(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944765
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】鉄道車両台車の組立方法、測定治具及び鉄道車両台車
(51)【国際特許分類】
B61F 5/00 20060101AFI20210927BHJP
B61F 5/30 20060101ALI20210927BHJP
B61F 5/52 20060101ALI20210927BHJP
【FI】
B61F5/00 D
B61F5/30 A
B61F5/30 E
B61F5/52
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-98098(P2016-98098)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-206059(P2017-206059A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴也
(72)【発明者】
【氏名】多賀 之高
(72)【発明者】
【氏名】鴻池 史一
【審査官】
久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/008468(WO,A1)
【文献】
中国実用新案第203031591(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両長手方向に延びた板バネを車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱に支持させる板バネ配置工程と、
開口が形成された側壁を有する台車枠を前記板バネの長手方向の中央部に上方から直接的又は間接的に載せ、前記側壁により前記板バネを車幅方向外側から覆う台車枠配置工程と、
前記開口を通じて、前記側壁の側面に付された第1マーキングと前記板バネの側面に付された第2マーキングとの間の車両長手方向の位置ズレを測定する測定工程と、を備える、鉄道車両台車の組立方法。
【請求項2】
前記測定工程では、前記側壁の車幅方向外側の側面に沿わせた状態で前記開口を通じて前記板バネの車幅方向外側の側面に当接可能な測定治具を用いて、前記第1マーキングと、前記第2マーキングとの間の車両長手方向の位置ズレを測定する、請求項1に記載の鉄道車両台車の組立方法。
【請求項3】
前記測定された位置ズレが許容範囲を超えていた場合に、前記台車枠及び前記板バネを車両長手方向に相対変位させて前記位置ズレを減少させる調整工程を更に備える、請求項1又は2に記載の鉄道車両台車の組立方法。
【請求項4】
前記開口を閉鎖する蓋を前記台車枠に取り付ける蓋取付工程を更に備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄道車両台車の組立方法。
【請求項5】
車両長手方向に延び、車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱に支持される板バネと、前記板バネを車幅方向外側から覆い且つ前記板バネの側面を露出させる開口が形成された側壁を有する台車枠とを備えた台車において、前記側壁の側面に付された第1マーキングと前記板バネの前記側面に付された第2マーキングとの間の位置ズレを、スケールを用いて測定するための測定治具であって、
前記側壁の前記側面に沿って鉛直方向に延びる鉛直部と、前記鉛直部の上端から車幅方向内方に延びる水平部と、を備え、全体としてL字形状を呈し、
前記水平部は、前記板バネの側面に面接触するように法線が車幅方向内方に向けられる当接面と、前記台車枠の前記開口を画定する平坦部に載せられるように法線が下方に向けられる載置面と、を有し、
前記鉛直部は、前記側壁の前記側面と角度をなすように法線が車両長手方向に向けられる鉛直面である測定面を有し、
前記測定面を前記第2マーキングに一致させた状態で、前記スケールによって前記測定面と前記第1マーキングとの間の車両長手方向の距離を測定可能に構成されている、測定治具。
【請求項6】
車両長手方向に延び、車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱に支持される板バネと、
前記板バネを車幅方向外側から覆い且つ前記板バネの側面を露出させる開口が形成された側壁を有し、前記板バネの長手方向の中央部に上方から直接的又は間接的に載せられる台車枠と、を備え、
前記側壁の側面には、前記開口の近傍に第1マーキングが付されており、
前記板バネの側面には、前記第1マーキングに対応する第2マーキングが付されている、鉄道車両台車。
【請求項7】
前記台車枠に取り付けられ、前記開口を閉鎖する蓋を更に備える、請求項6に記載の鉄道車両台車。
【請求項8】
