特許第6943971号(P6943971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6943971繊維材からなる管を形成するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6943971
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】繊維材からなる管を形成するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/02 20060101AFI20210927BHJP
   B29C 70/52 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A24D3/02
   B29C70/52
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-552448(P2019-552448)
(86)(22)【出願日】2018年3月15日
(65)【公表番号】特表2020-511969(P2020-511969A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】GB2018050661
(87)【国際公開番号】WO2018172742
(87)【国際公開日】20180927
【審査請求日】2019年11月15日
(31)【優先権主張番号】1704700.2
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1704692.1
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ファロン、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルホルト、アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ル ルー、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、ジョン
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03684622(US,A)
【文献】 国際公開第2012/132972(WO,A1)
【文献】 特表平11−507994(JP,A)
【文献】 特開昭52−104577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/02
B29C 70/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維供給モジュール(1)から出た複数の繊維の経路に配置された分割器(59)と、マンドレル(73)と、マンドレル(73)と協働するように構成され、配置されたダイ(84)とを含む、繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置を使用して繊維材からなる管状ロッドを形成する方法であって、この方法は、前記繊維供給モジュール(1)でメルトブロー法を使用して複数の繊維を製することと、前記繊維を長尺の束状に収集することと、分割器(59)を使用して繊維を分けて束の長さに沿って割れ目を形成することと、マンドレル(73)とダイ(84)が協働して束の繊維をマンドレルの周囲で管状構造になるように閉じるようにマンドレル(73)を割れ目に挿入することと、繊維を管状ロッドとしてマンドレル(73)から分離することとを含む方法。
【請求項2】
割れ目は束を介して部分的に延びた凹部として形成されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
割れ目は束の周囲から半径方向に束の中央へ延びるように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
割れ目は束の厚さの50%、60%または70%を延びていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
割れ目は束を2つ部分に分割することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
処理流体が繊維の束がマンドレル上を通過する際に繊維の束に送出されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
処理流体はマンドレル(73)の中から送出されることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
繊維が繊維材の原料から供給されることを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
繊維が連続する製造工程によって供給されることを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
繊維の束はこれを管状構造に固定するために処理されることを特徴とする請求項1乃至9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
繊維の束を繊維の束のための所望の円周輪郭を画定する収縮部を通過するように前進させ、繊維を硬化させるための処理流体が繊維が収縮部に入る際に束内に導入されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
メルトブロー法を使用して繊維供給モジュール(1)によって製せられた複数の繊維から繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置であって、この装置は、収集装置(2)であって、前記繊維供給モジュールから連続する繊維の供給を受け、繊維が収集装置(2)を進む際に繊維を束に収集するように構成された収集装置(2)と、収集装置(2)を通る繊維の経路に配置され、繊維が収集装置(2)内を進む際に束の長さに沿って割れ目を形成するように構成された分割器(59)と、分割器(59)の下流の繊維の束の経路に配置されたマンドレル(73)を含むマンドレル集成体(60)と、マンドレル(73)と協働してマンドレル(73)の周囲で繊維を管状構造に形成するように構成され、配置されたダイ(84)とを含み、マンドレル(73)はマンドレル(73)を支持する分割プレート(78)を含むマンドレル支持体(72)を含み、分割プレート(78)は、繊維の束がマンドレル上を進む際に分割プレート(78)の上流で分割器(59)によって束に形成された割れ目を開いた状態に維持するために分割器(59)と位置合わせされている、装置。
