特許第6943969号(P6943969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943969
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】スキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20210927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61Q19/00
   A61K8/02
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-543819(P2019-543819)
(86)(22)【出願日】2018年3月20日
(65)【公表番号】特表2020-507590(P2020-507590A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】US2018023233
(87)【国際公開番号】WO2018183029
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年8月13日
(31)【優先権主張番号】15/475,519
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーン デイビッド マッコナーフィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ マックス サンケル
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ リン ボランド
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0106659(US,A1)
【文献】 米国特許第05023075(US,A)
【文献】 特表2007−509187(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0143268(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0117225(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0242573(US,A1)
【文献】 特表2015−520119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーによる良好な保湿に関連付けられるパーソナルケア組成物であって、
1)前記組成物の5重量%〜30重量%の、少なくとも2種のジメチコン流体のブレンド物であって、1000センチストークス(cSt)よりも高い粘度を示す、ジメチコン流体のブレンド物と、
2)前記組成物の40体積%〜90体積%で存在する水相の、皮膚科学的に許容される担体と、を含み、
前記組成物が、25℃において5×104〜12×104の時間加重フォースエリア、及び25℃において0.30〜0.75の平均破断時間を示す、パーソナルケア組成物。
【請求項2】
前記組成物は、1)10重量%〜30重量%の少なくとも2種のジメチコン流体のブレンド物を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項3】
前記ジメチコン流体のブレンド物が、10,000ストークス未満の粘度を有する、請求項1又は2に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項4】
前記ブレンド物中の第1のジメチコン流体が1000cStの粘度を有し、前記ブレンド物中の第2のジメチコンが60,000cStの粘度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項5】
前記第1及び第2のジメチコン流体が、20:1〜1:1の比で存在する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項6】
1重量%〜30重量%のシリコーンエラストマーを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項7】
1:10〜1:1のシリコーンエラストマーとジメチコン流体との重量比を更に有する、請求項6に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項8】
1.0よりも大きい初期破断時間を更に有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項9】
1000よりも大きい、60分、80分、又は100分における粘着力を更に有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項10】
0.01重量%〜5重量%の超吸収性ポリマーを更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項11】
水相を更に含み、前記超吸収性ポリマーが前記水相中に存在する、請求項10に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項12】
前記超吸収性ポリマーが、2μm〜100μmの非膨潤性の数平均粒子径を有する、請求項10又は11に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項13】
ビタミン、ミネラル、ペプチド、油分制御剤、酸化防止剤、抗炎症剤、保湿剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、剥離剤、皮膚美白剤、日焼け止め剤、抗ニキビ活性物質、抗しわ活性物質、抗菌剤、及びこれらの組み合わせから選択されるスキンケア活性物質を更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項14】
改善された保湿信号を与える組成物によって皮膚状態を美容的に処置する方法であって、
1)皮膚の保湿が必要とされるか又は望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
2)請求項1〜13のいずれか一項に記載のスキンケア組成物を前記皮膚の標的部分に塗布することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、消費者に知覚される保湿特性及び感触特性が改善された局所皮膚ケア組成物に関する。より具体的には、本発明は、不揮発性ジメチコン及び適当な粘着特性を有するパーソナルケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、消費者が購入できる多くのパーソナルケア製品は、もっぱら皮膚の健康及び/又は外観を改善することを目的としたものである。例えば、皮膚の老化又は環境によるヒトの皮膚へのダメージに一般的に伴う皮膚の乾燥、皮膚のしわ、及び他の組織学的変化を遅らせる、抑制する、又は更には防止することを目的とした様々な局所スキンケア製品が市販されている。その結果、若さが意識される社会において、パーソナルケア製品の販売は急成長ビジネスとなった。
