(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[アプリケーション・キットの概要]
アプリケーション・キットは、少なくとも一方が任意の活性成分(例えば薬剤)を含む2種類のシート部材を皮膚に適用するための補助器具である。より具体的には、アプリケーション・キットは、まず第1シート部材を皮膚に適用して、その後に該皮膚に第2シート部材を適用するという一連の作業を連続的に行うために用いられる。ユーザはこのアプリケーション・キットを用いることで、2種類のシート部材を用いる活性成分の経皮投与を簡単に行うことができる。「シート部材が皮膚に適用される」という表現は、シート部材が皮膚に接することを少なくとも表す。第1シート部材および第2シート部材はいずれも、平面形状を呈し、折り返したり皮膚の表面形状に追従したりすることができるような柔軟性を有する。
【0013】
本実施形態では、第1シート部材としてマイクロニードル・シートを例示し、第2シート部材として貼付剤を例示する。しかし、2種類のシート部材の組合せはこれに限定されない。例えば、第1および第2シート部材の双方が貼付剤であってもよいし、双方がマイクロニードル・シートであってもよい。あるいは、貼付剤でもマイクロニードル・シートでもないシート部材が第1シート部材および第2シート部材の少なくとも一方として用いられてもよい。活性成分は第1および第2シート部材の一方にのみ含まれてもよいし双方に含まれてもよい。2種類のシート部材の双方に活性成分が含まれる場合には、活性成分の種類は、第1および第2シート部材の間で、少なくとも一部が異なってもよいし全く同じであってもよい。
【0014】
[マイクロニードル・シート]
図1を参照しながら、実施形態に係るアプリケーション・キットと共に用いられるマイクロニードル・シート80について説明する。
図1はマイクロニードル・シート80の平面図である。この図に示すように、マイクロニードル・シート80は帯状(細長い矩形)を呈する。マイクロニードル・シート80は、シート本体81と、このシート本体81に形成された複数のマイクロニードル82とを有する。本実施形態では、長辺に沿った方向をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の長手方向といい、短辺に沿った方向(長手方向と直交する方向)をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の幅方向という。また、長手方向および幅方向の双方と直交する方向をマイクロニードル・シート80(またはシート本体81)の厚さ方向という。
【0015】
各マイクロニードル82の厚さ(厚さ方向に沿った長さ)はシート本体81の厚さと同じである。複数のマイクロニードル82は、シート本体81の長手方向および幅方向のそれぞれにおいて2以上のマイクロニードル82が整列するように形成される。マイクロニードル・シート80が使用のために提供される時点では、各マイクロニードル82は、シート本体81の主面81aから立ち上がっておらず、主面81aに沿って寝た状態にある。言い換えると、複数のマイクロニードル82のそれぞれの先端は、長手方向におけるシート本体81の一端(
図1では左方向)を向く。あるいは、各マイクロニードル82とシート本体81との成す角度が0°またはほぼ0°と言い換えることもできる。マイクロニードル82の先端の向きは、マイクロニードル・シート80が使用される際の該マイクロニードル・シート80の進行方向と一致する。なお、一部のマイクロニードル82の向きが他のマイクロニードル82の向きと異なってもよい。
【0016】
マイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82の材質は限定されない。例えば、ステンレス鋼、ポリエチレンテレフタラート(PET)、水溶性高分子、他の金属、他の樹脂、生分解性素材、セラミック、または生体吸収性素材のいずれかによりマイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82を作製してもよい。あるいは、これらの材質を組み合わせてマイクロニードル・シート80およびマイクロニードル82を作製してもよい。
【0017】
マイクロニードル82はエッチングにより形成することができる。シートが金属であれば薬液でそのシートを部分的に溶かすことでマイクロニードル82を形成することができるし、シートが非金属であればレーザーでそのシートを部分的に切ることでマイクロニードル82を形成することができる。これらの場合には、マイクロニードル82の周囲に空隙が生ずる。もちろん、レーザー加工およびエッチング以外の手法によりマイクロニードル82を形成してもよい。いずれにしても、マイクロニードル82を予めシートの主面81aから立ち上げておく必要がないので、マイクロニードル・シート80を容易かつ安価に製造することができる。
【0018】
本実施形態ではマイクロニードル82は三角形状であるが、マイクロニードルの形状は何ら限定されない。
図1の例では、マイクロニードル82の大きさおよび向きが均一であるが、その大きさおよび向きの少なくとも一方が均一でなくてもよい。マイクロニードル82が三角形である場合には、その先端部の角度の下限は例えば10°または20°でもよいし、その角度の上限は例えば150°または120°でもよい。マイクロニードル・シート80におけるマイクロニードル82の分布は均一でもよいし均一でなくてもよい。例えば、マイクロニードル・シート80を長手方向に沿って見た場合に、1以上のマイクロニードル82を含む領域(ニードル領域)と、マイクロニードル82を含まない領域(クリアランス領域)とが交互に存在するように、シート本体81に複数のマイクロニードル82が形成されてもよい。
