【文献】
NEUMANN,M.G. et. al.,The relation between the polymerization rates and swelling coefficients for copolymers obtained by photoinitiation,Polymer Testing,2007年,Vol.26, No.2,pp.189-194
【文献】
JILEK,J.O. et. al.,Neurotropic and psychotropic substances. VII. 2-Alkoxy-9-(3-dimethylaminopropylidene)thioxanthenes and further prothixene derivatives,Collection of Czechoslovak Chemical Communications,1966年,Vol.31,pp.269-278
【文献】
CLAVIER,G.M. et. al.,2,3-Di-n-alkoxyanthraquinones as gelators of organic solvents,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 2: Physical Organic Chemistry,1998年,No.11,pp.2527-2534
【文献】
HU,Y. et. al.,Side chain position, length and odd/even effects on the 2D self-assembly of mono-substituted anthraquinone derivatives at the liquid/solid interface,RSC Advances,2015年,Vol.5, No.113,pp.93337-93346
【文献】
JEFFERSON,A. et. al.,Gas-liquid chromatography of naturally occurring xanthones and related derivatives,Journal of Chromatography,1971年,Vol.57, No.2,pp.247-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
300nm〜450nmの波長を有する放射線への曝露により請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物C1を架橋するステップを含む、剥離特性を有するシリコーンフィルムの調製方法。
請求項8から9のいずれか一項に記載の組成物C2を、300nmから450nmとの間の波長を有する放射線に曝露することにより架橋するステップを含む、シリコーンエラストマー製物品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明は、シリコーン組成物C1に関し、当該シリコーン組成物C1は、300〜450nmの波長の放射線への曝露により架橋可能であり、
ケイ素原子に結合した少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンA、
それぞれ異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の水素原子を含む少なくとも1種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンH、及び
少なくとも1種の以下の式(I)のフリーラジカル光開始剤P:
(式中、
記号Xは、酸素原子、硫黄原子、CH
2基及びカルボニル基からなるグループから選択され、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。)
を含む。
【0020】
放射線下で光架橋を得るために、組成物は、入射光エネルギーの吸収効果の下で、媒体中にフリーラジカルを放出するタイプII光開始剤システムを含む。これらのラジカルは、(メタ)アクリル官能基のフリーラジカル重合の開始剤の役割を果たす。それが組成物の硬化のきっかけであるため、光開始剤システムはこの用途の重要な鍵である。
【0021】
したがって、本発明は、上記で定義されたフリーラジカル光開始剤Pと、共開始剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンHとの組み合わせを含む特定のタイプII光開始剤システムの使用に基づいている。
【0022】
シリコーン組成物C1は、紫外線又は可視光線への曝露により効率的に架橋するという利点を有する。さらに、式(I)のフリーラジカル光開始剤Pは、ベンゾフェノン又はイソプロピルチオキサントンなどの市販のフリーラジカル光開始剤よりも、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むポリオルガノシロキサンにより溶けやすいという利点を有する。
【0023】
本文書を通して、従来の命名法の要素を参照して、シリコーン化学で広く知られている名称に従って、ポリオルガノシロキサンのシロキシ単位M、D、T、Qを示す。
M=式R
3SiO
1/2のシロキシ単位
D=式R
2SiO
2/2のシロキシ単位
T=式RSiO
3/2のシロキシ単位、及び
Q=式SiO
4/2のシロキシ単位
ここで、ラジカルRは同一でも異なっていてもよく、一価の基である。
【0024】
本文書で説明されているすべての粘度は、「ニュートン」と呼ばれる25℃での動的粘度の大きさに対応する(特に明記しない限り)。すなわち、それ自体知られている方法で、測定された粘度がせん断速度勾配から独立するのに十分低いせん断速度勾配でブルックフィールド粘度計で測定される動的粘度である。
【0025】
本発明の架橋可能なシリコーン組成物C1は、ケイ素原子に結合した少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンAを含む。シリコーンが持つ(メタ)アクリレート官能基の代表例で、かつ本発明に非常に特に適するものとして、特に、アクリレート及びメタクリレート誘導体、Si−C結合によってポリシロキサン鎖に結合した(メタ)アクリレートのエーテル、及び(メタ)アクリレートのエステルを挙げることができる。
【0026】
一実施形態によれば、ポリオルガノシロキサンAは以下を含む。
a1)少なくとも1つの次の式(A1)の単位:
R
aZ
bSiO
(4-a-b)/2 (A1)
(式中、
記号Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれが直鎖又は分岐の、C
1〜C
18のアルキル基、C
6〜C
12のアリール基又はC
6〜C
12のアラルキル基を表し、ここで、Rは置換されていてもよく、好ましくは、ハロゲン原子、又はアルコキシ基−OR
4(R
4が水素原子又は1から10個の炭素原子を含む炭化水素基である。)に置換されていてもよく、
記号Zは、式−y−(Y’)
nの一価の基であり、
ここで、
■yは、任意的に二価のC
1〜C
4のオキシアルキレンによって延長され得る直鎖又は分岐の多価C
1〜C
18アルキレン基又は任意的にヒドロキシ基によって置換され得るポリオキシアルキレン基を表し、
■Y’は一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、そして
■nは1、2又は3に等しく、そして
「a」は0、1又は2に等しい整数であり、bは1又は2に等しい整数であり、合計a+bは1、2又は3である。);及び
a2)任意的に次の式(A2)の単位:
R
aSiO
(4-a)/2 (A2)
(式中、
記号Rは、同一でも異なっていてもよく、それぞれが直鎖又は分岐の、C
1〜C
18のアルキル基、C
6〜C
12のアリール基又はC
6〜C
12のアラルキル基を表し、ここで、Rは置換されていてもよく、好ましくは、ハロゲン原子に置換されていてもよく、
「a」は、0、1、2、又は3に等しい整数である。)
【0027】
上記の式(A1)及び(A2)において、記号Rは、有利にはメチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなるグループから選択される一価の基を表してもよい。
【0028】
ポリオルガノシロキサンAは、線状、分岐、環状又は網状構造を有していてもよい。それらが線状ポリオルガノシロキサンである場合、後者は本質的に以下から構成されてもよい:
・式R
2SiO
2/2、RZSiO
2/2及びZ
2SiO
2/2の単位から選択されたシロキシ単位「D」;
・式R
3SiO
1/2、R
2ZSiO
1/2、RZ
2SiO
1/2及びZ
3SiO
1/2の単位から選択されたシロキシ単位「M」;そして
・前記記号R及びZは、式(A1)で定義したとおりである。
【0029】
一実施形態によれば、上記式(A1)において、前述のアルケニルカルボニルオキシ基Y’のうち、アクリロキシ基[CH
2=CH−CO−O−]及びメタクリロキシ基
:[CH
2=C(CH
3)−CO−O−]を挙げることができる。
