(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面が開口し養液を貯留しうる栽培槽、および、前記栽培槽の両側に沿って配置され前記栽培槽の長手方向に延びる一対のレールを含む栽培棚に、前記栽培槽に載置された状態で前記一対のレールの両外側に延びる張出部が形成されている定植板を移載する移載装置であって、
前記定植板の前記栽培槽に載置された場合の前記レールの延びる方向である進退方向の長さより長く、前記一対のレールの幅より広い間隔で互いに前記レールに平行に保持される2本のフォーク部材を含み、該2本のフォーク部材で前記定植板を前記張出部で支持しうる移載フォークと、
前記移載フォークで前記定植板を支持した状態で、前記移載フォークを前記レールの延びる方向に進退可能に支持するフォーク支持部と、
前記移載フォークで前記定植板を支持した状態で、前記移載フォークを昇降可能に支持する昇降支持部と、
前記移載フォークを前記進退方向に移動する進退駆動部と、
前記移載フォークを昇降方向に移動する昇降駆動部と、を備え、
前記移載フォークは、前記移載フォークに支持された前記定植板が前記栽培槽の上を通過しうる前進高さで、前記移載フォークに支持された前記定植板の前縁より前で、前記栽培槽に載置されている前記定植板の前記張出部に、前記移載フォークの前進方向に当接しうる突き押し部を、有し、
前記移載フォークは、前記前進高さ以下で、前記栽培槽および前記一対のレールに干渉することなく、進退および昇降が可能である、
移載装置。
前記昇降駆動部は、前記一対のレールに載置された前記定植板の前記張出部の下面より前記移載フォークの上面が低い後退高さと、前記前進高さとの間で、前記移載フォークを昇降方向に移動し、
前記進退駆動部は、前記移載フォークに支持された前記定植板の前縁が前記栽培槽より手前の後退位置と、前記移載フォークに支持された前記定植板の後縁が前記栽培槽の上面の範囲に入る前進位置との間で、前記移載フォークを進退方向に移動する、
請求項1に記載の移載装置。
上面が開口し養液を貯留しうる栽培槽、および、前記栽培槽の両側に沿って配置され前記栽培槽の長手方向に延びる一対のレールを含む、少なくとも1段の栽培棚を有する栽培ラックと、
請求項1から3のいずれか1項に記載の移載装置と、
前記栽培槽に載置された状態で、
前記栽培槽の上に位置する定植領域と、
前記一対のレールの上面で支持される支持領域と、
前記一対のレールの両外側に延び、下から支持され得る張出部と、
を有する、前記栽培槽の上面を覆う数の定植板と、
を備える栽培システム。
【背景技術】
【0002】
近年、土を使わずに肥料分を含む養液を用いて、水耕栽培で植物を生産することが行われている。水耕栽培で植物を生産する栽培システムでは、養液を貯留する栽培槽の上に、植物が植えられた定植板を載せ、照明装置で光を当てて生育する。そして、植物が生長したのち、定植板を栽培槽から降ろして収穫する。通常、栽培槽の一方の端から生育前の植物が植えられた定植板を載せ、栽培槽の上を順に移動させて、栽培槽の他方の端から、植物が生長した後の定植板を降ろして収穫する。栽培システムは多数の栽培槽を有するので、コンベアで供給される定植板を栽培槽に載せるのに、移載装置が使われている。
【0003】
例えば、特許文献1の培養システムは、培養液を収容する複数の培養槽が垂直方向に並設された培養棚と、培養棚に対して一方の端部近傍に配置され、培養槽に収容された場合に培養液に接し培養される生物が保持された培養器を、複数の培養槽の少なくとも1つに搬入する搬入装置と、を備える。搬入装置は、培養槽の高さまで培養器を持ち上げる垂直移動機構と、収容されるべき培養槽に収容された複数の培養器において、少なくとも1つの培養器を一方の端部側から略水平方向に押すことによって、複数の培養器を一方の端部とは反対側の他方の端部に向けて当接させてスライドさせる水平移動機構と、を備える。
【0004】
