(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944588
(24)【登録日】2021年9月14日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】放熱構造体およびそれを装着したバッテリー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/613 20140101AFI20210927BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20210927BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20210927BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20210927BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20210927BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20210927BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20210927BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6555
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
H01L23/36 D
H01L23/46 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-505651(P2020-505651)
(86)(22)【出願日】2019年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2019002937
(87)【国際公開番号】WO2019176344
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2020年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2018-44917(P2018-44917)
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】須田 工
【審査官】
坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−294407(JP,A)
【文献】
特開2006−310807(JP,A)
【文献】
特開2011−85311(JP,A)
【文献】
特開2009−299008(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/029560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/613
H01M 10/651
H01M 10/6555
H01M 10/625
H01M 10/6568
H01M 10/6556
H01M 50/20
H01L 23/36
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体に当該ゴム状弾性体より熱伝導性の高い熱伝導材を含む1本若しくは2本以上の長尺状放熱シートと、
1本の前記長尺状放熱シートを所定間隔で往復配置した状態、若しくは2本以上の前記長尺状放熱シートを所定間隔で並べて配置した状態において、前記長尺状放熱シートに交差して連結する1または2以上の連結部材と、
を備え、
前記連結部材の総重量が前記長尺状放熱シートの総重量より小さい放熱構造体。
【請求項2】
前記連結部材の厚さは前記長尺状放熱シートの厚さより小さい請求項1に記載の放熱構造体。
【請求項3】
前記連結部材は、複数の前記長尺状放熱シートの表裏両面を縫うように配置されている請求項1または2に記載の放熱構造体。
【請求項4】
前記連結部材は、所定位置の前記長尺状放熱シートの表面から隣の前記長尺状放熱シートの裏面へと順に縫うように配置され、前記連結部材と前記長尺状放熱シートとが平織りされている請求項3に記載の放熱構造体。
【請求項5】
前記連結部材は、金属、炭素系材料あるいはセラミックスを含むシートである請求項1から4のいずれか1項に記載の放熱構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の放熱構造体と、
1または複数のバッテリーセルを搭載したバッテリーと、
を備え、
前記放熱構造体は、少なくとも前記バッテリーセルと、前記バッテリーセルを冷却可能な冷却部材との間に配置されているバッテリー。
【請求項7】
前記バッテリーセルを複数備え、