前記蓋は、前記側壁に着脱可能に固定される第1プレートと、前記第1プレートに車幅方向外側から重ねられ、前記第1プレートよりも面積が小さい第2プレートとを有し、
前記第1プレートと前記第2プレートとは、互いに異なる色を有する、請求項7に記載の鉄道車両台車。
【請求項9】
前記側壁は、その車幅方向外側の側面に第1色を有し、
前記板バネは、その前記側壁よりも車両長手方向外側に延びる部分の車幅方向外側の側面に前記第1色とは異なる色である第2色を有し、
前記蓋は、その車幅方向外側の側面に前記第2色を有する、請求項7又は8に記載の鉄道車両台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両台車の組立方法、測定治具及び鉄道車両台車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、鉄道車両台車の台車枠のうち側梁の部分を省いた台車が提案されている。当該台車では、前後一対の軸箱が車両長手方向に延びた板バネの両端部を支持し、板バネの中央部が台車枠の横梁を支持する。即ち、板バネが、一次サスペンションの機能と従来の側梁の機能とを兼ねている。そして、台車枠は、横梁の端部から突出して軸梁が連結される一対の受け座を有し、板バネは、一対の受け座で挟まれた空間を通過している。そのため、一対の受け座は、板バネの長手方向の中央部を車幅方向から覆う役目も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/008468号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、板バネを設計通りに機能させるには、板バネの車両長手方向のセンターと台車枠の車両長手方向のセンターとを一致させる必要がある。
【0005】
しかし、板バネの車両長手方向の中央部は、台車枠の受け座(側壁)により車幅方向外側から覆われているため、センター同士が一致しているか否かを直接確認するには、組立作業者が台車の下方に潜り込んで板バネを下方から覗き込む必要があり、作業性が悪い。
【0006】
また、軸箱の上端部に設けられた受け部材と板バネの長手方向の端部との間の位置ズレを確認することで、センター同士の位置ズレを推定することも考えられるが、台車枠と受け部材との間の位置関係には組立時の累積誤差が生じ得るため、当該推定方法は正確性に欠ける。
【0007】
そこで本発明は、台車枠の側壁が板バネを車幅方向外側から覆う構成において、台車の組立作業性と組立精度との両方を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る鉄道車両台車の組立方法は、車両長手方向に延びた板バネを車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱に支持させる板バネ配置工程と、開口が形成された側壁を有する台車枠を前記板バネの長手方向の中央部に上方から直接的又は間接的に載せ、前記側壁により前記板バネを車幅方向外側から覆う台車枠配置工程と、前記開口を通じて前記板バネと前記台車枠との間の車両長手方向の位置ズレを測定する測定工程と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る鉄道車両台車は、車両長手方向に延び、車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱に支持される板バネと、前記板バネを車幅方向外側から覆い且つ前記板バネの側面を露出させる開口が形成された側壁を有し、前記板バネの長手方向の中央部に上方から直接的又は間接的に載せられる台車枠と、を備える。
【0010】
前記方法及び構成によれば、側壁の開口を通して板バネを視認することで、板バネと台車枠との間の車両長手方向の位置ズレを簡易かつ直接的に測定できる。よって、台車枠の側壁が板バネを車幅方向外側から覆う構成において、台車の組立作業性と組立精度との両方を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、台車枠の側壁が板バネを車幅方向外側から覆う構成において、台車の組立作業性と組立精度との両方を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る鉄道車両台車の側面図である。
【
図5】
図4に示す台車の蓋を取り外した状態の側面図である。
【
図6】
図5に示す台車の組立時における測定工程を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明では、鉄道車両が走行する方向であって車体が延びる方向を車両長手方向とし、それに直交する横方向を車幅方向として定義する。車両長手方向は前後方向とも称し、車幅方向は左右方向とも称しえる。
【0014】
図1は、実施形態に係る鉄道車両の台車1の側面図である。
図2は、
図1に示す台車1の要部の水平断面図である。
