特許第6944568号(P6944568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鐵住金建材株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000002
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000003
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000004
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000005
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000006
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000007
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000008
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000009
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000010
  • 特許6944568-防音パネル及び防音壁 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944568
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】防音パネル及び防音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20210927BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-83281(P2020-83281)
(22)【出願日】2020年5月11日
(62)【分割の表示】特願2017-155716(P2017-155716)の分割
【原出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2020-114990(P2020-114990A)
(43)【公開日】2020年7月30日
【審査請求日】2020年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 充明
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】小山 拓也
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−045718(JP,U)
【文献】 特開2006−152696(JP,A)
【文献】 特開2015−090486(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0974261(KR,B1)
【文献】 特開2004−052380(JP,A)
【文献】 特開2010−024613(JP,A)
【文献】 実開昭53−139765(JP,U)
【文献】 特開2016−108930(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0243369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00−8/02
E04H 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える人が接触する可能性のある防音壁を構築する防音パネルであって、
騒音源側となる正面が開放された金属筐体であるパネル本体と、前記パネル本体に収容されて騒音を吸収する吸音材と、を備え、
前記パネル本体の正面は、繊維材からなりクッション性を有する面材により前記吸音材を収容した状態で前記パネル本体が正面の上下端部まで被覆されて前記金属筐体が露出されておらず
前記面材は、左右の端部である支柱で隠蔽される位置において、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体に固定されていること
を特徴とする防音パネル。
【請求項2】
前記面材の目付量は、210g/m以上720g/m以下となっていること
を特徴とする請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記パネル本体の背面には、曲げ剛性を向上させるための溝が形成され、前記溝の周囲にも前記吸音材が挿置されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の防音パネル。
【請求項4】
複数の支柱と、前記複数の支柱間に、騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える防音パネルが複数段に亘って挿置された人が接触する可能性のある防音壁であって、
前記防音パネルは、騒音源側となる正面が開放された金属筐体であるパネル本体と、前記パネル本体に収容されて騒音を吸収する吸音材と、を備え、
前記パネル本体の正面は、繊維材からなりクッション性を有する面材により前記吸音材を収容した状態で前記パネル本体が正面の上下端部まで被覆されて前記金属筐体が露出されておらず
前記面材は、左右の端部である支柱で隠蔽される位置において、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体に固定されていること
を特徴とする防音壁。
【請求項5】
前記面材の左右の両端部分は、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体にねじ止め固定され、前記押え金物は、前記支柱で隠蔽されていること
