特許第6944546号(P6944546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944546
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210927BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20210927BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M1/08 C
   H02P27/06
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-570327(P2019-570327)
(86)(22)【出願日】2018年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2018047723
(87)【国際公開番号】WO2019155776
(87)【国際公開日】20190815
【審査請求日】2020年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-19398(P2018-19398)
(32)【優先日】2018年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 敬史
(72)【発明者】
【氏名】栗原 龍二
(72)【発明者】
【氏名】稲田 遼一
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/104318(WO,A1)
【文献】 特開2017−118815(JP,A)
【文献】 特開2011−244625(JP,A)
【文献】 特開2011−239608(JP,A)
【文献】 特開2014−158399(JP,A)
【文献】 特開2014−217131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 1/08
H02P 27/06
B60L 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子をそれぞれ有する上アームスイッチング回路および下アームスイッチング回路を含むインバータ回路部と、
前記上アームスイッチング回路にゲート信号を出力する上アームゲート回路と、
前記下アームスイッチング回路にゲート信号を出力する下アームゲート回路と、
前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に電源を供給するゲートドライブ電源回路と、
前記ゲートドライブ電源回路に代わって、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に前記電源を供給するバックアップ電源回路と、を備え、
前記ゲートドライブ電源回路は、所定の正常電圧範囲内で前記電源を供給可能であり、
前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に印加される前記電源の電圧が所定の低電圧異常検出電圧よりも低い場合に、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に前記電源を供給し、
前記低電圧異常検出電圧は、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路が正常に動作可能な前記電源の電圧の下限値である第1閾値電圧よりも高く、かつ、前記正常電圧範囲の下限値である第2閾値電圧よりも低い電圧である電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に印加される前記電源の電圧が、前記低電圧異常検出電圧未満である場合に、低電圧異常を検出して前記バックアップ電源回路を動作させる低電圧異常検出回路をさらに備える電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に前記ゲート信号を生成するためのPWM信号をそれぞれ出力する制御回路をさらに備え、
前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記下アームゲート回路に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合に、前記下アームゲート回路に前記電源を供給し、
前記上アームゲート回路は、前記ゲートドライブ電源回路から印加される前記電源の電圧が前記第1閾値電圧未満である場合に、前記制御回路に所定の異常信号を出力し、
前記制御回路は、前記上アームゲート回路から前記異常信号が出力されると、前記上アームゲート回路が前記上アームスイッチング回路の全ての前記スイッチング素子をオフさせるオープン状態とし、前記下アームゲート回路が前記下アームスイッチング回路の全ての前記スイッチング素子をオンさせるショート状態とするように、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に前記PWM信号をそれぞれ出力する電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記上アームゲート回路は、前記異常信号を出力する際に、前記PWM信号に関わらず前記上アームスイッチング回路を前記オープン状態とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に前記ゲート信号を生成するためのPWM信号をそれぞれ出力する制御回路をさらに備え、
前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合に、前記上アームゲート回路に前記電源を供給し、
前記下アームゲート回路は、前記ゲートドライブ電源回路から印加される前記電源の電圧が前記第1閾値電圧未満である場合に、前記制御回路に所定の異常信号を出力し、
前記制御回路は、前記下アームゲート回路から前記異常信号が出力されると、前記下アームゲート回路が前記下アームスイッチング回路の全ての前記スイッチング素子をオフさせるオープン状態とし、前記上アームゲート回路が前記上アームスイッチング回路の全ての前記スイッチング素子をオンさせるショート状態とするように、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に前記PWM信号をそれぞれ出力する電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置において、