図3は、
図1に示す台車1の要部の鉛直断面図である。なお、
図2では後述する蓋40の図示を省略している。
図1乃至3に示すように、鉄道車両用の台車1は、二次サスペンションとなる空気バネ2及びボルスタ3を介して車体を支持する台車枠4を備える。台車枠4は、車幅方向に延びて車体を支持する横梁5を備えるが、いわゆる側梁を備えていない。
【0015】
横梁5は、ボルスタ3に対して旋回可能に接続され、ボルスタ3は、空気バネ2及びボルスタアンカ(図示せず)を介して車体に接続される。横梁5の車両長手方向の両側には、車幅方向に沿って一対の車軸6が配置され、車軸6の車幅方向両側には車輪7が固定されている。車軸6の車幅方向の両端部には、車輪7よりも車幅方向外側にて車軸6を回転自在に支持する軸受8が設けられ、軸受8は軸箱9に収容されている。
【0016】
車両長手方向に離間して配置された前後一対の軸箱9は、車両長手方向に延びた板バネ30の両端部30bを支持している。板バネ30の長手方向の中央部30aは、横梁5の車幅方向の端部5aを支持している。即ち、板バネ30は、一次サスペンションの機能と従来の側梁の機能とを兼ねる。板バネ30は、例えば、繊維強化樹脂で形成される。板バネ30は、側面視で全体として下方に凸な弓形状に形成されている。板バネの中央部30aは、両端部30bよりも下方に位置し、下方に凸な円弧形状である。
【0017】
台車枠4は、横梁5の端部5aの下部に設けられた押圧部材31と、押圧部材31の車幅方向両側において横梁5の端部5aから下方かつ車両長手方向両側に突出する一対の側壁17,18とを有する。板バネ30の中央部30aは、押圧部材31の下方に位置する。板バネ30は、一対の側壁17,18で挟まれた空間を車両長手方向に通過している。板バネ30は、側壁17,18と車幅方向に隙間をあけて配置されている。板バネ30の中央部30aは、側面視で側壁17,18と重なる位置に配置されている。
【0018】
押圧部材31は、円弧状の下面31aを有し、押圧部材31が板バネ30の中央部30aに上方から載せられている。押圧部材31は、板バネ30に固定されない状態で横梁5からの重力による下方荷重によって板バネ30の上面を離隔可能に押圧している。即ち、押圧部材31は、固定具(例えば、ボルト等)により板バネ30に接続されることなく、板バネ30の上面を押圧する。言い換えれば、横梁5からの重力による下方荷重とそれに対する板バネ30の反力とによって、板バネ30の上面に対する押圧部材31の押圧が保たれた状態となる。これにより、板バネ30は、押圧部材31の下面31aに対して押圧領域を変化させながら揺動することを可能にする。なお、台車枠4は、板バネ30の中央部30aの上面に直接的に載せられてもよいし、間接的に載せられてもよい。押圧部材31と板バネ30との間に緩衝シートが介装されてもよい。
【0019】
軸箱9の上面は、長手方向中央側に向けて上面が傾斜している。軸箱9の上部にはバネ座33が取り付けられ、バネ座33に板バネ30の両端部30bが上方から載せられている。即ち、板バネ30の両端部30bは、バネ座33を介して軸箱9に支持されている。バネ座33は、軸箱9の上面に位置決めされた弾性体35(例えば、積層ゴム)と、弾性体35の上に位置決めされて板バネ30の両端部30bが載せられた受け部材36とを備える。板バネ30の両端部30bは、その上面が中央部30aに向く方向に傾斜している。
【0020】
軸箱9には、軸箱9から台車中央側に向けて車両長手方向に突出した軸梁16が設けられている。軸梁16の先端部には、内周面が円筒形状で車幅方向両側が開口する筒状部21が設けられ、筒状部21の内部空間にゴムブッシュ(図示せず)を介して心棒22が挿通されている。側壁17,18には、下方に向けて開口する嵌入溝17cが形成されている。嵌入溝17cには、心棒22の両端部が下方から嵌入されている。カバー部材19は、嵌入溝17cの下側開口を閉鎖するようにボルト(図示せず)により下方から側壁17,18に固定され、心棒22を下方から支持している。
【0021】
図4は、
図1に示す台車1の要部の側面図である。
図5は、
図4に示す台車1の蓋40を取り外した状態の側面図である。
図4及び5に示すように、板バネ30の中央部30aは、側壁17により車幅方向外側から覆われている。側壁17には、板バネ30の中央部30aの車幅方向外側の側面を露出させる開口17aが形成されている。開口17aは、側面視において、板バネ30の側面30cに包含される領域に配置される。開口17aは、車両長手方向に長い穴である。本実施形態では、開口17aは長円形状を有しており、板バネ30と台車枠4との位置ズレを測定するのに用いるだけでなく、軽量化のための孔としての機能も有する。開口17aの鉛直方向寸法は、板バネ30の鉛直方向の厚みよりも小さく、開口17aの車両長手方向寸法は、板バネ30の鉛直方向の厚みよりも大きい。
【0022】
