特許第6944731号(P6944731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6944731-土砂岩石に関する生物駆除装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944731
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】土砂岩石に関する生物駆除装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 19/00 20060101AFI20210927BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20210927BHJP
   A61L 2/06 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
   A01M19/00
   A01M21/04 Z
   A61L2/06
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-35486(P2020-35486)
(22)【出願日】2020年3月3日
(65)【公開番号】特開2021-137139(P2021-137139A)
(43)【公開日】2021年9月16日
【審査請求日】2021年6月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520074055
【氏名又は名称】株式会社ノアズアート
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】西川 峰彦
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−11079(JP,A)
【文献】 特開2000−300145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
A61L 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂石材に付着した微生物や種子等の生物を駆除する生物駆除装置であり、
前記土砂石材を搬入する搬入部と、
前記土砂石材を搬送するコンベアと、
前記土砂石材を加熱する第1テンパー部および第2テンパー部と、
前記第1テンパー部と前記第2テンパー部との間に配置されて、前記土砂石材を回転させる連結部と、
前記土砂石材を外部に搬出する搬出部と、を備え、
前記第1テンパー部および第2テンパー部には、熱風を吹き出すテンパー用吹出管が設けられ、
前記連結部には、前記土砂石材を移動させる際に、前記土砂石材を回転させる滑り台を有する
ことを特徴とする生物駆除装置。
【請求項2】
前記連結部の前記滑り台は、入口と出口とを有し、
前記入口側の高さは、前記出口側の高さよりも高い位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載の生物駆除装置。
【請求項3】
前記滑り台は、前記入口から前記出口に向かって傾斜している板状部材であることを特徴とする請求項2に記載の生物駆除装置。
【請求項4】
前記滑り台は、前記入口から前記出口に向かって配列される複数のローラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の生物駆除装置。
【請求項5】
前記滑り台は、前記入口から前記出口に向かって配列される複数のローラーおよび前記複数のローラーの下方に配置される前記入口から前記出口に向かって傾斜している板状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の生物駆除装置。
【請求項6】
前記滑り台の表面上には、複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項3〜5に記載の生物駆除装置。
【請求項7】
前記突起は、前記滑り台の表面上にランダムに配置されていることを特徴とする請求項6に記載の生物駆除装置。
【請求項8】
前記突起の高さが異なっていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の生物駆除装置。
【請求項9】
前記第1テンパー部の川上側に前記土砂石材を乾燥させる乾燥部を備えていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の生物駆除装置。
【請求項10】
前記テンパー用吹出管から噴出する熱風は、300℃以上であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の生物駆除装置。
【請求項11】
