(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したショットキー接合型の光検出素子の感度(光電流量)は、ホットキャリアの生成数、ホットキャリアがショットキー障壁に到達する確率、及びホットキャリアがショットキー障壁を超える確率の積で表される。ホットキャリアの生成数は、金属膜での光吸収量に依存するため、光検出素子の感度向上には、光吸収量を向上させることが有効となる。
【0006】
一方、周期的な凹凸構造を覆うように金属膜を設ける場合、凹部の底面、凹部の内壁面、及び凸部の頂面に半導体層と金属膜との接合面が形成される。このため、実効的な受光面積である凸部の頂面及び凹部の底面の面積に比べて半導体層と金属膜とのショットキー接合面積が大きなものとなり、暗電流が増加してしまうことが考えられる。したがって、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる光検出素子を実現する技術が望まれる。
【0007】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる光検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人は、光検出素子の研究を重ねる過程で、周期的な凹凸構造を覆う金属膜の位置による入射光の光吸収量に着目をした。そして、周期的凹凸構造を有する光検出素子を試作し、位置毎の光吸収量を算出したところ、金属膜における光吸収量には位置毎のばらつきがあり、周期的な凹凸構造の凸部の先端側に対応する領域に比べて凸部の基端側に対応する領域で多くの光吸収が生じていることが分かった。この結果から、光吸収の寄与が高い領域に応じて半導体層と金属膜との接合面を局所的に形成することで、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる光検出素子を実現できるとの知見が得られた。
【0009】
本発明の一側面に係る光検出素子は、周期的な凸部及び凹部によって構成され、光を表面プラズモンに変換する周期的凹凸構造を一面側に有する半導体層と、周期的凹凸構造に対応して半導体層の一面側に設けられた金属膜と、を備え、周期的凹凸構造において、凸部の基端側には、金属膜とショットキー接合するショットキー接合部が設けられ、凸部の先端側には、金属膜とショットキー接合しない非ショットキー接合部が設けられている。
【0010】
この光検出素子では、周期的凹凸構造を構成する凸部の基端側に局所的にショットキー接合部が設けられ、凸部の先端側には非ショットキー接合部が設けられている。ここで、周期的凹凸構造の凸部の先端側に対応する領域に比べて凸部の基端側に対応する領域で多くの光吸収が生じていることが上記知見より得られている。したがって、光吸収の寄与が高い領域にショットキー接合部を設ける一方、光吸収の寄与が低い領域に非ショットキー接合部を設けて半導体層と金属膜とのショットキー接合面積を削減することにより、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる光検出素子が得られる。
【0011】
また、凸部の頂面には、絶縁膜が設けられ、金属膜は、凹部の底面及び内壁面を覆う第1の部分と、絶縁膜を覆う第2の部分とを有し、第1の部分によってショットキー接合部が構成され、第2の部分によって非ショットキー接合部が構成されていてもよい。この場合、凸部の頂面に絶縁膜による非ショットキー接合部が位置するため、金属膜の面積を拡大したとしても半導体層と金属膜とのショットキー接合面積の増加を回避でき、金属膜の設計自由度を十分に確保できる。また、凸部の頂面に金属膜の第2の部分が位置するため、第2の部分での光の反射によって金属膜の第1の部分での光吸収効率を向上できる。さらに、周期的凹凸構造の作製の際にマスクとして用いる絶縁膜をそのまま利用できるので、製造工程の簡単化が図られる。
【0012】
また、絶縁膜の厚さは、凸部の高さ以下となっていてもよい。この場合、凸部の基端側付近の金属膜内で生成したホットキャリアが、凹部の底面におけるショットキー接合部だけではなく、凹部の内壁面のうち、半導体層領域におけるショットキー接合部にも到達することができる。したがって、光検出素子の感度の更なる向上が図られる。
【0013】
凸部は、絶縁膜によって構成され、金属膜は、凹部の底面を覆う第1の部分と、凸部を覆う第2の部分とを有し、第1の部分によってショットキー接合部が構成され、第2の部分によって非ショットキー接合部が構成されていてもよい。この場合、光吸収の寄与が高い凹部の底面領域がショットキー接合部となり、光検出素子の感度を十分に確保できる。また、凸部全体が非ショットキー接合部となるので、金属膜の面積を拡大したとしても半導体層と金属膜とのショットキー接合面積の増加を回避でき、金属膜の設計自由度を十分に確保できる。また、金属膜と接する半導体層の面と絶縁膜と接する半導体層の面がほぼ平坦となるため、格子欠陥を少なくすることが可能となり、暗電流を一層低減できる。
【0014】
また、絶縁膜の屈折率は、半導体層の屈折率よりも小さくなっていてもよい。この場合、金属膜の第1の部分に光を閉じ込め易くなり、光吸収効率を一層向上できる。
【0015】
また、金属膜は、凹部の底面及び内壁面を覆う第1の部分と、隣り合う凹部における第1の部分の一部同士を結ぶように凸部の頂面側に設けられた第2の部分とを有し、第1の部分によってショットキー接合部が構成され、第2の部分の非形成領域によって非ショットキー接合部が構成されていてもよい。この場合、簡単な構成でショットキー接合部及び非ショットキー接合部を実現できる。