前記下アームゲート回路は、前記異常信号を出力する際に、前記PWM信号に関わらず前記下アームスイッチング回路を前記オープン状態とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記バックアップ電源回路は、
前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合には、前記上アームゲート回路に前記電源を供給し、
前記ゲートドライブ電源回路から前記下アームゲート回路に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合には、前記下アームゲート回路に前記電源を供給する電力変換装置。
【請求項8】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記インバータ回路部は、前記上アームスイッチング回路および前記下アームスイッチング回路の各スイッチング素子の温度を検出する温度検出回路を有し、
前記上アームスイッチング回路または前記下アームスイッチング回路の一方のスイッチング回路が、全ての前記スイッチング素子がオンされたショート状態であり、他方のスイッチング回路が、全ての前記スイッチング素子がオフされたオープン状態であるときに、前記温度検出回路で検出された前記スイッチング素子の温度が所定温度以上になった場合、前記ショート状態とするスイッチング回路を前記一方のスイッチング回路から前記他方のスイッチング回路に切り替え、前記オープン状態とするスイッチング回路を前記他方のスイッチング回路から前記一方のスイッチング回路に切り替える電力変換装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記上アームゲート回路または前記下アームゲート回路の一方のゲート回路は、前記ゲートドライブ電源回路から供給される前記電源の電圧が前記第1閾値電圧未満となったときに、他方のゲート回路へ所定の異常信号を出力し、
前記他方のゲート回路は、前記一方のゲート回路から前記異常信号が入力されると、前記上アームスイッチング回路または前記下アームスイッチング回路の全ての前記スイッチング素子をオンさせてショート状態とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記インバータ回路部は、前記上アームスイッチング回路および前記下アームスイッチング回路の各スイッチング素子の温度を検出する温度検出回路と、前記インバータ回路部に蓄積された電荷を放出するアクティブディスチャージ回路と、を有し、
前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合に、前記温度検出回路および前記アクティブディスチャージ回路の少なくとも一方にも前記電源を供給する電力変換装置。
【請求項11】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に印加される前記電源の電圧が前記低電圧異常検出電圧未満である場合に、前記温度検出回路にも前記電源を供給する電力変換装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
複数のスイッチング素子をそれぞれ有する第2の上アームスイッチング回路および第2の下アームスイッチング回路を含む第2のインバータ回路部と、
前記第2の上アームスイッチング回路にゲート信号を出力する第2の上アームゲート回路と、
前記第2の下アームスイッチング回路にゲート信号を出力する第2の下アームゲート回路と、をさらに備え、
前記インバータ回路部および前記第2のインバータ回路部は、共通のモータに接続されており、
前記バックアップ電源回路は、前記第2の上アームゲート回路および前記第2の下アームゲート回路のいずれにも前記電源を供給しない電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の背景技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、交流の回転電機を駆動制御するものであって、高圧直流電源と前記回転電機との間に介在され、直流と交流との間で電力変換を行うインバータと、前記高圧直流電源よりも低電圧の電源であり、前記高圧直流電源とは絶縁された低圧直流電源から供給される電力により動作し、前記インバータのスイッチング素子をスイッチング制御するインバータ制御装置と、前記高圧直流電源を電力源として構成され、前記インバータ制御装置に電力を供給可能なバックアップ電源と、前記低圧直流電源から前記インバータ制御装置へ供給される電力が予め規定された基準値以下となった低圧電源低下状態では、前記バックアップ電源から前記インバータ制御装置へ電力を供給するように電力供給経路を切り替える電源切替スイッチと、を備える回転電機制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−159684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、インバータ制御装置に供給される低圧直流電源の電力低下を検出することで、電力供給経路の切り替えを行い、高圧直流電源を用いたバックアップ電源からインバータ制御装置へ電力供給を行うようにしている。そのため、ゲート駆動電源からゲート駆動回路に供給される電源電圧の低下には対処することができず、電源喪失時の可用性に関して改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による電力変換装置は、複数のスイッチング素子をそれぞれ有する上アームスイッチング回路および下アームスイッチング回路を含むインバータ回路部と、前記上アームスイッチング回路にゲート信号を出力する上アームゲート回路と、前記下アームスイッチング回路にゲート信号を出力する下アームゲート回路と、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路に電源を供給するゲートドライブ電源回路と、前記ゲートドライブ電源回路に代わって、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に前記電源を供給するバックアップ電源回路と、を備え、前記ゲートドライブ電源回路は、所定の正常電圧範囲内で前記電源を供給可能であり、前記バックアップ電源回路は、前記ゲートドライブ電源回路から前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に印加される前記電源の電圧が所定の低電圧異常検出電圧よりも低い場合に、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路の少なくとも一方に前記電源を供給し、前記低電圧異常検出電圧は、前記上アームゲート回路および前記下アームゲート回路が正常に動作可能な前記電源の電圧の下限値である第1閾値電圧よりも高く、かつ、前記正常電圧範囲の下限値である第2閾値電圧よりも低い電圧である
