(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944575
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/535 20060101AFI20210927BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/534 210
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-137040(P2020-137040)
(22)【出願日】2020年8月14日
(62)【分割の表示】特願2016-57261(P2016-57261)の分割
【原出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2020-179301(P2020-179301A)
(43)【公開日】2020年11月5日
【審査請求日】2020年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【審査官】
北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−312(JP,A)
【文献】
特開平4−51952(JP,A)
【文献】
特開2010−63546(JP,A)
【文献】
特開昭59−228002(JP,A)
【文献】
特開平7−449(JP,A)
【文献】
実開昭60−172709(JP,U)
【文献】
特開昭63−11151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/535
A61F 13/534
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、吸収性繊維及び高吸収性ポリマーからなる吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、幅方向中心線を挟む一対の折り線で、幅方向両端部が長手方向の全長に亘って身体側に屈曲して、各折り線を挟んだ両側の部位が対向して保持されており、
前記吸収体の前記幅方向両端部が身体側に屈曲した状態において、前記吸収体の前記幅方向両端部は幅方向に互いに離間しており、
前記吸収体の2本の折り線の間の領域には、少なくとも前記吸収体の長手方向中心部に及ぶ凹部が設けられており、
前記吸収体の前記幅方向両端部の離間距離が、前記凹部の幅方向の最大寸法よりも狭く、
前記凹部は壁面を有する境界を介して長手方向に複数分割配置されていることを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
長手方向中央部から両端部に向かって前記境界の壁面の高さに傾斜を設け、長手方向中央部から長手方向両端部に向かうほど高さを増すことを特徴とする、請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、吸収性繊維及び高吸収性ポリマーからなる吸収体と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、幅方向中心線を挟む一対の折り線で、幅方向両端部が長手方向の全長に亘って身体側に屈曲して、各折り線を挟んだ両側の部位が対向して保持されており、
前記吸収体の前記幅方向両端部が身体側に屈曲した状態において、前記吸収体の前記幅方向両端部は幅方向に互いに離間しており、
前記吸収体の2本の折り線の間の領域には、少なくとも前記吸収体の長手方向中心部に及ぶ凹部が設けられており、
前記吸収体の前記幅方向両端部の離間距離が、前記凹部の幅方向の最大寸法よりも狭く、
前記幅方向両端の一部に弧状曲線を設け、少なくとも体液の排出部において、幅方向両端部の離間距離を広くすることを特徴とする、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
体液の吸収速度が改善され、漏れが有効に防止された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に吸収性物品には、テープ止めタイプ紙おむつ、軽失禁パッド、尿取りパッド、パンツタイプ紙おむつ等が知られており、これらの吸収性物品は着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ところで、近年、吸収性物品においては、吸収体に様々な工夫を施すことにより、吸収量や吸収速度を高める試みがなされている。例えば、近年知られている吸収性物品には、吸収体にスリットを設けたり、吸収体の両端部を折り曲げたりすることにより、体液の吸収速度や吸収量を増大させる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、吸収体の幅方向外方に延出された可撓性のサイドフラップと、このサイドフラップの股下領域において長手方向に配設された伸縮性弾性部材と、を有し、吸収体の長手方向側縁をサイドフラップとともに吸収体の内方へ折り返して第1折り返し部を形成し、この第1折り返し部を、更に、吸収体の外方に折り返して第2折り返し部を形成した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−051952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載の発明等においては、吸収体上の適切な部位に体液が保持されない可能性がある他、多量の尿が排泄された場合に、必ずしも迅速に吸収体に吸収されずに漏れのリスクがある等、吸収性物品の吸収性能に関して問題もあった。したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、体液の吸収量や吸収速度が高められた吸収性物品であって、吸収体上の適切な部位に体液が保持されて迅速な吸収と漏れの防止を実現可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収体の幅方向両端部を、長手方向の全長に亘って折り曲げるとともに、折り曲げた状態において、幅方向両端部を幅方向に互いに離間したものとし、吸収体の2本の折り線の間の領域に、所定の凹部を設けた吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、吸収性繊維及び高吸収性ポリマーからなる吸収体と、を有する吸収性物品であって、前記吸収体は、幅方向中心線を挟む一対の折り線で、幅方向両端部が長手方向の全長に亘って身体側に屈曲して、各折り線を挟んだ両側の部位が対向して保持されており、前記吸収体の前記幅方向両端部が身体側に屈曲した状態において、前記吸収体の前記幅方向両端部は幅方向に互いに離間しており、前記吸収体の2本の折り線の間の領域には、少なくとも前記吸収体の長手方向中心部に及ぶ凹部が設けられており、前記吸収体の前記幅方向両端部の離間距離が、前記凹部の幅方向の最大寸法よりも狭い、吸収性物品である。