前記土砂石材が岩石であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の生物駆除装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物駆除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建設工事で使用する土砂石材の滅菌、除菌、駆除及び防除する滅菌処理装置(生物駆除装置)が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1は、薬剤が噴霧・散布可能となるよう薬剤の配管と噴霧装置とを、土砂石材の連続的搬送手段内に搬送方向に配置した土砂石材の殺菌、除菌、駆除及び防除装置であり、大量の土砂石材を効率よく低コストで、労働安全衛生性も高く、人畜無害で、周辺自然環境へも悪影響を及ぼすこともなく行うことができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3200633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている滅菌処理装置は、薬剤を使用するため、薬剤の漏出等の危険性に対する防御、薬剤の無効化を処理する排出装置の設置等が必要となることから装置全体が大きくなり、設置場所へ排水処理から起因する環境汚染、装置の価格やメンテナンスの費用もかかる等の問題点があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されている滅菌処理装置では、構造上において加熱滅菌するための最高温度が低く、微生物や種子を含む生物が付着した、より大量の土砂石材を素早く処理(殺菌、滅菌、駆除)することができないという問題点があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑み、大量の土砂石材に付着した生物(特定外来生物、外来生物、昆虫、藻等を含む)を確実に駆除できる生物駆除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上述した問題点に関して鋭意研究を続けた結果、以下のような画期的な生物駆除装置を見出した。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、土砂石材に付着した微生物や種子等の生物を駆除する生物駆除装置であり、土砂石材を搬入する搬入部と、土砂石材を搬送するコンベアと、土砂石材を加熱する第1テンパー部および第2テンパー部と、第1テンパー部と第2テンパー部との間に配置されて、土砂石材を回転させる連結部と、土砂石材を外部に搬出する搬出部と、を備え、第1テンパー部および第2テンパー部には、熱風を吹き出すテンパー用吹出管が設けられ、連結部には、土砂石材を移動させる際に、土砂石材を回転させる滑り台を有することを特徴とする生物駆除装置にある。
【0010】
かかる第1の態様では、搬送する土砂石材の加熱箇所を連結部の滑り台で回転させて変更させることで、満遍ない加熱と300℃以上(好ましくは、500℃以上)の吹出熱により土砂石材の中心部まで熱伝達を実現させ、土砂石材に付着した微生物や種子等の生物を確実に死滅させ駆除することができる。また、生物駆除装置の簡素化も図れる。
【0011】
本発明の第2の態様は、連結部の滑り台は、入口と出口とを有し、入口側の高さは、出口側の高さよりも高い位置にあることを特徴とする第1の態様に記載の生物駆除装置にある。
【0012】
かかる第2の態様では、自重落下により土砂石材の回転が行われ、土砂石材の加熱される箇所を容易に変更することができる安価な生物駆除装置を提供することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、滑り台は、入口から出口に向かって傾斜している板状部材であることを特徴とする第2の態様に記載の生物駆除装置にある。
【0014】
かかる第3の態様では、加熱された土砂石材を回転させることができる、簡単な構造でより安価な生物駆除装置を提供することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、滑り台は、入口から出口に向かって配列される複数のローラーであることを特徴とする第1または第2の態様に記載の生物駆除装置にある。
【0016】
かかる第4の態様では、加熱された土砂石材をスムーズにかつ確実に回転させることができる生物駆除装置を提供することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、滑り台は、入口から出口に向かって配列される複数のローラーおよび複数のローラーの下方に配置される入口から出口に向かって傾斜している板状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の生物駆除装置にある。
【0018】
かかる第5の態様では、径が大きい土砂岩石はローラーによって回転させられると共に、ローラーの間から落下する径が小さな土砂岩石は下方板状部材によって回転させされることになるので、より確実に加熱された土砂岩石を回転させることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、滑り台の表面上には、複数の突起が設けられていることを特徴とする第3〜第5の態様の何れか1つに記載の生物駆除装置にある。