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電源喪失時の可用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図
図2】ゲートドライブ電源回路に故障が発生した場合の電力変換装置の動作説明図
図3】ゲートドライブ電源回路、低電圧異常検出回路およびバックアップ電源回路の回路構成例を示す図
図4】本発明の比較例に係る電力変換装置の構成を示す図
図5】本発明の第1の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図
図6】本発明の第2の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図
図7】本発明の第3の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図
図8】本発明の第4の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図
図9】本発明の第5の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成を示す図である。図1に示す電力変換装置1は、たとえば車両に搭載されて車両の走行用モータを駆動させるものであり、制御回路10、インバータ回路部20、上アームゲート回路30、下アームゲート回路40、ゲートドライブ電源回路50、低電圧異常検出回路60、およびバックアップ電源回路70を備える。
【0009】
インバータ回路部20は、不図示の高圧バッテリから供給される直流電力を交流電力に変換してモータに出力するものであり、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22を有する。上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22は、モータの相数に応じた複数のスイッチング素子をそれぞれ有している。たとえば、モータが三相交流モータである場合、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22は、それぞれ3つのスイッチング素子を有する。各スイッチング素子は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて構成される。
【0010】
制御回路10は、不図示の上位コントローラから入力されるモータの動作指令値に基づいて、モータの相数に応じたPWM信号を生成し、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40に出力する。たとえば、モータが三相交流モータである場合、制御回路10は、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40に対してそれぞれ3つのPWM信号を生成し、出力する。
【0011】
上アームゲート回路30および下アームゲート回路40は、制御回路10から入力されるPWM信号に基づいてゲート信号を生成し、上アームスイッチング回路21と下アームスイッチング回路22にそれぞれ出力する。上アームスイッチング回路21は、上アームゲート回路30からのゲート信号に応じて複数のスイッチング素子をそれぞれスイッチング駆動させる。同様に、下アームスイッチング回路22は、下アームゲート回路40からのゲート信号に応じて複数のスイッチング素子をそれぞれスイッチング駆動させる。これにより、直流電力が交流電力に変換されてモータに供給される。
【0012】
ゲートドライブ電源回路50は、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40がそれぞれ動作するための電源(以下、「ゲートドライブ電源」と称する)を生成し、これらに供給する。なお、図1ではモータ駆動用の高圧バッテリから供給される直流電力を用いてゲートドライブ電源回路50がゲートドライブ電源を生成する例を示しているが、制御回路10等の動作電源として使用される低圧バッテリから供給される直流電力を用いてゲートドライブ電源を生成してもよい。
【0013】
低電圧異常検出回路60は、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が所定の電圧範囲まで低下すると、これを低電圧異常として検出し、バックアップ電源回路70を動作させる。以下では、低電圧異常検出回路60が低電圧異常を検出するゲートドライブ電源の電圧範囲を「低電圧異常検出電圧範囲」と称する。なお、低電圧異常検出電圧範囲の詳細については、後で図2を参照して説明する。
【0014】
バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が、正常時にゲートドライブ電源回路50が供給可能なゲートドライブ電源の電圧範囲(以下、「正常電圧範囲」と称する)を下回ったときに、ゲートドライブ電源回路50に代わって、バックアップ用のゲートドライブ電源を下アームゲート回路40に供給する。具体的には、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲よりも低下して上記の低電圧異常検出電圧範囲に達すると、低電圧異常検出回路60によりバックアップ電源回路70が起動され、バックアップ電源回路70から下アームゲート回路40へのゲートドライブ電源の供給が開始される。なお、ゲートドライブ電源回路50と同様に、図1ではモータ駆動用の高圧バッテリから供給される直流電力を用いてバックアップ電源回路70がバックアップ用のゲートドライブ電源を生成する例を示しているが、制御回路10等の動作電源として使用される低圧バッテリから供給される直流電力を用いてゲートドライブ電源を生成してもよい。
【0015】