【0016】
第1の部分は、凸部の頂面よりも突出する突出部分を有し、第2の部分は、突出部分同士を結ぶように凸部の頂面から離間して設けられていてもよい。この場合、金属膜の第2の部分の面積を拡大したとしても半導体層と金属膜とのショットキー接合面積の増加を回避できる。したがって、金属膜の面積を十分に確保できるので、光検出素子の電気抵抗の低減化が図られる。
【0017】
また、凸部の頂面には、半導体層とオーミック接合するオーミック電極が設けられ、金属膜は、凹部の底面及び内壁面を覆うように設けられ、金属膜によってショットキー接合部が構成され、オーミック電極によって非ショットキー接合部が構成されていてもよい。この場合、凸部の頂面に設けられたオーミック電極での光の反射によって金属膜での光吸収効率を向上できる。また、オーミック電極が凸部の頂面に位置することで、素子面積を低減できる。したがって、光検出素子の小型化、高集積化が可能となる。
【0018】
また、金属膜の厚さは、20nm以上となっていてもよい。金属膜の厚さが20nm以上である場合、金属膜における光の有効吸収量が最大化され、光検出素子の感度を向上できる。
【0019】
また、半導体層は、シリコンによって構成されていてもよい。これにより、光検出素子を安価に製造できる。
【0020】
また、金属膜は、アルミニウムを含んで構成されていてもよい。この場合、金属膜の製造プロセスが容易なものとなる。
【0021】
また、金属膜は、半導体層に接する第1の膜と、当該第1の膜よりも屈折率が小さい第2の膜とを含む複数層の膜によって構成されていてもよい。この場合、金属膜において半導体層との界面付近に光を閉じ込めることが可能となり、光吸収量を一層向上できる。
【0022】
また、周期的凹凸構造における凹部は、平面視でマトリクス状の配置パターンを有していてもよい。マトリクス状の配置パターンを採用する場合、いずれの偏光方向の光も等しく表面プラズモンに変換される。したがって、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。
【0023】
また、凹部の横断面形状は、円形状又は矩形状となっていてもよい。凹部の横断面形状として円形状を採用する場合、周期的凹凸構造の周期性を光が感ずる面積が狭くなるため、広い波長範囲において表面プラズモンに変換される。したがって、広い波長範囲について光検出が可能となる。凹部の横断面形状として矩形状を採用する場合、周期的凹凸構造の周期性を光が感ずる面積が広くなるために、特定の波長において強い表面プラズモンに変換される。したがって、特定の波長について高感度の光検出が可能となる。
【0024】
また、周期的凹凸構造における凹部は、平面視でストライプ状の配置パターンを有していてもよい。ストライプ状の配置パターンを採用する場合、ストライプ状の配置パターンに対して電場ベクトルが直交する光のみが周期的凹凸構造において強い表面プラズモンに変換される。したがって、一つの偏光方向について高感度な光検出が可能となる。
【0025】
また、周期的凹凸構造における凹部は、平面視で同心円状の配置パターンを有していてもよい。同心円状の配置パターンを採用する場合、いずれの偏光方向の光も等しく表面プラズモンに変換される。したがって、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。
【0026】
また、周期的凹凸構造における凹部は、平面視で同心多角形状の配置パターンを有していてもよい。同心多角形状の配置パターンを採用する場合、同心多角形状の配置パターンの各辺に対して電場ベクトルが直交する光のみが周期的凹凸構造において強い表面プラズモンに変換される。したがって、二つの偏光方向について高感度な光検出が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る光検出素子の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は、光検出素子の一実施形態を示す断面図である。この光検出素子1は、例えば波長1200nm以上の近赤外光の検出に用いられるショットキー接合型の光検出素子として構成されている。光検出素子1は、同図に示すように、光検出素子1は、半導体層2と、絶縁膜3と、オーミック電極4と、ショットキー電極5とを備えている。
【0031】
半導体層2は、例えばシリコン(Si)、酸化チタン(TiO
2)、ゲルマニウム(Ge)、リン化ガリウム(GaP)などによって形成される半導体層である。本実施形態では、より安価な製造プロセスの実現のため、n型若しくはp型のシリコンによる半導体層2を例示する。光検出素子1は、裏面入射型の光検出素子であり、半導体層2の裏面2bが光検出素子1で検出する光Lの入射面Fとなっている。
【0032】
絶縁膜3は、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)によって半導体層2の表面2aに形成されている。絶縁膜3の厚さは、例えば100nm程度となっている。絶縁膜3には、オーミック電極4と半導体層2とのオーミック接合を実現するための開口部3aと、ショットキー電極5と半導体層2とのショットキー接合を実現するための開口部3bとが設けられている。絶縁膜3は、例えば化学気相成長法などを用いて形成される。開口部3a,3bの形成には、例えばフォトリソグラフィが用いられる。
【0033】
