(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電解液がビニレンカーボネート(VC)及び/又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はビニルエチレンカーボネート(VEC)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
リチウム複合酸化物焼結体板が、前記リチウム複合酸化物で構成される複数の一次粒子を含み、前記複数の一次粒子が前記正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している、配向正極板である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
前記リチウム二次電池は、110℃以上260℃未満の加熱を伴うプロセスにより基板に実装されることが予定されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に本発明のリチウム二次電池の一例を模式的に示す。
図1に示されるリチウム二次電池10は、正極板16と、負極20と、電解液24とを備える。正極板16は、リチウム複合酸化物焼結体板である。負極20は、カーボン及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含む。電解液24は、γ−ブチロラクトン(GBL)及び所望によりエチレンカーボネート(EC)からなる非水溶媒中にホウフッ化リチウム(LiBF
4)を含むものである。このように、リチウム複合酸化物焼結体板である正極板16と、カーボン及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含む負極20と、γ−ブチロラクトン(GBL)及び所望によりエチレンカーボネート(EC)からなる非水溶媒中にホウフッ化リチウム(LiBF
4)を含む電解液24とを選択的に組み合わせることにより、耐熱性に優れたリチウム二次電池を提供することが可能となる。なお、
図1では、複数のチップ状の正極板16が示されているが、本発明はこれに限定されず、チップ状に分割されていない1枚の正極板16を用いてもよい。
【0014】
前述のとおり、スマートカード等の薄型デバイスに薄型リチウム電池を内蔵させる手法として、ホットラミネート加工が考えられる。また、プリント配線板に薄型リチウム電池を実装する手法として、リフローはんだ付けプロセスが考えられる。これらの手法はいずれも110℃以上の高温への加熱を伴うことになるが、従来の液系薄型リチウム電池は耐熱性が不十分であり、110℃以上に加熱されると、電池の膨張及び破損、並びに電池抵抗の増加を招く。これに対し、本発明のリチウム二次電池10は、110℃以上に加熱にされても、電池の膨張や破損が生じず、しかも電池抵抗の増加もみられないといった、優れた耐熱性を有する。かかる優れた耐熱性は、正極板16、負極20及び電解液24の各構成要素として上述したものを選択的に採用して組み合わせることによってもたらされるものである。
【0015】
したがって、リチウム二次電池10は、110℃以上の加熱を伴うプロセスにより基板に実装されることが予定されているのが好ましく、より好ましくは上記加熱を伴うプロセスがホットラミネート加工又はリフローはんだ付けプロセスである。換言すれば、本発明の別の好ましい態様によれば、リチウム二次電池を用意する工程と、リチウム二次電池を110℃以上の加熱を伴うプロセスを経て基板に実装する工程とを含む、電池内蔵デバイスの製造方法が提供され、より好ましくは上記加熱を伴うプロセスがホットラミネート加工又はリフローはんだ付けプロセスである。この場合、加熱を伴うプロセスがホットラミネート加工であり、電池内蔵デバイスが電池内蔵スマートカードであるのが特に好ましい。いずれの態様においても、好ましい加熱温度は110℃以上260℃未満であり、より好ましくは110℃以上240℃未満、さらに好ましくは110℃以上220℃未満、特に好ましくは110℃以上200℃未満、最も好ましくは110℃以上150℃未満である。
【0016】
正極板16は、リチウム複合酸化物焼結体板である。正極板16は焼結体板であるといことは、正極板16がバインダーを含んでいないことを意味する。これは、グリーンシートにバインダーが含まれていたとしても、焼成時にバインダーが消失又は焼失するからである。そして、正極板16がバインダーを含まないことで、電解液による正極の劣化を回避できるとの利点がある。例えば、特許文献1、2及び4にも開示されるように、従来のリチウム電池の正極にはポリフッ化ビニリデン(PVDF)というバインダーが広く用いられているが、このPVDFは本発明の電解液に用いるγ−ブチロラクトン(GBL)に極めて溶解しやすく、バインダーとしての機能を劣化させてしまう。この点、本発明に用いる正極板16はそのようなバインダーを含まない焼結体であるため、上記のような問題が生じない。なお、焼結体板を構成するリチウム複合酸化物は、コバルト酸リチウム(典型的にはLiCoO
2(以下、LCOと略称することがある))であるのが特に好ましい。様々なリチウム複合酸化物焼結体板ないしLCO焼結体板が知られており、例えば特許文献3(特許第5587052号公報)に開示されるものを使用することができる。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、正極板16、すなわちリチウム複合酸化物焼結体板は、リチウム複合酸化物で構成される複数の一次粒子を含み、複数の一次粒子が正極板の板面に対して0°超30°以下の平均配向角度で配向している、配向正極板である。