【0003】
所望の効果を与えることとおそらく同等に重要なことは、製品が効果又は特定のレベルの効果をもたらすというユーザーによる知覚である。また、場合によっては、ユーザーは、特定の効果又は特定のレベルの効果を特定の製品の審美性と関連付ける場合があり、このような製品の審美性は、消費者が心地よいと感じる製品の審美性と同じである場合もそうでない場合もある。例えば、一部の消費者は、皮膚保湿剤を使用するときに軽い、ひんやりした感触を望む場合があるが、直感に反して、重い、オイルのような感触を良好な保湿と関連付ける場合もある。
【0004】
ポリジメチルシロキサン又はPDMSと呼ばれる場合もあるジメチコンは、スキンケア組成物への使用が長きにわたって知られている。低粘度のジメチコン流体(例えば、5センチストークス未満)は、重い、べとつく感触を残さずに広範な成分を皮膚に届けるための担体としてスキンケア組成物に広く用いられている。しかしながら、これらの低粘度のジメチコン流体は、その比較的高い蒸発速度のために乾燥したものとして知覚され得る。高粘度のジメチコン流体(例えば、10000センチストークス超)は、担体及び皮膚コンディショニング剤として一般的に使用されている。しかしながら、高粘度のジメチコン流体は、粘着性の又はべとついた感触として知覚され得る。したがって、知覚される保湿とスキンケア製品の皮膚上での感じられ方との間の適当なバランスを見出すことが引き続き求められている。
【0005】
清水らにより出願された国際公開第2013/190710号は、皮膚及び唇を処置するための化粧品組成物に使用するための広範囲の粘度(例えば、1500cSt未満〜5000cSt超)のジメチコンを開示している。しかしながら、国際公開第2013/190710号は、適当な保湿性の知覚及び製品の審美性を与えるジメチコンを選択することの重要性は認識できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2013/190710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、良好な保湿性と望ましい製品の審美性の知覚との間の適当なバランスを与えるパーソナルケア組成物が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、改善された保湿信号を示すパーソナルケア組成物及びかかる組成物の使用方法を開示する。いくつかの例では、組成物は、組成物の約5重量%〜30重量%、10重量%〜30重量%、又は10重量%〜20重量%の、少なくとも2種のジメチコン流体のブレンド物を含み、このジメチコン流体のブレンド物は、レオロジー法に従って約1000センチストークス(cSt)よりも高い粘度を示す。本組成物は、皮膚科学的に許容される担体を更に含み、粘着法に従って、約5×10〜約12×10の時間加重フォースエリア、及び約0.30〜約0.75の平均破断時間を示す。
【0009】
いくつかの例では、本明細書のパーソナルケア組成物は、レオロジー法に従って1000cSt〜1,000,000cStの粘度を有するジメチコン流体を含む。これらの例では、組成物は、粘着法に従って、約5×10〜約12×10の時間加重フォースエリア、及び約0.30〜約0.75の平均破断時間を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】多数の従来のスキンケア組成物の平均破断時間に対する時間加重フォースアベレージのプロットである。
図2図1のプロットに重ね合わされた、本組成物の実施例についての平均破断時間に対する時間加重フォースアベレージのプロットである。
図3】時間に対する粘着力のプロットである。
図4】時間に対する平均破断時間のプロットである。
図5】粘着法のセットアップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
少なくとも一部の消費者は、皮膚の感触を滑らかに保ちつつ良好な保湿信号を与える美容スキンケア製品を望んでいる。例えば、ユーザーは、スキンケア組成物の皮膚保湿特性を、組成物を塗布した後の皮膚の特定の量の粘着性と関連付けることができる。しかしながら、粘着性が長く持続しすぎると、組成物の望ましくない感触特性が、ユーザーに知覚される有用な効果を上回り、製品の使用の中断につながるおそれがある。驚くべきことに、ジメチコン流体の特定のブレンド物は、良好な保湿性の知覚と所望の製品の審美性との間の適当なバランスを与えることができることが見出された。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他の意味を示さない限り、複数形も含むものとする。特記のない限り、本明細書に開示される全ての百分率は、組成物全体の重量によるものである。特に記載のない限り、全ての比は重量比である。有効桁数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。特に別途記載のない限り、全ての数量は、単語「約」によって修飾されるものと理解される。
【0013】
本明細書における全ての測定は、25℃かつ周囲条件で行われるものと理解されるが、ここで「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%の条件を意味する。列挙された成分に関連する重量は、全て、活性レベルに基づいており、別途記載のない限り、市販の材料に含まれ得る担体又は副生成物を含まない。全ての数値範囲は、これより狭い範囲を含み、組み合わせ可能である。区切られた上下の範囲制限は、明示的に区切られていない更なる範囲を作るうえで互換性がある。
【0014】
本発明の組成物は、本明細書に記載の必須成分及び任意選択的成分を含む、それらから本質的になる、又はそれらからなることができる。本明細書で使用するとき、「〜から本質的になる」とは、組成物又は構成成分が、追加成分を含み得るが、追加成分が、特許請求される組成物又は方法の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない場合に限ることを意味する。
【0015】
用語の定義
本明細書で使用するところの「約」とは、特定の値プラスマイナス20パーセント(+/−20%)又はそれよりも低い値(例えば、15%、10%未満、若しくは更には5%未満)に等しい範囲を指すことで、特定の値を修飾する。
【0016】
