特許第6944263号(P6944263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6944263-シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル 図000013
  • 6944263-シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944263
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/075 20060101AFI20210927BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20210927BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20210927BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20210927BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20210927BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20210927BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20210927BHJP
   C08J 7/12 20060101ALI20210927BHJP
   C08B 37/16 20060101ALI20210927BHJP
   C07D 231/26 20060101ALN20210927BHJP
   C07J 71/00 20060101ALN20210927BHJP
【FI】
   C08J3/075
   C08F220/28
   A61K47/06
   A61K47/40
   A61K47/32
   A61K31/4152
   A61K31/58
   A61L27/16
   A61L27/52
   A61L27/54
   A61L27/20
   C08J7/12
   C08B37/16
   !C07D231/26
   !C07J71/00
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-67055(P2017-67055)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-168293(P2018-168293A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131245
【氏名又は名称】株式会社シード
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】小畑 晴香
【審査官】 河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−316205(JP,A)
【文献】 特表平04−500229(JP,A)
【文献】 特開昭60−248729(JP,A)
【文献】 特表2011−529998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
99/00
C08J 7/12− 7/18
C08F 6/00−246/00
301/00
A61K 47/00− 47/69
A61K 31/33− 33/44
A61L 17/00− 33/18
C07D229/00−231/56
C07J 1/00− 75/00
C08B 1/00− 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(1)
(式中、
は、−NH−又は−COO−であり;
は、炭素数2〜10の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基又はアセチレン基であり;
は、アミノ基又はカルボキシ基であり;及び、
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
で表わされるシクロデキストリン誘導体をハイドロゲルの表面に有する、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルであって、
前記ハイドロゲルが、構成成分としてカルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーとこれと共重合可能な親水性モノマーとを含み、かつ、前記カルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーの量が、前記親水性モノマーの量に対し、5wt%以上10wt%以下である、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル
【請求項2】
前記シクロデキストリン誘導体が、下記一般式(2)
【化2】
(2)
(式中、
nは4〜8の整数であり;及び
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
で表わされるシクロデキストリン誘導体である、請求項1に記載のシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル。
【請求項3】
前記シクロデキストリン誘導体が、(1,4−ジアミノブチル)−6−β−シクロデキストリン、(1,5−ジアミノペンチル)−6−β−シクロデキストリン又は(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンである、請求項1又は2に記載のシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリン誘導体によりハイドロゲルの表面を修飾してなるシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