上アームゲート回路30は、自身や上アームスイッチング回路21の動作状態が異常であることを検知すると、上アームゲート回路異常信号を制御回路10に出力する。たとえば、ゲートドライブ電源回路50から供給されるゲートドライブ電源の電圧が、ゲート信号の生成に必要な所定の動作停止電圧未満に低下した場合や、上アームスイッチング回路21に流れる電流が所定の過電流状態になった場合などに、上アームゲート回路30は上アームゲート回路異常信号を出力する。同様に、下アームゲート回路40は、自身や下アームスイッチング回路22の動作状態が異常であることを検知すると、下アームゲート回路異常信号を制御回路10に出力する。
【0016】
上アームゲート回路30から上アームゲート回路異常信号、または下アームゲート回路40から下アームゲート回路異常信号が入力されると、制御回路10は、モータを安全に停止させるためのPWM信号を生成し、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40に出力する。たとえば、上アームゲート回路30と下アームゲート回路40のうち、異常信号を出力した一方のゲート回路に対しては、全てのスイッチング素子をオフさせてオープン状態とするPWM信号を出力し、他方のゲート回路に対しては、全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とするPWM信号を出力する。これにより、上アームゲート回路30、下アームゲート回路40、上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22に異常が生じた場合に、モータを安全に停止して車両を安全状態に移行することができる。
【0017】
次に、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生した場合の電力変換装置1の動作について、図2を参照して説明する。図2において、符号110に示す電圧範囲は、ゲートドライブ電源回路50が正常動作時に供給可能なゲートドライブ電源の電圧範囲、すなわち前述の正常電圧範囲を示している。この正常電圧範囲110は、たとえば16V〜20Vである。また、符号112に示す電圧範囲は、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40が正常に動作できない低電圧異常状態となるゲートドライブ電源の電圧範囲、すなわち前述の動作停止電圧未満となる電圧範囲を示している。この電圧範囲112は、たとえば12.5V未満である。これらの電圧範囲に対して、符号111に示す電圧範囲は、低電圧異常検出回路60が低電圧異常を検出する低電圧異常検出電圧範囲を示している。この低電圧異常検出電圧範囲111は、正常電圧範囲110と動作停止電圧未満の電圧範囲112との間に設定される。たとえば、13V〜15Vで低電圧異常検出電圧範囲111が設定される。
【0018】
図2において、破線120と実線121は、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生した場合に上アームゲート回路30と下アームゲート回路40にそれぞれ供給されるゲートドライブ電源の電圧変化の一例を示している。なお、時刻t2までは、破線120と実線121は共通である。
【0019】
破線120および実線121に示すように、時刻t1においてゲートドライブ電源回路50に故障が発生し、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が低下し始めたとする。この場合、ゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低下して低電圧異常検出電圧範囲111内になると、たとえば時刻t2において、低電圧異常検出回路60が低電圧異常を検出し、バックアップ電源回路70を起動させる。これにより、ゲートドライブ電源回路50に代わってバックアップ電源回路70からバックアップ用のゲートドライブ電源が下アームゲート回路40に供給され、実線121に示すように、下アームゲート回路40への印加電圧が上昇する。そして、下アームゲート回路40への印加電圧が所定の動作電圧範囲内になることで、ゲートドライブ電源回路50の故障時においても、下アームゲート回路40を正常に動作させることができる。
【0020】
一方、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生すると、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30に印加されるゲートドライブ電源の電圧は、破線120に示すように低下し続ける。そして、上アームゲート回路30への印加電圧が電圧範囲112に達するまで低下すると、たとえば時刻t3において、上アームゲート回路30が制御回路10に上アームゲート回路異常信号を出力する。
【0021】
時刻t3において上アームゲート回路30から上アームゲート回路異常信号が入力されると、制御回路10は、上アームゲート回路30に対して、上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオフさせるようにPWM信号を出力する。このPWM信号を受けた上アームゲート回路30は、上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオフさせてオープン状態とする。なお、上アームゲート回路異常信号を出力する際に、制御回路10からのPWM信号を待たずに、上アームゲート回路30が上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオフさせるように制御してもよい。一方、制御回路10は、下アームゲート回路40に対しては、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオンさせるようにPWM信号を出力する。このPWM信号を受けた下アームゲート回路40は、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とする。これにより、モータの回転数が高い状態でも、モータを安全に停止して車両を安全状態に移行することができる。
【0022】