「活性物質」とは、角質組織及び/又は角質組織の標的部分に塗布される際に、角質組織の健康状態、外観、及び/又は感触に有用な効果又は改善をもたらす化合物を意味する。本明細書における活性物質は、スキンケア活性物質、ヘアケア活性物質、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0017】
組成物に関連して使用される「塗布する」又は「塗布」は、本発明の組成物を表皮などのヒトの皮膚表面上に塗布又は拡げることを意味する。
【0018】
「誘導体」は、互いに同様であるが、特定の官能性部分(例えば、エステル、エーテル、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシル、アセチル、チオール、ハロゲン、チオール、及び/又は関連分子の塩誘導体)が異なっている分子を意味する。
【0019】
「皮膚科学的に許容される」とは、皮膚科学的に許容されるであると記述されている組成物又はそれらの構成要素が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などを有さず、哺乳動物の角質組織と接触させて用いるのに好適であることを意味する。
【0020】
「配置される」とは、要素が別の要素に対して特定の場所に位置付けされることを意味する。
【0021】
「有効量」は、角質組織にプラスの効果(例えば、本明細書に開示する利益を独立して、又は組み合わせて含む、健康、外観、及び/又は感触の利益)を有意に誘導するのに十分であるが、但し深刻な副作用を避ける(すなわち、当業者の通常の判断の範囲内で妥当な効果対リスク比を提供する)のに十分なだけ少ない、化合物又は組成物の量を意味する。レチノイドの有効量は、パーソナルケア組成物において、哺乳動物の角質組織に局所的に塗布されたときにその哺乳動物の角質組織の所望の状態を一連の治療期間にわたって調節するのに十分な量である。
【0022】
「角質組織」とは、哺乳類の最も外側の保護カバーとして配置されたケラチン含有層を指し、これには、皮膚、毛髪、爪、キューティクルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
「パーソナルケア組成物」は、哺乳動物の角質組織(例えば、皮膚、毛髪、指爪)の状態を調節するための局所組成物を意味する。パーソナルケア組成物のいくつかの非限定的な例としては、スキンクリーム、ローション、及びセラム;髭剃り用組成物;ボディソープ;脱臭剤及び制汗剤、シャンプー;コンディショナ;これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用するところの「哺乳動物の角質組織の状態を調節する」とは、角質組織の健康状態、外観、及び/又は感触を改善することを意味する。
【0025】
「レチノイド含有パーソナルケア製品」は、レチノイドを含有する任意のパーソナルケア製品を指す。好ましいパーソナルケア製品としては、皮膚の状態を調節するために使用される製品、更により好ましくは皮膚の老化の外観を低減する及び/又は皮膚座瘡の外観若しくは出現を低減するために使用される製品が挙げられる。本明細書のレチノイド含有パーソナルケア製品はまた、顕著な(例えば、消費者が許容できない)皮膚刺激がないこと及び良好な審美性を示し得る。
【0026】
「スキンケア組成物」とは、皮膚状態を調節及び/又は改善するための局所パーソナルケア組成物を指す。スキンケア組成物のいくつかの非限定的な例としては、スキンクリーム、保湿剤、ローション剤、及びボディウォッシュが挙げられる。
【0027】
パーソナルケア組成物に含まれるレチノイドについて言及する場合の「安定した」とは、その種のパーソナルケア組成物が一般的に置かれる環境条件に組成物が曝される(例えば、40℃で2週間以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上、又は3ヶ月以上)場合に分解する(すなわち、例えば、酸化又は他の何らかの化学反応によって異なる化合物に化学的に変換される)、パーソナルケア組成物中に存在するレチノイドが、25%未満(例えば、20%未満、15%未満、10%未満、又は更には5%未満)であることを意味する。場合によっては、レチノイドは、50℃で2週間、4週間、又は更には8週間よりも長期にわたって安定であり得る。レチノイド安定性を決定する好適な方法は、HPLC法で、以下に更に詳細に記載される。
【0028】
「局所」とは、皮膚又は毛髪などの身体表面に塗布されることが意図される組成物を指す。
【0029】
本明細書で使用するところの「粘度」とは、特に具体的に断らない限り、ストークス又はセンチストークス(「cSt」)で報告される動粘度を指す。粘度は、以下の方法のセクションで述べるレオロジー法に従って測定される。本組成物に2種以上の不揮発性ジメチコンが含まれる場合、「粘度」とは、得られる不揮発性ジメチコンのブレンド物の粘度を指す。
【0030】
パーソナルケア組成物
本明細書の化粧品組成物は、角質組織に局所塗布されるように構成され、不揮発性ジメチコン流体又は不揮発性ジメチコン流体のブレンド物、及び必要に応じて、シリコーンエラストマー、超吸収性ポリマー、及び/又は皮膚科学的に許容される担体中に配されたスキンケア活性物質を含む。個々の成分については下記により詳細に述べる。
【0031】
予め設定された組成物中のジメチコン流体又はジメチコン流体のブレンド物は、所望の粘着性を与える。本明細書で使用するところの粘着性とは、粘着力と曳糸性との間の関係によって特徴付けられる。理論によって束縛されるものではないが、スキンケア組成物の粘着力及び曳糸性は、所望の保湿信号及び審美的感覚をもたらすうえで重要であると考えられる。粘着力とは、物体を組成物に接触させた後、組成物から分離するために必要なピーク力を一般に指す。曳糸性とは、組成物と接触している物体が組成物から引き離される際に組成物の糸が破断するまでに要する時間(すなわち、接触を断つために力を加えなければならない時間の長さ)を一般に指す。粘着力及び曳糸性を測定するのに適した方法については、下記により詳細に述べる。
【0032】
少なくとも一部のユーザーは、良好な保湿性を、特に製品の塗布時及び/又は塗布後まもなく(例えば、塗布後10、9、8、7、6、5、4、3、2分未満、又は更には1分未満)の高い粘着力と関連付ける。しかしながら、従来の組成物では、粘着力の増大は、曳糸性の増大を一般的に伴う。また、ユーザーは、塗布時及び/又は塗布直後のある程度の曳糸性は保湿性信号として許容するか、又は望む場合もあるが、曳糸性が、例えば、製品の塗布後、1、2、3、4、5、6、7、8、9分よりも長い時間、又は更には10分よりも長い時間にわたって持続することは望ましくない場合がある。したがって、場合により、本明細書の組成物は、粘着法に従って、初期塗布時における組成物の破断時間の変化が、60、80、及び/又は100分における破断時間よりも高い場合に観察されるように、曳糸性の経時的な低下を示す。場合により、組成物は、0.5よりも大きい(例えば、0.6、0.7、又は更には0.8よりも大きい)破断時間の減少を示すことが望ましい場合がある。