【0009】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記吸収体が屈曲する前の状態において、前記吸収体の衣類側を構成する表面に、高吸収性ポリマーが濃縮されて存在することを特徴とするものである。
【0010】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記トップシートが、前記吸収体とともに、折り線で身体側に屈曲して、各折り線を挟んだ両側の部位が対向して保持されており、前記吸収性物品の着用時に、肌と、吸収体の2本の折り線の間の領域との間に空隙が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収体の前記幅方向両端部の最短離間距離が1cm以上5cm以下であり、且つ前記凹部の幅方向の最大寸法の10%以上100%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、折り線において、前記吸収体が肉薄となっているか、前記吸収体に溝又はスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収体の嵩高さが1cm
3/g以上25cm
3/g以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記吸収体の前記幅方向両端部、又は前記凹部に突起が設けられており、前記吸収体の前記幅方向両端部と、これに対向する部位を離間した状態で保持可能であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸収性物品は、幅方向中心線を挟む一対の折り線で、吸収体の幅方向両端部を長手方向の全長に亘って折り曲げることにより、幅方向両端部を身体側に屈曲させて、各折り線を挟んだ両側の部位を対向させ、吸収体の幅方向両端部は互いに離間した状態に保持するものとする。これにより、体液の排泄される、吸収体上の幅方向中心線上を含む領域において、吸収体に囲まれた空間が形成されるものとなるので、排泄された体液をこの部位で保持することにより、体液の迅速な吸収が担保される。さらに、本発明の吸収性物品においては、吸収体の2本の折り線の間の領域に、少なくとも吸収体の長手方向中心部に及ぶ凹部が設けられているので、折り畳まれた1対の幅方向両端部と、凹部とで、より多くの体液が保持されて、長手方向への漏れが防止されるとともに、凹部の辺縁が折り畳まれた一対の幅方向両端部を保持するので、吸収体が潰れて、幅方向両端部が長手方向の全長に亘って対向する吸収体上の部位と接触してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の吸収性物品の一態様において、吸収体の折り畳み前の状態と吸収体の折り畳み後の状態を示す図面である。
【
図2】本発明の吸収性物品の別の態様を示す図面である。
【
図3】本発明の吸収性物品の別の態様において、吸収体の折り畳み前の状態と吸収体の折り畳み後の状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<吸収性物品>
本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、吸収体23等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1の用途は、特に限定されるものではなく、一般には、幼児又は成人用を問わず、テープ止めタイプの使い捨ておむつ、パンツタイプの使い捨ておむつ、尿取りパッド、軽失禁パッド、生理用品等であってもよい。
【0018】
図1は、本発明の吸収性物品1の一態様において、吸収体23の折り畳み前の状態と吸収体23の折り畳み後の状態を示す図面である。本発明の吸収性物品1は、液透過性のトップシート21と、液不透過性のバックシート22と、吸収性繊維及び高吸収性ポリマー232からなる吸収体23と、を備えている。また、吸収性物品1には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート21上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザーを備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザーの外端は、バックシート22に固定され、その内端はトップシート21に固着され、その中央はトップシート21に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザーが起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0019】
[トップシート]
トップシート21は、体液が吸収体23へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート21には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート21には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート21の坪量は、15g/m
2以上400g/m
2以下であることが好ましい。
【0020】
[バックシート]
バックシート22は、吸収体23が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0021】
強度及び加工性の点から、バックシート22の坪量は、15g/m
