特許第6944192号(P6944192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長野オートメーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000002
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000003
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000004
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000005
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000006
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000007
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000008
  • 特許6944192-検査システムおよび方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944192
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】検査システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   G01N21/954 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-219958(P2017-219958)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-90701(P2019-90701A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】598142014
【氏名又は名称】長野オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信悟
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大知
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】山浦 孝
(72)【発明者】
【氏名】山浦 研弥
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−18246(JP,A)
【文献】 特開平9−251129(JP,A)
【文献】 特開2003−329606(JP,A)
【文献】 特開2012−187599(JP,A)
【文献】 特開2016−57140(JP,A)
【文献】 特開2014−190884(JP,A)
【文献】 特開2014−191242(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3159316(JP,U)
【文献】 特開2013−88136(JP,A)
【文献】 米国特許第5895927(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0080588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−G01N 21/958
G02B 23/24−G02B 23/26
G01B 11/00−G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を含むワークの外周側を保持するクランプを含む移動テーブルと、
前記移動テーブルが前記ワークを搬送する第1の位置で、前記ワークの前記貫通孔の第1の開口から、先端から検査光を出力して前記貫通孔の内周面をスキャンする検査プローブを前記貫通孔に出し入れする検査ヘッドと、
前記第1の位置で、前記ワークの前記貫通孔の前記第1の開口と反対側の第2の開口から、ダミープローブを前記貫通孔の内部に出し入れする予備テストユニットと、
前記ダミープローブと前記ワークとの接触の有無を確認するユニットとを有するシステム。
【請求項2】
請求項1において、