治療用薬剤の体内への送達は、経口投与、注射、貼付などの投与方法により行うことが一般的である。しかし、投与方法によっては、治療対象部位以外の部位に薬剤が接触することにより副作用が発生するという問題、治療対象部位へ到達する以前に薬剤の濃度が減少することにより、薬効を十分に発揮できないという問題などがある。
【0003】
薬剤を治療対象部位へ限定的に送達する方法として、ドラッグデリバリーシステム(DDS)がある。DDSとは、体内の薬物分布を、量的、空間的又は時間的にコントロールすることにより、治療対象部位における薬効を向上させ、治療効果を高める方法である。DDSの具体的な方法として、薬剤を包含した担持体を、経口により、或いは皮膚や粘膜からの吸収により、治療対象部位へ送達する方法がある。該方法を採用する場合、安全性や取扱い性の観点から、担持体としてハイドロゲルが選択されることがある。
【0004】
ハイドロゲルは三次元構造の内部に水分を含んでなるものである。ハイドロゲルをDDSにおける薬剤の担持体として利用する場合においては、水に溶解した薬剤をハイドロゲル内部へ満たすことで、薬剤をハイドロゲルの内部に包含する。したがって、ハイドロゲルに包含する際に使用できる薬剤としては、水溶性薬剤が選択され(特許文献1を参照)、難水溶性薬剤は選択肢に上がらない。
【0005】
そこで、水溶性薬剤に代わって難水溶性薬剤をハイドロゲル内に包含してDDSにて使用するための方法が種々検討されている。
【0006】
一方、シクロデキストリンには難水溶性分子を包接させる作用を有することが知られている。シクロデキストリンは、数分子のD−グルコースが、α−1,4グリコシド結合により結合し、環状構造を形成する環状オリゴ糖の一種である。シクロデキストリンは、環状構造の内側が疎水性であり、かつ、外側が親水性であるという特有な構造を持つ。このような構造によって、シクロデキストリンは、難水溶性分子を環状構造内に取込み、かつ、外側の親水性の作用によって水への溶解性を示すという、特徴的な性質を有する。
【0007】
このシクロデキストリンの性質を利用し、あらかじめ難水溶性薬剤をシクロデキストリンに包接させてなる、難水溶性薬剤−シクロデキストリンの複合体をハイドロゲル中に取り込ませる方法(特許文献2を参照)やシクロデキストリンを側鎖に配したハイドロゲルを利用した難水溶性薬剤の担持方法が知られている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−307574号公報
【特許文献2】特表2006−508940号公報
【特許文献3】特表2011−529998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、難水溶性薬剤をシクロデキストリンの環内に取り込んでなる難水溶性薬剤−シクロデキストリンの複合体を、ハイドロゲルの含水率に依存して包含するものであることから、例えば、当該ハイドロゲルを皮膚や粘膜などの体表面に接触させる場合は、ハイドロゲルに包含される難水溶性薬剤−シクロデキストリンの複合体の大半が体表面へ接触した後に速やかに放出される、いわゆる、初期バーストが起きるという問題がある。そして、この初期バーストにより、薬剤の過剰摂取や治療対象部位での治療有効濃度不足などの発生が懸念される。
【0010】
また、特許文献3に記載の方法は、予め作製したハイドロゲル内の側鎖に、後工程によりシクロデキストリンを導入する手段として、グリシジル基を有するモノマーをハイドロゲルの構成モノマーとして用いる。特許文献3に記載の方法において、シクロデキストリンの導入量を多くするためには、グリシジル基を有するモノマーの配合量を多くしなければならない。しかし、グリシジル基を有するモノマーの配合量を多くする場合、ハイドロゲルの含水率はグリシジル基の含有量に依存することから、ハイドロゲルの含水率の増加によって、形状保持性が低下するという問題がある。
【0011】
さらに、本発明者らの調べたところによれば、特許文献3に記載の方法においては、シクロデキストリンの多くはハイドロゲルの内部に導入されるところ、ハイドロゲルの内部に導入されたシクロデキストリンには難水溶性薬剤は包接されないという問題がある。一方で、ハイドロゲル表面におけるシクロデキストリンが難水溶性薬剤を包接しようとしても、このような包接はハイドロゲルのポリマー鎖の立体障害により阻害されるという問題がある。したがって、特許文献3に記載の方法によっては、所望の量の薬剤をハイドロゲルに担持することができないという問題がある。
【0012】
上記のような従来技術の問題を鑑みて、本発明においては、特許文献2及び3に記載の技術に比して、所望の量の難水溶性薬剤を効率的に担持することができ、かつ、優れた薬剤徐放性を示すハイドロゲルを提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を鑑みて、難水溶性薬剤の担持体について鋭意検討する中で、ハイドロゲルと、ハイドロゲルに導入するシクロデキストリンとの距離に着眼するに至った。
【0014】
ハイドロゲルに対し、ある程度の長さがある炭素鎖を有する化合物を介して、シクロデキストリンを導入することで、ハイドロゲルのポリマー鎖の立体障害を受けることなく、難水溶性薬剤をシクロデキストリン内部に包接できるのではないかという仮説を立てた。
【0015】
本発明者らは、当該仮説に基づき検討を繰り返す中で、ジアミノアルカンとシクロデキストリンとから合成されるシクロデキストリン誘導体を表面に有するハイドロゲルは、難水溶性薬剤をシクロデキストリン内部に効率的に包接し、さらに包接した薬剤の担持性及び徐放性に優れることを見出した。そして、本発明者らは、所定のシクロデキストリン誘導体をハイドロゲルの表面に有する、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルを創作することに成功した。本発明は、これらの知見や成功例に基づき完成された発明である。