【0020】
かかる第6の態様では、加熱された土砂石材を、より確実に回転させることができる生物駆除装置を提供することができる。特に岩石の場合、回転がより確実に行われることになる。
【0021】
本発明の第7の態様は、突起は、滑り台の表面上にランダムに配置されていることを特徴とする第6の態様に記載の生物駆除装置にある。
【0022】
かかる第7の態様では、ランダムに配置された突起に衝突することによって土砂石材が回転することになるので、回転に偏りがなく、加熱された土砂石材をくまなく回転させることができる生物駆除装置を提供することができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、突起の高さが異なっていることを特徴とする第6または第7の態様に記載の生物駆除装置にある。
【0024】
かかる第8の態様では、高さが異なる突起に衝突することによって、加熱された土砂石材が回転することになるので、大きさの異なる土砂石材であっても、確実に回転させることができる。
【0025】
本発明の第9の態様は、第1テンパー部の川上側に土砂石材を乾燥させる乾燥部を備えていることを特徴とする第1〜第8の態様の何れか1つに記載の生物駆除装置にある。
【0026】
かかる第9の態様では、乾燥部によって土砂岩石の表面の水分およびその内部に浸み込んでいる水分を蒸発させた後で、第1テンパー部および第2テンパー部で、その土砂岩石を加熱することができるので、土砂石材に付着した微生物や種子等の生物を、より効率的に死滅させ駆除することができる。
【0027】
本発明の第10の態様は、テンパー用吹出管から噴出する熱風は、300℃以上であることを特徴とする第1〜第9の態様の何れか1つに記載の生物駆除装置にある。
【0028】
かかる第10の態様では、土砂石材を300℃以上で加熱することができ、土砂岩石に付着している生物(特に種子)を、より確実に駆除することができる。
【0029】
本発明の第11の態様は、土砂石材が岩石であることを特徴とする第1〜第10の態様の何れか1つに記載の生物駆除装置にある。
【0030】
かかる第11の態様では、荷重があり大きさが異なる岩石であっても、土砂岩石の中心部まで加熱できる。その結果、土砂岩石の中心部からの放熱によりムラ無く加熱して生物を確実に死滅させ駆除することができるので、特に岩石の生物駆除に最適な生物駆除装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る生物駆除装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明に係る生物駆除装置の連結部の第1実施形態の一例を示し、(a)は側面図、(b)は突起を説明するための斜視図、(c)は連結部の他の実施例の側面図である。
図3】本発明に係る生物駆除装置の連結部の第2実施形態の一例を示し、(a)は側面図、(b)は突起を説明するための斜視図、(c)は連結部の他の実施例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る生物駆除装置の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(第1および第2実施形態)
【0033】
図1は、本発明に係る生物駆除装置の一例を示す模式図である。図1に基づいて本実施形態の生物駆除装置を説明する。
【0034】
本実施形態の生物駆除装置1は、主に埋め立て等に利用する土砂石材(岩石等)に関し、埋め立て地等への生物(特に特定外来種)の持ち込みを防止するために、予め利用する土砂石材を熱して、土砂石材に付着した生物である微生物や種子を消滅させる装置である。この生物駆除装置を用いることによって、埋め立て地等への生物(特に特定外来種)の侵入を防止することができるので、環境保全保護を図ることができる。
【0035】
埋め立て地等に利用する土砂石材は、他府県や外国から埋め立て地等に持ち運ばれるが、これらの土砂石材には、採掘した現地の微生物や種子が付着している。本発明は、埋め立て地等へ生物(特に特定外来種)を持ち込まないために、岩石等に付着した微生物や種子を高温下で死滅させて駆除することを目的としている。
【0036】
微生物や種子を死滅させる対象は、本発明において主に岩石であるが、以下、岩石等を「土砂石材」として説明する。また、駆除する対象物は主に微生物や種子であるが、以下では駆除対象物を「生物」として説明する。
【0037】
生物駆除装置1は、図1に示すように、筐体2に支持され、土砂石材Sを搬入する搬入部10と、搬入された土砂石材Sを搬送させるコンベア20と、土砂石材Sを乾燥する乾燥部30と、土砂石材Sを加熱する第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bと、土砂石材Sを回転させる連結部50と、土砂石材Sを搬出する搬出部11とを備えている。なお、生物駆除装置1は、搬入部10、コンベア20、乾燥部30、第1テンパー部40a、第2テンパー部40b、連結部50および搬出部11の各部に電源を供給し、各部の可動を制御する制御部3を有していてもよい。