2以上50g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート22は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート22に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート22にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0022】
[吸収体]
吸収体23は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー232(SAP)と、を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体23の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m
2以上800g/m
2以下の坪量とすることが好ましい。なお、吸収体23は、高圧プレスされた状態であってもよい。
【0023】
吸収体23の高吸収性ポリマー232としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体23のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m
2以上500g/m
2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体23において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートとしたものであることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体23の形状の安定化の目的から、吸収体23をキャリアシート26に包むことが好ましい。キャリアシート26の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布、親水性スパンボンド不織布、親水性エアスルー不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシート26を複数備える場合は、キャリアシート26の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0025】
吸収体23の嵩高さは、1cm
3/g以上25cm
3/g以下であることが好ましく、1.5cm
3/g以上、5cm
3/g以下であることがより好ましい。吸収体23の嵩高さを上記の範囲内のものとすることにより、吸収性物品1のフィット性を損なわずに、排泄された体液の吸収性を良好に維持することができる。なお、吸収体23の嵩高さについては、吸収体23の厚さをダイヤルゲージ(尾崎製作所製の「ピーコックダイヤルゲージ」)を用い、3432Paの加重がかかった状態で吸収体23の平均厚さを求め、この平均厚さと吸収体23の面積とから算出した。
【0026】
本発明においては、吸収体23の幅方向両端部231を、長手方向の全長に亘って幅方向中心線を挟む一対の折り線25で折り曲げ、幅方向両端部231が長手方向の全長に亘って身体側に屈曲して、折り線25を挟んだ両側の部位が対向して保持されている。この状態において、吸収体23の幅方向両端部231は幅方向に互いに離間しており、吸収体23を折り曲げる前の状態において吸収体23の身体側表面を構成していた表面の一部が、折り曲げられた幅方向両端部231に覆われずに露出している。そして、上記の吸収体23の身体側表面において、吸収体23の2本の折り線25の間の領域には、少なくとも吸収体23の長手方向中心部に及ぶ凹部24が設けられており、吸収体23の折り曲げられた幅方向両端部231の離間距離Aが、この凹部24の幅方向の最大寸法Bよりも狭くなっている。
【0027】
以上のような構成を採用することにより、折り畳まれた吸収体23において、吸収体23の1対の幅方向両端部231と、凹部24とにより空間が形成され、離間する幅方向両端部231の隙間から流れ込んだ体液が、この空間に保持されるので、吸収体23が多量の体液を保持可能となり、長手方向両端部からの体液の漏れが防止されるとともに、保持される体液は凹部24の壁面と幅方向両端部231の壁面とに接触するので、吸収体23に体液が迅速に吸収されることとなる。なお、凹部24の壁面は堰としての役目も併せ持つが、長手方向中央部から両端部に向かって壁面の高さのみに傾斜をつけて、長手方向中央部から長手方向両端部に向かうほど高さを増してもよい。このように設計することにより、高速で長手方向に展開する体液の勢いを程よく弱めながら、長手方向両端部の吸収体23に体液を展開することができる。一方、逆に勢いの弱い体液が当壁面に到達した場合、そこで体液の移動が留まり、結果長手方向の吸収体23が活かされない場合が考えられるため、壁面の一部の高さを壁面と同じ高さに設けてもよい。
【0028】
本発明において、吸収体23の凹部24は、少なくとも1つの凹部24が長手方向中心部に及んでいれば、複数に分割されていてもよい。この場合、分割された凹部24の寸法とその境界部の寸法は、任意に設定される。例えば、
図1に示されるように、凹部24が長手方向に分割されていてもよいし、
図3に示されるように、幅方向に分割されていてもよい。凹部24が分割されて設けられている場合、分割された凹部24の境界と、幅方向両端部231とが接触し、分割された凹部24の境界により、折り曲げられた幅方向両端部231が支持される。これにより、幅方向両端部231と凹部24により形成される空間が、潰れずに保持されることとなる。なお、凹部24が幅方向に分割されている場合、凹部24の幅方向の最大寸法Bは、分割された複数の凹部24の全てと、その境界部を含んだ領域において、幅方向で最も外側に位置する凹部24の壁面の間の寸法として算出される。
【0029】
なお、特に、凹部24が長手方向に分割されている場合、吸収体23の幅方向両端部231、又は凹部24には突起27が設けられていてもよく、この突起27が、吸収体23の幅方向両端部231と、これに対向する部位を離間した状態で保持可能にしてもよい。このような構成を採用することにより、吸収体23の幅方向両端部231、及び凹部24により形成される空間を、より確実に保持することができる。