【0033】
図1は、76個の市販のスキンケア製品の平均破断時間に対する時間加重粘着力のプロットである。各製品は、皮膚保湿効果を提供するために市販されている。図1に見られるように、試験した製品には、より高い粘着力がより高い曳糸性と概ね相関しているという傾向がある。したがって、適当な粘着力を有するが、曳糸性の対応する増大を伴わない組成物が提供されることが望ましい。
【0034】
本明細書の組成物は、5×10〜12×10(例えば、6×10〜11×10、7×10〜1×10、又は更には8×10〜9×10)の時間加重フォースエリア、及び0.30〜0.75(例えば、0.35〜0.7、0.40〜0.65、又は更に0.45〜0.60)の平均破断時間を有する。これに加えて、又はこれに代えて、本組成物は、60分、80分、及び/又は100分における粘着力が、1000g超(例えば、1200g超、1300g超、1400g超、1500g超、又は更には2000g超)であってもよい。
【0035】
図2は、図1のプロットに重ねられた、表1A及び表1Bの例示的な組成物の平均破断時間に対する時間加重粘着力のプロットである。プロットは、本開示による好適な粘着量を示す傾向線30を含んでいる。図2に見られるように、本組成物は、比較的高い粘着力を与えるが、従来の組成物に見られるように対応して曳糸性がより高くなるという傾向に追随していない。
【0036】
皮膚科学的に許容される担体
本明細書のパーソナルケア組成物は、他の成分(例えば、活性物質)が適切な濃度で皮膚に届けられることを可能にする皮膚科学的に許容される担体を含む。したがって、このような担体は、活性物質又は他の成分が皮膚の選択された標的部分に適切な濃度で塗布されて均一に分布するようにする助けとなる、スキンケア活性物質及び/又は他の任意成分の希釈剤、分散剤、溶媒などとして機能し得る。担体は、1つ以上の皮膚科学的に許容される固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、溶剤、増量剤などを含有し得る。担体は、不活性であってもよく、又は角質組織にそれ自体の効果を与えることもできる。担体の濃度は、選択される担体及び組成物の構成要素の意図される濃度によって変化し得る。本明細書で使用される場合、「希釈剤」は、組成物の粒子状物質を分散し、溶解し、又は別の方法で組み込むことができる物質を含む。親水性希釈剤の非限定的な例は、水、有機親水性希釈剤、例えば、低級一価アルコール(例えば、C〜C)並びに低分子量グリコール及びポリオールであり、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、分子量200〜600g/モル)、ポリプロピレングリコール(例えば、分子量425〜2025g/モル)、グリセロール、ブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ソルビトールエステル、ブタンジオール、エーテルプロパノール、エトキシル化エーテル、プロポキシル化エーテル、及びこれらの組み合わせを含む。適当な疎水性希釈剤としては、オイル類(例えば、シリコーン、炭化水素、エステル、アミド、エーテル、及びこれらの混合物)が挙げられる。本明細書で使用されるオイルは、通常、室温で流体であり、揮発性又は不揮発性であってよい。疎水性希釈剤の特に適当な例としては、本明細書に記載される不揮発性ジメチコン流体などのシリコーンオイルがある。
【0037】
場合により、皮膚科学的に許容される担体は、エマルションを調製するための従来の方法を用いて調製された安定なエマルションの形態であってよい。エマルションは、必要に応じて水中油型又は油中水型エマルションとすることができる。例えば、本組成物は、1体積%〜50体積%(例えば、1体積%〜30体積%)で存在する分散油相と、1体積%〜98体積%(例えば40体積%〜90体積%)で存在する連続水相とを含む、安定な水中油型エマルションの形態とすることができる。本組成物がエマルションの形態である場合、水相は、一般的に、水、水混和性の液体、及び/又は水溶性材料を含み、油性相は、一般的に、脂質、オイル類(例えば、シリコーンオイル)、油性材料、及び/又は水若しくは水溶性溶媒に適していない材料を含む。
【0038】
本組成物中に使用される担体の種類は、組成物に望ましい製品形態の種類によって決まる。本発明において有用な局所用組成物は、当該技術分野において既知のような多種多様な製品形態に作製され得る。製品形態としては、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、ムース、及び化粧品(例えば、ファンデーション、アイメイクアップ、着色又は非着色リップトリートメント、例えば、口紅などを含む、固体、半固体、又は液体メークアップ品)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製品形態は、溶液、エアロゾル、エマルション、ゲル、固体、及びリポソームを含むが、これらに限定されない、いくつかの種類の担体を含んでいてもよい。場合によっては、本明細書のエマルションはまた、G.M.Eccleston,Application of Emulsion Stability Theories to Mobile and Semisolid O/W Emulsions,Cosmetics & Toiletries,Vol.101,November 1996,pp.73〜92に記載されるようなゲルネットワークも含んでいてもよい。
【0039】
不揮発性ジメチコン流体
本組成物は、組成物がエマルション(例えば、水中油型、油中水型)の形態である場合、組成物の油相中に配された、5重量%〜30重量%(例えば、10重量%〜30重量%、10重量%〜25重量%、又は更には12重量%〜20重量%)の不揮発性ジメチコン流体又は2種以上の不揮発性ジメチコン流体のブレンド物を含む。本明細書で使用するところの「ジメチコン」とは、下式を有する化合物を意味する。
【0040】
【化1】
【0041】
不揮発性ジメチコン流体は、一般的に5cStよりも高い粘度を有する。ジメチコン流体の分子量は、シリコーン流体の粘度にも直接比例するシリコーンポリマー鎖の長さに依存する。粘度の異なる2つのジメチコン流体が互いにブレンドされると、得られるブレンド物は、一般的に、個々の流体の粘度の間のどこかに該当する粘度を有する。本明細書におけるジメチコン流体又は流体のブレンド物は、1000cSt〜10,000ストークス(例えば、2000cSt〜8,000ストークス、2500cSt〜5000ストークス、3000cSt〜1,000ストークス、3000cSt〜50,000cSt、3,000cSt〜15,000cSt、3000cSt〜10,000cSt、1500cSt〜10,000cSt、又は更には1500cSt〜5,000cSt)の粘度を示す。粘度を測定するのに適当な方法については、以下のレオロジー法で述べる。