図3に配向正極板16の板面に垂直な断面SEM像の一例を示す一方、
図4に配向正極板16の板面に垂直な断面における電子線後方散乱回折(EBSD:Electron Backscatter Diffraction)像を示す。また、
図5に、
図4のEBSD像における一次粒子11の配向角度の分布を面積基準で示すヒストグラムを示す。
図4に示されるEBSD像では、結晶方位の不連続性を観測することができる。
図4では、各一次粒子11の配向角度が色の濃淡で示されており、色が濃いほど配向角度が小さいことを示している。配向角度とは、各一次粒子11の(003)面が板面方向に対して成す傾斜角度である。なお、
図3及び4において、配向正極板16の内部で黒表示されている箇所は気孔である。
【0018】
配向正極板16は、互いに結合された複数の一次粒子11で構成された配向焼結体である。各一次粒子11は、主に板状であるが、直方体状、立方体状及び球状などに形成されたものが含まれていてもよい。各一次粒子11の断面形状は特に制限されるものではなく、矩形、矩形以外の多角形、円形、楕円形、或いはこれら以外の複雑形状であってもよい。
【0019】
各一次粒子11はリチウム複合酸化物で構成される。リチウム複合酸化物とは、Li
xMO
2(0.05<x<1.10であり、Mは少なくとも1種類の遷移金属であり、Mは典型的にはCo、Ni及びMnの1種以上を含む)で表される酸化物である。リチウム複合酸化物は層状岩塩構造を有する。層状岩塩構造とは、リチウム層とリチウム以外の遷移金属層とが酸素の層を挟んで交互に積層された結晶構造、すなわち酸化物イオンを介して遷移金属イオン層とリチウム単独層とが交互に積層した結晶構造(典型的にはα−NaFeO
2型構造、すなわち立方晶岩塩型構造の[111]軸方向に遷移金属とリチウムとが規則配列した構造)をいう。リチウム複合酸化物の例としては、Li
xCoO
2(コバルト酸リチウム)、Li
xNiO
2(ニッケル酸リチウム)、Li
xMnO
2(マンガン酸リチウム)、Li
xNiMnO
2(ニッケル・マンガン酸リチウム)、Li
xNiCoO
2(ニッケル・コバルト酸リチウム)、Li
xCoNiMnO
2(コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム)、Li
xCoMnO
2(コバルト・マンガン酸リチウム)等が挙げられ、特に好ましくはLi
xCoO
2(コバルト酸リチウム、典型的にはLiCoO
2)である。リチウム複合酸化物には、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Ge、Sr、Y,Zr、Nb、Mo、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Bi、及びWから選択される1種以上の元素が含まれていてもよい。
【0020】
図4及び5に示されるように、各一次粒子11の配向角度の平均値、すなわち平均配向角度は0°超30°以下である。これにより、以下の様々な利点がもたらされる。第一に、各一次粒子11が厚み方向に対して傾斜した向きに寝た状態になるため、各一次粒子同士の密着性を向上させることができる。その結果、ある一次粒子11と当該一次粒子11の長手方向両側に隣接する他の一次粒子11との間におけるリチウムイオン伝導性を向上させることができるため、レート特性を向上させることができる。第二に、レート特性をより向上させることができる。これは、上述のとおり、リチウムイオンの出入りに際して、配向正極板16では、板面方向よりも厚み方向における膨張収縮が優勢となるため、配向正極板16の膨張収縮がスムーズになるところ、それに伴ってリチウムイオンの出入りもスムーズになるからである。
【0021】
一次粒子11の平均配向角度は、以下の手法によって得られる。まず、
図4に示されるような、95μm×125μmの矩形領域を1000倍の倍率で観察したEBSD像において、配向正極板16を厚み方向に四等分する3本の横線と、配向正極板16を板面方向に四等分する3本の縦線とを引く。次に、3本の横線と3本の縦線のうち少なくとも1本の線と交差する一次粒子11すべての配向角度を算術平均することによって、一次粒子11の平均配向角度を得る。一次粒子11の平均配向角度は、レート特性の更なる向上の観点から、30°以下が好ましく、より好ましくは25°以下である。一次粒子11の平均配向角度は、レート特性の更なる向上の観点から、2°以上が好ましく、より好ましくは5°以上である。
【0022】
図5に示されるように、各一次粒子11の配向角度は、0°から90°まで広く分布していてもよいが、その大部分は0°超30°以下の領域に分布していることが好ましい。すなわち、配向正極板16を構成する配向焼結体は、その断面をEBSDにより解析した場合に、解析された断面に含まれる一次粒子11のうち配向正極板16の板面に対する配向角度が0°超30°以下である一次粒子11(以下、低角一次粒子という)の合計面積が、断面に含まれる一次粒子11(具体的には平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子11)の総面積に対して70%以上であるのが好ましく、より好ましくは80%以上である。これにより、相互密着性の高い一次粒子11の割合を増加させることができるため、レート特性をより向上させることができる。また、低角一次粒子のうち配向角度が20°以下であるものの合計面積は、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子11の総面積に対して50%以上であることがより好ましい。さらに、低角一次粒子のうち配向角度が10°以下であるものの合計面積は、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子11の総面積に対して15%以上であることがより好ましい。
