【実施例1】
【0023】
図1を参照し、アキュムレータ1は、ハウジング2内に設けられるベローズ10が液圧に応じて伸縮動作するものであり、例えば自動車用油圧システム、産業機器用油圧システム等において、蓄圧装置、脈動減衰装置等として用いられる。以下、アキュムレータ1のオイルポート側を下側とし、またガス封入口側を上側として説明する。
【0024】
ハウジング2は、両端が開放する円筒状のシェル3と、シェル3の下端を閉塞するように溶接固定されるオイルポート部材4と、シェル3の上端を閉塞するように溶接固定されるガス封入部材5と、から構成されている。
【0025】
ガス封入部材5には、ハウジング2内に形成されるガス室Gに高圧ガス(例えば窒素ガス)を注入するためのガス封入口5aが設けられている。ガス封入口5aは、高圧ガスの注入後にガスプラグ5bにより閉塞される。
【0026】
オイルポート部材4には、ハウジング2内に図示しない圧力配管から液体(例えば作動油)の流出入を行うための液体出入路4aが設けられている。
【0027】
ステー6は、底板部6aの中央に貫通孔6bが設けられたカップ形状とされており、オイルポート部材4に液密に溶接固定されている。
【0028】
詳細は後述するベローズ10は、その上端がベローズキャップ7に液密に溶接固定されるとともにその下端がオイルポート部材4に液密に溶接固定されている。円盤状のベローズキャップ7には保護リング7aが取り付けられており、シェル3の内壁面3aに対して直接ベローズ10が接触しないように保護されており、ベローズ10は滑らかに伸縮作動できるようになっている。
【0029】
また、ベローズキャップ7の下部にはシールホルダ7bにより円盤状のシール部材8が取付け固定されている。シール部材8は、金属製で円盤状を成す基材8aの表面の一部または全部にゴム状弾性体8bを加硫接着させることにより構成されている。
【0030】
ハウジング2の内部空間は、ベローズ10及びベローズキャップ7によりガス室Gと液室Lとに密閉状態に仕切られた構造となっている。ベローズ10及びベローズキャップ7の外側に形成されたガス室Gには、ガス封入口5aから注入される高圧ガスが封入されている。また、ベローズ10及びベローズキャップ7の内側に形成された液室Lには、液体出入路4aを介して圧力配管から液体が流出入するようになっている。
【0031】
アキュムレータ1は、ハウジング2内に設けられるベローズ10の伸縮作動により、ベローズキャップ7を所定位置に移動させてガス室Gのガス圧と液室Lの液圧とを均衡させて圧力調整を行っている。
【0032】
詳細には、圧力配管内の液体の圧力が低下すると、ベローズキャップ7はガス室Gのガス圧を受けて下方に移動しベローズ10は圧縮され、ベローズキャップ7に取付けられたシール部材8とステー6の外面6cとが密接して環状のシール部Sを形成し、液体出入路4a側は閉塞される(
図1の左側を参照。この状態を「ゼロダウン状態」と称する。)。これにより、液室L内に一部の液体、詳しくはベローズ10内面とステー6外面との間の液体がシール部Sによって閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力とガス室Gのガス圧とが均衡するため、ベローズ10に過度な差圧による応力がかかることがなくなり、ベローズ10は破損しにくくなっている。
【0033】
一方、圧力配管内の液体の圧力が上昇すると、液室Lの液圧を受けて、ベローズキャップ7に取付けられたシール部材8はステー6の外面6cから離間し、ベローズキャップ7は上方に移動しベローズ10は伸長され、ガス圧と液圧とが均衡した位置に保持される(
図1の右側を参照)。
【0034】
次にベローズ10について説明する。
図2は、ベローズ10が伸長も収縮もしていない組み込み初期における自由長状態を示すもので、ベローズ10は、軸方向視で環状を呈し、外径側に位置する断面U字状の山部10Aと内径側に位置する断面U字状の谷部10Bとが、腹部20,30を介して繰り返し形成される蛇腹形状である。山部10Aの曲率半径は谷部10Bの曲率半径よりも小さく形成されている。
【0035】
また、山部10Aは隣接する両側の谷部10B,10Bの軸方向のピッチPの中央に対して
図2の下方にオフセットされた位置に位置するように形成されている。このベローズ10の波形形状を「アーチ型」と称す。以降、オフセット方向を下方、オフセットとは反対方向を上方と称す。
【0036】
次に腹部20,30について説明する。
図2に示すように上方の腹部20は、山部10A側から谷部10B側に向けて順に、上方に傾斜する直線状の外径側部21、外径側部21に変曲点I21で上方に(
図2において反時計回りに)屈曲しなだらかに連なる直線状の傾斜部22、傾斜部22に変曲点I22で下方に(
図2において時計回りに)屈曲しなだらかに連なり内径側にむけて僅かに上方に延びる直線状の中間部23、及び中間部23に変曲点I23で上方に凸屈曲する形状の内径側部24から形成されている。更に中間部23は、山部10A側から谷部10B側に向けて順に、第1中間部23A、第2中間部23B、及び第3中間部23Cから形成されている。
