(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である特定対象物検出装置について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0013】
図1は、本実施形態の特定対象物検出装置20が使用される環境の一例を説明するための図である。
図1には、自車両V0、自車両V0の前方に存在する先行車両V1、及び、街路灯30が示されている。
【0014】
図1に示すように、先行車両V1にはテールランプ10が設けられ、自車両V0には特定対象物検出装置20が設けられる。以下、特定対象物が先行車両V1(テールランプ10)である例について説明する。
【0015】
図2(a)は、先行車両V1に設けられたテールランプ10の概略構成図である。
【0016】
図2(a)に示すように、テールランプ10は、LED11、LED駆動回路12、制御部13等を備える。テールランプ10は、図示しないが、LED11からの光を制御する光学系、例えば、レンズ、リフレクタを備える。テールランプ10は、先行車両V1の後端部に設けられる。
【0017】
図3は、テールランプ10(LED11)の点灯波形の一例である。
図3に示すように、テールランプ10(LED11)は、例えば、0.002秒ごとに、0.0002秒の間、100cdで点灯し、残りの0.0018秒の間、消灯する。このようにテールランプ10(LED11)を高速に明滅させた場合、人間の目には、暗く点灯しているように(例えば、10cdで点灯しているように)視認される。
【0018】
図3に示す点灯波形は、例えば、LED駆動回路12が備えるバイポーラトランジスタ等のスイッチング素子(図示せず)に、制御部13が出力する周波数f及びデューティー比DのPWM信号を印加することで実現される。以下、周波数f=500Hz、デューティー比D=10%である例について説明する。なお、LED駆動回路12としては、例えば、特開2017−085676号公報等に記載の公知のものを用いることができる。
【0019】
スイッチング素子は、例えば、DC−DCコンバータ等の電源(図示せず)とLED11との間に設けられる。スイッチング素子に周波数500Hz及びデューティー比10%のPWM信号が印加されると、0.002秒ごとに、0.0002秒の間、スイッチング素子がオンとなり(その結果、LED11に電源から駆動電圧が印加され)、残りの0.0018秒の間、スイッチング素子がオフとなる(その結果、LED11に電源から駆動電圧が印加されない)。これにより、テールランプ10は、
図3に示すように、0.002秒ごとに、0.0002秒の間、100cdで点灯し、残りの0.0018秒の間、消灯する。なお、駆動電圧は、例えば、法規が求める最大光度(例えば、10cd)/デューティー比D=10/(10/100)=100cdでテールランプ10が点灯するように考慮された電圧である。
【0020】
このように周波数f及びデューティー比DのPWM信号に基づいて印加される駆動電圧でLED11を駆動することで、次の利点を生ずる。
【0021】
すなわち、上記従来技術においては、テールランプが常に一定の光度、例えば、法規が求める最大光度(例えば、10cd)で点灯しているため、悪天候時(特に、濃霧発生時)、テールランプからの光が霧によって散乱して減衰し、遠方まで届かない。そのため、悪天候時、自車両が先行車両から遠方に位置している場合、当該先行車両を検出できない。換言すると、悪天候時(例えば、濃霧発生時)、晴天時と比べ、先行車両V1の検出が可能となる検出距離(先行車両V1と自車両V0との間の距離)が短くなる。
【0022】
これに対して、本実施形態においては、テールランプ10が瞬間的に(例えば、0.0002秒の間)、100cdで点灯するため(
図3参照)、悪天候時、テールランプ10からの光がより遠方まで届く。そのため、悪天候時、自車両V0が先行車両V1から遠方に位置している場合であっても、当該先行車両V1を検出できる。換言すると、悪天候時(例えば、濃霧発生時)、上記従来技術と比べ、先行車両V1の検出が可能となる検出距離(先行車両V1と自車両V0との間の距離)を長くすることができる。なお、テールランプ10が瞬間的に(例えば、0.0002秒の間)、100cdで点灯しても、ドライバ等にグレアを与えることはない。これは、テールランプ10(LED11)を高速に(例えば、500Hzで)明滅させた場合、人間の目には、暗く点灯しているように(例えば、10cdで点灯しているように)視認されることによるものである。
【0023】
なお、PWM信号の周波数fは、500Hzに限定されない。PWM信号の周波数fは、街路灯30等の交通環境に存在する他の光源とは異なる周波数で、人間の目でちらつきが知覚されない周波数であればよい。また、PWM信号のデューティー比Dは、10%に限定されない。PWM信号のデューティー比Dは、100%未満であればよい。検出距離を長くする観点では、デューティー比Dは小さい方が望ましいが、デューティー比Dを小さくするとその分、高出力のLEDが必要となる。この観点から、デューティー比Dは、20%以下が望ましく、5〜20%が特に望ましい。
【0024】
制御部13は、図示しないが、CPU、RAM、ROM等を備える。制御部13のCPUは、ROMからRAMに読み込まれたプログラムを実行することで、LED駆動回路12(スイッチング素子)に、周波数f及びデューティー比DのPWM信号を印加する。本実施形態では、周波数500Hz及びデューティー比10%のPWM信号を印加する。
【0025】
図2(b)は、自車両V0に設けられた特定対象物検出装置20の概略構成図である。
【0026】