【0023】
各一次粒子11は、主に板状であるため、
図3及び4に示されるように、各一次粒子11の断面はそれぞれ所定方向に延びており、典型的には略矩形状となる。すなわち、配向焼結体は、その断面をEBSDにより解析した場合に、解析された断面に含まれる一次粒子11のうちアスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積が、断面に含まれる一次粒子11(具体的には平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子11)の総面積に対して70%以上であるのが好ましく、より好ましくは80%以上である。具体的には、
図4に示されるようなEBSD像において、これにより、一次粒子11同士の相互密着性をより向上することができ、その結果、レート特性をより向上させることができる。一次粒子11のアスペクト比は、一次粒子11の最大フェレー径を最小フェレー径で除した値である。最大フェレー径は、断面観察した際のEBSD像上において、一次粒子11を平行な2本の直線で挟んだ場合における当該直線間の最大距離である。最小フェレー径は、EBSD像上において、一次粒子11を平行な2本の直線で挟んだ場合における当該直線間の最小距離である。
【0024】
配向焼結体を構成する複数の一次粒子の平均粒径が5μm以上であるのが好ましい。具体的には、平均配向角度の算出に用いた30個の一次粒子11の平均粒径が、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは12μm以上である。これにより、リチウムイオンが伝導する方向における一次粒子11同士の粒界数が少なくなって全体としてのリチウムイオン伝導性が向上するため、レート特性をより向上させることができる。一次粒子11の平均粒径は、各一次粒子11の円相当径を算術平均した値である。円相当径とは、EBSD像上において、各一次粒子11と同じ面積を有する円の直径のことである。
【0025】
配向正極板16を構成する配向焼結体の緻密度は70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。これにより、一次粒子11同士の相互密着性をより向上できるため、レート特性をより向上させることができる。配向焼結体の緻密度は、正極板の断面をCP(クロスセクションポリッシャ)研磨にて研磨した後に1000倍率でSEM観察して、得られたSEM画像を2値化することで算出される。配向焼結体の内部に形成される各気孔の平均円相当径は特に制限されないが、好ましくは8μm以下である。各気孔の平均円相当径が小さいほど、一次粒子11同士の相互密着性をさらに向上することができ、その結果、レート特性をさらに向上させることができる。気孔の平均円相当径は、EBSD像上の10個の気孔の円相当径を算術平均した値である。円相当径とは、EBSD像上において、各気孔と同じ面積を有する円の直径のことである。配向焼結体の内部に形成される各気孔は、配向正極板16の外部につながる開気孔であってもよいが、配向正極板16を貫通していないことが好ましい。なお、各気孔は閉気孔であってもよい。
【0026】
配向正極板16の厚さは、単位面積当りの活物質容量を高めてリチウム二次電池10のエネルギー密度を向上する観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上、最も好ましくは55μm以上である。厚さの上限値は特に限定されないが、充放電の繰り返しに伴う電池特性の劣化(特に抵抗値の上昇)を抑制する観点から、配向正極板16の厚さは200μm未満が好ましく、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは120μm以下、特に好ましくは100μm以下、最も好ましくは90μm以下、80μm以下又は70μm以下である。また、配向正極板のサイズは、好ましくは5mm×5mm平方以上、より好ましくは10mm×10mm〜200mm×200mm平方であり、さらに好ましくは10mm×10mm〜100mm×100mm平方であり、別の表現をすれば、好ましくは25mm
2以上、より好ましくは100〜40000mm
2であり、さらに好ましくは100〜10000mm
2である。
【0027】
負極20は、カーボン及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含む。すなわち、カーボンが負極活物質であり、SBRがバインダーである。カーボンの例としては、黒鉛(グラファイト)、熱分解炭素、コークス、樹脂焼成体、メソフェーズ小球体、メソフェーズ系ピッチ等が挙げられ、好ましくは黒鉛である。黒鉛は、天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれであってもよい。負極20はバインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)を含むことで、電解液による負極の劣化を回避できるとの利点がある。例えば、特許文献4にも開示されるように、従来のリチウム電池の負極においてポリフッ化ビニリデン(PVDF)というバインダーが広く用いられているが、このPVDFは本発明の電解液に用いるγ−ブチロラクトン(GBL)に極めて溶解しやすく、バインダーとしての機能を劣化させてしまう。この点、本発明に用いる負極20はGBLに溶解しにくいスチレンブタジエンゴム(SBR)を選択的に用いるため、上記のような問題が生じない。したがって、負極20はSBR以外のバインダー(例えばPVDF)を含まないのが好ましい。