【0038】
搬入部10は、ベルトコンベア等で搬送されてきた土砂石材Sを、生物駆除装置1内に搬入するための入口である。
【0039】
コンベア20は、搬入部10から搬入された土砂石材Sを生物駆除装置1内で搬送させる搬送装置であり、搬送部21と搬送部21を駆動する駆動部22とを備えている。
【0040】
搬送部21は、土砂石材Sを載置させ、乾燥部30、第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40b内を搬送させるもので、例えばベルト式、チェーン式、ローラー式などがあるが、少なくとも300℃に対応可能な材質(特に500℃に対応可能な材質が好ましい)であればよい。駆動部22は、例えばモーターであり搬送部21の搬送スピード、駆動・停止等をコントロールすることができるようになっている。
【0041】
乾燥部30は、土砂石材Sをコンベア20により搬送させながら、土砂石材Sの水分を除去する装置であり、第1テンパー部40aの川上側に配置されている。そして、乾燥部30内のコンベア20の上部には、熱風(例えば100℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは500℃以上)を吹き出す乾燥用吹出管31と、吹き出された熱風の温度を均一化する乾燥用ファン32とが、複数設置されている。
【0042】
第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bは、土砂石材Sをコンベア20により搬送させながら、土砂石材Sに付着した微生物や種子などに熱風(300℃以上、好ましくは500℃以上)を当てて、完全に死滅させる装置である。そして、第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bのコンベア20の上部に、熱風を吹き出すテンパー用吹出管41と、吹き出された熱風の温度を均一化するテンパー用ファン42が、複数配置されている。
【0043】
第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bでは、土砂石材S(特に岩石)を少なくとも約300℃の熱風下で2分間以上さらすことができ、テンパー用ファン42より、土砂石材Sに満遍なく熱が行き渡ることが可能となっている。なお、乾燥部30の乾燥用ファン32の回転数をテンパー用ファン42の回転数よりも早くして、乾燥を早めることもできる。
【0044】
連結部50は、本実施形態において、テンパー部40aとテンパー部40bとの間に設置され、土砂石材Sを回転させ、相対的位置を変更させる装置である。連結部50の詳細は、図2および図3に基づいて後述する。
【0045】
搬出部11は、コンベア20の搬送部21で搬送され生物が駆除された土砂石材Sを生物駆除装置1外部に搬出させる出口である。
【0046】
図2は、本発明に係る生物駆除装置の連結部の第1実施形態の一例を示し、(a)は側面図、(b)は突起を説明するための斜視図、(c)は連結部の他の実施例の側面図である。図3は、本発明に係る生物駆除装置の連結部の第2実施形態の一例を示し、(a)は側面図、(b)は突起を説明するための斜視図、(c)は連結部の他の実施例の側面図である。図2及び図3に基づいて連結部50の実施形態について説明する。
【0047】
連結部50は、筐体2と、筐体2に支持される滑り台51とを備えている。滑り台51は、第1実施形態では、図2に示すように板状部材52からなり、第2実施形態では、図3に示すように複数のローラー53からなる。また、第1テンパー部40aと連結している部分を入口54、第2テンパー部40bと連結している部分を出口55として、以下説明する。
【0048】
本実施形態において、連結部50は、第1テンパー部40aと第2テンパー部40bとの間に設置され、高低差による自重落下で土砂石材Sを回転させている。連結部50の入口54側の高さH1は、連結部50の出口55側の高さH2に比較して高い位置にあり(H1>H2)。この配置により、滑り台51は、入口54から出口55に向かって低くなるように傾斜している。そして、第1テンパー部40aのコンベア20の搬送部21の高さ位置が、第2テンパー部40bの搬送部21の高さ位置よりも高い位置にある配置となる。自重落下であるため、連結部50の構造が簡素化されている。第1テンパー部40aの搬送部21で搬送されてきた土砂石材Sが、連結部50の滑り台51に移動し、高低差のある滑り台51上を滑り落ち、第2テンパー部40bの搬送部21に移動する。すなわち、連結部50には、土砂石材Sを移動させる際に、土砂石材Sを回転させる滑り台51を有する。土砂石材Sが回転する可能性のある箇所は3つある。すなわち、第1テンパー部40aから連結部50の入口54へ移動する場所、滑り台51上および連結部50の出口55から第2テンパー部40bに移動する場所である。
【0049】