【請求項13】
前記収集装置(2)は、繊維を受ける流入口(56)と繊維のウェブが束として取り出される流出口(57)とを有する成形錐体(50)を含み、この成形錐体(50)は、流入口(56)と流出口(57)の間に長手方向に延びたテーパーした構造の経路を画定することを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記分割器(59)は、流入口(56)と流出口(57)の間で延びた成形錐体(50)の経路に突起を有することを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記マンドレル(73)は、繊維の束を受けるように構成された端部が開口した管状のケーシング(71)に取り付けられていることを特徴とする請求項12乃至14いずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記マンドレル支持体(72)は、マンドレル(73)を管状ケーシング(71)に接続することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記マンドレル(73)は、繊維束がマンドレル(73)上を通過する際に繊維束に処理流体を送出するための経路を含むことを特徴とする請求項12乃至16いずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記ダイ(84)は、繊維をマンドレル(73)の周囲で所望の外形に形成するように構成され、配置されていることを特徴とする請求項12乃至17いずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記ダイ(84)は、それを通る中央経路を画定する本体を含み、前記マンドレル(73)は、本体とマンドレル(73)の間に管状の空間を画定するためにこの中央経路(55)に取り付けられたロッド(73)を含むことを特徴とする請求項18記載の装置。
【請求項20】
繊維をマンドレル(73)上で支持しながら硬化させる処理ステーションをさらに含むことを特徴とする請求項12乃至19いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
前記処理ステーションは、処理流体が導入されるチェンバーを画定するハウジングを含み、ダイ(84)は、ハウジング内に配置され、チェンバーから繊維へ処理流体を送出するための1つ以上の導管が設けられていることを特徴とする請求項20記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許明細書は、繊維材からなるロッド、特に紙巻きタバコに使用するためのフィルターロッドを形成するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維材からなる管は、繊維を長尺の束に収集し、繊維の束をマンドレルの周囲で管状構造に形成し、得られた繊維をマンドレルから分離し、中央の軸方向経路を有する管状ロッドにすることによって形成することができる。しかしながら、繊維の束が連続工程でマンドレルの周囲で形成される際、時々、束が束内の繊維の密度のムラによりマンドレルと正しく位置合わせされない場合があり、その結果中央経路の軸が管の中央軸と正しく位置合わせされず、これにより管の壁厚が不均一になる、あるいは管状構造が完全に崩壊してしまう。その工程および装置は、そのために停止し、再始動させなければならず、製造の遅れおよびさらなるコストの原因になる。これは特に繊維の束が低密度の繊維の供給原料から収集される場合または管が高速で形成される場合に起こる。
【発明の概要】
【0003】
1つの実施態様では繊維材からなる管状ロッドの形成方法は、繊維を長尺の束状に収集することと、繊維を分けて束の長さに沿って割れ目を形成することと、マンドレルを割れ目に挿入することと、繊維の束を管状構造になるようにマンドレルの周囲で閉じることと、繊維を管状ロッドとしてマンドレルから分離することとを含む。
【0004】
別の実施態様では繊維材からなる管状ロッドを製造するための連続的な製造工程は、繊維を束状に収集することと、繊維を分けて束の長さに沿って半径方向に割れ目を形成することと、凹部の中に位置するマンドレルに亘って束を進めることと、繊維の束をマンドレルの周囲で閉じることと、束を処理して安定した管状構造を形成することと、マンドレルから束を取り外すこととを含む。
【0005】
繊維の束の処理は、繊維の束の所望の円周輪郭を画定する収縮部を通過するように束を進めることおよび繊維が収縮部に入った際に繊維を硬化させる処理流体を束に導入することによる束のさらなる処理を含んでもよい。
【0006】
別の実施態様では繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置は、、連続する繊維の供給を受け、繊維が装置内を進む際に繊維を束に収集するように構成された収集装置と、繊維の経路に配置され、繊維が装置内を進む際に束の長さに沿って割れ目を形成するように構成された分割器と、分割器と位置合わせされて繊維の束の経路に配置され、繊維の束がマンドレル上を進む際に割れ目を繊維の束を通る道のように形成するように構成されたマンドレルと、マンドレルと協働してマンドレルの周囲で繊維を管状構造に形成するように構成され、配置されたダイとを含む。
【0007】
1つの実施態様ではダイは、それを通る中央経路を有し、マンドレルは、中央経路内に取り付けられてダイとマンドレルの間に環状の空間を画定するロッドを含む。
【0008】
本発明の装置は、繊維を管状構造に硬化または固定するために構成、配置された処理装置をさらに含む。処理装置の構造は、繊維材の性質および繊維の束の最終形状を固定するために使用される技術により変わる。例えば、繊維は、熱を加えることによって軟化させることができる熱可塑性材料から形成されてもよく、繊維を互いにそれらが接触する箇所で融合させる。このような繊維では処理ステーションは、マンドレル上で支持しながら繊維に熱を加えるように構成されている。この目的のために処理ステーションは、繊維の経路を収容するように構成されたスチームチェンバーを含んでもよい。
