。
EE.上記1種類以上の脱フッ素化合物がC
14F
nを含み、式中、n=10〜23である、段落Z又はAA又はBB又はCC又はDDに記載の溶液。
FF.上記1種類以上の化合物が、C
14F
10、C
14F
14、若しくはC
14F
18、又はこれらの任意の組み合わせからなる、段落Z又はAA又はBB又はCC又はDD又はEEに記載の溶液。
GG.上記溶液中の上記C
14F
18化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶液中の上記C
14F
14化合物の濃度が、約0.05%〜約1%であり、上記溶液中の上記C
14F
10化合物の濃度が、約0.05%〜約1%である、段落Z〜FFのいずれかに記載の溶液。
HH.溶媒がC
14F
24である、段落Z〜GGのいずれかに記載の溶液。
II.カミソリ刃がフルオロポリマーでコーティングされている、段落Z〜HHのいずれかに記載の溶液。
JJ.上記フルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレンである、段落Z〜IIのいずれかに記載の溶液。
KK.鉄、炭素系鋼、又はステンレス鋼粒子、これらの化合物又は表面を更に含む、段落Z〜JJのいずれかに記載の溶液。
LL.上記鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物の濃度が、約0.1ppm〜約1000ppmの範囲である、段落Z〜KKのいずれかに記載の溶液。
MM.黄色を更に含む、段落Z〜LLのいずれかに記載の溶液。
NN.黄色を含む、カミソリ刃の刃先に適用するための溶液。
OO.処理されたFlutec溶媒を含む、カミソリ刃の刃先に適用するための溶液。
PP.上記処理された溶媒が、1種類以上の脱フッ素化合物、1種類以上のポリフルオロカーボン、1種類以上の鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はこれらの粒子、表面若しくは化合物、又はこれらの任意の組み合わせを含む、段落OOに記載の溶液。
【0081】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限られるとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0082】
「発明を実施するための形態」の中で引用される文献は全て、関連部分において参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。本文献における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文献においてその用語に割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【0083】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。