【0042】
2種以上のジメチコンが組成物中に含まれる場合、ジメチコンは、本組成物に添加される前、後、又は添加される間にブレンドされてもよい。例えば、1000cStのジメチコンと60,000のcStのジメチコンとを、19:1〜3:1の比でブレンドして、約1500cSt〜約3700cStの粘度を有するブレンド物とすることが望ましい場合がある。別の例では、50cStのジメチコン流体と10,000ストークスのジメチコン流体とを、4:1〜1:31の比でブレンドして、2500cSt〜9,000ストークスの粘度を有するブレンド物を得ることができる。
【0043】
シリコーンエラストマー
本組成物は、シリコーンエラストマーを含む。シリコーンエストラマーは、組成物の粘着性を低減し、塗布時に心地よい感触を提供するのに有用である。したがって、シリコーンエラストマーを使用して、本組成物の粘着性を所望の量に調整することができる。シリコーンエラストマーは、球状粒子、非球状粒子、又はゲルの形態であってよい。
【0044】
非球状シリコーンエストラマーの適当なクラスの1つの非限定的な例として、米国特許出願公開第2003/0049212号に一般的に記載される、架橋オルガノポリシロキサン(又はシロキサン)エストラマーがある。この実施例では、非球状シリコーンエラストマーは、組成物中に約0.1%〜約5%(例えば、0.5%〜約2%、又は更には約1%)で存在してよい。示される百分率は、例えば、保管及び輸送に使用されるエラストマーと溶媒の合計量とは異なり、乾燥エラストマーの量を指すものとして理解される。
【0045】
代表的な非球状架橋シロキサンエラストマーとしては、Dow Corning(商標)、Momentive(商標)、Shin Etsu(商標)(KSG15及び16)、及びGrant Industriesを含む種々の供給者によって供給される、CTFA(米国化粧品工業会、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,11th ed.)指定の、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーが挙げられる。他の代表的な非乳化架橋シロキサンエラストマーとしては、Dow Corning(商標)、例えばシクロジメチコン中に12.5%のエラストマーとして供給されるDC9040及びDC9045、並びにジメチコン中に16%のエラストマー)として供給されるDC9041を含む、CTFA指定のジメチコンクロスポリマーが挙げられる。
【0046】
いくつかの例において、本組成物は、球状シリコーンエラストマー粒子を含んでよい。組成物に望ましい感触特性を与える以外に、球状シリコーンエラストマー粒子は、皮膚により滑らかでより自然な外観を与える光散乱効果を提供することができる。球状シリコーンエラストマー粒子は、組成物中に、0.1重量%〜25重量%(例えば、0.5重量%〜20重量%、1重量%〜15重量%、又は更には2重量%〜10重量%)で存在してよい。組成物中の球状シリコーンエラストマー粉末の量は、未希釈形態の(すなわち、溶剤中で膨潤していない)粒子材料に基づいて決定される。球状シリコーンエラストマー粒子のいくつかの非限定的な例を、米国特許出願公開第2015/0196464号に見ることができる。球状シリコーンエラストマー粒子のいくつかの特定の適当な例としては、いずれもShin Etsu社より販売されるKSP−100、−101、−102、−103、−104、及び−105、並びにDow Corning社より販売されるDC9506及びDC9701が挙げられる。
【0047】
水膨潤性材料
本明細書のパーソナルケア組成物は、必要に応じて、組成物中の水を結合するように作用する水膨潤性材料を含んでもよい。本組成物に使用するための水膨潤性材料は、天然又は合成(例えば、水膨潤性粘土及び超吸収性ポリマー)であってもよい。水膨潤性材料は、組成物の0.01重量%〜5重量%で存在し得る。
【0048】
場合によっては、水膨潤性材料は、多数の粒子として組成物の水相中に存在する超吸収性ポリマー(「SAP」)である。膨潤したとき、SAPは、本組成物の塗布中に、軽く、冷たく、絹のような感触を提供することができる。SAP粒子は、乾燥数平均粒径が100μm以下(例えば、50μm以下)、例えば、2μm〜100μmであり、中央粒径が25であってもよく、又は更に2μm〜40μmの範囲であり、中央粒径が12であってもよい。SAP粒子は、それ自体の重量の20〜2000倍の範囲の吸水能(すなわち、吸収性ポリマー1グラムあたり20g〜2000gの水を吸収)、例えば、30〜1500倍、50〜1000倍、又は更に400倍の吸水能を有していてもよい。本明細書のSAP粒子の吸水特性は、標準温度及び圧力条件で蒸留水に対して定義される。例えば、本明細書におけるSAPの吸水能の値は、0.5gのポリマー(複数可)を150gの蒸留水に分散させ、20分間待ち、吸収されなかった溶液を適当なフィルタを通して20分間濾過し、吸収されなかった水を秤量し、ポリマーによって吸収された量を決定することによって決定することができる。%)。場合により、SAPの1%蒸留水溶液の動的粘度は、pH4で20〜30Pa・s(例えば、22〜29Pa・s)の範囲、pH7で23〜28Pa・sの範囲である。
【0049】
水和されると、本明細書で使用するのに適したSAP粒子は膨潤し、10μm〜150μm(例えば、20μm〜130μm、30μm〜120μm、40μm〜100μm、50μm〜90μm、又は更には約70μm)の数平均直径を有する比較的軟質のビーズを形成する。膨潤後の粒径を求めるのに適した方法は、Sunkelにより2017年2月6日に出願された同時係属中の米国特許出願第15/425,713号に記載されている。
【0050】
本明細書での使用に好適であり得るSAPのいくつかの非限定的な例は、AveciaによるOctacare(商標)X100、X110、及びRM100;SNFによるFlocare(商標)GB300及びFlosorb 500;BASFによるLuquasorb(商標)1003、1010、1100、及び1280;Grain ProcessingによるWater Lock(商標)G400及びG430(INCI名:アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー);Sumitomo SeikaによるAqua Keep(商標)10 SH NF、Aqua Keep 10 SH NFC、アクリル酸ナトリウムクロスポリマー−2として販売されるものなどの架橋ポリアクリル酸ナトリウム;アクリル系ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)によってグラフト化されたデンプン、特に、ポリアクリル酸ナトリウムによってグラフト化されたデンプン(INCI名:ポリアクリル酸ナトリウムデンプン)、例えば、Sanyo Chemical IndustriesによるSanfresh(商標)ST−100C、ST100MC、及びIM−300MCとして販売されているもの;アクリル系ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)によってグラフト化された加水分解デンプン、特に、アクリロアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマーによってグラフト化された加水分解デンプン(INCI名:デンプン/アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)、例えば、Grain ProcessingによりWater Lock(商標)A−240、A−180、B−204、D−223、A−100、C−200、及びD−223として販売されるものである。