【0028】
電解液24は、非水溶媒中にホウフッ化リチウム(LiBF
4)を含むものである。非水溶媒は、γ−ブチロラクトン(GBL)からなる単独溶媒であってもよいし、γ−ブチロラクトン(GBL)及びエチレンカーボネート(EC)からなる混合溶媒であってもよい。非水溶媒はγ−ブチロラクトン(GBL)を含むことで沸点が上昇し、耐熱性の大幅な向上をもたらす。かかる観点から、非水溶媒におけるEC:GBLの体積比は0:1〜1:1(GBL比率50〜100体積%)であるのが好ましく、より好ましくは0:1〜1:1.5(GBL比率60〜100体積%)、さらに好ましくは0:1〜1:2(GBL比率66.6〜100体積%)、特に好ましくは0:1〜1:3(GBL比率75〜100体積%)である。非水溶媒中に溶解されるホウフッ化リチウム(LiBF
4)は分解温度の高い電解質であり、これもまた耐熱性の大幅な向上をもたらす。電解液24におけるLiBF
4濃度は0.5〜2mol/Lであるのが好ましく、より好ましくは0.6〜1.9mol/L、さらに好ましくは0.7〜1.7mol/L、特に好ましくは0.8〜1.5mol/Lである。
【0029】
電解液24は添加剤としてビニレンカーボネート(VC)及び/又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)及び/又はビニルエチレンカーボネート(VEC)をさらに含むのが好ましい。VC及びFECはいずれも耐熱性に優れる。したがって、かかる添加剤を電解液24が含むことで、耐熱性に優れたSEI膜を負極20表面に形成させることができ、それによりリチウム二次電池10の耐熱性をより一層向上することができる。
【0030】
リチウム二次電池10は、セパレータ18をさらに備えるのが好ましい。セパレータ18はポリイミド、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))又はセルロース製のセパレータが好ましく、より好ましくはポリイミド製のセパレータである。ポリイミド、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))又はセルロース製のセパレータは、広く用いられている、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の耐熱性に劣るポリオレフィン製セパレータとは異なり、それ自体の耐熱性に優れるだけでなく、γ−ブチロラクトン(GBL)に対する濡れ性にも優れる。したがって、GBLを含む電解液24をセパレータ18に(弾かせることなく)十分に浸透させることができる。その結果、リチウム二次電池10の耐熱性をより一層向上させることができる。特に好ましいセパレータはポリイミド製セパレータである。ポリイミド製セパレータは市販されているが、極めて複雑な微細構造を有するため、過充電時に析出するリチウムデンドライトの伸展及びそれに起因する短絡をより効果的に阻止又は遅延できるとの利点がある。一方、セルロース製セパレータはポリイミド製セパレータよりも安価であるとの利点がある。
【0031】
リチウム二次電池10の厚さは0.45mm以下であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜0.45mm、さらに好ましくは0.2〜0.45mm、特に好ましくは0.3〜0.40mmである。このような範囲内の厚さであると、スマートカード等の薄型デバイスに内蔵させるのに適した薄型リチウム電池とすることができる。
【0032】
図1に示されるように、リチウム二次電池10の中身である、電池要素12及び電解液24は、外装フィルム26で包装され且つ封止されているのが好ましい。すなわち、リチウム二次電池10はいわゆるフィルム外装電池の形態とされるのが好ましい。ここで、電池要素12とは、正極板16、セパレータ18及び負極20を含むものとして定義され、典型的には正極集電体14及び負極集電体22をさらに含む。正極集電体14及び負極集電体22は特に限定されないが、好ましくは銅箔である。正極集電体14には正極端子15が正極集電体14から延出する形で設けられるのが好ましく、負極集電体22には負極端子23が負極集電体22から延出する形で設けられるのが好ましい。なお、
図1においてリチウム二次電池10は電解液24の存在を分かりやすく示すため積層構造及び封止構造に空間的余裕を持たせて描かれているが、実際にはそのような空間的余裕は最小化されることが望まれる。リチウム二次電池10の外縁は外装フィルム26同士が熱融着されることで封止される。熱融着による封止はヒートシール用途で一般的に使用される、ヒートバー(加熱バーとも称される)を用いて行うのが好ましい。
【0033】