前記確認するユニットは、前記ダミープローブの損傷を確認するユニットを含む、システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ダミープローブの直径は、前記検査プローブの直径より大きい、システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記ダミープローブの直径Ddと、前記検査プローブの直径Dnとは以下の条件を満たす、システム。
1<Dd/Dn<2
【請求項5】
請求項4において、
前記検査プローブの直径Dnが以下の条件を満たす、システム。
0.5mm≦Dn≦1.5mm
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記移動テーブルが前記ワークを搬送する第2の位置で、前記移動テーブルの前記クランプに保持された前記ワークの前記第1の開口または前記第2の開口の位置を確認するカメラユニットをさらに有する、システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記移動テーブルを、前記ワークをロードする第3の位置から、前記第2の位置を経て前記第1の位置へ動かす移動ユニットをさらに有する、システム。
【請求項8】
検査システムにより、貫通孔を含むワークの前記貫通孔の内周面を検査する方法であって、
前記検査システムは、
前記ワークの外周側を保持するクランプを含む移動テーブルと、
前記移動テーブルが前記ワークを搬送する第1の位置で、前記ワークの前記貫通孔の第1の開口から挿入され、先端から検査光を出力して前記貫通孔の内周面をスキャンする検査プローブと、
前記第1の位置で、前記ワークの前記貫通孔の前記第1の開口と反対側の第2の開口から挿入されるダミープローブと、
前記ダミープローブとワークとの接触の有無を確認するセンサーユニットとを含み、
当該方法は、
前記移動テーブルを前記第1の位置にセットすることと、
前記第2の開口から前記ダミープローブを前記貫通孔に出し入れすることと、
前記出し入れされた前記ダミープローブと前記ワークとの接触の有無を前記センサーユニットにより確認することと、
前記ダミープローブと前記ワークとの接触が確認されなければ、前記検査プローブを前記貫通孔に出し入れして検査を行うこととを有する方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記検査システムは、前記移動テーブルが前記ワークを搬送する第2の位置に配置されたカメラユニットをさらに含み、
当該方法は、さらに、
前記移動テーブルで前記ワークを前記第1の位置へ搬送する前に前記第2の位置へ搬送することと、
前記移動テーブルの前記クランプに保持された前記ワークの前記第1の開口または前記第2の開口の位置を前記カメラユニットにより確認することとを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査ヘッドから被検査物に検査用のレーザー光を照射して表面を検査する検査システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先端にミラーが設けられた軸状の検査ヘッドを駆動機構により軸線の回りに回転させつつ軸線に沿って移動させるとともに、検査ヘッド内に前記軸線に沿って入射した検査光の光路をミラーにより変更し、光路が変更された検査光を被検査物に照射し、被検査物で反射して検査ヘッド内に再度入射した検査光の光量に基づいて検査物の表面状態を検出する表面検査装置において、検査ヘッドが、駆動機構に取り付けられるヘッド本体と、そのヘッド本体に対して着脱可能に設けられ且つミラーを保持する保持部と、を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−315821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、微細加工された物品の表面の検査が求められており、例えば、直径が数mm程度の小径(極細)の孔が設けられた検査対象物(被検査物)の表面を検査することが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、貫通孔を含むワークの外周側を保持するクランプを含む移動テーブルと、移動テーブルがワークを搬送する第1の位置で、ワークの貫通孔の第1の開口から、先端から検査光を出力して貫通孔の内周面をスキャンする検査プローブを貫通孔に出し入れする検査ヘッドと、第1の位置で、ワークの貫通孔の第1の開口と反対側の第2の開口から、ダミープローブを貫通孔の内部に出し入れする予備テストユニットと、ダミープローブとワークとの接触の有無を確認するユニットとを有するシステムである。
