(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6944802
(24)【登録日】2021年9月15日
(45)【発行日】2021年10月6日
(54)【発明の名称】炭素繊維束
(51)【国際特許分類】
D06M 15/55 20060101AFI20210927BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20210927BHJP
【FI】
D06M15/55
D06M101:40
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-71658(P2017-71658)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172820(P2018-172820A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 周平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀和
(72)【発明者】
【氏名】赤松 哲也
【審査官】
櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−129934(JP,A)
【文献】
特開2005−179826(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/060833(WO,A1)
【文献】
特開2002−018843(JP,A)
【文献】
特開平06−279567(JP,A)
【文献】
特開2013−129941(JP,A)
【文献】
特開2014−163000(JP,A)
【文献】
特開2016−188291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
C08J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数種類の脂肪族エポキシ樹脂を含むサイジング剤が付着した炭素繊維束において、
前記サイジング剤は、数平均分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30wt%以上を含み、かつ前記サイジング剤は、数平均分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して10wt%以上を含み、
前記サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は400以上である
炭素繊維束。
【請求項2】
前記サイジング剤は、数平均分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して40〜90wt%を含む
請求項1に記載の炭素繊維束。
【請求項3】
前記サイジング剤は、数平均分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して20〜50wt%を含む
請求項1又は2に記載の炭素繊維束。
【請求項4】
前記サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の含有量が30wt%以上である
請求項1〜3の何れか1項に記載の炭素繊維束。
【請求項5】
前記サイジング剤に含まれる窒素が1%以下である
請求項1〜4の何れか1項に記載の炭素繊維束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擦過特性に優れた炭素繊維束に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂と組み合わせた複合材料として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されるようになってきている。炭素繊維を複合材料に加工する際の取扱性や、複合材料のコンポジット物性の向上を目的として、炭素繊維束には各種のサイジング剤が付与されている。
従来、炭素繊維束用のサイジング剤として、芳香族エポキシ樹脂が利用されている(例えば、特許文献1)。この芳香族エポキシ樹脂は、複合材料としたときに、炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性を向上させるほか、擦過性や取扱性を向上させる。
一方、複合材料における炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性を改善するサイジング剤として、脂肪族エポキシ樹脂が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−214925号公報
【特許文献2】特開2005−179826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の脂肪族エポキシ樹脂を含んだサイジング剤は擦過特性に劣るという課題がある。
本発明は、上記した課題に鑑み、擦過特性の高い炭素繊維束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る炭素繊維束は、少なくとも脂肪族エポキシ樹脂を含むサイジング剤が付着した炭素繊維束において、前記サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は400以上である。
本発明の別の態様に係る炭素繊維束において、前記サイジング剤は、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30wt%以上を含む。
本発明の別の態様に係る炭素繊維束において、前記サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂を、脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して10wt%以上を含む。
本発明の別の態様に係る炭素繊維束において、前記サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の含有量が30wt%以上である。