【0019】
マイクロニードル・シート80の寸法も限定されない。具体的には、厚みの下限は5μmでも20μmでもよく、厚みの上限は1000μmでも300μmでもよい。長さの下限は0.1cmでも1cmでもよく、長さの上限は50cmでも20cmでもよい。幅の下限は0.1cmでも1cmでもよく、幅の上限は60cmでも30cmでもよい。マイクロニードル・シート80の長さおよび幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さおよび幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
【0020】
マイクロニードル82に関するパラメータも限定されない。具体的には、針の高さの下限は10μmでも100μmでもよく、その高さの上限は10000μmでも1000μmでも500μmでもよい。針の密度の下限は0.05本/cm
2でも1本/cm
2でもよく、その密度の上限は10000本/cm
2でも5000本/cm
2でもよい。密度の下限は、1mgの活性成分を投与し得る針の本数および面積から換算した値であり、密度の上限は、針の形状を考慮した上での限界値である。
【0021】
マイクロニードル・シート80に予め活性成分をコーティングするのであれば、所定の粘度のコーティング液をなるべく均一な厚みでシート全体に塗布するのが好ましい。マイクロニードル82の先端がシート本体81の一端を向いているので(マイクロニードル82が主面81aに沿って寝ているので)、その均一な塗布を容易に為し得る。コーティングはスクリーン印刷の原理を用いて実施してもよいし、他の方法により実施してもよい。生分解性のシートを用いる場合には、そのシート自体に活性成分を内包させることも可能である。
【0022】
各マイクロニードル82は、アプリケーション・キットにより曲げられるまではシート本体81の主面81aに沿って寝た状態にある。したがって、アプリケーション・キットを用いない限り、マイクロニードル82が他の物(例えばユーザの皮膚や衣服など)に当たったり引っ掛かったりする心配がない。その結果、マイクロニードル82の取扱時の安全性を確保することができる。例えば、ユーザはマイクロニードル・シート80の保管や搬送、使用直前の準備などを安全に行うことができる。
【0023】
[貼付剤]
図2を参照しながら、実施形態に係るアプリケーション・キットと共に用いられる貼付剤90について説明する。
図2は貼付剤90の平面図である。貼付剤90は、パップ剤、テープ剤、含浸剤(例えば絆創膏)、フィルム製剤などとして用いられる製剤である。貼付剤90は、支持体91と、支持体91の一方の面の少なくとも一部または略全体に形成された粘着剤層92と、粘着剤層92の作用面に剥離可能に貼付された剥離ライナー93とを備える。粘着剤層92の作用面とは、貼付剤90の使用時にユーザの皮膚に接する面のことである。
【0024】
貼付剤90の寸法は限定されない。例えば、貼付剤90(粘着剤層92)の面積は1〜300cm
2でもよいし、10〜200cm
2でもよい。貼付剤90(粘着剤層92)の長さおよび幅の下限は活性成分の投与量を考慮して定められ、長さおよび幅の上限は生体の大きさを考慮して定められる。
【0025】
支持体91は、シート状の部材である。支持体91は伸縮性を有してもよい。織布、編布、不織布、不織紙、フィルムなどを支持体91として用いることができ、支持体91の物理的性質(厚さ、伸び、引張り強さ、貼付作業性など)、貼付時の感触、皮膚の密閉性、活性成分の支持体91への移行などを考慮して部材が選択される。
【0026】
支持体91の具体的な材質は限定されない。支持体91の材質は合成樹脂でもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどでもよい。あるいは、支持体91の材質はアルミニウム等の金属であってもよい。支持体91の形態は、例えば、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発砲体、布帛(たとえば織布、編布、不織布等)、箔、およびこれらの積層体などであってもよい。
【0027】
支持体91の厚みは特に限定されないが、例えば5〜1000μmの範囲で設定してもよい。支持体91の厚みを5μm以上とするのは、貼付剤90の取り扱いを容易にするためである。支持体91の厚みを1000μm以下とするのは、支持体91の硬さが付着性に及ぼす影響を防ぐためである。
【0028】
粘着剤層92は、任意の活性成分を含んでもよい。ここで、「粘着剤層が活性成分を含む」とは、粘着剤層がその中に活性成分を含有する態様と、活性成分が粘着剤層の作用面に付着した態様との双方を含む概念である。粘着剤層92が活性成分を含まず、フィルム、ガーゼなどが活性成分を含み、粘着剤層92が該フィルム、ガーゼなどの周囲を覆う構造(例えば、絆創膏のような構造)が採用されてもよい。粘着剤層92の材料は、粘着性を有し皮膚に貼り付けることができれば特に限定されない。
【0029】
テープ剤、含浸剤、フィルム製剤のための粘着基剤として、ゴム系粘着剤、アクリレート系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、およびこれらの組合せなどが用いられてもよい。
【0030】
必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、経皮吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、紫外線吸収剤、充填剤、安定剤、香料などの添加剤を適宜配合してもよい。
【0031】