を特徴とする請求項4に記載の防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える騒音パネル及び防音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や線路を走行する車両や工場などの騒音源から発せられる騒音の拡散を抑えるために、道路や線路の脇、又は敷地の境界付近に防音壁が設置されている。この種の防音壁は、一般に、H形鋼等からなる支柱間に、防音パネルを複数段に亘り嵌め込んで積み重ねることにより構築される。
【0003】
防音パネルは、通常、孔開き又はスリット入りの箱状の金属筐体内に発泡樹脂や繊維材などの吸音材が収容されている。例えば、特許文献1には、前面板20と、前記前面板20に対向する背面板22と、前記前面板20と前記背面板22とを繋ぐ底面板12と、を備えるとともに、前記前面板20、背面板22及び底面板12によって形成される収容空間29の液体を排出する排出口44が設けられたハウジング16を備える吸音パネル10が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0013]〜[0027]、図面の図1図4等参照)。
【0004】
従来の防音壁は、一般人特に子供達が遊びで走り回るような場所に設置するものではなかったが、近年では子供達特に園児達の騒ぐ声がうるさいとの意見を取り入れ、幼稚園の周囲に防音壁を設置することが検討されている。しかし、従来の設置場所と異なり、人、特に子供達が遊んで走り回るような場所に設置される場合には、以下の問題が発生することとなる。即ち、特許文献1に記載の吸音パネル10は、開口部24等の金属の鋭利な端面が露出しているため、吸音パネル10に接触したり、衝突したりすると怪我をする危険性がある。特に、幼稚園や小学校など子供達が遊んで走り回るような場所に設置される防音パネルや防音壁には、高い安全性が求められるため、走り回って衝突しても怪我のおそれが少ない防音パネルや防音壁が切望されていた。
【0005】
また、特許文献2には、騒音源に正面側が面する吸音部(1)と、吸音部の背面側に配置される背壁部(21)を有し、吸音部の正面側を露出させた状態で吸音部を収容する収容部(2)と、収容部の上部に設けられ、吸音部の上部を支持する上部支持部(3)と、収容部の下部に設けられ、吸音部の下部を支持する下部支持部(4)と、収容部の側部に設けられた側壁部(5)と、を備える防音パネル(100)が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0027]〜[0039]、図面の図2等参照)。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の防音パネル(100)は、騒音源側となる正面側に金属製の板を設けず、吸音部を露出させているものの、子供等の接触や衝突を考慮したものではなかった。このため、金属製の支持枠や中桟が露出しており、以前、子供等の接触や衝突による怪我の危険性を払拭することはできていないという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献2に記載の防音パネル(100)などの従来の防音パネルは、道路や線路を走行する車両から発生する騒音や工場などから発生する機械音などの騒音を吸音することが主目的となっていた。このため、従来の防音パネルでは、これらの騒音と周波数帯が相違する人の声、特に、幼児の発する高音域(例えば、1000Hz〜2000Hz)の騒音を充分に吸音して防音することができないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−83112号公報
【特許文献1】特開2016−108930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、接触や衝突しても怪我するおそれが少ない防音パネル及び防音壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る防音パネルは、騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える人が接触する可能性のある防音壁を構築する防音パネルであって、騒音源側となる正面が開放された金属筐体であるパネル本体と、前記パネル本体に収容されて騒音を吸収する吸音材と、を備え、前記パネル本体の正面は、繊維材からなりクッション性を有する面材により前記吸音材を収容した状態で前記パネル本体が正面の上下端部まで被覆されて前記金属筐体が露出されておらず、前記面材は、左右の端部である支柱で隠蔽される位置において、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体に固定されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る防音パネルは、第1発明において、前記面材の目付量は、210g/m以上720g/m以下となっていることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る防音パネルは、第1発明又は第2発明において、前記パネル本体の背面には、曲げ剛性を向上させるための溝が形成され、前記溝の周囲にも前記吸音材が挿置されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る防音壁は、複数の支柱と、前記複数の支柱間に、騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える防音パネルが複数段に亘って挿置されたが接触する可能性のある防音壁であって、前記防音パネルは、騒音源側となる正面が開放された金属筐体であるパネル本体と、前記パネル本体に収容されて騒音を吸収する吸音材と、を備え、前記パネル本体の正面は、繊維材からなりクッション性を有する面材により前記吸音材を収容した状態で前記パネル本体が正面の上下端部まで