外装フィルム26は、市販の外装フィルムを使用すればよい。外装フィルム26の厚さは20〜160μmが好ましく、より好ましくは40〜120μm、さらに好ましくは40〜65μmである。好ましい外装フィルム26は、樹脂フィルムと金属箔とを含むラミネートフィルムであり、より好ましくは樹脂フィルムとアルミニウム箔とを含むアルミラミネートフィルムである。ラミネートフィルムはアルミニウム箔等の金属箔の両面に樹脂フィルムが設けられているのが好ましい。この場合、金属箔の一方の側の樹脂フィルム(以下、表面保護膜という)がナイロン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の補強性に優れた材料で構成され、金属箔の他方の側の樹脂フィルム(以下、封止樹脂膜という)がポリプロピレン等のヒートシール材料で構成されるのが好ましい。このような表面保護膜/アルミニウム箔/封止樹脂膜の層構成のアルミラミネートフィルムがリチウム電池用に市販されているが、市販のアルミラミネートフィルムの封止樹脂膜はポリプロピレン系樹脂の2層構成であることが多く、この2層構成は、軟化点150〜160℃の主層と、その外側に存在する軟化点130〜140℃の接着層とからなるのが一般的である。しかし、軟化点130〜140℃の接着層は、主層よりも軟化点が低いため、加熱により軟化又は流動化しやすく、それ故耐熱性に劣るといえる。そこで、リチウム二次電池10の耐熱性を向上する観点から、ポリプロピレン系樹脂2層構成の封止樹脂膜に対して、以下のi)又はii)の改良を施すのが好ましい。
i)接着層を無くし、主層のみの1層構成の封止樹脂膜とする。こうすることで、軟化点130〜140℃の接着層が無くなるので、耐熱性が向上する。この場合、軟化点150〜160℃の主層が接着層の役割を兼ねることなる。
ii)接着層を無くし、かつ、主層として軟化温度の高い耐熱ポリプロピレン膜を用いる。軟化温度が160〜170℃と高い耐熱ポリプロピレン膜が知られており、封止樹脂膜をかかる耐熱ポリプロピレン膜の単層構造とすることで、ポリプロピレン系で最高レベルの耐熱性を確保することができる。
【0034】
なお、ホットラミネート加工等の加熱プレスにおける外装フィルム26の破れを防止するために、正極集電体14、正極端子15、負極集電体22及び負極端子23の少なくともいずれか1つの端部に保護テープを貼り付けてもよい。こうすることで、部材端部に形成されることがあるバリに起因する外装フィルム26の破れを効果的に防ぐことができる。保護テープの好ましい例としては耐熱性に優れる点からポリイミドテープが挙げられる。
【0035】
コバルト酸リチウム配向焼結板の製造方法
本発明のリチウム二次電池に好ましく用いられる配向正極板ないし配向焼結板は、いかなる製法によって製造されてもよいが、好ましくは、以下に例示されるように、(1)LiCoO
2テンプレート粒子の作製、(2)マトリックス粒子の作製、(3)グリーンシートの作製、及び(4)配向焼結板の作製を経て製造される。
【0036】
(1)LiCoO
2テンプレート粒子の作製
Co
3O
4原料粉末とLi
2CO
3原料粉末とを混合する。得られた混合粉末を500〜900℃で1〜20時間焼成して、LiCoO
2粉末を合成する。得られたLiCoO
2粉末をポットミルにて体積基準D50粒径0.1〜10μmに粉砕して、板面と平行にリチウムイオンを伝導可能な板状のLiCoO
2粒子を得る。得られたLiCoO
2粒子は、劈開面に沿って劈開しやすい状態となっている。LiCoO
2粒子を解砕によって劈開させることで、LiCoO
2テンプレート粒子を作製する。このようなLiCoO
2粒子は、LiCoO
2粉末スラリーを用いたグリーンシートを粒成長させた後に解砕する手法や、フラックス法や水熱合成、融液を用いた単結晶育成、ゾルゲル法など板状結晶を合成する手法によっても得ることができる。
【0037】
本工程では、以下のとおり、配向正極板16を構成する一次粒子11のプロファイルを制御することができる。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比及び粒径の少なくとも一方を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比を大きくするほど、また、LiCoO
2テンプレート粒子の粒径を大きくするほど、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比と粒径は、それぞれ、Co
3O
4原料粉末及びLi
2CO
3原料粉末の粒径、粉砕時の粉砕条件(粉砕時間、粉砕エネルギー、粉砕手法等)、並びに粉砕後の分級のうち少なくとも1つを調整することによって制御することができる。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比を調整することによって、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を制御することができる。具体的には、LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比を大きくするほど、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を高めることができる。LiCoO
2テンプレート粒子のアスペクト比の調整手法は上述のとおりである。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子の粒径を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子の粒径を調整することによって、配向正極板16の緻密度を制御することができる。具体的には、LiCoO