【0006】
このシステムは、検査プローブを用いて貫通孔内を検査する前に、検査プローブで検査する第1の位置において、貫通孔の反対側の第2の開口からダミープローブを挿入する予備テストユニット(事前テストユニット)を含む。接触の有無を確認するユニットにより、ダミープローブとワークとの接触を確認することにより、ワークの貫通孔が、検査プローブに対して精度よく設定されているか否かを判断できる。したがって、高価で損傷しやすい検査プローブ、特に極細で損傷しやすい検査プローブがワークの貫通孔の内面などに接触して損傷することを未然に防止できる。このため、安全に、低コストで貫通孔の内部の表面の状態を検査するシステムを提供できる。
【0007】
ダミープローブとワークとの接触の有無を確認する1つの方法は、ダミープローブの損傷をセンサーで確認することである。
【0008】
ダミープローブの直径は、検査プローブの直径より大きくてもよい。検査プローブと貫通孔との間に最小限のクリアランスが確保されているか否かも含めて、事前にチェックできる。ダミープローブの直径Ddと、検査プローブの直径Dnとは以下の条件(1)を満たしてもよい。クリアランスの有無も含めて、予備テストユニットにより事前検査できる。
1<Dd/Dn<2 ・・・(1)
【0009】
検査プローブの直径Dnが以下の条件(2)を満たしてもよい。
0.5mm≦Dn≦1.5mm・・・(2)
【0010】
システムは、移動テーブルがワークを搬送する第2の位置で、移動テーブルのクランプに保持されたワークの第1の開口または第2の開口の位置を確認するカメラユニットをさらに有していてもよい。画像処理等により、移動テーブルに対するワークの第1の開口の位置を確認できる。したがって、移動テーブルを、ワークの貫通孔が第1の位置に精度よく設定されるように動かすことができる。
【0011】
移動テーブルを、ワークをロードする第3の位置から、第2の位置を経て第1の位置へ動かす移動ユニットをさらに有してもよい。第3の位置でワークをロードして、第2の位置で移動ユニットに対するワークの位置を確認し、第1の位置でワークの貫通孔の内面検査を行うことができる。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、検査システムにより、貫通孔を含むワークの貫通孔の内周面を検査する方法である。検査システムは、ワークの外周側を保持するクランプを含む移動テーブルと、移動テーブルがワークを搬送する第1の位置で、ワークの貫通孔の第1の開口から挿入され、先端から検査光を出力して貫通孔の内周面をスキャンする検査プローブと、第1の位置で、ワークの貫通孔の第1の開口と反対側の第2の開口から挿入されるダミープローブと、ダミープローブとワークとの接触の有無を確認するセンサーユニットとを含む。この方法は、以下のステップを含む。
1.移動テーブルを第1の位置にセットする。
2.第2の開口からダミープローブを貫通孔に出し入れする。
3.出し入れされたダミープローブとワークとの接触の有無をセンサーユニットにより確認する。
4.ダミープローブとワークとの接触が確認されなければ、検査プローブを貫通孔に出し入れして検査を行う。
【0013】
検査システムは、移動テーブルがワークを搬送する第2の位置に配置されたカメラユニットをさらに含み、当該方法は、さらに、移動テーブルでワークを第1の位置へ搬送する前に第2の位置へ搬送することと、移動テーブルのクランプに保持されたワークの第1の開口または第2の開口の位置をカメラユニットにより確認することとを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】検査システムの概要を示すブロック図。
図2】表面検査ユニットの概略構成を示す断面図。
図3】検査ヘッドの概略構成を示す断面図。
図4図3に示す検査ヘッドの先端の構成を拡大して示す断面図。
図5図4に示す検査ヘッドのプローブの構成をさらに拡大して示す断面図。
図6】検査システムにおける処理の概要を示すフローチャート。
図7】移動テーブルにワークをセットしてカメラユニットで検査する様子を示す図。