特許文献1の培養システムでは、段落0032−0033に記載されているように、搬出側で、水平移動機構である保持部を培養液中に移動させ培養器に向けて水平移動する。培養器を持ち上げ可能な位置まで移動した後、培養器を垂直方向に持ち上げることによって、培養液から取り出す。搬入側では、搬入装置の保持部が培養器を培養液中に移動させ、押部が培養器を水平方向に押してスライドさせる。押部は、最も搬入装置寄りの培養器を押すことによって、培養槽に収容された複数の培養器全体を略水平方向に押す。これによって、1つの培養槽に収容された培養器が、まとめて反対側の端部に向けて当接させてスライドさせられる。培養器が位置決め部まで移動させられた後、保持部が水面下に下ろされることによって、培養器が培養液上に浮かんだ状態となる。次に、保持部を搬入装置に向けて水平に移動させて、培養器から離す。
【0005】
特許文献2の移載装置は、植物が定植された定植板を保持する保持部と、保持部に保持された定植板を移載先に移載する移載部とを備える。保持部は、複数の定植板を保持可能に構成されている。移載装置は、段落0035−0038に記載されているように、定植板を挟持部で挟持した状態でパレットから持ち上げ、育成ラックの載置板上に降ろす。載置した定植板から挟持部を離し、挟持部とは別の伸縮アームの押圧片で、載置板上の定植板を育成ラック内の収容部に押し込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の培養システムでは、培養器を培養槽から搬出するときに、培養器以上の大きさの保持部を培養液の中に降ろす領域が培養槽に必要である。また、培養器を培養槽に搬入するときにも、培養器を培養槽に降ろしたのちに保持部を培養液から引き上げるための領域が培養槽に必要である。培養棚のうち、保持部を培養液に降ろす領域、および、保持部を培養液から引き上げる領域は、生物の培養には貢献しない領域である。
【0008】
特許文献2の移載装置では、育成ラックの載置板は、定植板が収容部に収容される前に一時的に載置される場所で、載置板は植物の生育目的には使用されない。
【0009】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、定植板を移載するためにのみ用いられる領域を栽培棚から省くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る移載装置は、
上面が開口し養液(例えば養液56)を貯留しうる栽培槽(例えば栽培槽52)、および、前記栽培槽の両側に沿って配置され前記栽培槽の長手方向に延びる一対のレール(例えばレール53)を含む栽培棚(例えば栽培棚51)に、前記栽培槽に載置された状態で前記一対のレールの両外側に延びる張出部(例えば張出部63)が形成されている定植板(例えば定植板6)を移載する移載装置(例えば移載装置1)であって、
前記定植板の前記栽培槽に載置された場合の前記レールの延びる方向である進退方向の長さより長く、前記一対のレールの幅より広い間隔で互いに前記レールに平行に保持される2本のフォーク部材(例えばフォーク部材11)を含み、該2本のフォーク部材で前記定植板を前記張出部で支持しうる移載フォーク(例えば移載フォーク10)と、
前記移載フォークで前記定植板を支持した状態で、前記移載フォークを前記レールの延びる方向に進退可能に支持するフォーク支持部(例えばテレスコピックスライドレール2)と、
前記移載フォークで前記定植板を支持した状態で、前記移載フォークを昇降可能に支持する昇降支持部(例えば、マスト44および荷台47)と、
前記移載フォークを前記進退方向に移動する進退駆動部(例えば、進退駆動モータ3および進退駆動軸30)と、
前記移載フォーク
を昇降方向に移動する昇降駆動部(例えば昇降装置48)と、を備え、
前記移載フォークは、前記移載フォークに支持された前記定植板が前記栽培槽の上を通過しうる前進高さで、前記移載フォークに支持された前記定植板の前縁より前で、前記栽培槽に載置されている前記定植板の前記張出部に、前記移載フォークの前進方向に当接しうる突き押し部(例えば突き押し部12)を、有し、
前記移載フォークは、前記前進高さ以下で、前記栽培槽および前記一対のレールに干渉することなく、進退および昇降が可能である。
【0011】