オーミック電極4は、例えば金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等を含む材料によって形成されている。オーミック電極4は、半導体層2の表面2aにおいて絶縁膜3の開口部3aを覆うように設けられ、開口部3aの底面において半導体層2とオーミック接合している。ショットキー電極5は、例えば金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、プラチナ(Pt)等を含む材料によって形成されている。ショットキー電極5は、半導体層2の表面において絶縁膜3の開口部3bを覆うように設けられ、開口部3bの底面において半導体層2とショットキー接合している。オーミック電極4及びショットキー電極5は、例えば真空蒸着法などを用いて形成される。半導体層2の導電型がn型の場合、光検出素子1の動作時には、ショットキー電極5側の電位がオーミック電極4側の電位に比べて低くなるようにバイアス電圧が印加される。半導体層2の導電型がp型の場合、光検出素子1の動作時には、ショットキー電極5側の電位がオーミック電極4側の電位に比べて高くなるようにバイアス電圧が印加される。いずれの場合もバイアス電圧をゼロとする場合もある。
【0034】
また、半導体層2の表面2aにおいて、絶縁膜3の開口部3bに対応する位置には、入射面Fから入射した光Lを表面プラズモンに変換する周期的凹凸構造11が設けられている。
図2は、周期的凹凸構造の近傍(
図1における破線部分)の構成を示す要部拡大断面図である。また、
図3は、周期的凹凸構造における凹部の配置パターンを示す平面図である。
図2及び
図3に示すように、周期的凹凸構造11は、例えば入射面Fから入射する光Lのスポットサイズと同等以上の領域にナノオーダーで形成された凹部12及び凸部13を有している。凹部12及び凸部13による凹凸パターンは、例えば電子ビーム露光法、ナノインプリントによるリソグラフィと反応性イオンエッチング若しくはリフトオフとを組み合わせた方法、集束イオンビームを用いた直接加工法などによって形成される。
【0035】
本実施形態では、周期的凹凸構造11を構成する凹部12は、
図3に示すように、平面視でマトリクス状の配置パターンを有している。同図の例では、凹部12の行方向の配列ピッチと列方向の配列ピッチとが一致した状態となっている。また、凹部12は、円柱状をなしており、凹部12の横断面形状は円形状、凹部12の縦断面形状は長方形状(
図2参照)となっている。このような配置パターンにより、
図2に示すように、周期的凹凸構造11は、入射面Fから入射した光Lに対する縦共振器C1及び横共振器C2を構成している。縦共振器C1は、凹凸の高さ方向に形成される共振器であり、凸部13の底面と凸部13の頂面とによって構成されている。また、横共振器C2は、凹凸の配列方向に形成される共振器であり、凹部12の内壁面と隣り合う凹部12の内壁面との同じ位置同士によって構成されている。
【0036】
周期的凹凸構造11における凸部13の高さ(凹部12の深さ)T、凸部13の配列ピッチP、及び凹部の幅Dは、例えば縦共振器C1の共振波長と横共振器C2の共振波長とが揃うように設定されている。より具体的には、周期的凹凸構造11で発生する表面プラズモンの波長をλ
pとした場合に、凸部13の高さTは3/8λ
p<T<5/8λ
pを満たし、凸部13の配列ピッチPは9/10λ
p<P<11/10λ
pを満たしている。また、凹部12の幅(ここでは凹部12の直径)Dは、50nm<D<λ
p−50nmを満たしている。ただし、これらの範囲は一例であり、凸部13の高さT、凸部13の配列ピッチP、及び凹部の幅Dは、上記範囲外であってもよい。
【0037】
また、周期的凹凸構造11における凸部13の頂面には、絶縁膜15が設けられている。絶縁膜15は、例えばフォトリソグラフィを用いて凸部13の頂面のみにパターニングされている。絶縁膜15の厚さは、例えば10nm〜150nmであり、かつ凸部13の高さT以下となっている。絶縁膜15の厚さは、絶縁膜3の厚さと等しくなっていてもよい。光Lに対する絶縁膜15の屈折率は、光Lに対する半導体層2の屈折率よりも小さくなっていることが好ましい。本実施形態では、絶縁膜15は、絶縁膜3と同様に、例えば二酸化ケイ素(SiO
2)によって形成され、周期的凹凸構造11の作製の際にマスクとして用いる絶縁膜が絶縁膜15としてそのまま利用されている。絶縁膜15の他の構成材料としては、例えばフッ化マグネシウム(MgF
2)、窒化ケイ素(SiN)、酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)などが挙げられる。
【0038】
ショットキー電極5を構成する金属膜14は、
図2に示すように、周期的凹凸構造11及び絶縁膜15を覆うように形成されている。すなわち、金属膜14は、周期的凹凸構造11における凸部13の頂面、凹部12の底面、凹部12の内壁面を覆う第1の部分14Aと、凸部13の頂面に設けられた絶縁膜15を覆う第2の部分14Bとを有している。このような金属膜14の構成により、周期的凹凸構造11において、凸部13の基端側には、金属膜14とショットキー接合するショットキー接合部S1が形成されている。
【0039】
また、凸部13の先端側には、金属膜14とショットキー接合しない非ショットキー接合部S2が形成されている。本実施形態では、凸部13の基端側において、凹部12の底面及び凹部12の内壁面が金属膜14の第1の部分14Aとの間でショットキー接合部S1を構成しており、凸部13の先端側において、凸部13の頂面に設けられた絶縁膜15が金属膜14の第2の部分14Bとの間で非ショットキー接合部S2を構成している。
【0040】