【0030】
式(A1)の単位における前記記号Zにおける記号yの例として、以下の基を挙げることができる:
−CH
2−;
−(CH
2)
2−;
−(CH
2)
3−;
−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−;
−(CH
2)
3−NH−CH
2−CH
2−;
−(CH
2)
3−OCH
2−;
−(CH
2)
3−[O−CH
2−CH(CH
3)−]−;
−(CH
2)
3−O−CH
2−CH(OH)(−CH
2−);
−(CH
2)
3−O−CH
2−C(CH
2−CH
3)[−(CH
2)
2−]
2;及び
−(CH
2)
2−C
6H
9(OH)−
【0031】
好ましくは、ポリオルガノシロキサンAは、以下の式(III)に対応する:
式中、
記号R
1は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが直鎖又は分岐の、C
1〜C
18のアルキル基、C
6〜C
12のアリール基又はC
6〜C
12のアラルキル基を表し、ここで、Rは置換されていてもよく、好ましくは、ハロゲン原子、又はアルコキシ基−OR
4(R
4が水素原子又は1から10個の炭素原子を含む炭化水素基である。)に置換されていてもよく、
記号R
2及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれが基R
1又は式Z=−w−(Y’)
nの一価基のいずれかを表し、
ここで、
■wは、任意的に二価のC
1〜C
4のオキシアルキレンによって延長され得る直鎖又は分岐の多価C
1〜C
18アルキレン基又は任意的にヒドロキシ基によって置換され得るポリオキシアルキレン基を表し、
■Y’は一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、そして
■nは1、2又は3に等しく、そして
aは0〜1000であり、bは0〜500であり、cは0〜500であり、dは0〜500であり、a+b+c+dは0〜2500であり、
ここで、少なくとも1つの記号R
2又は記号R
3が式Zの1価の基を表すという条件がある。
【0032】
好ましい実施形態によれば、上記の式(III)において:
c=0、d=0、aは1〜1000であり、bは1〜250であり、記号R
2は式Zの一価の基を表し、記号R
1及び記号R
3は上記と同じ意味を持つ。
【0033】
さらにより好ましくは、上記の式(III)において:
c=0、d=0、aは1〜500であり、bは1〜100であり、記号R
2は式Zの一価の基を表し、記号R
1及び記号R
3は上記と同じ意味をもつ。
【0034】
一実施形態によれば、本発明によるポリオルガノシロキサンAは、以下の式(IV)に対応する:
式中、
Xは1と1000との間にあり、
nは1とび100との間にある。
【0035】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは、それぞれ異なるケイ素原子に結合した少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個の水素原子を含む。
【0036】
「シリコン原子に結合した…水素原子」という表現は、Si−H官能基又はSi−H結合又は水素−シリル官能基を意味する。
【0037】
好ましい実施形態によれば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは以下を含む。
(i)少なくとも2つの式(H1)の単位、
H
dL
eSiO
(4-(d+e))/2 (H1)
ここで、
Lは、水素原子とは異なる一価の基を表し、
Hは水素原子を表し、
d及びeは整数を表し、dは1又は2の値、eは0、1又は2の値、(d+e)は1、2又は3の値を有する。
(ii)及び、任意的に他の式(H2)の単位:
L
fSiO
(4-f)/2 (H2)
ここで、
Lは上記と同じ意味を持ち、
fは、0、1、2、又は3の値を持つ整数を表す。
【0038】
上記の式(H1)及び(H2)において、複数の基Lが存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。式(H1)において、記号dは好適に1の値を有してもよい。さらに、式(H1)及び式(H2)において、Lは、好ましくは、任意的に少なくとも1つのハロゲン原子で置換され得る1〜8個の炭素原子を有するアルキル基と、アリール基とからなるグループから選択される一価の基を表してもよい。Lは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなるグループから選択される一価の基を表してもよい。式(H1)の単位の例は次のとおりである:H(CH
3)
2SiO
1/2、H(CH
3)SiO
2/2及びH(C
6H
5)SiO
2/2。
【0039】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは、線状、分岐、環状又は網状構造を有していてもよい。それらが線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合、後者は本質的に以下から構成されてもよい:
・式HLSiO
2/2の単位(単位D’とも呼ばれる)及びL
2SiO
2/2の単位から選択されるシロキシ単位「D」;そして
・式HL
2SiO
1/2の単位(単位M’とも呼ばれる)及びL
3SiO
2/2の単位から選択されたシロキシ単位「M」;そして
・記号Lは上記と同じ意味を持ち、記号Hは水素原子を示す。
【0040】
これらの線状オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは、25℃で1mPa・s〜100,000mPa・s、好ましくは1mPa・s〜5000mPa・s、さらにより好ましくは1mPa・s〜2000mPa・sの動的粘度を有する油であってもよい。
【0041】
それらが環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである場合、それらは、式HLSiO
2/2及びL
2SiO
2/2の単位から選択されるシロキシ単位「D」、又は式HLSiO
2/2のみのシロキシ単位からなり得る。式L
2SiO
2/2の単位は、特に、ジアルキルシロキシ単位又はアルカリールシロキシ単位であってもよい。これらの環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃で1mPa・sと5000mPa・sとの間の動的粘度を有してもよい。
【0042】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンHの例:
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリジメチルシロキサン;
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン−co−ヒドロゲノメチルシロキサン);
・ヒドロゲノジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン−co−ヒドロゲノメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を持つポリハイドロジェンメチルシロキサン;及び
・環状ヒドロゲノメチルポリシロキサン。
【0043】
それらが分岐又は網状オルガノハイドロジェンポリシロキサンHである場合、それらはさらに以下を含んでもよい:
・式HSiO
3/2及びLSiO
3/2の単位から選択されたシロキシ単位「T」。
・式SiO
4/2のシロキシ単位「Q」、
・記号Hは水素原子を表し、Lは上記と同じ意味を持つ。
【0044】
一実施形態によれば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは、ポリマー100g当たり少なくとも0.05モルのSi−H官能基、好ましくはポリマー100g当たり少なくとも0.08モルのSi−H官能基、より好ましくはポリマー100g当たり0.08モル〜2.5モルのSi−H官能基、さらにより好ましくはポリマー100g当たり0.08モル〜1.8モルのSi−H官能基を含む。
【0045】
シリコーン組成物C1は、以下の式(I)のフリーラジカル光開始剤Pを含む:
式中、
記号Xは、酸素原子、硫黄原子、CH
2基及びカルボニル基からなるグループから選択され、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。
【0046】
本発明の有利な実施形態によれば、上記式(I)において、R
2=R
3=R
4=Hであり、R
1=OH又は上記で定義された−OZである。
【0047】
別の実施形態によれば、上記式(I)において、R
1=R
2=R
4=Hであり、R
3=OH又は上記で定義された−OZである。
【0048】
一実施形態によれば、フリーラジカル光開始剤Pは、以下の式(Ia)のチオキサントン誘導体からなる群から選択される:
式中、
記号Xは、硫黄原子であり、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。
【0049】
本発明の有利な実施形態によれば、上記式(Ia)において、R
2=R
3=R
4=Hであり、R
1=OH又は上記で定義された−OZである。
【0050】
別の実施形態によれば、上記式(Ia)において、R
1=R
2=R
4=Hであり、R
3=OH又は上記で定義された−OZである。
【0051】
式(Ia)のフリーラジカル光開始剤Pの例として、特に以下の化合物を挙げることができる:
2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、RN−CAS=31696−67−0、
2−メトキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、RN−CAS=40478−82−8、
2−エトキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、RN−CAS=5543−66−8、
2−ヘキシルオキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、RN−CAS=5596−56−5、
2−オクチルオキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、後述の式(6)
2−デシルオキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、後述の式(7)
2−ドデシルオキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、後述の式(8)
2−アセチルオキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、RN−CAS=92439−12−8、
2−[(トリメチルシリル)オキシ]−9H−チオキサンテン−9−オン、後述の式(17)
2−プロペン酸9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル、RN−CAS=113797−58−3、
2−ネオデカン酸9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル、後述の式(20)
4−ネオデカン酸9−オキソ−9H−チオキサンテン−2−イルエステル、後述の式(25)及び
4−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン、後述の式(23)。
【0052】
別の実施形態によれば、フリーラジカル光開始剤Pは、以下の式(Ib)のキサントン誘導体からなるグループから選択される:
式中、
記号Xは、酸素原子であり、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。
【0053】
本発明の有利な実施形態によれば、上記式(Ib)において、R
2=R
3=R
4=Hであり、R
1=OH又は上記で定義された−OZである。
【0054】
別の実施形態によれば、上記式(Ib)において、R
1=R
2=R
4=Hであり、R
3=OH又は上記で定義された−OZである。
【0055】
式(Ib)のフリーラジカル光開始剤Pの例として、特に以下の化合物を挙げることができる:
2−ヒドロキシ−9H−キサンテン−9−オン、RN−CAS=1915−98−6、
2−メトキシ−9H−キサンテン−9−オン、RN−CAS=1214−20−6、
2−エトキシ−9H−キサンテン−9−オン、RN−CAS=103573−60−0、
2−ヘキシルオキシ−9H−キサンテン−9−オン、後述の式(1)
2−オクチルオキシ−9H−キサンテン−9−オン、後述の式(2)
2−デシルオキシ−9H−キサンテン−9−オン、後述の式(3)
2−ドデシルオキシ−9H−キサンテン−9−オン、後述の式(4)
2−[(トリメチルシリル)オキシ]−9H−キサンテン−9−オン、RN−CAS=32747−67−4、後述の式(18)、
2−ネオデカン酸9−オキソ−9H−キサンテン−2−イルエステル、後述の式(19)
4−ネオデカン酸9−オキソ−9H−キサンテン−2−イルエステル、後述の式(24)及び
4−ヒドロキシ−9H−キサンテン−9−オン、RN−CAS=14686−63−6。
【0056】
一実施形態によれば、フリーラジカル光開始剤Pは、以下の式(Ic)のアントラセノン誘導体からなるグループから選択される:
式中、
記号Xは、CH
2基であり、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。
【0057】
本発明の有利な実施形態によれば、上記式(Ic)において、R
2=R
3=R
4=Hであり、R
1=OH又は上記で定義された−OZである。
【0058】
別の実施形態によれば、上記式(Ic)において、R
1=R
2=R
4=Hであり、R
3=OH又は上記で定義された−OZである。
【0059】
式(Ic)のアントラセノンからの誘導体であるフリーラジカル光開始剤Pの例として、2−メトキシ−10H−アントラセン−9−オン(RN−CAS=53604−95−8)及び4−メトキシ−10H−アントラセン−9−オン(RN−CAS=7470−93−1)及び後述の式(13)、(14)、(15)、(16)及び(22)の化合物を挙げることができる。
【0060】
一実施形態によれば、フリーラジカル光開始剤Pは、以下の式(Id)のアントラキノンの誘導体からなるグループから選択される。
式中、
記号Xは、カルボニル基であり、
記号R
2及びR
4は水素原子であり、
記号R
1及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシル及び式−OZの基からなるグループから選択され、記号Oが酸素原子であり、記号Zが以下からなるグループから選択される:
■C
1〜C
20、好ましくはC
3〜C
20のアルキル基又はC
2〜C
20のアルケニル基;
■基−(C=O)−R
5であって、基R
5がC
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基及びC
6〜C
12のアリール基から選択される基;及び
■基−Si(R
6)
3。ここで、基R
6は同一でも異なっていてもよく、C
1〜C
20のアルキル基、C
2〜C
20のアルケニル基、C
3〜C
20のシクロアルキル基、C
6〜C
12のアリール基、C
1〜C
20のアルコキシル基及び水素原子から選択される基である。
ここで、置換基R
1又はR
3の少なくとも1つがヒドロキシル又は式−OZの基であるという条件がある。
【0061】
本発明の有利な実施形態によれば、上記式(Id)において、R
2=R
3=R
4=Hであり、R
1=OH又は上記で定義された−OZである。
【0062】
別の実施形態によれば、上記式(Id)において、R
1=R
2=R
4=Hであり、R
3=OH又は上記で定義された−OZである。
【0063】
式(Id)のアントラキノンからの誘導体であるフリーラジカル光開始剤Pの例として、2−ドデシルオキシ−10H−アントラキン−9−オン(RN−CAS=218961−85−4)及びオクタン酸、9,10−ジヒドロ−9,10−ジオキソ−2−アントラセニルエステル(RN−CAS=110484−84)及び後述の式(9)、(10)、(11)、(12)及び(21)の化合物を挙げることができる。
【0064】
有利な実施形態によれば、フリーラジカル光開始剤Pは、上記の式(Ia)のチオキサントンの誘導体及び式(Ib)のキサントンの誘導体から選択される。365nmで吸収するキサントン誘導体と395nmで吸収するチオキサントン誘導体は、LEDで使用できるため、好ましい。
【0065】
一実施形態によれば、本発明による架橋可能なシリコーン組成物C1は、組成物C1の100g当たり少なくとも0.0003モルのフリーラジカル光開始剤P、好ましくは組成物C1の100g当たり少なくとも0.0005モルのフリーラジカル光開始剤Pを含む。好ましくは、本発明の組成物C1中のフリーラジカル光開始剤Pのモル含有量は、組成物C1の100g当たり0.0003〜0.015モル、さらに好ましくは組成物C1の100g当たり0.0005〜0.015モルである。
【0066】
一実施形態によれば、組成物C1は白金を含まない。
【0067】
本発明による架橋可能なシリコーン組成物C1は、少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。組成物中のシリコーン/接着剤界面の剥離力を制御する添加剤として、以下から選択される少なくとも1つの添加剤を含めることができる。
(i)(メタ)アクリレート有機誘導体、及び
(ii)(メタ)アクリレート官能基を持つシリコーン。
【0068】