好ましくは、前記昇降駆動部は、前記一対のレールに載置された前記定植板の前記張出部の下面より前記移載フォークの上面が低い後退高さと、前記前進高さとの間で、前記移載フォークを昇降方向に移動し、
前記進退駆動部は、前記移載フォークに支持された前記定植板の前縁が前記栽培槽より手前の後退位置と、前記移載フォークに支持された前記定植板の後縁が前記栽培槽の上面の範囲に入る前進位置との間で、前記移載フォークを進退方向に移動する。
【0012】
好ましくは、前記移載フォーク、前記フォーク支持部および前記進退駆動部は、前記栽培棚の前に設置されたスタッカクレーン(例えばスタッカクレーン4)の荷台(例えば荷台47)に配置され、
前記スタッカクレーンの前記荷台、および前記荷台を昇降可能に支持するマスト(例えばマスト44)は、前記昇降支持部であり、
前記スタッカクレーンの前記荷台を昇降する昇降装置(例えば昇降装置48)は、前記昇降駆動部である。
【0015】
本発明の第
2の観点に係る栽培システムは、
上面が開口し養液(例えば養液56)を貯留しうる栽培槽(例えば栽培槽52)、および、前記栽培槽の両側に沿って配置され前記栽培槽の長手方向に延びる一対のレール(例えばレール53)を含む、少なくとも1段の栽培棚(例えば栽培棚51)を有する栽培ラック(例えば、栽培ラックユニット50または栽培ラック5)と、
第1の観点に係る移載装置(例えば移載装置1)と、
前記栽培槽に載置された状態で、
前記栽培槽の上に位置する定植領域(例えば定植領域61)と、
前記一対のレールの上面で支持される支持領域(例えば支持領域62)と、
前記一対のレールの両外側に延び、下から支持され得る張出部(例えば張出部63)と、
を有する、前記栽培槽の上面を覆う数
の定植板(例えば定植板6)と、
を備える。
好ましくは、前記張出部に最も近い定植位置に植えられた、前記定植板の対象の植物(例えば植物7)は、生長した場合に前記張出部の上に広がる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、移載フォークは、移載フォークに支持された定植板が栽培槽の上を通過しうる前進高さで、移載フォークに支持された定植板の前縁より前で、栽培槽に載置されている定植板の張出部に、移載フォークの前進方向に当接しうる突き押し部を、有し、移載フォークは、前進高さ以下で、栽培槽およびレールに干渉することなく、進退および昇降が可能であるので、定植板を移載するためにのみ用いられる領域を栽培棚から省くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。本発明の図面では、図の煩雑を避け理解を容易にするために、汎用の機械要素の詳細および締結部材を省略している。それらは周知の技術を用いて実施できる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る移載装置の斜視図である。移載装置1は、スタッカクレーン4の荷台47に配置された移載フォーク10、テレスコピックスライドレール2、進退駆動モータ3および進退駆動軸30、ならびに、スタッカクレーン4の荷台47、マスト44および昇降装置48から構成される。
図1の座標軸で示すように、スタッカクレーン4の走行する方向をX軸、荷台47の昇降する方向をZ軸、X軸およびZ軸に直交する方向をY軸とする。X軸正方向を右、X軸負方向を左、Y軸正方向を前進方向または前方、Y軸負方向を後退方向または後方ともいう。Z軸正方向を上、Z軸負方向を下とする。
【0020】
スタッカクレーン4の荷台47には、2本のテレスコピックスライドレール2が、Y軸方向にスライドするように互いに平行に向かい合って固定されている。テレスコピックスライドレール2は、固定側スライダー21、中間プレート22および移動スライダー23から構成されている。固定側スライダー21は荷台47に固定されている。固定側スライダー21に対して、中間プレート22および移動スライダー23は、Y軸方向にスライド可能に支持されている。中間プレート22を進退方向に移動することによって、移動スライダー23を進退方向に移動することができる。移動スライダー23は、中間プレート22が変位する長さの2倍の長さ、進退方向に変位する。