本発明の貼付剤90に任意に備えられる剥離ライナー93は限定されず、公知のものを適宜採用することができる。剥離ライナー93の材質は合成樹脂でもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、セルロース誘導体、ポリウレタンなどでもよい。あるいは、剥離ライナー93の材質はアルミ箔、紙などでもよい。あるいは、剥離ライナー93の材質はこれらの積層体から成るフィルムであってもよい。剥離ライナー93を容易に剥離できるように、剥離ライナー93の表面にシリコーンコートなどの離型処理が施されてもよい。
【0032】
[アプリケーション・キットの構成]
図3は実施形態に係るアプリケーション・キット1の上側からの斜視図である。
図4はアプリケーション・キット1の六面図である。
図4では貼付剤90を省略している。アプリケーション・キット1は、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)を備えるアプリケータ2と、貼付剤90(第2シート部材)を備えるカートリッジ3とを備える。カートリッジ3はアプリケータ2に連結可能である。ユーザがアプリケータ2の底部にカートリッジ3を取り付けることで、カートリッジ3およびアプリケータ2のセットがアプリケーション・キット1として機能する。アプリケータ2にカートリッジ3が連結された場合にアプリケータ2の下面とカートリッジ3の下面とがほぼ並ぶように、連結部(後述するアプリケータ側コネクタ16およびカートリッジ側コネクタ102)が構成される。
【0033】
ユーザはこのアプリケーション・キット1を皮膚上で動かすことで、マイクロニードル・シート80で皮膚を穿刺した上で貼付剤90をその皮膚に適用する。貼付剤90の適用を終えた後は、ユーザはカートリッジ3をアプリケータ2から外して新しいカートリッジ3をアプリケータ2に取り付けることで、別の新たな貼付剤90を皮膚に適用することができる。マイクロニードル・シート80はアプリケータ2から連続的に供給され、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80はアプリケータ2内に回収されるので、マイクロニードル・シート80が適用されるのは一時的である。このように、アプリケータ2は繰り返し利用ができる器具であるのに対して、カートリッジ3は使い捨ての器具である。
【0034】
本実施形態では、高さ方向においてアプリケータ2とカートリッジ3とが連結する側をアプリケーション・キット1の下側と定義し、その反対側をアプリケーション・キット1の上側と定義する。また、水平方向においてアプリケータ2の側をアプリケーション・キット1の前側と定義し、カートリッジ3の側をアプリケーション・キット1の後ろ側と定義する。また、アプリケーション・キット1の上下方向(高さ方向)および前後方向の双方と直交する方向をアプリケーション・キット1の幅方向と定義する。このように定義された方向を、アプリケータ2単体およびカートリッジ3単体の説明でも用いる。
【0035】
[アプリケータの構成]
図5はアプリケータ2の下側からの斜視図である。
図6および
図7はアプリケータ2の内部構造を示す斜視図である。
図8はアプリケータ2の六面図である。アプリケータ2は、マイクロニードル・シート80を収容するアプリケータ本体10と、そのアプリケータ本体10を上から覆うようにアプリケータ本体10に取り付けられたキャップ20とを備える。本実施形態では、アプリケータ本体10およびキャップ20のいずれも縦長の直方体状を呈し、この結果、アプリケータ2も全体として縦長の直方体状を呈する。アプリケータ本体10は、皮膚と向かい合う平面状の底板11と、底板11に設けられた曲げ部12とを備える。マイクロニードル・シート80はアプリケータ本体10内にセットされ、ユーザによるアプリケータ2の操作によりアプリケータ本体10内から曲げ部12へと進み、曲げ部12で曲げられてから皮膚に適用される。皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80はアプリケータ本体10内へと戻る。
【0036】
キャップ20は、アプリケータ本体10の高さ方向に沿って移動することができる。具体的には、キャップ20はその高さ方向に沿って、底板11に向かってまたは底板11から離れる方向に平行移動することができる。
【0037】
アプリケータ本体10に対するキャップ20のこのような動きは、アプリケータ本体10とキャップ20との間で高さ方向に沿って延びる圧縮ばね30により制御される。圧縮ばね30は、底板11から離れる方向に働く弾性力をキャップ20に付与することでアプリケータ本体10に対するキャップ20の動きを制御する弾性部材の一例である。本実施形態では圧縮ばね30は線形のコイルばねであるが、圧縮ばねの種類は限定されず、例えば非線形のコイルばねであってもよい。圧縮ばね30の一端はアプリケータ本体10の上面に取り付けられ、他端はキャップ20の天井に取り付けられる。しかし、底板11から離れる方向に働く弾性力をキャップ20に付与することができるのであれば、圧縮ばね30(弾性部材)の具体的な取付位置は何ら限定されない。例えば、圧縮ばね30の一端がアプリケータ本体10の内部の任意の箇所に取り付けられてもよい。
【0038】
圧縮ばね30の弾性力により、キャップ20が底板11に向けて一定以上の力で押されない限り、キャップ20は底板11から遠ざけられた状態にある。本実施形態では、キャップ20に外力が掛かってキャップ20が底板11に向かって移動した状態を「押下状態」といい、キャップ20が底板11に向かって移動していない状態を「非押下状態」という。非押下状態はアプリケータ2およびキャップ20の自然な状態であるともいえる。圧縮ばね30の構造または弾性力は、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)が皮膚に適用された際にそのマイクロニードル・シート80に一定以上の押圧力が掛かるように設計されてもよい。