図8】ダミープローブによりワークの位置を事前に検査した後に、検査プローブにより貫通孔の内面の状態を検査する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、検査システム100の概要を示している。この検査システム100は、貫通孔3を含むワーク2の外周側2aを保持するクランプ41を含む移動テーブル40と、移動テーブル40がワーク2を搬送する第1の位置P1で、貫通孔3の内周面4を検査する表面検査ユニット1と、第1の位置P1で、ワーク2の貫通孔3の第1の開口3aと反対側の第2の開口3bから、ダミープローブ51を貫通孔3の内部に出し入れする予備テストユニット50と、これらのシステムを制御する制御ユニット70とを含む。表面検査ユニット1は、ワーク2の貫通孔3の第1の開口3aから、検査光を出力して貫通孔3の内周面4をスキャンする検査プローブ12と、検査プローブ12を貫通孔3に出し入れするために移動ユニット25により上下に動かされる検査ヘッド10とを含む。移動テーブル40は、ワーク2の位置確認用のセンサー46と、ダミープローブ51とワーク2との接触の有無を確認するセンサー(センサーユニット)47とを含む。
【0016】
検査システム100は、さらに、移動テーブル40がワーク2を搬送する第2の位置P2で、ワーク2の第1の開口3aの側を撮影するカメラユニット80と、移動テーブル40がさらに移動し、ワーク2をロード・アンロードする第3の位置P3において、ワーク2を移動テーブル40にロードおよびアンロードするワーク搬送用ロボット90とを含む。移動テーブル40は、これらの位置P1、P2およびP3を繋ぐレールあるいはその他のガイド45に沿って自走する移動ユニット44を含むものであってもよく、ガイド45が移動テーブル40を移動する機能を含む移動ユニットであってもよい。
【0017】
制御ユニット70は、移動テーブル40の搬送位置(移動位置)を制御するテーブル制御ユニット71と、搬送用ロボット90を制御するロード・アンロード制御ユニット72と、カメラユニット80により移動テーブル40に対するワーク2の貫通孔3の位置を確認する画像処理ユニット73と、検査プローブ12により貫通孔3の内面4を検査する前に、ダミープローブ51により貫通孔3の位置を確認する予備テスト制御ユニット74と、検査プローブ12により貫通孔3の内面4を検査する検査制御ユニット75とを含む。
【0018】
検査プローブ12を含む表面検査ユニット1と、ダミープローブ51を含む予備テストユニット50とは、共通のフレーム101に固定されており、第1の位置P1で検査プローブ12とダミープローブ51とが、共通の軸11に沿って(同軸上で)、高精度で対峙し、上下に移動するようになっている。予備テストユニット50は、ダミープローブ51を軸11に沿って上下に移動する移動ユニット52を含む。移動ユニット52は、例えば、ボールねじ53と、ボールねじ53を駆動するモーター54とを含む。
【0019】
表面検査ユニット1と予備テストユニット50とは上下逆に配置されていてもよく、左右あるいは水平に対峙するように配置されていてもよい。上下の配置は、検査プローブ12およびダミープローブ51が、直径数mmあるいはそれ以下の極細の場合は、重力による撓みなどの影響を避けるために適している。また、検査プローブ12のメンテナンスあるいは交換などの作業を考慮すると、表面検査ユニット1を上側に配置することが好ましい。
【0020】
図2に、表面検査ユニット1の概略の構成を、断面を用いて示している。この表面検査ユニット(検査装置)1は、被検査物であるワーク2に設けられた孔、凹みなどの中空部分(貫通孔)3の内面4の形状または状態を検査するために適している。貫通孔3の一例は、直径数mmの貫通孔である。
【0021】
検査ユニット1は、中心軸11に沿って棒状に延びた中空の検査ヘッド10と、検査ヘッド10を中心軸11の周りに回転する回転ユニット20と、検査ヘッド10内を通じて、中心軸11に沿って検査用のレーザー光を供給し、中心軸11に沿って戻された被検査物2の表面(内面、内周面)4からの反射光を受光する光学システム30と、検査ヘッド10をワーク2に対して中心軸11に沿って移動する移動ユニット25とを含む。
【0022】
移動ユニット25は、検査ヘッド10、回転ユニット20および光学システム30を搭載したキャリッジ28と、キャリッジ28を前後(図2の左右)に動かすボールねじ26および移動用のモータ27の組み合わせとを含む。検査ヘッド10は、基端となる固定部19と、固定部19に対して回転するように装着された回転部18とを含み、固定部19が搭載ユニット29を介してキャリッジ28に搭載されている。検査ヘッド(内面検査用のヘッド)10は先端に、中心軸(回転軸、軸心)11に沿って前方(本例では下側)16に突き出た極細でニードル状のプローブ(プローブ部、ニードル)12を含む。プローブ12は、プローブ12に対し太い円筒状のホルダー部14の前壁14aに、中心軸11に沿って突き出るように固定されており、ホルダー部14を介して回転部18に固定され、回転部18とともに中心軸11の周りに回転する。