【0021】
移載フォーク10は、互いに平行に配置される2本のフォーク部材11からなり、フォーク部材11はそれぞれ、テレスコピックスライドレール2の移動スライダに固定されている。移載フォーク10の上面に、栽培槽に移載される定植板が載せられ、移載フォーク10は定植板を支持する。移載フォーク10の上面には、定植板がずれないように、定植板の各辺に係合する突起が設けられていることが望ましい。テレスコピックスライドレール2は、移載フォーク10を進退方向に移動可能に支持するフォーク支持部である。
【0022】
2本のテレスコピックスライドレール2の中間プレート22にはそれぞれ下側に、図示しないラックが固定されており、ラックは図示しないピニオンに噛み合っている。2つのピニオンは1つの進退駆動軸30に固定されており、進退駆動軸30は進退駆動モータ3で回転する。2つのピニオンは同時に同じ向きに回転するので、2本のフォーク部材11はそろって前後に移動する。進退駆動モータ3および進退駆動軸30は、移載フォーク10を進退方向に駆動する進退駆動部である。
【0023】
スタッカクレーン4の走行台42は、X軸方向に延びる走行レール41の上をX軸方向に走行可能である。走行台42には2本のマスト44が垂直に固定されている。2本のマスト44の上部は、図示しない上部フレームで連結されている。上部フレームは、走行レール41に平行に設置されている走行ガイドレールに、X軸方向に移動可能に支持されている。走行台42は、走行装置43によって、走行レール41の上を走行する。
【0024】
スタッカクレーン4の荷台47は、マスト44に対して前後方向および左右方向には変位せず、上下方向に昇降可能にマスト44に支持されている。荷台47には、図示しないワイヤーロープまたはベルトが接続され、ワイヤーロープまたはベルトは、マスト44の上部に回転可能に支持されているシーブに掛け回されて、昇降装置48の回転ドラムに巻かれている。昇降装置48がワイヤーロープまたはベルトを巻き取り、または、繰り出すことによって、荷台47は昇降する。スタッカクレーン4の荷台47およびマスト44は、移載フォーク10を昇降可能に支持する昇降支持部である。また、スタッカクレーン4の昇降装置48は、移載フォーク10を昇降方向に移動する昇降駆動部である。
【0025】
図2は、実施の形態に係る栽培システムの正面図である。栽培システム8は、栽培ラック5とスタッカクレーン4、および
図2では省略されている移載フォーク10を備える。
図2では、スタッカクレーン4の2本のマスト44が上部フレーム45で連結され、走行ガイドレール46に支持されていることが示されている。
図2では、走行レール41および走行ガイドレール46の一部が省略されている。
【0026】
栽培ラック5は、上下に配置されている複数の栽培棚51をそれぞれ有する複数の栽培ラックユニット50が、X軸の方向に配列された構造体である。栽培棚51はそれぞれ、養液を貯留しうる栽培槽52、および、栽培槽52の両側に沿って配置され栽培槽52の長手方向(Y軸方向)に延びる一対のレール53を含む。栽培槽52の上にはそれぞれ、植物に光を照射する照明装置55が配置されている。
図2では、煩雑を避けるため、一部の栽培棚51にのみ栽培槽52、レール53および照明装置55を表示している。
【0027】
スタッカクレーン4の手前に、図示しないコンベアが配置されており、栽培対象の植物が定植された定植板がコンベアで供給される。例えば、定植板が載せられたパレットが、コンベアでスタッカクレーン4の手前に供給される。移載装置1は、例えば、
図1に示す移載フォーク10を後方にスライドさせて、パレット上の定植板の下に後退させ、スタッカクレーン4の荷台47を上昇させて移載フォーク10で定植板を支持し、移載フォーク10を元の荷台47の上にスライドさせることによって、定植板を移載フォーク10の上に移動する。あるいは、図示しない把持装置でパレット上の定植板が、スタッカクレーン4の荷台47に配置された移載フォーク10の上に移動されてもよい。
【0028】