被覆されて前記金属筐体が露出されておらず、前記面材は、左右の端部である支柱で隠蔽される位置において、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体に固定されていることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る防音壁は、第4発明において、前記面材の左右の両端部分は、短冊状の押え金物を介して前記パネル本体にねじ止め固定され、前記押え金物は、前記支柱で隠蔽されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明〜第3発明によれば、金属筐体からなるパネル本体の正面がクッション性を有する面材により被覆されているので、幼児など人が接触したり衝突したりした場合であっても、指や身体の一部が挟まれるなど怪我するおそれが極めて少ない。
【0016】
また、第1発明〜第3発明によれば、音が透過する隙間がある繊維材からなる面材で被覆されているので、面材で騒音を反射せずに透過させた騒音を吸音材で確実に吸音することができる。
【0017】
その上、第1発明〜第3発明によれば、面材は、左右の端部である支柱で隠蔽される位置において、短冊状の押え金物を介してパネル本体に固定されているので、鋭利な金属部材が露出することなく、面材が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることを確実に防止できる。このため、見栄えが良いだけでなく、風雨で防音パネルが損傷するおそれも少なく耐久性が向上する。
【0018】
特に、第2発明によれば、面材の目付量が210g/m〜720g/mとなっているので、従来、吸音することが困難であった子供の声に相当する1000Hz〜2000Hzの周波数帯の騒音を確実に吸音することができる。
【0019】
特に、第3発明によれば、曲げ剛性を向上させるための溝が形成されているので、防音パネルの曲げ剛性が向上し、風荷重で防音パネルが損傷するおそれも少なく耐久性が向上する。また、溝の周囲の空隙にも吸音材が挿置されているので、空隙を作らず防音材を充填することにより撓みが防止され剛性及び耐久性が向上するだけでなく、吸音率がさらに向上し、騒音の拡散を抑えることができる。
【0020】
第4発明によれば、金属筐体からなるパネル本体の正面がクッション性を有する面材により被覆されているので、幼児や子供など人が接触したり衝突したりした場合であっても、指や身体の一部が挟まれるなど怪我するおそれが極めて少ない。また、音が透過する隙間がある繊維材からなる面材で被覆されているので、面材で騒音を反射せずに透過させた騒音を吸音材で確実に吸音することができる。
【0021】
特に、第5発明によれば、面材の左右の両端部分は、短冊状の押え金物を介してパネル本体にねじ止め固定され、この押え金物は、支柱で隠蔽されているので、鋭利な金属部材が露出することなく、面材が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることを確実に防止できる。このため、見栄えが良いだけでなく、風雨で防音パネルが損傷するおそれも少なく耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る防音壁を示す全体正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る防音パネルの構成を示す分解斜視図である。
図3】同上の防音パネルを示す斜視図である。
図4】同上の防音パネルを示す正面図である。
図5】同上の防音パネルを示す鉛直断面図である。
図6】同上の防音パネルのパネル本体単体を示す斜視図である。
図7】同上のパネル本体単体を示す右側面図である。
図8】同上の防音パネルの面材を示す斜視図である。
図9】同上の防音パネルの押え金物を示す斜視図である。
図10】同上の防音パネルの垂直入射吸音率測定試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る防音パネル及び防音壁について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
先ず、図1図9を用いて、本発明の実施形態に係る防音パネルについて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る防音壁を示す全体正面図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る防音パネル1は、複数のH形鋼や溝形鋼などの鋼製の支柱H1,・・・,H1の間に複数段(図示形態では5段)に亘って挿置され、騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える防音壁を構成するパネルである。
【0025】
図2は、本発明の実施の形態に係る防音パネル1の構成を示す分解斜視図であり、図3は、防音パネル1を示す斜視図、図4は、防音パネル1の正面図である。図2図4に示すように、本実施形態に係る防音パネル1は、概形が横長な略直方体のパネルであり、後述の吸音材等で騒音源からの騒音を吸収して騒音の拡散を抑える機能を有している。
【0026】
また、図2に示すように、本実施形態に係る防音パネル1は、正面が開放された金属筐体であるパネル本体2と、このパネル本体2に収容されて騒音を吸収する吸音材3と、このパネル本体2の上面を覆う面材4と、この面材4の左右の両端をパネル本体2に固定する押え金物5など、から構成されている。
【0027】
(パネル本体)
図5は、防音パネル1を示す鉛直断面図であり、図6は、防音パネル1のパネル本体2単体を示す斜視図、図7は、パネル本体2を示す右側面図である。図5図7に示すように、本実施形態に係るパネル本体2は、防音パネル1の背面部(背面板)を構成する厚さ1.6mm程度の構造用の鋼板からなり、騒音側となる正面が開放された正面視矩形箱状の筐体である。
【0028】