金属膜14は、本実施形態のように半導体層2をシリコンで形成する場合には、シリコンプロセスによる製造容易性を考慮し、アルミニウム(Al)による単層膜とすることが好適である。また、金属膜14は、多層膜であってもよい。この場合、金属膜14は、半導体層2に接する第1の膜と、当該第1の膜よりも屈折率が小さい第2の膜とを含む複数層の膜によって構成されていてもよい。第1の膜と第2の膜との材料の組み合わせは、例えばチタン(Ti)/金(Au)、チタン(Ti)/銀(Ag)、アルミニウム(Al)/金(Au)、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)などが挙げられる。
【0041】
半導体層2のうちショットキー接合部S1の近傍には、金属膜14とのショットキー接合に伴って空乏層が形成されている。入射面Fから入射した光Lは、縦共振器C1及び横共振器C2に閉じ込められ、金属膜14の表面を伝搬する伝搬型の表面プラズモンに変換される。光Lの振動と表面プラズモンとが共鳴することにより、金属膜14に光Lのエネルギーが吸収される。そして、金属膜14の内部での光吸収により自由電子が励起され、生成されたホットキャリアがショットキー障壁を超えて半導体層2側に光電流として流れる。
【0042】
本実施形態では、金属膜14での光吸収の効率を向上させるため、金属膜14の厚さは、20nm以上となっている。ショットキー接合型の光検出素子の感度(光電流量)は、ホットキャリアの生成数、ホットキャリアがショットキー障壁に到達する確率、及びホットキャリアがショットキー障壁を超える確率の積で表される。ホットキャリアの生成数は、金属膜での光吸収量に依存するため、光検出素子の感度向上には、金属膜での光吸収量を向上させることが有効となる。
【0043】
励起電子の生成位置からの輸送確率(距離rを進む確率)は、exp(−r/L)で表される。Lは、金属膜の内部での平均自由行程であり、およそ30nmである。励起電子の生成位置から半導体層の界面までの最短距離をzとすると、距離zは、励起電子の生成位置から半導体層の界面までを結ぶ垂線の距離となる。したがって、励起電子の進行方向と垂線との成す角度をθとすると、励起電子の輸送確率は、exp(−r/Lcosθ)となる。電極膜の内部における励起電子の生成位置での光吸収量と輸送確率とを乗算し、更に電極膜の内部全体にわたって体積積分した積算値(以下、当該積算値を「有効吸収量」と称す)は、ショットキー接合型の光検出素子の感度に比例した値となる。
【0044】
有効吸収量を用いた金属膜での光吸収量の評価のため、ショットキー電極として周期的なスリット構造を備えた光検出素子のサンプルを作製した。この評価用の光検出素子は、シリコン(Si)による半導体層上に厚さ370nmのショットキー電極を形成し、集束イオンビーム装置によってショットキー電極に幅100nm、周期850nmでスリットを形成したものである。スリットは、貫通スリットであり、半導体層の表面が露出するように形成した。
【0045】
サンプルは、ショットキー電極を構成する金属膜を金(Au)による単層で構成したものと、半導体層側からチタン(Ti)/金(Au)の二層で構成したものの2種類を作製した。後者では、チタン(Ti)層の厚さは、2nmとした。これらの2種類のサンプルについて感度比を実験にて求めたところ、約0.54であった。両サンプルの感度の差異は、電極構成膜の差によって金属膜の内部での光の空間分布及び光吸収の空間分布が異なり、有効吸収量に差が生じたことに起因すると考えられる。したがって、両サンプルの感度比は、両サンプルの有効吸収量の比と同等であると結論付けられる。
【0046】
図4は、半導体層の界面からの距離と感度及び有効吸収量の比との関係を示す図である。同図では、横軸に半導体層の界面からの距離h
effを示し、縦軸に感度比及び有効吸収量の比を示している。
図4におけるプロットは、上記2種類のサンプルについての半導体層の界面から距離h
effまでの有効吸収量の比をシミュレーションによって求めたものである。この結果から、距離h
effが増加すると共に有効吸収量の比は増加し、距離h
effが20nm以上となると、有効吸収量の比が一定となることが分かる。また、距離h
effが20nm以上の場合の有効吸収量の比は、およそ0.54であり、実験によって求めた感度比(
図4における点線で示す値)と略一致している。
【0047】
この結果から、金属膜の厚さが20nmに満たない場合には、有効吸収量が不足し、光検出素子の感度が十分に得られないことが分かる。また、金属膜の厚さが20nm以上である場合には、有効吸収量が最大化され、光検出素子の感度を向上できることが分かる。このことは、ショットキー接合型の光検出素子の感度の向上には、半導体層の界面から20nmまでの範囲での金属膜の有効吸収量を増加させることが有効であることを意味している。
【0048】
一方、光検出素子の代表的な特性としては、感度のほかに暗電流が挙げられる。暗電流は、光検出素子に光が入射しない状態において流れる電流である。暗電流は、低照度領域での光の検出限界に影響するため、光検出素子の特性としては、暗電流が極力小さいことが望ましい。光検出素子において、周期的な凹凸構造を覆うように金属膜を設ける場合、凹部の底面、凹部の内壁面、及び凸部の頂面に半導体層と金属膜との接合面が形成される。このため、実効的な受光面積である凸部の頂面及び凹部の底面の面積に比べて半導体層と金属膜とのショットキー接合面積が大きなものとなり、暗電流が増加してしまうことが考えられる。
【0049】