【0039】
アプリケータ本体10の底板11の下面は平面である。底板11の下面に線状の突起または点在する突起が形成されてもよい。底板11の一部を皮膚に向かって隆起させることで、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)がその突起により皮膚に向かって押さえつけられるので、マイクロニードル・シート80をより確実に皮膚に適用することができる。ただし、この突起は必須の要素ではない。
【0040】
アプリケータ本体10は、皮膚に適用される前のマイクロニードル・シート80が巻かれた第1リール40と、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80を巻き取る第2リール50という二つのリールを備える。本実施形態では、底板11および曲げ部12に近い側に第1リール40が位置し、第1リール40の上に第2リール50が位置する。第1リール40はその一端に歯車41を備える。第2リール50はその一端にダブル歯車51を備え、以下では、内側に位置する大きな歯車を大歯車51aといい、外側に位置する小さな歯車を小歯車51bという。第2リール50は、ダブル歯車51の外側に位置するラチェットギア52をさらに備える。第1リール40の歯車41と第2リール50の大歯車51aとは互いに噛み合い、これにより、マイクロニードル・シート80を供給および回収する二つのリール40,50が連動する。
図7に示すように、本実施形態では、歯車41と大歯車51aとで径が異なるので、二つのリール40,50の回転数を調整するために、第1リール40では筒状の本体と軸との間にシリコンチューブ(図示せず)が滑り構造として設けられる。このシリコンチューブ(滑り構造)により第1リール40および第2リール50の回転が調整され、その結果、マイクロニードル・シート80の供給および回収が円滑に行われる。この滑り構造は周知技術である。
【0041】
マイクロニードル・シート80は、マイクロニードル82の先端の方向が、第1リール40から第2リール50へと向かう方向と一致するように、アプリケータ2に予めセットされる。マイクロニードル・シート80は皮膚に適用される前および後にはアプリケータ2内に収容され、底板11に沿った部分のみがアプリケータ2から露出するに過ぎない。マイクロニードル・シート80(第1シート部材)の露出を抑えることは、マイクロニードル・シート80の安全な取扱いに資する。アプリケータ2にセットされるマイクロニードル・シート80の主面81aの一部(例えば、幅方向における両端部)には、皮膚との摩擦を生み出してマイクロニードル・シート80を円滑に進めるための粘着層が設けられてもよい。
【0042】
アプリケータ本体10は、マイクロニードル・シート80を予め定められた距離だけ第1リール40から第2リール50に進めるためのラックギア14をさらに備える。ラックギア14は高さ方向に沿って延び、第2リール50のラチェットギア52と噛み合う。ラックギア14は、高さ方向に沿って延びる支持体15と結合したかたちでアプリケータ本体10内に設けられる。支持体15は、アプリケータ2へのカートリッジ3の連結に連動して高さ方向に沿って移動可能な部品であり、高さ方向に沿って延びる圧縮ばね15aを介してアプリケータ本体10内に取り付けられる。支持体15の下端に対応して貫通孔17が形成される。
【0043】
アプリケータ本体10の後ろには、カートリッジ3と着脱可能に連結する一対のアプリケータ側コネクタ16が設けられる。一対のアプリケータ側コネクタ16は、アプリケータ本体10の幅方向における両端に設けられ、前後方向に沿って見た場合には底板11よりも後ろに位置する。それぞれのアプリケータ側コネクタ16は、後述するカートリッジ側コネクタ102の嵌合部102aを受け入れることができるように、下側が開いた箱形を呈する。アプリケータ側コネクタ16の幅方向における外側の壁には、カートリッジ側コネクタ102の爪102cと係わり合う爪受け16aが形成される。本実施形態では、この爪受け16aは貫通孔である。
【0044】
アプリケータ本体10は、第1リール40および第2リール50の回転を妨げるストッパ60をさらに備える。本実施形態ではストッパ60は第2リール50の上方に設けられる。本実施形態では、ストッパ60は段状を呈し、その中央部(幅方向に延びる部分)には回転軸61が設けられる。ストッパ60の下端は、第2リール50の小歯車51bに嵌まるように形成される。
【0045】
図7に示すように、非押下状態では、ストッパ60の下端が小歯車51bに嵌まり、その結果、第1リール40および第2リール50の双方の回転が妨げられる。ここで、「回転が妨げられる」とは、第1リール40または第2リール50を強引に回さない限りこれら二つのリール40,50が回転しない状態を意味する。このストッパ60により、第1リール40および第2リール50の意図しない回転が防止され、したがって、マイクロニードル・シート80(第1シート部材)の意図しない進行を防止することができる。
【0046】
押下状態では、キャップ20が下がることに応じてストッパ60が回転軸61を中心に回転し、ストッパ60の下端が小歯車51bから外れる。その結果、ダブル歯車51およびそれと噛み合う歯車41の動きの制限が解除されるので、第1リール40および第2リール50が回転可能になる。
【0047】
ストッパ60が小歯車51bに嵌まる構造は、ストッパが第1リールおよび第2リールの少なくとも一方のリールに接触することでこれら二つのリールの回転を妨げる一例である。ストッパの具体的な構造は本実施形態に示すものに限定されない。