前記放熱構造体は、さらに、複数の前記バッテリーセル同士の間に配置される請求項6に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2018年3月13日に日本国において出願された特願2018−044917に基づき優先権を主張し、当該出願に記載された内容は、本明細書に援用する。また、本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、発熱体からの放熱を促進する放熱構造体およびそれを装着したバッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0004】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、cBNなどから構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0005】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しょうとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車が近年普及してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などの課題がある。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が大きな課題となっている。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0006】
バッテリーの速やかな放熱を実現するには、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属製の筐体に水冷パイプを配置し、当該筐体にバッテリーセルを多数配置し、バッテリーセルと筐体の底面との間に密着性のゴムシートを挟んだ構造が採用されている。以下、図を参照して説明する。
【0007】
図7は、従来のバッテリーの概略断面図を示す。
図7のバッテリー100は、多数のバッテリーセル101を、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る筐体102の内底面103上に備える。筐体102の底部104には、冷却水を流すための水冷パイプ105が備えられている。バッテリーセル101は、底部104との間にゴムシート(例えば、室温硬化型シリコーンゴム製のシート)106を挟んで筐体102内に固定されている。このような構造のバッテリー100では、バッテリーセル101は、ゴムシート106を通じて筐体102に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、
図7に示すようなバッテリー100の軽量化の要求に応えるには、ゴムシート106のさらなる軽量化を図る必要がある。また、ゴムシート106の軽量化により、バッテリーセル101とゴムシート106との熱抵抗(熱伝導性を悪くする特性)を上昇させてはならない。これは、バッテリー100のみならず回路基板や電子機器本体のような他の発熱体からの除熱に関しても同様である。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量でかつ放熱効率に優れる放熱構造体、およびそれを備えたバッテリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱構造体は、ゴム状弾性体に当該ゴム状弾性体より熱伝導性の高い熱伝導材を含む1本若しくは2本以上の長尺状放熱シートと、1本の長尺状放熱シートを所定間隔で往復配置した状態、若しくは2本以上の長尺状放熱シートを所定間隔で並べて配置した状態において、長尺状放熱シートに交差して連結する1または2以上の連結部材とを備え、連結部材の総重量を長尺状放熱シートの総重量より小さくしている。
【0012】
(2)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、連結部材の厚さは長尺状放熱シートの厚さより小さい。
【0013】
(3)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、連結部材は、複数の長尺状放熱シートの表裏両面を縫うように配置されている。
【0014】
(4)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、連結部材は、所定位置の長尺状放熱シートの表面から隣の長尺状放熱シートの裏面へと順に縫うように配置され、前記連結部材と前記長尺状放熱シートとが平織りされている。
【0015】
(5)別の実施形態に係る放熱構造体において、好ましくは、連結部材は、金属、炭素系材料あるいはセラミックスを含むシートである。
【0016】
(6)一実施形態に係るバッテリーでは、上述のいずれかに記載の放熱構造体と、1または複数のバッテリーセルとを備え、放熱構造体は、少なくともバッテリーセルと、バッテリーセルを冷却可能な冷却部材との間に配置されている。
【0017】
(7)別の実施形態に係るバッテリーは、好ましくは、バッテリーセルを複数備え、放熱構造体は、さらに、複数のバッテリーセル同士の間に配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量でかつ放熱効率に優れる放熱構造体、およびそれを備えたバッテリーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】
図1Aは、本発明の好適な実施形態に係る放熱構造体の平面図と一部Aの拡大図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明の好適な実施形態に係る放熱構造体の正面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図2中のバッテリーセルを放熱構造体上に配置する状況の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーの縦断面図および一部Bの拡大図を示す。
【
図7】
図7は、従来のバッテリーの概略断面図を示す。
【符号の説明】
【0020】