土砂石材Sは、大きさ、形状、重さ等がまちまちであるため、必ずしも土砂石材Sが回転するとは限らない。そこで、本実施形態では、土砂石材Sの回転を確実とするために、滑り台51の表面上に複数の突起56が設けられている。これらの突起56を設けることにより、土砂石材Sが突起56にぶつかり、滑り台51の傾斜と相まって、土砂石材Sを回転させることができる。すなわち、第1テンパー部40aを搬出した土砂石材Sは、入口54から連結部50の傾斜した滑り台51上を移動しながら回転して落下し、出口55を通過して第2テンパー部40b内に搬入する。突起56の配置は、規則的でも不規則(ランダム)でもよく、また、突起56の高さや形状を変更してもよい。
【0050】
特に、土砂石材Sが岩石である場合、コンベア20で搬送中はその荷重により容易に回転せず、熱風に晒される部分が変わらない場合には、その温度分布に偏りがでる。岩石は、鉄等に比較して熱の入りが悪いため、連結部50で強制的に回転させ、熱の当たる場所を変更している。
【0051】
滑り台51は、図2(c)および図3(c)に示すように、傾斜の異なる二つの滑り台、第1滑り台51a、第2滑り台51bで形成してもよい。特に、第2テンパー部40b側に設置される第2滑り台51bの傾斜角θ2が、第1滑り台51aの傾斜角θ1に比較して緩やかであると(θ1>θ2)、第2テンパー部40bへの衝撃が緩和される(図2(c)および図3(c)参照)。また、第1滑り台51aに突起56を設け、第2滑り台51bに突起56を設けなくてもよい。なお、滑り台51の傾斜角は、土砂岩石が回転することができる角度であれば特に限定されないが、11.3度〜21.8度の範囲であれば土砂岩石を確実に回転させることができると共に、滑り落ちる土砂岩石が搬送部21を傷つけ難いので好ましく、15.0〜20.0度の範囲であれば土砂岩石をより確実に回転させることができると共に、土砂岩石が搬送部21を、より傷つけ難いのでより好ましい。
【0052】
図3に示す連結部50の第2実施形態において、滑り台51は複数のローラー53の集合であり、ローラー53の中心軸が、筐体2に支持される支持棒57に回転自在に取り付けられている。第2実施形態も第1実施形態と同様に、滑り台51の表面上に複数の突起56が設けられている。土砂石材Sの移動と共に、ローラー53が回転し、土砂石材Sの移動をスムーズにしている。ここで、ローラー53は、土砂岩石の自重により回転するようになっているが、駆動装置と連結し、ローラー53を強制的に回転させて、土砂岩石を回転させるようにしてもよいのは言うまでもない。
【0053】
また、滑り台51の上面は、板状部材52やローラー53に限らず、土砂石材Sが回転する構造であることが望ましく、メッシュ構造や階段状の配列等で形成してもよい。
【0054】
なお、搬送部21をローラー式にして、各ローラーに突起を設けて搬送中に土砂石材Sを回転させて、熱の当たる部位を変更することも可能であるが、岩石等は重量があるため、連結部50による回転が好ましい。
【0055】
本実施形態では、第1テンパー部40aで熱を加えて生物駆除を行っているが、土砂石材Sが特に岩石の場合、熱がうまく岩石に吸収されず、岩石の表面に熱のムラが出ることがある。そこで、まず連結部50で岩石を強制的に回転させて、熱風の当たる位置を変更する。その後、第2テンパー部40bでその岩石に再び熱を当てているので、岩石にムラなく熱を与え、岩石への熱の入りをよくしている。岩石は溝や凹凸が多く、表面に熱を当てただけでは、溝や凹凸内に付着した生物は容易に死滅しない。そこで、本発明では、回転させて熱の当たる場所を変更することにより、岩石の中心部まで熱が伝わり、生物を完全に死滅させ、駆除することができるのである。
【0056】
本実施形態において、乾燥部30、第1テンパー部40a、連結部50および第2テンパー部40bは、それぞれ筐体2に囲まれ、一つの密閉空間が形成されている。その結果、外部空気が筐体2内に入らないので、筐体内の温度が維持されている。また、搬入部10、乾燥部30、第1テンパー部40a、連結部50、第2テンパー部40bおよび搬出部11は、各部毎にユニット化することにより組み合わせが自由となり、設置場所の大きさ、処理量等に合わせて適切な組み合わせが可能となる。さらに、第1テンパー部40aが乾燥部30を兼ねていてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の生物駆除装置1は、土砂石材Sを搬入する搬入部10と、土砂石材Sを搬送するコンベア20と、土砂石材Sを乾燥する乾燥部30と、土砂石材Sを加熱する第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bと、土砂石材Sを回転させる連結部50と、土砂石材Sを外部に搬出する搬出部11と、を備えている。そして、第1テンパー部40aおよび第2テンパー部40bには、熱風を吹き出すテンパー用吹出管41と、熱風の温度を均一化するテンパー用ファン42とが設けられおり、連結部50には、土砂石材Sを移動させる際に、土砂石材Sを回転させる滑り台51を有する。
【0058】