図5に示すように、このパネル本体2は、吸音材3を収容するとともに、防音パネル1全体の強度と曲げ剛性を確保する機能を有している。なお、正面視とは、騒音側から防音壁に直交する水平方向外側に見ることを指している、以下同じ。
【0029】
図6図7に示すように、このパネル本体2は、正面視矩形状の背面パネル20と、この背面パネル20の上端及び下端が折り返された上面パネル21及び下面パネル22と、これらの側面を塞ぐ左右の側面パネル23,24など、から構成されている。
【0030】
背面パネル20には、図5図7に示すように、上下の中央付近において、正面側へ折り曲げ加工されて断面台形状となった水平な一条の凹溝20aが形成されている。この凹溝20aは、背面パネル20及び防音パネル1全体の曲げ剛性を向上させる機能を有している。
【0031】
上面パネル21及び下面パネル22は、図5に示すように、いずれも背面パネル20と接続する後端側から徐々に傾斜して正面側が高くなった略同一傾斜の傾斜面を有しており、正面側がいずれも鉛直面となった折返し部21a,22aが形成されている。このため、上段の防音パネル1の下面パネル22に、下段の防音パネル1の上面パネル21が嵌合するように構成されており、上面パネル21と下面パネル22との嵌合で上下段の防音パネル1同士が風圧でもずれないように確実に嵌合されている。
【0032】
なお、図示しないが、上面パネル21及び下面パネル22の長手方向の端部となる両端には、落下防止用のワイヤーを挿通する切欠きが形成されていてもよい。
【0033】
側面パネル23,24は、左右対称に構成され、防音パネル1の長手方向端部の剛性を上げるため水平断面がコの字状となっており、正面側の折り返しが正面部23a,24a、背面側の折り返しが背面部23b(図示せず),24bとなっている。この正面部23a,24aは、後述の押え金物5の裏当て金の機能を有している(図5参照)。
【0034】
また、図6図7に示すように、背面部23b(図示せず),24bには、前述の背面パネル20の凹溝20aと連続する凹部23c(図示せず),24cも形成されている。
【0035】
(吸音材)
吸音材3は、樹脂繊維や発泡樹脂からなる吸音材であり、本実施形態に係る吸音材3は、ポリエステル樹脂の繊維材が採用されている。勿論、本発明に係る吸音材は、他の合成樹脂からなる繊維材でも良いし、発泡樹脂などの多孔質材などであっても良い。要するに、本発明に係る吸音材は、吸音材内において、音のエネルギーを熱エネルギーに変換して騒音を減衰して吸音できるものであれば適用可能である。
【0036】
また、従来は、安価な構成で吸音効果を得るため、特許文献1及び2に記載されているように、吸音材の背面に空洞を設けられていた。しかし、本実施形態に係る吸音材3は、図2図5に示すように、従来と同様の主の吸音材である正面視矩形の座布団状の主吸音材30に加え、凹溝20aの上下にも、副吸音材として上吸音材31と、下吸音材32が挿置されている。このため、防音パネル1は、吸音効率が向上している。
【0037】
特に、後背空気層の吸音効果は、既知のように、吸音できる周波数帯域を低周波側へ移行させて、1000Hz以下の比較的低周波数帯域での吸音効果を上げるものといえる。このため、後背空気層を設けることに代えて、上吸音材31及び下吸音材32を挿置することにより、防音パネル1の高周波数帯、特に、子供の声の音域である1000Hz〜2000Hzでの吸音効果を向上させることができる。
【0038】
(面材)
本実施形態に係る面材4は、ポリエステル繊維などの樹脂繊維からなる繊維材の不織布である。面材4を繊維材とするのは、繊維材の繊維の隙間から騒音をある程度透過して騒音源から遠い背面側にある前述の吸音材3で吸音するためである。
【0039】
また、面材4は、子供など人が衝突しても怪我をしない程度のクッション性を有している。面材4がクッション性を有していることで、素材が固すぎず、騒音を反響させてしまうことがなく、吸音率の向上にも資するものと考えられる。このように、本実施形態に係る面材4は、クッション性を持たせるため、ポリエステル繊維を固めて厚さが3mm〜8mmになるように圧縮成形されている。
【0040】
このように、本実施形態に係る面材4の厚さを一定範囲とすることにより、面材4が薄過ぎず撓んだりしわがよったりすることなく面材4の所定の形状を保持することができる。その上、面材4が厚過ぎず所定の形状に折り曲げ形成することができ、パネルを上下に嵌合させることができる。
【0041】
また、図5に示すように、面材4は、上端が上面パネル21の傾斜面にビスV1でねじ止めされ、下端が下面パネル22の折返し部22aにビスV1でねじ止めされている。また、左右の両端部は、後述のように、押え金物5を介してパネル本体2にねじ止め固定されている。
【0042】
その上、図5図8に示すように、面材4の上端付近は、パネル本体2同士の嵌合形状に応じて階段状の折り目4aが形成されており、下端付近には、前述の180度折り返された折返し部4bが形成されている。図8は、防音パネル1の面材4を示す斜視図である。この折り目4a及び折返し部4bは、図8に示すように、不織布として圧縮成形される際に既に折り目が形成されている。このため、防音パネル1同士の嵌合部分においても、面材4が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることがない。よって、施工時においても、防音パネル1同士の嵌合不良等が起こる心配がなく、さらに防音パネル1の耐久性が向上する。
【0043】
(押え金物)
押え金物5は、図5図9に示すように、鋼板からなり、短冊帯板状の押え金物本体50と、上端に設けられた段部51など、から構成されている。この段部51は、上段の防音パネル1の嵌合部である下面パネル22内に収まるように階段状に折り曲げ成形されたものである。また、これらの押え金物本体50及び段部51には、前述の側面パネル23,24の正面部23a,24aに、ビスでねじ止めするためのビス孔5aが複数穿設されている。図9は、防音パネル1の押え金物5を示す斜視図である。