10,10a,10b,10c,10d,10e・・・放熱構造体、11・・・長尺状放熱シート、11a・・・ゴム状弾性体、11b・・・熱伝導材、13,13a,13b・・・連結部材、20,20a・・・バッテリー、25・・・冷却部材、30・・・バッテリーセル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
1.放熱構造体
図1Aは、本発明の好適な実施形態に係る放熱構造体の平面図と一部Aの拡大図を示す。
図1Bは、本発明の好適な実施形態に係る放熱構造体の正面図を示す。
【0023】
本実施形態に係る放熱構造体10は、ゴム状弾性体11aに、ゴム状弾性体11aより熱伝導性の高い熱伝導材11bを含む2本以上の長尺状放熱シート11と、それら長尺状放熱シート11を所定間隔で並べて配置した状態において長尺状放熱シート11に交差して連結する2以上の連結部材13と、を備える。本明細書では、「長尺状」とは、一方向に長い形状を意味する。長尺状放熱シート11は、一方向に長い直方体であって幅に対して厚さが比較的小さい細長のシートである。
【0024】
ゴム状弾性体11aは、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴム状弾性体11aは、放熱対象たる熱源からの熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、ゴム状弾性体11aは、より好ましくは、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、あるいはこれらの任意の2以上の複合物である。
【0025】
熱伝導材(熱伝導フィラーと称することもできる)11bは、好ましくは、金属、炭素系材料、セラミックスである。金属としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、鉄、鉄系合金、銅、銅系合金あるいはSUSを例示できる。セラミックスとしては、金属の酸化物、水酸化物若しくは窒化物を挙げることができる。セラミックスのより好適な材料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、hBN、cBNあるいは炭化ケイ素等を例示できる。また、炭素系材料としては、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、非晶質炭素若しくはグラファイト等を例示できる。熱伝導材11bは、長尺状放熱シート11の全体積に対して如何なる比率で含まれていても良いが、好ましくは2〜70体積%の範囲、より好ましくは5〜20体積%である。熱伝導材11bは、粒状、針状、繊維状、板状等の如何なる形状のフィラーでも良い。長尺状放熱シート11は、発熱体(例えば、後述のバッテリーセル)と密着する必要から、発熱体に対して粘着性を有するのが好ましい。したがって、長尺状放熱シート11のアスカーゴム硬度計C型(ASKAR−C)にて測定されるゴム硬度は、好ましくは10〜20度である。
【0026】
本明細書では、「交差」は、平行以外の位置関係を意味し、直角で交わる関係に限定されず、交わる限り如何なる角度で交わる場合も含む。また、「所定間隔」は、特定の幅を意味するものではなく、また、一定の幅であることも意味しない。この実施形態では、長尺状放熱シート11は、好ましくは、同シート11の幅以下の所定間隔で並べて配置されている。
【0027】
この実施形態に係る放熱構造体10は、13本の長尺状放熱シート11を所定間隔で並べて、それら長尺状放熱シート11を、長尺状放熱シート11の長さ向かって並ぶ16本の連結部材13によって連結する構造を有するシート状の放熱構造体である。連結部材13の総重量は、長尺状放熱シート11の総重量より小さい。長尺状放熱シート11のみから放熱構造体10を構成する場合と比べて、より軽量化を図る必要からである。また、放熱構造体10の外形領域を長尺状放熱シート11のみで構成する場合と比べて、この実施形態の放熱構造体10の方が軽量となるように、連結部材13の数、形態および構成材料が選択されるのが好ましい。さらには、連結部材13の密度は、好ましくは、長尺状放熱シート11の密度より小さい。連結部材13の厚さは、好ましくは、長尺状放熱シート11の厚さに比べて小さい。長尺状放熱シート11の数は、2本以上であれば13本に限定されない。また、連結部材13の数は、2本以上であれば16本に限定されない。
【0028】
連結部材13は、複数の長尺状放熱シート11の表裏両面を縫うように配置されている。より具体的には、連結部材13は、所定位置の長尺状放熱シート11の表面から隣の長尺状放熱シート11の裏面へと順に縫うように配置されている。この実施形態では、放熱構造体10は、連結部材13と長尺状放熱シート11とを平織りした構造を有する。連結部材13は、金属、炭素系材料あるいはセラミックスを含むシートである。より好ましい連結部材13は、熱可塑性樹脂やセルロースを母材とするシート内に、金属、炭素系材料あるいはセラミックスのフィラーを分散させた複合シートである。当該フィラーを構成する金属、炭素系材料またはセラミックスは、長尺状放熱シート11中の熱伝導材11bの材料候補と同様である。連結部材13は、複数本の長尺状放熱シート11を連結して固定する機能に加え、好ましくは、複数の長尺状放熱シート11の間において熱を伝える機能を有する。連結部材13は、好ましくは、長尺状放熱シート11よりも低粘着性の部材である。長尺状放熱シート11は、前述のように、好ましくは高粘着性を発揮するシートである。しかし、長尺状放熱シート11の粘着性が高すぎると、発熱体と容易に接着してしまい、取り扱いが困難な場合がある。例えば、発熱体をバッテリーセルとするバッテリー内に放熱構造体10を組み込む際に、長尺状放熱シート11の過度な粘着性が組み込みを困難にすることもある。比較的粘着性の低い連結部材13を長尺状放熱シート11と編み込むと、放熱構造体10全体としての粘着性を低くすることができる。連結部材13はこのような機能も併せ持つ。