ここで、出願人は、光検出素子の研究を重ねる過程で、周期的な凹凸構造を覆う金属膜の位置による入射光の光吸収量に着目し、周期的凹凸構造を有する一次評価用の光検出素子を試作した。一次評価用の光検出素子は、
図5(a)に示すように、凹部102及び凸部103を有する周期的凹凸構造101をシリコンからなる半導体層104の一面に形成し、さらに、周期的凹凸構造101を覆うように金属膜105を形成したものである。一次評価用の光検出素子では、周期的凹凸構造111において、凹部102の底面及び内壁面、凸部103の頂面が金属膜105とショットキー接合するショットキー接合部となっている。凹部102の断面形状は、円形状であり、凸部103の高さ(凹部102の深さ)は、50nmである。凹部102の配列ピッチは、400nm、凹部102の幅(直径)は、160nmである。また、金属膜105の構成材料は、金(Au)であり、厚さは、30nmである。
【0050】
図5(b)は、一次評価用の光検出素子における光吸収量の空間部分のシミュレーション結果を示す図である。当該シミュレーションでは、一次評価用の光検出素子に波長1500nmの近赤外光を入射させ、金属膜105の各位置での光吸収量を算出した。同図に示す結果から、光吸収量が高い領域は、凹部102内に集中していることが分かる。凹部102内に位置する金属膜105での光吸収量は、金属膜105の全体での光吸収量の約78%を占めていた。この結果から、光吸収量の多い領域で半導体層と金属膜とをショットキー接合させ、光吸収量の低い領域で半導体層と金属膜とをショットキー接合させないことで、光検出素子の感度を維持しつつ、暗電流を抑制できるとの知見が得られた。
【0051】
図6(a)に示す二次評価用の光検出素子は、上記知見に基づいて作製したものである。同図に示すように、この二次評価用の光検出素子は、凹部112及び凸部113を有する周期的凹凸構造111をシリコンからなる半導体層114の一面に形成し、凸部113の頂面に窒化ケイ素(SiN)からなる絶縁膜116を厚さ25nmで形成し、さらに、周期的凹凸構造111及び絶縁膜116を覆うように金属膜115を形成したものである。すなわち、二次評価用の光検出素子では、金属膜115とショットキー接合するショットキー接合部が凸部113の基端側に設けられると共に、金属膜115とショットキー接合しない非ショットキー接合部が凸部113の先端側に設けられている。周期的凹凸構造111における凹凸パターンは、一次評価用の光検出素子と同じとした。
【0052】
図6(b)は、二次評価用の光検出素子における光吸収量の空間部分のシミュレーション結果を示す図である。また、
図7は、一次評価用の光検出素子と二次評価用の光検出素子との評価結果を示す図である。
図6(b)では、絶縁膜116に相当する部分を破線で示している。
図7に示すように、一次評価用の光検出素子では、凹部102の1ピッチ当たりのショットキー接合面積が0.185μm
2であるのに対し、二次評価用の光検出素子では、凹部112の1ピッチ当たりのショットキー接合面積が0.0326μm
2であり、ショットキー接合面積が18%未満に抑えられている。二次評価用の光検出素子では、ショットキー接合面積が抑えられることで、一次評価用の光検出素子に比べて暗電流が十分に抑制される。
【0053】
また、一次評価用の光検出素子では、入射した光に対する金属膜105の全体の光吸収量が0.8、凹部102内に位置する金属膜105での光吸収量(全体の光吸収量に対する比)が0.62、有効吸収量は0.23であった。これに対し、二次評価用の光検出素子では、入射した光に対する金属膜115の全体の光吸収量が0.9、凹部112内に位置する金属膜115での光吸収量(全体の光吸収量に対する比)が0.78、有効吸収量は0.31であった。二次評価用の光検出素子では、一次評価用の光検出素子に比べて有効吸収量が約35%向上している。この結果から、金属膜115とショットキー接合しない非ショットキー接合部を凸部113の先端側に設ける構成を採用することにより、光検出素子において約35%の感度向上が見込まれることが分かる。
【0054】
また、
図6(b)に示すように、二次評価用の光検出素子では、凹部112の底面と内壁面との境界部分近傍で光吸収量が特に高まっていることが分かる。これは、半導体層114の構成材料であるシリコン(Si)よりも屈折率の低い絶縁膜15により、凹部112の底面と内壁面との境界部分近傍に光が効率的に閉じ込められることに起因するものと考えられる。このことも、二次評価用の光検出素子での有効吸収量の増加に寄与していると推察される。
【0055】
以上説明したように、光検出素子1では、周期的凹凸構造11を構成する凸部13の基端側に局所的にショットキー接合部S1が設けられ、凸部13の先端側には非ショットキー接合部S2が設けられている。上述したように、周期的凹凸構造11の凸部13の先端側に対応する領域に比べて、凸部13の基端側に対応する領域では、より多くの光吸収が生じている。したがって、光吸収の寄与が高い領域にショットキー接合部S1を設ける一方、光吸収の寄与が低い領域に非ショットキー接合部S2を設けて半導体層2と金属膜14とのショットキー接合面積を削減することにより、暗電流を抑制しつつ、近赤外光を十分な感度で検出できる光検出素子1が得られる。
【0056】