【0009】
1つの実施態様では処理ステーションは、処理流体が導入されるチェンバーを画定するハウジングを含み、ダイは、ハウジング内に配置され、チェンバーから繊維へ処理流体を送出するための1つ以上の導管が設けられている。
【0010】
マンドレルの導入前に繊維束に割れ目を形成することで、管が形成しやすくなり、マンドレルと繊維の束とのずれによる不具合のリスクを軽減することができる。
【0011】
割れ目は、束を別々の部分、例えば2つの個別の束に分割してもよく、またはこれとは別に割れ目は、束の一部、例えば束の周囲から束の中心へと半径方向に例えば束の厚みの20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を延びた凹部の形状であってもよい。
【0012】
ここに開示する方法および装置は、繊維材の原料、例えば繊維トウのベールからまたは連続的な製造工程または装置、例えばメルトブロー、溶融紡糸、電解紡糸法によってまたは当業者に知られている繊維を作製する他の工程によってまたは装置から直接的に供給される繊維から繊維を加工するために使用してもよい。これらの方法のいずれかまたは別の方法で製せられた絡まった繊維のウェブは、次にここに開示する方法または装置を用いて長尺の束状に収集される。
【0013】
繊維トウは、例えばセルロースアセテートなどの捲縮繊維から形成される。繊維の捲縮によってその繊維から得られる繊維束の弾力性(即ち、繊維が破断せずに延伸できる度合い)を高めることになる。次にこれは、その繊維から形成された管またはロッドの弾力性に影響を与える。トウのベールにおいて、繊維は高度に捲縮される。使用前、トウを「開花」させてもよく、または捲縮を小さくする処理をし、繊維が互いに解放されるようにしてもよい。しかしながら、捲縮は繊維全体からは取り除かれない。繊維をある程度捲縮させることでトウ材料に弾力性を与え、繊維束をロッドまたは管などの所望の形状に成形しやすくなる。
【0014】
ここに開示する方法および装置は、メルトブローによる繊維の製造が例示される。通常のメルトブロー処理では繊維形成ポリマーが1つ以上のオリフィスから高温気体(例えば空気または場合によっては不活性ガス)の収束した流れ内に押し出される。この気体流は、オリフィスから出たポリマーを溶融したポリマーの薄い流れになるように吹きつけ、次にポリマーは固まり、直径の小さいフィラメント繊維を形成する。繊維は、気体の流れに同伴され、例えば気体と繊維の流れを収集面に案内することによって集められてもよい。トウ繊維とは対照的にメルトブローされた繊維は、基本的には線状で、捲縮されていない。従って、メルトブローされた繊維の束は、比較的低い弾力性を有し、個々の繊維は、よりちぎれやすくなる。メルトブローされた繊維の束の弾力性は、繊維をウェブ、マットまたは束に堆積することによって製せられるもつれた束のウェブ構造から主に発生する。
【0015】
ウェブに、例えば空気または不活性ガス中でスチームまたは水蒸気などの加熱された処理流体によって熱を加えることで、ロッドまたは管などの所望の直線状の構造に形成するために繊維を滑らかにし、繊維を解きほぐしやすくし、より規則正しく配列された繊維のウェブを形成しやすくなる。
【0016】
束になった繊維がダイを通過する際、熱を加えることによって繊維束を延伸させる。繊維がダイの成形セクションに長く留まるほど、繊維束は、より延伸する。繊維束がダイの中で延伸される度合いは、最終製品の最終的な密度、形、大きさおよび構造に影響を与える。
【0017】
可塑剤を使用して、繊維束を繊維同士の接触点で接着させることに成形され形状に硬化させやすくしてもよい。可塑剤は、繊維束に例えば噴霧することによって塗布してもよい。この技術は、捲縮させた繊維トウに一般に使用されている。メルトブローされた繊維の場合可塑剤は、一般に繊維が形成されるポリマー材料に組み込まれ、ポリマーを軟化させるまたは溶融させるのに充分な熱を繊維に加えることによって繊維から放出される。
【0018】
1つの実施態様では収集ステーションまたは装置は、典型的にこの分野の装置に使用される構造のものであってもよく、成形錐体として知られている。成形錐体は、例えば繊維を受ける流入口と繊維のウェブが束として取り出される流出口との間でテーパーした長手方向に延びた経路を画定する構造を含んでもよい。
【0019】
分割器は、マンドレルの上流で装置を通る繊維の経路に取り付けられた壁、ピン、ブレード、すき、または他の形状のものであってもよい。分割器は、繊維の束に湾曲またはV字状の面または縁部を付与してもよい。1つの実施態様では分割器は、成形錐体に位置する。例えば、1つの実施態様では分割器は、流入口と流出口の間を延びた成形錐体の経路に壁を含んでもよい。
【0020】
1つの実施態様では繊維のウェブを形成する装置は、繊維のウェブを受ける流入口と繊維のウェブが束として取り出される流出口とを有し、流入口と流出口の間に長手方向に延びたテーパーした構造の経路を画定する成形錐体を含み、成形錐体は経路内に位置し、流出口を横断して突出して繊維の束に長手方向に延びた割れ目を形成する分割器を有する。
【0021】
本発明の装置は、成形錐体の流出口と位置合わせされて配置されたマンドレルを含み、これは成形錐体の流出口から繊維の束を受け、その周囲で中央経路が繊維の束に形成されてもよい。
【0022】
本発明の装置の1つの実施態様ではマンドレルは、装置を通る繊維の束の経路の周囲に取り付けられた管状ケーシングに取り付けられる。マンドレルは、例えば繊維の束の移動方向に延び、管状ケーシングの軸に一致するまたは平行な軸に沿って管内に取り付けられたロッドを含んでもよい。このような構造の別の実施態様では分割器は、マンドレルを管状ケーシングに接続する支持体を含んでもよい。
【0023】
1つの実施態様ではマンドレルは、繊維の束がマンドレル上を通過する際に繊維にスチームまたは熱い水蒸気などの処理流体を送出するように構成されてもよい。例えば、このマンドレルには処理流体を導入するための流入口とマンドレルの表面と連通する流出口を有する経路が設けられてもよい。
【0024】
また本明細書は、繊維材からなる管状ロッドを形成する方法を開示し、この方法は、繊維を長尺の束に収集することと、束の繊維をマンドレルの周囲で閉じて管状構造にすることと、マンドレルから繊維を分離して管状ロッドとすることとを含み、処理流体がマンドレルを介して束内に導入される。