移載フォーク10の上に定植板が移動されると、スタッカクレーン4は、定植板を移載する目的の栽培棚51がある栽培ラックユニット50の前に走行し、目的の栽培棚51の高さに荷台47を昇降させる。移載装置1は、支持している定植板を、目的の栽培棚51の栽培槽52の上に移載する。
【0029】
図3は、実施の形態に係る栽培棚の平面図である。栽培槽52およびレール53の上に、栽培槽52の全体を重複なく覆うように、定植板6が載置される。
図3は、移載フォーク10を前進させて、移載フォーク10で支持している定植板6を栽培槽52の上に移動した状態を示す。この移動に先立って、栽培槽52の奥の端にあった定植板6が、栽培槽52の上から搬出されている。
【0030】
定植板6は、栽培槽52に載置された状態で、栽培槽52の上に位置する定植領域61と、一対のレール53の上面で支持される支持領域62と、一対のレール53の両外側に延びる張出部63と、を備える。移載フォーク10の2本のフォーク部材11は、それぞれが定植板6のレールの延びる方向である進退方向の長さより長く、一対のレール53の幅より広い間隔で互いにレール53に平行に保持されている。
図1に示すように、移載フォーク10のフォーク部材11はそれぞれ先端に、移載フォーク10で支持されている定植板6が栽培槽52の上を通過しうる前進高さで、栽培槽52に載置されている定植板6の張出部63に、移載フォーク10の前進方向に当接しうる突き押し部12を有する。
【0031】
移載フォーク10で支持している定植板6が栽培槽52の上を通過し、かつ、突き押し部12が栽培槽52に載置されている手前の定植板6の張出部63に当接する前進高さに、移載フォーク10を保持した状態で移載フォーク10を前進させると、栽培槽52の上に載置されている定植板6は移載フォーク10に押されて、まとめて栽培槽52の奥の端に向かって移動する。そのまま移載フォーク10を前進させると、栽培槽52の移載装置1の側に1枚の定植板6を載置するスペースを空けることができる。
図3はこの状態を示している。
【0032】
図示しないが、栽培槽52の手前側の壁と奥の側の壁は、レール53の上面より高い突起が形成されているか、または、壁全体がレール53の上面より高くなっており、レール53に支持されている定植板6は、栽培槽52の範囲を超えて移動しないようになっている。栽培槽52の範囲を超えて定植板6が移動するのを規制する突起を、レール53に形成してもよい。
【0033】
移載フォーク10で定植板6を支持し、前進高さで移載フォーク10を前進させ、栽培槽52の上に載置されている手前の定植板6の張出部63に突き押し部12を当接させて、さらに前進させる。そして、定植板6をまとめて移動させて、栽培槽52の移載装置1の側に1枚の定植板6を載置するスペースを空ける。移載フォーク10で支持している定植板6の後縁が栽培槽52の上面の範囲に入る前進位置まで移動したところで、移載フォーク10を下降させれば、支持している定植板6を栽培槽52に載置できる。定植板6が栽培槽52に載置された状態で、張出部63のY軸方向の長さは、定植領域61のY軸方向の長さより短い。隣り合う定植板6の張出部63どうしの間に隙間があるので、移載フォーク10で支持している定植板6を、先行する定植板6との間に隙間なく栽培槽52に下ろすことができる。
【0034】
移載フォーク10で支持していた定植板6を栽培槽52に載せたのち、栽培槽52に載置された定植板6に移載フォーク10が進退方向に干渉しない後退高さまで移載フォーク10を下降させて、移載フォーク10を後退させることができる。定植板6を移載すると、栽培槽52は全体が定植板6で覆われる。栽培槽52の上面全体に光を照射することによって、栽培槽52全体を栽培領域にできる。栽培槽52には、定植板6を移載するためにのみ用いられる領域は必要ない。
【0035】
図4は、
図3のIV−IV線断面図である。
図4では、移載フォーク10のフォーク部材11で支持されている定植板6が、栽培槽52の上を通過しうる高さであることが示されている。