このように生物駆除装置1を構成することにより、搬送する土砂石材Sの加熱箇所を連結部50の滑り台51で回転させて変更させることで、満遍ない(熱ムラの無い)加熱と土砂石材の中心部までの加熱を実現させ、土砂石材Sに付着した微生物や種子等の生物を確実に死滅させ駆除することができる。また、生物駆除装置1の構造自体の簡素化も図れる。
【0059】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、連結部50の滑り台51は、入口54と出口55とを有し、入口54側の高さH1は、出口55側の高さH2よりも高い位置にある。これにより、自重落下による土砂石材Sの回転が行われ、安価な装置で土砂石材Sの加熱される箇所を容易に変更することができる。
【0060】
滑り台51は、入口54から出口55に向かって傾斜している板状部材52である。これにより、簡単な構造で土砂石材Sを回転させることができる。
【0061】
滑り台51は、入口54から出口55に向かって配列される複数のローラー53である。これにより、土砂石材Sをスムーズに回転させることができる。
【0062】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、滑り台51の表面上には、複数の突起56が設けられている。これにより、土砂石材Sを確実に回転させることができる。特に岩石の場合、回転が確実に行われる。
【0063】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、突起56は、滑り台51の表面上にランダムに配置されている。これにより、回転に偏りがなく、土砂石材Sをくまなく回転させることができる。
【0064】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、突起56の高さが異なっている。これにより、大きさの異なる土砂石材Sであっても、確実に回転させることができる。
【0065】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、テンパー用吹出管41から噴出する熱風は、300℃(好ましくは500℃以上)である。これにより、土砂石材Sを加熱することができ、生物(特に種子)を確実に駆除できる。特に、土砂石材Sが岩石の場合、当該岩石の溝や凹凸内の奥に生物が付着しているため、高温下に曝すことにより、熱が岩石の中心部まで伝達し、生物を確実に死滅させることができる。
【0066】
本発明の生物駆除装置1の一態様として例えば、土砂石材が岩石である。これにより、荷重があり大きさが異なる岩石であっても、むら無く加熱して、深くまで加熱させ、生物を確実に死滅させ駆除することができるので、特に岩石の生物駆除に最適な生物駆除装置1を提供できる。
(実施形態2)
【0067】
上述した実施形態1では、滑り台を、板状部材または複数のローラーで構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、滑り台を、複数のローラーと、その下方に配置した板状部材とで構成してもよい。複数のローラーと板状部材の構成は、実施形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0068】
このように構成することで、径が大きい土砂岩石はローラーによって回転させられると共に、ローラーの間から落下する径が小さな土砂岩石は下方板状部材によって回転させされることになるので、より確実に土砂岩石を回転させることができる。
【0069】
なお、この場合には、板状部材の第2テンパー部側の端部の高さが、第2テンパー部のコンベアの搬送部の高さよりも高く構成される必要があるのは言うまでもない。
(他の実施形態)
【0070】
上述した実施形態では、乾燥部を設けたが、本発明はこれに限定されない。乾燥部を設けずに生物駆除装置を構成しても、上述した実施形態よりも効率は悪くなるかもしれないが、同様の効果が得られる。
【0071】
また、上述した実施形態では、滑り台は入口から出口に向かって傾斜している構造となっていたが、土砂石材が第1テンパー部から第2テンパー部に移動すると共に、土砂岩石を回転させることができるものであれば、特に限定されない。例えば、滑り台は、入口から出口に向かって階段状に傾斜した構造であってもよいし、土砂石材が堆積しないのであれば、一部に平面部があってもよい。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の生物駆除装置は、土砂石材に付着した生物を簡単な装置で確実に駆除できる装置を望む分野に最適である。
【符号の説明】
【0074】
1 生物駆除装置
2 筐体
3 制御部
10 搬入部
11 搬出部
20 コンベア
21 搬送部
22 駆動部
30 乾燥部
31 乾燥用吹出管
32 乾燥用ファン
40a 第1テンパー部
40b 第2テンパー部
41 テンパー用吹出管
42 テンパー用ファン
50 連結部
51、51a、51b 滑り台
52 板状部材
53 ローラー
54 入口
55 出口
56 突起
57 支持棒
H1 入口側の高さ
H2 出口側の高さ
S 土砂石材
図1
図2
図3