エポキシ化(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリログリセロポリエステル、(メタ)アクリロウレタン、(メタ)アクリロポリエーテル、(メタ)アクリロポリエステル、及び(メタ)アクリロアクリル化合物は、(メタ)アクリレート有機誘導体として特に適している。トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが特により好ましい。
【0069】
本発明の好ましい別形態によれば、使用される添加剤は、(メタ)アクリレート官能基を有するシリコーンである。シリコーンが持つ(メタ)アクリレート官能基の代表として、本発明に特に非常に適したものとして、より具体的に、アクリレート及びメタクリレート誘導体、(メタ)アクリレートのエーテル、及びSi−C結合によりポリシロキサン鎖に結合したメタ(アクリレート)のエステルを挙げることができる。この種のアクリレート誘導体は、特に特許EP 0 281 718、FR 2 632 960及びEP 0 940 458に記載されている。
【0070】
本発明は、剥離特性を有するシリコーンフィルムを調製するための本発明による組成物C1の使用にも関する。
【0071】
好ましくは、これらのシリコーンフィルムを調製するために、上記定義の組成物C1として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンB中の光開始剤Pのモル数とSi−H官能基のモル数の比が0.5と20との間、好ましくは1と5との間であるものが使用される。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンBは、好ましくは100g当たり少なくとも0.08モル、好ましくは0.1モルと2.5モルとの間のSi−H官能基を含む。
【0072】
本発明は、上記で定義された組成物C1を架橋することにより得られるシリコーンエラストマーにも関する。
【0073】
本発明は、剥離特性を有するシリコーンフィルムを調製する方法にも関し、上記で定義された組成物C1を架橋するステップを含む。
【0074】
好ましくは、本発明による剥離特性を有するシリコーンフィルムを調製する方法において、上記定義の組成物C1として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンB中のフリーラジカル光開始剤Pのモル数とSi−H官能基のモル数の比が0.5と20との間、好ましくは1と5との間であるものが使用される。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンBは、好ましくは100g当たり少なくとも0.08モル、好ましくは0.1モルと2.5モルとの間のSi−H官能基を含む。
【0075】
本発明の方法の一実施形態によれば、架橋ステップは空気下又は不活性雰囲気下で実施される。好ましくは、この架橋ステップは不活性雰囲気下で実施される。
【0076】
一実施形態によれば、本発明による方法の架橋ステップは、200nmと450nmとの間の波長を有する放射線で実施され、好ましくは不活性雰囲気下で実施される。
【0077】
一実施形態によれば、本発明による方法の架橋ステップは、300nmと450nmとの間の波長を有する放射線で実施され、好ましくは不活性雰囲気下で実施される。
【0078】
本発明はまた、以下のステップを含む、基材上にコーティングを調製する方法に関する。
・上記で定義した架橋性組成物C1を基材に塗布し、そして
・200nmから450nmとの間の波長を有する放射線への曝露により前記組成物C1を架橋させる。
【0079】
放射線は、発光スペクトルが200nmから可視光に及ぶドープ又は非ドープの水銀蒸気ランプによって放出されることができる。頭字語LEDでよく知られているものとして、点光源UV又は可視光を提供する発光ダイオードなどの光源も使用できる。
【0080】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、放射線は発光ダイオードによって放出され、さらにより好ましくは、放射線は、365nm、385nm、395nm、又は405nmの波長を中心とする発光帯域を有する発光ダイオードによって放出される。
【0081】
照射時間は短くてもよく、一般には1分未満、好ましくは10秒未満であり、小さなコーティング厚みの場合、数百分の1秒程度もあり得る。得られた架橋は、加熱がなくても優れている。
【0082】
一実施形態によれば、架橋ステップは、10℃〜50℃、好ましくは15℃〜35℃の温度で実施される。
【0083】
もちろん、硬化速度は、特に使用されるランプの数、放射線への曝露の持続時間、及び組成物とランプとの間の距離によって制御されてもよい。
【0084】
溶媒を含まない、すなわち希釈されていない本発明による組成物C1は、少量の液体を均一に堆積させることができる装置を使用して適用することができる。この目的のために、例えば、特に以下の2つの重ねられたロールを含む「Helio glissant」と呼ばれる装置を使用することが可能である:組成物を含むコーティングタンクに浸る下部ロールの役割は、上部ロールに非常に薄い層をしみ込ませることであり、そしてその役割は、紙の上に、そのしみ込まれた組成物により所望の量の組成物を堆積させることであり、含浸されるこの計量は、2つの逆回転ロールのそれぞれの速度を制御することで得られる。
【0085】
基材上に堆積される組成物C1の量は可変であり、ほとんどの場合、処理表面において0.1〜5g/m
2である。これらの量は、基材の性質と必要な剥離特性に依存する。ほとんどの場合、非多孔質基材に対して0.5〜1.5g/m
2である。
【0086】
この方法は、繊維、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又は不織ガラス繊維の柔軟な基材のような基材上にシリコーン剥離コーティングを調製するのに特に適している。
【0087】
これらのコーティングは、付着防止分野での使用に特に適している。
【0088】
したがって、本発明は、上記で定義された方法により得られるコーティングされた基材にも関する。上記のように、基材は、織物、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又は不織ガラス繊維の柔軟な基材でもよい。
【0089】
コーティングされた基材は、付着防止、撥水特性を有するか、滑り性、耐汚染性又は柔軟性などの表面特性を改善する。
【0090】
本発明の別の態様は、300〜450nmの波長の放射線への曝露により熱架橋可能なシリコーン組成物C2に関し、前記シリコーン組成物C2は、
上記の少なくとも1つの組成物C1、
ケイ素原子に結合した少なくとも2つのアルケニル単位を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンB、及び
少なくとも1つのヒドロシリル化触媒
を含む。
【0091】
この組成物C2において、オルガノハイドロジェンポリシロキサンHは、ヒドロシリル化反応のためのフリーラジカル共開始剤及び架橋剤の役割を果たす。
【0092】
この特許出願全体を通して、「架橋」とは、メタ(アクリレート)官能基の重合反応、オルガノハイドロジェンポリシロキサンHのSi−H結合とポリオルガノシロキサンBのアルケニル基との重付加の反応、又はこの2つの組み合わせによる硬化をいう。
【0093】
「熱架橋可能なシリコーン組成物」という用語は、一般に60〜220℃、好ましくは80〜180℃の温度で加熱することにより硬化可能なシリコーン組成物を意味する。
【0094】
「放射線への曝露により架橋可能なシリコーン組成物」という用語は、放射線への曝露により硬化可能なシリコーン組成物を意味する。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、ポリオルガノシロキサンBは以下を含む。
(i)少なくとも2つの次の式のシロキシ単位(I.5)
(式中、
Aは1又は2、bは0、1又は2、そしてa+b=1、2又は3、であり、
Wは独立してアルケニル基、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、さらにより好ましくはビニル又はアリル基を表し、
Zは、独立して、1個から30個の炭素原子を有する一価炭化水素含有基を表し、好ましくは、1個から8個の炭素原子を有するアルキル基からなるグループから選択され、さらにより好ましくはメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピルラジカルからなるグループから選択される。)
(ii)及び任意的に次の式の他のシロキシ単位(I.6)
Z
cSiO
(4-c)/2 (I.6)
(式中、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは、0、1、2、又は3の値を持つ整数を表す。)
【0096】
ポリオルガノシロキサンBは、線形構造、場合により環状の構造を有していてもよい。これらの線状ポリオルガノシロキサンは、25℃で100mPa・sと1000000mPa・sとの間、より好ましくは1000mPa・sと120000mPa・sとの間の動的粘度を有する。
【0097】