2テンプレート粒子の粒径を小さくするほど、配向正極板16の緻密度を高めることができる。
【0038】
(2)マトリックス粒子の作製
Co
3O
4原料粉末をマトリックス粒子として用いる。Co
3O
4原料粉末の体積基準D50粒径は特に制限されず、例えば0.1〜1.0μmとすることができるが、LiCoO
2テンプレート粒子の体積基準D50粒径より小さいことが好ましい。このマトリックス粒子は、Co(OH)
2原料を500〜800℃で1〜10時間熱処理を行なうことによっても得ることができる。また、マトリックス粒子には、Co
3O
4の他、Co(OH)
2粒子を用いてもよいし、LiCoO
2粒子を用いてもよい。
【0039】
本工程では、以下のとおり、配向正極板16を構成する一次粒子11のプロファイルを制御することができる。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子の粒径に対するマトリックス粒子の粒径の比(以下、「マトリックス/テンプレート粒径比」という。)を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわちマトリックス粒子の粒径が小さいほど、後述する焼成工程においてマトリックス粒子がLiCoO
2テンプレート粒子に取り込まれやすくなるため、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ マトリックス/テンプレート粒径比を調整することによって、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわちマトリックス粒子の粒径が小さいほど、アスペクト比が4以上である一次粒子11の合計面積割合を高めることができる。
‐ マトリックス/テンプレート粒径比を調整することによって、配向正極板16の緻密度を制御することができる。具体的には、マトリックス/テンプレート粒径比を小さくするほど、すなわち、マトリックス粒子の粒径が小さいほど、配向正極板16の緻密度を高めることができる。
【0040】
(3)グリーンシートの作製
LiCoO
2テンプレート粒子とマトリックス粒子を100:3〜3:97に混合して混合粉末を得る。この混合粉末、分散媒、バインダー、可塑剤及び分散剤を混合しながら、減圧下で撹拌して脱泡し且つ所望の粘度に調整してスラリーとする。次に、LiCoO
2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法を用いて、調製したスラリーを成形することによって成形体を形成する。こうして、各一次粒子11の平均配向角度を0°超30°以下とすることができる。LiCoO
2テンプレート粒子にせん断力を印加可能な成形手法としては、ドクターブレード法が好適である。ドクターブレード法を用いる場合には、調製したスラリーをPETフィルムの上に成形することによって、成形体としてのグリーンシートが形成される。
【0041】
本工程では、以下のとおり、配向正極板16を構成する一次粒子11のプロファイルを制御することができる。
‐ 成形速度を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、成形速度が速いほど、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 成形体の密度を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、成形体の密度を大きくするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ LiCoO
2テンプレート粒子とマトリックス粒子との混合比を調整することによっても、配向正極板16の緻密度を制御することができる。具体的には、LiCoO
2テンプレート粒子を多くするほど、配向正極板16の緻密度を下げることができる。
【0042】
(4)配向焼結板の作製
スラリーの成形体をジルコニア製セッターに載置し、500〜900℃で1〜10時間て加熱処理(一次焼成)して、中間体としての焼結板を得る。この焼結板をリチウムシート(例えばLi
2CO
3含有シート)で上下挟み込んだ状態でジルコニアセッター上に載置して二次焼成することで、LiCoO
2焼結板を得る。具体的には、リチウムシートで挟み込まれた焼結板が載置されたセッターをアルミナ鞘に入れ、大気中にて700〜850℃で1〜20時間焼成した後、この焼結板をさらにリチウムシートで上下挟み込んで750〜900℃で1〜40時間焼成して、LiCoO
2焼結板を得る。この焼成工程は、2度に分けて行ってもよいし、1度に行なってもよい。2度に分けて焼成する場合には、1度目の焼成温度が2度目の焼成温度より低いことが好ましい。なお、二次焼成におけるリチウムシートの総使用量はグリーンシート中のCo量に対する、グリーンシート及びリチウムシート中のLi量のモル比であるLi/Co比が1.0になるようにすればよい。
【0043】
本工程では、以下のとおり、配向正極板16を構成する一次粒子11のプロファイルを制御することができる。
‐ 焼成時の昇温速度を調整することによって、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、昇温速度を速くするほど、マトリックス粒子同士の焼結が抑えられて、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 中間体の加熱処理温度を調整することによっても、配向角度が0°超30°以下である低角一次粒子の合計面積割合を制御することができる。具体的には、中間体の加熱処理温度を低くするほど、マトリックス粒子同士の焼結が抑えられて、低角一次粒子の合計面積割合を高めることができる。