SAPの特に好適な例は、Kobo Products,Inc.から供給されるMakimousse(商標)12及びMakimouse(商標)25である。
【0051】
本組成物は、当業者には周知である、本明細書に記載される種類のスキンケア組成物を調製する従来の方法によって調製することができる。
【0052】
他の任意成分
本組成物は、任意成分(複数可)が製品安定性、審美性、又は性能を過度に変化させない限り、パーソナルケア組成物に使用することが知られている様々な任意成分を含んでもよい。組成物中に組み込まれる場合、任意成分は、通常の判断の範囲内で、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応性などを伴わず、ヒトの角質組織に接触させるのに好適でなければならない。CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992)は、多種多様な非限定的な化粧品及び医薬成分を記載している。本明細書の組成物は、組成物の約0.0001重量%〜約50重量%、約0.001重量%〜約20重量%、又は代替的に約0.01重量%〜約10重量%の任意成分であってもよい。任意成分のいくつかの非限定的な例としては、研磨剤、吸収剤、不透明化剤、着色料/着色剤(例えば、顔料、染料、及びレーキ)、粒子、精油、固化防止剤、発泡剤、消泡剤、油制御剤、結合剤、生物学的添加剤、ビタミン、ミネラル、ペプチド、糖アミン、フラボノイド化合物、抗酸化剤、防腐剤、フィトステロール、プロテアーゼ阻害剤、チロシナーゼ阻害剤、剥離剤、皮膚美白剤、サンレスタンニング剤、増粘剤、pH調整剤、抗座瘡活性物質、抗セルライト活性物質、抗しわ活性物質、植物ステロール及び/又はフィトステロール、N−アシルアミノ酸化合物、抗菌剤、抗真菌剤、保湿剤、皮膚軟化剤、保湿剤、潤滑剤、芳香剤、抗ふけ剤、緩衝剤、増量剤、キレート剤、殺生物剤、変性剤、収斂剤、外部鎮痛剤、抗炎症剤、日焼け止め剤、フィルム形成剤、及び/又は組成物の被膜形成特性及び持続性を補助するためのポリマー、噴射剤、還元剤、封鎖剤、コンディショニング剤(例えば、米国特許第7,465,439号、同第7,041,767号、及び同第7,217,777号を参照されたい)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。皮膚コンディショニング剤のいくつかの非限定的な例は、米国特許出願公開第2010/0272667号及び同第2008/0206373号、並びに米国特許第8,790,720号に見出すことができる。
【0053】
使用方法
本明細書のパーソナルケア組成物は、良好な安定性を維持しながら皮膚及び/又は毛髪の状態を調節するのに有用である。皮膚の状態を調節することは、皮膚上の小じわ及び/又はしわの外観を低減することと、目の下の目袋及びくまの外観を低減すること、たるみのある皮膚、瘢痕/跡、くぼみ、孔、ストレッチマーク、粗さ、皮膚表面の汚れ、渋線、表情線、しわ、汚れ、光によるダメージ、裂け目、及び/又は凸凹を低減することが挙げられる。皮膚の状態を調節することはまた、座瘡の発生及び/又は外観を低減することを含む。
【0054】
使用方法は、治療を必要とするか、及び/又は治療が所望される角質組織の標的部分(例えば、額、口周囲、顎、眼窩、鼻、及び/又は頬などの顔の皮膚表面)を特定することと、安全かつ有効な量の本組成物を、その組織の標的部分に塗布することと、を含んでいてもよい。化粧品活性成分(複数可)は、活性剤を化粧品組成物に組み合わせるための従来の方法を使用して、本組成物に組み込まれてもよい。理論に束縛されることを意図するものではないが、治療を必要とするか、又は治療が所望される角質組織の標的部分への有効量の本組成物の塗布によって、一連の治療期間にわたって所望の外観の利益を与えることができると考えられる。
【0055】
治療期間は、本組成物中の化粧品活性成分(複数可)が、角質組織の標的部分に所望の利益を提供する(例えば、外観を改善する、保湿を増加させる)のに十分な時間であるべきである。治療期間は、少なくとも1週間(例えば、約2週間、4週間、8週間、又は12週間)にわたって持続し得る。場合によっては、治療期間は、数ヶ月(すなわち3〜12ヶ月)又は数年に及んでもよい。場合によっては、少なくとも2週間、4週間、8週間、又は12週間の治療期間中に、週の大半の日数(例えば、少なくとも週に4日、5日又は6日)にわたって、少なくとも1日に1回、又は更には1日に2回組成物を塗布し得る。
【0056】
組成物を塗布する工程は、局部的塗布により行うことができる。組成物の塗布に関して、「局部的な」、「局部的」、又は「局部的に」という用語は、治療が所望されない角質表面への送達を最小限にしつつ、組成物が標的領域(例えば、皮膚の色素沈着した部分)に送達されることを意味する。場合によっては、本組成物は、ある皮膚領域に塗布し、軽くマッサージしながら擦り込むことができる。組成物又は皮膚科学的に許容される担体の形態は、局部的塗布が容易となるように選択されるべきである。本明細書におけるある実施形態は、組成物をある領域に局部的に塗布することを想到しているが、本明細書における組成物は、1つ以上の皮膚表面に更に広く又は広範に塗布され得ることが理解されよう。
【0057】
本組成物は、手若しくは指で擦り込む、こする、若しくは軽くはたくことによること、又は器具及び/又は送達を向上させるデバイスによることを含む、種々の方法によって、塗布してもよい。器具の非限定的な例としては、スポンジ又は先端がスポンジのアプリケータ、スワブ(例えば、先端が綿のスワブ)、任意に発泡体又はスポンジアプリケータを含むペン、ブラシ、拭取り布、及びこれらの組み合わせが挙げられる。送達を向上させるデバイスの非限定的な例としては、磁気エネルギー、機械エネルギー、電気エネルギー、超音波エネルギー、及び/又は他のエネルギーデバイスが挙げられる。場合によっては、本組成物を皮膚上に広げて、油相からの水相の分離を促進することができる。水相と油相とが分離したとき、組成物が角質組織上に残されてもよい。代替的に、本組成物は、角質組織に擦り込む前に、皮膚上に5秒、10秒、30秒、又は1分間留まることができる。