図2(b)に示すように、特定対象物検出装置20は、撮像手段21、制御部22等を備える。
【0027】
撮像手段21は、例えば、自車両V0前方を撮像するカメラ(CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を含む)で、自車両V0の所定箇所(例えば、車室内)に設けられる。なお、撮像手段21として、フォトダイオードを用いてもよい。
【0028】
撮像手段21は、周波数f/デューティー比Dfps以上のフレームレートで撮像する。本実施形態では、500/(10/100)=5000fpsのフレームレートで撮像する。これにより、0.002秒ごとに、100cdで点灯しているテールランプ10(先行車両V1)を含む1枚の画像と、消灯しているテールランプ10(先行車両V1)を含む9枚の画像と、の合計10枚の画像を撮像することができる。100cdで点灯しているテールランプ10(先行車両V1)を含む画像は、例えば、
図3に示す矢印A
1のタイミングで撮像される。消灯しているテールランプ10(先行車両V1)を含む画像は、例えば、
図3に示す矢印A
2〜A
10のタイミングで撮像される。
【0029】
上記のように撮像手段21が周波数f/デューティー比Dfps以上のフレームレートで撮像することで、例えば、テールランプ10の点灯タイミングと撮像手段21の撮像タイミングとがズレたとしても、100cdで点灯しているテールランプ10(先行車両V1)を含む画像を確実に撮像することができる。撮像手段21によって撮像された画像(画像データ)は、制御部22に入力される。
【0030】
制御部22は、図示しないが、CPU、RAM、ROM等を備える。
【0031】
制御部22のCPUは、ROMからRAMに読み込まれたプログラムを実行することで、撮像手段21が撮像した画像中の相対的に明るい領域を検出する検出手段22aとして機能する。
【0032】
相対的に明るい領域は、例えば、撮像手段21が撮像した画像中の閾値以上の輝度を有する画素領域を検出することで検出することができる。
【0033】
また、制御部22のCPUは、ROMからRAMに読み込まれたプログラムを実行することで、検出手段22aが検出した相対的に明るい領域の点灯周波数を算出する算出手段22bとして機能する。
【0034】
相対的に明るい領域の点灯周波数は、撮像手段21が撮像した複数の画像に基づいて算出することができる。
【0035】
例えば、検出手段22aが、撮像手段21が撮像した複数の画像中、10枚に1枚の割合で、相対的に明るい領域を検出したとする。この場合、相対的に明るい領域を含む画像が出現する間隔は0.002sである。そのため、この場合、相対的に明るい領域の点灯周波数は、1/0.002=500Hzと算出することができる。
【0036】
また、制御部22のCPUは、ROMからRAMに読み込まれたプログラムを実行することで、算出手段22bが算出した点灯周波数が予め定められた周波数であるか否かを判定し、予め定められた周波数である場合、検出手段22aが検出した相対的に明るい領域がテールランプ10(先行車両V1)であると判定する判定手段22cとして機能する。予め定められた周波数は、例えば、周波数f(ここでは、500Hz)で、制御部22のROM等の記憶部に記憶されている。なお、予め定められた周波数は、500Hz±10Hzのように幅のある数値であってもよい。
【0037】
街路灯30は、例えば、水銀灯で、先行車両V1が備えるテールランプ10とは異なる周波数(例えば、100Hz)で点灯する。
【0038】
図4は、自車両V0に搭載された特定対象物検出装置20の動作を説明するためのフローチャートである。
【0039】
以下の処理は、主に、制御部22のCPUがROMからRAMに読み込まれたプログラムを実行することで実行される。
【0040】
以下、
図1に示すように、夜間、自車両V0の前方に先行車両V1、及び、街路灯30が存在するものとして説明を行う。なお、先行車両V1のテールランプ10は
図3に示す点灯波形で点灯しており、街路灯30は先行車両V1のテールランプ10とは異なる周波数(例えば、100Hz)で点灯しているものとする。
【0041】
まず、撮像手段21は、自車両V0の前方を撮像する(ステップS10)。すなわち、撮像手段21は、自車両V0の前方に存在する先行車両V1(テールランプ10)、及び、街路灯30を含む画像を、5000fpsのフレームレートで撮像する。
【0042】
次に、制御部22のCPU(検出手段22a)は、撮像手段21が撮像した画像中の相対的に明るい領域を検出する(ステップS12)。
【0043】
ここでは、相対的に明るい領域として、先行車両V1のテールランプ10に対応する領域と、街路灯30に対応する領域と、が検出される(ステップS12:Yes)。
【0044】
次に、制御部22のCPU(算出手段22b)は、検出手段22aが検出した相対的に明るい領域の点灯周波数を算出する(ステップS14)。
【0045】
例えば、検出手段22aが、撮像手段21が撮像した複数の画像中、10枚に1枚の割合で、相対的に明るい領域(先行車両V1のテールランプ10に対応する領域)を検出したとする。この場合、相対的に明るい領域(先行車両V1のテールランプ10に対応する領域)を含む画像が出現する間隔は0.002sである。そのため、この場合、相対的に明るい領域(先行車両V1のテールランプ10に対応する領域)の点灯周波数は、1/0.002=500Hzと算出することができる。
【0046】
同様にして、相対的に明るい領域(街路灯30に対応する領域)の点灯周波数は、例えば、100Hzと算出することができる。
【0047】