図4では、定植板6に定植された植物が省略されている。定植板6が栽培槽52の上を通過しうる前進高さは、定植板6に定植された植物の根が栽培槽52で傷つかない高さである。栽培槽52には養液56が貯留されている。栽培槽52の両側に一対のレール53が配置されている。一対のレール53の外側には、栽培槽52に載置された定植板6が左右方向に逸脱しないように、ガード54が設けられている。
【0036】
定植板6が栽培槽52に載置された状態で、定植板6の栽培槽52の上に位置する部分が定植領域61であり、一対のレール53の上面で支持される部分が支持領域62である。定植板6には、一対のレール53の両外側に延びる張出部63が形成されている。移載フォーク10は、定植板6を張出部63で支持する。移載フォーク10の先端は、
図1に示すように、突き押し部12になっており、栽培槽52に載置された手前の定植板6の張出部63に、前進方向に当接する。
【0037】
レール53の上面と、定植板6の支持領域62の下面とは、互いにすべりやすい材質で形成されている。移載フォーク10の突き押し部12で、栽培槽52に載置されている定植板6をまとめて、レール53の上を滑らせて移動することができる。
【0038】
図5は、実施の形態に係る移載装置の動作を表す概念図である。
図5では、定植板6およびフォーク部材11の細部が省略されている。コンベアで供給された定植板6を、移載フォーク10の上に移動したのち、スタッカクレーン4の荷台47を昇降させて、
図5(a)に示すように、移載フォーク10のフォーク部材11で支持されている定植板6が、栽培槽52の上を通過し、かつ、突き押し部12が栽培槽52に載置されている定植板6の張出部63に当接する前進高さに、移載フォーク10を合わせる。この状態では、移載フォーク10は後退位置にあり、移載フォーク10に支持されている定植板6の前縁は、栽培槽52の手前に位置する。
【0039】
移載フォーク10を前進高さに維持したまま、移載フォーク10を前進させて、
図5(b)に示すように、栽培槽52に載置されている手前の定植板6に突き押し部12を当接させる。さらに、
図5(c)に示すように、移載フォーク10で支持している定植板6の後縁が栽培槽52の上面の範囲に入る前進位置まで移載フォーク10を前進させる。
【0040】
前進位置で、スタッカクレーン4の荷台47を下降させ、
図5(d)に示すように、移載フォーク10で支持している定植板6の支持部をレール53に接触させる。さらに荷台47を下降させて、
図5(e)に示す、レール53に載置された定植板6の張出部63の下面より移載フォーク10の上面が低い後退高さに移載フォーク10を下げる。フォーク部材11の間隔は、一対のレール53の幅より大きいので、移載フォーク10を下降させるとき、移載フォーク10はレール53に干渉しない。後退高さでは、移載フォーク10は栽培槽52およびレール53に干渉することなく、進退可能である。
図5(f)に示すように、後退高さで移載フォーク10を後退させて、定植板6の移載動作を完了する。
【0041】
図5に示すように、実施の形態の移載装置1によれば、(1)後退位置での前進高さへの昇降、(2)前進高さでの後退位置から前進位置までの前進、(3)前進位置での前進高さから後退高さまでの下降、(4)後退高さでの前進位置から後退位置への後退、の4つのストロークで定植板6を栽培棚51に移載できる。それに対して、特許文献1の培養システムでは、移載動作は、保持部の昇降、前進1、下降1、前進2、(開放)、下降2、後退1、上昇、後退2の8動作である。特許文献2の移載装置では、移載動作は、挟持部の上昇、前進、下降、後退、伸縮アームの上昇、前進、後退の7動作である。
【0042】
移載装置1は、栽培棚51から植物が生長した定植板6を取り出すことにも使用できる。
図6は、搬出側における移載装置の動作を表す概念図である。移載装置1は、
図2の背面側である、栽培ラック5の取り出し側に配置される。定植板6を取り出す場合は、突き押し部12は使用されない。一旦取り出した定植板6を栽培棚51に戻す場合を考慮して、移載フォーク10は栽培ラック5の前面に配置される場合の逆に、Y軸負方向の側に突き押し部12を向けている。
【0043】
まず、
図6(a)に示すように、スタッカクレーン4の荷台47を昇降させて、栽培槽52に対して移載フォーク10を後退高さに合わせる。後退高さを維持して、移載フォーク10を栽培槽52の側にスライドし、