【0023】
移動ユニット25の構成は一例であり、スライダー、移動テーブルなどであってもよい。移動ユニット25により、検査ヘッド10はハウジング5から前方に突き出た検査位置10aと、検査ヘッド10がハウジング5の内部に退避する位置10bとに移動する。
【0024】
光学システム30は、検査用のレーザー光を生成する半導体レーザー(レーザーダイオード、LD)31と、反射光を受光する受光素子(例えば、フォトダイオード、CCD、CMOSなど)32と、半導体レーザー31の駆動回路、受光素子32で受信した信号を処理する回路などを含む制御ユニット33とを含む。光学システム30で受信した信号は制御ユニット33を介して不図示のコンピュータ(パーソナルコンピュータ)に送られて、さらにデータ処理され、被検査物2の表面4の解析に用いられる。光学システム30は、さらに、検査ヘッド10の内部に挿入された光ファイバー35を含む。
【0025】
回転ユニット20の一例は、キャリッジ28に搭載されたモータ21である。モータ21により駆動されるプーリ22が、検査ヘッド10の回転部18と駆動ベルト23で接続されており、モータ21が駆動ベルト23を介して検査ヘッド10の回転部18を中心軸11の周りに(中心軸11を回転中心として)高速で回転する。
【0026】
図3に検査ヘッド10を抜き出して示している。図4に検査ヘッド10の先端部分(前方部分)を拡大した断面を用いて示し、図5に、検査ヘッド10の先端のプローブ12の構成を、さらに拡大した断面を用いて示している。
【0027】
検査ヘッド10は、全体として回転軸11に沿って延びた中空の円筒体であり、基端の固定部19と、固定部19に対して回転するように同軸上に取り付けられ、先端16に向かって延びた回転部18とを含む。回転部18は回転駆動され、駆動ベルト23を介して回転力が伝達される比較的太い駆動部15と、駆動部15の前方16に取り付けられたホルダー部14と、ホルダー部14の前壁14aの中心から細く先端(前方)に向かって延びたプローブ(ニードル部、挿入部)12とを含む。プローブ12の先端12aには、半径方向に向いた開口(切り欠き)13が設けられており、開口13を介して検査用のレーザー光(プローブ光)61が被検査物2の中空部分3の表面4に向けて出射され、被検査物2の表面4からの反射光62がプローブ12から検査ヘッド10に戻される。
【0028】
検査ヘッド10の内部には、中心軸11に沿ってプローブ光61と反射光62とを導く光ファイバー束35が挿入されている。光学システム30を構成する光ファイバー束35は複数のファイバーのバンドルであり、LD31から射出されるプローブ光61を被検査物2に向かって導く投光ファイバー35aと、被検査物2からの反射光62を受光素子32へ導く受光ファイバー35bとを含む。さらに、光学システム30は、検査ヘッド10の内部に、光ファイバー35を束ねた状態で保持する保持筒34を含む。
【0029】
プローブ12は、ホルダー部14の前壁14aから中心軸11に沿って前方16に延び、先端(先端近傍)12aにプローブ光61の出射方向を制御する光学素子39が取り付けられている。光学素子39の一例は平面鏡であり、プリズムなどの他の光の出射方向および入射方向を制御できる反射面を有する光学素子であってもよい。本例の検査装置1においては、光学素子39の鏡面(反射面)51の角度を45度に設定し、光ファイバー35から中心軸11を光軸として出射されるプローブ光61を、中心軸(光軸)11に対して直交する方向に出射している。また、光学素子39の鏡面38により、検査対象の内面4から反射される光(反射光)62を中心軸11の光ファイバー35の方向に反射している。プローブ12の内部には、保持筒34により支持された光ファイバー35が、先端12aより後退した位置まで挿入されており、光ファイバー35の先端35cと光学素子39とのほぼ中間に調光レンズ36がプローブ12に支持されるように取り付けられている。
【0030】
調光レンズ36は、光ファイバー35の先端35cから出力されたプローブ光61を、反射面38を介して検査対象面4に集光するために適した焦点距離を有する対物レンズである。調光レンズ36は、反射面38を介して検査ヘッド10に導入された反射光62を光ファイバー35の先端35cに集光する機能も含む。検査ヘッド10の中心軸11に沿ってプローブ光61を供給し、反射光62を検出する光学システム30は、光ファイバー35を使用したものに限定されず、ダイクロイックプリズムなどを備えた、光ピックアップなどとして公知の他の光学系であってもよい。極細のプローブ12の内部でプローブ光61および反射光62を入出力するには、光ファイバー35を用いた光学システム30が好適である。