【0029】
連結部材13の内の連結部材13aは、
図1Aの放熱構造体10を構成する13本の長尺状放熱シート11の内、
図1Aの左側から右側に向かって、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表の順に交互に長尺状放熱シート11の表面と裏面とに接しながら配置される。また、連結部材13の内の連結部材13bは、
図1Aの放熱構造体10を構成する13本の長尺状放熱シート11の内、
図1Aの左側から右側に向かって、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏、表、裏の順に交互に長尺状放熱シート11の表面と裏面とに接しながら配置される。連結部材13aと連結部材13bは、長尺状放熱シート11の長さ方向に交互に配置される。このように、13本の長尺状放熱シート11は、これと略直角方向に配置される各8本の連結部材13aと8本の連結部材13bとによって表裏方向から挟まれ、編みこまれた状態となっている。
【0030】
連結部材13a,13bと長尺状放熱シート11との接触部分には、好ましくは接着剤が介在されている。このため、放熱構造体10は、容易にくずれない。なお、接着剤以外の固定手段にて、連結部材13a,13bと長尺状放熱シート11とが固定されていても良い。また、連結部材13a,13bと長尺状放熱シート11との交差位置において、連結部材13a,13bにより長尺状放熱シート11を縛って固定するようにしても良い。また、長尺状放熱シート11の長さ方向に沿って、連結部材13aと連結部材13bとを順に交互配置せずに、連結部材13aまたは連結部材13bのいずれかを連続配置しても良い。
【0031】
2.バッテリー
(1)第1実施形態
図2は、本発明の第1実施形態に係るバッテリーの縦断面図を示す。
図3は、
図2中のバッテリーセルを放熱構造体上に配置する状況の斜視図を示す。
【0032】
図2に示すように、放熱構造体10は、1または複数のバッテリーセル30を搭載したバッテリー20に備えられている。放熱構造体10は、少なくともバッテリーセル30と冷却部材25との間に配置されている。放熱構造体10は、バッテリー20内の熱源の一例であるバッテリーセル30と冷却部材25との間にあって、バッテリーセル30から冷却部材25に熱を伝導させるための放熱構造体である。バッテリー20は、
図2に示すように、冷却部材25を接触させる筐体21内に、熱源としての複数のバッテリーセル30を備えたバッテリーである。バッテリーセル30の冷却部材25に近い側の端部と冷却部材25に近い側の筐体21の一部(底部22)との間に、バッテリーセル30から冷却部材25に熱を伝導させるための放熱構造体10が備えられている。
【0033】
次に、バッテリー20の構成についてより詳細に説明する。この実施形態において、バッテリー20は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル30を備える。バッテリー20は、一方に開口する有底型の筐体21を備える。筐体21は、好ましくは、アルミニウム若しくはアルミニウム基合金から成る。バッテリーセル30は、筐体21の内部24に配置される。バッテリーセル30の上方には、電極31,32(
図3を参照)が突出して設けられている。複数のバッテリーセル30は、好ましくは、筐体21内において、その両側からネジ等を利用して圧縮する方向に力を与えられて、互いに密着するようになっている(不図示)。筐体21の底部22には、冷却部材25の一例である冷却水を流すために、1または複数の水冷パイプ23が備えられている。バッテリーセル30は、底部22との間に、放熱構造体10を挟むようにして筐体21内に配置されている。このような構造のバッテリー20では、バッテリーセル30は、放熱構造体10を通じて筐体21に伝熱して、水冷によって効果的に除熱される。なお、冷却部材25は、冷却水に限定されず、液体窒素、エタノール等の有機溶剤も含むように解釈される。冷却部材25は、冷却に用いられる状況下にて、液体であるとは限らず、気体あるいは固体でも良い。
【0034】
図3に示すように、バッテリーセル30の底部を放熱構造体10上に配置すると、当該底部が完全に平面でなくとも、放熱構造体10を構成する長尺状放熱シート11が、わずかに向きを変えながら当該底部に密着しやすくなる。バッテリーセル30には、アルミニウムなどの金属製のシートを樹脂シートで挟んだラミネート構造を有する容器に電解液を封入したものを好適に用いることができる。バッテリーセル30の軽量化を通じてバッテリー20の軽量化を図ることができる。このような柔らかな容器を有するバッテリーセル30を用いる場合、高硬度の放熱板では、バッテリーセル30の底部と放熱板との間に隙間が生じてしまい、熱伝導が悪化しやすい。一方、ゴム状弾性体11aに熱伝導材11bを分散した放熱シートだけでバッテリーセル30に接触させると、当該放熱シートの重量が大きすぎ、バッテリー20の軽量化を図ることが難しい。この実施形態に係る放熱構造体10は、長尺状放熱シート11を間引きした状態として、その間引きした部分より軽量の連結部材13を長尺状放熱シート11の連結に用いている。加えて、連結部材13を熱伝導手段として機能するようにすると、軽量化および放熱性に共にすぐれた放熱構造体10を得ることができる。
【0035】
(2)第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態に係るバッテリーの縦断面図および一部Bの拡大図を示す。