【0025】
さらに本明細書は、繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置を開示し、この装置はマンドレルを含み、マンドレルは、繊維の束がマンドレル上を進む際に繊維の束を通る経路を形成するように構成され、処理流体を導入するための流入口とマンドレルの表面と連通する流出口を有する経路が設けられている。
【0026】
また収縮部を通る束の移動方向に対向しない方向に処理流体が導入されれば、繊維をロッドまたは管状に形成しやすくなる。例えば、導管の流出口は、ダイを通る通路内に流体を経路の軸に対して大まかに半径方向にまたは直角に放出するように配置されてもよく、または導管は、経路内に流体を経路の軸に対して鋭角で、例えばダイを通る繊維の移動方向に対して90度を大きく超えない角度で、場合により移動方向に対して10、20、30、40、50、60、70または80度で放出するように配置されてもよい。これらの構造において導管の流出口は、流体を経路の流出口の方へほぼ下流方向に導く。もし90度を僅かに超える角度(例えば移動方向に対して95〜100°以下)で案内されると、流体の流れは、まだダイを通る繊維の束の移動を著しく妨害せず、まだ流体の流れの運動エネルギーは、繊維の束の圧縮および成形そしてダイ内の繊維の移動を補助する。90°を大幅に超える、例えば100〜180°の方向では、流体によって繊維に及ぼされる力のかなりの成分がマンドレル上を通る繊維の移動に著しく反し、繊維束の圧縮および成形を妨げる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の装置および方法の実施態様をここで添付図面を参照し、あくまで例示として詳しく説明する。
図1】繊維材からなる管状ロッドを形成するための装置の実施態様の略式側面図であり、一部を縦断面にて示し、途中切断し、幅を短く示している。
図2図1の装置の略式平面図である。
図3図1および2の装置に使用される成形錐体の実施態様の分解図である。
図3A図3の成形錐体の1つの部品を拡大して示した斜視図である。
図4A】一端から見た図3の成形錐体の上部の立面図である。
図4B図4Aに示した部分を下から見た平面図である。
図4C図4Aに示した部分を反対の端部から見た立面図である。
図5A図1および2の装置に使用されるマンドレル集成体とダイ集成体の実施態様の上方および一端から見た拡大斜視図である。
図5B図5Aの集成体の長手方向縦断面図である。、
図5C】集成体が互いに離されている図5Aおよび5Bに示した装置の側面図である。
図5D】マンドレル集成体の別の実施態様を支持する図1の装置の図5Bに類似する長手方向縦断面図である。
図5E】装置に取り付けられた図5Dのマンドレル集成体を上流から見た端部立面図である。
図6A】マンドレル集成体から分離された図5Aのダイ集成体の上方および一端から見た分解斜視図である。、
図6B図6Aのダイ集成体の矢印6B−6Bの方向における縦断面である。
図7A図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7A線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形を示す。
図7B図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7B線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の断面図であり、繊維材の束および図4A〜4Cより拡大して成形錐体を示している。
図7C図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7C線に沿ってその矢印で示す上流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7D〜7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7D図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7D線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7E〜7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7E図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7E線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7F、7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7F図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7F線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7E、7Gとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
図7G図1〜6Bの装置を介して進む連続する段階として、図1の7G線に沿ってその矢印で示す下流における繊維材の束の形の斜視図であり、束を図7C、7D、7E、7Fとほぼ同じ縮尺であるが、図7Aおよび7Bに対しては小さく示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1および2を参照して例示する装置は、モジュラー構造であり、連続的に作動可能な繊維供給モジュール1と、繊維が連続したウェブの形体の束状に収集される繊維収集モジュール2と、繊維の束が中空管の形状のロッド5に連続的に形成される成形モジュール3とを含む。この例において製造される繊維の管は、紙巻きタバコのフィルターの製造に好適に使用される。
【0029】
繊維供給モジュール
繊維供給モジュール1は、メルトブローヘッド10を含み、その構造および作動は当業者に知られており、ここでは詳しく説明しない。他の実施態様では繊維供給モジュールは、例えば融解紡糸または電解紡糸ユニット、またはフィルタートウ材のベールから繊維の膨張したウェブを供給する供給システムを含んでもよい。
【0030】