【0048】
第1リール40から第2リール50へと続くマイクロニードル・シート80の進行路に沿ってアプリケータ本体10の他の構成要素を説明する。第1リール40から引き出されたマイクロニードル・シート80は、底板11の前側に設けられた曲げ部12で曲げられて、皮膚に適用される。皮膚に適用されている間、マイクロニードル・シート80はその皮膚と底板11とで挟まれた状態になる。皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80は、底板11の後ろ側に設けられた引き込み部18が来た時に皮膚から離されてアプリケータ2の内部へと引き上げられる。引き込み部18を通ったマイクロニードル・シート80は、案内ローラ19を通って第2リール50へと至る。
【0049】
曲げ部12は、押下状態の下で進行してきたマイクロニードル・シート80を曲げることで該マイクロニードル・シート80を皮膚に適用する直線状の機械要素である。曲げ部12は幅方向に沿って直線状に延び、幅方向に沿った曲げ部12の長さはマイクロニードル・シート80の幅に対応する。マイクロニードル・シート80を曲げてマイクロニードル82を主面81aから立ち上げることができるのであれば、曲げ部12の具体的な形状または構造は限定されない。例えば、曲げ部12は細長い円柱部材で構成されてもよく、この場合には、曲げ部12は、マイクロニードル・シート80の進行をより円滑にするために回転可能に設けられてもよいし、回転しなくてもよい。底板11の前端(前方の一辺)が曲げ部12として機能してもよい。「底板に設けられた曲げ部」とは、底板そのものにまたは底板の付近に曲げ部が設けられることを意味する。したがって、底板11の付近に設けた円柱部材も、底板11の端部も、底板11に設けられた曲げ部の一種である。
【0050】
引き込み部18は、皮膚に適用されたマイクロニードル・シート80をその皮膚から離して第2リール50へと案内する場所である。マイクロニードル・シート80を第2リール50へと案内できるのであれば、引き込み部18の具体的な形状または構造は限定されない。例えば、引き込み部18は細長い円柱部材で構成されてもよく、この場合には、引き込み部18は、マイクロニードル・シート80の進行をより円滑にするために回転可能に設けられてもよいし、回転しなくてもよい。底板11の後端(後方の一辺)が引き込み部18として機能してもよい。「底板に設けられた引き込み部」とは、底板そのものにまたは底板の付近に引き込み部が設けられることを意味する。したがって、底板11の付近に設けた円柱部材も、底板11の端部も、底板11に設けられた引き込み部の一種である。
【0051】
案内ローラ19は、引き込み部18から進んできたマイクロニードル・シート80を第2リール50へと進める、幅方向に延びる円柱部材である。案内ローラ19は回転可能であり、これによりマイクロニードル・シート80を円滑に送り出すことができる。もっとも、案内ローラ19は回転しなくてもよい。
【0052】
[カートリッジの構成]
図9はカートリッジ3の下側からの斜視図であり、
図10はカートリッジ3の上側からの斜視図である。
図11はカートリッジ3の六面図である。
図11では貼付剤90を省略している。カートリッジ3は、貼付剤90(第2シート部材)と、この貼付剤90を支持するカートリッジ本体100とを備える。貼付剤90がカートリッジ本体100に取り付けられることによりカートリッジ3が形成される。
【0053】
カートリッジ本体100は、全体的に平板状の小型の部品である。カートリッジ本体100は、支持板101、一対のカートリッジ側コネクタ102、および押上突起103を備える。
【0054】
支持板101は、貼付剤90の少なくとも一部を支える矩形状の平板である。高さ方向における支持板101の下面の位置とアプリケータ2の底板11の位置とは、カートリッジ3がアプリケータ2に取り付けられた際にほぼ一致する。支持板101の下面の幅方向における両端には、前後方向に延びるフック104が貼付剤90の保持部として設けられる。一対のフック104の開口は内側を向く。一対のフック104は貼付剤90の幅方向における両端を挟み、これにより貼付剤90がカートリッジ本体100で支持される。本実施形態では、それぞれのフック104は前側104aと後側104bとに分かれているが、この分離は必須ではない。貼付剤90の前側部分は、粘着剤層92が外側を向き支持体91が内側を向くように下側に向けて折り曲げられる。この折り曲げられた部分はフック104の前側104aの前端付近に位置する。
図9では、折り曲げられた貼付剤90の一端がフック104の前側104aの後端付近に位置している。
【0055】
一対のカートリッジ側コネクタ102は、アプリケータ2と着脱可能に連結する部分であり、支持板101の幅方向における両端の前側に設けられる。それぞれのカートリッジ側コネクタ102は、カートリッジ本体100を前後方向に沿ってみた場合にN字状または逆N字状を呈する。具体的には、それぞれのカートリッジ側コネクタ102は、支持板101の端部に形成された逆U字状の嵌合部102aと、この嵌合部102aの幅方向外側に形成されたつまみ102bとを備える。嵌合部102aの外側の壁には爪102cが形成される。爪102cはアプリケータ側コネクタ16の爪受け16aと係わり合う。
【0056】
押上突起103は、アプリケータ2のラックギア14を上方に動かすための突起であり、支持板101の上面の前側に設けられる。カートリッジ3がアプリケータ2と連結する際には、押上突起103は支持体15の下端に当たって、貫通孔17を通りつつ支持体15を押し上げる。
【0057】