‐ 焼成時の昇温速度及び中間体の加熱処理温度の少なくとも一方を調整することによって、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、昇温速度を速くするほど、また、中間体の加熱処理温度を低くするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ 焼成時のLi(例えば、Li
2CO
3)量及び焼結助剤(例えば、ホウ酸や酸化ビスマス)量の少なくとも一方を調整することによっても、一次粒子11の平均粒径を制御することができる。具体的には、Li量多くするほど、また、焼結助剤量を多くするほど、一次粒子11の平均粒径を大きくすることができる。
‐ 焼成時のプロファイルを調整することによって、配向正極板16の緻密度を制御することができる。具体的には、焼成温度を遅くするほど、また、焼成時間を長くするほど、配向正極板16の緻密度を高めることができる。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0045】
例A1
(1)リチウム二次電池の作製
図1に模式的に示されるようなフィルム外装電池の形態のリチウム二次電池10を
図2A及び2Bに示されるような手順で作製した。具体的には以下のとおりである。
【0046】
まず、厚さ90μmのLiCoO
2焼結体板(以下、LCO焼結体板という)を用意した。このLCO焼結体板は前述したリチウム複合酸化物焼結体板の製造方法に従って製造されたものであり、前述したリチウム複合酸化物焼結体板の好ましい諸条件を満たすものである。この焼結体板を、レーザー加工機で10mm×10mm角の正方形に切断して、複数のチップ状の正極板16を得た。
【0047】
外装フィルム26として、アルミラミネートフィルム(昭和電工パッケージング製、厚さ61μm、ポリプロピレンフィルム/アルミニウム箔/ナイロンフィルムの3層構造)を2枚用意した。
図2Aに示されるように、1枚の外装フィルム26に正極集電体14(厚さ9μmの銅箔)を介して複数個のチップ状正極板16を積層して、正極組立品17とした。このとき、正極集電体14が外装フィルム26に接着剤で固定された。なお、正極集電体14には、正極端子15が溶接により正極集電体14から延出する形で固定されている。一方、もう1枚の外装フィルム26に、負極集電体22(厚さ10μmの銅箔)を介して、負極20(厚さ130μmのカーボン層)を積層して、負極組立品19とした。このとき、負極集電体22が外装フィルム26に接着剤で固定された。なお、負極集電体22には、負極端子23が溶接により負極集電体22から延出する形で固定されている。また、負極20としてのカーボン層は、表1に示されるように、活物質としてのグラファイトと、バインダーとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)との混合物を含む塗工膜とした。
【0048】
セパレータ18として、多孔質ポリイミド膜(東京応化工業株式会社製、厚さ23μm、気孔率80%)を用意した。
図2Aに示されるように、正極組立品17、セパレータ18及び負極組立品19を、正極板16及び負極20がセパレータ18と向かい合うように順に積層して、両面が外装フィルム26で覆われ且つ外装フィルム26の外周部分が電池要素12の外縁からはみ出した積層体28を得た。こうして積層体28内に構築された電池要素12(正極集電体14、正極板16、セパレータ18、負極20及び負極集電体22)の厚さは0.33mmであり、その形状及びサイズは2.3cm×3.2cmの四角形であった。
【0049】
図2Aに示されるように、得られた積層体28の3辺Aの封止を行った。この封止は積層体28の外周部分を200℃、1.5MPaで10秒間加熱プレスして、外周部分で外装フィルム26(アルミラミネートフィルム)同士を熱融着させることにより行った。3辺Aの封止後、積層体28を真空乾燥器34に入れ、水分を除去するとともに接着剤を乾燥させた。
【0050】
図2Bに示されるように、グローブボックス38内において、外縁3辺Aが封止された積層体28の未封止の残り1辺Bにおいて1対の外装フィルム26間の隙間を形成し、その隙間に注入器具36を挿入して電解液24を注入し、絶対圧5kPaの減圧雰囲気下にて簡易シーラーを用いて辺Bを仮封止した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)及びγ−ブチロラクトン(GBL)を1:3(体積比)で含む混合溶媒に、LiBF
4を1.5mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。こうして辺Bが仮封止された積層体に初期充電を施し、7日間のエージングを行った。最後に封止した残り1辺Bの外周部分(電池要素を含まない末端部分)を切除して、ガス抜きを行った。
【0051】