側壁17の車幅方向外側の側面17bには、開口17aの近傍にマーキングM1(例えば、ポンチ印)が付されている。具体的には、マーキングM1は、開口17aの下側に設けられている。マーキングM1は、台車枠4の車両長手方向の中心に設けられている。本実施形態では、開口17aは、側面視において台車枠4の車両長手方向の中心を基準として対称に形成され、マーキングM1は、車両長手方向において開口17aの中心と同じ位置に設けられている。
【0023】
板バネ30の車幅方向外側の側面30cは、複数の着色部30d,30eを有する。本実施形態では、第1着色部30d及び第2着色部30eは、それぞれ板バネ30の長手方向に沿って延びるように塗装されている。第1着色部30dは、第1色を有し、第2着色部30eは、第1色とは異なる第2色を有する。例えば、第1色は、明度が0%以上50%未満の暗色(例えば、黒色、紺色等)であり、第2色は、明度が50%以上100%以下の明色(例えば、赤、青、緑等)である。板バネ30の中央部30aの側面には、板バネ30の長手方向中心にてマーキングM2(例えば、鉛直方向に延びた罫書き線)が付されている。蓋40が取り外された状態では、マーキングM2が、開口17aを通して側壁17の車幅方向外側から視認される。
【0024】
側壁17は、その車幅方向外側の側面17bにおいて第1色を有する。即ち、側壁17の側面17bは、板バネ30の第1着色部30dと同じ色を有する。側壁17には、蓋40を取り付けるための取付孔17dが所定箇所に形成され、側壁17に取り付けられた蓋40により開口17aが閉鎖される。蓋40は、側面視において、側面17bを介して板バネ30と重なるように配置されている。蓋40は、車幅方向外側から見て、開口17aの面積の2倍以上の面積を有する。蓋40は、鉛直方向寸法よりも車両長手方向寸法が長い形状を有する。
【0025】
蓋40は、第1プレート41及び第2プレート42を有する。第1プレート41は、側壁17の取付孔17dと合致する取付孔41aを有する。第2プレート42は、第1プレート41に車幅方向外側から重ねて接合され、第1プレート41よりも面積が小さい。具体的には、第1プレート41の周縁部は、第2プレート42より外側に食み出ており、第2プレート42は、取付孔41aを避けて配置されている。第2プレート42の外周輪郭は、第1プレート41の外周輪郭と相似形状を有する。蓋40は、固定具43(例えば、ボルト)が取付孔17d,41aに挿入されることで側壁17に着脱可能に固定される。
【0026】
第1プレート41と第2プレート42とは、互いに異なる色を有する。第1プレート41の車幅方向外側の表面は、第1色を有する。即ち、第1プレート41の車幅方向外側の表面は、側壁17の車幅方向外側の側面17bと板バネ30の第1着色部30dと同じ色を有する。第2プレート42の車幅方向外側の表面は、第2色を有する。即ち、第2プレート42は、板バネ30の第2着色部30eと同じ色を有する。
【0027】
第2プレート42の車両長手方向両側の端部42aは、板バネ30が延びる方向に向かって先細り状に延びている。即ち、蓋40のうち板バネ30の第2着色部30eと同じ色を有する領域は、側面視において、板バネ30のうち側壁17の外側に露出した部分に向けて延びている。第2プレート42の端部42aは、側面視において、側面17bを介して板バネ30と重なる位置に配置されている。第2プレート42の端部42aには、複数の穴42bが形成されており、当該穴42bを通して第1プレート41が視認可能になっている。
【0028】
次に、台車1の組立手順のうち特徴的な事項について説明する。作業者は、台車枠4の無い状態で、車両長手方向に離間して配置された一対の軸箱9上の各受け部材36に板バネ30の両端部30bを上方から載せる(板バネ配置工程)。次いで、作業者は、蓋40の付いていない台車枠4を板バネ30に載せる(台車枠配置工程)。その際、一対の側壁17,18が板バネ30の中央部30aの車幅方向両側に配置され、台車枠4の押圧部材31が板バネ30の中央部30aの上面に載せられる。それにより、板バネ30の中央部30aは、車幅方向外側から側壁17により覆われる。
【0029】
次いで、
図6に示すように、作業者は、測定治具50及びスケール51を用いて、板バネ30と台車枠4との間の車両長手方向の位置ズレを測定する(測定工程)。測定治具50は、側壁17の側面17bに沿って鉛直方向に延びる鉛直部50aと、鉛直部50aの上端から車幅方向内方に延びる水平部50bとを有し、全体としてL字形状を呈する。測定治具50の水平部50bは、板バネ30の側面30cに面接触させる平坦な当接面50cと、開口17aを画定する周面の平坦部17aaに載せる平坦な載置面50dとを有する。測定治具50は、鉛直部50aから水平部50bまで連続して形成されて、法線が車両長手方向に向けられた鉛直面である測定面50eを有する。
【0030】