ポリオルガノシロキサンBが線形式を有する場合、式(I.5)では、a=1、そしてa+b=2又は3であり、式(I.6)ではc=2又は3であることが理解される。上記の式(I.5)及び(I.6)において、いくつかの基W及びZが存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよいことが理解される。
【0098】
線形のポリオルガノシロキサンの場合、それらは以下からなる群から選択されてもよい:
ジメチルビニルシリル末端を持つポリジメチルシロキサン;
ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ビニルメチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン);
トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン−co−ビニルメチルシロキサン)及び
環状ポリメチルビニルシロキサン。
【0099】
ポリオルガノシロキサンBは分岐構造を有していてもよい。するとシリコーン樹脂と呼ばれる。有利には、それらは、ケイ素原子に結合した0.1〜20重量%、好ましくは4〜20重量%のC
2〜C
6アルケニル基を含むシリコーン樹脂である。アルケニル基は、M、D又はTシロキシ単位に位置してもよい。これらの樹脂は、例えば、米国特許−A−2 676 182、0.1から20%に記載されている方法により調製することができる。好ましくは、アルケニル基は、ビニル、アリル及びヘキセニルから選択される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態では、シリコーン樹脂は少なくとも2つのビニル基を含み、以下のシリコーン樹脂からなる群から選択される:
・ビニル基がDユニットに含まれるMD
ViQ;
・ビニル基がDユニットに含まれるMD
ViTQ;
・ビニル基がM単位の一部に含まれるMM
ViQ;
・ビニル基がM単位の一部に含まれるMM
ViTQ;
・ビニル基がM及びD単位の一部に含まれるMM
ViDD
ViQ;
・及びこれらの混合物。
ここで、
・M
Vi=式(R)
2(ビニル)SiO
1/2のシロキシ単位
・D
Vi=式(R)(ビニル)SiO
2/2のシロキシ単位
・基Rは同一でも異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を含むアルキル基から選択される一価炭化水素含有基であり、例えばメチル、エチル、プロピル及び3,3,3−トリフルオロプロピル基や、キシリル、トリル、フェニルなどのアリール基などである。好ましくは、基Rはメチルである。
【0101】
好ましくは、シリコーン樹脂は、上記の式MD
ViQ又はMM
ViQを有する。
【0102】
重付加触媒Kはよく知られている。白金とロジウムの化合物が好ましく使用される。特に、白金と有機生成物の錯体として、特許US−A−3 159 601、US−A−3 159 602、US−A−3 220 972及び欧州特許EP−A−0 057 459、EP−A−0 188 978及びEP−A−0 190 530に記載されているものを、白金及びビニル化オルガノシロキサンの錯体として、特許US−A−3 419 593、US−A−3 715 334、US−A−3 377 432及びUS−A−3 814 730に記載されているものを、カルベン配位子と白金の錯体EP1235836に記載されているものを、白金−ジエン錯体としてUS6605734及びUS20170057980に記載されているものを使用できる。WO2016044547に記載されている光活性化可能なヒドロシリル化触媒も使用することができる。鉄、ニッケル及びコバルトなどの卑金属の錯体をベースとする他の重付加触媒も使用できる。本発明の好ましい実施形態によれば、触媒Kは白金をベースとする。この場合、白金金属の重量として計算される触媒Kの重量による量は、組成物C2の総重量に基づいて、一般に2〜400ppm、好ましくは5〜200ppmである。
【0103】
有利には、組成物C2中の白金金属の含有量は、組成物C2の総重量に基づいて、10〜120ppmw、好ましくは10〜95ppmw、より好ましくは10〜70ppmw、さらにより好ましくは10〜60ppmwである。
【0104】
シリコーン組成物C2はさらに、以下の化合物の少なくとも1種を含んでもよい。
・阻害剤I、
・フィラーF及び
・接着促進剤G。
【0105】
フィラーFとして、補強用無機フィラー又は半補強若しくは充填用の鉱物フィラーを使用できる。補強鉱物フィラーは、ケイ質材料から選択されてもよい。ケイ質補強フィラーは、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカの粉末、沈降シリカの粉末、又はそれらの混合物から選択される。これらの粉末は、一般に0.1μm未満の平均粒径と、50m
2/gを超える、好ましくは150m
2/gと350m
2/gとの間のBET比表面積を有する。これらのシリカは、そのままで、又はこの用途において通常使用される有機ケイ素化合物で処理した後に組み込むことができる。これらの化合物には、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどのメチルポリシラザン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなどのクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどのアルコキシシランが含まれる。珪藻土又は粉砕石英などの珪質半補強フィラーも使用できる。
【0106】
補強シリカに加えて、又はその代わりに、半補強又は充填用の鉱物フィラーを追加することができる。単独又は混合で使用できるこれらの非ケイ質フィラーの例は、任意的に有機酸又は有機酸のエステルで表面処理されてもよい炭酸カルシウムと、焼成粘土と、ルチル型の二酸化チタンと、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム、又はマグネシウムのいずれかの酸化物と、さまざまな形態のアルミナ(水和の有無にかかわらず)と、窒化ホウ素と、リトポンと、メタホウ酸バリウムと、硫酸バリウムと、ガラスミクロスフェアである。これらのフィラーは粗く、一般に平均粒子径は0.1μmを超え、比表面積は通常30m
2/g未満である。これらの充填剤は、この用途において通常使用されるさまざまな有機ケイ素化合物で処理することにより表面改質されていてもよい。
【0107】
グラフェン又はカーボンナノチューブベースのナノ物質などの導電性フィラーも使用できる。
【0108】
本発明の一実施形態によれば、補強フィラーFが使用され、これは、BET法により測定された比表面積が100m
2/gと400m
2/gとの間のヒュームドシリカである。さらに有利には、補強フィラーFは、BET法により測定された比表面積が100m
2/gと400m
2/gとの間であり、有機ケイ素化合物で処理されたヒュームドシリカである。
【0109】
本発明の特定の実施形態によれば、シリコーン組成物C2は、シリコーン組成物量C2の重100部あたり1〜40重量部のフィラーF、好ましくは1〜25重量部のフィラーF、さらに好ましくは1〜15重量部のフィラーFを含む。
【0110】
架橋阻害剤I(又は重付加反応の抑制剤)は、その一部として以下の化合物から選択することができる:
ポリオルガノシロキサン。有利には環状であり、少なくとも1つのアルケニルで置換されたポリオルガノシロキサン。テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい;
ホスフィン及び有機亜リン酸塩;
不飽和アミド;
アルキル化マレイン酸塩;
及びアセチレンアルコール。
【0111】
ヒドロシリル化反応の好ましい熱遮断剤の一部を形成するこれらのアセチレンアルコール(FR−B−1 528 464及びFR−A−2 372 874を参照)は、式(I1)を有する:
(R
1)(R
2)C(OH)−C≡CH (I1)
式中、
R
1は直鎖又は分岐アルキル基、又はフェニル基であり、
R
2は、水素原子、直鎖又は分岐アルキル基、又はフェニル基であり
基R
1とR
2、及び三重結合のアルファ位置の炭素原子が任意的に環を形成してもよく、そして
R
1及びR
2に含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5であり、好ましくは9〜20である。
【0112】
前記アルコールは、好ましくは、沸点が250℃を超えるものから選択される。例として、次の市販製品を挙げることができる。
エチニル−1−シクロヘキサノール−1;
メチル−3−ドデシン−1−オール−3;
トリメチル−3,7,11−ドデシン−1−オール−3;
ジフェニル−1,1−プロピン−2−オール−1;
エチル−3−エチル−6−ノニン−1−オール−3;
メチル−3−ペンタデシン−1−オール−3。
【0113】
この種の架橋阻害剤Iは、組成物C2の総重量に対して最大3000ppmの割合で、好ましくは100〜2000ppmの割合で存在する。