次に、ゲートドライブ電源回路50、低電圧異常検出回路60、およびバックアップ電源回路70の具体的な回路構成例とその動作について説明する。図3は、三相交流モータに対するゲートドライブ電源回路50、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70の回路構成例を示す図である。ゲートドライブ電源回路50は、U相ゲートドライブ電源回路51、V相ゲートドライブ電源回路52、W相ゲートドライブ電源回路53により構成される。なお、図3におけるゲートドライブ電源回路50はフライバック方式による電源回路の2次側のみを図示している。低電圧異常検出回路60は、U相低電圧異常検出回路61、V相低電圧異常検出回路62、W相低電圧異常検出回路63により構成される。バックアップ電源回路70は、U相バックアップ電源回路71、V相バックアップ電源回路72、W相バックアップ電源回路73により構成される。
【0023】
U相低電圧異常検出回路61において、ツェナーダイオードZ11のツェナー電圧Vzは、以下の式(1)に示す範囲内で設定される。式(1)において、Vth1は下アームゲート回路40が正常動作可能なゲートドライブ電源電圧の最小値、すなわち下アームゲート回路40の動作停止電圧であり、図2の電圧範囲112の上限値に相当する。一方、Vth2はゲートドライブ電源回路50の出力電圧の最小値であり、図2の正常電圧範囲110の下限値に相当する。また、VbeはトランジスタT11のベース・エミッタ間電圧を表し、VdはダイオードD11の順方向電圧降下の電圧値を表す。なお、V相低電圧異常検出回路62およびW相低電圧異常検出回路63についても同様である。
Vth1+Vbe<Vz<Vth2−Vd+Vbe ・・・(1)
【0024】
U相ゲートドライブ電源回路51から出力されるU相ゲートドライブ電源の電圧値が低下すると、U相低電圧異常検出回路61において、ツェナーダイオードZ11がブレイクダウンし、トランジスタT11がオン状態になる。すると、U相バックアップ電源回路71において、ツェナーダイオードZ1のツェナー電圧からトランジスタT1のゲートがオンになるゲート閾値電圧を引いた電圧値が、バックアップ用のU相ゲートドライブ電源として出力される。なお、V相低電圧異常検出回路62およびV相バックアップ電源回路72と、W相低電圧異常検出回路63およびW相バックアップ電源回路73とについても、同様である。
【0025】
以上説明したように、U相低電圧異常検出回路61では、トランジスタT11のオンオフ状態に応じて、U相バックアップ電源回路71によるU相ゲートドライブ電源のバックアップの有効・無効を制御している。これにより、U相ゲートドライブ電源回路51に異常が発生してからバックアップ用の電源供給が開始されるまでの時間を短縮している。なお、U相以外のV相、W相についても同様である。
【0026】
(比較例)
ここで、本発明の比較例として、ゲートドライブ電源のバックアップ機能を有しない電力変換装置について説明する。図4は、本発明の比較例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図4に示す電力変換装置1Nは、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70を備えていない点以外は、図1に示した電力変換装置1と同様の構成を有している。
【0027】
電力変換装置1Nでは、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70を備えていないため、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生すると、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が共に低下し続ける。その結果、上アームゲート回路30と下アームゲート回路40から制御回路10に対して、上アームゲート回路異常信号と下アームゲート回路異常信号がそれぞれ出力される。この場合、制御回路10は、上アームゲート回路30に対して、上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオフさせるようにPWM信号を出力すると共に、下アームゲート回路40に対しても、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオフさせるようにPWM信号を出力する。
【0028】
上記のように、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22において全てのスイッチング素子がオフされてしまうと、モータの回転によって生じる起電力がスイッチング素子に対して印加される。そのため、モータの回転数が高い状態では、モータの起電力がスイッチング素子の耐圧を超過してしまい、スイッチング素子が破壊に至るおそれがある。また、モータの起電力によって生じた回生電流が高圧バッテリに流れ込み、回生トルクが発生するという問題も生じる。電力変換装置1Nでは、下アームゲート回路40にバックアップ用のゲートドライブ電源を供給できないため、これらの問題を回避することができない。
【0029】
以上説明したように、比較例による電力変換装置1Nでは、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生すると、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の両方がオフになってしまう。そのため、上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22の一方において、そのスイッチング回路を構成する全てのスイッチング素子をオンさせる3相ショート状態とすることができずに、モータを安全状態に移行することが困難となる。
【0030】
一方、本発明の一実施形態による電力変換装置1では、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生すると、バックアップ電源回路70から下アームゲート回路40に対してバックアップ用のゲートドライブ電源を供給し、下アームゲート回路40の動作を継続させるようにする。そのため、インバータ回路部20では、下アームゲート回路40からのゲート信号に応じて、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とし、モータを安全状態に移行することができる。
【0031】
なお、以上説明した本発明の実施形態は、以下のように変形してもよい。
【0032】
(第1の変形例)