【0016】
したがって、本発明によれば、下記一般式(1)
【化1】
(1)
(式中、
は、−NH−又は−COO−であり;
は、炭素数2〜10の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基又はアセチレン基であり;
は、アミノ基又はカルボキシ基であり;及び、
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
で表わされるシクロデキストリン誘導体をハイドロゲルの表面に有する、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルが提供される。
好ましくは、前記シクロデキストリン誘導体が、下記一般式(2)
【化2】
(2)
(式中、
nは4〜8の整数であり;及び、
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
で表わされる、シクロデキストリン誘導体である。
好ましくは、前記シクロデキストリン誘導体が、(1,4−ジアミノブチル)−6−β−シクロデキストリン、(1,5−ジアミノペンチル)−6−β−シクロデキストリン又は(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンである。
好ましくは、前記ハイドロゲルが、構成成分としてカルボキシ基を分子内に有するモノマーと、これと共重合可能な親水性モノマーとを含み、かつ、前記カルボキシ基を分子内に有するモノマーの量が、前記親水性モノマーの量に対し、5wt%以上10wt%以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材であるハイドロゲルの表面から所定の距離を介在してシクロデキストリンが配された、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルが提供される。本発明の一態様のシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、シクロデキストリンが基材表面より所定の距離を有した位置に存在するため、難水溶性薬剤の包接において、ハイドロゲルのポリマー鎖による立体障害を受けにくいことから、所望の量の難水溶性薬剤を効率的に担持することが可能であり、さらに優れた薬物徐放性を示し得る。また、本発明の一態様のシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、形状安定性に優れることから、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルをコンタクトレンズとして使用する場合において、着脱の操作を行い易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、後述する実施例に記載があるとおりの、シクロデキストリン誘導体修飾の有無による、ハイドロゲルの難水溶性薬剤の取込量及び取込率を評価した結果を示す図である。
図2図2は、後述する実施例に記載があるとおりの、シクロデキストリン誘導体修飾の有無による、ハイドロゲルの難水溶性薬剤の放出率の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一態様であるシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルの詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0020】
シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、予め形成されたハイドロゲルの表面を、下記一般式(1)で示されるシクロデキストリン誘導体により修飾することなどによって得られ、結果としてシクロデキストリン誘導体をハイドロゲルの表面に有することに特徴を有する。
【0021】
【化3】
(1)
(式中、
は、−NH−又は−COO−であり;
は、炭素数2〜10の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基又はアセチレン基であり;
は、アミノ基又はカルボキシ基であり;及び、
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
【0022】
シクロデキストリン誘導体は、例えば、下記一般式(2)で示されるものであり、好ましくは(1,4−ジアミノブチル)−6−β−シクロデキストリン、(1,5−ジアミノペンチル)−6−β−シクロデキストリン及び(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンである。
【化4】
(2)
(式中、
nは4〜8の整数であり;及び
CDは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン又は9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンである。)
【0023】
シクロデキストリン誘導体の製造方法は特に限定されず、例えば、シクロデキストリン誘導体は、後述する実施例に記載がある方法によって得ることができ、具体的には、シクロデキストリンのOH基、好ましくは6位のOH基を、トシル化するなどして活性化したOH基を有するシクロデキストリンを得て、次いで一方の末端にシクロデキストリンの活性化したOH基に結合することができる官能基を有し、かつ、他方の末端にアミノ基又はカルボキシ基を有する、直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン化合物又はアセチレン化合物と、活性化したOH基を有するシクロデキストリンとを結合することなどにより得ることができる。
【0024】