アプリケータ2およびカートリッジ3を作製するための材料は限定されない。例えば、その材料はアクリル等のプラスチックでもよいし、金属でもよいし、他の種類の樹脂などでもよいし、これらの組合せでもよい。
【0058】
アプリケーション・キット1の寸法(アプリケータ2およびカートリッジ3の寸法)は任意の基準で決めてよい。例えば、アプリケーション・キット1の幅はマイクロニードル・シート80および貼付剤90の幅に応じて決めてもよい。また、アプリケーション・キット1の高さおよび全長(前後方向に沿った長さ)はその操作性を考慮して決めてもよい。
【0059】
[アプリケーション・キットの使用方法]
図12および
図13を参照しながら、アプリケーション・キット1の使用方法を説明する。
図12は、アプリケーション・キット1の使用方法を説明するための断面図である。
図13は穿刺の態様を模式的に示す図である。
【0060】
まず、ユーザは、一対のアプリケータ側コネクタ16に一対のカートリッジ側コネクタ102を差し込むことで、カートリッジ3をアプリケータ2に取り付ける。この差し込みによりカートリッジ側コネクタ102の爪102cがアプリケータ側コネクタ16の爪受け16aに引っ掛かり、これによりアプリケータ2およびカートリッジ3が一体化してアプリケーション・キット1になる。
【0061】
カートリッジ3がアプリケータ2に取り付けられると、カートリッジ3の押上突起103がラックギア14の支持体15の下端に当たって支持体15を上に動かし、この結果、支持体15と結合しているラックギア14も上に移動する。この結果、ラチェットギア52が回転するので、第2リール50および第1リール40も少し回転し、マイクロニードル・シート80が第1リール40から第2リール50へと進む。マイクロニードル・シート80が、ニードル領域およびクリアランス領域が交互に並ぶように形成されている場合には、その少しの回転によりニードル領域の前端を曲げ部12の付近に位置させることができる。したがって、ユーザがアプリケーション・キット1を皮膚上で動かした場合に直ぐにそのニードル領域を皮膚に適用することができる。
【0062】
続いて、ユーザはアプリケーション・キット1を皮膚Sの上に(より具体的には、活性部分を適用しようとする部位に)置く。アプリケーション・キット1を皮膚Sの上に置いただけの状態では、アプリケーション・キット1は非押下状態(自然状態)にある。この非押下状態ではストッパ60が第2リール50の小歯車51bに嵌まるので、第1リール40および第2リール50の回転が妨げられ、その結果、曲げ部12へのマイクロニードル・シート80の進行も妨げられる。
【0063】
図12に示すように、ユーザはキャップ20をアプリケータ本体10に向けて押しながら、曲げ部12が存在する側に向けてアプリケーション・キット1を動かす。言い換えると、ユーザはキャップ20を皮膚Sのほぼ真上から押しながら(矢印201を参照)アプリケータ2を前に動かす(矢印202を参照)。キャップ20が押されることに応じて、ストッパ60が回転軸61を中心に回転し、ストッパ60の下端が小歯車51bから外れる。この結果、第2リール50が回転可能になり、この第2リール50と噛み合っている第1リール40も回転可能になる。
【0064】
押下状態でアプリケーション・キット1が前に動かされると、マイクロニードル・シート80が第1リール40から第2リール50に向かって進む。曲げ部12に到達するまでは、マイクロニードル82は主面81aに沿って寝た状態にある。押下状態の下で進行してきたマイクロニードル・シート80は曲げ部12で曲げられ、底板11の下面に沿って進行する。すると、
図13に示すように、曲がった部分に位置するマイクロニードル82が主面81aから立ち上がり、立ち上がったマイクロニードル82が皮膚Sに刺さる。曲げ部12で一度に立ち上がるマイクロニードル82は、マイクロニードル・シート80の幅方向に沿った一列分である。曲げ部12は、マイクロニードル82と主面81aとの成す角度を大きくし、その大きくなった角度は当然ながら0度より大きく且つ180度未満である。
図13に示すように、主面81aから立ち上がったマイクロニードル82が皮膚Sに刺さる際の穿刺角度θ(マイクロニードル82と皮膚Sとが成す角度)も0度より大きく且つ180度未満である。穿刺角度の下限は20度、34度、または40度でもよく、その角度の上限は160度、140度、または100度でもよい。マイクロニードル82を皮膚Sに刺すことができるのであれば、マイクロニードル・シート80が曲げ部12で曲がる角度は例えば135〜180度の範囲であってもよく、より具体的には135度、150度、165度、または175度でもよい。
【0065】
皮膚Sに刺さった(適用された)マイクロニードル・シート80は、少しの間アプリケーション・キット1により皮膚Sに向かって押された後、引き込み部18が来た時に皮膚Sから離されてアプリケータ2内に回収される。皮膚Sから離されたマイクロニードル・シート80は案内ローラ19を経由して第2リール50へと至り、第2リール50により巻き取られる。
【0066】
アプリケータ2に連結されたカートリッジ3は、マイクロニードル・シート80が適用された皮膚S上を通る。アプリケーション・キット1が前に動くと、カートリッジ3に取り付けられている貼付剤90が反転して皮膚Sに貼られる。
【0067】
本実施形態では、マイクロニードル・シート80および貼付剤90が押下状態の下で皮膚Sに適用される。この仕組みにより、誰がこのアプリケーション・キット1を用いても、マイクロニードル・シート80および貼付剤90が皮膚Sに適用された際には一定以上の押圧力がマイクロニードル・シート80および貼付剤90に掛かる。加えて、キャップ20および圧縮ばね30が、底板11とほぼ直交する方向(高さ方向)に沿って曲げ部12の上に位置するので、誰がキャップ20を押しても押圧力はその高さ方向(皮膚Sとほぼ直交する方向)に沿って働く。これらの仕組みにより押圧力の方向および大きさが所望の範囲内に保たれ易くなるので、マイクロニードル・シート80および貼付剤90の皮膚Sへの適用におけるばらつきを低減することが可能になる。