図5は、本発明の第1の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図5に示す電力変換装置1Aでは、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70が上アームゲート回路30に接続されている。そのため、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生し、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30に印加されるゲートドライブ電源の電圧が低下して低電圧異常検出電圧範囲に達すると、ゲートドライブ電源回路50に代わって、バックアップ用のゲートドライブ電源が上アームゲート回路30に供給される。これにより、インバータ回路部20では、上アームゲート回路30からのゲート信号に応じて、上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とし、モータを安全状態に移行することができるようになっている。これ以外の点は、第1の実施形態で説明した電力変換装置1と同様である。
【0033】
(第2の変形例)
図6は、本発明の第2の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図6に示す電力変換装置1Bでは、低電圧異常検出回路60Aおよびバックアップ電源回路70Aが下アームゲート回路40に接続されていると共に、低電圧異常検出回路60Bおよびバックアップ電源回路70Bが上アームゲート回路30に接続されている。なお、低電圧異常検出回路60A、60Bは、第1の実施形態で説明した低電圧異常検出回路60とそれぞれ同様のものであり、バックアップ電源回路70A、70Bは、第1の実施形態で説明したバックアップ電源回路70とそれぞれ同様のものである。そのため、ゲートドライブ電源回路50に故障が発生し、ゲートドライブ電源回路50から出力されるゲートドライブ電源の電圧が低下して低電圧異常検出電圧範囲に達すると、ゲートドライブ電源回路50に代わって、バックアップ用のゲートドライブ電源が上アームゲート回路30および下アームゲート回路40にそれぞれ供給される。これにより、インバータ回路部20Bでは、上アームゲート回路30または下アームゲート回路40からのゲート信号に応じて、上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22のうちいずれか任意の一方の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とし、他方の全てのスイッチング素子をオフさせてオープン状態とすることで、モータを安全状態に移行することができるようになっている。
【0034】
さらに、図6の電力変換装置1Bでは、インバータ回路部20Bが温度検出回路23を有している。温度検出回路23は、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22の各スイッチング素子の温度を検出し、その検出結果に応じた温度検出信号を制御回路10に出力する。制御回路10は、温度検出回路23から入力される温度検出信号に基づいて、ショート状態で駆動させるスイッチング回路を上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22のいずれか一方から他方へと切り替える。すなわち、ショート状態で駆動中のスイッチング回路においていずれかのスイッチング素子の温度が所定温度以上になった場合、制御回路10は当該スイッチング素子が過温度状態にあると判断し、ショート状態で駆動させるスイッチング回路を他方へと切り替える。これ以外の点は、第1の実施形態で説明した電力変換装置1と同様である。
【0035】
(第3の変形例)
図7は、本発明の第3の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図7に示す電力変換装置1Cでは、上アームゲート回路30から出力された上アームゲート回路異常信号が、制御回路10ではなく下アームゲート回路40に入力される。上アームゲート回路30から上アームゲート回路異常信号が入力されると、下アームゲート回路40は、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とする。これにより、モータを安全状態に移行することができるようになっている。これ以外の点は、第1の実施形態で説明した電力変換装置1と同様である。
【0036】
なお、図7では、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70を下アームゲート回路40に接続すると共に、上アームゲート回路30から出力された上アームゲート回路異常信号を下アームゲート回路40に入力している。しかし、上アームゲート回路30と下アームゲート回路40を入れ替えても、同様の動作とすることができる。すなわち、第1の変形例のように、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70が上アームゲート回路30に接続されたものにおいて、下アームゲート回路40から出力された下アームゲート回路異常信号を上アームゲート回路30に入力してもよい。この場合、下アームゲート回路40から下アームゲート回路異常信号が入力されると、上アームゲート回路30は、上アームスイッチング回路21の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とする。このようにしても、モータを安全状態に移行することができる。
【0037】
(第4の変形例)
図8は、本発明の第4の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図8に示す電力変換装置1Dでは、バックアップ電源回路70の出力が、下アームゲート回路40に加えて、さらにインバータ回路部20Dが有する温度検出回路23およびアクティブディスチャージ回路24にも接続されている。温度検出回路23は、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22の各スイッチング素子の温度を検出し、その検出結果に応じた温度検出信号を制御回路10に出力する。アクティブディスチャージ回路24は、インバータ回路部20Dにおいて、作業者や運転者による不慮の感電を防止するために、不図示の平滑コンデンサ等に蓄積された電荷を電源切断時等に急速に放出させる。これにより、モータ停止時の安全性をさらに向上させている。これ以外の点は、第1の実施形態で説明した電力変換装置1と同様である。