作業者は、測定治具50を、側壁17の側面17bから板バネ30の側面30cまで延びるように開口17aに挿通された状態に配置する。即ち、測定治具50の鉛直部50aを側壁17の車幅方向外側の側面17bに沿わせた状態で水平部50bを開口17aに挿通し、当接面50cを板バネ30の車幅方向外側の側面30cに面接触させる。このとき、作業者は、板バネ30の鉛直方向に延びるマーキングM2に測定治具50の測定面50eを一致させる。次いで、作業者は、測定治具50の測定面50eと側壁17のマーキングM1の中心との間の車両長手方向の距離(即ち、位置ズレ)をスケール51により測定する。これにより、板バネ30のマーキングM2と側壁17のマーキングM1との間の車両長手方向の位置ズレが測定される。
【0031】
次いで、その測定された位置ズレが許容範囲を超えていた場合には、作業者は、台車枠4に対して板バネ30を車両長手方向に変位させて位置ズレを減少させる(調整工程)。そして、板バネ30のマーキングM1と側壁17のマーキングM2との間の車両長手方向の位置ズレが許容範囲内に収まったことが確認されれば、蓋40を側壁17に取り付けて、側壁17の開口17aを閉鎖する(蓋取付工程)。
【0032】
以上に説明した態様によれば、台車枠4の側壁17の開口17aを利用することで、板バネ30と台車枠4との間の車両長手方向の位置ズレを簡易かつ直接的に測定できる。よって、台車枠4の側壁17が板バネ30を車幅方向外側から覆う構成において、台車1の組立作業性と組立精度との両方を向上できる。特に、本実施形態の台車1は、板バネ30が台車枠4に固定されない構成であり、組立時において台車枠4と板バネ30との間の車両長手方向の相対位置関係に誤差が生じ易いため、前述した態様が効果的である。
【0033】
また、側壁17の開口17aは蓋40で閉鎖されるので、鉄道車両の走行時に飛来する異物(例えば、飛石)が開口17aを通って板バネ30に衝突することを防止できる。また、蓋40は、側壁17に固定される第1プレート41と、第1プレート41よりも面積が小さく且つ第1プレート41と異なる色を有する第2プレート42とを備えるので、第2プレート42を第1プレート41に重ねることで、色分けされた蓋40を簡単に実現できる。また、蓋40の第2プレート42が板バネ30の第2着色部30eと同じ色を有するので、板バネ30の中央部30aが側壁17で覆われた構成であっても、板バネ30と台車枠4との美観上の一体感を演出できる。
【0034】
図7は、
図6に示す測定治具50の変形例の図面である。なお、
図7ではスケール51の図示を省略している。
図7に示すように、測定治具150は、側壁17の側面17bに沿って鉛直方向に延びる第1鉛直部150aと、第1鉛直部150aの上端から車幅方向内方に延びる水平部150bと、水平部150bから上方に延びる第2鉛直部150cとを有する。第2鉛直部150cは、板バネ30の側面30cに面接触させる平坦な当接面150dを有する。水平部150bは、開口17aを画定する周面の平坦部17aaに載せる平坦な載置面150eを有する。測定治具150は、載置面150eを開口17aの平坦部17aaに載せた状態にて、作業者が保持せずとも測定治具150の静止が維持される位置に重心を有する形状である。板バネ30のマーキングM2と側壁17のマーキングM1との間の車両長手方向の位置ズレの測定は、
図6と同様にスケール51を用いて行われる。
【0035】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、マーキングM1,M2は、板バネ30及び台車枠4の車両長手方向中心に位置しなくてもよく、マーキングM1とマーキングM2との車両長手方向位置が一致したときに、板バネ30の車両長手方向中心と台車枠4の車両長手方向中心とが一致する構成であればよい。マーキングM1,M2は、罫書き線又はポンチ印に限られず、他の形態(例えば、ノッチ)でもよい。蓋40は、2つのプレートを重ね合わせる構成に限られず、1つのプレートであってもよい。蓋が1つのプレートである場合、当該プレートの車幅方向外側の側面が、前述した第1色と第2色とに色分けして塗装されたものとしてもよい。測定治具50,150とスケール51とが別体となった構成を例示したが、測定治具とスケールとを互いに一体化させてもよい。板バネ30は、複数の着色部30d、30eを有していたが、単色であってもよい。
図2では、車幅方向内側の側壁18には板バネ30の中央部30aの側面に対向する開口が形成されていないが、当該側壁18も車幅方向外側の側壁17と同様の構造としてもよい。台車1は、ボルスタ3付きの台車としたが、ボルスタレス台車でもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 台車
4 台車枠
9 軸箱
17 側壁
17a 開口
17b 側面
30 板バネ
30a 中央部
30c 側面
40 蓋
41 第1プレート
42 第2プレート
50,150 測定治具
M1,M2 マーキング