【0058】
方法
粘着法
この方法は、本明細書に述べられる組成物の粘着性を測定するための適当な手段を与えるものである。本方法では、テクスチャ分析装置を使用して、組成物で形成されたフィルムとプローブとを接触させる。次に、テクスチャ分析装置は、プローブを組成物フィルムから分離するために必要な力を測定する。粘着力、時間加重フォースエリア、平均破断時間、及び破断時間の変化のいずれも、この方法により測定することができる。粘着法は、100分間の時間にわたって行われるように構成される。理論によって制限されるものではないが、粘着試験の過程において組成物が示す粘着性特性は、使用者による組成物の使用の最初の数分間(例えば、10分未満、30秒〜5分、又は1分〜3分)に組成物が示す粘着性特性を近似しているものと考えられる。理論によって制限されるものではないが、試験中のより後の時間(例えば、60分、80分、及び/又は100分)において適当な粘着力を有することは、試験中の初期の時間における粘着力よりも、ユーザーの保湿性の知覚に影響を与えるとも考えられる。したがって、時間加重フォースエリアを用いて、より後の時点に向かって粘着力の測定値を重み付けすることにより、ユーザーにより知覚される保湿信号のより正確な予測が与えられる。
【0059】
図5は、粘着試験の例示的な試験セットアップを示す。TA.XT2iブランドのテクスチャ分析装置(Texture Technologies Corporation(マサチューセッツ州)より入手可能)50、又は同等の装置を使用して、対象となる組成物で形成されたフィルムの粘着性を測定する。テクスチャ分析装置は、平坦面を有する直径12.75mmのアクリル製シリンダーの形の粘着プローブ52を備えている。試験中、プローブ52の平坦面を、組成物のフィルムの表面と接触させる。したがって、プローブの平坦面とフィルムの表面とは、プローブ52の有効な試験表面にわたってフィルムによる充分な接触が得られるように、試験中に互いに平行でなければならない。フィルムは、試験される組成物で矩形溝54(例えば、長さ25cm×幅30mm×深さ0.25mm)を充填又は過剰充填(その後に延伸)することによって作製される。
【0060】
試験は、接着試験プロトコルを用いて、試験前速度0.10mm/秒、試験速度0.10mm/秒、試験後速度1.0mm/秒で行われる。印加力は200gとし、戻り距離は4mmとし、接触時間は5.0秒とする。試料接触を指定するトリガタイプは自動に設定し、トリガ力は5.0gとする。試験を行い、また、フィルムが調製された直後の以下の時間刻み、すなわち、1分未満(すなわち、フィルムの調製直後)、10、20、30、40、50、60、80、及び100分に行う。各時点で、以前に触れられていない/試験されていない試料の領域上で試験を行う。各試料試験を3連で行い、平均を記録する。
【0061】
データ抽出には、プローブが試料から上方に引き上げられる際に収集されるデータの部分を使用する。粘着力は、各試験におけるピーク力である。時間加重フォースエリア(Time weighted force area)は、次式により求められる。
【0062】
【数1】
式中、
t1=測定を行った時間範囲における2つの時間のうちの後の時間であり、
t2=測定を行った時間範囲における2つの時間のうちの先の時間であり、
P1=計算される2つの時間のうちの時間1におけるピーク力をグラムで表したものであり、
P2=計算される2つの時間のうちの時間2におけるピーク力をグラムで表したものである。
【0063】
t1とt2又はP1とP2との差を計算する際、結果の絶対値を用いて時間加重フォースエリアを計算する。
【0064】
時間加重フォースエリアは、8つの時間間隔(<1分〜10分、10分〜20分、20分〜30分など)のそれぞれについて計算された個々の時間加重フォースエリアの値の合計として報告される。
【0065】
破断時間は、力曲線の幅により求められる。破断時間計算の開始時間は、テクスチャ分析装置によって加えられる力の符号が時間0において負から正に変化する時点(すなわち、試験の開始時点)と、破断時間としての、力がピーク力から0.0+/−0.02まで減衰する時点である。平均破断時間は、60分、80分及び100分における破断時間の平均として報告される。破断時間の変化は、初期破断時間と100分における破断時間との間の差である。
【0066】
レオロジー法
本方法は、組成物の動粘度及び降伏点を測定する適当な手段を与えるものである。この方法で使用される器具は、Thermo Fisher Scientific社(マサチューセッツ州)より販売されるHAAKE RHEOSTRESS 600ブランドのレオメーター、又は同等の器具である。直径35mm、角度4°で、0.140mmの間隙を有するコーンプレート形状を使用し、制御された応力条件下で、180秒間にわたり0.1〜1000Paまで回転傾斜を行うように設定する。温度は25℃に設定する。器具プロトコルは、対数分布において100個のデータポイントを収集するように設定する。
【0067】
自動化したプレートコーンギャップ較正を行った後、約1.5グラムの試料を、プレートの中心に配置する。0.150mmのギャップをもたらすようにプレートを配置し、コーンの外辺部ギャップから絞り出されたあらゆる過剰の材料を注意深く取り除く。次にプレートを、最後に0.1mm移動させ、ギャップを0.140mmとし、測定を開始する。試験終了時に、後のプロッティング及び分析のために、データファイルを保存する。動的粘度は、応力10Paにおける、又は10Pa付近における値として報告される。運動粘度は、測定された動的粘度を25℃の試料の密度で割ることによって計算することができる。
【実施例】
【0068】
実施例1−配合物
表1A及び表1Bに示される各配合は、本組成物の非限定的な例を与えるものである。表2に示される各配合は、本発明によって想到されない組成物の比較例である。表1A、表1B、及び表2に示される組成物は、これらの組成物を調製する従来の方法を用いて調製された水中油型エマルションである。各組成物中のシリコーンブレンド物の粘度をレオロジー法に従って測定し、平均破断時間及び時間加重フォースエリアの値を、粘着法に従って求めた。
【0069】
【表1】
Seppic社より販売されるSEPIGEL305
エチレンジアミン四酢酸
Dow Corning社より販売されるXIAMETER
Dow Corning社より販売されるDC9045
Sigma−Aldrich社より販売されるBRIJ30
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
実施例2−粘着力及び破断時間