【0037】
また、下方の腹部30は、山部10A側から谷部10B側に向けて順に、直線状の外径側部31、外径側部31に変曲点I31で上方に屈曲しなだらかに連なる直線状の傾斜部32、傾斜部32に変曲点I32で下方に屈曲しなだらかに連なり外径側部31と平行に延びる直線の中間部33、及び中間部33に変曲点I23で下方になだらかに連なる直線状の内径側部34から形成されている。更に外径側部31は、山部10A側から谷部10B側に向けて順に、第1外径側部31A、及び第2外径側部31Bから形成されている。
【0038】
このように、腹部20,30において、外径側部21,31は互いに平行に形成されており、中間部23,33はその離間距離は内径側に向かうにつれて漸増しており、傾斜部22,32は外径側部21,21に対し同じ方向に略45度傾斜するとともに互いに平行に形成されており、内径側部24,34は谷部10B,10Bに向けて漸次遠ざかるように形成されている。
【0039】
また、山部10Aは180度折り返して断面U字状に形成されており、詳しくは断面半円弧状に形成された外径側先端部10aの両端に外径側部21,31がそれぞれ連続している。また、谷部10Bは略150度折り返してやや開いた断面U字状に形成されており、詳しくは断面円弧状に形成された内径側先端部10bの両端に内径側部24,34がそれぞれ連続している。
【0040】
また、変曲点I31は変曲点I21及び変曲点I22よりも内径側に、変曲点I32は変曲点I22よりも内径側に、変曲点I33は変曲点I23よりも外径側に形成されている。
【0041】
また、傾斜部22、第1中間部23A、傾斜部32及び第2外径側部31Bにより、断面略菱形の環状空間Rが画成されている。言い換えると、傾斜部22と第1中間部23Aにより形成される腹部20の折曲部と、この腹部20の折曲部よりもその段差が内径側に配置される第2外径側部31Bと傾斜部32とにより形成される折曲部とにより、環状空間Rが画成されている。
【0042】
なお、変曲点I33はベローズ10の有効径d(ベローズ外径/2+ベローズ内径/2)上に略位置しているが、これに限られない。少なくとも環状空間Rが有効径dよりも外径側に形成されていればよい。
【0043】
ここで、山部10Aに繋がる両方の腹部20,30の延在方向に沿って山部10Aから変曲点I21までの区間を第1部位α、変曲点I21から変曲点I32までの区間を第2部位β、変曲点I32から変曲点I33までの区間を第3部位γ、変曲点I33から谷部10B,10Bまでの区間を第4部位δと称する。
【0044】
すなわち、山部10Aに繋がる両方の腹部20,30は、山部10A側から隣接する谷部10B,10Bに向けて順に円滑に連なる第1部位α(外径側部21、第1外径側部31A)、第2部位β(傾斜部22、第1中間部23A、第2外径側部31B、傾斜部32)、第3部位γ(第2中間部23B、中間部33)及び第4部位δ(第3中間部23C、内径側部24、内径側部34)から構成されている。また腹部20,30は、第1部位α、第2部位β及び第3部位γのそれぞれにおいて、互いに略平行に形成されている。
【0045】
また、両方の腹部20,30の第1部位αにおける離間距離h1及び第3部位γにおける離間距離h3よりも、第2部位βにおける離間距離h2が長く形成されている(h2>h1,h3、好ましくはh2>h3>h1)。すなわち、第2部位β間に形成される環状空間Rの腹部20,30の延在方向に直交する長さh2が長く、環状空間Rは広い容積を有している。離間距離は腹部20,30の各部位の延在方向に直交する方向の距離であり、互いに平行でない部位にあっては、径方向において第2部位β側の離間距離(第3部位γにおいては変曲点I32における離間距離)を用いればよく、第2部位βにあっては径方向における離間距離の平均値を用いればよい。
【0046】
次に、ベローズ10の動作及び効果について説明する。
ベローズ10は、軸方向の外力を受けると収縮し、最も縮んだ状態で、
図3に示す密着状態まで収縮可能である。ベローズ10は、
図2の自由長の状態から
図3の密着状態に収縮する際、隣接する谷部10Bが軸方向に接近すると同時に隣接する山部10Aも接近し、隣接する第2部位β(上方のヒダの腹部30の第2外径側部31Bと下方のヒダの腹部20の第2中間部23B)同士が接触した時に密着状態となる。この密着状態において、腹部同士の大部分は接触しないため、圧縮加重曲線の直線性と小ヒステリシスを確保することができる。また、この密着状態及び密着状態に至る過程において、第2部位βに外力が作用し、隣接する山部10A同士は接触せずに僅かに離間し、山部10Aの形状はほぼ維持されているため山部10Aの耐久性に優れる。
【0047】
図2、
図4を参照し、振動やベローズ10の伸縮時に、ベローズ10の山部10Aが対向するシェル3等の内壁面3aに矢印で示す方向に衝突する際、腹部20,30がアーチ型をしているため、キャニング現象を回避することができるとともに、腹部20,30は外径側が軸方向下方にしなるように変形(図中の破線を参照。)して山部10Aは軸方向下方に逃げることができる。このため、山部10Aに対する衝撃を緩和することができる。