また、本実施形態では、凸部13の頂面には、絶縁膜15が設けられている。また、金属膜14は、凹部12の底面及び内壁面を覆う第1の部分14Aと、絶縁膜15を覆う第2の部分14Bとを有している。そして、金属膜14の第1の部分14Aによってショットキー接合部S1が構成され、第2の部分14Bによって非ショットキー接合部S2が構成されている。このような構成により、凸部13の頂面に絶縁膜15による非ショットキー接合部S2が位置するため、金属膜14の面積を拡大したとしても半導体層2と金属膜14とのショットキー接合面積の増加を回避でき、金属膜14の設計自由度を十分に確保できる。また、凸部13の頂面に金属膜14の第2の部分14Bが位置するため、第2の部分14Bでの光の反射によって金属膜14の第1の部分14Aでの光吸収効率を向上できる。さらに、周期的凹凸構造11の作製の際にマスクとして用いる絶縁膜を絶縁膜15としてそのまま利用できるので、製造工程の簡単化が図られる。
【0057】
また、本実施形態では、絶縁膜15の厚さが凸部13の高さT以下となっている。これにより、凸部13の基端側付近の金属膜14内で生成したホットキャリアが、凹部12の底面におけるショットキー接合部S1だけではなく、凹部12の内壁面のうち、半導体層領域におけるショットキー接合部S1にも到達することができる。したがって、光検出素子1の感度の更なる向上が図られる。
【0058】
また、本実施形態では、絶縁膜15の屈折率が半導体層2の屈折率よりも小さくなっている。これにより、金属膜14の第1の部分14Aに光を閉じ込め易くなり、光吸収効率を一層向上できる。
【0059】
また、本実施形態では、金属膜14の厚さが20nm以上となっていてもよい。金属膜14の厚さが20nm以上である場合、金属膜14における光Lの有効吸収量が最大化され、光検出素子1の感度を向上できる。
【0060】
また、本実施形態では、半導体層2は、シリコンによって構成されている。これにより、安価な製造プロセスを実現でき、光検出素子1を安価に製造できる。金属膜14がアルミニウムを含んで構成される場合、シリコンプロセスによる金属膜14の製造容易性を確保できる。また、半導体層2に接する第1の膜と、当該第1の膜よりも屈折率が小さい第2の膜とを含む複数層の膜によって金属膜14を構成する場合、金属膜14において半導体層2との界面付近に光を閉じ込めることが可能となり、光吸収量を一層向上できる。
【0061】
また、本実施形態では、周期的凹凸構造11における凹部12は、平面視でマトリクス状の配置パターンを有しており、凹部12の横断面形状は、円形状となっている(
図3参照)。このように、マトリクス状の配置パターンを採用する場合、いずれの偏光方向の光Lも等しく表面プラズモンに変換される。したがって、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。また、凹部12の横断面形状として円形状を採用する場合、周期的凹凸構造11の周期性を光Lが感ずる面積が狭くなるために、広い波長範囲において表面プラズモンに変換される。したがって、広い波長範囲について光検出が可能となる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、半導体層2の表面2aにオーミック電極4及びショットキー電極5が設けられているが、オーミック電極4は、半導体層2の裏面2bに設けられていてもよい。この場合、入射面Fに対応してオーミック電極4に開口部を設けてもよく、光Lに対する透明性を有する材料によってオーミック電極4を形成してもよい。透明性を有する電極材料としては、例えば酸化インジウムスズなどが挙げられる。
【0063】
また、上記実施形態では、半導体層2の表面2aにオーミック電極4及びショットキー電極5が露出した状態となっているが、オーミック電極4及びショットキー電極5の表面に絶縁性の保護膜を形成してもよい。この場合、素子組立時の周期的凹凸構造11の保護、及びオーミック電極4の短絡防止といった技術的効果が得られる。さらに、入射面Fには、反射防止膜を設けてもよい。これにより、光Lの入射効率を向上できる。
【0064】
さらに、半導体層2を薄化し、検出領域を近赤外光〜可視光の範囲に拡大することも可能である。半導体層2の薄化に伴い、光検出素子1の小型化による応答速度の向上、入射面Fから入射した光Lの素子内での拡散距離が短くなることによる空間分解能の向上も図られる。半導体層2の薄化は、半導体層2の裏面2bの全体にわたってもよく、周期的凹凸構造11に対応する領域のみを薄化してもよい。前者の場合には、半導体層2の裏面2bにガラス基板を設ける構成としてもよい。
【0065】
更なる応用構造として、周期的凹凸構造11において、マトリクス状に配置された凹部12の行方向の配列ピッチと列方向の配列ピッチとを互いに異なるようにしてもよい。この場合、偏光方向の異なる2つの波長の光の検出が可能となる。また、半導体層2の表面2aに周期的凹凸構造11を複数設け、光検出素子1をアレイ化してもよい。この場合、周期的凹凸構造11毎に凹部12の配列ピッチを変えることで、複数の波長の検出が可能となり、光検出素子1を分光センサとして機能させることができる。
【0066】
また、上記実施形態では、周期的凹凸構造11において横断面形状が円形状の凹部12がマトリクス状に配置されているが、周期的凹凸構造11の配置パターンはこれに限られるものではない。例えば凹部12は、千鳥状の配置パターンを有していてもよい。また、例えば凹部12の横断面形状は、矩形状、三角形状などの他の形状であってもよい。凹部12の縦断面形状も、四角形状に限られず、台形状、三角形状などの他の形状であってもよい。凹部12の底面は、平坦面に限られず、凹状に湾曲或いは球形となっていてもよい。凹部の横断面形状として矩形状を採用する場合、周期的凹凸構造11の周期性を光Lが感ずる面積が広くなるために、特定の波長において強い表面プラズモンに変換される。したがって、特定の波長について高感度の光検出が可能となる。
【0067】
また、