この実施例は、表1A、表1B及び表2の各組成物の粘着力を、皮膚保湿効果を与えるものとして市販されている8つの従来のスキンケア製品と比較するものである。粘着力の値及び破断時間の値は、粘着法に従って得た。粘着力の値を表3に示す。N30、N41、及び従来のスキンケア製品の粘着力の値を図3に示す。破断時間の値を表4に示し、N30、N41及び従来のスキンケア製品の破断時間の値を図4に示す。図3及び図4に見られるように、本組成物は、適切な時間に望ましい粘着力及び破断時間を与える。
【0073】
【表4】
Clinique社(ニューヨーク州)より販売されるMOISTURE SURGE INTENSEブランドの皮膚水和剤。
Estee Lauder社(ニューヨーク州)より販売されるREVITALIZING SUPREMEブランドのグローバルアンチエイジングクリーム。
Estee Lauder社(ニューヨーク州)より販売されるRESILIENCE LIFT NIGHTブランドのフェイスアンドネッククリーム。
Estee Lauder社(ニューヨーク州)より販売されるREVITALIZING SUPREMEブランドのスキンクリーム。
L’Oreal社(フランス)より販売されるREVITALIFT TRIPLE POWERブランドのローション保湿剤。
L’Oreal社(フランス)より販売されるWHITE PERFECTブランドの水性デイクリーム。
NEUTROGENA社(カリフォルニア州)より販売されるTRIPLE AGE REPAIRブランドの夜間保湿剤。
NEUTROGENA社(カリフォルニア州)より販売されるRAPID WRINKLE REPAIRブランドの保湿剤。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例/組み合わせ
1.改善された保湿信号を示すパーソナルケア組成物であって、
1)当該組成物の約5重量%〜30重量%、好ましくは約10重量%〜30重量%の、少なくとも2種のジメチコン流体のブレンド物であって、レオロジー法に従って約1000センチストークス(cSt)よりも高い粘度を示す、ジメチコン流体のブレンド物と、
2)皮膚科学的に許容される担体と、を含み、
当該組成物が、粘着法に従って、約5×10〜約12×10の時間加重フォースエリア、及び約0.30〜約0.75の平均破断時間を示す、パーソナルケア組成物。
2.当該ジメチコン流体のブレンド物が、約10,000ストークス未満の粘度を有する、パラグラフAに記載のパーソナルケア組成物。
3.当該ブレンド物中の第1のジメチコン流体が約1000cStの粘度を有し、当該ブレンド物中の第2のジメチコンが約60,000cStの粘度を有する、パラグラフA又はBに記載のパーソナルケア組成物。
4.当該第1及び第2のジメチコン流体が、約20:1〜約1:1の比で存在する、パラグラフCに記載のパーソナルケア組成物。
5.約1重量%〜約30重量%のシリコーンエラストマーを更に含む、パラグラフ1〜4のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
6.約1:10〜約1:1のシリコーンエラストマーとジメチコン流体との重量比を更に有する、パラグラフEに記載のパーソナルケア組成物。
7.約1.0よりも大きい初期破断時間を更に有する、パラグラフ1〜6のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
8.約1000よりも大きい、60分、80分、又は100分における粘着力を更に有する、パラグラフ1〜7のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
9.水中シリコーン型のエマルションを更に含む、パラグラフ1〜8のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
10.約0.01重量%〜5重量%の超吸収性ポリマーを更に含む、パラグラフ1〜9のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
11.水相を更に含み、当該超吸収性ポリマーが当該水相中に存在する、パラグラフJに記載のパーソナルケア組成物。
12.当該超吸収性ポリマーが、約2μm〜約100μmの非膨潤性の数平均粒子径を有する、パラグラフJ又はKに記載のパーソナルケア組成物。
13.ビタミン、ミネラル、ペプチド、油分制御剤、酸化防止剤、抗炎症剤、保湿剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、剥離剤、皮膚美白剤、日焼け止め剤、抗ニキビ活性物質、抗しわ活性物質、抗菌剤、及びこれらの組み合わせから選択されるスキンケア活性物質を更に含む、パラグラフ1〜12のいずれかに記載のパーソナルケア組成物。
14.当該スキンケア活性物質が、安定化レチノイドを含むビタミンである、パラグラフMに記載のパーソナルケア組成物。
15.当該レチノイドが、5:1〜50:1の脂肪酸エステルとレチノイドとの比で存在する脂肪酸エステルによって安定化されている、パラグラフNに記載のパーソナルケア組成物。
16.脂肪酸エステルが、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドを含む、パラグラフOに記載のパーソナルケア組成物。
17.改善された保湿信号を与える組成物によって皮膚状態を美容的に処置する方法であって、
1)皮膚の保湿が必要とされるか又は望まれる皮膚の標的部分を特定することと、
2)上記のパラグラフのいずれかに記載のスキンケア組成物を皮膚の標的部分に塗布することと、を含む、方法。
18.
1)約10重量%〜約20重量%のジメチコン流体であって、レオロジー法に従って約1000cSt〜約1,000,000cStの粘度と、粘着法に従って約5×10〜約12×10の時間加重フォースエリア、及び約0.30〜0.75の平均破断時間と、を有する、ジメチコン流体と、
2)皮膚科学的に許容される担体と、を含む、パーソナルケア組成物。
19.約1.0よりも大きい初期破断時間を更に有する、パラグラフRに記載のパーソナルケア組成物。
20.約1000よりも大きい、60分、80分、及び/又は100分における粘着力を更に有する、パラグラフR又はSに記載のパーソナルケア組成物。
【0076】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0077】
相互参照されるか又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、明示的に除外されるか、又は別途制限されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献と組み合わせたときに、そのような任意の発明を教示、示唆、又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0078】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。
図1
図2
図3
図4
図5