シクロデキストリン誘導体の導入態様は特に限定されないが、例えば、シクロデキストリン誘導体の官能基とハイドロゲル表面の官能基とが共有結合することによりシクロデキストリン誘導体がハイドロゲル表面に導入されている態様が挙げられ、シクロデキストリン誘導体中のアミノ基又はカルボキシ基と、ハイドロゲル基材中のカルボキシ基又はアミノ基との間でアミド結合が形成されることにより、シクロデキストリン誘導体がハイドロゲル表面に導入されている態様が好ましい。シクロデキストリン誘導体は、アミノ基又はカルボキシ基とシクロデキストリンとがそれぞれ一方及び他方の端部に位置する構造である。シクロデキストリン誘導体がこのような構造を有することにより、分子内のシクロデキストリンは、炭素数2〜10の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基又はアセチレン基を介して、ハイドロゲル(基材)表面から所定の距離をもって配されることになる。これにより、ハイドロゲル表面のシクロデキストリンへの難水溶性薬剤の包接は、ハイドロゲルのポリマー鎖の立体障害を受けにくくなる。結果として、効率的に難水溶性薬剤をハイドロゲル表面にあるシクロデキストリンの環内に包接することが可能になる。
【0025】
シクロデキストリン誘導体において、炭素数2〜10の直鎖状、分枝状若しくは環状のアルキレン基又はアセチレン基は、これらの構造に当てはまるものであれば特に限定されないが、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基などのアルキレン基;n−ブチニル基、n−ペンチニル基、n−ヘキシニル基、n−ヘプチニル基、n−オクチニル基などのアセチレン基などが挙げられるが、これらの中でも炭素数4〜8の直鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0026】
シクロデキストリンは、通常知られているとおりの数分子のD−グルコースがα−1,4グリコシド結合により結合して環状構造を形成する環状オリゴ糖であれば特に限定されないが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン及び9単位以上のα−1,4−グルコピラノース結合型シクロデキストリンが用いられる。
【0027】
ハイドロゲルは、シクロデキストリン誘導体の結合部位となるカルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーと、このカルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマー以外の親水性モノマーとを構成成分として少なくとも含む。
【0028】
カルボキシ基を分子内に有するモノマーは、カルボキシ基と、(メタ)アクリロイル基やビニル基などの重合性基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
アミノ基を分子内に有するモノマーは、アミノ基と、(メタ)アクリロイル基やビニル基などの重合性基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(6−アミノヘキシル)メタクリルアミド、N−アミノカルボニルメタクリルアミド、3−メチル−3−ブテンアミド、N−アミノカルボニルメタクリルアミド、3−(メタクリロイルアミノ)プロパンアミド、N−メタクリロイルグリシンアミド、3‐(ビニルオキシ)プロピルアミンなどが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
親水性モノマーは、親水性基と、(メタ)アクリロイル基やビニル基などの重合性基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
カルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーの好ましい配合量は、親水性モノマーの配合量に対し、5wt%以上10wt%以下である。カルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーの配合量が親水性モノマーの配合量に対し5wt%未満である場合、シクロデキストリン誘導体の結合部位となるカルボキシ基又はアミノ基がハイドロゲル表面に十分に存在しないため、所望量のシクロデキストリン誘導体をハイドロゲルの表面に配することができない傾向にある。また、カルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーの配合量が親水性モノマーの配合量に対し10wt%以上の場合、得られるハイドロゲルの含水率が高く、かつ、ハイドロゲル表面の親水性が高まることから、難水溶性薬剤の包接効率に影響を及ぼす傾向にあるために好ましくない。
【0032】
親水性モノマーの好ましい配合量は、全重合成分あたり、70〜95wt%であり、より好ましくは80〜92wt%である。親水性モノマーの配合量が70wt%より少ない場合、ハイドロゲルの柔軟性が低くなる傾向にあることから、例えば、ハイドロゲルを経口又は皮膚や粘膜への貼付により使用する場合において好ましくない。また、親水性モノマーの配合量が95wt%を超過する場合、カルボキシ基又はアミノ基を有するモノマーの配合量が少なくなることにより、シクロデキストリン誘導体の結合部位が不十分となる傾向にあるため、所望量のシクロデキストリン誘導体を基材表面に配することができない可能性がある。
【0033】
本発明においては、例えば、上記成分に加えてハイドロゲルの網目構造の形成や機械的強度を調整するために架橋性モノマーを配合することができる。架橋性モノマーは、分子内に2つ以上の(メタ)アクリル基やビニル基などの重合性基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
架橋性モノマーの配合量は特に限定されないが、例えば、重合成分の総モルに対して、0.3〜5wt%が好ましく、0.7〜2wt%がより好ましい。架橋性モノマーの配合量が5wt%を超える場合、得られるハイドロゲルの軟質性が低下する傾向にあることから好ましくない。
【0035】