図2では、凸部13の頂面に絶縁膜15を設ける構成を例示したが、
図8に示すように、周期的凹凸構造11の凸部13自体を絶縁膜15によって構成してもよい。この場合、光吸収の寄与が高い凹部12の底面領域がショットキー接合部S1となり、光検出素子1の感度を十分に確保できる。また、凸部13全体が非ショットキー接合部S2となるので、金属膜14の面積を拡大したとしても半導体層2と金属膜14とのショットキー接合面積の増加を回避でき、金属膜14の設計自由度を十分に確保できる。また、金属膜14と接する半導体層2の面と、絶縁膜15と接する半導体層2の面とがほぼ平坦となるため、格子欠陥を少なくすることが可能となり、暗電流を一層低減できる。なお、図示しないが、周期的凹凸構造11における凹部12の底面領域の高さが、半導体層2の表面2aと一致していてもよい。この場合、半導体層2の表面2aを平坦とすることができ、製造容易性を確保できる。
【0068】
また、
図9に示すように、周期的凹凸構造11における凹部12は、平面視でストライプ状の配置パターンを有していてもよい。ストライプ状の配置パターンを採用する場合、ストライプ状の配置パターンに対して電場ベクトルが直交する光Lのみが周期的凹凸構造11において強い表面プラズモンに変換される。したがって、一つの偏光方向について高感度な光検出が可能となる。
【0069】
なお、図示しないが、周期的凹凸構造11における凹部12は、平面視で同心円状の配置パターンを有していてもよく、平面視で同心多角形状の配置パターンを有していてもよい。同心円状の配置パターンを採用する場合、いずれの偏光方向の光Lも等しく表面プラズモンに変換される。したがって、偏光方向に依存しない光検出が可能となる。例えば同心四角形状の配置パターンを採用する場合、同心四角形状の配置パターンの各辺に対して電場ベクトルが直交する光Lのみが周期的凹凸構造11において強い表面プラズモンに変換される。したがって、二つの偏光方向について高感度な光検出が可能となる。
【0070】
また、上記実施形態では、絶縁膜15を用い、金属膜14が周期的凹凸構造11の全面を覆うように設けられているが、絶縁膜15を用いず、金属膜14は、凹部12の底面及び内壁面を覆う第1の部分14Aと、隣り合う凹部12,12の底面及び内壁面を覆う第1の部分14Aの一部同士を結ぶように凸部13の頂面側に設けられた第2の部分14Bとを有していてもよい。
【0071】
図10は、このような変形例に係る周期的凹凸構造の近傍の構成を示す要部拡大断面図である。また、
図11は、その平面図である。
図10(a)は、
図10におけるA−A線断面であり、
図10(b)は、
図11におけるB−B線断面である。
図10及び
図11に示すように、周期的凹凸構造21では、凹部12が平面視でストライプ状の配置パターンを有している。金属膜14の第1の部分14Aは、凹部12の底面及び内壁面を覆うように設けられている。これにより、凸部13の基端側にショットキー接合部S1が形成されている。
【0072】
一方、金属膜14の第2の部分14Bは、凸部13の頂面において凹部12の延在方向と略直交する向きに設けられ、隣り合う凹部12,12の底面及び内壁面を覆う第1の部分14Aの頂面同士を接続している。ここでは、第2の部分14Bは、凹部12の幅Dよりも幅広の帯状をなしている。第2の部分14Bの形成領域では、
図10(a)及び
図11に示すように、第2の部分14Bが凸部13の頂面を覆うように設けられ、凸部13の頂面と第2の部分14Bとの間でショットキー接合部S1が形成されている。第2の部分14Bの非形成領域では、
図10(b)及び
図11に示すように、凸部13の頂面が金属膜14から露出し、非ショットキー接合部S2が形成されている。
【0073】
この場合、絶縁膜15を省いた簡単な構成でショットキー接合部S1及び非ショットキー接合部を実現できる。
図11に示した構成では、隣り合う凹部12,12を覆う第1の部分14A,14A同士が、凹部12の幅Dよりも幅広の帯状をなす第2の部分14Bによって集中的に接続されているが、
図12に示すように、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを一定の間隔をもって複数設け、隣り合う凹部12,12を覆う第1の部分14A,14A同士を複数の第2の部分14Bによって分散して接続してもよい。
【0074】
また、
図11では、凹部12が平面視でストライプ状の配置パターンを有しているが、凹部12は、平面視で同心円状の配置パターンを有していてもよく、平面視で同心四角形状の配置パターンを有していてもよい。さらに、
図3に示したようなマトリクス状の配置パターンを有していてもよい。同心円状の配置パターンを採用する場合、例えば
図13に示すように、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅広の帯状をなす第2の部分14Bを同心円の中心から径方向の一方向に延在させてもよい。また、例えば
図14に示すように、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを同心円の中心から径方向の複数方向に延在させてもよい。
【0075】
同心四角形状の配置パターンを採用する場合、例えば
図15に示すように、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅広の帯状をなす第2の部分14Bを同心四角形の中心から一辺の中央部分にかけて延在させてもよい。また、例えば