例示するメルトブロー装置では溶融したポリマー材がポリマー吸入マニホルド12を介してメルトブローヘッド10に供給され、噴射列13を介してヘッドから出てくる。熱い加圧された気体、通常空気が、ポリマー吸入マニホルド12の両側にある空気吸入マニホルド14、14を介してメルトブローヘッド10内に導入され、2つの収束した高速気体流の状態でヘッドから出てくる。熱い気体の流れは、噴射列13から出たポリマーに吹き付けられ、溶融したポリマーの薄い流れを形成し、これは2、3センチメートルの噴流内で固まり、多様な連続した小さい径の繊維15を形成する。これによりもつれた繊維の複雑なパターンが高速気体流中に形成される。
【0031】
繊維収集モジュール
繊維収集モジュール2は、メルトブローヘッド10の垂直方向下方に配置され、ヘッドから出た空気流に同伴した繊維15を受ける。メルトブローヘッドと繊維収集モジュールとの間の垂直距離は、分かりやすくするために図1では誇張されている。
【0032】
繊維収集モジュール2は、剛性フレーム20を含み、これは支持フレーム20に溶接またはボルト留めされ、これに固定された金属プレートから形成された中空のケーシング22を支持する。ケーシング22は、図1の右側の上流端から図1の左側の下流端へと長手方向に水平に延びた主軸を有する平面においてほぼ矩形である。
【0033】
ケーシング22に取り付けられたコンベアー24は、繊維15をメルトブローヘッド10から進路25(その枠は図1および図2に部分的に破線で示されている)の途中までそして繊維収集モジュール2を介してロッド成形モジュール3へと移動させる移送システムを供する。コンベアー24は、ケーシング22の上流端に固定されたベアリングに取り付けられ、ケーシングの横手方向に延びた水平軸を中心に回転するための比較的径の大きいテンションローラー26を含む。ケーシング22の下流端で、テンションローラー26の軸に平行な水平軸を中心に回転するためのそれぞれテンションローラーより直径に小さい遊動ローラー27および駆動ローラー28がケーシング22に固定されたベアリングに取り付けられており、遊動ローラー27は、駆動ローラー28の上で上流に取り付けられている。電気駆動モーター(図示せず)がケーシング22の下流端に取り付けられていて、駆動ローラー28をその軸を中心に図1で見て反時計方向に回転させる。
【0034】
これら3つのローラー26、27、28は、エンドレス構造のコンベアーベルト29を支持し、テンションローラー26からケーシング22の上面に沿って遊動ローラー27へとケーシングの長手方向に延び、次に駆動ローラー28の方に下方へとそしてその周囲を延び、次に上部走路に平行な下方走路でテンションローラー26へと戻る上部走路を有する。遊動ローラーとテンションローラーは、それらのベアリングで調節され、ケーシング22の上面と正確に上部走路を位置合わせし、コンベアーベルトに充分なテンションを与えるようにしてもよい。
【0035】
コンベアーベルト29は、それを気体が通過できるように構成され、気体と同伴する繊維材が絡み合った繊維のウェブとしてその表面に堆積し、保持される。例えば、コンベアーベルト29またはその少なくとも一部、特にベルトの長さ方向に延びる中央領域にミシン目、スロットまたは開口部を設けてもよく、または多孔性にして気体がそれを通過できるようにしつつ、その表面上で繊維15を支持するようにしてもよい。このためにコンベアーベルトは、例えば加圧下で気体の所望の流れが得られるように充分な密度に織られた布製材であってもよい。
【0036】
ケーシング22の上面にはコンベアーベルト29の上部走路の下に位置する開口部またはスロットが設けられており、これにより気体がコンベアーベルトを通ってケーシング22の内部に移動できるようにし、そこから空気が真空ポンプ(図示せず)によって抜かれ、装置から放出される。スロットまたは開口部を直に囲むケーシングの上面の部分は、コンベアーベルト29の上部走路を支持する。
【0037】
繊維成形モジュール
成形モジュール3は、繊維15の束を中空の管5に変形させるためのロッド形成装置の多くの部品を支持するための剛性フレーム40と、そのための中央パネル42とを含む。ロッドを形成する装置は、成形錐体50と、マンドレル集成体60と、ダイ集成体80とを含む。成形錐体50は、収集モジュール2のコンベアー24と位置合わせされているフレーム40に固定されている。マンドレル集成体60とダイ集成体80は、上部が開口した溝の形状のレール43上に調節自在に取り付けられており、これは繊維収集モジュール2を通る繊維の直線状の経路と位置合わせされてフレーム40に固定されている。レールに沿ったマンドレル集成体60およびダイ集成体80の長手方向位置は、本発明発明の装置の一般的な作動条件に一致することが必要とされるので互いに対しておよび成形錐体に対して調節される。
【0038】
成形錐体
図3、3A、4A、4Bおよび4Cを参照すると成形錐体50は、上半分および下半分のシェル51、52を含み、それぞれ平面においてほぼ三角形であり、平坦な外面および凹みのある内面を有する。それぞれが錐体の半分を構成するシェルは、互いにボルト53によって固定される。これらシェルの内面同士で滑らかにテーパーした中央軸経路55を画定し、これはほぼ矩形の上流流入口56から円形断面の円筒状の管の形状の下流流出口57へと延びている。管状の流出口延長部品58(図3Aおよび3A)は、流出口57と軸方向に整列されて、半分のシェル51、52にボルトで固定される。
【0039】
流入口56は、平らにされたマットまたはウェブの形状の収集された繊維15を繊維収集モジュールのコンベアー24から直接受け取るように構成されている。テーパーした中央経路が繊維が流出口57の方へと成形錐体を通って進む際に繊維を圧縮し、ウェブを円筒状の形に成形するように形成、配置されている。
【0040】
上半分のシェル51の内面にはリブ59の形状の分割器が設けられており、これは中央経路55の軸の方に半径方向内方に成形錐体を通る繊維の経路内に突出し、流入口56から流出口57の円筒状の管を介して長手方向に延びている。分割リブ59は、繊維の束が成形錐体を通過する際に分割器が束の長さに沿って隙間または割れ目を形成するように成形錐体の出口の直径と比較して狭くなっている。分割器に亘って繊維束を流れやすくするためにリブの上流端59aは、リブ59が半径方向に経路の軸の方に突出する程度がリブに沿って滑らかにそして分割器の全長の約10〜20%離れて流入口56の内方に位置するポイントAへと徐々に大きくなるように湾曲している。このポイントAおよびその下流からリブは、成形錐体を通る経路の中央を僅かに越えて延びている。リブは、例えば繊維から形成された最終形状の管の所望の内径に応じて、流出口の直径の50%よりわずかに大きい、例えば55%、60%または65%以下の直径より大きい半径方向の突起を有してもよい。