これらのモノマーを共重合に供するために重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤や、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。重合開始剤の添加量としては、モノマーの共重合反応を促進する十分量であれば特に限定されず、例えば、外部添加成分として、重合成分のモノマー総重量に対して10〜7,000ppmが好ましい。
【0036】
ハイドロゲルは、当業者により知られている工程を組み合わせることで製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、下記方法によって得ることができる:
共重合体を得る工程として、カルボキシ基又はアミノ基を分子内に有するモノマーと、親水性モノマーと、任意に架橋性モノマーとを含むモノマー混合液を、金属、ガラス、プラスチックなどの成形型に入れて密閉し、恒温槽などを用いて段階的又は連続的に25〜120℃の範囲で昇温し、5〜120時間で重合を完了させることにより共重合体を得る。重合に関しては、紫外線や電子線、ガンマ線等を用いることも可能である。また、モノマー混合液に水や有機溶媒を添加することで溶液重合を適応することも可能である。
【0037】
ハイドロゲルを得る工程として、重合終了後の成形型を室温に冷却し、得られた重合体を成形型から剥離し、必要に応じて切削や研磨した後に、重合体を液体に浸漬することなどによって水和膨潤させてハイドロゲルとする。使用する液体(膨潤液)としては、例えば、水、生理食塩水、等張性緩衝液などが挙げられる。共重合体を、60〜100℃に加温した膨潤液に一定時間浸漬させることにより、膨潤状態とすることが好ましい。また、膨潤処理時に重合体に含まれる未重合モノマーを除去することも可能である。
【0038】
ハイドロゲルの具体例としては、構成成分として、モノマーの総量が100wt%になるように、(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基を分子内に有するモノマー 5〜10wt%、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの親水性モノマー 70〜95wt%及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの架橋性モノマー 0.3〜5wt%を含有し、ただし、カルボキシ基を分子内に有するモノマーの量が、親水性モノマーの量に対し、5〜10wt%である、ハイドロゲルが挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルを製造する方法は特に限定されず、例えば、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、後述する実施例に記載がある方法によって得ることができ、具体的には、ハイドロゲルがカルボキシ基を有し、かつ、シクロデキストリン誘導体が末端にアミノ基を有する場合は、ハイドロゲルのカルボキシ基を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などとの結合を通じて、N−ヒドロキシスクシンイミドなどと結合することによって活性化したカルボキシ基を有するハイドロゲルを得て、次いでシクロデキストリン誘導体をホウ酸緩衝液(pH 8.5)などの緩衝液に溶解したシクロデキストリン誘導体含有溶液に、活性化したカルボキシ基を有するハイドロゲルを浸漬するなどして、ハイドロゲルの活性化したカルボキシ基とシクロデキストリン誘導体のアミノ基とを共有結合させることなどにより得ることができる。
【0040】
シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、難水溶性薬剤を、ハイドロゲル表面に導入したシクロデキストリンの内部に担持することにより、難水溶性薬剤の担持体としての機能を呈する。
【0041】
難水溶性薬剤としては特に限定されないが、例えば、プロスタグランジン製剤、ステロイド、ラジカル補足剤、抗酸化剤、染色剤、天然及び合成麻酔薬、鎮痛剤、拮抗薬、抗アドレナリン作動薬及び抗不整脈薬、抗生物質、抗コリン作動薬及びコリン様薬物、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗菌薬及び抗ウイルス薬、抗炎症薬、抗ムスカリン薬及びムスカリン様薬、抗悪性腫瘍薬、抗精神病薬、抗不安薬、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制薬及び免疫活性薬、神経遮断性薬物、ニューロン遮断薬、抗高血圧薬、栄養剤、鎮静剤並びにそれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
難水溶性薬剤の具体例としては、ステロイド系薬剤であるトリアムシノロンアセトニド、フルオロメトロン、テストステロン;非ステロイド系薬剤であるジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン;プロスタグランジン誘導体であるトラボプロスト、ラタノプロスト、タフルプロスト、ビマトプロスト;その他の薬剤としてはエダラボン、レバミピド、ナタマイシン、アミノピリンなどが挙げられ、かつ、好ましく用いられる。
【0043】
シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルに、難水溶性薬剤を包接する工程は、シクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルを、難水溶性薬剤を水と有機溶媒との混合液に溶解又は分散した溶液中又は分散液中に浸漬し、20〜40℃にて撹拌処理を施すことなどにより行うことができる。難水溶性薬剤を包接する工程において、撹拌処理を行うことにより、難水溶性薬剤はシクロデキストリンの環状構造内に効率的に包接されることから好ましい。水と有機溶媒との混合溶液において、有機溶媒は低級アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどがより好ましい。混合溶液中における有機溶媒の濃度は、例えば、1〜10wt%が好ましい。10wt%を超過した場合、ハイドロゲル内部にも難水溶性薬剤が取り込まれ易く、相分離による白化が発生する傾向にあることから、好ましくない。