【0038】
なお、図8では、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70を下アームゲート回路40に接続している。しかし、上アームゲート回路30と下アームゲート回路40を入れ替えても、同様の動作とすることができる。すなわち、第1の変形例のように、低電圧異常検出回路60およびバックアップ電源回路70が上アームゲート回路30に接続されたものにおいて、バックアップ電源回路70から温度検出回路23およびアクティブディスチャージ回路24にバックアップ用のゲートドライブ電源を供給してもよい。さらに、第2の変形例のように、低電圧異常検出回路60Aおよびバックアップ電源回路70Aが下アームゲート回路40に接続されると共に、低電圧異常検出回路60Bおよびバックアップ電源回路70Bが上アームゲート回路30に接続されたものにおいて、バックアップ電源回路70Aおよび70Bの少なくとも一方から温度検出回路23およびアクティブディスチャージ回路24にバックアップ用のゲートドライブ電源を供給してもよい。あるいは、図6に示した第2の変形例に係る電力変換装置1Bにおいて、バックアップ電源回路70Aおよび70Bの少なくとも一方から温度検出回路23にバックアップ用のゲートドライブ電源を供給してもよい。このようにしても、モータ停止時の安全性をさらに向上させることができる。
【0039】
(第5の変形例)
図9は、本発明の第5の変形例に係る電力変換装置の構成を示す図である。図9に示す電力変換装置では、第1の実施形態で説明した電力変換装置1と、比較例で説明した電力変換装置1Nとが、共通の交流モータ80に接続されている。すなわち、図1で説明した電力変換装置1のインバータ回路部20と、図4で説明した電力変換装置1Nのインバータ回路部20とは、共通の交流モータ80に接続されており、この交流モータ80に対して交流電力をそれぞれ供給する。
【0040】
電力変換装置1、1Nにおいてゲートドライブ電源回路50に故障が発生し、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が低下すると、電力変換装置1のバックアップ電源回路70は、電力変換装置1の下アームゲート回路40にバックアップ用のゲートドライブ電源を供給する。これにより、下アームスイッチング回路22の全てのスイッチング素子をオンさせてショート状態とすることができる。一方、電力変換装置1Nはバックアップ電源回路70を有していないため、電力変換装置1Nの下アームゲート回路40にはバックアップ用のゲートドライブ電源が供給されず、下アームスイッチング回路22をショート状態とすることができない。しかし、電力変換装置1と電力変換装置1Nは同一の交流モータ80に接続されているため、上記のように電力変換装置1の下アームスイッチング回路22をショート状態とすることで、電力変換装置1Nにおいて前述のような問題が生じることはない。
【0041】
なお、図9では、電力変換装置1と電力変換装置1Nとを共通の交流モータ80に接続しているが、電力変換装置1を各変形例で説明した電力変換装置1A〜1Dに置き換えてもよい。また、3つ以上の電力変換装置を一つの交流モータ80に接続してもよい。交流モータ80に共通に接続された複数の電力変換装置のうち少なくとも一つが、前述の実施形態および各変形例で説明したような電力変換装置であれば、任意の構成とすることが可能である。
【0042】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0043】
(1)電力変換装置1,1A〜1Dは、複数のスイッチング素子をそれぞれ有する上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22を含むインバータ回路部20と、上アームスイッチング回路21にゲート信号を出力する上アームゲート回路30と、下アームスイッチング回路22にゲート信号を出力する下アームゲート回路40と、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40にゲートドライブ電源を供給するゲートドライブ電源回路50と、ゲートドライブ電源回路50に代わって、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方にゲートドライブ電源を供給するバックアップ電源回路70と、を備える。ゲートドライブ電源回路50は、所定の正常電圧範囲110内でゲートドライブ電源を供給可能である。バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合に、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方にゲートドライブ電源を供給する。上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方は、バックアップ電源回路70からゲートドライブ電源を供給されているときには、上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22の一方のスイッチング回路では全てのスイッチング素子をオンさせるショート状態とし、他方のスイッチング回路では全てのスイッチング素子をオフさせるオープン状態として、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22をそれぞれ駆動させる。このようにしたので、ゲートドライブ電源喪失時の可用性を向上させることができる。
【0044】
(2)ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方に印加されるゲートドライブ電源の電圧が、正常電圧範囲110よりも低い所定の低電圧異常検出電圧範囲111内である場合に、低電圧異常を検出してバックアップ電源回路70を動作させる低電圧異常検出回路60をさらに備える。このようにしたので、適切なタイミングでバックアップ電源回路70からバックアップ用のゲートドライブ電源を供給することができる。
【0045】