【0114】
接着促進剤Gとして、この分野において通常使用される接着促進剤を使用することが可能である。例えば、次のものを使用できる。
・シラン又はビニル化ポリオルガノシロキサンの単体若しくは部分的に加水分解されたもの、並びにその反応生成物、
・エポキシ官能基で官能基化されたシラン又はポリオルガノシロキサンの単体若しくは部分的に加水分解されたもの、並びにその反応生成物、
・少なくとも1つのSiH官能基と、エポキシ官能基、(メタ)アクリレート官能基、アルコキシ官能基及びビニル官能基からなるグループから選択される少なくとも1つの官能基とを含むポリオルガノシロキサン、
・Ti、Zr、Alなどの金属アルコキシド又は金属キレート、例えば、tert−ブチルチタネート。
【0115】
本発明は、上記で定義された組成物C2を架橋することにより得られるシリコーンエラストマーにも関する。
【0116】
これらのシリコーンエラストマーは、複数の用途に使用でき、例えば、傷若しくはけがのケアと治療(包帯のコーティング、外部人工補綴物の製造、褥瘡を防ぐためのクッション)という「創傷ケア」の医療分野、又は電子部品のカプセル化、又はコーティングとして、特に柔軟な紙又はプラスチックフィルムのコーティング、及び織物、特に車両エアバッグのコーティング。
【0117】
本発明の別の態様は、300nmと450nmとの間の波長を有する放射線への曝露により上記で定義された組成物C2を架橋するステップを含む、シリコーンエラストマー製の物品を調製する方法に関する。
【0118】
有利には、上記の方法では、放射線は発光ダイオードによって放出され、さらにより好ましくは、放射線は、365nm、385nm、395nm、又は405nmの波長を中心とする発光帯域を有する発光ダイオードによって放出される。
【0119】
本発明によるシリコーンエラストマー製の物品を調製する方法は、好ましくは60〜220℃、さらにより好ましくは80〜180℃の温度で加熱するステップをさらに含むことができる。
【0120】
本発明はまた、3Dプリンティングプロセスとしても知られている付加製造法によりシリコーンエラストマー製物品を製造するための本発明による組成物C2の使用に関する。
【0121】
この説明は、一般に、ASTM F2792−12a「付加製造技術の標準用語」という命名で構成されている。このASTM規格によれば、「3Dプリンター」とは「3Dプリンティングに使用される機械」と定義され、「3Dプリンティング」とは「プリンティングヘッド、ノズル、又はその他のプリンター技術を用いる材料の堆積による物体の製造」と定義される。
【0122】
付加製造(Additive manufacturing、「AM」)は、サブトラクティブ製造法とは対照的に、3Dモデルのデータに基づいて物品を製造するための材料を(一般には1層ずつ)結合するプロセスとして定義される。3Dプリンティングに関連し、3Dプリンティングに包含される類義語は、付加製造、アディティブ法、アディティブ技術、1層ずつ製造で構成される。付加製造(AM)は、ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping、「RP」)とも呼ばれる。ここで使用されているように、「3Dプリンティング」は「付加製造」と交換可能である。
【0123】
一般に、すべての3Dプリンティングプロセスには共通の開始点がある。これは、物品を描写できる、コンピューターで生成されたデータソース又はプログラムである。コンピューターで生成されたデータソース又はプログラムは、実際の物品又は仮想の物品に基づく場合がある。たとえば、3Dスキャナーを使用して実際の物品をスキャンし、そのデジタル化データをコンピューターで生成されたデータソース又はプログラムを作成するために使用することができる。又は、コンピューターで生成されたデータソース又はプログラムをゼロから設計することもできる。通常、コンピューターで生成されたデータソース又はプログラムは、標準言語(STL)ファイル形式に変換される。ただし、他のファイル形式を使用することもできる。通常、ファイルは3Dプリンティングソフトウェアで読み込まれる。3Dプリンティングソフトウェアは、ファイルと、必要に応じて、数千に達し得る「スライス」に分割するためのユーザー入力を受け取る。通常、3Dプリンティングソフトウェアは、Gコードの形式のマシン指令を発信する。この指令は、3Dプリンターによって読み取られて各スライスを構築する。マシン指令は3Dプリンターに転送され、3Dプリンターは、このマシン指令の形式のデータシーケンスの機能として、物品を1層ずつに構築する。これらの層の厚さは異なってもよい。
【0124】
本発明によるシリコーン組成物C2は、シリコーンエラストマーアイテムのプリンティング速度を増加させることを可能にする。プリンティングが進むにつれてシリコーン組成物の層を照射すると、製造中に組成物の一部が急速にゲル化するため、プリンティングされた構造が崩壊することなく、各層はその形状を保持する。プリンティングが終了すると、加熱ステップにより、重付加による組成物の架橋を終了させ、良好な安定性と良好な機械的特性を持つシリコーンエラストマーを得ることができる。
【0125】
有利には、本発明によるシリコーン組成物C2は、使用される技術にシリコーン組成物C2の粘度を適合させることにより、タンク光重合、材料の押出又は材料の堆積を使用する3Dプリンティングプロセスに使用できる。
【0126】
タンク光重合とは、分子鎖の重合が紫外線によって誘発されると、タンクに含まれる硬化性液体樹脂が選択的に硬化する付加製造プロセスである。タンク光重合では、ランプ又は発光ダイオード(LED)をUVエネルギー源として使用する。タンク光重合などの付加製造プロセスで使用する場合、シリコーン組成物C2の粘度は10mPa・sと100000mPa・sとの間、好ましくは100mPa・sと10000mPa・sとの間、さらに好ましくは100mPa・sと2000mPa・sとの間にある。
【0127】
「3Dタンク」プリンターは、出願WO2017/055747に記載されているプリンターである。そのUV可視照明用のデバイスは、LEDに基づく光源と、投影画像を作成するための表示パターンに従って放射線を透過又は遮断するために適合されたマスクを備えている。したがって、マスクは、照射を可能にするオン状態及び照射を遮断するオフ状態をとるように構成されたピクセルのマトリックスを含む。オン状態は、投影画像の対応するポイントへの放射線の透過の際に現れる。遮断状態は、投影画像の対応するポイントへの放射線の透過がない場合に現れる。表示パターンは、前記ピクセルの状態の分布に対応している。
【0128】
したがって、タンクプリンターの製造システムは、照射するためのシステム(好ましくはUV−可視LEDを有する。)と、LEDによって放出されるUV−可視放射線を、照射デバイスによって放出される投影画像を作成するための表示パターンに従って遮断するように適合されたマスクとを備える。プリンターは、タンクと呼ばれる容器内に配置された作業面上で投影画像を移動するシステムを備えている。タンクは、照射装置によって放出される投影画像にさらされる作業面を有するシリコーン配合物を含む。
【0129】
タンク製造システムは、作業面と、上から開口側を有するシリコーン配合物の層の照射に対応してもよいが、別の可能な構成として、放射線を透過する底部の下からの照射でもある。この場合、作業面は透明な底面と接触する面である。透明な底部の表面の酸素化により透明な底部と接触する抑制層を作成することで、透明な底部と直接接触する作業面との接着が回避される。プリンター及び下からの投影モードによるプロセスの例は、特許出願US7052263に記載されている。
【0130】
材料の押し出しは、材料のフィラメントが押し出され、ノズルを通して選択的に分配される付加製造プロセスである。押し出された材料の流量は、とりわけノズルにかかる圧力又は温度によって制御できる。
【0131】
材料の堆積は、紙プリンターのプリントヘッドと類似のプリントヘッドによって、材料の微細な液滴が選択的に堆積される付加製造プロセスである。このプロセスは、インクジェットとも呼ばれる。
【0132】
材料の押出又は堆積などの付加製造プロセスで使用する場合、シリコーン組成物C2の粘度は100mPa・sと1000000mPa・sとの間、好ましくは1000mPa・sと300000mPa・sとの間、さらにより好ましくは3000mPa・sと200000mPa・sとの間にある。この使用のために、シリコーン組成物C2はチキソトロピー挙動(せん断中の粘度の低下及びせん断後の粘度の上昇)を示さなければならない。
【0133】