【0044】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0045】
[1.アミノアルキル−シクロデキストリンの合成]
下記スキーム(1)に基づいて、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンを合成した。
【化5】
スキーム(1)
【0046】
11.35g(10mmol)のβ−シクロデキストリン(CD)を70.9mLの精製水中に分散させた分散液に、3.5mlのアセトニトリルに溶解させた1.95g(10.25mol)のp−トルエンスルホニルクロニド(TsCl)を、氷水で冷却しながら添加することにより、TsCl含有CD分散液を調製した。
【0047】
TsCl含有CD分散液を室温で2時間撹拌した。撹拌後のTsCl含有CD分散液に、31mlの1N水酸化ナトリウムを3回に分けて添加することにより、反応液を調製した。その際、反応液のpHを8〜9に維持するために、反応液に適量の塩化アンモニウムを同時に添加した。反応液を30分間、室温で撹拌して反応を進行させることにより、反応溶液を得た。反応を終了させた反応溶液を、氷水にて冷却した。得られた反応溶液に、100mLの精製水及び100mLのアセトンを注ぎ入れることにより、沈殿を発生させた。生じた沈殿を濾過し、得られた沈殿物をアセトンで3回洗浄し精製した後、減圧乾燥することで、トシル化β−シクロデキストリンの白色粉末7.62gを得た。
【0048】
上記の方法で得られたトシル化β−シクロデキストリン(TsCD)1.0gを10mLの脱水ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させたTsCD溶液に、アルゴン気流化で、4.5mLのヘキサジアミンを加え、80℃で終夜撹拌して反応を進行させることにより、反応溶液を得た。得られた反応溶液に、冷アセトン 500mLを注ぎいれることにより沈殿を発生させた。生じた沈殿を濾過し、得られた沈殿物を100mLの冷ジエチルエーテルで3回洗浄し精製した後、減圧乾燥することで(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンの褐色粉末0.92gを得た。
【0049】
[2.ハイドロゲルの作製]
表1に示すモノマー割合で、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシブチルアクリレート(HOB−A)及びメタクリル酸(MAA)を量り込んだ後、ポリエチレングリコールジアクリレート(A−200)を加え、さらにモノマーの総重量に対し3000ppm(外部)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、撹拌混合することにより、モノマー混合液を調製した。撹拌混合完了後のモノマー混合液を、ディスク形状の成形型に入れ、30〜110℃の範囲で15時間かけて昇温させ、重合体を得た。得られた重合体を、室温に戻し、成形型より取出した後、70℃のエタノール含有リン酸緩衝液及びリン酸緩衝液中に各々1時間浸漬させ水和膨潤することによりハイドロゲルを得た。水和膨潤後のハイドロゲルを、リン酸緩衝液に浸漬させ、121℃、30分間で高圧蒸気滅菌を行うことにより、ハイドロゲルを得た。ハイドロゲルは、後述する2種類の難水溶性薬剤液で処理するために、2群に分けて、それぞれハイドロゲル(1)及びハイドロゲル(2)とした。
【0050】
【表1】
【0051】
表中の略記の意味は以下の通りである;
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HOB−A:2−ヒドロキシブチルアクリレート
MAA:メタクリル酸
A−200:ポリエチレングリコールジアクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
ヘキサアミノCD:(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン
【0052】
[3.アミノアルキル−シクロデキストリン修飾ハイドロゲルの作製]
下記スキーム(2)に基づいて、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲルを合成した。
【化6】
スキーム(2)
【0053】
10mLのDMF中に0.115gのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及び0.192gの1−エチル−3−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を溶解して得られる溶液中に、前記2に記載の方法により得られたハイドロゲル(1)及び(2)を各々5枚浸漬した。浸漬後のハイドロゲル(1)及び(2)を、1時間室温でボルテックスミキサーを用いて振盪することにより、ハイドロゲルの表面に表出しているカルボキシ基(−COOH)にNHSを結合させるようにして反応基を活性化させた状態(ハイドロゲル−COO−NHS)にした。
【0054】