【0041】
流出口延長部品58にも軸方向に延びた内部リブ59aが形成されており、これは上半分のシェル内のリブ59と同じ半径方向の長さを有し、それと同じ面に位置し、これにより上半分のシェル51の分割器59と連続することになる。
【0042】
マンドレル集成体
図5Aおよび5Bを参照するとマンドレル集成体60は、レール43の上流部に沿ってスライド移動するように取り付けられ、レール43の各側に取り付けられた平行なガイド48、48によって支持された台車61を含み、台車は棚62を含み、これはレール43によって形成された溝内に受けられ、ハンドホイール64によって横方向に延びた軸を中心に回転するようにレール43に取り付けられたピニオンホイール63と係合し、これによりダイ集成体80と成形錐体50に対して所望の位置にマンドレル集成体をレール43に沿って長手方向に前後に移動できるようにしている。
【0043】
また台車61は、第1スライドブロック65aのための水平方向に延びたガイド65を含み、ブロックは台車61に対する横方向の移動のためにガイドに取り付けられている。水平ガイド内の第1スライドブロックの横方向位置は、締め付けボルト66で調節し、固定してもよい。第1スライドブロック65aは、第2スライドブロック67a用の垂直ガイド67を支持し、第2スライドブロックは、台車61に対する垂直方向の移動のためにガイドに取り付けられている。垂直ガイド67内の第2スライドブロック67aの垂直方向位置は、締め付けボルト68で調節し、固定してもよい。第2スライドブロック67aは、ブラケット69を搬送し、これは両端が開口した軸方向に配向された管状のケーシング71を支持する。ケーシングは、符号73で示されているケーシング71の中央軸に沿って延びた長尺のロッド形状のマンドレルを収容する。従って、マンドレルの長手方向、垂直方向および水平方向の位置は、成形錐体およびダイ集成体80に対してトラックに沿った長手方向の台車の移動によっておよび第1および第2スライドブロック65a、65bの調節によって正確に設定される。
【0044】
マンドレル73用の管状のケーシング71は、外方断面においてほぼ方形であり、その長さに沿って面取りされた縁部を有し、内部断面においてほぼ円筒状であり、ケーシングの下流端より大きな内径の上流端にカウンターボア75を有する。ケーシング71は、2本のボルトによってブラケット69に固定され、長手方向に位置合わせされ、即ちその中央軸は本発明の装置を通る繊維の束の移動方向に配置されている。
【0045】
管状のマンドレル支持体72は、ケーシング71のカウンターボア75内に取り付けられている。マンドレル支持体は、カウンターボア75の内径に一致する外径を有し、内部にはマンドレル73用のブラケットまたはキャリアが設けられている。この実施態様ではブラケットは、分割プレート78の形体であり、これはマンドレル支持体72の内面から半径方向内方に突出し、支持体内でその上流端から軸方向に延びている。ケーシング71内のマンドレル支持体72の回転位置は、プレート78が所望の半径方向の向き、この場合には垂直に位置するように調節される。分割プレート78の半径方向の先端は、マンドレル73に接続され、例えば鋳造でプレートと一体に形成されてもよい。
【0046】
マンドレル73は、長尺の円筒状ロッドを含み、組み立てを簡単にするために同軸に配置された2つの部分、上方マンドレルロッド73aおよび下方マンドレルロッド73bからなる。上方ロッド73aは、それが接続される分割プレートの厚さより大きい直径の均一の半径方向断面を有し、支持体72内に下流に突出するようにプレートのそばでマンドレル支持体72の中央軸に沿って位置する。上方マンドレルロッドの上流端は、繊維の束の移動路内にマンドレル支持体を越えて上流に突出したドーム状部分またはボスで終結している。上方マンドレルロッド73aの下流端には内部がねじ切りされた開口部が設けられており、これはロッドの中央軸と平行に延びている。
【0047】
下方マンドレルロッド72bは、その上流端に上方マンドレルロッド73aに対応する直径の円筒状セグメントを有し、その下流端に完成したフィルターロッド5の所望の内径に対応する小さい直径の円筒状セグメント73cを有する。下方マンドレルロッドの2つの円筒状セグメントは、図示するようにテーパーした中間セグメントによって互いに滑らかに接続される。下方マンドレルロッド73bの上流端は、ねじ切りされた軸方向ボルトを支持し、これは上方マンドレルロッド73aの下流端の開口部に収容され、これによりマンドレルの2つの部分をマンドレル支持体72およびケーシング71内で同軸に位置合わせした状態で固定している。下方マンドレルロッド73bは、取り外し、完成した管状ロッド5の所望の寸法に応じて種々の直径の下流端を有する類似の部材と交換してもよい。
【0048】
マンドレル集成体60は、成形錐体50の流出口から出た繊維の束を収容するように構成されている。マンドレル支持体72の分割プレート78は、成形錐体50と出口延長部品58の分割リブ59、59aと半径方向に位置合わせされ、これにより繊維の束がケーシングを通過する際、分割プレート78は、マンドレルプレート73の上流先端部のドーム状部分76が繊維の束の中央で割れ目内に挿入されるので、束の長さに沿って割れ目を維持することになる。従って、分割プレート78は、マンドレルを支持するブラケットそしてその上流で形成された繊維の割れ目を開いた状態に維持するための分割器としての二つの機能を果たす。
【0049】
別のマンドレル集成体
本発明の装置に使用するための別のマンドレル集成体60を図5Dおよび5Eを参照して以下に説明する。マンドレル集成体60は、図5A、5Bおよび5Cを参照して説明したのと類似の構造であり、図中、同様の部品は同じ参照番号で示している。
【0050】