【0036】
第2実施形態に係るバッテリー20aは、複数のバッテリーセル30と冷却部材25との間に放熱構造体10を配置すると共に、複数のバッテリーセル30同士の間にも放熱構造体10を配置している。放熱構造体10は、長尺状放熱シート11を複数並べる方向(幅方向)に長い形状を有する1枚のシートである。放熱構造体10は、一端17から底部22の内底面に沿って延出して、各バッテリーセル30の隙間を縫うように他端18に至るように、筐体21の内部24に配置されている。ただし、放熱構造体10は、複数枚のシートとして、底部22の内底面に敷くシートと、バッテリーセル30同士の間に挿入する1または複数のシートとに分離していても良い。バッテリー20aにおける上述の点以外は、第1実施形態に係るバッテリー20の構成と共通する。このため、共通する部分については、第1実施形態における説明をかり、この実施形態での重複した説明を省略する。
【0037】
3.放熱構造体の変形例
次に、放熱構造体10の各種変形例について説明する。
【0038】
図5Aは、
図1Bの放熱構造体の一部拡大正面図を示す。
図5Bは、
図1Bの放熱構造体の変形例の一部拡大正面図を示す。
図5Cは、
図1Bの放熱構造体の変形例の一部拡大正面図を示す。
【0039】
図5Aの放熱構造体10は、長尺状放熱シート11を、その幅方向に複数並べた状態において、連結部材13aと連結部材13bとを長尺状放熱シート11の長さ方向に交互に配置し、かつ長尺状放熱シート11の表側の面と裏側の面とを交互に縫うように連結部材13a,13bを備える。放熱構造体10は、長尺状放熱シート11と連結部材13とを平織りした構成を有する。
【0040】
これに対して、
図5Bの放熱構造体10aは、長尺状放熱シート11を、その幅方向に複数並べた状態において、連結部材13aと連結部材13bとを長尺状放熱シート11の長さ方向に配置し、連結部材13aを全ての長尺状放熱シート11の一方の面(表側の面)に固定し、連結部材13bを全ての長尺状放熱シート11の他方の面(裏側の面)に固定している。連結部材13aおよび連結部材13bは、それぞれ1枚でも、複数枚でも良い。連結部材13a,13bと長尺状放熱シート11とは、長尺状放熱シート11が自由に動くことのないように、接着剤等で固定されている。
【0041】
また、
図5Cの放熱構造体10bは、長尺状放熱シート11を、その幅方向に複数並べた状態において、各長尺状放熱シート11を挿入する袋状部位を複数個備える連結部材13を備える。連結部材13と長尺状放熱シート11とは好ましくは接着剤等で固定されているが、固定されていなくても良い。連結部材13が柔軟性に富む材料から構成されている場合には、長尺状放熱シート11同士の間隔は容易に変化でき、放熱構造体10bの形状も自由に変えることができる。
【0043】
図6Aの放熱構造体10は、既に説明したように、複数本の長尺状放熱シート11と複数本の連結部材13a,13bとを平織りした構造を有する。
図6Bの放熱構造体10cは、平織り構造という点では
図6Aの放熱構造体10と共通するが、長尺状放熱シート11が蛇腹状に往復する1本(1枚と称しても良い)のシートである点では
図6Aの放熱構造体10と相違する。また、
図6Cの放熱構造体10dは、平織り構造という点では
図6Aの放熱構造体10と共通するが、連結部材13が蛇腹状に往復する1本(1枚と称しても良い)のシートである点では
図6Aの放熱構造体10と相違する。さらに、
図6Dの放熱構造体10eは、平織り構造という点では
図6Aの放熱構造体10と共通するが、1枚の長尺状放熱シート11と1枚の連結部材13とが共に蛇腹状に往復するシートである点では
図6Aの放熱構造体10と相違する。
【0044】
このように、放熱構造体10,10c,10d,10eを構成する長尺状放熱シート11は1本であるか複数であるかを問わない。連結部材13も同様である。長尺状放熱シート11は、その幅方向に複数並ぶ配置を実現できれば良い。
【0045】
4.その他の実施形態
以上、本発明に係る放熱構造体およびそれを備えるバッテリーの好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形して実施可能である。
【0046】
長尺状放熱シート11と連結部材13とは、平織に限定されず、別の織り方(例えば、綾織、繻子織(朱子織)など)にて放熱構造体を構成しても良い。その場合、放熱構造体を構成する長尺状放熱シート11および連結部材13は、放熱構造体10c,10d,10eのように、少なくともいずれかを1枚としても良い。
【0047】
図5Bの正面視となるように、
図6B〜
図6Dの放熱構造体10c,10d,10eを構成する各長尺状放熱シート11と各連結部材13とを用いて放熱構造体を作製しても良い。また、冷却部材25とバッテリーセル30との間に放熱構造体10,10a,10b,10c,10d,10eを介在させる構成は、水冷パイプ23のような冷却部材25を流す管とバッテリーセル30との間に放熱構造体10,10a,10b,10c,10d,10eを介在させる構成と言い換えることもできる。
【0048】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、バッテリー20aに、放熱構造体10a,10b,10c,10d,10eを含む上述の種々の放熱構造体を搭載しても良い。バッテリー20aに搭載される複数の放熱構造体を、上述のいずれか任意の2種以上としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、自動車用バッテリーの他、自動車、工業用ロボット、発電装置、PC、家庭用電化製品などの各種電子機器にも利用することができる。