次いで、上記1に記載の方法により得られた(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン 3,000ppmをホウ酸緩衝液に溶解することにより、pH8.5の(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン溶液を調製した。調製した(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン溶液 1mlに、反応基を活性化させた状態のハイドロゲルの各々を浸漬し、室温にて終夜静置して反応を進行させることにより、ハイドロゲルのNHSが(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリンに置換したハイドロゲルを含む反応溶液を得た。得られた反応溶液からハイドロゲルを取り出し、純水中に室温で24時間浸漬することにより前記の各工程において生じる未反応の化合物を除去することで、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲル(1)及び(2)を得た。
【0055】
[4.難水溶性薬剤液の調製]
エダラボン 3000ppmを純水に量り込み、室温で30分間撹拌することにより、エダラボン分散液を調製した。
【0056】
トリアムシノロン(トリアムシノロンアセトニド) 3000ppmを含水エタノール溶液(純水:エタノール=98:2)に量り込み、室温で30分間撹拌することにより、トリアムシノロン分散液を調製した。
【0057】
[5.薬剤包接ハイドロゲルの調製]
(実施例1)
(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲル(1) 5枚を、1mlずつ分取したトリアムシノロン分散液中に各々浸漬した後、室温で5時間撹拌を行うことによって、トリアムシノロンをβ−デキストリンの環構造内に包接したトリアムシノロン包接ハイドロゲルを得た。
【0058】
(実施例2)
(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲル(2) 5枚を、1mlずつ分取したエダラボン分散中に各々浸漬した後、室温で5時間撹拌を行うことによって、エダラボンをβ−デキストリンの環構造内に包接したエダラボン包接ハイドロゲルを得た。
【0059】
(比較例1)
使用するハイドロゲルを、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾反応前のハイドロゲル(1)とした以外は、実施例1と同一の方法により、トリアムシノロンとハイドロゲルとを接触させて、トリアムシノロン処理ハイドロゲルを得た。
【0060】
(比較例2)
使用するハイドロゲルを、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾反応前のハイドロゲル(2)とした以外は、実施例2と同一の方法により、エダラボンとハイドロゲルとを接触させて、エダラボン処理ハイドロゲルを得た。
【0061】
得られたハイドロゲルを以下の評価方法に従い評価した。
【0062】
[6.ハイドロゲルの評価方法]
<薬剤取込量の評価>
実施例1〜2及び比較例1〜2のハイドロゲルを、含水エタノール溶液(水:エタノール=20:80)中に浸漬して、室温にて24時間静置した後、含水エタノール溶液(水:エタノール=20:80)中に浸漬することにより、ハイドロゲルに包接又は接触させた難水溶性薬剤を溶液中に溶出させた。溶出後の含水エタノール溶液(水:エタノール=20:80)中の難水溶性薬剤を、常法に従って、超微量分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)社製)を用いて定量した。定量して得られた値を、単位ハイドロゲルあたりの難水溶性薬剤取込量(μg/g)とし、難水溶性薬剤液中に含まれる薬剤 3000ppmに対する百分率で評価した。結果を表2及び図1に示す。
【0063】
<薬剤担持効果の評価>
実施例1及び比較例1のハイドロゲルを、室温で2mlの生理食塩水中に一定時間浸漬させた(0.5、1、2、4、8及び24時間)。浸漬後に生理食塩水に含有(溶出)される薬剤量を、常法に従って、超微量分光光度計(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)社製)を用いて定量した。定量して得られた値を、下式に従い、取込量の全量に対する百分率で表わし、担持性に対する評価を行った。結果を表3及び図2に示す。
放出率(%)=(各時間の放出量/取込量)×100
【0064】
[7.評価結果]
表2及び図1が示すとおり、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲル(実際例1及び2)による難水溶性薬剤の取込量及び取込率は、通常のハイドロゲル(比較例1及び2)に比べて、非常に大きかった。特に、トリアムシノロンのように、水にほとんど溶けないとされている極難水溶性の薬剤については、両者の間で取込量及び取込率が10倍以上も違うことがわかった。
【0065】
また、表3及び図2に示すとおり、通常のハイドロゲル(比較例1)では、浸漬開始後0.5時間で75%のトリアムシノロンが溶出し、浸漬開始後1時間で92%のトリアムシノロンが溶出していることから、初期バーストが確認された。他方、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲル(実際例1)では、浸漬開始後4時間になるまで70%未満のトリアムシノロンがハイドロゲル内に残留しており、所期バーストは見られなかった。このように、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲルは、薬物徐放性に優れたものであることがわかった。
【0066】
以上の結果より、(1,6−ジアミノへキシル)−6−β−シクロデキストリン修飾ハイドロゲルは、難水溶性の薬剤、とりわけ極難水溶性の薬剤の取込みに優れており、かつ、薬物徐放性に優れたものであることがわかった。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の一態様のシクロデキストリン誘導体修飾ハイドロゲルは、所望の量の難水溶性薬剤を効率的に担持することができ、かつ、優れた薬剤徐放性を示すハイドロゲルであることから、眼用レンズなどの医療用デバイスとして利用することにより、薬物療法や再生医療などが期待される者の健康と福祉に貢献できるものである。
図1
図2