(3)上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方は、ゲートドライブ電源回路50から供給されるゲートドライブ電源の電圧が所定の動作停止電圧Vth1未満となったときに、オープン状態で上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22をそれぞれ駆動させる。バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低く、かつ動作停止電圧Vth1よりも高い場合に、上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方にゲートドライブ電源を供給する。このようにしたので、上アームゲート回路30や下アームゲート回路40が正常に動作できない低電圧異常状態となる前に、バックアップ用のゲートドライブ電源を供給することができる。
【0046】
(4)電力変換装置1では、バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合に、下アームゲート回路40にゲートドライブ電源を供給する。このようにしたので、ゲートドライブ電源喪失時の可用性を向上させる際に、消費電力の削減、回路規模の低減、低コスト化等を実現できる。
【0047】
(5)電力変換装置1Aでは、バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合に、上アームゲート回路30にゲートドライブ電源を供給する。このようにしたので、上記と同様に、ゲートドライブ電源喪失時の可用性を向上させる際に、消費電力の削減、回路規模の低減、低コスト化等を実現できる。
【0048】
(6)電力変換装置1Bでは、バックアップ電源回路70A,70Bは、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合には、上アームゲート回路30にゲートドライブ電源を供給し、ゲートドライブ電源回路50から下アームゲート回路40に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合には、下アームゲート回路40にゲートドライブ電源を供給する。このようにしたので、ゲートドライブ電源喪失時の可用性をさらに向上させることが可能となる。
【0049】
(7)また、電力変換装置1Bでは、インバータ回路部20Bは、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22の各スイッチング素子の温度を検出する温度検出回路23を有する。上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22の一方のスイッチング回路がショート状態で駆動されているときに、温度検出回路23で検出されたスイッチング素子の温度が所定温度以上になった場合、ショート状態で駆動させるスイッチング回路を一方のスイッチング回路から他方のスイッチング回路に切り替え、オープン状態で駆動させるスイッチング回路を他方のスイッチング回路から一方のスイッチング回路に切り替える。このようにしたので、一方のスイッチング回路においてスイッチング素子が過温度状態になった場合でも、一方のスイッチング回路でショート状態を継続させることができる。
【0050】
(8)電力変換装置1Cでは、上アームゲート回路30または下アームゲート回路40の一方のゲート回路は、ゲートドライブ電源回路50から供給されるゲートドライブ電源の電圧が所定の動作停止電圧Vth1未満となったときに、他方のゲート回路へ所定の異常信号を出力する。他方のゲート回路は、一方のゲート回路から異常信号が入力されると、ショート状態で上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22を駆動させる。このようにしたので、制御回路10が正常に動作できない場合でも、上アームスイッチング回路21または下アームスイッチング回路22をショートとすることができるため、ゲートドライブ電源喪失時の可用性をさらに向上させることが可能となる。
【0051】
(9)電力変換装置1Dでは、インバータ回路部20Dは、上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22の各スイッチング素子の温度を検出する温度検出回路23と、インバータ回路部20Dに蓄積された電荷を放出するアクティブディスチャージ回路14とを有する。バックアップ電源回路70は、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合に、温度検出回路23およびアクティブディスチャージ回路24の少なくとも一方にもバックアップ用のゲートドライブ電源を供給する。また、電力変換装置1Bにおいて、バックアップ電源回路70A、70Bは、ゲートドライブ電源回路50から上アームゲート回路30および下アームゲート回路40の少なくとも一方に印加されるゲートドライブ電源の電圧が正常電圧範囲110よりも低い場合に、温度検出回路23にもバックアップ用の電源を供給することとしてもよい。このようにしたので、モータ停止時の安全性をさらに向上させることができる。
【0052】
(10)第5の変形例で説明した電力変換装置は、電力変換装置1に加えて、複数のスイッチング素子をそれぞれ有する上アームスイッチング回路21および下アームスイッチング回路22を含むインバータ回路部20と、上アームスイッチング回路21にゲート信号を出力する上アームゲート回路30と、下アームスイッチング回路22にゲート信号を出力する下アームゲート回路40とを有する電力変換装置1Nをさらに備える。電力変換装置1のインバータ回路部20および電力変換装置1Nのインバータ回路部20は、共通の交流モータ80に接続されている。電力変換装置1のバックアップ電源回路70は、電力変換装置1Nの上アームゲート回路30および下アームゲート回路40のいずれにもゲートドライブ電源を供給しない。このようにしたので、複数のインバータでモータを駆動する構成の電力変換装置において、低コストでゲートドライブ電源喪失時の可用性を向上させることができる。
【0053】
以上説明した実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,1A,1B,1C,1D,1N:電力変換装置、10:制御回路、20,20B,20D:インバータ回路部、21:上アームスイッチング回路、22:下アームスイッチング回路、23:温度検出回路、24:アクティブディスチャージ回路、30:上アームゲート回路、40:下アームゲート回路、50:ゲートドライブ電源回路、60,60A,60B:低電圧異常検出回路、70,70A,70B:バックアップ電源回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9