【0030】
(幅方向両端部の離間距離)
なお、折り曲げられた状態の吸収体23において、吸収体23の幅方向両端部231の最短離間距離Aは1cm以上5cm以下であり、且つ、凹部24の幅方向の最大寸法Bの10%以上100%以下であることが好ましく、20%以上90%以下であることがより好ましい。幅方向両端部231の離間距離Aを上記の範囲内のものとすることにより、排泄された体液を凹部24に適切に誘導できるとともに、幅方向両端部231と凹部24とが完全に接触してしまうことがなく、且つ凹部24と幅方向両端部231とにより形成される空間に保持される体液と、吸収体23との接触面積も増大させることができる。なお、幅方向端部については、必ずしも直線状に形成されている必要はなく、弧を描いていてもよい。このような場合、例えば、体液の排泄部等、一部の領域のみについて、幅方向両端部231の離間距離Aを広くすることができ、体液の収容能を向上させることができる。
【0031】
(高吸収性ポリマーの配置)
ここで、本発明においては、吸収体23が屈曲する前の状態において、吸収体23の衣類側を構成する表面に、高吸収性ポリマー232が濃縮されて存在することが好ましい。すなわち、この状態における吸収体23の身体側表面に比較して、衣類側表面には、高吸収性ポリマー232がより多く存在していることが好ましい。これにより、吸収体23が折り曲げられた状態において、吸収体23の内側に保持された体液が、吸収体23の外表面に存在する高吸収性ポリマー232に吸収されるとともに、高吸収性ポリマー232が膨潤するので、膨潤した高吸収性ポリマー232により体液の移動がブロックされて、吸収体23の内側に保持されている体液が、吸収体23の外側に漏れ出すことを防止することができる。なお、吸収体23は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよいが、この場合、下層吸収体に高吸収性ポリマー232を偏在させることにより、吸収体23の衣類側表面に高吸収性ポリマー232が濃縮されて存在する構成を実現することができる。上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の長さは、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより長くてもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さと同じであってもよく、上層吸収体の長さが下層吸収体の長さより短くてもよい。また、高吸収性ポリマー232を集約配置させたSAPシートを製品中央部の長手方向沿いに配置してもよい。当該SAPシートを採用することにより、吸収時のSAPの膨潤によりSAPシートが膨潤し、結果、元々肌に触れない凹型の中央部が特異的に隆起して凸型となって肌と接触し、肌上に残る体液を拭取る効果が発現される。
【0032】
(吸収体の折り畳み時のトップシート及びキャリアシートの配置)
図2は、本発明の吸収性物品1の別の態様を示す図面である。上述のとおり、吸収体23は、キャリアシート26に包まれていることが好ましい。このため、吸収体23を折り曲げる際には、
図2に示すとおり、キャリアシート26に包まれた吸収体23を折り曲げて、吸収体23の幅方向両端部231を屈曲させてもよい。また、
図1に示すとおり、吸収体23をトップシート21と積層させた後、吸収体23を折り曲げて、吸収体23の幅方向両端部231を屈曲させてもよい。この場合、トップシート21は、吸収体23とともに、折り線25で身体側に屈曲して、折り線25を挟んだ両側の部位が対向して保持されるものとなる。このような構成とすることにより、折り曲げられたキャリアシート26やトップシート21の反発力により、吸収体23の幅方向両端部231の全長が、対向する吸収体23の部位に接触してしまうことがなく、吸収体23をトップシート21とともに折り曲げる場合には、吸収性物品1の着用時に、肌と、吸収体23の2本の折り線25の間の領域との間に、空隙が形成されることとなるので、折り畳まれた吸収体23の幅方向両端部231と、凹部24により形成される空間に、排泄された体液を迅速に誘導することができ、結果として、体液を吸収体23に迅速に吸収させることができる。
【0033】
(折り線)
吸収体23を折り畳む折り線25は、幅方向中心線を挟んで一対形成されている。ここで、本発明においては、この折り線25において、吸収体23が肉薄となっているか、吸収体23に溝又はスリットが形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより、吸収性物品1の製造過程において、吸収体23を容易に折り畳むことができるとともに、折り畳まれた吸収体23における、幅方向両端部231が身体側に屈曲された形状を、安定に維持することもできる。
【0034】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法は、周知の方法を採用することができ、例えば、(A)吸収性繊維を高吸収性ポリマー232とともに積繊して吸収体マットを作成し、吸収体23を形成する工程、(B)トップシート21と立体ギャザーをホットメルト系接着剤で固定・一体化する工程、(C)トップシート21、立体ギャザー、及びバックシート22の内側にホットメルト系接着剤を塗工する工程、(D)集合ドラムにおいて、吸収体23の上部にトップシート21を、吸収体23の下部にバックシート22を配置し、各構成部材を固定・一体化する工程、(E)吸収性物品1の半製品をカッター装置により製品寸法でカットし、個々の吸収性物品1を切り離す工程、を有する製造方法等を挙げることができる。そして、本発明において吸収性物品1の吸収体23については、吸収性物品1の製造工程のいずれかの段階において、トップシート21やキャリアシート26とともに、幅方向中心線を挟む折り線25で、身体側に折り曲げることにより屈曲させればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 吸収性物品
21 トップシート
22 バックシート
23 吸収体
231 幅方向両端部
232 高吸収性ポリマー
24 凹部
25 折り線
26 キャリアシート
27 突起
A 幅方向両端部の離間距離
B 凹部の幅方向の最大寸法
Y 長手方向
X 幅方向