【0031】
近年、微細加工の精度が向上し、様々な用途で、例えば、液体などの流体が通過するノズルや経路、光学装置、機械装置において、極細の貫通孔が加工された製品あるいは部品が製造される。極細の孔3の一例は、直径Diが数mm以下、例えば、5mm以下、あるいは3mm以下、さらには2mm以下である。そのような寸法の孔(中空部分)3の内面4にプローブ光61を照射し、反射光62を採取するためのプローブ12の直径Dnは、内面4とのクリアランスを考慮すると、1.5mm以下であることが要望される。特に、検査対象の孔3の直径(内径)Diが3mm程度あるいはそれ以下であると、プローブ12の直径(外径)Dnは1.2mmあるいはそれ以下、例えば、1.0mmであることが望ましい。したがって、上記のような構造を内蔵した直径Dnが1mm程度のプローブ12は高価である。一方、直径Diが2〜3mm程度の貫通孔3に直径1mm程度のプローブ12を挿入して高速で回転させるためには、ワーク2とプローブ12とを高い精度で位置合わせする必要があり、精度が低いとプローブ12がワーク2と干渉して損傷したり、あるいは破壊されてしまう。したがって、この検査システム100においては、先にダミープローブ51を挿入することによりワーク2、具体的には検査対象の貫通孔3と検査プローブ12との位置合わせの精度を事前に検証する。
【0032】
図6に、検査システム100においてワーク2の貫通孔3の内面4を検査する工程をフローチャートにより示している。また、図7に、移動テーブル40を第3の位置P3および第2の位置P2に移動した状態を示し、図8に、移動テーブル40を第1の位置P1に移動して、ダミープローブ51により位置を検証した後に、検査プローブ12により検査する様子を示している。
【0033】
まず、ステップ111において、制御ユニット70のテーブル制御ユニット71が移動テーブル40を第3の位置P3へ移動する。ロード・アンロード制御ユニット72が搬送用ロボット90を制御して、新しいワーク2を移動テーブル40のクランプ41にセットし、クランプ41がワーク2の外周面2aを保持する。移動テーブル40は、ワーク2の有無および位置を検出するセンサー46を内蔵しており、所定の位置でワーク2をクランプしたことを確認する。
【0034】
ステップ112において、テーブル制御ユニット71は、移動ユニット44によりガイド45に沿って移動テーブル40をカメラユニット80の下の第2の位置P2へ移動する。ステップ113において、画像処理ユニット73が移動テーブル40に把持されたワーク2の画像、特に、ワーク2の貫通孔3の上側の第1の開口3aを含む画像を取得し、移動テーブル40における第1の開口3aの位置を解析し確認する。移動テーブル40に対する第1の開口3aの位置を確認することにより、第1の開口3aを検査プローブ12が差し込まれる第1の位置P1に精度よくセットすることができる。例えば、移動テーブル40またはクランプ41に第1の開口3aとともに画像が取得される複数のマーカーを予め設けておくことができる。カメラユニット80により取得された画像内のマーカーと第1の開口3aとの相対的な位置に基づき、移動テーブル40を第1の位置P1に移動したときの詳細な停止位置の制御が可能となる。
【0035】
その後、ステップ114において、テーブル制御ユニット71は、移動ユニット44によりガイド45に沿って移動テーブル40を第1の位置P1へ移動する。この際、テーブル制御ユニット71は、ステップ113により得られたデータに基づいて、ワーク2の貫通孔3の中心軸が、第1の位置P1である検査プローブ12の中心軸11と一致するように、移動テーブル40の位置を制御する。
【0036】
ステップ115において、図8(a)に示すように、予備テスト制御ユニット74が、予備テストユニット50を用いてダミープローブ51をワーク2の貫通孔3の反対側の開口(第2の開口)3bから挿入し、貫通孔3の位置が第1の位置P1、すなわち、軸11に一致しているか否かを検証する。ダミープローブ51は、直径Ddが条件(1)を満たすように設定されている。本例では、検査対象の貫通孔3の直径Diが2mm、検査プローブ12の直径Dnが1mm、ダミープローブ51の直径Ddが1.5mmとしているが、これらに限定されるものではない。
【0037】