【0044】
この押え金物5は、面材4の長手方向の左右の両端を上から押えてパネル本体2の側面パネル23,24に固定する機能を有している。そして、この押え金物5は、図3等に示すように、左右の端部である支柱で隠蔽される位置に取り付けられる。このため、図1に示すように、鋭利な金属部材が露出することが無いうえ、面材4が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることを確実に防止できる。よって、見栄えが良いだけでなく、風雨で防音パネルが損傷するおそれも少なく耐久性が向上する。
【0045】
なお、押え金物5のパネル本体2への固定は、ビスなどのねじ止め固定に限られず、ワンサイドボルト等によるボルト固定(ねじ止め固定)や、リベット等によるリベット固定でもよいことは云うまでもない。
【0046】
<垂直入射吸音率測定試験>
次に、図10を用いて、防音パネルの面材の目付量と吸音率の関係について説明する。図10は、防音パネル1の垂直入射吸音率測定試験の結果を示すグラフである。この垂直入射吸音率測定試験は、JIS A 1405規格に基づき、音響管を用いて、前述の防音パネル1の面材4の不織布の目付量と厚さを種々変更して、面材4及び吸音材3(24K50mm厚)に対して音が垂直に入射するときの吸音率を1/3オクターブ毎の各周波数において測定したものである。
【0047】
図10に示すように、不織布の厚さに関係なく、特に、目付量610g/mの不織布は、広範囲の周波数帯域で吸音性能が優れていることが把握できる。また、今回実験した目付量が210g/m〜720g/mの不織布は、いずれも子供の声の音域である1000Hz〜2000Hzにおいて吸音率0.7をクリアしていることが分かる。よって、面材4の目付量を210g/m〜720g/mとすることにより、従来、吸音することがあまり想定されておらず困難であった子供の声に相当する1000Hz〜2000Hzの周波数帯の騒音を確実に吸音することができると云える。
【0048】
なお、吸音率0.7以上を条件としたのは、道路騒音向け遮音壁には、400Hzで吸音率0.7以上、1000Hzで0.8以上というNEXCO遮音壁音響基準があるからである。しかし、NEXCO遮音壁音響基準は、残響室法吸音率の測定方法(JIS A 1409)で実施されており、前述のJIS A 1405規格の音響管による吸音率及びインピーダンスの測定の吸音率とは異なる。一般に、残響室法による吸音率は、音響管の吸音率より0.1〜0.2程度向上する傾向となる。したがって、前述の基準と測定方法による違いを考慮して対象周波数1000〜2000Hzにおいて、音響管による測定結果が0.7以上となれば十分な効果を発揮すると考えられる。このため、吸音率0.7を一つの指標とした。
【0049】
<防音パネル1及び防音壁の作用効果>
従来、紫外線や風雨を避けるため、吸音材を金属製のパネル筐体や、特許文献2で示した金属製の支持枠や中桟で被覆隠蔽していた。しかし、以上説明した防音パネル1及び防音壁によれば、クッション性を有する繊維材の不織布からなる面材4で吸音材3を被覆しているので、幼児や子供など人が接触したり衝突したりした場合であっても、指や身体の一部が挟まれるなど怪我するおそれが極めて少ない。また、騒音を面材4で反射せずに透過させて吸音材3で確実に吸音することができる。
【0050】
また、防音パネル1及び防音壁によれば、面材4は、左右の端部である支柱H1で隠蔽される位置において、押え金物5を介してパネル本体2にねじ止め固定されているので、鋭利な金属部材が露出することがない。また、面材4が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることを確実に防止できる。このため、防音パネル1及び防音壁によれば、見栄えが良いだけでなく、風雨で防音パネル1が損傷するおそれも少なく耐久性が向上する。
【0051】
その上、防音パネル1及び防音壁によれば、面材4は、パネル本体2の上下の嵌合形状に応じて折り目が形成されているので、防音パネル1のパネル同士の嵌合部分の付近においても、面材4が弛んだり、撓んだり、しわが寄ったりすることがない。このため、施工時においても、防音パネル1のパネル同士の嵌合不良等が起こる心配がなく、さらに防音パネルの耐久性が向上する。
【0052】
それに加え、防音パネル1及び防音壁によれば、パネル本体2の凹溝20aの上下の空隙にも副吸音材である上吸音材31及び下吸音材32が挿置されている。このため、凹溝20aにより防音パネル1の曲げ剛性及び耐久性が向上するだけでなく、上吸音材31,下吸音材32により、吸音率がさらに向上し、騒音の拡散を抑えることができる。特に、従来の後背空気層を設けることに代えて、上吸音材31及び下吸音材32を挿置することにより、防音パネル1の高周波数帯、特に、幼児や子供の声の音域である1000Hz〜2000Hzでの吸音効果を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態に係る防音パネル1及び防音壁について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、面材としてポリエステル繊維からなる不織布を例示して説明したが、本発明に係る面材は、不織布に限られず、繊維材からなりクッション性を有する素材であれば、代替可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:防音パネル
2:パネル本体
20:背面パネル
21:上面パネル
22:下面パネル
21a,22a:折返し部
23,24:側面パネル
23a,24a:正面部
(23b)24b:背面部
3:吸音材
30:主吸音材
31:上吸音材
32:下吸音材
4:面材
4a:折り目
4b:折返し部
5:押え金物
50:押え金物本体
51:段部
H1:支柱
V1:ビス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10