「3D押出」プリンターは、付加製造プロセス中に材料がノズル、シリンジ、又はオリフィスから押し出される3Dプリンターである。材料の押し出しは一般に、物体の断面をプリンティングするための、ノズル、シリンジ、又はオリフィスを通して材料を押し出すことにより機能し、これは後続の各層に対して繰り返すことができる。押し出された材料は、材料の硬化中にその下にある層に結合する。好ましい実施形態では、三次元シリコーンエラストマー物品をプリンティングするプロセスは、押出3Dプリンターを使用する。シリコーン組成物は、ノズルから押し出される。ノズルは、付加架橋のためのシリコーン組成物の分布を促進するために加熱されてもよい。ノズルの平均直径は、層の厚さを定める。一実施形態では、層の直径は50μmと2000μmとの間、好ましくは100μmと800μmとの間、最も好ましくは100μmと500μmとの間にある。ノズルと基板間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。それは平均ノズル径の+30〜−30%でなければならない。ノズルを通して分配されるラジカル架橋及び重付加のための二重硬化シリコーン組成物は、カートリッジタイプのシステムから供給されてもよい。カートリッジは、連結された1つ又は複数の流体貯蔵器を備えた1つ又は複数のノズルを備えていてもよい。スタティックミキサーと1つのノズルを備えた2つのカートリッジの同軸システムを使用することもできる。圧力は、分配される流体、連結された平均ノズルの直径、及びプリンティング速度に適合される。
【0134】
ノズルからの押し出し中に発生する高いせん断速度により、シリコーン組成物の粘度は大幅に低下し、したがって薄層のプリンティングが可能になる。カートリッジ圧力は、1〜20バール、好ましくは2バールと10バールとの間、最も好ましくは4バールと7バールとの間で変動し得る。100μm未満のノズル直径を使用する場合、材料の良好な押し出しを得るために、カートリッジ圧力を20bar以上にする必要がある。このような圧力に耐えるには、アルミニウムカートリッジを使用した適切な機器を使用する必要がある。ノズルプラットフォーム及び/又はプラットフォームはX−Y平面(水平面)内を移動して物品の断面を完成させ、1層が完成するとZ軸(垂直)平面内を移動する。ノズルは、XYZ移動の高精度を備えている。各層が作業平面X、Yにプリンティングされると、ノズルは次のレイヤーが作業位置X、Yに適用されるのに十分な量だけZ方向に移動する。このようにして、3Dの品物になる物品は、下から上向かって、一回に1層ずつ構成される。
【0135】
上記のように、ノズルとその前の層との間の距離は、良好な形状を確保するための重要なパラメーターである。それは平均ノズル径の+30〜−30%でなければならない。プリンティング速度は、良好な精度と製造速度との最良の妥協点を得るために、1mm/sと50mm/sとの間、好ましくは5mm/sと30mm/sとの間にある。
【0136】
「3Dインクジェット」プリンターは、シリコーン配合物の液滴を選択的に付着させる付加製造装置と定義されている。シリコーン配合物は、プリンティングヘッドによって、作業面の所望の位置に不連続的に個々の液滴の形で塗布される(噴射)。これは、少なくとも1つ、好ましくは2から200個のプリントヘッドノズルを含むプリントヘッドの配列を使用して、3D構造を段階的に作成する3D機器及びプロセスであり、配合物、又は適用可能な場合には複数の配合物を選択的に塗布することを可能とする。インクジェットプリンティングによるシリコーンの塗布は、材料の粘度に特定の要件を要求する。シリコーン配合物の3Dスプレー用のプリンターでは、1つ以上の貯蔵器に圧力がかかり、測定ラインによって計量ノズルに接続される。貯蔵器の上流又は下流に、溶解したガスを均質化及び/又は排出して、シリコーン組成物が均質になることを可能にする装置があってもよい。付加により架橋するための異なるシリコーン組成物から出発してエラストマーの品物を構築するために、又はより複雑な構造の場合にシリコーンエラストマーと他のプラスチックから作られる複合部品を提供するために、互いに独立して動作する1つ以上のスプレーユニットが存在してもよい。噴射過程において計量バルブで発生する高いせん断速度のために、添加による架橋のためのこれらのシリコーン組成物の粘度はかなり低下し、したがって非常に微細な微小液滴の噴射を提供する。微小液滴が基板に付着すると、せん断速度が突然低下し、粘度が再び上昇する。その結果、堆積した液滴はすぐに非常に高い粘度に達するため、三次元構造の正確な構築が可能になる。個々の計量ノズルをx、y、z方向に正確に配置でき、基板上に、又は成形部品のその後の成形において架橋可能なシリコーン組成物の付加層に、シリコーンの標的の液滴を正確に堆積させることができる。構造の崩壊を避けるために、各層をプリンティングした後に硬化を開始するためにUV及び/又は可視照射システムを使用することが望ましい。
【0137】
通常、3Dプリンターは1つ以上のディストリビューター、例えば、硬化可能なシリコーン組成物をプリンティングするためのノズル又はプリントヘッドを使用する。任意的に、ディストリビューターは、シリコーン組成物の分配前、分配中、分配後に加熱されてもよい。一実施形態では、この方法は、材料を空気中に押し出すことを回避するために、物品を構築するのと、サポートオーバーハングを構築するという2つの異なる目的で材料を使用してもよい。物品がサポート機器又はサポート構造を使用してプリンティングされた場合、プリンティングプロセスが終了した後、一般的にそれは除去され(たとえば、水で洗浄する)、完成した物品は残される。
【0138】
プリンティング後、得られた品物はさまざまなタイプの後処理に送られる。一実施形態では、この方法は、3Dプリンティングによって得られたシリコーンエラストマー品物を加熱することからなるステップをさらに含む。加熱は、処理の速度を上げるために使用される。別の実施形態では、この方法は、3Dプリンティングにより得られたシリコーンエラストマー品物に対する追加の照射のステップをさらに含む。処理の速度を上げるために、追加の照射を使用してもよい。別の実施形態では、この方法は、3Dプリンティングによって得られたシリコーンエラストマー品物を加熱及び照射をすることからなる両方のステップをさらに含む。オプションとして、後処理のステップにより、プリンティングされた品物の表面品質が大幅に改善される場合がある。研削は、モデルとは明らかに異なる層を減少又は除去する一般的な手段である。エラストマー品物の表面に熱硬化性又はUV硬化性のRTV又はLSRシリコーン組成物をスプレー又はコーティングすることにより、滑らかで直線的な表面仕上げを得ることができる。レーザー表面処理も適用できる。医療用途の場合、最終エラストマー品物の殺菌は、対象物を100℃を超える温度に加熱することで達成できる。
【0139】
本発明はさらに、以下の化合物(1)〜(25)に関する。
【0140】
ネオデカン酸は、カルボン酸の混合物であり、一般的な構造式がC
10H
20O
2、分子量が172.26g/mol、CASナンバー=26896−20−8である。混合物の成分は、炭素2に3つのアルキル基を有する「トリアルキル酢酸」の共通の特性を持つ酸であり、2,2,3,5−テトラメチルヘキサン酸、2,4−ジメチル−2−イソプロピルペンタン酸、2,5−ジメチル−2−エチルヘキサン酸、及び2,2−ジメチルオクタン酸を含む。
【0141】
次の構造(19)〜(22)、(24)、及び(25)の場合、光開始剤の合成に使用されるネオデカン酸は、上記のさまざまな酸で分岐している。
【0142】
本発明はまた、フリーラジカル光開始剤としての上記化合物(1)〜(25)の使用、及び好ましくはシリコーン組成物を架橋するためのフリーラジカル光開始剤としての上記化合物(1)〜(25)の使用に関する。
【実施例】
【0143】
以下の例は、説明の目的で提供されており、限定的ではない。それらは特に、本発明のより良い理解とそのすべての利点の説明を可能にする。
【0144】
実施例
以下の実施例では、本発明に従って、異なる光開始剤、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及びアクリレート官能基を有するポリオルガノシロキサンを使用し、それらの構造を以下の表に示す。
【0145】
表1:光開始剤
【0146】
これらの光開始剤のうち、化合物(1)、(4)、(5)、(8)、(19)及び(20)は、以下に説明する手順に従って合成された。
【0147】
2−ヒドロキシキサントン(2 QH−XT)の合成:
試薬:
2−ヨード安息香酸
4−メトキシフェノール
炭酸セシウム
塩化銅(I)
トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン(TDA−1)
1,4−ジオキサン
濃硫酸
【0148】
2−ヨード安息香酸1ミリモルあたり、6mLの1,4−ジオキサン中に1等量の2−ヨード安息香酸、1.4等量の4−メトキシフェノール、2.8等量の炭酸セシウムになるよう、一つ口フラスコに入れる。アルゴン下、室温で10分間攪拌する。次に、0.1当量の塩化銅(I)と0.1当量のTDA−1を加える。アルゴン下で還流しながら20時間反応させる。反応が終了したら、ロータリーエバポレーターで1,4−ジオキサンを蒸発させる。Na
2CO
3の10wt%溶液で残渣を溶解し、溶液をろ過する。次に、ろ液を分液漏斗に入れ、トルエン/酢酸エチル50/50混合物で洗浄する。ろ過する前に水相を回収して酸性化し、反応中間体を得る。(収率:75%)
【0149】