ダミープローブ51は移動ユニット52により、第1の位置P1、すなわち、軸11に沿って上下に動き、ワーク2の貫通孔3に下側の開口3bから挿入される。ダミープローブ51の直径Ddは、検査プローブ12の直径Dnより大きいので、ダミープローブ51が貫通孔3に、貫通孔3との接触などがなく挿入されれば、軸11に沿って上下するように設定されている検査プローブ12は、貫通孔3に、所定のクリアランス、例えば、0.25mm以上のクリアランスを維持した状態で挿入することができる。
【0038】
ステップ116において、図8(b)に示すように、予備テスト制御ユニット74が、ダミープローブ51を貫通孔3から引き抜き、移動テーブル40に搭載されているセンサー(例えばカメラユニット)47により、ダミープローブ51の損傷の有無を確認する。たとえば、ダミープローブ51が曲がっていたり、表面に傷が見られたりする場合は、ダミープローブ51が貫通孔3に挿入した際に、ワーク2と干渉があったものと判断する。ダミープローブ51に損傷があれば、ステップ119において、エラーを表示し、検査システム100を停止する。
【0039】
一方、ダミープローブ51に損傷がない場合は、ステップ117において、図8(c)に示すように、検査制御ユニット75が表面検査ユニット1を操作して、検査プローブ12を、第1の位置P1の中心軸11に沿って下方(前方)16へ移動し、ワーク2の貫通孔3に、上側の開口3aから挿入する。検査ユニット1は、上述したように、検査プローブ12を中心軸11の周りに回転し、検査プローブ12の先端12aから照射される検査光61を用いて、ワーク2の貫通孔3の内面4の状態を検査する。検査が終了すると、検査プローブ12を、貫通孔3の上側に引き抜いて移動テーブル40から検査プローブ12を退避させる。
【0040】
検査が終了すると、ステップ118において、テーブル制御ユニット71が移動テーブル40を第3の位置P3に移動し、ロード・アンロード制御ユニット72が搬送ロボット90を用いて移動テーブル40にクランプされているワーク2を交換する。これらの工程を繰り返すことにより、検査システム100は、複数のワーク2に設けられた貫通孔3の内面4の状態を、自動的に、また、検査プローブ12を損傷させることなく、検査し、内面4の状態を評価することができる。
【0041】
なお、この検査システム100においては、ダミープローブ51とワーク2との接触の有無を、ダミープローブ51を引き抜いた後にダミープローブ51に損傷があるか否かで判断しているが、たとえば、ダミープローブ51に接触センサーを設けてワーク2に挿入したときにワーク2に接触したか否かを判断してもよく、ダミープローブ51とワーク2との間に電流が流れるか否かを判断したり、ダミープローブ51の周りの電場の状態を検出するなどの方法によりダミープローブ51とワーク2との接触の有無を判断してもよい。ダミープローブ51の損傷の有無を判断する方法は、良好な場合に、ワーク2の内面4の状態に電流や電場などによる影響を与えずに、ワーク2との接触の有無を判断することができる。ダミープローブ51とワーク2との接触の有無を判断するセンサー47を、本例ではワーク2に近い位置で検出するために移動テーブル40に内蔵しているが、センサー47の位置は、これに限らず、ダミープローブ51とともに動くヘッドに内蔵してもよく、予備テストユニット50に設けてもよい。
【0042】
また、この検査システム100は、ワーク2の貫通孔3の内面4の状態を検査するために特化したシステムの一例であり、この検査システム100を、ワーク2を用いた製品の組み立てライン、あるいはワーク2の製造ラインの一部に組み込むことも可能である。内面4の状態が確認されたワーク(部品)2を用いて製品を製造できる。また、ワーク2に貫通孔3を加工した直後に、貫通孔3の内面4の状態を確認することができる。
【0043】
また、この検査システム100では、検査プローブ12とダミープローブ51とを軸11に沿って第1の位置P1に上下に配置しているが、逆に配置してもよく、左右あるいは前後に配置してもよい。また、上述した各寸法は一例であり、この検査システム100は、極細の検査プローブ(検査ニードル)12の保護に適しているが、検査プローブ12の直径に限らず、ダミープローブ51により事前にワーク2の位置を検証することはプローブ12の損傷を避けるために有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 表面検査ユニット、 10 検査ヘッド
12 検査プローブ、 51 ダミープローブ、 100 検査システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8