本発明の別の態様に係る炭素繊維束において、前記サイジング剤に含まれる窒素は1%以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様に係る炭素繊維束は高い擦過特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<概要>
1.炭素繊維束
炭素繊維束として、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維束等がある。特に、機械的特性に優れたPAN系炭素繊維束が好ましい。炭素繊維束のフィラメント数は、1,000[本]以上、100,000[本]以下の範囲内が好ましい。
炭素繊維束は、高弾性タイプ、高強度タイプ、高強度中弾性タイプ等のいずれであってもよいが、高強度中弾性タイプの擦過特性が低い傾向にあるため特に高強度中弾性タイプへの適用が好ましい。
炭素繊維の引張弾性率は、100[GPa]以上、600[GPa]以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200[GPa]以上、500[GPa]以下の範囲内であり、230[GPa]以上、450[GPa]以下の範囲内であることが特に好ましい。また、引張強度は2000[MPa]以上、10000[MPa]以下の範囲内、好ましくは3000[MPa]以上、8000[MPa]以下の範囲内である。炭素繊維の直径は4[μm]以上、20[μm]以下の範囲内が好ましく、5[μm]以上、10[μm]以下の範囲内がより好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、複合材料の機械的性質を向上できる。
【0008】
2.サイジング剤
炭素繊維束に付着させるサイジング剤は、少なくとも脂肪族エポキシ樹脂を含み、当該サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量が400以上である。
ここでの脂肪族エポキシ樹脂はエポキシ基を有する脂肪族化合物をいう。エポキシ基は複数個あるのが好ましい。エポキシ基の数は2個以上、4個以下が好ましい。特に、エポキシ基の数は2個が好ましく、2個のエポキシ基は脂肪族化合物の両端に存在するのが最も好ましい。サイジング剤が2個以上のエポキシ基を有すると、サイジング剤により炭素繊維とマトリックス樹脂とが接着され、複合材料の機械的特性が向上する傾向にある。エポキシ基の数が1個の場合、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となる場合がある。エポキシ基の数が多すぎると、サイジング剤が脆性となり、複合材料の機械的特性が低下しやすい傾向にある。
【0009】
脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族アルコールまたは脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンとの反応等によって得られる、モノグリシジルエーテル化合物、ジグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルエーテル化合物などのグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
ジグリシジルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等がある。
【0010】
ポリグリシジルエーテル化合物としては、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等がある。
【0011】
本発明において、脂肪族化合物とは、非環式直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、非環式直鎖状不飽和炭化水素、分岐状不飽和炭化水素、または上記炭化水素の炭素原子(CH
3,CH
2,CH,C)を酸素原子(O)、窒素原子(NH,N)、硫黄原子(SO
3H,SH)、カルボニル原子団(CO)に置き換えた鎖状構造の化合物をいい、脂肪族アルコールとは、官能基としてヒドロキシル基を有する脂肪族化合物を、脂肪族ポリオールとは、ヒドロキシル基を2つ以上有する脂肪族化合物を、それぞれいう。
【0012】
本発明で用いる脂肪族化合物としては、特に限定されるものではないが、非環式直鎖状炭化水素であることが好ましい。また、不可避な不純物を除く複素原子として、酸素原子(O)のみを有する化合物であることが好ましく、ポリオキシエチレン基などの、ポリオキシアルキレン基を有する化合物であることがより好ましく、ポリオキシエチレン基を有する化合物であることが特に好ましい。サイジング剤に含まれる窒素原子は1[%]以下であることが好ましい。
【0013】
ポリオキシアルキレン基の重合度は、特に限定はないが、例えば、脂肪族エポキシ樹脂としてオキシエチレン基を有する場合、ポリオキシエチレン基の平均重合度nが15以上の脂肪族エポキシ樹脂を含むのが好ましく、平均重合度nが20以上の脂肪族エポキシ樹脂を含むのがより好ましい。また、ポリオキシエチレン基の平均重合度nが10以下の脂肪族エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0014】
サイジング剤は1種類又は複数種類の脂肪族エポキシ樹脂を含んでもよい。
サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の含有量は、溶媒を除くサイジング剤の油剤成分の総量に対して、30[wt%]以上が好ましく、40[wt%]以上がより好ましく、50[wt%]以上、100[wt%]以下の範囲内がさらに好ましい。これにより、複合材料において良好な機械的特性が得られる。
サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は、400以上であり、450以上、2000以下の範囲内が好ましく、700以上1500以下の範囲内がより好ましい。これにより炭素繊維束の擦過特性を向上させることができる。
数平均分子量Mは、以下の(1)式により算出される。
M=1/Σ(樹脂iの重量分率/樹脂iの分子量) ・・・(1)