【0068】
ユーザがアプリケーション・キット1を所望の距離だけ動かすことで、その距離に対応する皮膚Sの部分に多数の微細な穴が開き、その部分に貼付剤90が適用される。ユーザはマイクロニードル・シート80および貼付剤90の適用面積を調整して所望の量の活性成分を投与することができる。貼付剤90を皮膚Sに適用し終えた後は、ユーザはカートリッジ3のつまみ102bをカートリッジ3の幅方向内側に向けて軽く押しながらカートリッジ3を下方に引くことで、カートリッジ3をアプリケータ2から簡単に外すことができる。
【0069】
[効果]
以上説明したように、本発明の一側面に係るアプリケータは、アプリケータ本体と、アプリケータ本体に収容され、第1シート部材が巻かれた第1リールと、アプリケータ本体の底部に設けられ、第1リールから引き出された第1シート部材を皮膚に適用するために第1シート部材を曲げる曲げ部と、アプリケータ本体に収容され、皮膚に適用された第1シート部材を巻き取る第2リールと、アプリケータ本体の底部に設けられるアプリケータ側コネクタであって、第1シート部材が適用された後に皮膚に適用される第2シート部材を備えるカートリッジと着脱可能に連結する該アプリケータ側コネクタとを備える。
【0070】
本発明の一側面に係るカートリッジは、第1シート部材を備えるアプリケータと着脱可能に連結するカートリッジ側コネクタと、第1シート部材が適用された皮膚に適用される第2シート部材とを備える。
【0071】
本発明の一側面に係るアプリケーション・キットは、第1シート部材を備えるアプリケータと、第1シート部材が適用された皮膚に適用される第2シート部材を備え、アプリケータに連結可能なカートリッジとを備え、アプリケータが、アプリケータ本体と、アプリケータ本体に収容され、第1シート部材が巻かれた第1リールと、アプリケータ本体の底部に設けられ、第1リールから引き出された第1シート部材を皮膚に適用するために第1シート部材を曲げる曲げ部と、アプリケータ本体に収容され、皮膚に適用された第1シート部材を巻き取る第2リールと、アプリケータ本体の底部に設けられるアプリケータ側コネクタとをさらに備え、カートリッジが、アプリケータ側コネクタと着脱可能に連結するカートリッジ側コネクタをさらに備える。
【0072】
このような側面においては、第1シート部材を備えるアプリケータと第2シート部材を備えるカートリッジとが連結により一体化される。したがって、この一体化された器具(アプリケーション・キット)により、2種類のシート部材を用いる活性成分の適用を簡単に行うことができる。
【0073】
上記のアプリケータを用いることで、第1リールから供給されて皮膚に適用された第1シート部材が第2リールにより自動的に巻き取られるので、ユーザは手で第1シート部材を取り除くことなく、第1シート部材の後に第2シート部材を皮膚に適用することができる。
【0074】
他の側面に係るアプリケータでは、皮膚と向かい合う底板をさらに備え、曲げ部と、曲げ部とは異なる位置に設けられた引き込み部とが、底板に設けられ、第1シート部材が曲げ部から引き込み部までの範囲にわたって皮膚に適用され、皮膚に適用されたシート部材が引き込み部から第2リールへと案内されてもよい。
【0075】
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、アプリケータが、皮膚と向かい合う底板をさらに備え、曲げ部と、曲げ部とは異なる位置に設けられた引き込み部とが、底板に設けられ、第1シート部材が曲げ部から引き込み部までの範囲にわたって皮膚に適用され、皮膚に適用されたシート部材が引き込み部から第2リールへと案内されてもよい。
【0076】
このような側面においては、第1シート部材を皮膚に面で接触させることで、第1シート部材が皮膚に接触する面積が大きくなり、したがって、第1シート部材と皮膚との間に生ずる摩擦力も大きくなる。この摩擦力は第1シート部材の進行と第1リールおよび第2リールの回転とを円滑にする役割を果たす。したがって、第1シート部材を皮膚に面接触させるこの構成により、アプリケータの操作性を高めることができる。
【0077】
他の側面に係るアプリケータでは、第1リールおよび第2リールの少なくとも一方のリールに接触することで第1リールおよび第2リールの回転を妨げるストッパと、曲げ部に向かって移動してストッパと少なくとも一方のリールとの接触を解除することで、第1リールおよび第2リールを回転可能にするキャップとをさらに備えてもよい。
【0078】
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、アプリケータが、第1リールおよび第2リールの少なくとも一方のリールに接触することで第1リールおよび第2リールの回転を妨げるストッパと、曲げ部に向かって移動してストッパと少なくとも一方のリールとの接触を解除することで、第1リールおよび第2リールを回転可能にするキャップとをさらに備えてもよい。
【0079】
このような側面においては、キャップを曲げ部に向けて動かさないと(すなわち、アプリケーション・キットを作動させないと)第1シート部材が進まない。この構成を採用することで、第1シート部材の意図しない進行を防止することができる。
【0080】
他の側面に係るアプリケータでは、第1リールおよび第2リールのいずれか一方に設けられたラチェットギアと、ラチェットギアと噛み合い、アプリケータ側コネクタがカートリッジと連結したことに応じて長手方向に沿って動くことで、ラチェットギアを予め定められた角度だけ回転させるラックギアとをさらに備え、ラックギアがラチェットギアを回転させることで、第1シートが第1リールから第2リールに向けて移動してもよい。