図5Dおよび5Eのマンドレル集成体60ではマンドレル73は、束がマンドレルを通過する際に気体または液体処理流体、例えばスチームまたは水蒸気を繊維束に送出できるように変更されている。このためにケーシング71の上流端は、その上面にスチームライン用の流入口(図示せず)が設けられている。流入口は、分割プレート78の半径方向の穴92と連通する中央経路を有する気密接続部90を含む。穴92は、半径方向下方にマンドレルの中心線へと延び、そこで貫通孔は、上方マンドレルロッド73aの中央軸方向経路194と連通している。軸方向経路94は、上方マンドレルロッド73aの下流端にあるねじ切りされた開口部に延びている。同様に下方マンドレルロッド73bには中央軸方向経路195が設けられており、上方マンドレルロッド73aの経路194と位置合わせされている。軸方向経路95は、軸方向に下方ロッドの上流端のねじ切りされたボルト77を介して延び、マンドレルのテーパーした中間セグメント74の中央で終結している。中間セグメント74にはマンドレル73上に支持された繊維内に処理流体を排出するためにマンドレルの中央穴をマンドレルの外面に接続する4つの流出口通気口79が設けられている。これらの通気口はマンドレルの軸を中心に等角度間隔(90°)で配置され、マンドレル上の繊維束の移動方向にマンドレルの中央軸に対して20〜70°の角度で下流端方向に傾斜している。
【0051】
この実施態様ではスチームまたは処理流体は、接続部90を介してマンドレル73内に供給される。その後スチームは、通気口79へと移動し、そこでスチームは、繊維束が本発明の装置内を前進し、マンドレルの表面上を通過する際に繊維束と接触する。この段階でのスチームで繊維を処理することによって繊維の可撓性および柔軟性を高め、これにより処理ユニット80でのさらなる処理のための前処理を繊維に施すことができる。
【0052】
処理ユニット
マンドレル集成体60の下流に位置する処理ユニット80は、スチームブロックとして当業者に知られている形状であり、図6Aおよび6Bにより詳しく示されている。処理ユニットは、繊維束がその最終構造に形成される場所であるダイ84と、ダイを加熱するための、そして成形された繊維束を硬化させるために繊維をスチームで処理するための構造部品とを含む。
【0053】
処理ユニットは、中空の立方体状チェンバーを画定し、取り付けブラケット82が設けられたハウジング81を含み、このブラケットによってハウジングはレール43の下流部に沿って前後にスライド移動するように取り付けられる。処理ユニットは、ボルト穴の列44によって画定されたレールに沿ったいくつかの個別の位置のいずれか1つに係止されてもよい。取り付けブラケット82の係止ピンは、ボルト穴と係合することができ、処理ユニットをレール43上の選択された位置に固定することができる。
【0054】
ハウジング81の各側面にはスチームがハウジング内に導入される際に通過するスチームコネクタ(図示せず)を収容する開口部83aが設けられている。ハウジングの上流および下流面それぞれには円筒状のダイ84を支持するための開口部83bが設けられている。ダイ84は、管状であり、マンドレル73の下流セグメント73cを受け、マンドレル73と経路の円筒状壁の間に繊維の管の所望の環状の厚みに等しい環状の隙間を画定するのに充分な直径の中央の軸方向経路を有する。
【0055】
ダイ84の円筒状壁には経路89が設けられており、ダイの中央軸方向経路を外部環境と連通させる。ダイの上流端は、ソケット85を支持し、これは下流方向にマンドレル支持体72からの下流流出口に等しいまたはそれより小さい直径(例えば70%、60%、50%または40%小さい)から完成した管状フィルターロッドの所望の外径に等しい直径へとテーパーしている円錐形状の内部面を有する。ダイ84は、その下流端86がハウジングの下流面の開口部から突出し、ソケット85がハウジングの上流面の開口部83に密閉係合するようにハウジング81内に設置される。ダイの下流端を受けるための中央開口部88を有する密閉プレート87がハウジングにボルト止めされ、Oリングによってそれに密閉される。
【0056】
過熱スチームが開口部83を介してコントロールパネル42から制御されたバルブ(図示せず)によって供給ラインからハウジング81のチェンバーを通過させられるように処理ユニットは、構成され、配置されてもよい。スチームは、チェンバーからダイ84の経路89を通過し、マンドレル75の下流端で支持されている繊維と接触し、繊維が互いに接触点で結合する硬化温度にまで繊維を加熱し、これにより繊維を管状構造に固定する。
【0057】
繊維束は、処理ユニットの下流に位置する従来構造の引き取りローラー(図示せず)によって本発明の装置内を牽引される。例えば成形セクション50とマンドレル集成体60の間に位置するスタッファージェット(図示せず)を用いて、本発明の装置内の繊維の移動を補助してもよい。
【0058】
装置の使用および操作並びに製造工程
繊維材からなる管状ロッドを製造するための連続した製造工程での本発明の装置の使用についてここで説明する。ここで大まかに説明する工程は、繊維を長尺の束に収集することと、繊維の束のための所望の円周輪郭を画定する収縮部通過するように繊維を前進させることと、繊維を束に収集する収縮部の間近でそして繊維束がダイを通って経路の出口の方へ進む際に繊維の束の移動方向に逆らわない方向に繊維を硬化させる処理流体を束内に導入することとを含む。
【0059】
繊維供給モジュール1ではメルトブローヘッド10に溶融したポリマーと熱い気体が供給される。この溶融ポリマーは、噴射列13を介して液体として出て、熱い空気によって薄い流れの中に吹き込まれ、これは固まって小径の繊維15を形成し、気体流に同伴される。
【0060】
メルトブローヘッドは、単独のポリマー材から単一成分の繊維または第1のポリマーから形成された芯とこの芯を包みこれとは別のポリマーで形成された鞘を有する2成分繊維を製するように構成されてもよい。管状フィルターロッドの製造では単一成分繊維は、例えば必要であればポリマーの特徴を変えるための他の材料、例えばトリアセチンなどの可塑剤を組み込んだポリエステル、ポリアミド、エチルビニルアセテート、ポリビニルアルコールまたはセルロースアセテートから形成されてもよい。2成分繊維は、例えばポリプロピレンの芯とセルロースアセテートの鞘を有し、任意にトリアセチン可塑剤を組み込んだ任意の組み合わせの混合可能なポリマーから形成してもよい。
【0061】
噴射ガスとして空気を使用してダイヘッドは、通常はコンベアーベルト29の上部走路から25〜65cm上に位置し、および250〜350℃、例えば300〜320℃の空気温度、500〜600立方フィートまたは14,000〜17,000リットル/分の空気流速度および噴射口1つあたり0.3〜0.5g/分のポリマー処理量で動作する。その結果として得られた繊維は、通常は5〜10ミクロン、例えば約7ミクロンの直径を有し、5〜10mm、例えば7〜9mm、約8mm(特に7.7mm)の外径、1〜6mm、例えば2〜5mmの内径およびロッドの長さ1mm当たり5mg、通常8〜12mg/mm、例えば約10mg/mmの重量を有する環状フィルターロッド5を形成するように収集される。