なお、iは1からkまでの自然数であり、kはサイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の種類数である。
【0015】
サイジング剤は、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を含むものが好ましい。分子量の高い脂肪族エポキシ樹脂は分子が大きく、サイジング剤を付与した際に、炭素繊維束の表面に留まりやすいため、炭素繊維束の表面を被覆できる。これにより、効果的に炭素繊維束の擦過特性を向上できる。
分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂の含有量は、サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して、30[wt%]以上が好ましく、40[wt%]以上、90[wt%]以下の範囲内がより好ましく、50[wt%]以上、80[wt%]以下の範囲内がさらに好ましい。これにより、炭素繊維束及び炭素繊維間の摩擦力が低下し、擦過時に炭素繊維束が受けるダメージを低減できる。つまり、耐擦過特性を向上できる。
【0016】
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂を含むものが好ましく、分子量が350以下の脂肪族エポキシ樹脂を含むものがより好ましくい。分子量の低い脂肪族エポキシ樹脂は、分子が小さいため、炭素繊維束の内部に浸透性しやすく、炭素繊維束のサイジング剤の付着均一性を高めることができる。
分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂の含有量は、サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して、10[wt%]以上が好ましく、20[wt%]以上、50[wt%]以下の範囲内がより好ましい。これにより炭素繊維束の内部へのサイジング剤の浸透性を向上できる。また、炭素繊維束のサイジング剤の付着斑を小さくできる。
【0017】
付着均一性については、繊維束表面のサイジング剤付着量は炭素繊維束の外表面に位置する炭素繊維と、繊維束内部に位置する炭素繊維をそれぞれ試料として用いて、後述の方法でそれぞれのサイジング剤付着量を求め、繊維束表面のサイジング剤付着量を、繊維束内部のサイジング剤付着量で除した値を、サイジング剤の付着均一性を示す指標として評価する。
本発明においてサイジング剤は、脂肪族エポキシ樹脂以外に本発明の効果を妨げない範囲で、芳香族エポキシ樹脂等の脂肪族エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂や、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物等の樹脂成分、必要に応じて、分散剤、界面活性剤等の補助成分を、溶媒を除く油剤成分として含んでいても良い。
【0018】
3.サイジング剤の付着
サイジング剤の付着方法は、限定するものではないが、例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法によりサイジング剤を含んだ溶液(以下、「サイジング剤溶液」という)を炭素繊維束に付着させた後に乾燥させてもよいし、サイジング剤溶液をスプレーで炭素繊維束に吹き付けてもよい。なお、ローラー浸漬法が、生産性、均一付着性において、好ましく利用できる。
サイジング剤の付着量は、炭素繊維束の全質量に対して、0.1[%]以上、10[%]以下の範囲内が好ましく、0.2[%]以上、5[%]以下の範囲内がより好ましく、0.4[%]以上、3.0[%]以下の範囲内がさらに好ましい。サイジング剤の付着量が少なすぎる場合、複合材料における炭素繊維とマトリクス樹脂との密着性が劣る。一方、サイジング剤の付着量が多すぎる場合、炭素繊維束の開繊性が悪くなる。
【0019】
サイジング剤溶液の溶媒には、サイジング剤を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定はないが、取扱性、安全性の面から、水が好ましい。水系のサイジング剤溶液としては、例えば、水溶性のサイジング剤を水に溶解させた水溶性サイジング剤溶液、サイジング剤を乳化剤等で乳化させたエマルション系サイジング剤溶液、サイジング剤粒子を水に分散させたサスペンジョン系サイジング剤溶液が挙げられ、水溶性サイジング剤溶液を用いることが好ましい。
【0020】
水溶性サイジング剤を利用することで、サイジング剤溶液の粘度が低くなり、繊維束間へのサイジング剤の浸透性が向上する。特に、サイジング剤として、分子量が500以下、好ましくは350以下の脂肪族エポキシ樹脂を含むことで、サイジング剤が繊維束間へ浸透しやすくなる。
水溶性サイジング剤として、分子量が500以下、好ましくは350以下であって水溶性の脂肪族エポキシ樹脂を含むことで、サイジング剤溶液がより低粘度化し、炭素繊維束間に浸透しやすくなる。
水溶性サイジング剤として、分子量が500以下、好ましくは350以下であって水溶性の脂肪族エポキシ樹脂を含むことで、サイジング剤溶液がより低粘度化し、炭素繊維束に付着したサイジング剤の膜厚の均一性を図ることができる。
【0021】
サイジング剤に用いるエポキシ樹脂の粘度は、20[mPa・s]以上、200[mPa・s]以下の範囲内が好ましく、40[mPa・s]以上、150[mPa・s]以下の範囲内がより好ましい。エポキシ樹脂の粘度が上記範囲内にあると、サイジング剤の炭素繊維束間への浸透性を向上させることができる。
【0022】
炭素繊維表面に形成されるサイジング剤の膜厚は2[nm]以上、100[nm]以下の範囲であることが好ましく、4[nm]以上、50[nm]以下の範囲内がより好ましい。サイジング剤の膜厚が上記範囲内にあると、マトリックス樹脂の炭素繊維束への含浸性を向上させることができる。
サイジング処理後の炭素繊維束は、サイジング処理時の溶媒であった水等を蒸散させるため乾燥処理が施される。乾燥にはエアドライヤーを用いることが好ましい。乾燥温度は特に限定されるものではないが、汎用的な水系サイジング溶液の場合は通常100[℃]以上、180[℃]以下の範囲内に設定される。また、乾燥工程の後、200[℃]以上の熱処理工程を経ることも可能である。