図6(b)に示す、栽培槽52の奥の端に位置する定植板6の下まで荷台47から進出させる。その進出位置で荷台47を上昇させ、
図6(c)に示すように、移載フォーク10を定植板6の張出部63に接触させ、さらに上昇させて、
図6(d)に示すように、移載フォーク10を定植板6が栽培槽52の上を通過しうる前進高さに持ち上げる。
【0044】
移載フォーク10を前進高さに維持して、
図6(e)に示すように、移載フォーク10を荷台47にスライドさせて、定植板6を栽培棚51から取り出す。荷台47を搬出側のコンベアの位置に移動し、移載フォーク10を荷台47の栽培槽52とは反対側にスライドさせ、荷台を下降させることによって、移載フォーク10で支持している定植板6を、コンベア上のパレットに降ろすことができる。
【0045】
以上説明したように、実施の形態の移載装置1によれば、定植板6を栽培棚51に搬入する場合にも、栽培棚51から搬出する場合にも、定植板6を移載するためにのみ用いられる領域を栽培棚51から省くことができる。
【0046】
定植板6には、レール53の外側に延びる張出部63が形成されるが、張出部63も定植された植物の生育に利用できる。
図7は、実施の形態において植物が生長した状態を示す概念図である。
図7は、栽培槽52の取り出し側の断面図である。張出部63に最も近い定植位置に植えられた、定植板6の対象の植物7は、生長した場合に張出部63の上に広がることができる。
【0047】
レタスなど葉物野菜である植物7の栽培において、葉71は成長によって3次元的に広がり、偏りのない形状とすることが商品価値であるが、根72の伸び方は葉71より小さく、養液56中で流動性があるため、偏って伸びることができる。張出部63の近傍に配置された植物7は、成長に伴って葉71を張出部63の上にも伸ばし、根72は水槽壁のない方向へ偏って伸ばすことで、成長が阻害されることはない。実施の形態の移載装置1および定植板6によれば、栽培棚51の空間効率を低下させることなく、定植板6を移載するためにのみ用いられる領域を栽培棚51から省くことができる。
【0048】
実施の形態で説明した、フォーク支持部、進退駆動部、昇降支持部および昇降駆動部は例であって、説明したテレスコピックスライドレール2、ラック&ピニオン、スタッカクレーン4のマスト44と荷台47、および、昇降装置48に限定されない。フォーク支持部として、例えば、リニアレールとスライダー、あるいは、リニアシャフトとリニアブッシュを用いることができる。
【0049】
なお、テレスコピックスライドレール2では、固定側スライダー21のY軸正方向だけでなく、Y軸負方向にも中間プレート22および移動スライダー23を移動させることができる。そのため、前述したように、移載フォーク10をコンベア上のパレットに載せられた定植板6を持ち上げたり、栽培棚51から取り出した定植板6を、コンベア上のパレットに降ろしたりできる。
【0050】
移載フォーク10の進退駆動部としては、ラック&ピニオンに代えて、例えば、ボールねじ、チェーンとチェーンホイール、歯付ベルトと歯車、または、ワイヤーロープとプーリなどを用いることができる。いずれも、左右のテレスコピックスライドレール2の中間プレート22またはフォーク部材11を連結して、1箇所で進退方向に駆動することもできる。実施の形態のように、左右の中間プレート22、移動スライダー23またはフォーク部材11を互いに連結せずに、左右のテレスコピックスライドレール2をそれぞれ駆動する場合は、左右のスライダーを厳密に平行にしなくても進退方向に駆動できる。
【0051】
実施の形態では、スタッカクレーン4を移載フォーク10の昇降支持部および昇降駆動部として用いたが、別の昇降支持部および昇降駆動部をスタッカクレーン4の荷台47に設けることもできる。昇降支持部としては、例えば、リニアシャフトとリニアブッシュ、または、リニアレールとスライダーを用いることができる。昇降駆動部として、例えば、ラック&ピニオン、ボールねじ、歯付ベルトと歯車、または、エアシリンダなどを用いることができる。