次に、制御部22のCPU(判定手段22c)は、算出手段22bが算出した点灯周波数が予め定められた周波数f(ここでは、500Hz)であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0048】
その結果、予め定められた周波数fである場合(ステップS16:Yes)、制御部22のCPU(判定手段22c)は、検出手段22aが検出した相対的に明るい領域が先行車両V1(テールランプ10)であると判定する(ステップS18)。
【0049】
ここでは、ステップS14で算出された相対的に明るい領域(先行車両V1のテールランプ10に対応する領域)の点灯周波数が500Hzであり、予め定められた周波数fである(ステップS16:Yes)。そのため、相対的に明るい領域(先行車両V1のテールランプ10に対応する領域)が、先行車両V1(テールランプ10)であると判定される(ステップS18)。
【0050】
この場合、判定(検出)した先行車両V1との衝突の可能性を判断し、自車両V0において警報を出力してドライバの注意を喚起したり衝突を回避するように自動操舵や自動制動制御を行ってもよい。
【0051】
一方、ステップS16の判定の結果、予め定められた周波数fでない場合(ステップS16:No)、制御部22のCPU(判定手段22c)は、検出手段22aが検出した相対的に明るい領域が先行車両V1(テールランプ10)でないと判定する(ステップS20)。
【0052】
ここでは、ステップS14で算出された相対的に明るい領域(街路灯30に対応する領域)の点灯周波数が100Hzであり、予め定められた周波数fでない(ステップS16:No)。そのため、相対的に明るい領域(街路灯30に対応する領域)が、先行車両V1(テールランプ10)でないと判定される(ステップS20)。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、悪天候時(例えば、濃霧発生時)、自車両V0が先行車両V1から遠方に位置している場合であっても、当該先行車両V1を検出できる。換言すると、悪天候時(例えば、濃霧発生時)、上記従来技術と比べ、先行車両V1の検出が可能となる検出距離(先行車両V1と自車両V0との間の距離)を長くすることができる。
【0054】
これは、先行車両V1が、悪天候時、テールランプ10からの光をより遠方まで届けるための構成、すなわち、周波数f及びデューティー比DのPWM信号に基づいて印加される駆動電圧で駆動されるLED11を備えていること、その結果、テールランプ10が瞬間的に(例えば、0.0002秒の間)、法規が求める最大光度より高光度(例えば、100cd)で点灯すること(
図3参照)、そして、自車両V0が、その高光度の光を検出するための構成、すなわち、周波数f/デューティー比Dfps以上のフレームレートで撮像する撮像手段21を備えていること、によるものである。
【0055】
なお、テールランプ10が瞬間的に(例えば、0.0002秒の間)、法規が求める最大光度より高光度(例えば、100cd)で点灯しても、ドライバ等にグレアを与えることはない。これは、テールランプ10(LED11)を高速に(例えば、500Hzで)明滅させた場合、人間の目には、暗く点灯しているように(例えば、10cdで点灯しているように)視認されることによるものである。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、ドライバ等にグレアを与えることなく、悪天候時(例えば、濃霧発生時)、上記従来技術と比べ、先行車両V1の検出が可能となる検出距離(先行車両V1と自車両V0との間の距離)を長くすることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、街路灯30等の交通環境に存在する固定光源を、先行車両V1であると誤って判定するのを防止することができる。
【0058】
これは、相対的に明るい領域の点灯周波数が予め定められた周波数である場合(ステップS16:Yes)、当該相対的に明るい領域が先行車両V1(テールランプ10)であると判定する(ステップS18)ことによるものである。
【0060】
上記実施形態では、周波数f及びデューティー比DのPWM信号に基づいて印加される駆動電圧で駆動される光源として、LED11を用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、LED11に代えて、LDや有機ELパネルを用いてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、特定対象物が先行車両V1(テールランプ10)である例について説明したが、これに限らない。例えば、特定対象物は、対向車両(車両用前照灯)であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、周波数f及びデューティー比DのPWM信号に基づいて印加される駆動電圧で駆動される光源を備えた車両用灯具がテールランプ10である例について説明したが、これに限らない。例えば、周波数f及びデューティー比DのPWM信号に基づいて印加される駆動電圧で駆動される光源を備えた車両用灯具は、車両用前照灯(ヘッドランプ)、リアフォグランプ、その他の車両用灯具であってもよい。
【0063】
上記各実施形態で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0064】
上記各実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記各実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。