【0023】
4.炭素繊維の表面処理
繊維複合材料にした際のマトリクス樹脂との密着性を向上させるにために、炭素繊維の製造工程において、炭素化処理又は黒鉛化処理後、表面処理を行うことが好ましい。表面処理の手法は特に限定されないが、薬液を用いる液相酸化、又は電解液溶液中で炭素繊維を陽極として電解処理する電解酸化、気相状態でプラズマ処理する気相酸化等を用いることができる。これらのうち、生産性、処理の均一性、安全性の観点から、電解酸化を用いることが好ましい。電解処理で用いる電解液の電解質は特に限定されないが、例えば、無機酸、有機酸、アンモニア、無機塩、有機塩等を単独または2種類以上の混合物として用いることができる。
【0024】
無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等がある。有機酸としては、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、マレイン酸等がある。アンモニアとしては、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、硝酸水素アンモニウム、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩又はアンモニア等がある。無機酸としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等のアルカリ水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等がある。有機塩としては、マレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム等がある。
【0025】
電解液の温度は、0[℃]以上、100[℃]以下の範囲内が好ましく、25[℃]以上、45[℃]以下の範囲内が特に好ましい。また、電解質の濃度は、1[wt%]以上、25[wt%]以下の範囲内が好ましく、5[wt%]以上、15[wt%]以下の範囲内が特に好ましい。電解処理は複数の電解槽を使用して行うことが好ましい。電気量は、炭素繊維1[g]に対して、0.5[クーロン]以上であることが好ましく、2[クーロン]以上、500[クーロン]以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0026】
5.炭素繊維複合材料
このようにして得られた炭素繊維束を用い、マトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により複合材料が得られる。
炭素繊維束は、繊維束として用いてもよく、シート状の強化繊維材料として用いることもできる。シート状の材料とは、繊維材料を一方向にシート状に引き揃えたもの、繊維材料を織編物や不織布等の布帛に成形したもの、多軸織物等が挙げられる。
【0027】
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。
熱硬化性マトリックス樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0029】
複合材料中に占める樹脂組成物の含有率は、10[wt%]以上、90[wt%]以下の範囲内、好ましくは20[wt%]以上、60[wt%]以下の範囲内、更に好ましくは25[wt%]以上、45[wt%]以下の範囲内である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例及び比較例により具体的に説明する。
まず、実施例及び比較例で行った各特性の評価方法や算出方法を説明する。
<擦過特性の評価>
表面が平滑な直径2[mm]のステンレス棒3本を炭素繊維束が120[°]の角度で接触しながら通過するようにジグザグに固定配置した。この装置に得られたサイジング剤塗布炭素繊維束を初期張力500[g]を付加しながら200[回/分]の速度で繰り返し往復させ、摩耗により切断するまでの往復回数を擦過特性値とした。擦過特性値は数値が高い方が好ましく、ここでは、擦過特性が400以上であれば良好としている。
【0031】
<サイジング剤付着量内外差>
測定に供する炭素繊維束を外表面部と内部に分割し、それぞれ約10[mg]の粉末状にしたサイジング剤塗布炭素繊維束を秤量(W1)(小数点第3位まで読み取り)した後、TG-DTA2000S(マックサイエンス社製)を用いて窒素100[ml/分]の窒素気流中、一分間に20[℃]の昇温速度にて、25[℃]以上、400[℃]以下の範囲で熱処理し、残存した炭素繊維束を秤量(W2)(小数点第3位まで読み取り)し、次式よりサイジング剤付着量を求めた。
サイジング付着量[wt%]=(W1[g]−W2[g])/(W1[g])×100
なお、繊維束の分割方法は次の通りである。まず、炭素繊維束の全周を覆うように粘着テープを貼り付け、その後粘着テープを切り裂き、繊維束の厚み方向に2分割する。この工程を3度繰り返し、繊維束を厚み方向に8分割する。8分割した繊維束のうち、最外層に位置する分割繊維束2本(元の繊維束の両表面)を外表面部の試料として、最内層に位置する分割繊維束2本を内部の試料として用いた。
繊維束外表面部のサイジング剤付着量を、繊維束内部のサイジング剤付着量で除した値を、サイジング剤の付着均一性を示す指標として用いた。ここでは、サイジング剤の付着量内外差が0.5以上1.5以下の範囲内にあれば良好としている。
< 窒素含有量>
元素分析装置(エレメンタール 社製)により測定した元素分析値から求めた。
【0032】
<実施例1>
サイジング剤は、脂肪族エポキシ樹脂として、分子量が490のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX832)を用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、用いた脂肪族エポキシ樹脂の窒素含有量は1[%]以下であった。
ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は490である。
【0033】
上記サイジング剤が付着する炭素繊維束の製造方法は以下の通りである。