【0048】
さらに、第3部位γの離間距離h3が短く形成されているため、変曲点I21,I22,I31,I32を起点に腹部20,30は軸方向下方にしなるよう変形しやすい。
加えて、傾斜部22,32はそれぞれ内径側から外径側に見て上方から下方(オフセット側)にかけて傾斜しているため、腹部20,30を下方にしなるように変形させやすくなっている。なお、
図6の変形例に示すように傾斜部22,32はそれぞれ内径側から外径側に見て下方から上方(オフセットとは反対側)に傾斜するものであってもよい。
【0049】
図2、
図5を参照し、ベローズ10の伸縮時、山部10Aに着目すると、両方の腹部20,30の第1部位α間の離間距離h1及び第3部位γ間の離間距離h3よりも第2部位β間の離間距離h2を長く形成しているため、第1部位αや山部10Aはほとんど変形することなく、腹部20,30の内径側の部位(第3部位、第4部位)が変形する。このため、山部10Aには繰り返し変形による応力が作用することはない。
【0050】
また、山部10Aの曲率半径が小さく、かつ第1部位α間の離間距離h1が小さいため、ベローズ10の圧縮時に、当該山部10A同士や第1部位を構成する外径側部21,31は軸方向において接触することがなく(
図3参照。)、密着長を短くでき、ベローズ10の伸縮代を大きくできる。
【0051】
また、
図5(c)のゼロダウン時の状態から、圧力配管内の液体の圧力が高まりベローズ10が伸長する際に、過渡的にベローズ10内の液圧はベローズ10外のガス圧よりも高まり、ベローズ10内の内径側から外径側に向けて液体が流れ(矢印を参照。)込もうとするが、次の理由により、この場合にも第1部位αや山部10Aはほとんど変形しない。
【0052】
第1に、変曲点I23,I33において腹部20,30が変形するからである。
第2に、環状空間Rよりも内径側に離間距離h3の小さい第3部位γが存在するのみならず中間部23,33はその離間距離は内径側に向かうにつれて漸増しているため、環状空間Rに液体が流入する際には山部10Aが広がるよりも前に変曲点I21,I31近傍において腹部20,30が変形するからである。
第3に、第1部位αは外径側部21,31が平行であるため、液体の流入時にいわゆるクサビ作用が生じにくいためである。
第4に、第1部位αの離間距離h1は小さく山部10Aの曲率半径が小さいからである。
【0053】
また、アキュムレータ1のゼロダウン状態におけるシール部材8の密封不具合等によってバックアップフルードが漏れた場合による異常収縮時において、山部10Aは曲率半径が小さく剛性が高く、山部10Aはほとんど変形しない。そのため、山部10Aには繰り返し変形による応力が作用することはないので、山部10Aの耐久性を向上することができる。
【0054】
また、上記異常収縮時において、腹部20,30同士はガス圧により近接したスリム状態となり、ほぼ接触しないため、圧縮加重曲線の直線性と小ヒステリシスを確保することができる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0056】
例えば、実施例では、ベローズ10はステー60を有するアキュムレータ1に装着される場合を説明したが、これに限らず、例えばベローズの上端がガス封入部材に液密に固定され、下端がベローズキャップに液密に固定される形式のアキュムレータに装着されるものであってもよい。また、アキュムレータ1の作動流体として、液体を例に説明したが、これに限らず、例えば気体であってもよい。この場合、液室Lを気体室とすればよい。
【0057】
また、実施例では、ベローズ10はアキュムレータ1に装着される場合を説明したが、これに限らず、パイプラインに用いることもできる。
【0058】
また、実施例では、山部10A及び谷部10Bは、それぞれ、曲率半径が一定の円弧状である場合について説明したが、必ずしも、曲率半径が完全に一定の円弧状である必要はなく、例えば、円弧の途中で曲率が変化するもの、例えば楕円弧のようなものであってもよい。
【0059】
また、実施例では、外径側部21,31、中間部23,33及び内径側部34は、いずれも直線状である場合について説明したが、他の形状、例えばなだらかな曲線状であってもよい。
【0060】
また、実施例では、外径側部21,31は互いに平行である場合について説明したが、これに限られない。中間部23,33についても同様である。
【0061】
また、実施例では、傾斜部22,32は、略45度傾斜する場合について説明したが、傾斜角度は45度に限られない。
【0062】
また、実施例では、傾斜部22、第1中間部23A、傾斜部32及び第2外径側部31Bの長さが略等しく、環状空間Rは断面略菱形である場合について説明したが、これらの長さ及び環状空間の断面形状はこれらに限られない。
【0063】
また、実施例では、傾斜部22,32はそれぞれ内径側から外径側に見て上方から下方(オフセット側)にかけて傾斜している例について説明したが
図6の変形例に示すように傾斜部22,32はそれぞれ内径側から外径側に見て下方から上方(オフセットとは反対側)に傾斜するものであってもよい。