試薬1ミリモルあたり、1.25mLの濃硫酸中に1等量の中間体になるよう、一つ口フラスコに入れる。TLC内のメトキシを含む生成物のスポットが消えるまで(約3時間)反応させる。反応が終了したら、反応混合物を放冷してから、酸の10倍の量の氷中に注ぐ。次に、得られた溶液を酢酸エチルで3回抽出する。有機相を収集し、乾燥させ、蒸発させる。得られた生成物は白色の固体である。アセトン中で再結晶することが可能である(収率:48%)。NMRスペクトルは、2−ヒドロキシキサントンに対応する。
【0150】
2−ヒドロキシチオキサントン(2 OH−XT)の合成:
試薬:
チオサリチル酸
フェノール
硫酸
【0151】
チオサリチル酸1mmolあたり、1mLの硫酸中に1等量のチオサリチル酸になるよう、一つ口フラスコにゆっくりと入れる。10分間激しく攪拌する。次に、30分の間に5等量のフェノールを加える。次に、混合物を室温で1時間、次に80℃で2時間反応させ、室温で一晩放置する。
【0152】
反応が終了したら、反応混合物を硫酸の10倍量の沸騰水中に注ぎ、10分間沸騰させる。冷却したら、溶液をろ過する。得られた生成物は黄色の粉末である(収率:62%)。NMRスペクトルは、2−ヒドロキシチオキサントンに対応する。
【0153】
キサントンとチオキサントンのエーテル、化合物(1)、(4)、(5)、(8)の合成
試薬:
2−ヒドロキシキサントン及び2−ヒドロキシチオキサントン
ヨードアルカン(1−ヨードヘキサン及び1−ヨードドデカン)
炭酸カリウム
ジメチルスルホキシドDMSO
平衡方程式:
図1:キサントンとチオキサントンのエーテルの合成(X=O、S)
【0154】
手順:
生成物1ミリモルあたり、5mLのDMSO中に1等量の2−ヒドロキシキサントン(又は2−ヒドロキシチオキサントン)と2等量の炭酸カリウムになるよう、一つ口フラスコに入れる。 アルゴン下、室温で10分間攪拌する。次に、ヨードアルカン(1−ヨードヘキサン又は1−ヨードドデカン)を滴下し、アルゴン下で100℃で48時間反応させる。
【0155】
反応が終了したら、反応混合物の体積の10倍の水に加え、混合物をn−ヘキサンで3回抽出する。次いで、有機相を収集し、乾燥させ、蒸発させる。次に、得られた粗生成物を、90/10シクロヘキサン/酢酸エチルの溶離液を使用してシリカゲル上で精製する(収率:約66%)。
【0156】
化合物2 neodeca−XT(19)及び2 neodeca−TX(20)の合成
生成物1ミリモルあたり、1当量の2−ヒドロキシキサントン(又は2−ヒドロキシチオキサントン)、1当量のネオデカン酸、及び1mLの濃硫酸を1つ口フラスコに入れる。アルゴン下、室温で2時間攪拌する。その後、アルゴン下、120℃で12時間反応させる。
【0157】
反応が終了したら、反応混合物の体積の10倍の水に加え、混合物をn−ヘキサンで3回抽出する。次いで、有機相を収集し、炭酸ナトリウムで中和し、乾燥させ、蒸発させる。次に、得られた粗生成物を、90/10シクロヘキサン/酢酸エチルの溶離液を使用してシリカゲル上で精製する。
【0158】
表2:オルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0159】
上記の表で特定されている化合物Hyd 1及びHyd 2は、鎖の中及び/又は末端にSiH単位が配置された直鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0160】
アクリルシリコーン
上記式において、x=85及びn=7のポリオルガノシロキサンアクリル1が組成物に使用されている。
【0161】
照射により架橋するシリコーン組成物:
本発明によるタイプII光開始剤の使用を説明するために、アクリルシリコーンを重合するための光開始剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いた試験を実施した。調製は次のように行われた:1.2 10〜4molの光開始剤を計量し、2gのポリオルガノシロキサンアクリル1に加える。全体を12時間攪拌する。次に、1重量%のオルガノハイドロジェンポリシロキサンHyd 1を追加する。
【0162】
2種類の照射による架橋がテストされた。
・水銀キセノンランプを使用した90秒の紫外線。ランプ出力は510mW/cm
2に固定された。そして
・90秒のLED照射。キサントン誘導体の場合は365nmで750mW/cm
2の出力でLED照射、又はチオキサントン誘導体の場合は395nmで680mW/cm
2の出力でLED照射。
【0163】
酸素による反応性種の阻害の影響を避けるために、操作はラミネートで行われた。操作がラミネートで行われる場合、製剤はポリプロピレンの2つのシートの間に配置され、次にCaF
2の2つのペレットの間に配置される。
【0164】
重合動態は、リアルタイムフーリエ変換赤外線(RT−FTIR、Brucker OptikのVertex 70)によって監視される。この分光法は、アクリル官能基のC=C結合の特徴的なバンドである1636cm
-1でのIRスペクトルの変化を監視するために、サンプルを光と赤外線に同時にさらすことからなる。
【0165】
重合中のC=CからC−Cへの変換の程度は、次の式に従って、1636cm
-1のピークの下で計算された面積の減少に直接リンクしている:変換(%=(A
0−A
t)/A
0×100、ここで、A
0は照射前のピーク下の面積であり、A
tは照射の各時点tでのピーク下の面積である。
【0166】
水銀キセノンランプを使用して実行されたテストの場合、時間の関数としてのプロットにより、最終的な変換度だけでなく、次の表で表される最大変換速度Rpなどの他の重要なパラメーターを得ることができる。式Rp/[M]
0×100中、[M]
0はアクリレート官能基の初期濃度である。最大変換速度Rpは、曲線変換(%)=f(時間)の変曲点での勾配から決定される。
【0167】
結果を以下の表3及び4に示する。
【0168】
表3 UV−LED照射
※−:低可溶性<50%;+:部分可溶>50%、++:可溶性
マグネチックスターラーで12時間攪拌した後の観察である。
【0169】
本発明による光開始剤は、LEDによる90秒の照射後、より良い程度の変換率を提供する。
【0170】
表4 Hg−Xeランプの結果
【0171】
本発明による光開始剤は、Hg−Xeランプによる90秒の照射後、より良い程度の変換率を提供する。
【0172】
照射及び熱により架橋するシリコーン組成物:
試験した製剤の詳細を以下の表5に示す。
製剤は、高速ミキサーですべての成分を単純に混合し、1000rev/minで1分間混合することにより調製する。
【0173】
上記の化合物に加えて、次の化合物が使用される。
・オイルビニル1:(CH
3)
2ViSiO
1/2単位で各鎖末端でブロックされるポリジメチルシロキサンオイルであって60000mPa・sの粘度を有するもの。
・樹脂ビニル2:ビニル基を1.1wt%含む式MM
ViQのポリオルガノシロキサン。
・ヒドロシリル化触媒:白金金属。有機金属錯体の形で白金金属の10重量%で添加され、Karstedt触媒という名前で知られる。
・阻害剤:エチニル−1−シクロヘキサノール−1又はECH。
・フィラー:エボニック社のAerosil(登録商標)200。
・粘度50mPa・sのポリジメチルシロキサンPDMS。
【0174】
表5:フリーラジカル及び重付加による架橋シリコーン組成物
【0175】
2つの組成物が得られた:
比較例として、組成物1をA1+Bを混合して得られた。
本発明による例として、組成物2をA2+Bを混合して得られた。23℃では、組成物2の動的粘度は15400mPa・sに等しい。
【0176】
3Dプリティングテスト
100gの組成物を、365nmLEDによるタンク光重合を使用する3Dプリンターの貯蔵器に入れる。これは、スタティックミキサーを備えたツインカートリッジシステムを備えたDLP Prodway(登録商標)3Dプリンターである。暗所(光を避けて)で得られた組成物の、ゲル化を受ける前の浴寿命又は「ポットライフ」は、24時間である。
【0177】
プレート上に堆積され、強度が75.5mW/cm
2の365nmのUV LED放射に5.5秒間曝露される条件で、厚さ250μmの第1層に必要な架橋条件の結果を以下の表6に示す。
【0178】
表6 シリコーン組成物の250μm層の放射線架橋に必要なエネルギー
【0179】
次の表では、EcはmJ/cm
2で測定された臨界表面エネルギーを表す。
【0180】
本発明による組成物は、より低い臨界表面エネルギーを有する。ゲル化点に到達するために供給する必要があるエネルギーがより少ない。したがって、この組成物は、架橋に必要なエネルギーが少ないという利点を提供し、その結果、連続層をより迅速にプリンティングすることが可能になる。
【0181】
E4は、厚さ100ミクロンの架橋を達成するために供給されるエネルギーであり、E8は200ミクロンを達成するため、E10は250ミクロンを達成するためのものである。
【0182】
表7:照射及び熱による架橋後に得られたシリコーンエラストマーの標準NF EN ISO 527に従って測定された機械的特性