ポリアクリロニトリル繊維を、空気中250[℃]で耐炎化処理を行った後、窒素ガス雰囲気下、最高温度650[℃]で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1500[℃]で高温炭素化させて製造した炭素繊維を、10[wt%]の硫酸アンモニウム水溶液を用い、電解溶液温度40[℃]、20[C/g]の電気量で電解酸化により表面処理を行い、未サイジング処理炭素繊維束(引張強度:6000[MPa]、引張弾性率:290[GPa]、フィラメント数:24000[本]、O/C:0.15)を得た。
得られた未サイジングの炭素繊維束をサイジング剤溶液中に連続的に浸漬させ、ローラーにて余分な水分を除去し、炭素繊維束にサイジング剤を付着させた。引き続き、サイジング剤を付着させた炭素繊維束を160[℃]で2[分]乾燥し、連続的に炭素繊維束の熱処理を行った。この際、付着量が0.8[wt%]になるようにサイジング処理剤浴濃度を調整した。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れていることが確認できた。
【0034】
<実施例2>
サイジング剤は、脂肪族エポキシ樹脂として、分子量が1010のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX861)を用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、用いた脂肪族エポキシ樹脂の窒素含有量は1[%]以下であった。ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は1010である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れていることが確認できた。
【0035】
<実施例3>
サイジング剤は、脂肪族エポキシ樹脂として、分子量が2000のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX881)を用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、用いた脂肪族エポキシ樹脂中の窒素含有量は1[%]以下であった。
ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は2000である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れていることが確認できた。
【0036】
<実施例4>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が290のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX821)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が2000のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX881)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して25[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して75[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は808である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れていることが確認できた。
【0037】
<実施例5>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が290のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX821)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が2000のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX881)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は507である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れていることが確認できた。
【0038】
<実施例6>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が490のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX832)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が2000のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX881)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は787である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れ、付着内外差が小さいことが確認できた。
【0039】
<実施例7>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が490のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX832)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が1010のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX861)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して50[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は660である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に優れ、付着内外差が小さいことが確認できた。