【0081】
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、アプリケータが、第1リールおよび第2リールのいずれか一方に設けられたラチェットギアと、ラチェットギアと噛み合い、アプリケータ側コネクタとカートリッジ側コネクタとの連結に応じて長手方向に沿って動くことで、ラチェットギアを予め定められた角度だけ回転させるラックギアとをさらに備え、カートリッジが、アプリケータ側コネクタとカートリッジ側コネクタとの連結に応じてラックギアに当たることでラックギアを長手方向に沿って動かす押上突起をさらに備え、押上突起により動かされたラックギアがラチェットギアを回転させることで、第1シートが第1リールから第2リールに向けて移動してもよい。
【0082】
このような側面においては、カートリッジとアプリケータとの連結に応じて第1シート部材が自動的に所定量だけ動く。この仕組みにより、アプリケーション・キットに備えて第1シート部材の位置を事前に調整することができる。
【0083】
他の側面に係るアプリケータでは、アプリケータ側コネクタが、底部の幅方向における両端に設けられる一対のコネクタであってもよい。このようにカートリッジ側コネクタを構成することで、より確実にカートリッジをアプリケータに取り付けることができる。
【0084】
他の側面に係るカートリッジでは、第2シート部材を支持する支持板をさらに備えてもよい。
【0085】
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、カートリッジが、第2シート部材を支持する支持板をさらに備えてもよい。
【0086】
このような側面においては、第2シート部材を支持板でしっかりと支えることができる。
【0087】
他の側面に係るカートリッジでは、カートリッジ側コネクタが、支持板の幅方向における両端に設けられる一対のコネクタであってもよい。このようにカートリッジ側コネクタを構成することで、より確実にカートリッジをアプリケータに取り付けることができる。
【0088】
他の側面に係るアプリケーション・キットでは、第1シート部材が、シートの主面に沿って延びる複数のマイクロニードルを有するマイクロニードル・シートであり、第2シート部材が貼付剤であってもよい。この場合には、マイクロニードル・シートの適用とその後の貼付剤の適用とを簡単に行うことができる。また、マイクロニードル・シートを適用した部位に貼付剤を正確に適用することができる。
【0089】
[変形例]
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0090】
上記実施形態では弾性部材としてばねを示したが、弾性部材はばねに限定されない。例えば、アプリケータの構成要素として採用される弾性部材の一部またはすべてがばね以外の弾性体(例えばゴム)であってもよい。
【0091】
第1リールおよび第2リールの回転を妨げるためのストッパは省略可能である。また、ストッパを制御したり一定以上の押圧力をシート部材に掛けたりするためのキャップも省略可能である。
【0092】
上記実施形態ではマイクロニードル・シート80(第1シート部材)が皮膚に対して面で接触するが、第1シート部材が曲げ部でのみ皮膚に接触するように、すなわち線で接触するようにアプリケータが構成されてもよい。この変形例では、曲げ部が上記の引き込み部18の機能も兼ね、皮膚に適用された第1シート部材は直ぐに皮膚から離されて第2リールへと向かう。このような変形に関連して、アプリケータは底板を備えなくてもよい。
【0093】
上記実施形態ではストッパ60が第2リール50に接触することで第1リール40および第2リール50の回転を妨げたが、二つのリールに対するストッパの接触の態様はこれに限定されない。例えば、ストッパは第1リールに接触することで、または第1リールおよび第2リールの双方に接触することで、回転を妨げてもよい。
【0094】
上記実施形態では、カートリッジ3がアプリケータ2に連結することに応じてマイクロニードル・シート80が第1リール40から第2リール50へと少し動くが、この仕組みは省略可能である。すなわち、上記実施形態におけるラックギア14、支持体15、貫通孔17、ラチェットギア52、および押上突起103はいずれも必須の構成要素ではない。
【0095】
上述したように、第1シート部材はマイクロニードル・シートに限定されず、第2シート部材は貼付剤に限定されない。本発明の一側面に係るアプリケーション・キットは、任意の種類の第1および第2シート部材のために用いることができる。
【0096】
アプリケーション・キットを用いて皮膚に第1および第2シート部材を適用する前に、その皮膚(第1および第2シート部材がこれから適用される箇所)に予め活性成分が適用されてもよい。また、第1および第2シート部材が適用された皮膚(第2シート部材が剥がされた箇所)にさらに活性成分が適用されてもよい。
【0097】
アプリケータ本体内での第1リールおよび第2リールの位置関係は限定されない。例えば、第2リールが曲げ部の近くに位置し、第2リールの上に第1リールが位置してもよい。あるいは、第1リールおよび第2リールが横方向に沿って並んでもよい。
【0098】
上記実施形態ではカートリッジ側コネクタ102およびアプリケータ側コネクタ16がそれぞれ一対のコネクタであるが、カートリッジとアプリケータとを連結させるためのコネクタの形状はこれに限定されない。例えば、カートリッジ側コネクタおよびアプリケータ側コネクタの一方が一つの凸状の構造であり、他方が、その凸状に対応する一つの凹状の構造であってもよい。