図16に示すように、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを同心四角形の中心から四辺の中央部分にかけてそれぞれ延在させてもよい。
【0076】
マトリクス状の配置パターンを採用する場合、例えば
図17に示すように、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを各凹部12の中心を通るように格子状に設けてもよい。また、更なる変形として、例えば
図18に示すように、千鳥状の配置パターンを採用してもよい。この場合も、凹部12の底面及び内壁面を覆うように金属膜14の第1の部分14Aを設けると共に、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを各凹部12の中心を通るように格子状に設けてもよい。さらに、例えば
図19に示すように、絶縁膜15を組み合わせた構成を採用してもよい。この場合、凸部13の頂面に絶縁膜15を設けると共に、凹部12の内部全体に金属膜14の第1の部分14Aを設け、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす第2の部分14Bを各凹部12の中心を通るように格子状に設けてもよい。また、第2の部分14Bは、絶縁膜15の開口部分を介して凹部12の開口面で第1の部分14Aと接続すればよい。
【0077】
更なる変形例として、
図20に示すように、金属膜14の第1の部分14Aに凸部13の頂面よりも突出する突出部分14Cを設け、隣り合う突出部分14C,14C同士を結ぶように第2の部分14Bを凸部13の頂面から離間して設けてもよい。この場合の凹部12及び金属膜14の配置パターンは、
図11〜
図18に示した各パターンと同様のパターンを採り得る。このような構成によれば、第2の部分14Bが離間することによって凸部13の頂面に非ショットキー接合部S2が位置するため、金属膜14の第2の部分14Bの面積を拡大したとしても半導体層2と金属膜14とのショットキー接合面積の増加を回避できる。したがって、金属膜14の面積を十分に確保できるので、光検出素子1の電気抵抗の低減化が図られる。なお、
図10〜
図19に示した各形態においても、
図8に示したように、凸部13自体を絶縁膜15によって構成してもよい。
【0078】
また、凸部13の頂面に絶縁膜15を設ける構成に代えて、凸部13の頂面に半導体層2とオーミック接合するオーミック電極32を設ける構成としてもよい。この場合、オーミック電極4は省略可能である。
図21は、このような変形例に係る周期的凹凸構造の近傍の構成を示す要部拡大断面図である。また、
図22は、その平面図である。
図21及び
図22に示すように、周期的凹凸構造31では、凹部12が平面視でストライプ状の配置パターンを有している。金属膜14は、凹部12の底面及び内壁面のうち凸部13の頂面付近を除く部分を覆うように設けられている。これにより、凸部13の基端側にショットキー接合部S1が形成されている。
【0079】
一方、オーミック電極32は、隣り合う凹部12,12間に位置する凸部13の頂面にストライプ状のパターンで設けられている。オーミック電極32の厚さは、例えば凸部13の高さTよりも小さく、かつ絶縁膜3の厚さと同程度か僅かに小さい厚さとなっている。凹部12の内壁面のうち凸部13の頂面付近が金属膜14で覆われておらず、凸部13の頂面にオーミック電極32が設けられていることにより、凸部13の先端側に非ショットキー接合部S2が形成されている。このような構成によれば、凸部13の頂面に設けられたオーミック電極32での光Lの反射によって金属膜14での光吸収効率を向上できる。また、オーミック電極32が凸部13の頂面に位置することで、素子面積を低減できる。したがって、光検出素子1の小型化、高集積化が可能となる。
【0080】
図21及び
図22に示す例では、金属膜14は、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす連結部分33を有している。連結部分33は、周期的凹凸構造31の一端側において凹部12の延在方向と交差する向きに設けられている。この連結部分33により、隣り合う凹部12,12内の金属膜14,14が連結されている。また、オーミック電極32は、凹部12の幅Dよりも幅狭の帯状をなす連結部分34を有している。連結部分34は、周期的凹凸構造31の他端側において凹部12の延在方向と交差する向きに設けられている。この連結部分34により、凹部12を挟んで隣り合うオーミック電極32,32が連結されている。この形態は、例えば
図23に示すように、凹部12が平面視でマトリクス状の配置パターンを有する場合にも適用可能である。
【0081】
更なる変形例として、例えば
図24及び
図25に示すように、絶縁膜35を組み合わせた構成を採用してもよい。この例では、金属膜14の連結部分33は、凹部12の延在方向と交差する向きに一定の間隔で複数設けられている。また、連結部分33の形成位置では、凸部13の頂面に設けられたオーミック電極32を覆うように絶縁膜15が形成されている。オーミック電極32の連結部分34(
図25参照)は、金属膜14の連結部分33と交互になるように、凹部12の延在方向と交差する向きに一定の間隔で複数設けられている。この形態も、例えば
図26に示すように、凹部12が平面視でマトリクス状の配置パターンを有する場合にも適用可能である。
【0082】
なお、上記実施形態では、半導体層の裏面に光の入射面を有する裏面入射型の光検出素子を例示しているが、本発明は、半導体層の表面に光の入射面を有する表面入射型の有する表面入射型の光検出素子に適用することもできる。