【0040】
<比較例1>
サイジング剤は、脂肪族エポキシ樹脂として、分子量が290のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX821)を用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、用いた脂肪族エポキシ樹脂の窒素含有量は1[%]以下であった。
ポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は290である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に劣ることが確認できた。
【0041】
<比較例2>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が290のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX821)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が2000のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX881)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して75[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して25[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は369である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に劣ることが確認できた。
【0042】
<比較例3>
サイジング剤は、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂Aとして、分子量が290のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX821)と、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂Bとして、分子量が1010のポリオキシエチレンジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製の「デナコール」(登録商標)EX861)とを用いた。サイジング剤は窒素を含む化合物を含まず、サイジング剤組成物中の窒素含有量は1[%]以下であった。
脂肪族エポキシ樹脂Aは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して75[wt%]であり、脂肪族エポキシ樹脂Bは全脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して25[wt%]である。
これらのポリオキシエチレンジグリシジルエーテルと水との重量比が100/15になるように混合しサイジング剤溶液とした。サイジング剤に含まれる脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量は353である。
得られたサイジング剤付着炭素繊維束の物性を後記の表1に示した。表1の結果から、得られた炭素繊維束は擦過特性に劣ることが確認できた。
【0043】
【表1】
【0044】
<考察>
(1)擦過特性
脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量が400以上である実施例1〜7では、良好な擦過特性(400以上)が得られた。これに対して、脂肪族エポキシ樹脂の数平均分子量が400未満の比較例1〜3では、良好な擦過特性が得られなかった。
分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30[wt%]以上を含む実施例2〜7では、良好な擦過特性(427以上)が得られた。これに対して、分子量が1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30[wt%]以下の比較例1〜3では良好な擦過特性が得られなかった。
分子量が2000以上の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30[wt%]以上を含む実施例3〜6では、良好な擦過特性(449以上)が得られた。これに対し、分子量が2000以上の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30[wt%]以下の比較例2では良好な擦過特性が得られなかった。分子量が2000以上の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して75[wt%]以上を含む実施例3、4では、非常に良好な擦過特性(575以上)が得られた。
【0045】
(2)サイジング剤付着量内外差
分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂を10[wt%]以上含む実施例1、4〜7では、良好な付着内外差特性(0.5−1.5の範囲内)が得られた。
また、分子量が350以下の脂肪族エポキシ樹脂を含む実施例4、5では、特に良好な付着内外差特性(0.78−1.39の範囲内)が得られた。
分子量が350以下の脂肪族エポキシ樹脂を脂肪族エポキシ樹脂の総量に対して30[wt%]以上含む実施例5では非常に良好な付着内外差特性(1.20)が得られた。
(3)両特性
脂肪族エポキシ樹脂を2種類以上含み、数平均分子量が500以上であって、分子量が500以下の脂肪族エポキシ樹脂と分子量1000以上の脂肪族エポキシ樹脂を両方含む実施例4〜7では、良好な擦過特性(449以上)と良好な付着内外差特性(0.5−1.5の範囲内)が得られた。
脂肪族エポキシ樹脂を2種類以上含み、数平均分子量が500以上であって、分子量が350以下の脂肪族エポキシ樹脂と分子量1000以上の脂肪族エポキシ樹脂をそれぞれ30[wt%]以上含む実施例5では、良好な擦過特性と特に良好な付着内外差特性(1.20)が得られた。