【0062】
気体および同伴された繊維15の流れは、コンベアー24上に案内され、繊維は、コンベアーベルト29の上部走路上でもつれたマット状に集まる。コンベアー24は、図2に示すように反時計方向にベルト29を移動させるように動作し、これにより繊維を気体流から出るように移動させ、成形モジュール3へと下流に移動させる。
【0063】
収集された繊維のウェブ30は、成形錐体50内そしてそれを通過するように連続的に引き込まれる。図7Aは、成形錐体50に入る直前の繊維15のウェブのほぼ矩形の断面形状を示している。例えば、ウェブは、幅が150mmで厚さまたは「ロフト」が20mmであってもよい。ウェブが成形錐体内を移動する際、繊維15は、案内され、徐々に円筒状形状に圧縮される。図1の切断線7Bで示す錐体50を約半分通過した時点でのウェブの断面形状を図7Bに略式に示す。この時点でウェブが成形錐体内を進む際、ウェブの長手方向縁部は、成形錐体の中央軸の方へと圧縮され、繊維は複雑な曲げ操作中に横方向および垂直方向の両方に互いの方へ重なるように移動し、円形の半径方向断面の管状流出口57に近づくと分割リブ59の両側で下方に位置する。
【0064】
成形錐体内において束内の繊維の密度は、成形錐体の軸に沿って流入口での比較的低密度から流出口57での高密度へと次第に大きくなる。束の断面密度は、均一ではない。束の長さに沿った各ポイントで繊維密度は、半径方向に束の中央で空隙または低密度領域から束の周囲での高密度領域へと大きくなる。
【0065】
繊維の束が成形錐体内を進む際、分割リブ59が束の上方部分の繊維を分割し、束の長さに沿って割れ目35を形成する。例示した実施態様では分割リブは、束の中心へ、それを僅かに越えて到達する割れ目を形成し、割れ目の深さを束の直径の50〜60%、例えば約50%にする。
【0066】
図7Cに例示するように繊維15の束が成形錐体の流出口延長部品58から出ると、その形状は、繊維の束が成形錐体に入った際のウェブの幅の約15〜25%、例えば約20%の直径を有する円筒形状であり、その長さに沿って割れ目35が形成されている。
【0067】
次に束は、成形錐体から下流にマンドレル集成体60に移動する。図7Dは、繊維15の束がマンドレル集成体に入る際の繊維束の構造を下流方向に見た略図であり、束の形状は、破線で示されている。分割プレート78は、上流で成形錐体の分割器によって繊維の束に形成された割れ目35と位置合わせされており、繊維が分割プレートの両側を通過する際に割れ目を開いた状態に保持する。上方マンドレルロッド73aの先端の突起76は、上部マンドレルロッド73aのために道を作るために束の中央で繊維の開口移動を開始し、ロッド73aは束の中央に挿入され、繊維を広げ、繊維の束に中央に位置する軸方向経路36を形成する。
【0068】
束が分割プレート78から下流に上部マンドレルに亘ってそして下方マンドレルロッド73b上へと進むと、繊維束の割れ目は、マンドレルの周囲で閉じ始め、繊維は、図7Eに示すように連続した周辺層を下方マンドレル73bの直径の広い部分の周囲に形成する。この時点で中央経路36は、完成した管の所望の内径より大きな直径、例えばその内径の10%、15%、20%または30%以上大きい直径を有する。
【0069】
束がマンドレル支持体72およびケーシング71を出て処理集成体80の方へと下流に進む際、束は、上方マンドレルロッドの大きい直径の部分73bから下方マンドレルロッドの直径の小さい部分73cへと移動し、この部分は、完成した管状ロッドの所望の内径に対応する直径を有する。束がダイ84に近づき、これに入る際、ダイ84のテーパーしたソケット85がマンドレルの下流セグメント73cの周囲で繊維の束を圧縮し、割れ目を完全に閉じ、完成した管の所望の外径に対応する外径を有するマンドレルの周囲で管状構造体を作製する。
【0070】
図5Dおよび5Eによる構造のマンドレルが使用される場合、スチームがマンドレル73内に送られ、繊維束がマンドレル上を通過する際に繊維束にあてられ、これにより繊維を調整し下方マンドレルロッド73bの周囲でそれがダイ84に入る際に圧縮しやすくなる。
【0071】
図7Fは、ダイのソケット85に入る時点での繊維の束の構造を示し、図7Gは、マンドレルの下流端を通過した後のダイ84のすぐ下流での管状ロッドの構造を示している。通常ロッドの外径は、図7Eに示すマンドレル集成体の下流端での繊維の束の直径の10〜20%、例えば15%になる。ダイから出た管状構造体は、完成品の所望の内径および外径を有する。異なる大きさおよび異なる内径および外径の組み合わせの管は異なる直径のマンドレルと異なる内径のダイを組み合わせて使用することによって製造してもよい。
【0072】
束がマンドレルによって支持されながらスチームブロックを通過する際、例えば1〜3バール、通常は約1.5バールの圧力で、例えばスチームを150〜200℃の範囲の温度に加熱することによって製せられた過熱スチームと束は接触する。この処理により繊維がそれらの接触点で接着し合い、これにより図7Gに示すように管状ロッド5の形体の接着された自立構造体を形成する。
【0073】
次にロッド5は、マンドレルから過剰な水分をロッドから取り除くための例えばエアーブロックなどの別の装置および図7Fに示すように所望の長さの連続した管状セグメントにロッドを裁断する切断装置内を通って牽引される。
【0074】
ここに開示する工程の実施態様において、重要な点は、管状構造体を周囲に形成することができる中央支持体を形成することを目的として、繊維束の中央にマンドレルを挿入することである。特に本工程が高速で実行される場合にマンドレルの使用には繊維がマンドレルの周囲で均一に配分されず、崩壊して非管状構造の非円筒状構造になってしまうリスクが生じる。しかしながら、ここに開示する実施態様では繊維束がマンドレルに亘って通過する際に繊維束に割れ目を形成することで管状構造になるように繊維を移動しやすくし、これにより管状構造体の崩壊のリスクを軽減する。
図1
図2
図3
図3A
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G