図2Bに示されるように、グローブボックス38内において、絶対圧5kPaの減圧雰囲気下、仮封止の切除により生じた辺B’の封止を行った。この封止もまた積層体28の外周部分を200℃、1.5MPaで10秒間加熱プレスして、外周部分で外装フィルム26(アルミラミネートフィルム)同士を熱融着させることにより行った。こうして辺B’を1対の外装フィルム26で封止して、フィルム外装電池の形態のリチウム二次電池10とした。リチウム二次電池10をグローブボックス38から取り出し、外装フィルム26の外周の余分な箇所を切除して、リチウム二次電池10の形状を整えた。こうして、電池要素12の外縁4辺が1対の外装フィルム26で封止され、かつ、電解液24が注入された、リチウム二次電池10を得た。得られたリチウム二次電池10はサイズ38mm×27mmの長方形であり、厚さ0.45mm以下、容量30mAhであった。
【0052】
(2)評価
作製されたリチウム二次電池に、ホットプレス装置において、表1に示される各種温度(20℃、100℃、110℃、120℃、又は150℃)での30分間の加熱及び圧力0.7MPaでの加圧を施した後、以下の評価を行った。
【0053】
<電池外観>
上記加熱が施されたリチウム二次電池を目視にて観察することにより、電池外観の変化の有無を観察した。結果は表1Aに示されるとおり、いずれの加熱温度においても電池の外観変化は見られなかった。
【0054】
<電池抵抗>
上記加熱が施されたリチウム二次電池の電池抵抗を、バイオロジック社製電気化学測定システムSP−150を用いて交流インピーダンス法にて測定した。測定された電池抵抗を、20℃で加熱された電池の電池抵抗を1とした場合における相対値として算出した。結果は表1Aに示されるとおりであり、いずれの加熱温度においても、加熱温度20℃の電池との比較において、電池抵抗の変化は見られなかった。
【0055】
例A2(比較)
i)正極としてLCO焼結体板の代わりに、LiCoO
2粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物の塗工膜(以下、LCO塗工電極という)を用いたこと、ii)電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと、iii)負極バインダーとしてSBRの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0056】
例A3(比較)
電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A2と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0057】
例A4(比較)
i)電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと、及びii)負極バインダーとしてSBRの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0058】
例A5(比較)
電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A4と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0059】
例A6(比較)
電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0060】
例A7(比較)
電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びジエチルカーボネート(DEC)を3:7(体積比)で含む混合溶媒に、LiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Aに示されるとおりであった。
【0061】
例A8(比較)
i)正極としてLCO焼結体板の代わりに、LiCoO
2粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物の塗工膜(すなわちLCO塗工電極)を用いたこと、及びii)負極バインダーとしてSBRの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Bに示されるとおりであった。
【0062】
例A9(比較)
正極としてLCO焼結体板の代わりに、LiCoO
2粉末及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物の塗工膜(すなわちLCO塗工電極)を用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Bに示されるとおりであった。
【0063】
例A10(比較)
負極バインダーとしてSBRの代わりにポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Bに示されるとおりであった。
【0064】
例A11(比較)
電解液として、プロピレンカーボネート(PC)及びγ−ブチロラクトン(GBL)を1:3(体積比)で含む混合溶媒に、LiBF
4を1.5mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A10と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Bに示されるとおりであった。
【0065】
例A12(比較)
電解液として、プロピレンカーボネート(PC)及びγ−ブチロラクトン(GBL)を1:3(体積比)で含む混合溶媒に、LiBF
4を1.5mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いたこと以外は、例A1と同様にして電池の作製及び評価を行った。結果は表1Bに示されるとおりであった。
【0066】
【表1A】
【0067】
【表1B】